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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性  B65B
審判 全部無効 1項3号刊行物記載  B65B
審判 全部無効 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  B65B
管理番号 1344147
審判番号 無効2017-800089  
総通号数 227 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-11-30 
種別 無効の審決 
審判請求日 2017-07-10 
確定日 2018-08-06 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の特許第4194737号発明「薬剤分包用ロールペーパ」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 特許第4194737号の明細書を訂正請求書に添付された訂正明細書のとおり、訂正後の請求項〔1、2〕について訂正することを認める。 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 第1 手続の経緯
本件無効審判の請求に係る特許4194737号(以下「本件特許」という。)は、平成9年9月22日(優先権主張 平成8年9月20日 日本、平成9年9月19日 日本)に出願した特願平9-257175号の一部を、平成10年11月30日に新たな特許出願とした特願平10-340008号の一部を、平成12年2月10日に新たな特許出願とした特願2000-33185号の一部を、平成12年6月2日に新たな特許出願(特願2000-166273号、以下「本件特許出願」という。)としたものであって、平成20年10月3日に、その特許権の設定登録がされたものである。そして、その手続の概要は以下のとおりである。
平成8年9月20日 優先権主張基礎出願1出願
(特願平8-250492号)
平成9年9月19日 優先権主張基礎出願2出願
(特願平9-254891号)
平成12年6月2日 本件特許出願(特願2000-16627 3号)
平成20年10月3日 特許権の設定登録(特許第4194737 号)
平成22年9月8日 訂正審判の請求(訂正2010-3900 95号)
平成22年11月9日付け 訂正2010-390095号審決(請求 認容、確定)
平成29年7月10日 本件特許無効審判の請求(以下、本件特許 無効審判請求の審判請求書を「請求書」と いう。)
平成29年7月10日 請求人上申書の提出
平成29年10月6日 審判事件答弁書(以下「答弁書」という。 )の提出
平成29年10月6日 訂正の請求(以下「本件訂正請求」という 。また、訂正自体を「本件訂正」という。 )
平成29年11月27日付け 審理事項通知
平成30年1月12日 請求人口頭審理陳述要領書(以下「請求人 要領書(1)」という。)の提出
平成30年1月15日 被請求人口頭審理陳述要領書(以下「被請 求人要領書(1)」という。)の提出
平成30年1月25日付け 審理事項通知(2)
平成30年2月2日 請求人口頭審理陳述要領書(2)(以下「 請求人要領書(2)」という。)の提出
平成30年2月2日 被請求人口頭審理陳述要領書(2)(以下 「被請求人要領書(2)」という。)の提 出
平成30年2月9日 第1回口頭審理

以下、本審決において、記載箇所を行数により特定する場合は、空白行を含まない。また、「・・・」は記載の省略を意味し、証拠は、例えば甲第1号証を甲1のように略記する。さらに、甲1等に記載された発明あるいは事項を、それぞれ「甲1発明」、「甲1事項」等という。

第2 訂正の請求について
本件訂正は、確定した訂正2010-390095号審決により訂正された本件特許明細書を本件訂正請求に係る訂正請求書に添付した訂正明細書のとおり、訂正後の請求項1及び2について訂正することを求めるものであり、その訂正の内容は、訂正箇所に下線を引いて示すと、次のとおりである。
1.訂正の内容
(1)訂正事項1
本件特許明細書の特許請求の範囲の請求項1に「ロールペーパの回転角度を検出するために支持軸に角度センサを設け、」とあるのを、「ロールペーパの回転角度を検出するために支持軸の片端に角度センサを設け、」と訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2も同様に訂正する。)。

(2)訂正事項2
本件特許明細書の特許請求の範囲の請求項1に「その角度センサによる検出が可能な位置に磁石を配置し、」とあるのを、「その角度センサによる検出が可能な位置に複数の磁石を配置し、」と訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2も同様に訂正する。)。

2.訂正の適否
(1)訂正事項1について
訂正事項1は、ロールペーパの回転角度を検出するための角度センサを設ける位置について、本件訂正前の「支持軸」から、「支持軸の片端」へと限定事項を付加するものであるから、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に規定される特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そして、本件訂正前の本件特許明細書には、
「【0020】
13は中心軸1aの片端の軸ヘッド、14は外軸1bの片端のフランジ部である。中空軸1cの反対側端にもフランジ部15が設けられている。上記支持軸1に芯管Pとこれに巻回されたロールペーパRが装着されると、ロールペーパRは、支持軸1に中空軸1cを介して回転自在に支持されると共に、フランジ部15の内径面に適宜間隔に配置された複数個の磁石16とこれに対向して予め芯管Pの端面円周に沿って配設された強磁性体(鉄部)17に対する吸着力により、装着された芯管PとロールペーパRが中空軸1cに着脱自在に固定される。その固定時、芯管PとロールペーパRは中空軸1cと一体に回転する。」
「【0023】
磁石24とホール素子センサ25、及び近接スイッチ26と突起27については、さらに図2及び図5に示すように、芯管Pに設けた磁石24とホール素子センサ25から成る回転角度センサからの信号、及び近接スイッチ26と突起27から成る包装シートのずれ検出センサからの信号が、図3に示すように、制御回路30へ入力される(制御回路30については後で説明する)。
【0024】
即ち、第1実施形態の測長センサの信号と、上記回転角度センサの信号とからロールペーパRの包装シートSの繰出量を正確に算出してロールペーパRの巻直径の変化に対応したブレーキ力の調整をし張力調整を適正に行おうとするものである。
【0025】
図6に示すように、この実施形態の芯管Pの内周沿いと支持軸1の片端にそれぞれ設けられる磁石24とホール素子センサ25は、4つの磁石24が1つの基点から67.5°ずつ位置が異なる各4点に配置され、4つのホール素子センサ25は上記基点を通る中心線とこれに直交する中心線上の4つの位置に配置されている。」との記載がある。
支持軸1の片端に設けられたホール素子センサ25は、芯管Pに設けられた磁石24の存在を検知して、支持軸1と芯管Pとの間の回転角度が検出できるものであって、かつ、芯管PとロールペーパRは中空軸1cと一体に回転するものであるから、ホール素子センサ25は、芯管Pを介してロールペーパRの回転角度が検出できることが理解できる。したがって、本件訂正前の本件特許明細書には、ロールペーパRの回転角度を検出するためのホール素子センサ25を、支持軸1の片端に設ける点が記載されているから、訂正事項1は、本件訂正前の本件特許明細書に記載された事項の範囲内でした訂正である。さらに、訂正事項1が、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことは明らかである。よって、訂正事項1は、特許法第134条の2第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。

(2)訂正事項2について
訂正事項2は、「角度センサに検出が可能な位置に」配置される「磁石」の個数について、「複数」あることを特定し、限定するものであるから、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に規定される特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そして、上記(1)に摘記した本件訂正前の本件特許明細書の段落【0025】には、角度センサであるホール素子センサ25により検出される「磁石24」が「4つ」、すなわち複数配置されることの記載がある。したがって、本件訂正前の本件特許明細書には、ホール素子センサ25による検出が可能な位置に複数の磁石24が配置」されていることが記載されているから、訂正事項2は、本件訂正前の本件特許明細書に記載された事項の範囲内でした訂正である。さらに、訂正事項2が、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことは明らかである。よって、訂正事項2は、特許法第134条の2第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。

(3)一群の請求項について
本件訂正前の本件特許の請求項2は請求項1を引用する請求項であって、請求項1の訂正に連動して、訂正される請求項2である。したがって、本件訂正は、請求項1及び2からなる一群の請求項を対象とするものであるから、特許法第134条の2第3項の規定に適合する。

3.訂正についてのむすび
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に掲げる事項を目的とし、同条第3項、並びに、同条第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合するから、訂正後の請求項〔1、2〕について訂正を認める。

第3 本件特許に係る発明
上記第2に示したとおり、本件訂正は認められるから、本件特許の特許請求の範囲の請求項1及び2に係る発明(以下「本件発明1」等という。)は、本件訂正請求に係る訂正請求書に添付された訂正明細書の特許請求の範囲に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、分説記号を添えて表記すると以下のとおりである。
「【請求項1】
A-a. 非回転に支持された支持軸の周りに回転自在に中空軸を設け、
A-b. 中空軸にはモータブレーキを係合させ、
A-c. 中空軸に着脱自在に装着されるロールペーパのシートを送りローラで送り出す給紙部と、
A-d. 2つ折りされたシートの間にホッパから薬剤を投入し、薬剤を投入されたシートを所定間隔で幅方向と両側縁部とを帯状にヒートシールする加熱ローラを有する分包部とを備え、
A-e. ロールペーパの回転角度を検出するために支持軸の片端に角度センサを設け、
A-f. 上記中空軸と上記支持軸の固定支持板間で上記中空軸のずれを検出するずれ検出センサを設け、
A-g. 分包部へのシート送り経路上でシート送り長さを測定する測長センサを設け、
A-h. ロールペーパを上記中空軸に着脱自在に固定してその固定時に両者を一体に回転させる手段をロールペーパと中空軸が接する端に設け、
A-i. 角度センサ及び測長センサの信号に基づいてシート張力をロールペーパ径に応じて調整しながら薬剤を分包するようにし、
A-j. さらに角度センサの信号とずれ検出センサの信号との不一致により上記中空軸に着脱自在に装着されたロールペーパと上記中空軸とのずれを検出するようにした薬剤分包装置に用いられ、
B. 中空芯管とその上に薬剤分包用シートをロール状に巻いたロールペーパとから成り、
C. ロールペーパのシートの巻量に応じたシート張力を中空軸に付与するために、支持軸に設けた角度センサによる回転角度の検出信号と測長センサの検出信号とからシートの巻量が算出可能であって、その角度センサによる検出が可能な位置に複数の磁石を配置し、
D. その磁石をロールペーパと共に回転するように配設して成る
E. 薬剤分包用ロールペーパ。
【請求項2】
F. 前記角度センサをホール素子センサとし、測長センサから基準信号を得てずれを検出することを特徴とする請求項1に記載の薬剤分包用ロールペーパ。」

第4 請求人の主張及び証拠方法
請求人は、「特許第4194737号発明の特許請求の範囲の請求項1および2に記載された発明についての特許を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする」との審決を求め、下記の証拠方法を提出し、以下の無効理由を主張する。(請求書 6)
1.無効理由の概要
請求人が主張する無効理由は、次に示す無効理由1?5であって、これのみである。(第1回口頭審理調書 請求人の欄の3)

