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審決分類 |
審判 一部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 D06M 審判 一部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備 D06M |
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管理番号 | 1343892 |
異議申立番号 | 異議2017-701192 |
総通号数 | 226 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2018-10-26 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2017-12-14 |
確定日 | 2018-08-13 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第6145584号発明「凹凸意匠を有する布帛およびその製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第6145584号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-8〕、9、10について訂正することを認める。 特許第6145584号の請求項1?8に係る特許を維持する。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本件特許第6145584号(以下「本件特許」という。)の請求項1?10に係る特許についての出願は、平成27年12月10日(優先権主張 平成26年12月15日 日本国)を国際出願日とする出願であって、平成29年5月19日付けでその特許権の設定登録がされ、その後、特許異議の申立て期間内である平成29年12月14日に特許異議申立人成田忍(以下「申立人」という。)により請求項1?8に係る特許に対して特許異議の申立てがされ、平成30年3月12日付けで取消理由が通知され、その指定期間内である平成30年5月8日に意見書の提出及び訂正の請求がされたものである。 なお、特許権者による訂正の請求について、申立人に意見を提出する機会を与えたが、申立人からの意見書の提出はなかった。 第2 訂正の請求 1 訂正の内容 平成30年5月8日付け訂正請求書による訂正の請求は、「特許第6145584号の特許請求の範囲を、本訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1?10について訂正する」ことを求めるものであり、その訂正(以下「本件訂正」という。)の内容は、本件特許に係る願書に添付した特許請求の範囲を、次のように訂正するものである(下線は、訂正箇所を示す)。 (1) 訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に 「繊維からなる布帛の表面側の少なくとも一部にポリウレタン樹脂塗布部を有し、前記ポリウレタン樹脂塗布部に賦型された凹凸意匠を有する布帛であって、」と記載されているのを、 「繊維からなる布帛の表面側の少なくとも一部にポリウレタン樹脂塗布部を有し、前記ポリウレタン樹脂塗布部に賦型された凹凸意匠を有する布帛であって、 前記繊維からなる布帛が織物又は編物であり、」に訂正する。 請求項1の記載を引用する請求項2?8も同様に訂正する。 (2) 訂正事項2 特許請求の範囲の請求項9に 「前記ポリウレタン樹脂を塗布する対象の布帛が織物であり、前記織物は、前記凹凸意匠を付与する領域において、単位体積1mm^(3)当たりの繊度の合計が2500?5800dtexである、請求項8に記載の布帛の製造方法。」と記載されているのを、 「繊維からなる布帛の表面側の少なくとも一部にポリウレタン樹脂塗布部を有し、前記ポリウレタン樹脂塗布部に賦型された凹凸意匠を有する布帛であって、 前記ポリウレタン樹脂塗布部は、塗布されたポリウレタン樹脂が存在する領域であって、ポリウレタン樹脂が布帛の少なくとも表面部における繊維間に浸透してポリウレタン樹脂と繊維とにより布帛表面が形成されており、 前記ポリウレタン樹脂塗布部は、ポリウレタン樹脂の付与深さが50?200μmで、且つ、ポリウレタン樹脂の充填率が15?45%で、且つ、繊維の充填率が50?80%である、布帛の製造方法であって、 布帛の表面側の少なくとも一部にポリウレタン樹脂を塗布した後、ポリウレタン樹脂塗布部にエンボス加工にて凹凸意匠を賦型する、布帛の製造方法であり、 前記ポリウレタン樹脂を塗布する対象の布帛が織物であり、前記織物は、前記凹凸意匠を付与する領域において、単位体積1mm^(3)当たりの繊度の合計が2500?5800dtexである、布帛の製造方法。」に訂正する。 (3) 訂正事項3 特許請求の範囲の請求項10に 「前記ポリウレタン樹脂を塗布する対象の布帛が編物であり、前記編物は、前記凹凸意匠を付与する領域において、単位体積1mm^(3)当たりの繊度の合計が1000?5800dtexである、請求項8に記載の布帛の製造方法。」