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審決分類 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  B23K
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  B23K
審判 全部申し立て 2項進歩性  B23K
管理番号 1343890
異議申立番号 異議2016-700561  
総通号数 226 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2018-10-26 
種別 異議の決定 
異議申立日 2016-06-23 
確定日 2018-07-24 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第5835904号発明「横向溶接法及びそのための接合構造」の特許異議申立事件について,次のとおり決定する。 
結論 特許第5835904号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり,訂正後の請求項〔1-14〕について訂正することを認める。 特許第5835904号の請求項1-3,5,7,9-12に係る特許を取り消す。 特許第5835904号の請求項4,6,8,13,14に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 
理由 1 手続の経緯
特許第5835904号の請求項1-14に係る特許についての出願は,平成27年11月13日付けでその特許権の設定登録がされ,その後,平成28年6月23日に特許異議申立人桑原春菜(以下,「申立人」という。)より請求項1-14に対して特許異議の申立てがされ,平成28年8月15日付けで取消理由が通知され,平成28年11月15日に意見書の提出及び訂正請求がされ,平成28年12月28日に申立人から意見書が提出され,平成29年3月28日付けで取消理由通知(決定の予告)が通知され,平成29年6月28日に意見書が提出され,平成29年8月25日付けで取消理由通知(決定の予告)が通知され,平成29年11月24日に意見書の提出及び訂正請求がなされたものである。

2 訂正の適否
(1)訂正の内容
平成29年11月24日の訂正請求による訂正の内容は,以下のア-キのとおりである。
なお,平成28年11月15日の訂正請求は,特許法第120条の5第7項の規定により取り下げられたものとみなす。

ア 訂正事項1
訂正事項1は,訂正前の請求項1に
「2つの部品間に溶接接合部を形成する方法であって,
第1の部品(100)と第2の部品(200)を整列させて,第1の部品(100)と第2の部品(200)の間に,第1の部品(100)の突出部(122)と第2の部品(200)の陥凹部(222)とを含む接合部(300)であって,突出部(122)と陥凹部(222)とが相補的な形状を有する接合部(300)を形成するとともに,接合部(300)から対向して延在する第1の部品(100)の第1の凹面(130)と第2の部品(200)の第2の凹面(230)とによって,第1及び第2の部品(100,200)の半径方向軸線(142,144,242,244)と略平行に配向したルート開口部(310)を形成するステップと,
各々の主軸線(140,240)が垂直に配向するように第1の部品(100)と第2の部品(200)を配向させるステップと,
前記接合部(300)に沿って位置する略水平配向ルート開口部(310)で第1の部品(100)と第2の部品(200)を溶接するステップ(730)と
を含む方法。」
と記載されているのを,
「2つの部品間に溶接接合部を形成する方法であって,
主軸線(140,240)と該主軸線に直角な複数の半径方向軸線(142,144,242,244)を有する略円筒形の又は管状の本体(110,210)を各々含む第1の部品(100)と第2の部品(200)を整列させて,第1の部品(100)と第2の部品(200)の間に,第1の部品(100)の突出部(122)と第2の部品(200)の陥凹部(222)とを含む接合部(300)であって,突出部(122)と陥凹部(222)とが相補的な形状を有する接合部(300)を形成するとともに,接合部(300)から対向して延在する第1の部品(100)の第1の凹面(130)と第2の部品(200)の第2の凹面(230)とによって,第1及び第2の部品(100,200)の半径方向軸線(142,144,242,244)と略平行に配向したルート開口部(310)であって,第1の凹面(130)及び第2の凹面(230)の各々が,第1及び第2の部品(100,200)の内表面(114,214)に位置する接合部(300)から離れる方向に延びて半径方向軸線(142,144,242,244)と略平行な側面を形成して,第1及び第2の部品(100,200)の外表面(112,212)に沿って開口したルート開口部(310)を形成するステップと,
各々の主軸線(140,240)が垂直に配向し,もってルート開口部(310)が略水平に配向するように第1の部品(100)と第2の部品(200)を配向させるステップと,
前記接合部(300)に沿って位置する略水平配向ルート開口部(310)で第1の部品(100)と第2の部品(200)を溶接するステップ(730)であって,前記溶接ステップが,前記略水平配向ルート開口部(310)内に形成される溶融池に導入する前に金属フィラーをその融点に近い温度に予加熱する熱線ガスタングステンアーク溶接(GTAW)を含むステップと
を含む方法。」に訂正するものである。

イ 訂正事項2
訂正事項2は,特許請求の範囲の請求項4,6,8,13及び14を削除するものである。

ウ 訂正事項3
訂正事項3は,明細書の段落【0002】に「このことは,金属フィラーを溶融する電気アークによる加熱に全面的に依存している。」とあるのを,「冷線GTAWは,金属フィラーを溶融する電気アークによる加熱に全面的に依存している。」に訂正するものである。

エ 訂正事項4
訂正事項4は,明細書の段落【0005】,【0016】及び【0021】に「縦向き」とあるのを,「垂直」に訂正するものである。

オ 訂正事項5
訂正事項5は,明細書の段落【0005】,【0006】,【0016】,【0021】及び【0023】に「横向」とあるのを,「水平」に訂正するものである。

カ 訂正事項6
訂正事項6は,明細書の段落【0005】-【0007】,【0012】-【0018】,【0020】-【0023】及び【0026】に「根元開口部」とあるのを,「ルート開口部」に訂正するものである。

キ 訂正事項7
訂正事項7は,明細書の段落【0006】,【0007】,【0011】,【0012】,【0021】及び【0026】に「凹面形面」とあるのを,「凹面」に訂正するものである。

(2)訂正の目的の適否,新規事項の有無,一群の請求項及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否

ア 訂正事項1
訂正事項1について,訂正箇所を順次検討する。

(ア)「第1の部品(100)と第2の部品(200)」を「主軸線(140,240)と該主軸線に直角な複数の半径方向軸線(142,144,242,244)を有する略円筒形の又は管状の本体(110,210)を各々含む第1の部品(100)と第2の部品(200)」とする訂正は,「第1の部品(100)と第2の部品(200)」の形状を特定する訂正であり,特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして,明細書の段落【0014】には「・・・第1の部品100及び第2の部品200は各々,それぞれボア150,250,長手方向軸線140,240,並びに複数の半径方向軸線142,144及び242,244を有する略円筒形の又は管状の本体110,210を含むことができる。・・・」と記載されていることからみて,当該(ア)の訂正事項は願書に添付された明細書の記載の範囲内の事項であるから,新規事項の追加に該当せず,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものではない。