(1)無効理由1(特許法第36条第6項第2号)
本件特許の特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第2号の規定に適合しないから、その特許は特許法第123条第1項第4号の規定に該当し、無効とすべきものである。
(2)無効理由2(特許法第29条第1項第3号)
本件発明1及び2は、甲1発明であるから、特許法第29条第1項第3号の規定に該当し、特許を受けることができないものであり、その特許は同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。
(3)無効理由3(特許法第29条第2項)
本件発明1及び2は、甲1発明及び甲7事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。
(4)無効理由4(特許法第29条第2項)
本件発明1及び2は、甲2発明並びに甲1事項、甲7事項、及び、従来周知の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。
(5)無効理由5(特許法第29条第2項)
本件発明1及び2は、甲2発明並びに甲5事項、甲6事項、甲7事項、甲9事項、及び、従来周知の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。

2.証拠方法
請求書に添付して甲1?9が提出され、請求人要領書(1)に添付して甲10が提出された。
甲1:特開昭59-115223号公報
甲2:実公昭61-45074号公報
甲3:特開昭54-38887号公報
甲4:特開平6-135401号公報
甲5:特開平8-198206号公報
甲6:実願平3-50354号(実開平4-135546号)のCD-ROM
甲7:特開昭57-166258号公報
甲8:特開平1-252450号公報
甲9:特開平8-87042号公報
甲10:特開昭57-166258号公報(当審注:甲7と同じ書証である。)
なお、上記のとおり、甲7と甲10は同じ証拠であるところ、以下の両当事者の主張等において言及される甲10については、すべて甲7に記載を統一した。

3.無効理由1?5に係る請求人の主張の概要
(1)無効理由1(特許法第36条第6項第2号)について
ア.本件発明1の構成要件Cは、磁石を「その角度センサによる検出が可能な位置」に配置することを求めているが、「その角度センサによる検出が可能な位置」がどのような位置であるのかが不明であり、その結果、どのような位置に磁石が配されたロールペーパが本件発明1及び2の技術的範囲に入り、どのような位置に磁石が配されたロールペーパが本件発明1及び2の技術的範囲に入らないのか、明らかではない。
しかも、本件発明1の構成要件A又はCにおいて、角度センサを薬剤分包装置の支持軸のどの位置に設けるかを何ら具体的に記載していないから、構成要件Cの「角度センサによる検出が可能な位置」という文言は、角度センサの位置という基点が定まっていないことで、さらに磁石の位置的範囲が曖昧になっており、発明の範囲が不明確となっている。
そして、回転角度を検出するためという要件を充足するだけであれば、支持軸のどの位置に角度センサを配置しても角度センサの配置の要件は充足されるから、「角度センサによる検出が可能な位置」は中空軸の全てを含むことになり、構成要件Cの「その角度センサによる検出が可能な位置」に磁石を配置するとの記載によって特定される技術的範囲が明確ではない。(請求書 7(4.1)ア.)

イ.本件発明1及び2のような、サブコンビネーションの発明の特許請求の範囲の記載について、一方のサブコンビネーションの具体的形状やもう一方のサブコンビネーションの具体的形状等の相互関係に依存し、一定の条件が成立することによってはじめて実現する機能の構成は、サブコンビネーション同士の相互関係ないし協働関係を不明なまま要素として含むから、特許請求の範囲の記載を不明確にするものと解されるところ、本件発明1及び2の「その角度センサによる検出が可能な位置」に磁石を配置するとの記載は、薬剤分包装置の角度センサの感度、薬剤分包用ロールペーパに配置された磁石の磁力、角度センサと磁石の位置関係といった一方のサブコンビネーション(薬剤分包装置)と他方のサブコンビネーション(薬剤分包用ロールペーパ)の具体的形状等の相互関係に依存し、角度センサの感度、磁石の磁力、および両者の位置関係の結果、磁石の磁力が角度センサによって検出可能となるという一定の条件が成立した場合にはじめて実現される機能的な構成であり、薬剤分包装置との相互関係ないし協働関係を不明確なまま要素として含んでいる。(請求書 7(4.1)イ.)

ウ.本件訂正によって、角度センサの位置は支持軸の片端に特定されたものの、磁石と角度センサの距離関係、磁石の強さ、および角度センサの感度次第では、磁石を中空芯管のどの位置に配置したとしても、角度センサによる検出は可能になり、第三者にはなお「その角度センサによる検出が可能な位置」の外延は不明確である。(請求人要領書(1) 9.(1)イ)

(2)無効理由2(特許法第29条第1項第3項)及び無効理由3(特許法第29条第2項)について
ア.本件訂正前の本件発明1と甲1発明とを対比すると、次の相違点1-1及び1-2で一応相違する。
<相違点1-1>
本件発明1は、構成要件Aで特定される薬剤分包装置に用いられるものであるが、甲1発明はそのような装置に用いられるかどうかは明示的な記載がない点。
<相違点1-2>
本件発明1は「ロールペーパのシートの巻量に応じたシート張力を中空軸に付与するために、支持軸に設けた角度センサによる回転角度の検出信号と測長センサの検出信号とからシートの巻量が算出可能であって、その角度センサによる検出が可能な位置に」磁石が配設されているが、甲1発明においてはそのような配設であるか明示的な記載がない点。

上記相違点1-1について、本件発明1はあくまでも「薬剤分包用ロールペーパ」に係るものであるところ、これらはあくまで薬剤分包装置内での具体的な構成であるに過ぎず、薬剤分包用ロールペーパを構成する中空芯管や、ロールペーパや、磁石の構成を何ら特定するものではない。したがって、上記相違点1-1は、実質的な相違点ではない。
上記相違点1-2について、本件発明1はあくまでも「薬剤分包用ロールペーパ」をクレームするものであるから、「ロールペーパのシートの巻量に応じたシート張力を中空軸に付与するために、支持軸に設けた角度センサによる回転角度の検出信号と測長センサの検出信号とからシートの巻量が算出可能」かどうかは、単に薬剤分包装置における設定の問題であり、薬剤分包用ロールペーパの構成には関係がない。したがって、上記相違点1-2もまた、実質的な相違点とはならない。したがって、相違点1-1及び1-2はいずれも実質的な相違点ではないから、本件特許発明1は新規性を有しない。
なお、上記相違点1-2が実質的な相違点であったとしても、本件発明1にかかる薬剤分包用ロールペーパにおける磁石の配置は角度センサの配置次第であって、任意の配置で足りるのであるから、甲1発明の磁石の配置を適宜変更した設計事項に過ぎないから、本件特許発明1は進歩性を有しない。(請求書 7(4.2)ア、請求人要領書(2)8.)

イ.本件訂正前の本件発明2と甲1発明とを対比すると、両者は、上記ア.に示した相違点1-1及び1-2に加えて、次の相違点1-3において相違する。
<相違点1-3>
本件発明2は、角度センサをホール素子センサとし、測長センサから基準信号を得てずれを検出する点について、甲1発明は、そのような構成を有するかどうかは明示的な記載がない点。

上記相違点1-3について、「角度センサをホール素子センサとし、測長センサから基準信号を得てずれを検出することを特徴とする」かどうかは、単に薬剤分包装置における設定の問題であり、薬剤分包用ロールペーパの構成には関係がない。相違点3もまた実質的な相違点ではなく、本件発明2もまた、新規性を欠き、仮に相違点1-2が実質的な相違点であったとしても進歩性を欠く。(請求書 7(4.2)イ)

ウ.薬剤分包用ロールペーパに配置された磁石を検出するのは、本件発明1においては角度センサであり、甲1発明においては紙の残量を検知するための磁気センサであるが、このようなセンサの違いは薬剤分包装置における構成の相違であり、薬剤分包用ロールペーパの構成の相違ではない。角度センサが薬剤分包装置に実際に備えられるかどうかは、薬剤分包用ロールペーパが角度センサによって検出可能な位置に磁石を備えているかどうかという構成の議論とは無関係である。
また、被請求人は甲1発明にはずれを検知するという課題が存在しないとも主張しているが、本件発明においてずれの検知はもっぱら薬剤分包装置の機能によって解決されており、薬剤分包用ロールペーパの構成は、ずれの検知という課題とは関係がない。
また、甲1発明はロールペーパの残量を検知することを課題としているが、この課題はロールペーパを支軸に固定する場合だけでなく、ずれの検出という課題を生じ得るロールペーパを中空軸に固定する場合にも内在する課題である。
そして、甲1発明のロールペーパを、構成要件Aを満たす薬剤分包装置に固定した際に、磁性体6Xが支軸に設けられた角度センサと協働して角度を検出可能であることは明らかである。(請求人要領書(1) 9.(2)イ及びウ)

エ.甲7には、ロール紙の回転速度を検出するマークである磁気マーク6が、円板5の外側周辺(すなわち円板5の先端部)に設けられていることの記載、及び、かかる磁気マーク6は、複数設けられていることの記載がある。したがって、本件訂正により限定された構成は、甲7に示されている。そして、甲1発明に甲7事項のロール紙残量検知方式の技術を適用して、ロールペーパの先端側に複数の磁石を配置することは当業者が容易に想到し得たことである。
したがって、本件訂正後の本件発明1は、甲1発明に甲7事項を組み合わせることによって、当業者が容易に想到し得る。(請求人要領書(1) 9.(2)エ)

(3)無効理由4(特許法第29条第2項)について
ア.本件訂正前の本件発明1と甲2発明とを対比すると、次の相違点2-1及び2-2において相違する。
<相違点2-1>
本件発明1は構成要件Aで特定される薬剤分包装置に用いられるものであるが、甲2発明においてはそのような装置に用いられるかどうかは明示的な記載がない点。
<相違点2-2>
本件発明1は「ロールペーパのシートの巻量に応じたシート張力を中空軸に付与するために、支持軸に設けた角度センサによる回転角度の検出信号と測長センサの検出信号とからシートの巻量が算出可能であって、その角度センサによる検出が可能な位置に磁石が配置されて」おり、その磁石がロールペーパと共に回転するように配設されているのに対し、甲2発明においてはそのようなセンサによる検出用の磁石については記載がない点。

上記相違点2-1について、構成要件Aは、薬剤分包装置の中の構成を規定しているに過ぎず、薬剤分包用ロールペーパの構成に何ら関係がない。したがって、上記相違点2-1は実質的な相違点にはならない。
上記相違点2-2について、甲1事項は、中空芯管とその上に薬剤分包用シートをロール状に巻いたロールペーパとから成る薬剤分包用ロールペーパであって、中空芯管にセンサによる検出のための磁石が配置されており、その磁石をロールペーパと共に回転するように配設するものである。本件発明1の優先日当時、甲2発明において分包紙の残量を検知するという薬剤分包装置における一般的な課題(甲3及び4参照)を解決するために、甲2発明に技術分野が共通する甲1事項を組み合わせ、甲2発明の巻芯6に甲1事項における検出用磁石を設けることは、当業者が容易に想到し得た事項である。(請求書 7(4.3)ウ(ア))