と記載されているのを、 「繊維からなる布帛の表面側の少なくとも一部にポリウレタン樹脂塗布部を有し、前記ポリウレタン樹脂塗布部に賦型された凹凸意匠を有する布帛であって、 前記ポリウレタン樹脂塗布部は、塗布されたポリウレタン樹脂が存在する領域であって、ポリウレタン樹脂が布帛の少なくとも表面部における繊維間に浸透してポリウレタン樹脂と繊維とにより布帛表面が形成されており、 前記ポリウレタン樹脂塗布部は、ポリウレタン樹脂の付与深さが50?200μmで、且つ、ポリウレタン樹脂の充填率が15?45%で、且つ、繊維の充填率が50?80%である、布帛の製造方法であって、 布帛の表面側の少なくとも一部にポリウレタン樹脂を塗布した後、ポリウレタン樹脂塗布部にエンボス加工にて凹凸意匠を賦型する、布帛の製迭方法であり、 前記ポリウレタン樹脂を塗布する対象の布帛が編物であり、前記編物は、前記凹凸意匠を付与する領域において、単位体積1mm^(3)当たりの繊度の合計が1000?5800dtexである、布帛の製造方法。」に訂正する。 2 訂正の適否 (1) 訂正事項1について ア 訂正の目的について 訂正事項1は、訂正前の請求項1に係る発明の「繊維からなる布帛」について、「前記繊維からなる布帛が織物又は編物であり、」との記載により、繊維からなる布帛の種類を織物又は編物に特定し、限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 同様に、訂正事項1は、訂正後の請求項1を引用する訂正後の請求項2?8についても上記のとおり減縮しようとするものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと 上記アの理由から明らかなように、訂正事項1は、「繊維からなる布帛」という発明特定事項を「織物又は編物」に特定するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、また、訂正後の請求項1を引用する訂正後の請求項2?8に記載された発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものでもない。 よって、訂正事項1は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合する。 ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 訂正事項1は、願書に添付した明細書の「本実施形態に用いられる処理対象としての布帛、即ち、ポリウレタン樹脂を塗布する対象の布帛は、基布ないし生地とも称される。このような布帛としては特に限定されるものではなく、例えば、織物、編物、不織布など公知の布帛を挙げることができる。」(【0015】)という記載、「基布としての布帛は、織物の場合、」(【0019】)という記載、及び、「基布としての布帛は、編物の場合、」(【0022】)という記載に基づくものである。 よって、訂正事項1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する特許法第126条第5項に適合する。 (2) 訂正事項2について ア 訂正の目的について 訂正事項2は、訂正前の請求項9の記載が訂正前の請求項8の記載を引用する記載であったものを、請求項間の引用関係を解消し、請求項8の記載を引用しないものとし、独立形式請求項へ改めるための訂正であって、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とする訂正である。 イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと、及び、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内であること 訂正事項2は、何ら実質的な内容の変更を伴うものではないから、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第5項及び第6項に適合するものである。 ウ 特許出願の際に独立して特許を受けることができること 訂正事項2は、特許異議の申立てがされていない請求項9に係る訂正であるが、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とする訂正であるため、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項の独立特許要件は課されない。 (3) 訂正事項3について ア 訂正の目的について 訂正事項3は、訂正前の請求項10の記載が訂正前の請求項8の記載を引用する記載であったものを、請求項間の引用関係を解消し、請求項8の記載を引用しないものとし、独立形式請求項へ改めるための訂正であって、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とする訂正である。 イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと、及び、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内であること 訂正事項3は、何ら実質的な内容の変更を伴うものではないから、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第5項及び第6項に適合するものである。 