(イ)「ルート開口部(310)」を「ルート開口部(310)であって,第1の凹面(130)及び第2の凹面(230)の各々が,第1及び第2の部品(100,200)の内表面(114,214)に位置する接合部(300)から離れる方向に延びて半径方向軸線(142,144,242,244)と略平行な側面を形成して,第1及び第2の部品(100,200)の外表面(112,212)に沿って開口したルート開口部(310)」とする訂正は,「ルート開口部(310)」の形状を特定する訂正であり,特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして,明細書の段落【0012】には「図2は,本発明の実施形態により接合位置にありかつ接合部300を形成した第1の部品100及び第2の部品200を示す。図2で分かるように,第1の部品100の凹面形面130及び第2の部品200の凹面形面230は,根元開口部310(つまり,それに沿って溶接部を形成することができる部品間の開口部)を形成する。第1の部品100及び第2の部品200は,最終的には根元開口部310で溶接することによって接合される。従って,根元開口部310への金属フィラーの堆積は,その角度付き形状によって可能になる。つまり,凹面形面130の少なくとも一部分は,水平面320の上方に角度αを形成し,凹面形面230の少なくとも一部分は,水平面320の下方に角度βを形成する。角度α及びβは各々独立に約0°?約10°である。幾つかの実施形態では,各々は,約3°?約7°である。幾つかの実施形態では,各々は,約5°である。当業者には解るようにまた以下により詳細に説明しかつ示すように,水平面320は,第1の部品100及び第2の部品200の半径方向軸線又は半径方向平面に沿って或いは平行に位置する。」と記載され,段落【0014】には「図3は,図2の第1の部品100及び第2の部品200のより広範囲の側面図を示す。図3で分かるように,第1の部品100及び第2の部品200は各々,それぞれボア150,250,長手方向軸線140,240,並びに複数の半径方向軸線142,144及び242,244を有する略円筒形の又は管状の本体110,210を含むことができる。本体110及び210は,略円筒形又は管状であるものとして上記しているが,図3の断面図は各本体の弓形セグメントのみを示していることに注目されたい。根元開口部310は,それぞれ第1の部品100及び第2の部品200の外表面112,212に沿って開口している。第1の部品100及び第2の部品200は各々さらに,それぞれそれらのボア150,250に沿って形成された内表面114,214を含む。」と記載されていることからみて,当該(イ)の訂正事項は願書に添付された明細書の記載の範囲内の事項であるから,新規事項の追加に該当せず,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものではない。

(ウ)「各々の主軸線(140,240)が垂直に配向するように第1の部品(100)と第2の部品(200)を配向させるステップ」を「各々の主軸線(140,240)が垂直に配向し,もってルート開口部(310)が略水平に配向するように第1の部品(100)と第2の部品(200)を配向させるステップ」とする訂正は,「ルート開口部(310)」の配向を特定する訂正であり,特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして,明細書の段落【0015】には「図4は,溶接作業の間にそれらの長手方向軸線140,240が略垂直方向に(縦向きに)配向された姿勢になっている第1の部品100及び第2の部品200を示す。従って,それら部品の半径方向軸線142,144及び242,244並びに根元開口部310は,略水平方向に(横向に)配向されている。」と記載されていることからみて,当該(ウ)の訂正事項は願書に添付された明細書の記載の範囲内の事項であるから,新規事項の追加に該当せず,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものではない。

イ 訂正事項2
訂正事項2は,請求項を削除するものであり,特許請求の範囲の減縮を目的とし,新規事項の追加に該当せず,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものではない。

ウ 訂正事項3-7
訂正事項3-7は,誤訳の訂正を目的とし,新規事項の追加に該当せず,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものではない。

エ 一群の請求項について
訂正前の請求項1-14は,請求項2-14が,訂正の請求の対象である請求項1の記載を引用する関係にあるから,訂正前において一群の請求項に該当するものである。したがって,訂正の請求は,一群の請求項ごとにされたものである。

(3)小括
したがって,上記訂正請求による訂正事項1-7は,特許法第120条の5第2項ただし書第1号又は第2号に掲げる事項を目的とするものであり,かつ,同条第9項で準用する同法第126条第4項から第6項までの規定に適合するので,訂正後の請求項〔1-14〕について訂正を認める。

3 本件発明
上記訂正請求により訂正された請求項1-14に係る発明は,訂正特許請求の範囲の請求項1-14に記載された事項により特定される次のとおりのものである(以下,訂正特許請求の範囲の請求項1に係る発明等を「本件発明1」等という。)。

「【請求項1】
2つの部品間に溶接接合部を形成する方法であって,
主軸線(140,240)と該主軸線に直角な複数の半径方向軸線(142,144,242,244)を有する略円筒形の又は管状の本体(110,210)を各々含む第1の部品(100)と第2の部品(200)を整列させて,第1の部品(100)と第2の部品(200)の間に,第1の部品(100)の突出部(122)と第2の部品(200)の陥凹部(222)とを含む接合部(300)であって,突出部(122)と陥凹部(222)とが相補的な形状を有する接合部(300)を形成するとともに,接合部(300)から対向して延在する第1の部品(100)の第1の凹面(130)と第2の部品(200)の第2の凹面(230)とによって,第1及び第2の部品(100,200)の半径方向軸線(142,144,242,244)と略平行に配向したルート開口部(310)であって,第1の凹面(130)及び第2の凹面(230)の各々が,第1及び第2の部品(100,200)の内表面(114,214)に位置する接合部(300)から離れる方向に延びて半径方向軸線(142,144,242,244)と略平行な側面を形成して,第1及び第2の部品(100,200)の外表面(112,212)に沿って開口したルート開口部(310)を形成するステップと,
各々の主軸線(140,240)が垂直に配向し,もってルート開口部(310)が略水平に配向するように第1の部品(100)と第2の部品(200)を配向させるステップと,
前記接合部(300)に沿って位置する略水平配向ルート開口部(310)で第1の部品(100)と第2の部品(200)を溶接するステップ(730)であって,前記溶接ステップが,前記略水平配向ルート開口部(310)内に形成される溶融池に導入する前に金属フィラーをその融点に近い温度に予加熱する熱線ガスタングステンアーク溶接(GTAW)を含むステップと
を含む方法。
【請求項2】
前記溶接ステップ(730)が,前記略水平配向ルート開口部(310)に沿って溶接することを含む,請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記溶接ステップ(730)が,複数の溶接ヘッド(700,702)を使用して同時に溶接することを含む,請求項1又は請求項2記載の方法。
【請求項4】
(削除)
【請求項5】
前記GTAWが,アルゴン,ヘリウム,水素及びそれらの混合物からなる群から選択されるシールドガス(710,712)を使用する,請求項1乃至請求項3のいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
(削除)
【請求項7】
前記金属フィラー(720)が,ニッケル合金,ステンレス鋼,低合金鋼,高合金鋼及びそれらの混合物からなる群から選択される,請求項1乃至請求項3又は請求項5のいずれか1記載の方法。
【請求項8】
(削除)
【請求項9】
第1の部品(100)が第1の材料を含み,第2の部品(200)が第1の材料とは異なる第2の材料を含む,請求項1乃至請求項3,請求項5又は請求項7のいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
第1の部品(100)と第2の部品(200)が各々独立に,ステンレス鋼,炭素鋼,ニッケル合金,低合金鋼,高合金鋼及びそれらの混合物からなる群から選択される1種以上の材料を含む,請求項1乃至請求項3,請求項5又は請求項7のいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
第1の部品(100)が,ボア(150)を有する略円筒形の第1の本体(110)と,第1の本体(110)の表面に沿った第1の合せ面(120)であって突出部(122)を備える第1の合せ面(120)と,第1の合せ面(120)から第1の本体に向かって延在する第1の凹面(130)とを有していて,第2の部品(200)が,ボア(250)を有する略円筒形の第2の本体(210)と,第2の本体(210)の表面に沿った第2の合せ面(220)であって第1の合せ面(120)の突出部(122)の形状と相補的な形状の陥凹部(222)を備える第2の合せ面(220)と,第2の合せ面(220)から第2の本体に向かって延在する第2の凹面(230)とを有しており,前記接合部(300)が第1の合せ面(120)と第2の合せ面(220)とによって形成される,請求項1乃至請求項3,請求項5,請求項7,請求項9又は請求項10のいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
前記接合部(300)が,略水平配向ルート開口部(310)の中心からオフセット(330)している,請求項11記載の方法。
【請求項13】
(削除)
【請求項14】
(削除)」