イ.本件発明2と甲2発明とを対比すると、上記(2)イ.に示した相違点1-3と同じ点で相違するところ、上記相違点1-3は実質的な相違点ではないから、本件発明2もまた、進歩性を欠く。(請求書 7(4.3)ウ(イ))

ウ.被請求人は、本件訂正により、「その角度センサによる検出が可能な位置」はロールペーパの先端側に限定され、かつ本件訂正後特許発明1の構成要件Cは磁石を複数とし、磁石が1個の構成を除いたため、本件訂正後特許発明1について進歩性が認められることはより明確になった旨主張しているが、しかし、上記(2)エ.に示したとおりの事項が、甲7に記載されているから、薬剤分包装置における残量検知という課題が共通している甲2発明に、甲1事項および甲7事項を組み合わせることによって、当業者は本件訂正後特許発明1および2に容易に想到し得たから、被請求人の主張は誤りである。(請求人要領書(1) 9.(3)ウ)

エ.甲2発明の支持軸1は、薬剤分包機などの当然回転しないフレームで端部が支持されている。さらに、支持軸1の外側に軸受3を介することによって筒体2が回転可能にされている一方で、支持軸1には軸受が設けられていない。よって、軸受が設けられていない支持軸1は当然に非回転である。したがって、甲2発明の支持軸1は非回転に支持されるものである、と認定されるべきである。(請求人要領書(2) 9.(1)及び(2))

(4)無効理由5(特許法第29条第2項)について
ア.本件発明1と甲2発明とを対比すると、上記(3)ア.に示した相違点2-1及び2-2において相違する。

上記相違点2-1について、当該相違点2-1が仮に実質的な相違点であったとしても、次の甲5事項、甲6事項及び甲9事項に基いて、当業者が容易に為し得た事項にすぎない。
(甲5事項)甲5記載の2つ折りされた包装用フィルムFをヒートシールするものにおいて、包装用フィルムFのテンション値を検出し、検出した値が一定となるように制御する事項。
(甲6事項)甲6記載の巻出し軸4の回転角度を検出するために、その周囲に設けた近接スイッチを含む第1の回転検出器5を設けるとの事項、巻出し物2の通過長さを測定する第2の回転検出器9を設けるとの事項、さらに、第1及び第2の回転検出器の信号に基づいて巻出し物のロール径に応じて、張力を調整しながら巻き出すとの事項。
(甲9事項)甲9記載の、従動側回転制御板4の従動側回転センサーS4と駆動側回転制御板5の駆動側回転センサーS5とから得られるパルス信号が一致しなくなり、それにより回転ずれが発生したと判断する事項。
上記相違点2-2について、当該相違点2-2が仮に実質的な相違点であったとしても、次の甲6事項、甲7事項、並びに、甲7及び甲8に例示される従来周知の事項に基いて、当業者が容易に為し得た事項である。
(甲6事項)甲6の、巻出し物2の巻量に応じたシート張力を巻出し軸4に付与するために、非回転部分に設けた第1の回転検出器による回転角度の検出信号と第2の回転検出器9の検出信号とからシートの巻量が算出可能であって、その角度センサによる検出が可能な位置に突起を配置し、その突起を巻出し軸4と共に回転するように配設する事項。
(甲7事項)甲7の、ロール紙の回転速度を検出するマークである磁気マーク6が、円板5の先端部に複数設けられている事項。
(従来周知の事項)甲7及び甲8に例示される、ロールペーパの回転角度を検知する手段として、ロールペーパと一体回転する回転体に磁石、非回転部に磁気センサを設ける事項。(請求書 38ページ下から3行?45ページ2行)

イ.本件発明2と甲2発明とを対比すると、次の相違点2-4において相違する。
<相違点2-4>
本件発明2は、ホール素子センサ又は近接スイッチからなる角度センサを有し、測長センサから基準信号を得てずれを検出することを特徴とする点について、甲2発明は、そのような特徴を有するかどうかは明示的な記載がない点。

上記相違点2-4について、上記ア.に示した甲9事項に基いて、角度センサと測長センサとを備え、角度センサと測長センサとの検出信号の違いによりずれを検出することは、当業者が容易に想到し得たことである。そして、回転体に設けられた磁石の磁力に基づく回転体の回転角度を検出する角度センサとして、ホール素子センサを用いることは特に例示するまでもなく周知の技術に過ぎない。(請求書 45ページ3?16行)

ウ.本件訂正後の本件発明1については、上記(2)エ.に示したのと同様に、甲7発明を組み合わせることにより、容易に想到し得る。(請求人要領書(1) 9.(4)ア(カ))

第5 被請求人の主張
被請求人は、「本件審判の請求は成り立たない。審判費用は請求人の負担とする」との審決を求め、下記の証拠方法を提出し、以下の主張をしている。(答弁書 6.)
1.無効理由1?5に係る被請求人の主張の概要
(1)無効理由1(特許法第36条第6項第2号)について
ア.本件発明の角度センサは、磁気を検出するセンサであって、磁石の存在を検出できる位置は限られるから、角度センサの位置が具体的に定まる場合には、当業者は「その角度センサによる検出が可能な位置」を把握することが可能である。そのため、「その角度センサによる検出可能な位置」が明確であるというために、角度センサの具体的な位置が定まっている必要はなく、構成要件Cの「その角度センサによる検出が可能な位置」は、本体側の構成との関係で自ずと限定され、そして、本件発明に触れた当業者にとって、適切な位置を決定することに特別の困難はないから、明確性に欠けることはない。
なお、本件訂正によって、本件発明1の角度センサの位置は、支持軸の片端である先端部に限定(減縮)しており、「その角度センサによる検出が可能な位置」が明確であることはより明らかとなった。(答弁書 7.第2の2)

イ.本件特許明細書の段落【0023】?【0028】や【図6】及び【図7】の図示を考慮し、当業者の出願時における技術常識を基礎として検討すれば、構成要件Cの、「その角度センサによる検出が可能な位置」に磁石を配置するとの記載が、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるとはいえず、「他のサブコンビネーションとの相互関係ないし協働関係を不明確なまま構成要素として含んだ」ものでないことは明らかである。(答弁書 7.第2の3)

(2)無効理由2(特許法第29条第1項第3号)及び無効理由3(特許法第29条第2項)について
ア.甲1発明は、ボビン製の巻心部材3X又はリール製の巻心部材4を支軸2に固定する手段として、巻心の内側4か所に凸部を設けている。よって、甲1発明は、「ロールペーパを上記中空軸に着脱自在に固定してその固定時に両者を一体に回転させる手段をロールペーパと中空軸が接する端に設けた」構成要件Aを充足する薬剤分包装置に設置するために必要な構造を有していない。(答弁書 7.第3の2(3)イ)

イ.甲1発明は、芯管と本体側の軸とを嵌合させる構成を有しているため、回転軸との間にずれが生じることがないから、甲1発明にはずれを検知するという課題が存在しない。また、仮に甲1発明の磁性体6Xを検知するため、本件発明1の中空軸に相当する支軸上に、甲1発明の磁性体に対応する位置に角度センサを設けたとしても、支軸と芯管が一体となって回転する構造である以上、回転角度を検知できない。したがって、構成要件Aの角度センサにより甲1発明の磁性体6Xを検出することはできない。
なお、本件訂正により、角度センサは支持軸の先端部に特定されたため、本件訂正後の本件発明1の角度センサにより甲1発明の磁性体6Xが検出できないことはより明確となった。(答弁書 7.第3の2(3)ウ)

ウ.本件発明1にかかる薬剤分包用のロールペーパの構成要件B及びCで特定された「中空軸」、「支持軸」、「角度センサ」、「測長センサ」及び「検出信号」は構成要件Aにて特定されており、これらの構成を前提として、構成要件(A-e)の「ロールペーパの回転角度を検出するために支持軸に角度センサを設け」との記載によって、「その角度センサによる検出が可能な位置に磁石を配置し」の意味が特定される。
よって、本件発明1は、他のサブコンビネーションに相当する薬剤分包装置本体に関する事項によって、その構造、機能等が特定されているものといえるから、構成要件Aも含めて発明の要旨を認定することが必要である。(答弁書 7.第3の2(3)エ)

エ.請求人は、甲1発明の磁性体6Xは本件発明1の角度センサによる検出が可能であるから、本件発明1と甲1発明とは構成要件Cにおいて、実質的に相違しないと主張する。しかし、甲1発明の磁性体6Xを構成要件Aの角度センサで検出できないことは、上記イ.に示したとおりであり、請求人の主張はその前提を欠く。そして、上述のとおり、訂正により角度センサは支持軸の先端部に特定されたため、本件訂正後特許発明1の角度センサにより甲1発明の磁性体6Xが検出できないことはより明確となった。(答弁書 7.第3の2(4)ア)

オ.本件発明1及び本件訂正後本件発明1が新規性又は進歩性を欠くといえないため、本件発明2及び本件訂正後特許発明2についても新規性又は進歩性を欠くとはいえない。(答弁書 7.第3の3)

カ.甲7発明は、磁気センサ7により常時磁気マーク6を検出してパルス状のセンサ出力を行う必要があるため、磁気マーク6は先端部に設けることが有用である。これに対し、甲1発明の磁性体6Xは、残量がないことを検知するためのものであるから、周面に設けて、分包紙の残量があるうちは検出されないようにする必要があり、これを先端部に設けると残量があるうちから検知されかねないから、先端部に磁性体6Xを設けることには阻害事由がある。また、甲1発明においては、磁性体6Xは単に残量がないことのサインとして用いられるだけなので、甲7発明の磁気マーク6のように複数設置しても「微小な残量変化をも有効に検知することができるようになる」ことはなく、当業者にとって複数設置する動機付けがない。むしろ、甲1発明の磁性体6Xは、1つであるからこそ、残量がないことのサインとして十分な機能を果たすことができるのであり、複数設置することには阻害事由がある。(被請求人要領書(2) 6.第4の2)