ウ 特許出願の際に独立して特許を受けることができること 訂正事項3は、特許異議の申立てがされていない請求項10に係る訂正であるが、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とする訂正であるため、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項の独立特許要件は課されない。 (4) 一群の請求項、別の訂正単位とする求めについて 訂正事項1に係る訂正前の請求項1?8について、請求項2?8は請求項1を引用するものであって、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。したがって、訂正前の請求項1?8は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。 また、訂正事項2及び3に係る訂正前の請求項9及び10については、特許権者から、訂正後の請求項9及び10について訂正が認められるときは一群の請求項〔1-8〕とは別の訂正単位として扱われることの求めがあったことから、訂正後の請求項9及び10については請求項ごとに訂正されたものとする。 3 まとめ 以上のとおり、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号又は第4号に掲げる事項を目的とし、同条第4項並びに同条第9項の規定によって準用する第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項〔1-8〕、9、10について訂正することを認める。 第3 本件特許発明 上記のとおり本件訂正が認められるから、本件特許の請求項1?10に係る発明(以下「本件発明1?10」という。また、これらをまとめて「本件発明」ということもある。)は、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1?10に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、本件特許異議の申立ての対象とされた本件発明1?8は、次のとおりのものである。 【請求項1】 繊維からなる布帛の表面側の少なくとも一部にポリウレタン樹脂塗布部を有し、前記ポリウレタン樹脂塗布部に賦型された凹凸意匠を有する布帛であって、 前記繊維からなる布帛が織物又は編物であり、 前記ポリウレタン樹脂塗布部は、塗布されたポリウレタン樹脂が存在する領域であって、ポリウレタン樹脂が布帛の少なくとも表面部における繊維間に浸透してポリウレタン樹脂と繊維とにより布帛表面が形成されており、 前記ポリウレタン樹脂塗布部は、ポリウレタン樹脂の付与深さが50?200μmで、且つ、ポリウレタン樹脂の充填率が15?45%で、且つ、繊維の充填率が50?80%である、布帛。 【請求項2】 前記ポリウレタン樹脂塗布部における空隙率が13%以下である、請求項1に記載の布帛。 【請求項3】 前記ポリウレタン樹脂塗布部における繊維断面の外周長の和が、単位面積10000μm^(2)当たり1500μm以上である、請求項1または2に記載の布帛。 【請求項4】 前記ポリウレタン樹脂塗布部におけるポリウレタン樹脂の断面積100μm^(2)当たりの繊維の本数が1.5本以上である、請求項1?3のいずれか1項に記載の布帛。 【請求項5】 前記ポリウレタン樹脂塗布部は、ポリウレタン樹脂の付与深さが50?100μmで、且つ、ポリウレタン樹脂の充填率が20?35%で、且つ、繊維の充填率が55?75%である、請求項1?4のいずれか1項に記載の布帛。 【請求項6】 前記凹凸意匠を有する布帛の厚みに対する前記ポリウレタン樹脂の付与深さの比が3?30%である、請求項1?5のいずれか1項に記載の布帛。 【請求項7】 前記凹凸意匠を構成する凹部の幅が200?1500μmであり、且つ該凹部の深さの最大値が20?450μmである、請求項1?6のいずれか1項に記載の布帛。 【請求項8】 請求項1?7のいずれか一項に記載の布帛の製造方法であって、 布帛の表面側の少なくとも一部にポリウレタン樹脂を塗布した後、ポリウレタン樹脂塗布部にエンボス加工にて凹凸意匠を賦型する、布帛の製造方法。 第4 取消理由について 1 平成30年3月12日付け取消理由の概要は以下のとおりである。 [理由1] 本件特許は、明細書の発明の詳細な説明の記載について下記の点で、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。 [理由2] 本件特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。 記 理由1について 本件発明1?8は、「繊維からなる布帛」を構成要件とするが、本件特許明細書の発明の詳細な説明には、「繊維からなる布帛」に含まれる一部の下位概念である「織物及び編物」についての実施の形態が記載されるのみで、当該実施の形態の記載のみでは、当業者が明細書及び図面の記載並びに出願時の技術常識に基づいて、「織物及び編物」以外の「繊維からなる布帛」について実施をすることができない。 したがって、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載は、本件発明1?8について、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであるとはいえない。 