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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  F24F
管理番号 1343901
異議申立番号 異議2017-701114  
総通号数 226 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2018-10-26 
種別 異議の決定 
異議申立日 2017-11-27 
確定日 2018-08-13 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6140102号発明「空気調和装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6140102号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1、2〕について訂正することを認める。 特許第6140102号の請求項1及び2に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯の概略
特許第6140102号の請求項1及び2に係る特許(以下「本件特許」という。)についての手続の経緯は、概ね、次のとおりである。
本願は、平成11年7月9日に出願した特願平11-195415号の一部を順次分割して、平成26年5月9日に新たな特許出願としたものであって、平成29年5月12日に特許権の設定登録がされ、平成29年5月31日に特許掲載公報が発行された。
これに対し、平成29年11月27日に特許異議申立人松田亘弘(以下「申立人」という。)より特許異議の申立てがなされ、平成30年1月31日付けで取消理由が通知され、特許権者より平成30年3月30日付け意見書及び訂正請求書が提出され、申立人より平成30年7月17日付け意見書が提出された。
以下、平成30年3月30日付けの訂正請求書を「本件訂正請求書」といい、これに係る訂正を「本件訂正」という。

第2 本件訂正の適否
1 本件訂正の内容
本件訂正の請求は、本件特許の特許請求の範囲を、本件訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1及び2について訂正することを求めるものであって、その訂正の内容は次のとおりである。
特許請求の範囲の請求項1に、「ボタンと、を備え、」と記載されているのを、「ボタンと、電池を収納する電池収納部と、を備え、」に訂正する。
2 本件訂正の適否について
前記訂正事項は,本件訂正後の請求項1に係る発明の「遠隔操作装置」について、「電池を収納する電池収納部」を備えることを特定し、その範囲を更に限定するものであるから本件訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものと認められる。
そして、本件特許明細書には、「前記上カバー401には、前記使用頻度が低い操作ボタン351?365を配置するための複数の開口部410と、前記表示部320を配置するための開口部420とを備えている。また前記上カバー401の下方には、電池を収納する電池収納部430を備え、図10で示す電池蓋700により、前記電池収納部430をカバーしている。前記電池蓋700は、爪710を前記下カバー402の爪取付部440に嵌合させることで前記下カバー402に取り付けられ、前記電池収納部430をカバーしている。」(【0098】)と記載されているから、前記訂正事項は、新規事項を追加するものではなく、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
以上のとおりであるから、本件訂正は特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる事項を目的とするものであって、同条9項において準用する同法126条5項及び6項の規定に適合するので、訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1、2〕について訂正することを認める。

第3 本件発明
前記第2のとおり、本件訂正は認められるから、本件特許の請求項1及び2に係る発明は、訂正特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項により特定される次のとおりのものである。以下、本件特許に係る発明を請求項の番号に従って「本件発明1」などといい、総称して「本件発明」という。
【請求項1】
冷房運転、暖房運転及び除湿運転が可能な空気調和機と、前記空気調和機に対して運転を指示する遠隔操作装置と、を備えた空気調和装置であって、
前記空気調和機には室内温度を検出する室内温度検出手段及び室内湿度を検出する室内湿度検出手段とを備え、
前記遠隔操作装置は、
前記空気調和機の運転ON指示がされていない状態においても操作することで前記室内温度検出手段及び前記室内湿度検出手段で検出した前記室内温度や前記室内湿度を前記遠隔操作装置の表示部に表示するように指示することができる表示指示ボタンと、
冷房運転を直接開始できる冷房運転指示ボタンと、
暖房運転を直接開始できる暖房運転指示ボタンと、
室温と湿度を設定された温度と湿度に調整する除湿運転を直接開始できる除湿運転指示ボタンと、
電池を収納する電池収納部と、を備え、
前記冷房運転指示ボタン、前記暖房運転指示ボタン及び前記除湿運転指示ボタンは運転開始機能を有することを特徴とする空気調和装置。
【請求項2】
請求項1において、前記遠隔操作装置は、
前記冷房運転、暖房運転及び除湿運転の運転を停止させる停止ボタンを備えた空気調和装置。

第4 取消理由についての判断
1 取消理由の概要
本件訂正前の本件特許に対し通知した取消理由は、概ね、次のとおりである。なお、当該取消理由は、特許異議申立書に記載した特許異議申立理由を全て含んでいる。
本件特許の特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された発明は、その出願前日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、その発明に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。

証拠
甲第1号証 特開平9-196441号公報
甲第2号証 特開平10-61998号公報
甲第3号証 特開平6-189379号公報
甲第4号証 特開平8-296886号公報
甲第5号証 特開平9-210433号公報
甲第6号証 特開平9-42749号公報
甲第7号証 特開平9-154186号公報
甲第8号証 特開昭60-169042号公報