(3)無効理由4(特許法第29条第2項)について
ア.甲1事項は本件発明1と構成要件A及びCにおいて相違する発明であり、甲2発明と甲1事項を組み合わせても、構成要件A及びCを充足することはない。特に、甲1及び甲2のいずれにも、薬剤分包装置に備えられた角度センサの位置との関係において検出可能となるように中空芯管に磁石を設けるという構成は開示も示唆もされておらず、両者を組み合わせても、本件発明1の目的を達成することができない。
また、甲1発明は、ロールペーパの芯管を支軸と嵌合させて共に回転させる構成を採用するものであり、およそずれの検出という課題を生じる余地のない発明であるから、課題の共通性もなく、両者を組み合わせる動機付けがない。よって請求人の主張は失当である。(答弁書 7.第4の2(4))

イ.甲2発明は、巻芯の支持装置に関する発明であって、この支持装置を利用できる分包装置について、残量を検知する機能を有することは何ら開示も示唆もされていない。このように、甲2発明に甲7発明を組み合わせる動機付けはない。
請求人は角度センサで検知する磁石として甲1の磁石を組み合わせることを主張するが、甲1発明に甲7発明を組み合わせることにより、甲1発明の磁性体6Xを先端部に複数配置することについては阻害事由があり、当業者が想到することはない。(被請求人要領書(2) 6.第4の3)

ウ.本件発明1及び本件訂正後特許発明1が進歩性を欠くといえないため、本件発明2及び本件訂正後特許発明2についても進歩性を欠くとはいえない。(答弁書 7.第4の3)

(4)無効理由5(特許法第29条第2項)について
ア.甲5事項と構成要件(A-d)とは、被包装物の投入(充填)とヒートシールの順序が異なり、甲5には、「薬剤を投入されたシートを所定間隔で幅方向と両側縁部とを帯状にヒートシールする加熱ローラを有する分包部」は開示されていない。甲5事項は、「原反ロールから繰出されるフィルムを製袋して、その包装袋内に液体あるいは粘稠物質などの被包装物を充填する包装装置に関するもの」(甲5段落【0001】)であり、病院や薬局において、医薬品(錠剤又は散薬(粉薬))を包装する本件各特許発明とは技術分野が全く異なり、また、甲5には薬剤分包用ロールペーパである甲2発明に適用することについて何ら開示も示唆もない。さらに、甲2発明と甲5事項とは、課題、作用、機能ともに異なるものであるから、甲2発明に甲5を適用する動機付けがなく、甲2発明に甲5を組み合わせることが容易に想到できたということはできない。(答弁書 7.第5の2(2))

イ.甲6に記載されているのは、巻出し軸4側に突起を、その突起に対向する位置、すなわち、装置側に近接スイッチと第1の回転検出器5を設ける構成であり、構成要件(A-e)の「支持軸に角度センサを設け」る構成は開示されていない。
また、甲6事項は、本件発明とは技術分野が全く異なり、また、甲6には薬剤分包用ロールペーパである甲2発明に適用することについて何ら開示も示唆もない。さらに、甲2発明は、甲6事項と、課題、作用、機能ともに異なるものであるから、当業者が甲2発明に甲6事項を適用する動機付けがなく、甲2発明に甲6事項を組み合わせることは当業者が容易に想到できたものであるとはいえない。
さらに、甲6で開示されているのは、巻出し軸4側に突起を、装置側に近接スイッチと第1の回転検出器5を設ける構成であり、支持軸に近接スイッチと第1の回転検出器5を移動させる動機がないし、むしろ支持軸に移動させると構造が複雑になるという阻害要因があることから、第1の回転検出部を支持軸に移動することについて容易に想到できるとはいえない。(答弁書 7.第5の2(3))

ウ.甲9事項は、本件発明とは技術分野が全く異なり、また、甲9には薬剤分包用ロールペーパである甲2発明に適用することについて何ら開示も示唆もない。さらに、甲2発明は、甲9事項と課題、作用、機能ともに異なるものである。
よって、当業者が甲2発明に甲9事項を適用する動機付けがなく、甲2発明に甲9事項を組み合わせることが容易に想到できたということはできない。(答弁書 7.第5の2(5))

エ.甲7には、残量検知のために、永久磁石片などによる磁気マーク6と磁気センサ7を用いる構成が、甲8には、回転数を検出するために、永久磁石などで構成されるターゲット素子6と検出素子8を用いる構成が、それぞれ開示されているが、いずれも回転角度を検知するためのものではなく、甲6を甲2発明に適用する際に参酌される技術常識とはいえない。(答弁書 7.第5の2(6))

オ.本件発明2は、角度センサをホール素子センサとするものであるが、上記イ.に示したとおり、請求人が角度センサと主張して甲2発明と組み合わせるのは甲6の「近接スイッチを含む第1の回転検出部5」であり、ホール素子センサではない。また、甲7及び甲8は甲6を甲2発明に適用するにあたり参酌されるべき技術常識といえない。(答弁書 7.第5の3)

2.証拠方法
答弁書に添付して乙1が提出され、被請求人要領書(2)に添付して乙2が提出された。
乙1:本件特許を対象とする訂正審判(訂正2010-390095号)の特許審決公報及び特許訂正明細書
乙2:本件特許の特許権に基づく侵害訴訟(平成28年(ワ)第6494号)における第11回弁論準備手続調書

第6 当審の判断
1.刊行物に記載された事項
(1)甲1
甲1には、次の記載及び図示がある。
ア.「この発明は、薬剤分包機における分包紙に関するものである。
従来は第1図から第3図までに示すように、薬剤分包機内に二つ折りの状態で収装されている分包紙5Xは、後記するボビン型の巻心部材3Xかまたはリール型の巻心部材4に巻取られていた。そして上記の巻心部材3X(または4)から図示しない分割マス下に巻き出されたこの分包紙5X内へ上記の分割マスより各薬剤の投入が行われるが、この分包紙5Xを順次に消費して残量が規定量内に達したときは、次の分包紙5Xを巻着した巻心部材3X(または4)を補給交換することになる。この場合前記分包紙5Xの残量が規定量内に達したことを警示するために、上記巻心部材3X(または4)の成形時に、その周面の一端にマグネットを細片状に裁断した磁性体6Xを軸方向に平行に、かつその表面が露出する態様により埋設するとともに、上記巻心部材3X(または4)の付近には第3図に示すように、巻心部材3X(または4)を軸嵌する支軸2と同じ台板1上に支柱7を立設して、この支柱7から所定長さのホルダー8を突設して、この上面にカバー12付基板11の端子台13から配出されたリード線10を介して上記基板11の位置における設定値により磁気の存在を検知する磁気センサー9が取付けられていた。」(1ページ左欄15行?右欄末行)

イ.「このため前記の分包紙5Xを規定量宛消費した時点で、上記の磁気センサー9が残量の分包紙5Xを透過して外部に到達する磁性体6Xの磁力を検知し、これを基板11側に電気的に警示するため、その警示によつて薬剤分包機の分包動作が自動的に停止し、その表示により次の分包紙の巻心部材3X(または4)を補給交換するように構成されている。」(2ページ左上欄1?8行)

ウ.「しかし前述したように従来は、上記の巻心部材3X(または4)のドラムの周面に露出状に埋設している磁性体6Xの磁力の検知を、このドラム上に巻かれている規定残量の分包紙5Xを透過する間接的な条件で行つていた。従つて上記分包紙5Xの紙質が変化したり、磁気センサーの対紙接触面が移動などして条件変化があつた場合は正常な検知ができないため、上記分包紙5Xを最終端末まで巻き出してしまつたり、または一巡する分割マスのサイクルとタイミングが合わなくなつて中途で切れたりすることになる。」(2ページ左上欄9?19行)

エ.第1?3図「




オ.上記摘記事項ア.?ウ.の摘記、及び、第1?3図の図示を総合すると、甲1には、以下の甲1発明が記載されている。
「ロールペーパの巻心部材3Xを着脱自在に軸嵌する支軸2と、
支軸2に着脱自在に装着されるロールペーパの分包紙5Xを送り出す給紙部分と、
2つ折りされた分包紙5Xの間に分割マスから薬剤を投入する分包部分とを備え、
分包紙5Xを規定量消費したことを検出する磁気センサー9が設けられたホルダー8を備えた薬剤分包機に用いられ、
巻心部材3Xとその上にロール状に巻かれた分包紙5Xとから成るをロールペーパであって、
磁気センサ-9と磁性体6Xとの間にロール状に巻かれた分包紙5Xが介在するように巻心部材3Xの周面に磁性体6Xを配置し、磁性体6Xをロールペーパとともに回転させるように配設して成る、薬剤分包用ロールペーパ。」

(2)甲2
甲2には次の記載及び図示がある。
ア.「この考案は、薬剤分包紙などのペーパを巻取つた巻芯の支持装置に関するものである。
巻芯の外側に巻取つた二つ折り分包紙の折り目間に一定容量(一定重量)の薬剤を供給する動作と、上記薬剤の供給後に分包紙を一定長さ巻戻して開放部をシールする動作とを交互に繰り返して分包作業を連続して行なうようにした薬剤分包機においては、分包紙の巻戻し作動において巻芯が惰性回転すると分包紙にたるみが生じるため、前記巻芯に回転方向の負荷を付与する必要がある。」(1欄9?18行)

イ.「ところで、前記巻芯に回転方向の制動力を付与する巻芯の支持装置として、ペーパを巻取つた巻芯の両端に切欠部を形成し、一方、回転方向に負荷を付与した巻芯支持用筒体の一端部外周には上記巻芯の一方の切欠部に嵌合可能な突起を設け、かつ他端部外周に巻芯の他方の切欠部に対して嵌合可能なストツパを設け、このストツパを筒体の半径方向に移動可能に弾性支持したものが従来から存在する(実公昭54-549号公報参照)。
しかし、上記の支持装置においては、巻芯の装着動作において突起と切欠部とを位置合わせする必要があり、また筒体から巻芯を取外す場合にストツパを半径方向に押圧する必要があるため、巻芯の着脱に手間がかかるという欠点がある。また、筒体にかかる負荷が調整操作の誤まり等によつて設定値より大きくなつた場合には、巻戻ししたペーパに大きな張力が作用して紙切れするという欠点もある。
そこで、この考案は上記の欠点を解決し、巻芯の着脱操作が簡単に行なえ、しかも巻芯の支持用筒体に作用する回転方向の負荷が設定値を超えた場合にも巻戻したペーパが紙切れするようなことのない巻芯の支持装置を提供することを目的としている。」(1欄19行?2欄13行)