4 当審の判断
(1)特許法第36条第6項第2号について
本件発明1に係る「第1の凹面(130)及び第2の凹面(230)の各々が,第1及び第2の部品(100,200)の内表面(114,214)に位置する接合部(300)から離れる方向に延びて半径方向軸線(142,144,242,244)と略平行な側面を形成」について,「略平行な側面」の意味する技術的範囲が依然として不明瞭である。
本件明細書において,「略平行」とは,どの程度平行であれば略平行であると言えるのかを示した記載は存在しない。
ここで,本件明細書の段落【0012】を参照すると,ルート開口部が半径方向軸線に対して10°程度開いている形状も,「略平行」に含まれると考えられるところ,特許権者の平成29年6月28日の意見書においては,「実際,甲第1号証の図面に記載された溶接開先30は,接触面31,32,33から離れる方向に向かって次第に開いており,半径方向軸線と略平行な側面を形成するものは記載されていない。」との主張がなされた。
この主張からすると,開いている形状は,「略平行」とは言えないとも考えられるため,平成29年8月25日付けで取消理由通知(決定の予告)において,「本件請求項1に係る発明の『略平行な側面』の意味する技術的範囲を明確にすると共に,後述するウにおける,『甲第1号証』のFIG.2及びFIG.6,そして,後述するエにおける参考文献1の第407頁表1の『開先形状』の欄の図,参考文献2の第4,5図,参考文献3の第7図の形状はどのような点で本件請求項1に係る発明の『略平行な側面』とは異なるのかを明らかにされたい。」と通知をしたものの,この点については,平成29年6月28日提出の意見書の主張が誤りであったのかを含め,特許権者の平成29年11月24日提出の意見書においては何らの応答もなされていない。
したがって,本件発明1を引用する本件発明2,3,5,7,9-12を含めて「略平行な側面」の意味する技術的範囲が依然として不明瞭である。

(2)特許法第29条第2項について
ア 甲第1号証の記載
平成29年8月25日付け取消理由通知(決定の予告)において引用した甲第1号証(米国特許出願公開第2010/0028155号明細書)には,図面と共に,次の記載がされている(括弧内は対応する日本出願の公開公報(特開2010-31812号公報)の日本語である。)。

(ア) 段落[0008]The present invention relates to a steam turbine rotor including a rotor for low pressure and a rotor for high pressure which are integrated by connecting at least parts of the rotors to each other via a weld including weld metal.(本発明は,低圧側ロータと高圧側ロータとを,溶接金属を含む溶接部を介して少なくとも一部分を接合することにより一体化した蒸気タービンロータに関する。)

(イ) 段落[0035]For a conventional integrated rotor, material used for a high and intermediate pressure steam turbine, a steam temperature of 538 to 600℃., is 1% Cr-Mo-V steel or 12% Cr steel (see Japanese Patent Publication No.1833108or ASTM A470 Class 8). Material used for a low pressure steam turbine, a steam temperature of 400℃. or less, is 3 to 4% Ni-Cr-Mo-V steel (see ASTM A470 Class 7). (従来の一体型ロータの場合,蒸気温度538℃?600℃の高圧,中圧蒸気タービンには,1%CrMoV系鋼,12%Cr系鋼が使用されていた(特許第1833108号公報,ASTM A470 Class8等)。また,蒸気温度400℃以下の低圧蒸気タービンには3?4%Ni-Cr-Mo-V系鋼が使用されていた(ASTM A470 Class7)。)

(ウ) 段落[0038]The turbine rotor of the present invention has a center hole in the rotor member.(また,本発明のタービンロータは,ロータ材の内部に中心孔を有する。)

(エ) 段落[0043]In the present invention, a rotor for low pressure and a rotor for high pressure are in contact with each other via at least two faces in a radial direction and in an axial direction, respectively, around a center hole part. At least parts of the contact faces are welded and integrated together to form a turbine rotor.(本発明は,低圧側ロータと,高圧側ロータとを,中心孔部分の周囲で,半径方向及び軸方向の少なくとも二つの面で接触させる。また,接触面の少なくとも一部を溶接し一体化するタービンロータである。)

(オ) 段落[0044]For example, the rotor for high pressure is provided with stepped portions at a contact end face with the rotor for low pressure. The stepped portions are, from the outside, a parallel surface, a vertical surface, and another parallel surface to the radial direction of the rotor. The rotor for low pressure is also provided with stepped portions corresponding to engage with those of the rotor for high pressure. Thus, at least two surfaces parallel to the radial direction are provided on the contact faces, and the contact faces located in the outermost position are welded. The welding may be performed so as to cover the entire contact faces on the outermost side, or so as not to cover the entire contact faces.(例えば,高圧側ロータの低圧側ロータとの接触端面に段差を設け,外側からロータの半径方向に平行な面,垂直な面,平行な面とする。他方の低圧側ロータにも,高圧側ロータと組み合わさるように対応する段差を設ける。このように,接触面のうち,半径方向に平行な面を少なくとも二箇所設け,最外に位置する接触面を溶接により接合する。溶接は外側の接触面全部を覆うように行っても,一部残しても構わない。)

(カ) 段落[0047]Example 1 of the present invention will be described below using FIGS. 1 to 11 . FIG. 1 is a sectional view of the turbine rotor for high and low pressure steams according to the present invention. The turbine rotor for high and low pressure steam shown in FIG. 1 is divided into two components, that is, a rotor 62 for high pressure and a rotor 61 for low pressure, which are connected to each other by a weld 6 (weld metal 66 ) to construct the turbine rotor. A joint connected by the weld 6 has a hollow portion 64 , which decreases the weight of the turbine rotor. The rotor 62 for high pressure includes 1% Cr-Mo-V steel. The rotor 61 for low pressure includes 3 to 4% Ni-Cr-Mo-V steel. Table 1 shows chemical compositions (weight percent) of weld wires and materials constituting the rotor of a typical turbine rotor, the rest of the compositions being Fe.(本発明の第1の実施例について図1から図11を用いて説明する。図1は本発明に係る高圧蒸気用のタービンロータの断面図である。図1の高低圧蒸気用のタービンロータは,高温側ロータ61,低温側ロータ62の2つに分割されており,各々が溶接部6で接合されてタービンロータが構成されている。溶接部6で接合される継手部には中空部64が形成され,軽量化が図られている。高温側ロータ61は1%Cr-Mo-V系鋼で構成されている。低温側ロータ62は,3?4%Ni-Cr-Mo-V系鋼で構成されている。表1は代表的なタービンロータのロータを構成する母材及び溶接ワイヤの化学組成(重量%)を示し,残部がFeである。)

(キ) 段落[0048]In this example, the material of the rotor 62 for high pressure includes 1.13 % Cr and the material of the rotor 61 for low pressure includes 1.83 % Cr.(本実施例では,高温側ロータ61の母材のCr含有量が1.13%であり,低温側ロータ62の母材のCr含有量が1.83%であった。)

(ク) 段落[0049]FIG. 2 is a partial sectional view of a weld joint of the turbine rotor according to the present invention. Butted portions 7 are provided at the bottom of a welding groove 30 provided in a rotor material 1 for high pressure and a rotor material 2 for low pressure so as to align both rotors. The turbine rotor is constituted by filling welding groove 30 with the weld wire to form the weld 6 and fusion-joining the rotor materials 1 and 2 to each other.(図2は,本発明に係るタービンロータの溶接継手部の部分断面図である。高温側ロータ母材1と低温側ロータ母材2に設けた溶接開先30の底部には,両ロータの位置合わせをするための,突合せ部7が設けてある。溶接開先30に溶接ワイヤを充填することで,溶接部6を形成して,ロータ母材1,2を溶融接合し,タービンロータが構成される。)