理由2について 本件発明1?8の課題は、本件特許明細書の発明の詳細な説明の【0006】に記載された、「微細で且つ耐屈曲性および耐摩耗性を有する凹凸意匠が付与された布帛を提供すること」にあると解されるところ、本件発明1?8の「繊維からなる布帛」という構成に関しては、「繊維からなる布帛」の一部の下位概念である「織物及び編物」を用いた場合の実施の形態が記載されるのみであり、かつ、当該課題を解決することができたことが実施例により裏付けられているものは、当該「織物及び編物」についてのみであって、「織物及び編物」以外の「繊維からなる布帛」についてまで上記課題を解決することができることの裏付けはない。 よって、「織物及び編物」以外の「繊維からなる布帛」を含み得る本件発明1?8の範囲まで、発明の詳細な説明に示された内容を拡張ないし一般化できるとすることはできないから、本件発明1?8に係る請求項1?8の記載は、特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものであるとはいえない。 2 取消理由についての判断 (1) 理由1について 上記第2のとおり、本件訂正が認められることにより、本件発明1?8は、「繊維からなる布帛が織物又は編物」であることに特定された。 そして、「繊維からなる布帛」が「織物」である場合については、本件特許明細書の発明の詳細な説明の【0019】?【0021】に記載されており、また、「繊維からなる布帛」が「編物」である場合については、同【0022】?【0027】に記載されており、かつ、同【0060】?【0082】並びに【0105】?【0107】の表1?3に示された実施例1?7についての記載から、「繊維からなる布帛が織物又は編物」である場合について、本件発明1?8に係る布帛を製造できることが示されている。 そうすると、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載は、本件発明1?8について、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであるといえるから、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていないとすることはできない。 よって、本件発明1?8に係る特許は、特許法第113条第4号に該当することを理由に取り消されるべきものとすることはできない。 (2) 理由2について 上記第2のとおり、本件訂正が認められることにより、本件発明1?8は、「繊維からなる布帛が織物又は編物」であることに特定された。 そして、「繊維からなる布帛が織物又は編み物」である本件発明1?8が、「微細で且つ耐屈曲性および耐摩耗性を有する凹凸意匠が付与された布帛を提供する」(【0006】)という課題を解決できると当業者が認識できるものであることは、本件特許明細書の発明の詳細な説明の【0056】?【0107】の表1?3に示された実施例1?7の記載により裏付けられている。 そうすると、本件発明1?8に係る請求項1?8の記載は、特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものであるといえるから、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていないとすることはできない。 よって、本件発明1?8に係る特許は、特許法第113条第4号に該当することを理由に取り消されるべきものとすることはできない。 第5 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について 1 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由の概要 [理由3] 特許法第36条第6項第2号違反(特許異議申立書3頁下から13行?4頁9行) 本件発明1?8の「繊維からなる布帛」について、本件特許明細書の発明の詳細な説明には、「布帛としては特に限定されるものではなく、例えば、織物、編物、不織布など公知の布帛を挙げることができる」(【0015】)と定義されているが、「織物、編物、不織布など」の「など」がどのような「公知の布帛」を含むのか、その外延が不明確である。よって、本件発明1?8に係る「繊維からなる布帛」という記載は、「織物、編物、不織布」以外にいかなる「公知の布帛」が含まれるのか不明確であり、技術常識を考慮しても当業者が理解できず、不明確である。 2 上記特許異議申立理由についての判断 上記第2のとおり、本件訂正が認められることにより、本件発明1?8は、「繊維からなる布帛が織物又は編物」であることに特定され、「繊維からなる布帛」の範囲が明確にされた。 よって、本件発明1?8に係る請求項1?8の記載は、特許を受けようとする発明が明確であるといえるから、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないとすることはできない。 よって、本件発明1?8に係る特許は、特許法第113条第4号に該当することを理由に取り消されるべきものとすることはできない。 