ウ.「この考案の構成は、回転方向に負荷を付与した回転可能な筒体と、この筒体の外側に嵌合した抜き差し可能な巻芯とを磁力結合して巻芯に制動力を付与したものである。
以下、この考案の実施例を添付図面に基づいて説明する。
図示のように、薬剤分包機などのフレームで端部が支持される支持軸1の外側には筒体2を嵌め合わして軸受3で回転可能に支持してあり、上記支持軸1と筒体2との間に、上記筒体2に回転方向の負荷を付与する制動機構10が設けてある。
上記制動機構10は、支持軸1の端部にねじ軸部11を形成し、このねじ軸部11にねじ係合した調整摘み12と上記支持軸1の外側に嵌合した摩擦板13との間にスプリング14を配置し、上記スプリング14の弾力により摩擦板13を筒体2の内周に設けたフランジ15に圧接している。
なお、摩擦板13は支持軸1に対して軸方向に移動可能になり、かつ支持軸1に対して非回転に支持されている。
上記筒体2の端面には、この筒体2の外側に嵌合されるロールペーパ4の差し込み量を規制する円板5がねじ止め等の手段で固定され、この円板5とロールペーパ4の巻芯6とが磁力結合されるようになつている。
磁力結合する手段は、図示のように、円板5の片面に複数の永久磁石7を環状に設け、一方巻芯6の端面には鉄板などの強磁性板8を取付けるようにしてもよく、あるいは永久磁石7と強磁性板8との取付位置を逆としてもよい。また、極性の異なる永久磁石を対応面間に取付けるようにしてもよい。・・・」(2欄14行?3欄16行)

エ.「実施例で示す巻芯の支持装置は上記の構造から成り、この支持装置は、ペーパを巻取つた巻芯6を筒体2の外側に嵌合してこの巻芯6と筒体2とを磁力結合したのち、調整摘み12の回転操作によつて筒体2に回転方向の負荷を付与し、ペーパ4を巻戻したときに筒体2が惰性回転しないようにする。
いま、筒体2の外側に巻芯6を嵌合して巻芯6端部の強磁性板8を円板5に当接すると、円板5に取付けた永久磁石7に上記の強磁性板8が吸着され、巻芯6と筒体2とを回転方向に結合することができる。そこで、巻芯6で巻取つたペーパ4に巻戻しすると、回転方向に負荷がかかる筒体2が巻芯6と共に回転し、ペーパ4に一定の張力が作用する状態で上記ペーパ4を巻戻すことができる。そのペーパ4の引き出し作業時に、制動機構10の調整間違いなどによつて筒体2に付与した負荷が設定値以上に保持されていると、巻芯6と筒体2との磁力結合部においてスリツプし、紙切れすることなくペーパ4を引き出すことができる。」(3欄25行?4欄11行)

オ.第1?2図「




カ.甲2には、上記ウ.に「薬剤分包機などのフレームで端部が支持される支持軸1の外側には筒体2を嵌め合わして軸受3で回転可能に支持してあり、」との記載がある。そして上記オ.の第1図には、「支持軸1」と「筒体2」との間には、「軸受3」が設けられていることの図示がある一方、それ以外の箇所には「軸受3」を設けることの図示はない。そうすると、「薬剤分包機などのフレーム」は当然非回転であるから、そのような「薬剤分包機などのフレーム」に対して「軸受3」を設けることなく支持される支持軸1も非回転に支持されていると理解できる。

キ.上記摘記事項ア.?エ.の摘記、第1?2図の図示及び上記認定事項カを総合すると、甲2には、以下の甲2発明が記載されている。

「薬剤分包機のフレームに端部が非回転に支持された支持軸1と、
支持軸1の外側に嵌め合わされて回転可能に支持された筒体2を設け、
支持軸1の端部にねじ軸部11を形成し、このねじ軸部11にねじ係合した調整摘み12と上記支持軸1の外側に嵌合した摩擦板13との間にスプリング14を配置し、上記スプリング14の弾力により摩擦板13を筒体2の内周に設けたフランジ15に圧接している制動機構10を有し、
制動機構10により筒体2に回転方向の負荷を付与し、
筒体2に着脱可能に装着される巻芯6に巻かれたペーパ4を送り出す給紙部分と、
2つ折りされたペーパ4の間に薬剤を投入し、薬剤を投入されたペーパ4をシールする分包部分とを備え、
巻芯6を筒体2に着脱可能に嵌合して両者を磁力結合させる強磁性板8を、巻芯6の端面と筒体2の端面に固定された円板5とが接する面に設けた、薬剤分包機に用いられ、
巻芯6とその上にロール状に巻かれたペーパ4とからなるロールペーパであって、
巻芯6の端面には、筒体2の端面に固定された円板5に設けられた強磁性板8と磁力結合する複数の永久磁石7が取り付けられており、
ペーパ4に一定の張力が作用する状態で巻き戻される、
薬剤分包用ロールペーパ。」

(3)甲3
甲3には、次の記載及び図示がある。
ア.「この発明は投薬用自動錠剤分包機の構成に関するものであつて、その操作を自動化し、操作ミスをなくすることを目的とする。」(2ページ左上欄15?17行)

イ.「この発明は、・・・錠剤フイーダーへの錠剤の充填及び製袋包装機構への包帯用条帯の装置を除く各操作を全てコンピューター制御すべく図つたものであつて、ケース(91)内に群設された多数の即ち常用薬種100種乃至200種に対応する数の錠剤フイーダー(1)の群と、その下部に設けられた総ホツパー(2)と、更にその下部に設けられた製袋包装機構(3)と、これらを電子的に制御する制御用コンピューター(4)と、操作卓(92)上に配設されたコントロールスイツチ群(51)、数字キー群(52)、錠剤選択キー群(53)、錠剤指示灯群(54)、CRTデイスプレイ(55)、ジヤーナルプリンタ(56)を具備する操作部(5)とにより構成されている。」(2ページ右上欄10行?左下欄3行)

ウ.「製袋包装機構(3)は、2つ折りにしたラミネート紙条帯又は同じく2つ折りにしたプラスチツクフイルムの条帯からなる包袋用条帯(02)を捲回準備して交換可能となつた巻枠(31)と、・・・捲枠(31)における包袋用条帯(02)の残量を検知する残量センサー(36)、・・・とからなつており、」(2ページ右下3?18行)

エ.「又捲枠(31)の包装用条帯(02)の残量が少なくなつたときは、残量センサー(36)が作動して全機構を停止せしめると共に、CRTデイスプレイ(55)にその旨出力するものとし、・・・」(4ページ右上欄12?16行)

オ.第3図「



(4)甲4
甲4には、次の記載及び図示がある。
ア.「【0007】
【実施例】・・・この散薬分包機Eは、散薬を所定量ずつ分包する包装装置Aと、おのおの任意の種類の散薬を取り出し可能に収容した多数の散薬取出装置Bとを具え、いずれの散薬取出装置Bから取り出される散薬でも包装装置Aに適用されるように、散薬取出装置Bまたは包装装置Aを移動可能に構成したものである。図3に示すように、包装装置Aは、包装装置本体1と、移動機構2とから構成され、・・・包装装置本体1は、左右に対向状態に配設された散薬分包紙としての左右のロール紙3、3’と、左右のロール紙3、3’を袋状にシールして散薬を分包する左右のシール部4、4’と、分包された連続状のロール紙3、3’を個々に切断するカッタ5と、分包散薬の総重量を秤量チェックする秤量計器6とを具え、所定箇所にはローラ7や紙送り部8が配置されている。そして、左右のロール紙3、3’が接合する接合部9において、散薬取出装置Bから取り出される散薬Cを受けてその散薬Cを分包し、最終的に秤量チェックして、所定場所に集積するように構成されている。しかも、左右のロール紙3、3’には紙切れセンサ10、10’がそれぞれ取り付けられ、紙切れを警報するようになっている。・・・」

イ.【図3】「



(5)甲5
甲5には、次の記載がある。
ア.「【0003】・・・充填包装機は、連続移送されるフイルムFを良好に縦,横シールを行うため、縦シール部(以下、繰出部と言う)7から原反ロール3までの間のフイルムFの適正テンションを原反ロール3の巻き径の変化(減少)に関わらず、一定に与える必要があり(テンションが緩いとシール時にしわが生じ、また逆にテンションが強いとフイルムFが破断する恐れがおるためにフイルムFを適正テンションに一定に確保する)、そのためテンションコントロール装置を備えることが考えられている。」

イ.「【0007】また、原反ロールから連続移送されるフイルムを折返し前記フイルムの両端縁を重ねて対向する一対の縦ヒートシールロールにより縦シールし、かつ前記フイルムを対向する一対の横ヒートシールロールにより横シールして、区画形成される連続包装袋に被包装物を充填する包装装置において、前記原反ロールを挿通支持する回転軸に設けられた制動機構の制動手段と、前記フイルムのテンション値を検出するフイルムテンション検出手段と、前記テンション値が略一定となるように前記制動手段を制御するテンションコントロール手段と、品種毎の包装形態に応じた生産条件を入力する生産条件設定手段と、前記生産条件により品種毎の包装形態に適応した基準テンション値を演算処理し前記テンションコントロール手段を制御するテンション制御手段と、前記基準テンション値を不揮発的に記憶する記憶手段とを備えてなることを特徴とするものである。」

(6)甲6
甲6には、次の記載及び図示がある。
ア.「【0001】
【産業上の利用分野】
この考案は各種フィルム,あるいは細線の加工工程または処理工程において行われる巻出し軸に巻かれたフィルム等の巻出し物を巻出し,または,巻取り軸に巻かれたフィルム等の巻取り物を巻き取る作業において,その巻出しまたは巻取り物にたるみを生じたり,過大な張力がかからないようにする為に用いられる張力制御装置に係わり,・・・」

イ.「【0011】
【実施例】
・・・
図1において,1は巻出し軸部で,2は巻出し物である,例えばテトロンのフイルム(以下フイルムと記す),10は制御装置である。
巻出し軸部1においては,電磁ブレーキ3,例えばヒステリシスブレーキのリング部3aに巻出し軸4が結合され,この巻出し軸4には巻出し物2が巻かれて巻出しロールを形成している。
電磁ブレーキ3,例えばヒステリシスブレーキの前記リング部3aに対向するロータ部3cはコイル3bを備えたフィールドとともに静止部を形成している。
巻出し軸4には第1の回転検出器5が装着されている。第1の回転検出器5は,例えば,巻出し軸4の周囲の所定の角度毎に突起を設け,その周囲にこの突起に対向して近接スイッチを設けることによって,この近接スイッチから出力される信号によって巻出し軸4が所定の角度回転したことを検知することが出来る。
また,6は被動ローラ,7,8はピンチローラであって,ピンチローラ8には第2の回転検出器9が結合されている。第2の回転検出器9は,例えば,パルスエンコーダのように,その回転に対応して十分に小さい回転角度毎にパルス信号を出力する。
この第2の回転検出器9はピンチローラ8に結合し,ピンチローラ8は巻出し物2に密着して回転するので,ピンチローラ8の直径と,第2の回転検出器9の特性を予め設定することによって,この第2の回転検出器から出力されるパルス数を計数することによって,その計数時間中にピンチローラ7,8部を通過した巻出し物の通過長さを知ることが出来る。
上記第1の回転検出器5から出力される信号と,第2の回転検出器9から出力される信号は,ともに詳細を後述する制御装置10に入力して所定の演算処理の結果得られた制御信号はドライバ20によって前記電磁ブレーキ3のコイル3bに電流を流して巻出し軸4に所定のブレーキ力を与える。」