2 判断
a 甲第1号証に記載された事項
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、空気調和機と床暖房機とから成る空気調和装置に関するものである。」
「【0014】図2に示す如く室内機2を構成する鋼板製のフレーム6の前面には、利用側熱交換器7が取り付けられており、この熱交換器7は冷房用熱交換器7Aと温水用熱交換器7Bとから構成されている。・・・
【0015】・・・また、熱交換器7の前面向かって右側には、室内の温度、湿度を検出する室温センサ18と湿度センサ19が取り付けられ、更に、温水熱交換器7Bの温度を検出する温水熱交換器センサ17も取り付けられている。」
「【0027】次に、制御手段を構成する図3のリモコン5の構成、及び、図6のフローチャートを参照しながら空気調和装置ACの動作を説明していく。リモコン5には液晶から構成された表示手段としての液晶表示部71とスイッチ部72とから構成されており、これらは図示しないリモコン側のマイクロコンピュータに接続されて制御される。更に、このマイクロコンピュータには図示しないリモコン側の室温センサ(体感センサ)、赤外線発光部なども接続されている。
【0028】スイッチ部72に設けられた73は空気調和機1の運転/停止キーであり、この運転/停止キー73のON・OFF操作により、室内機2のコントロール基板22はそれに接続された各機器の運転・停止を行うと共に、室外機3に指令して室外機3側の各機器、及び、熱源機4の運転・停止を行う。
【0029】74、75は室温設定キーであり、これによって設定された設定温度Tsは液晶表示部71の右側にデジタル表示される。尚、室内温度Trは液晶表示部71の左側に並んでデジタル表示される。80はルーバー42の調整キーであり、79はクロスフローファン8による風量切替キー、82は静音運転キーである。
【0030】ここで、空気調和機1は冷房モード、暖房モード、ドライ(アメニティドライ)モード、自動運転(ニューロ自動)モードの四つのモードを有しており、このモードは冷暖切替キー76を押すことによってサイクル的(サイクリック)に切り換えることができる。尚、現在のモードは液晶表示部71の上端に表示される。」
「 図3


b 以上の記載からすると、甲第1号証には、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されているといえる。
(甲1発明)
「冷房モード、暖房モード、ドライモード、自動運転モードの四つのモードを有した空気調和機1において、室内機2を構成する鋼板製のフレーム6の前面には、利用側熱交換器7が取り付けられており、熱交換器7の前面向かって右側には、室内の温度、湿度を検出する室温センサ18と湿度センサ19が取り付けられ、リモコン5には液晶から構成された表示手段としての液晶表示部71とスイッチ部72とから構成されており、スイッチ部72には空気調和機1の運転/停止キー73が設けられ、この運転/停止キー73のON・OFF操作により、室内機2のコントロール基板22はそれに接続された各機器の運転・停止を行い、冷房モード、暖房モード、ドライモード、自動運転モードの四つのモードは、冷暖切替キー76を押すことによってサイクル的に切り換えることができ、室内温度Trは液晶表示部71の左側に並んでデジタル表示される空気調和機。」
c 本件発明1について
(ア) 対比
本件発明1と甲1発明とを、その有する機能に照らして対比すると、甲1発明の「空気調和機1」は、本件発明1の「空気調和装置」に相当する。
同様に甲1発明の「冷房モード」、「暖房モード」及び「ドライモード」は、本件発明1の「冷房運転」、「暖房運転」及び「除湿運転」に、それぞれ相当する。
同様に、甲1発明の「室内の温度」を「検出する室温センサ18」及び「室内の」「湿度を検出する」「湿度センサ19」は、本件発明1の「室内温度を検出する室内温度検出手段」及び「室内湿度を検出する室内湿度検出手段」に、それぞれ相当する。
同様に、甲1発明の「リモコン5」は、本件発明1の「遠隔操作装置」に相当する。
甲1発明の「リモコン5には液晶から構成された表示手段としての液晶表示部71」は、「室内温度Tr」を「デジタル表示」するから、本件発明1の「空気調和機の運転ON指示がされていない状態においても操作することで前記室内温度検出手段及び前記室内湿度検出手段で検出した前記室内温度や前記室内湿度を前記遠隔操作装置の表示部に表示する」態様と「室内温度を遠隔操作装置の表示部に表示する」ことの限りにおいて一致する。
そうすると、両者は、
「冷房運転、暖房運転及び除湿運転が可能な空気調和機と、前記空気調和機に対して運転を指示する遠隔操作装置と、を備えた空気調和装置であって、
前記空気調和機には室内温度を検出する室内温度検出手段及び室内湿度を検出する室内湿度検出手段とを備え、
前記遠隔操作装置は、
前記室内温度検出手段で検出した前記室内温度を前記遠隔操作装置の表示部に表示することができる空気調和装置。」で一致し、少なくとも下記の点で相違する。
(相違点)
本件発明1は、「空気調和機の運転ON指示がされていない状態においても操作することで前記室内温度検出手段及び前記室内湿度検出手段で検出した前記室内温度や前記室内湿度を前記遠隔操作装置の表示部に表示するように指示することができる表示指示ボタン」を備えているのに対し、甲1発明は、そのような構成を備えていない点
(イ) 判断
前記相違点について検討するに、申立人が示した甲第1号証ないし甲第8号証には、「空気調和機の運転ON指示がされていない状態においても操作することで前記室内温度検出手段及び前記室内湿度検出手段で検出した前記室内温度や前記室内湿度を前記遠隔操作装置の表示部に表示するように指示することができる表示指示ボタン」を設けることを示唆する記載はない。
この点、申立人は、平成30年7月17日提出の意見書において、「甲第5号証や甲第6号証には、本件特許の請求項1に記載された発明の『前記空気調和機の運転ON指示がされていない状態においても操作することで前記室内温度検出手段及び前記室内湿度検出手段で検出した前記室内温度や前記室内湿度を前記遠隔操作装置の表示部に表示するように指示することができる表示指示ボタン』が開示されており、このような技術は周知慣用技術だといえる」と主張している(意見書6ページ)。
当該主張を検討すると、甲第5号証及び甲第6号証には、「図7において、前記したように、この実施例では運転停止状態において、表示部202に予め設定された自室の室内ユニット100aの運転設定情報が表示部202に表示され、更に他室の運転情報が運転状況エリア202fにモニタ表示されている。(ステップ1000)例えば、図3で示すように、自室の室内ユニット100aが、運転が暖房運転で、風速が自動で、設定温度が24度で、自室の現在の室温が18度で、自室、他室とも停止状態である旨、表示されている。この状態で、室内ユニット100とマルチワイヤレスリモコン200Xは、連続して、あるいは定期的に、あるいは操作の都度、送受信部106、206の間で双方向通信を行い他室の室内ユニット100bの運転状況をモニタして表示部202に表示している。」(甲第5号証の【0044】、甲第6号証の【0045】)との記載があり、当該記載によれば、空気調和機が運転停止状態においてマルチワイヤレスリモコンには、自室の室内ユニットの運転設定情報が表示されており、マルチワイヤレスリモコンの操作の都度表示される情報は、表示内容が切り換えられた他室の室内ユニットの情報であるから、申立人の主張は失当である。
これに対し、本件発明1は、前記相違点に係る構成を有することにより、「このおしえてボタン340を押すことにより、室内ユニット100の運転中における室内の温度や湿度、外気温を前記入手情報表示エリア320aに表示させることができる。これにより、常時、室内ユニット100とリモコン300との送受信を行うことなく、必要な時に送受信を行わせることができるので、リモコン300の消費電源を軽減することができる。」(本件特許明細書【0089】)
「 また、空気調和システムが運転していない時においても、おしえてボタン340を押すことで、室内ユニット100から入手した室温や湿度、室外ユニット200から入手した外気温を入手情報表示エリア320に表示させることができる。」(本件特許明細書【0090】)といった顕著な効果を奏するものである。
そうすると、甲1発明において、前記相違点に係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到できたものとは認められない。
以上のとおりであるから、本件発明1は、甲1発明及び甲第1号証ないし甲第8号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとは認められない。
ウ 本件発明2
本件発明2は、本件発明1を特定するための事項を全て含むものであるところ、既に述べたとおり、本件発明1は、甲1発明及び甲第1号証ないし甲第8号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとは認められない。
よって、その余の事項を検討するまでもなく、本件発明2は、同様の理由により、甲1発明及び甲第1号証ないし甲第8号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとは認められない。