第6 むすび 以上のとおり、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件発明1?8に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件発明1?8に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 繊維からなる布帛の表面側の少なくとも一部にポリウレタン樹脂塗布部を有し、前記ポリウレタン樹脂塗布部に賦型された凹凸意匠を有する布帛であって、 前記繊維からなる布帛が織物又は編物であり、 前記ポリウレタン樹脂塗布部は、塗布されたポリウレタン樹脂が存在する領域であって、ポリウレタン樹脂が布帛の少なくとも表面部における繊維間に浸透してポリウレタン樹脂と繊維とにより布帛表面が形成されており、 前記ポリウレタン樹脂塗布部は、ポリウレタン樹脂の付与深さが50?200μmで、且つ、ポリウレタン樹脂の充填率が15?45%で、且つ、繊維の充填率が50?80%である、布帛。 【請求項2】 前記ポリウレタン樹脂塗布部における空隙率が13%以下である、請求項1に記載の布帛。 【請求項3】 前記ポリウレタン樹脂塗布部における繊維断面の外周長の和が、単位面積10000μm^(2)当たり1500μm以上である、請求項1または2に記載の布帛。 【請求項4】 前記ポリウレタン樹脂塗布部におけるポリウレタン樹脂の断面積100μm^(2)当たりの繊維の本数が1.5本以上である、請求項1?3のいずれか1項に記載の布帛。 【請求項5】 前記ポリウレタン樹脂塗布部は、ポリウレタン樹脂の付与深さが50?100μmで、且つ、ポリウレタン樹脂の充填率が20?35%で、且つ、繊維の充填率が55?75%である、請求項1?4のいずれか1項に記載の布帛。 【請求項6】 前記凹凸意匠を有する布帛の厚みに対する前記ポリウレタン樹脂の付与深さの比が3?30%である、請求項1?5のいずれか1項に記載の布帛。 【請求項7】 前記凹凸意匠を構成する凹部の幅が200?1500μmであり、且つ該凹部の深さの最大値が20?450μmである、請求項1?6のいずれか1項に記載の布帛。 【請求項8】 請求項1?7のいずれか一項に記載の布帛の製造方法であって、 布帛の表面側の少なくとも一部にポリウレタン樹脂を塗布した後、ポリウレタン樹脂塗布部にエンボス加工にて凹凸意匠を賦型する、布帛の製造方法。 【請求項9】 繊維からなる布帛の表面側の少なくとも一部にポリウレタン樹脂塗布部を有し、前記ポリウレタン樹脂塗布部に賦型された凹凸意匠を有する布帛であって、 前記ポリウレタン樹脂塗布部は、塗布されたポリウレタン樹脂が存在する領域であって、ポリウレタン樹脂が布帛の少なくとも表面部における繊維間に浸透してポリウレタン樹脂と繊維とにより布帛表面が形成されており、 前記ポリウレタン樹脂塗布部は、ポリウレタン樹脂の付与深さが50?200μmで、且つ、ポリウレタン樹脂の充填率が15?45%で、且つ、繊維の充填率が50?80%である、布帛の製造方法であって、 布帛の表面側の少なくとも一部にポリウレタン樹脂を塗布した後、ポリウレタン樹脂塗布部にエンボス加工にて凹凸意匠を賦型する、布帛の製造方法であり、 前記ポリウレタン樹脂を塗布する対象の布帛が織物であり、前記織物は、前記凹凸意匠を付与する領域において、単位体積1mm^(3)当たりの繊度の合計が2500?5800dtexである、布帛の製造方法。 【請求項10】 繊維からなる布帛の表面側の少なくとも一部にポリウレタン樹脂塗布部を有し、前記ポリウレタン樹脂塗布部に賦型された凹凸意匠を有する布帛であって、 前記ポリウレタン樹脂塗布部は、塗布されたポリウレタン樹脂が存在する領域であって、ポリウレタン樹脂が布帛の少なくとも表面部における繊維間に浸透してポリウレタン樹脂と繊維とにより布帛表面が形成されており、 前記ポリウレタン樹脂塗布部は、ポリウレタン樹脂の付与深さが50?200μmで、且つ、ポリウレタン樹脂の充填率が15?45%で、且つ、繊維の充填率が50?80%である、布帛の製造方法であって、 布帛の表面側の少なくとも一部にポリウレタン樹脂を塗布した後、ポリウレタン樹脂塗布部にエンボス加工にて凹凸意匠を賦型する、布帛の製造方法であり、 前記ポリウレタン樹脂を塗布する対象の布帛が編物であり、前記編物は、前記凹凸意匠を付与する領域において、単位体積1mm^(3)当たりの繊度の合計が1000?5800dtexである、布帛の製造方法。 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
異議決定日 | 2018-08-02 |
出願番号 | 特願2016-564679(P2016-564679) |
審決分類 |
P
1
652・
536-
YAA
(D06M)
P 1 652・ 537- YAA (D06M) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 斎藤 克也 |
特許庁審判長 |
井上 茂夫 |
特許庁審判官 |
千壽 哲郎 門前 浩一 |
登録日 | 2017-05-19 |
登録番号 | 特許第6145584号(P6145584) |
権利者 | セーレン株式会社 |
発明の名称 | 凹凸意匠を有する布帛およびその製造方法 |
代理人 | 前澤 龍 |
代理人 | 水鳥 正裕 |
代理人 | 中村 哲士 |
代理人 | 中村 哲士 |
代理人 | 蔦田 璋子 |
代理人 | 有近 康臣 |
代理人 | 蔦田 璋子 |
代理人 | 有近 康臣 |
代理人 | 富田 克幸 |
代理人 | 富田 克幸 |
代理人 | 前澤 龍 |
代理人 | 蔦田 正人 |
代理人 | 水鳥 正裕 |
代理人 | 蔦田 正人 |