ウ.「【0013】
次に,上述の構成と要素装置の特性に基づく張力制御装置の動作作用を説明する。
・・・巻出し作業を始めると,演算処理装置12の出力インタフェース14から出力される指令信号に基づき,電源切り替え回路20-aによって設定される電源電圧によって定まるドライバ20から出力される駆動電流によって,指令に従ったブレーキ力,滑り回転速度で電磁ブレーキ3の回転側,例えば,ヒステリシスブレーキのリング部が回転し,これに結合する巻出し軸4が前記ブレーキ力によって定まる張力をフイルム2に与えながら回転する。
・・・
従って,この電磁ブレーキ3はフイルム2を常に所定の張力で巻出す。
この巻出し軸4の回転速度に従い第1の回転検出器5が回転速度信号を演算処理装置12の入力インタフェース13に伝送する。
図に示さない巻取りモータによってフイルム2が上記ブレーキ力を受けながら巻出されると,フイルム2はピンチローラ7,8に密着しているので,フイルム2の移動によってピンチローラ7,8が回転する。ピンチローラ8が回転すると,このピンチローラ8の回転軸に結合した第2の回転検出器9からピンチローラ8の所定の回転角度毎にパルスが出力されて演算処理装置12の入力インタフェース13に入力する。
演算処理装置12においては前記第1の記憶装置16に記憶した演算プログラムに従い,上記第1の回転検出器5と第2の回転検出器9との入力信号によって,巻出し軸4への現在のフイルム巻出し径を図4によって後述するように演算算出する。」

エ.「【0019】
また,巻出し軸の制御においては、上記の作業条件設定機能には,電磁ブレーキに付与すべきブレーキ力を,巻出しロールの巻径変化に対応して所定の関係特性で変化させるべく該特性条件を設定し、上記の演算処理装置には該設定条件を満足すべく演算するように構成した。この結果,巻取り軸の制御においては,上記の作業条件設定機能には,電磁クラッチに付与すべき伝達トルクを巻取りロールの巻径変化に対応して所定の関係特性で変化させるべく該特性条件を設定し、上記の演算処理装置には該設定条件を満足すべく演算するようにすることによって,巻出しロール,または,巻取りロールの変化に対応して所定の条件に対応した張力を精度良く制御することができる。
さらに、巻出し軸の制御においては,上記巻出しロールの巻径を検出する手段は,当該巻出し軸の回転角度当たりに巻き出される当該巻出し物の量から算定するようにし,巻取り軸の制御においては,上記巻取りロールの巻径を検出する手段は,当該巻取り軸の回転角度当たりに巻き取られる当該巻取り物の量から算定することによって,巻出しロール,または,巻取りロールの径の変化を容易確実に算出することができる。」

オ.【図1】「



(7)甲7(甲10)
甲7(甲10)には、次の記載及び図示がある。
ア.「本発明は、ロール紙の残量検知方式に関する。
一般に、ロール状の記録紙を用いたプリンタなどにあっては、その残量を常に監視してプリント途中で記録紙がなくなってしまうような事態を生ずる前にオペレータに記録紙の残りが少なくなったことを報知させる必要がある。」(1ページ左欄11?16行)

イ.「・・・従来のロール紙の残量検知手段では、ロール紙の残量を接触型の機械的手段を介して検知するようにしているために耐久性,信頼性ともに欠けるものになってしまうとともに、単なるリミットスイッチ3のオン,オフの切換動作による検知をなすようにしているためにロール紙の残量が規定値に達したか否かの2値による大まかな判断しかできず、実際の残量がどの程度なのかという計量の検出を行なわせることができないという欠点がある。」(1ページ右欄10?19行)

ウ.「本発明は以上の点を考慮してなされたもので、非接触形のセンサ手段を用いてロール紙の残量を計量的に検知することができるようにしたロール紙の残量検知方式を提供するものである。
本発明によるロール紙の残量検知方式にあっては、一定速度でプリンタなどへの給紙を行わせる場合、ロール紙の回転速度がロール径すなわちロール紙の残量に応じて変化することに着目し、ロール紙の回転速度を検出するマークおよびセンサ手段を用いてそのセンサ出力からロール紙の残量の計測を行わせるようにするものである。
・・・
第2図はロール紙1の回転速度を検出する具体的な一手段を示すもので、ロール紙1の一方の側面にその回転軸4を中心としてそれと一体に円板5を取付けるとともにその円板5の外側周辺に永久磁石片などによる磁気マーク6を設け(第3図参照)、かつその磁気マーク6に相対する固定位置にホール素子などからなる磁気センサ7を適宜空隙を介して配設することによって構成されている。」(1ページ右欄末行?2ページ右上欄1行)

エ.「・・・このように構成されたロール紙1の回転速度検出手段にあっては、ロール紙1の回転とともに円板5が回転し、その円板5の1回転ごとに磁気マーク6が磁気センサ7によって検出されて電気的なパルス状のセンサ出力が得られることになる。ロール紙1は一定速度での給紙が行われているあいだ回転するが、その際ロール紙1の回転速度すなわち円板5の回転速度はロール紙1の残量が少なくなるにしたがって速くなり、それに応じて磁気センサ7のパルス出力周期Tが次第に短くなる。」(2ページ右上欄2?12行)

オ.「また、ロール紙1の残量検知をより細分化して精度良く行わせるために、第6図(a),(b)にそれぞれ示すように円板5の周辺に複数の磁気マーク6を等分に設けることにより、ロール紙1の微小な残量変化をも有効に検知することができるようになる。」(3ページ左上欄3?8行)

カ.第2図及び第3図「




(8)甲8
甲8には、次の記載及び図示がある。
ア.「本発明は、例えば可撓性を有する帯状をした紙や金属板などを巻き取る装置における回転数検出で、特に従動側の巻き取りロールの回転数検出精度を向上させることのできる巻き取り装置における回転数検出装置に関する。」(1ページ右欄12?16行)

イ.「本発明は、・・・その目的は帯状材を巻き取る従動ローラの回転数を正確に検出し、帯状材の巻き取り量を均一にすることのできる巻き取り装置における回転数検出装置を提供することにある。」(2ページ左下欄最下行?右下欄4行)

ウ.「第1図乃至第3図において回転数検出装置4は、基体5,ターゲット素子6,回転吸収部材7,検出素子8などで構成されている。
基体5は、短かい略円柱状に形成され、その一端には係合孔13を設けたフランジ部14が一体に形成されている。このフランジ部14は、巻き取り装置側のガイド板9に外周係合溝10を係合させて回転する上記従動ローラ1の端面11に対向しており、この端面には係合孔13に対応する係合孔12が設けられている。
また、基体5の他端面15には一対の上記ターゲット素子6が略180度変位させて設けられている。このターゲット素子6は、例えば永久磁石などで構成される。」(3ページ左上欄13行?右上欄6行)

エ.「そして基体5は係合孔12と係合孔13を対応させて従動ローラ1の端面11にフランジ部14を当接させ、この状態で不図示の脱着手段を用いて取り外し可能に固定されて駆動ローラ1と一体に回転する。」(3ページ右上欄11?15行)

オ.「この検出素子8は例えばホール素子などで構成され、ターゲット素子6の回転通路に隣接配置され、ターゲット素子6が通過するとターゲット素子6の磁束による信号を例えば周波数-電圧変換器でなる検出信号変換器25(第2図参照)へ電気的に出力する。
このように構成した回転数検出装置4は、駆動ローラ2が回転し、帯状材3を介して従動ローラ1が回転すると基体5も一体に回転する。」(3ページ左下欄8?16行)

カ.「・・・これにより、検出素子8の前面をターゲット素子6が基体5の回転で横切り、このとき検出素子8から周期的に信号が得られる。この信号周期は、基体5と従動ローラ1とが一体に回転しているため、従動ローラ1の回転速度になり、またその周波数により回転数を知ることができる。
したがって、この回転数検出装置によれば、従動ローラ1の回転をターゲット素子6と検出素子8とで直接検出することができる。これにより、駆動ローラ1間で滑りが生じて、従動ローラ1が不自然な回転をしたとしても従動ローラ1と一体に回転するターゲット素子8からの信号を得るので回転数が正確に得られ、帯状材3の巻き取り量を制御することができる。」(3ページ右下欄3?17行)

キ.第2図「




(9)甲9
甲9には、次の記載及び図示がある。
ア.「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、カートリッジ入りのフィルムを、現像したり焼き付けたりする処理装置において、駆動モータによってカートリッジのスプール回動軸を回動させてフィルムを送り出しもしくは巻き取りするためのフィルム駆動機構に関するものである。」

イ.「【0003】
【発明が解決しようとする課題】・・・従来のフィルム駆動機構によれば、フィルムの先端が経路の途中に引っ掛かりする等の原因で、走行に過大な抵抗が発生した場合に、スプール回動軸に直結された駆動モータの回転が即時には止まらず、フィルムが折れ曲がったり、切断されてしまうという問題があった。
【0004】そこで、本発明は、スプール回動軸の回転に対して過大な抵抗が発生した場合に、速やかに駆動モータを停止して、フィルムの折れ曲がりや切断等の事故を未然に防ぐことのできるフィルム駆動機構を提供することを目的としてなされたものである。」

ウ.「【0005】
【課題を解決するための手段】本発明にかかるフィルム駆動機構においては、・・・駆動モータとカートリッジのスプール回動軸との間に、スプール回転軸の回転抵抗が増大したときに回転ズレを発生させる伝達トルク抑制機構を介装接続するとともに、伝達トルク抑制機構において発生した回転ズレを検知する検知手段と、回転ズレが所定以上になると前記駆動モータの回転を停止する回転制御手段とを具備するという手段を講じた。
【0006】
【作用】本発明は、上記手段を講じたので、スプール回動軸の回転に対して過大な抵抗が発生した場合には、駆動モータとカートリッジのスプール回動軸との間に介装接続された伝達トルク抑制機構が作動して回転ズレを発生させるので、過大なトルクでスプール回動軸が無理に回転されることはない。そして、検知手段によって、伝達トルク抑制機構において発生した回転ズレを検知し、回転ズレが所定以上になると回転制御手段によって前記駆動モータの回転を停止するので、フィルムに無理な力は作用しない。」