第5 むすび
以上のとおり、本件の請求項1及び2に係る特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものとは認められないから、前記取消理由により取り消すことはできない。
また、他に本件の請求項1及び2に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷房運転、暖房運転及び除湿運転が可能な空気調和機と、前記空気調和機に対して運転を指示する遠隔操作装置と、を備えた空気調和装置であって、
前記空気調和機には室内温度を検出する室内温度検出手段及び室内湿度を検出する室内湿度検出手段とを備え、
前記遠隔操作装置は、
前記空気調和機の運転ON指示がされていない状態においても操作することで前記室内温度検出手段及び前記室内湿度検出手段で検出した前記室内温度や前記室内湿度を前記遠隔操作装置の表示部に表示するように指示することができる表示指示ボタンと、
冷房運転を直接開始できる冷房運転指示ボタンと、
暖房運転を直接開始できる暖房運転指示ボタンと、
室温と湿度を設定された温度と湿度に調整する除湿運転を直接開始できる除湿運転指示ボタンと、
電池を収納する電池収納部と、を備え、
前記冷房運転指示ボタン、前記暖房運転指示ボタン及び前記除湿運転指示ボタンは運転開始機能を有することを特徴とする空気調和装置。
【請求項2】
請求項1において、前記遠隔操作装置は、
前記冷房運転、暖房運転及び除湿運転の運転を停止させる停止ボタンを備えた空気調和装置。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2018-08-03 
出願番号 特願2014-97284(P2014-97284)
審決分類 P 1 651・ 121- YAA (F24F)
最終処分 維持  
前審関与審査官 西山 真二  
特許庁審判長 紀本 孝
特許庁審判官 槙原 進
莊司 英史
登録日 2017-05-12 
登録番号 特許第6140102号(P6140102)
権利者 日立ジョンソンコントロールズ空調株式会社
発明の名称 空気調和装置  
代理人 特許業務法人磯野国際特許商標事務所  
代理人 特許業務法人磯野国際特許商標事務所  

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