(ケ) 段落[0050]FIG. 3 is a schematic diagram of a welding machine for welding the turbine rotor. In this example, the welding machine is used to perform a tungsten inert gas (TIG) welding method. The welding machine 8 includes a torch 10 which electrodes 9 are attached to, a weld wire 11 forming the weld 6 , and an arm 12 supporting and fixing the torch 10 and the weld wire 11 . The welding machine 8 further includes a weld power 13 for supplying current of a predetermined value to the electrodes 9 , a gas bombe 14 for supplying inert gas to be spouted from around the electrodes 9 so as to suppress oxidization of the weld 6 , a positioner 15 for supporting and rotating the turbine rotor, and a wire feeder 16 for feeding the weld wire 11 to the weld 6 . A power cable 17 extending from the weld power 13 is attached to the electrodes 9 so as to supply the current from the weld power 13 to the electrodes 9 . A gas hose 18 is attached to the torch 10 for receiving the inert gas supplied from the gas bombe 14 . A power cable 19 is attached to the turbine rotor so as to generate electric arc between the electrodes 9 and the turbine rotor. A signal cable 20 for the positioner is attached to the positioner 15 , so that the rotation speed and rotation direction of the positioner 15 is controlled by receiving a control signal from the weld power 13 . The wire feeder 16 controls the feed speed of the weld wire 11 by receiving a control signal from a signal cable 21 for the wire feeder. The welding machine of the present invention can employ a submerged arc welding (SAW) method, a shielded metal arc welding method, a metal inert gas (MIG) welding method, as well as the tungsten inert gas (TIG) welding method shown in FIG. 3 , and a combination thereof. Although FIG. 3 shows that the rotor is positioned laterally and welding is performed in the downward direction, the rotor may be positioned vertically and welding may be performed in the horizontal direction.(図3は,タービンロータを溶接するためのタービンロータ溶接装置の模式図を示す。本例は,タングステン・不活性ガス(TIG)溶接法によるタービンロータ溶接装置である。タービンロータ溶接装置8は,電極9が取り付けられるトーチ10,溶接部6を形成する溶接ワイヤ11,トーチ10及び溶接ワイヤ11を支持固定するアーム12,電極9に所定値の電流を供給する溶接電源13,溶接部6の酸化を抑制するために電極9周囲から噴射する不活性ガスを供給するガスボンベ14,タービンロータを支持しながら回転させるためのタービンロータ回転装置15及び溶接ワイヤ11を溶接部6に送給する溶接ワイヤ送給装置16を備える。電極9には,溶接電源13からの送電線17が取り付けられてあり,溶接電源13から電流が供給される。トーチ10には,ガスボンベ14から不活性ガスの供給をうけるためにガスホース18が取り付けてある。タービンロータには,電極9とタービンロータとの間で電気アークを発生するために,電気線19が取り付けてある。タービンロータ回転装置15には,回転信号線20が取り付けてあり,溶接電源13からの制御信号を受けてタービンロータ回転装置15の回転速度および回転方向が制御される。溶接ワイヤ送給装置16は,送給信号線21からの制御信号を受けて溶接ワイヤ22の送給速度が制御されるように構成されてある。本発明では溶接装置として,図3で示したタングステン・不活性ガス(TIG)溶接法に加えて,サブマージアーク(SAW)溶接法,被覆アーク溶接法,金属・不活性ガス(MIG)溶接法および,これらの組み合わせを採用することができる。さらに,図3では,ロータを水平に配置して下向きに溶接しているが,ロータを垂直に配置して横向きに溶接しても構わない。)

(コ) 段落[0053]FIG. 6 shows a section of the vicinity of the weld before welding. The rotor for high pressure and the rotor for low pressure are in contact with each other at the butted portions formed in mating (bitting) shape. The contact faces include an outer contact face 31 in the radial direction, an outer contact face 32 in the axial direction, and an inner contact face 33 in the radial direction, which are positioned from the outside in this order.(図6は,溶接前の溶接部近傍の断面を示している。高圧側ロータと低圧側ロータは,インロー(鍵状)形状に加工された突合せ部で接触している。接触面は,外側から配置している順に,半径方向に伸びる外側の接触面31,軸方向に伸びる接触面32,半径方向に伸びる内側の接触面33から構成されている。)

(サ) 段落[0057]FIG. 9 shows a section of the vicinity of the weld after the welding process. The weld metal 6 is fused by arc heat discharged from the weld torch, and the welding groove 30 is filled with the weld metal 6 , and then the rotor material 1 for high pressure and the rotor material 2 for low pressure are connected metallurgically to each other.(図9は,溶接後の溶接部近傍の断面を示している。溶接トーチから放出するアーク熱により溶接金属11を溶融させて,溶接開先30の内部に溶接金属11を充填することにより,高圧側ロータ母材1と低圧側ロータ母材2とを,冶金的に接合させる。)

さらに,「タービンロータ」である以上,回転軸は存在するものである。
また,上記(ケ)の「さらに,図3では,ロータを水平に配置して下向きに溶接しているが,ロータを垂直に配置して横向きに溶接しても構わない。」との記載からすると,甲第1号証には,ロータを垂直に配置した技術も示されていると認められる。

そして,上記2(2)ア(イ)において検討した訂正事項1に係る記載として段落[0049]に「A hollow portion 3 is provided in the rotor materials 1 and 2 to reduce the weight of the rotor. The hollow portion 3 has convex portions 4 and 5 for avoiding concentration of load stress in an actual machine on the butted portions 7 .(ロータ母材1,2の内部には,軽量化を図るために,中空部3を設けてある。実機負荷応力が突合せ部7に集中するのを回避するために,中空部3には中空部4,5が設けてある。)」と記載されている。
この記載から,図2やその溶接部近傍を示した図6には,内部に設けられた「中空部3」が示されていることが理解できる。そうすると,図6において「接触面31,32,33」は,中空部3側の面に位置していることになる。そして,「中空部3」は内部側であるから,「溶接開先30」は外部側に開口していることになる。

したがって,甲第1号証には以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「2つのロータ間に溶接接合部を形成する方法であって,
回転軸と該回転軸に直角な複数の半径方向軸線を有する略円筒形の又は管状の高圧側ロータ母材1と低圧側ロータ母材2を整列させて,高圧側ロータ母材1と低圧側ロータ母材2の間に,高圧側ロータ母材1の接触面31,32,33と低圧側ロータ母材2の接触面31,32,33とを含む接触面31,32,33であって,高圧側ロータ母材1の接触面31,32,33と低圧側ロータ母材2の接触面31,32,33とが相補的な形状を有する接触面31,32,33が形成されており,接触面31,32,33から対向して延在する高圧側ロータ母材1の溶接開先30と低圧側ロータ母材2の溶接開先30とによって,高圧側ロータ母材1及び低圧側ロータ母材2の半径方向軸線と略平行に配向した溶接開先30であって,高圧側ロータ母材1の溶接開先30及び低圧側ロータ母材2の溶接開先30の各々が,高圧側ロータ母材1及び低圧側ロータ母材2の内部側に位置する接触面31,32,33から離れる方向に延びる側面を形成すして,高圧側ロータ母材1及び低圧側ロータ母材2の外部側に開口した溶接開先30を形成するステップと,
各々の回転軸が垂直に配向し,もって溶接開先30が略水平に配向するように高圧側ロータ母材1と低圧側ロータ母材2を配向させるステップと,
前記接触面31,32,33に沿って位置する略水平配向溶接開先30で高圧側ロータ母材1と低圧側ロータ母材2を溶接するステップであって,前記溶接ステップが,前記略水平配向溶接開先30内に形成される溶融池に溶接金属11を導入するタングステン・不活性ガス(TIG)溶接を含むステップと
を含む方法。」