エ.「【0008】図1は本発明のフィルム駆動機構の構成を示した斜視図であり、フィルム現像装置もしくは焼付け装置の処理装置に内蔵されたフィルム駆動機構を示したものである。図1において、1はフィルム2が装填されたカートリッジ、3はカートリッジ1内のフィルム2を送り出しもしくは巻き取りするためのスプール回転軸、4は中心がスプール回転軸3に固定された従動側の回転制御板である。8は制御回路9によって回転制御される駆動モータ、7は駆動モータ8の駆動軸、5は中心が駆動軸7に固定された駆動側の回転制御板である。前記回転制御板4,5は、それぞれの中心を一致させるとともに、近接させて配置されている。前記従動側の回転制御板4には、複数の磁極M4と透孔H4がそれぞれ同心円周上に形成されている。前記駆動側の回転制御板5にも、複数の磁極M5と透孔H5がそれぞれ同心円周上に形成されている。なお、前記従動側の回転制御板4の磁極M4と、駆動側の回転制御板5の磁極M5とは、相互に吸引するように反対の磁極が形成されている。なお、両回転制御板4,5によって伝達トルク抑制機構が構成されている。」

オ.第1図「




2.無効理由についての判断
(1)無効理由1(特許法第36条第6項第2号)について
ア.訂正明細書の記載
訂正明細書には以下の記載がある。
「【0002】
【従来の技術】
薬剤分包装置として、熱融着性分包紙のシートをロール状に巻いたものを回転自在に支持したシート供給部からシートを引き出して移送する移送路にシール装置が設けられ、このシール装置の上流側でシートを2つ折りにすると共にその間に薬剤を供給した後シール装置によりシートを幅方向と両側縁部とを帯状に加熱融着して薬剤を分包するようにしたものが知られている。
【0003】
シートが使用されて無くなると新しいロールに交換され、その新しいロールからシートが引き出されて分包装置にセットされる。このシートロールから引き出されるシートは、2つ折りされた後周縁等を融着する際に正確に2つ折りされず、少しずれた状態で融着されることのないように常に一定の張力で引き出すのが好ましいが、実際にはシートの引出量に応じてロール径が変化するため、引出張力も少しずつ変動する。
【0004】
このため、上記シートロールの径の変化が生じても張力がほぼ一定となるように調整するシート張力調整装置が実公平1-36832号公報により提案されている。この公報によるシート張力調整装置は、シートロールをロール支持筒に着脱自在に嵌合装着し、シートロール側方に複数の巻径検出センサを径方向に配置し、この検出センサの信号によりロール支持筒内部に設けた電磁ブレーキの電磁力を調整してロール径が小さくなるにつれて段階的にブレーキ力を弱めることにより張力を一定となるように調整している。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上述した従来のシート張力調整装置では、シートの使用による巻量の変化を径方向に配置した巻径検出センサで段階的に検出する方式を採用しているため、検出センサのランクが切替わる径になると、芯管軸の偏心、シートの重量、巻き歪みなどの原因により電磁ブレーキのブレーキ力ランクが1回転毎に上下に変動するバイブレーション現象が生じる。このため、張力変動により分包部でシートを2つ折りした際にシートの縁部が正確に重ならない、いわゆる耳ずれが生じ、包装不良部分が生じることがある。
【0006】
又、ブレーキ力のランクが急激に変動するため幅方向に裂傷が生じたりすることもある。検出センサの誤動作の原因は、上記以外にも、光反射式のものを用いていることによるものもある。薬剤包装装置に使用されるシートの材料として、グラシン紙(半透明)、セロポリ紙(透明)等種々のものがあるが、これらシートの端面位置が各層毎に微妙に変化すると反射される反射光の戻りが異なり信号として検出されないため検出精度が悪化したり、特にセロポリ紙では湿度変化による影響が大きいため蛇行巻きされ易く、端面の凹凸が原因で検出精度が悪くなることもある。
【0007】
さらに、シートを分包部で2つ折りする位置より上流側に一般には分包紙に印字するためのサーマルプリンタが設けられるが、このサーマルプリンタにおいて印字ドットの欠けや印字装置の残量表示機構のランプが、バイブレーション現象により耐久性の低下を起こしたりする。」
「【0011】
この発明は、上記のような従来の薬剤分包装置における問題点に留意して、極薄のシートを巻いたロールペーパの巻状態によるロールペーパ直径の微妙な変動による影響で制御すべき段階的に選択されるブレーキ力のレベル変動を生じることなく各段階毎に的確にブレーキ力を設定しロールペーパの直径に応じた適正な張力を安定して給紙部に与え、シートに耳ずれや裂傷が生じたりせずに分包シートで薬剤を分包することのできる薬剤分包装置に用いられ、分包装置の給紙部における角度センサに対し回転角度データを与えることのできる薬剤分包用ロールペーパを提供することを課題とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
この発明は、上記課題を解決する手段として、非回転に支持された支持軸の周りに回転自在に中空軸を設け、中空軸にはモータブレーキを係合させ、中空軸に着脱自在に装着されるロールペーパのシートを送りローラで送り出す給紙部と、シートを2つ折りしその間にホッパから薬剤を投入し、薬剤を投入されたシートを所定間隔で幅方向と両側縁部とを帯状にヒートシールする加熱ローラを有する分包部とを備え、ロールペーパの回転角度を検出するために支持軸に角度センサを設け、分包部へのシート送り経路上でシート送り長さを測定する測長センサを設け、ロールペーパを上記中空軸に着脱自在に固定してその固定時に両者を一体に回転させる手段をロールペーパと中空軸が接する端に設け、両センサの信号に基づいてシート張力をロールペーパ径に応じて調整しながら薬剤を分包するようにした薬剤分包装置に用いられ、中空芯管とその上に薬剤分包用シートをロール状に巻いたロールペーパとから成り、ロールペーパのシートの巻量に応じたシート張力を中空軸に付与するために、支持軸に設けた角度センサによる回転角度の検出信号と測長センサの検出信号とからシートの巻量が算出可能であって、その角度センサによる検出が可能な位置に磁石を配置して成る薬剤分包用ロールペーパとしたのである。
【0013】
上記薬剤分包装置では、分包部での分包作用において耳ずれや裂傷が生じないように給紙部から供給されるシートのシート張力を調整して分包作業が行われる。その際、測長センサと角度センサの2つのセンサによる信号検出が前提である。上記2つのセンサによる検出信号を得ると、そのいずれか一方のセンサの所定量を基準として他方のセンサの変化による巻量の変化を直接得る。
【0014】
巻量の変化の所定範囲をロールペーパの巻量直径の変化に予め対応させておけば、巻量の変化を検出するだけでブレーキ力の段階的な制御のレベルを選択することができ、従って巻量の直径に応じてブレーキ力を制御しシート張力を各段階毎に最適な張力に調整することができることとなる。
【0015】
この場合、ブレーキ力を段階的に変化させてもその切替えによる張力の変化によって耳ずれや裂傷が生じない範囲内でブレーキ力が変化するようにブレーキ力の各ランクが順次大きい方から小さい方へ切替えられるようになっているから、従来のようにロールペーパの巻径をセンサで直接検出する方式では巻径の不均等な巻きによりブレーキ力のランク切替え直径付近でブレーキ力の各ランクが急激に上下に変動するような不都合はその制御方式の違いにより生じることはない。
【0016】
上記本発明の薬剤分包用ロールペーパは、上記薬剤分包装置に用いられる。使用の際は給紙部における支持軸の中空軸に着脱自在かつ接合回転自在に装着され、上記角度センサに対し中空軸に係合するブレーキ手段を制御するためシートの巻量データを検出可能に配設した磁石により発生させる。
【0017】
【実施の形態】
以下、この発明の実施形態について図面を参照して説明する。図1は薬剤分包装置の給紙部と分包部とを取り出した概略構成図である。給紙部は水平に支持された支持軸1に芯管Pに薬剤分包用のシートをロール状に巻いたロールペーパRが回転自在に装着され、上記ロールペーパRから引き出された包装シートSが送りローラ2、3を通り、次の分包部へ供給されるように形成されている。」
「【0019】
図2は給紙部にロールペーパRと芯管Pを装着した状態の主縦断面図である。図示のように、支持軸1はその一端がナットにより支持板11に取付固定された中心軸1aと、これに一体に嵌合された外軸1bと、上記外軸1bの左右両端寄り位置に設けた軸受12、12を介して回転自在に取り付けられる中空軸1cとから成る。
【0020】
13は中心軸1aの片端の軸ヘッド、14は外軸1bの片端のフランジ部である。中空軸1cの反対側端にもフランジ部15が設けられている。上記支持軸1に芯管Pとこれに巻回されたロールペーパRが装着されると、ロールペーパRは、支持軸1に中空軸1cを介して回転自在に支持されると共に、フランジ部15の内径面に適宜間隔に配置された複数個の磁石16とこれに対向して予め芯管Pの端面円周に沿って配設された強磁性体(鉄部)17に対する吸着力により、装着された芯管PとロールペーパRが中空軸1cに着脱自在に固定される。その固定時、芯管PとロールペーパRは中空軸1cと一体に回転する。」
「【0023】
磁石24とホール素子センサ25、及び近接スイッチ26と突起27については、さらに図2及び図5に示すように、芯管Pに設けた磁石24とホール素子センサ25から成る回転角度センサからの信号、及び近接スイッチ26と突起27から成る包装シートのずれ検出センサからの信号が、図3に示すように、制御回路30へ入力される(制御回路30については後で説明する)。
【0024】
即ち、第1実施形態の測長センサの信号と、上記回転角度センサの信号とからロールペーパRの包装シートSの繰出量を正確に算出してロールペーパRの巻直径の変化に対応したブレーキ力の調整をし張力調整を適正に行おうとするものである。
【0025】
図6に示すように、この実施形態の芯管Pの内周沿いと支持軸1の片端にそれぞれ設けられる磁石24とホール素子センサ25は、4つの磁石24が1つの基点から67.5°ずつ位置が異なる各4点に配置され、4つのホール素子センサ25は上記基点を通る中心線とこれに直交する中心線上の4つの位置に配置されている。」
「【0032】
以上の構成とした実施形態の薬剤分包装置ではシート張力を次のように調整しながら薬剤の分包作業が行われる。この実施形態では給紙部にセットされるロールペーパRは最大径d_(max)、最小径d_(0)とし、図8に示すように、ロータリエンコーダ32による測長信号に基づいて得られる包装シートの繰出量lと、角度センサであるホール素子センサ25のパルス信号に基づく角度θとによってモータブレーキ20のブレーキ力を4段階に制御してロールペーパRの直径の変化に応じて最適なブレーキ力で張力調整を行う。
【0033】
図示の例のロールペーパRは、最大径d_(max)=160mm、最小径d_(0)≒64mm、シート厚みγ=30μmが用いられている。従って、直径が包装シートSの使用によって変化する範囲を単純に4段階に分けるとすると、(160-64)/4=24mm直径が減少する毎にモータブレーキを変化させればよい。」