イ 対比
引用発明の「ロータ」,「回転軸」,「高圧側ロータ母材1」,「低圧側ロータ母材2」,「高圧側ロータ母材1の接触面31,32,33」,「低圧側ロータ母材2の接触面31,32,33」,「接触面31,32,33」,「高圧側ロータ母材1の溶接開先30」,「低圧側ロータ母材2の溶接開先30」,「溶接開先30」,「溶接金属11」,「タングステン・不活性ガス(TIG)溶接」は,それぞれ本件発明1の「部品」,「主軸線」,「第1の部品」,「第2の部品」,「第1の部品の突出部」,「第2の部品の陥凹部」,「接合部」,「第1の部品の第1の凹面」,「第2の部品の第2の凹面」,「ルート開口部」,「金属フィラー」,「ガスタングステンアーク溶接(GTAW)」に相当する。
さらに,引用発明の「内部側」,「外部側」は,本願発明の「内表面」,「外表面」に相当する。

以上のことから,本件発明1と引用発明との一致点及び相違点は,次のとおりである。
<一致点>
「2つの部品間に溶接接合部を形成する方法であって,
主軸線と該主軸線に直角な複数の半径方向軸線を有する略円筒形の又は管状の本体を各々含む第1の部品と第2の部品を整列させて,第1の部品と第2の部品の間に,第1の部品の突出部と第2の部品の陥凹部とを含む接合部であって,突出部と陥凹部とが相補的な形状を有する接合部を形成するとともに,接合部から対向して延在する第1の部品の第1の凹面と第2の部品の第2の凹面とによって,第1及び第2の部品の半径方向軸線と略平行に配向したルート開口部であって,第1の凹面及び第2の凹面の各々が,第1及び第2の部品の内表面に位置する接合部から離れる方向に延びる側面を形成して,第1及び第2の部品の外表面に沿って開口したルート開口部を形成するステップと,
各々の主軸線が垂直に配向し,もってルート開口部が略水平に配向するように第1の部品と第2の部品を配向させるステップと,
前記接合部に沿って位置する略水平配向ルート開口部で第1の部品と第2の部品を溶接するステップであって,前記溶接ステップが,前記略水平配向ルート開口部内に形成される溶融池に金属フィラーを導入するガスタングステンアーク溶接(GTAW)を含むステップと
を含む方法。」

<相違点1>
本件発明1の「ルート開口部」は「第1の凹面及び第2の凹面の各々が接合部から離れる方向に延びて半径方向軸線と略平行な側面を形成する」のに対し,引用発明の「ルート開口部」は「半径方向軸線と略平行な側面を形成する」かどうか,明示されていない点。

<相違点2>
本件発明1の「ガスタングステンアーク溶接」が「溶融池に導入する前に金属フィラーをその融点に近い温度に予加熱する」「熱線ガスタングステンアーク溶接」であるのに対し,引用発明の「タングステン・不活性ガス溶接」は,予加熱をしないものである点。

ウ 判断
まず,相違点1について検討する。
上記(1)において指摘したように,本件発明1に係る「第1の凹面及び第2の凹面の各々が,第1及び第2の部品の内表面に位置する接合部から離れる方向に延びて半径方向軸線と略平行な側面を形成して,第1及び第2の部品の外表面に沿って開口したルート開口部」の「略平行」の意味する技術的範囲が不明瞭であるが,本件特許明細書の段落【0012】の「凹面形面130の少なくとも一部分は,水平面320の上方に角度αを形成し,凹面形面230の少なくとも一部分は,水平面320の下方に角度βを形成する。角度α及びβは各々独立に約0°?約10°である。」との記載からすると,約10°程度傾斜していても「略平行」の範囲に含まれると考えられる。
してみると,甲第1号証においては具体的な角度は示されていないものの,FIG.6に示された図面では,ある程度の範囲が,約10°の範囲であると見受けられ,FIG.2に示された図面では,大部分が,約10°の範囲であると見受けられる。
さらに,横向き溶接においては,例えば「伊藤俊雄外4名,「大型ステンレス鋼製原子力容器への狭開先ホットワイヤGTA溶接法の適用」,三菱重工業株式会社技報,三菱重工業株式会社,昭和57年7月31日,第19巻,第4号,p.404?409」(以下,「参考文献1」という。)の407頁の表1において3?5°の例が示され,特開昭62-38768号公報(以下,「参考文献2」という。)の第4図,第5図は図面上約10°の範囲であると見受けられ,「略平行」がより小さい角度の傾斜角だとしても,「略平行」とすることは従来周知な技術手段にすぎない。
そして,本件特許明細書や意見書からは,「ルート開口部」の形状を,従来技術に比して特定の形状としたことにより,横向き溶接が可能となったと理解することもできず,相違点1に引用発明との格別の差異を認めることができない。

次に,相違点2について検討する。
「ガスタングステンアーク溶接」においては,引用発明のように「予加熱」を行わない,いわゆる「冷線ガスタングステンアーク溶接」は従来周知である。また,「予加熱」を行う「熱線ガスタングステンアーク溶接」も,例えば,参考文献1,参考文献2(第2頁左上欄第17-18行「9はフイラーワイヤ予熱用電源である。」参照),特開昭62-77179号公報(以下,「参考文献3」という。)(第2頁左上欄第18-20行「適当な補助電源を用いてフィラーワイヤに直流の加熱電流を通電するホットワイヤTIG溶接方法」参照)に示されているように従来周知である。
そして,上記ア(ケ)で摘記したように,甲第1号証には「本発明では溶接装置として,図3で示したタングステン・不活性ガス(TIG)溶接法に加えて,サブマージアーク(SAW)溶接法,被覆アーク溶接法,金属・不活性ガス(MIG)溶接法および,これらの組み合わせを採用することができる。」と記載されている。
したがって,引用発明において,適宜の溶接装置を用いることは十分想到しうる事項であり,従来周知の「熱線ガスタングステンアーク溶接」を選択することに困難性があったものとは認められない。

よって,本件発明1は,上記引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

エ 特許権者の主張について
特許権者は平成29年6月28日提出の意見書第4頁第19-28行において,甲第1号証には,本件発明1の「ルート開口部」に相当する構成が示されていない旨主張するが,上記(1)のとおり,「ルート開口部」における「略平行」の意味する範囲が不明瞭であり,また,上記ウの相違点1の検討で示したとおりであり,当該主張を採用することはできない。
さらに,同意見書第6頁第5-9行において,「・・・「熱線ガスタングステンアーク溶接」は横向溶接姿勢には向かないという従来の技術常識を無視したものといわざるを得ない。」と主張している。
しかしながら,この主張は,参考文献3の第2頁左上欄第16行-右上欄第10行に記載された,昭和60年当時の従来技術としての記載を前提とする主張であり,参考文献3が公知となった後の,本件発明1の出願時点での従来技術に基づく主張ではないので,採用することはできない。
また,平成29年11月24日提出の意見書第3頁下から7-3行において「参考文献1には・・・開先形状によって溶接性能が大きく左右されることは周知であるから,参考文献1に記載された教示内容を,V形又はU形の開先形状を用いた形面溶接にそのまま適用することはできない。」と主張しているが,引用発明に示された開先形状には適用できないとする根拠は不明であるし,本件発明1において初めて適用できたとすると,本件発明1には,当該適用を可能にするための,引用発明が有さない何らかの構成が存在するはずであるが,その構成が何であるのかが不明であるため当該主張を採用することはできない。
さらに同意見書第4第3-14行において「参考文献3には,・・・『熱線ガスタングステンアーク溶接』は横向溶接姿勢には向かないことが従来の技術常識であったことが分かる。」と主張しているが,上記平成29年6月28日提出の意見書の参考文献3に係る主張の繰り返しであり,本件発明1の出願時点での従来技術に基づく主張ではないので,採用することはできない。

オ 本件発明2,3,5,7,9-12についての対比・判断
(ア)本件発明2について
「前記溶接ステップ(730)が,前記略水平配向ルート開口部(310)に沿って溶接する」点は,高圧側ロータ母材1と低圧側ロータ母材2も設けた溶接開先30を溶接をする以上,引用発明が当然に有する構成にすぎない。
よって,本件発明2は,上記引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(イ)本件発明3について
「前記溶接ステップ(730)が,複数の溶接ヘッド(700,702)を使用して同時に溶接する」点は,取消理由通知において引用した甲第2号証(特開2002-144038号公報)の段落0032,0033,図8,図9及び取消理由通知において引用した甲第3号証(特開平10-6010号公報)の段落0013,図1に示されているように従来周知であり,引用発明において複数の溶接ヘッドを使用することは,適宜選択しうる事項にすぎない。
よって,本件発明3は,上記引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(ウ)本件発明5について
「GTAWが,アルゴン,ヘリウム,水素及びそれらの混合物からなる群から選択されるシールドガス(710,712)を使用する」点に関し,甲第2号証の段落0023,0024に「シールドガス(Arガス)」と記載され,甲第3号証の段落0016に「アルゴン又はヘリウムなどの不活性ガス」と記載されているように,上記の使用されるシールドガスは通常用いられるシールドガスにすぎない。
よって,本件発明5は,上記引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(エ)本件発明7について
「金属フィラー(720)が,ニッケル合金,ステンレス鋼,低合金鋼,高合金鋼及びそれらの混合物からなる群から選択される」点は,甲第1号証のTABLE1ないし3に示された事項にすぎない。
よって,本件発明7は,上記引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(オ)本件発明9について
「第1の部品(100)が第1の材料を含み,第2の部品(200)が第1の材料とは異なる第2の材料を含む」点は,甲第1号証のTABLE2に示された事項にすぎない。
よって,本件発明9は,上記引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(カ)本件発明10について
「第1の部品(100)と第2の部品(200)が各々独立に,ステンレス鋼,炭素鋼,ニッケル合金,低合金鋼,高合金鋼及びそれらの混合物からなる群から選択される1種以上の材料を含む」点に関し,甲第1号証のTABLE2には,高圧側ロータ母材は高合金綱であり,低圧側ロータ母材は低合金鋼である旨が示されており,実質的な相違点ではない。
よって,本件発明10は,上記引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(キ)本件発明11について
「第1の部品(100)が,ボア(150)を有する略円筒形の第1の本体(110)と,第1の本体(110)の表面に沿った第1の合せ面(120)であって突出部(122)を備える第1の合せ面(120)と,第1の合せ面(120)から第1の本体に向かって延在する第1の凹面(130)とを有していて,第2の部品(200)が,ボア(250)を有する略円筒形の第2の本体(210)と,第2の本体(210)の表面に沿った第2の合せ面(220)であって第1の合せ面(120)の突出部(122)の形状と相補的な形状の陥凹部(222)を備える第2の合せ面(220)と,第2の合せ面(220)から第2の本体に向かって延在する第2の凹面(230)とを有しており,前記接合部(300)が第1の合せ面(120)と第2の合せ面(220)とによって形成される」点は,甲第1号証の図6に示されている「接触面31,32,33」の形状に他ならず,甲第1号証に示された事項にすぎない。
よって,本件発明11は,上記引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(ク)本件発明12について
「接合部(300)が,略水平配向ルート開口部(310)の中心からオフセット(330)している」点は,取消理由通知において引用した甲第4号証(特開2005-344527号公報)の段落0016,図14に示されており,本件発明12は,引用発明,甲第4号証に記載の事項及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

5 むすび
以上のとおり,本件発明1-3,5,7,9-12は不明確な発明であるから,本件発明1-3,5,7,9-12の特許は特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
また,本件発明1-3,5,7,9-11は,引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,本件発明1-3,5,7,9-11の特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
さらに,本件発明12は,引用発明,甲第4号証に記載の事項及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,本件発明12の特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
したがって,本件発明1-3,5,7,9-12に係る特許は,特許法第113条第2号及び第4号に該当し,取り消されるべきものである。
また,本件発明4,6,8,13,14に係る特許は,訂正により削除されたため,本件発明4,6,8,13,14に対して,特許異議申立人がした特許異議の申立てについては,対象となる請求項が存在しない。
よって,結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
横向溶接法及びそのための接合構造
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、総括的には溶接方法に関し、より具体的には、横向姿勢に溶接する方法及びそのような方法に適した接合部(継手)構造に関する。
【背景技術】
【0002】
蒸気タービンロータなどの装置の製作には、部材のガスタングステンアーク溶接(GTAW)を必要とすることが多い。GTAWは、高性能機械で所望されることの多い異なるベース材料(基材)を有する部品を接合する能力を含む機械的特性の向上を可能にする。溶融池に導入する前に金属フィラーをその融点に近い温度に予加熱する「熱線」GTAWは、「冷線」GTAWよりも一般的に高速かつ効率的であるので多くの場合に好ましく、冷線GTAWは、金属フィラーを溶融する電気アークによる加熱に全面的に依存している。
【0003】
公知のGTAW方法、特に熱線GTAW方法の欠点は、それらが下向き姿勢の溶接に限定されることである。つまり、そのような方法は、下向きに溶接接合部に面した電極を用いて溶接することを必要とする。従って、蒸気タービンロータなどの装置の製作においてGTAW、特に熱線GTAWを採用することは一般的に、溶接接合部を適切に配向させるために大型の部品を取扱いかつ移動させることを必要とする。そのように取扱いかつ移動させることは、必然的に効率を低下させかつ装置を製作するコストを上昇させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第5280849号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
一実施形態では、本発明は、2つの部品間に溶接接合部を形成する方法を提供し、本方法は、第1の部品と第2の部品を整列させて、第1の部品と第2の部品の間に、第1の部品の突出部と第2の部品の陥凹部とを含む接合部であって、突出部と陥凹部とが相補的な形状を有する接合部を形成するステップと、各々の主軸線が垂直に配向されるように第1及び第2の部品を配向するステップと、接合部に沿って位置した略水平配向ルート開口部で第1の部品と第2の部品を溶接するステップとを含む。
【0006】
別の実施形態では、本発明は、装置の2つの金属部品間に溶接接合部を形成する方法を提供し、本方法は、略円筒形本体、本体の表面に沿っておりかつ突出部を備えた合せ面、及び合せ面から離れる方向にかつ本体に向けて延在する凹面を有する第1の部品を準備するステップと、略円筒形本体、本体の表面に沿っておりかつ第1の部品の合せ面の突出部の形状と相補的な形状を有する陥凹部を備えた合せ面、及び合せ面から離れる方向にかつ本体に向けて延在する凹面を有する第2の部品を準備するステップと、第1の部品の合せ面の突出部が第2の部品の合せ面の陥凹部に位置しかつ第1及び第2の部品の凹面が第1及び第2の部品の略円筒形本体の隣接する表面に沿って水平配向ルート開口部を形成するように、第1の部品と第2の部品を整列させるステップと、水平配向ルート開口部にわたって第1の部品を第2の部品に溶接するステップとを含む。
【0007】
さらに別の実施形態では、本発明は、タービンロータを提供し、本タービンロータは、第1の本体、第1の本体の表面に沿っておりかつ突出部を備えた第1の合せ面、及び第1の合せ面から離れる方向にかつ第1の本体に向けて延在する第1の凹面を有する第1の部品と、第2の本体、第2の本体の表面に沿っておりかつ第1の合せ面の突出部の形状と相補的な形状を有する陥凹部を備えた第2の合せ面、及び第2の合せ面から離れる方向にかつ第2の本体に向けて延在する第2の凹面を有する第2の部品と、第1及び第2の凹面によって形成された第1の部品と第2の部品の間のルート開口部と、ルート開口部内に位置し、突出部及び陥凹部によって形成されかつルート開口部の中心部からオフセットした接合部とを含む。
【0008】
本発明のこれらの及びその他の特徴は、本発明の様々な実施形態を示す添付図面と関連させてなした本発明の様々な態様の以下の詳細な説明から一層容易に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】 本発明の実施形態による接合部構造を形成するのに適した装置の部品の側面断面図。
【図2】 整列して接合部を形成した、図1の部品。
【図3】 図2の部品のより広範囲の側面断面図。
【図4】 本発明の実施形態により溶接した、図3の部品を示す図。
【図5】 本発明の別の実施形態による整列した部品の側面断面図。
【図6】 本発明の実施形態による方法の流れ図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の図面は正確な縮尺でないことに留意されたい。図面は、本発明の典型的な態様のみを示すことを意図しており、従って本開示の技術的範囲を限定するものとして考えるべきではない。図面を通して、類似の要素には同じ符号を付した。
【0011】
次に図面を参照すると、図1は、蒸気タービンロータなどの装置の第1の部品100及び第2の部品200の側面断面図を示す。第1の部品100及び第2の部品200の各々は、それぞれ本体110,210、合せ面120,220、及び合せ面120,220から離れる方向にかつ本体110,210に向けて延在する凹面130,230を備える。合せ面120,220は、接合部(継手)構造を形成することができる略相補的な形状をもつ。図1に示すように、第1の部品100の合せ面120は、合せ面120から外向きに延在する突出部122を含み、一方、第2の部品200の合せ面220は、その中に突出部122を配置することができる陥凹部222を含む。
【0012】
図2は、本発明の実施形態により接合位置にありかつ接合部300を形成した第1の部品100及び第2の部品200を示す。図2で分かるように、第1の部品100の凹面130及び第2の部品200の凹面230は、ルート開口部310(つまり、それに沿って溶接部を形成することができる部品間の開口部)を形成する。第1の部品100及び第2の部品200は、最終的にはルート開口部310で溶接することによって接合される。従って、ルート開口部310への金属フィラーの堆積は、その角度付き形状によって可能になる。つまり、凹面130の少なくとも一部分は、水平面320の上方に角度αを形成し、凹面230の少なくとも一部分は、水平面320の下方に角度βを形成する。角度α及びβは各々独立に約0°?約10°である。幾つかの実施形態では、各々は、約3°?約7°である。幾つかの実施形態では、各々は、約5°である。当業者には解るようにまた以下により詳細に説明しかつ示すように、水平面320は、第1の部品100及び第2の部品200の半径方向軸線又は半径方向平面に沿って或いは平行に位置する。
【0013】
図2で分かるように、接合部300は、そこを通って水平面320が位置しているルート開口部310の中心部からオフセット330している。つまり、そこにおいてルート開口部310内で第1の部品100及び第2の部品200が接触する箇所は、ルート開口部310の中心部からオフセットしている。図2では、オフセット300は、突出部112を有する部品、つまり第1の部品100に向けて変位しているが、このことは絶対必要なことではない。
【0014】
図3は、図2の第1の部品100及び第2の部品200のより広範囲の側面図を示す。図3で分かるように、第1の部品100及び第2の部品200は各々、それぞれボア150,250、長手方向軸線140,240、並びに複数の半径方向軸線142、144及び242、244を有する略円筒形の又は管状の本体110,210を含むことができる。本体110及び210は、略円筒形又は管状であるものとして上記しているが、図3の断面図は各本体の弓形セグメントのみを示していることに注目されたい。ルート開口部310は、それぞれ第1の部品100及び第2の部品200の外表面112、212に沿って開口している。第1の部品100及び第2の部品200は各々さらに、それぞれそれらのボア150,250に沿って形成された内表面114、214を含む。
【0015】
図4は、溶接作業の間にそれらの長手方向軸線140,240が略垂直方向に(縦向きに)配向された姿勢になっている第1の部品100及び第2の部品200を示す。従って、それら部品の半径方向軸線142、144及び242、244並びにルート開口部310は、略水平方向に(横向に)配向されている。
【0016】
上述したように、公知のGTAW方法、特に熱線GTAW方法は、下向き姿勢(つまり、ルート開口部310が上向きに面した状態)で溶接することに限定される。しかしながら、図4に示すように、本発明の実施形態は、横向姿勢(つまり、ルート開口部310が略水平に開口しかつ長手方向軸線140,240が略垂直に配向された状態)で溶接するのを可能にするだけでなく、複数の溶接ヘッド700,702を使用するのを可能にする。つまり、溶接ヘッド700,702は、溶接部740を形成しながら各溶接ヘッド700,702を第1の部品100及び第2の部品200の周りを移動させるようにして、ルート開口部310に沿った異なる箇所で同時に溶接730することができる。
【0017】
図4には、フィラーロッド720によりルート開口部310に金属フィラーを堆積させながら接合部300に沿って溶接730する溶接ヘッド700を示す。当業者には解るように、シールドガス710,712が、酸素及び窒素のような大気ガスから溶接ステップ730を保護する。好適なシールドガス710,712としては、特に限定されないが、アルゴン、ヘリウム、水素及びそれらの混合物が挙げられる。
【0018】
いうまでもなく、ルート開口部310に堆積させる金属フィラーは、部品の材料を始めとする多くの要因に応じて変化する。好適な金属フィラーとしては、特に限定されないが、ニッケル合金、ステンレス鋼、低合金鋼、高合金鋼及びそれらの混合物が挙げられる。
【0019】
部品自体の組成に関しては、多くの材料を採用することができること、それら材料は、例えば部品又は最終装置の用途に応じて変化することは、当業者には自明であろう。従って、場合によっては、部品自体は、異なる材料を含むことができる。このことは、例えば変化する温度の蒸気が異なる部品に接触するような蒸気タービンロータで使用する部品の場合には、よくあるケースである。そのようなケースでは、各部品の材料を部品が曝される蒸気の温度に基づいて選択し、それによって熱膨張のような要因を制御するようにするのが望ましいと言える。部品が独立に含むことができる材料の非限定的な具体例としては、例えばステンレス鋼、炭素鋼、ニッケル合金、低合金鋼、高合金鋼及びそれらの混合物が挙げられる。
【0020】
図5は、本発明の別の実施形態を示しており、この実施形態では、ルート開口部610は、それぞれ第1の部品400及び第2の部品500の内表面414,514に沿って開口している。つまり、ルート開口部610は、それぞれ第1の部品400及び第2の部品500のボア450,550内に開口している。従って、ルート開口部610内における接合部600に溶接部を形成するステップは、1つ又は両方のボア450,550に溶接装置を通すことを必要とする。図4に示す実施形態におけるのと同様に、複数の溶接ヘッドを使用して略横向姿勢で溶接するステップが、実施可能になる。
【0021】
図6は、本発明の実施形態による方法の流れ図を示す。ブロックAにおいて、第1の部品100及び第2の部品200(図4)が整列して、第1の部品100の合せ面120(図1)上の突出部122(図1)が第2の部品200の合せ面220(図1)上の陥凹部222(図1)内に位置するようになる。それによって、ルート開口部310(図2)が、第1の部品100及び第2の部品200の凹面130,230(図2)によって形成される。ブロックBにおいて、第1の部品100と第2の部品200は、それらの長手方向軸線140,240がそれぞれ略垂直になりかつそれらの半径方向軸線142,144及び242,244が略水平になるように配向される。当業者には自明であろうが、ブロックAの整列ステップ及びブロックBの配向ステップは、いずれかの順序又は一緒に実行することができる。つまり本発明の幾つかの実施形態では、第1の部品100及び第2の部品200は、最初に互いに整列させ、次いでそれらの長手方向及び半径方向軸線が説明したように配向されるように配向することができる。本発明の他の実施形態では、第1の部品100及び第2の部品200は、最初にそれらの長手方向及び半径方向軸線が説明したように配向されるように配向し、次いで互いに整列させることができる。本発明のさらに他の実施形態では、第1の部品100及び第2の部品200の整列と配向を同時に行ってもよい。
【0022】
ブロックCにおいて、ルート開口部310内に、任意選択的に金属フィラーを導入することができる。そのようなケースでは、金属フィラーは、ブロックDにおいて任意選択的にその融点まで加熱する(熱線溶接法)ことができる。
【0023】
最後に、ブロックEにおいて、第1の部品100及び第2の部品200は、ルート開口部310に沿って溶接730される(図4)。上述したように、ブロックEにおける溶接するステップは、略水平方向に行うことができ、GTAW方法を含むことができ、複数の溶接ヘッド700,702(図4)によって同時に溶接するステップを含むことができる。
【0024】
本明細書で使用する用語は、特定の実施形態を説明することのみを目的とするものであり、本開示を限定することを意図するものではない。本明細書で使用する場合に、数詞を付していない表現は、文脈がそうでないことを明確に示していない限り、複数の形態もまた含むことを意図している。さらに、本明細書で使用する場合の「含む」及び/又は「含んでいる」という用語は、記述した特徴、回数、ステップ、操作、要素及び/又は構成部品の存在を特定するが、その他の特徴、回数、ステップ、操作、要素、構成部品及び/或いはそれらの群の存在又は付加を排除するものではないことを理解されたい。
【0025】
本明細書は最良の形態を含む実施例を使用して、本発明を開示し、当業者が、あらゆる装置又はシステムを製作しかつ使用しまたあらゆる関連又は組込み方法を実行することを含む本発明の実施を行うことを可能にもする。本発明の特許性がある技術的範囲は、特許請求の範囲により定めており、当業者が想到するその他の実施例を含むことができる。そのようなその他の実施例は、それらが特許請求の範囲の文言と相違しない構造的要素を含むか又はそれらが特許請求の範囲の文言と本質的でない相違を有する均等な構造的要素を含む場合には、特許請求の範囲の技術的範囲に属する。
【符号の説明】
【0026】
100,400 第1の部品
110,410 本体
112,412 外表面
114,414 内表面
120 合せ面
122 突出部
130 凹面
140,440 長手方向軸線
142,144,442,444 半径方向軸線
150,450 ボア
200,500 第2の部品
210,510 本体
212,512 外表面
214,514 内表面
220 合せ面
222 陥凹部
230 凹面
240,540 長手方向軸線
242,244,542,544 半径方向軸線
250,550 ボア
300,600 接合部
310,610 ルート開口部
320 水平面
330 オフセット
700,702 溶接ヘッド
710,712 シールドガス
720 フィラーロッド
730 溶接するステップ
740 溶接部
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つの部品間に溶接接合部を形成する方法であって、
主軸線(140,240)と該主軸線に直角な複数の半径方向軸線(142,144,242,244)を有する略円筒形の又は管状の本体(110,210)を各々含む第1の部品(100)と第2の部品(200)を整列させて、第1の部品(100)と第2の部品(200)の間に、第1の部品(100)の突出部(122)と第2の部品(200)の陥凹部(222)とを含む接合部(300)であって、突出部(122)と陥凹部(222)とが相補的な形状を有する接合部(300)を形成するとともに、接合部(300)から対向して延在する第1の部品(100)の第1の凹面(130)と第2の部品(200)の第2の凹面(230)とによって、第1及び第2の部品(100,200)の半径方向軸線(142,144,242,244)と略平行に配向したルート開口部(310)であって、第1の凹面(130)及び第2の凹面(230)の各々が、第1及び第2の部品(100,200)の内表面(114,214)に位置する接合部(300)から離れる方向に延びて半径方向軸線(142,144,242,244)と略平行な側面を形成して、第1及び第2の部品(100,200)の外表面(112,212)に沿って開口したルート開口部(310)を形成するステップと、
各々の主軸線(140,240)が垂直に配向し、もってルート開口部(310)が略水平に配向するように第1の部品(100)と第2の部品(200)を配向させるステップと、
前記接合部(300)に沿って位置する略水平配向ルート開口部(310)で第1の部品(100)と第2の部品(200)を溶接するステップ(730)であって、前記溶接ステップが、前記略水平配向ルート開口部(310)内に形成される溶融池に導入する前に金属フィラーをその融点に近い温度に予加熱する熱線ガスタングステンアーク溶接(GTAW)を含むステップと
を含む方法。
【請求項2】
前記溶接ステップ(730)が、前記略水平配向ルート開口部(310)に沿って溶接することを含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記溶接ステップ(730)が、複数の溶接ヘッド(700,702)を使用して同時に溶接することを含む、請求項1又は請求項2記載の方法。
【請求項4】
(削除)
【請求項5】
前記GTAWが、アルゴン、ヘリウム、水素及びそれらの混合物からなる群から選択されるシールドガス(710,712)を使用する、請求項1乃至請求項3のいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
(削除)
【請求項7】
前記金属フィラー(720)が、ニッケル合金、ステンレス鋼、低合金鋼、高合金鋼及びそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1乃至請求項3又は請求項5のいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
(削除)
【請求項9】
第1の部品(100)が第1の材料を含み、第2の部品(200)が第1の材料とは異なる第2の材料を含む、請求項1乃至請求項3、請求項5又は請求項7のいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
第1の部品(100)と第2の部品(200)が各々独立に、ステンレス鋼、炭素鋼、ニッケル合金、低合金鋼、高合金鋼及びそれらの混合物からなる群から選択される1種以上の材料を含む、請求項1乃至請求項3、請求項5又は請求項7のいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
第1の部品(100)が、ボア(150)を有する略円筒形の第1の本体(110)と、第1の本体(110)の表面に沿った第1の合せ面(120)であって突出部(122)を備える第1の合せ面(120)と、第1の合せ面(120)から第1の本体に向かって延在する第1の凹面(130)とを有していて、第2の部品(200)が、ボア(250)を有する略円筒形の第2の本体(210)と、第2の本体(210)の表面に沿った第2の合せ面(220)であって第1の合せ面(120)の突出部(122)の形状と相補的な形状の陥凹部(222)を備える第2の合せ面(220)と、第2の合せ面(220)から第2の本体に向かって延在する第2の凹面(230)とを有しており、前記接合部(300)が第1の合せ面(120)と第2の合せ面(220)とによって形成される、請求項1乃至請求項3、請求項5、請求項7、請求項9又は請求項10のいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
前記接合部(300)が、略水平配向ルート開口部(310)の中心からオフセット(330)している、請求項11記載の方法。
【請求項13】
(削除)
【請求項14】
(削除)
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2018-03-13 
出願番号 特願2011-25524(P2011-25524)
審決分類 P 1 651・ 121- ZAA (B23K)
P 1 651・ 537- ZAA (B23K)
P 1 651・ 113- ZAA (B23K)
最終処分 取消  
前審関与審査官 山崎 孔徳  
特許庁審判長 西村 泰英
特許庁審判官 栗田 雅弘
平岩 正一
登録日 2015-11-13 
登録番号 特許第5835904号(P5835904)
権利者 ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ
発明の名称 横向溶接法及びそのための接合構造  
代理人 荒川 聡志  
代理人 田中 拓人  
代理人 小倉 博  
代理人 田中 拓人  
代理人 荒川 聡志  
代理人 黒川 俊久  
代理人 黒川 俊久  
代理人 小倉 博  

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