イ.無効理由1(特許法第36条第6項第2号)についての判断
請求人は、本件発明1の「その角度センサによる検出が可能な位置」との記載は、どのような位置に磁石が配されたロールペーパが本件発明1及び2の技術的範囲に入り、どのような位置に磁石が配されたロールペーパが本件発明1及び2の技術的範囲に入らないのか、明らかではなく、そして、回転角度を検出するためという要件を充足するだけであれば、支持軸のどの位置に角度センサを配置しても角度センサの配置の要件は充足されるから、「角度センサによる検出が可能な位置」は中空軸の全てを含むことになり、構成要件Cの「その角度センサによる検出が可能な位置」に磁石を配置するとの記載によって特定される技術的範囲が明確ではない、と主張している。(上記第4の3.(1)ア.)
上記ア.の摘記から、本件発明は、熱融着性分包紙のシートをロール状に巻いたものを回転自在に支持したシート供給部から、シートを引き出して移送する移送路にシール装置が設けられ、このシール装置の上流側でシートを2つ折りにすると共に、その間に薬剤を供給した後シール装置によりシートを幅方向と両側縁部とを帯状に加熱融着して薬剤を分包するようにした薬剤分包装置に用いられるロールペーパに関するものであり、従来、シートの引出量に応じたシートロールの径の変化が生じても張力がほぼ一定となるように調整するシート張力調整装置が提案されていたところ、当該シート張力調整装置は、シートの使用による巻量の変化を径方向に配置した巻径検出センサで段階的に検出する方式を採用しているため、検出センサのランクが切替わる径になると、芯管軸の偏心、シートの重量、巻き歪みなどの原因により電磁ブレーキのブレーキ力ランクが1回転毎に上下に変動するバイブレーション現象が生じる。このため、張力変動により分包部でシートを2つ折りした際にシートの縁部が正確に重ならない、いわゆる耳ずれが生じ、包装不良部分が生じる等の問題が発生することがあった。(段落【0002】?【0007】)
本件発明は、上記問題を解決することを課題とするもので、本件発明1は、
「A-e. ロールペーパの回転角度を検出するために支持軸の片端に角度センサを設け、
A-f. 上記中空軸と上記支持軸の固定支持板間で上記中空軸のずれを検出するずれ検出センサを設け、
A-g. 分包部へのシート送り経路上でシート送り長さを測定する測長センサを設け、
A-h. ロールペーパを上記中空軸に着脱自在に固定してその固定時に両者を一体に回転させる手段をロールペーパと中空軸が接する端に設け、
A-i. 角度センサ及び測長センサの信号に基づいてシート張力をロールペーパ径に応じて調整しながら薬剤を分包するようにし」た「薬剤分包装置」に用いられる「薬剤分包用ロールペーパ」であって、
「C. ロールペーパのシートの巻量に応じたシート張力を中空軸に付与するために、支持軸に設けた角度センサによる回転角度の検出信号と測長センサの検出信号とからシートの巻量が算出可能であって、その角度センサによる検出が可能な位置に複数の磁石を配置し、
D. その磁石をロールペーパと共に回転するように配設して成る」構成を備えるものである。(【請求項1】)
そして、本件発明1は、上記構成を採用することで、測長センサと角度センサの2つのセンサによる信号を検出すると、そのいずれか一方のセンサの所定量を基準として他方のセンサの変化による巻量の変化を直接得ることができるから、巻量の変化の所定範囲をロールペーパの巻量直径の変化に予め対応させておけば、巻量の変化を検出するだけでブレーキ力の段階的な制御のレベルを選択することができ、したがって巻量の直径に応じてブレーキ力を制御しシート張力を各段階毎に最適な張力に調整することができることとなる。この場合、ブレーキ力を段階的に変化させてもその切替えによる張力の変化によって耳ずれや裂傷が生じない範囲内でブレーキ力が変化するようにブレーキ力の各ランクが順次大きい方から小さい方へ切替えられるようになっているから、従来のようにロールペーパの不均等な巻きによりブレーキ力のランク切替え直径付近でブレーキ力の各ランクが急激に上下に変動するような不都合が生じることはなく、本件発明の課題が解決されることが理解できる。(段落【0013】?【0015】)
さらに、回転角度を検出する実施例として、ロールペーパRにおいてシートがロール状に巻かれた芯管Pの内周沿いに複数設けられた磁石24と、支持軸1の片端に設けられたホール素子センサ25が記載されている。(段落【0019】、【0020】、【0023】?【0025】)
そして、本件発明においては、磁石の磁力が角度センサによって検出できさえすれば、ロールペーパの回転角度が検出でき、その信号と、測長センサの信号に基いて、シート張力をロールペーパ径に応じて調整しながら薬剤を分包できる。
したがって、本件発明1は構成要件Cとして、磁石を「その角度センサによる検出が可能な位置」に配置することが特定されているところ、「その角度センサによる検出が可能な位置」とは、複数の磁石が配置されたロールペーパが、薬剤分包用シートの送り出しによって回転した際に、当該回転に基づく信号が角度センサに生じる位置、すなわち、ロールペーパと共に回転する当該磁石が接近することでホール素子センサのような角度センサでの磁力が強くなり、そして離れることで磁力が弱くなるような位置であることが理解できる。そうすると、「その角度センサによる検出が可能な位置」がどのような位置であるのかが、不明確であるということはできない。
なお、本件訂正によって本件発明1の構成要件A-eに、角度センサを設ける支持軸上の位置として、支持軸の「片端」が特定されたことにより、その位置はより明確にされている。

ウ.請求人の主張について
(ア)請求人は、本件発明1及び2は、構成要件Aに記載される薬剤分包装置と、構成要件BないしEに記載される薬剤分包用ロールペーパという2つの装置を組み合わせてなる装置(コンビネーション)であるところ、本件発明1及び2は、薬剤分包用ロールペーパに係るものであるにも関わらず、「その角度センサによる検出が可能な位置」に磁石を配置するとの記載は、薬剤分包装置の角度センサの感度、薬剤分包用ロールペーパに配置された磁石の磁力、および両者の位置関係の結果、磁石の磁力が角度センサによって検出可能という一定の条件が成立した場合に初めて実現される機能的な構成であり、薬剤分包装置との相互関係ないし協働関係を不明確なまま要素としている、と主張している(第4 3.(1)イ.)。
しかし、上記のとおり、ロールペーパにおいて「その角度センサによる検出が可能な位置」に複数の磁石を配置し、構成要件Aの薬剤分包装置に構成要件A-eの「支持軸の片端に角度センサ」を設ければ、ロールペーパの回転と共に回転する複数の磁石の磁力の強弱を検出することで、ロールペーパの回転角度を検出できるのだから、訂正明細書の特許請求の範囲の記載は、請求人が主張するような、薬剤分包装置との相互関係及び協働関係が不明確なまま要素として含んでいるとまではいえない。
よって、請求人の上記主張は当を得たものとはいえず、採用することはできない。

(イ)請求人は、本件訂正によって、角度センサの位置は支持軸の片端に特定されたものの、磁石と角度センサの距離関係、磁石の強さ、および角度センサの感度次第では、磁石を中空芯管のどの位置に配置したとしても、角度センサによる検出は可能になり、第三者にはなお「その角度センサによる検出が可能な位置」の外延は不明確である旨主張している。(第4 3.1ウ)
しかし、上記イ.に示したとおり、その「その角度センサによる検出が可能な位置」とは、複数の磁石が配置されたロールペーパが、薬剤分包用シートの送り出しによって回転した際に、当該回転に基づく信号が角度センサに生じる位置、すなわち、ロールペーパと共に回転する当該磁石が接近することでホール素子センサのような角度センサでの磁力が強くなり、そして離れることで磁力が弱くなるような位置であることが理解でき、ロールペーパのある位置に磁石を配置し、ロールペーパを回転させた際に、角度センサにおいて当該磁石の接近と離脱に基づく、磁力の検出の有無に応じて、当該箇所が、「その角度センサによる検出が可能な位置」であるか否か、区別できる。そうすると、磁石の配置箇所や磁力の強さ、及び角度センサの感度等を適宜変化させて、それぞれの変化に伴う角度センサの検出の有無に応じて、「その角度センサによる検出が可能な位置」の限界を把握することができるのであるから、「その角度センサによる検出可能な位置」の外延が不明確であるとの請求人の主張は失当である。

エ.無効理由1(特許法第36条第6項第2号)の結論
以上のとおりであるから、本件特許の訂正明細書の特許請求の範囲の記載は、本件発明1及び2が明確ではないとはいえず、特許法第36条第6項第2号の規定に適合するから、その特許は、特許法第123条第1項第4号の規定に該当せず、請求人が主張する無効理由1により、無効とすることはできない。

(2)無効理由2(特許法第29条第1項第3号)及び無効理由3(特許法第29条第2項)について
ア.本件発明1について
本件発明1は、上記第3に示したとおりの「薬剤分包用ロールペーパ」であるところ、当該「薬剤分包用ロールペーパ」は、構成要件A-aないしA-jを備えた「薬剤分包装置」に用いられるものであって、当該「薬剤分包装置」の「支持軸に設けた角度センサ」が、当該「薬剤分包用ロールペーパ」の「複数の磁石を配置」する位置を、「ロールペーパのシートの巻量に応じたシート張力を中空軸に付与するために、支持軸に設けた角度センサによる回転角度の検出信号と測長センサの検出信号とからシートの巻量が算出可能であって、その角度センサによる検出が可能な位置」と特定するものである。
(ア)対比
本件発明1と甲1発明とを対比する。
甲1発明の「薬剤分包機」、「給紙部分」、「分包部分」は、その機能と構造からみて、本件発明1の「薬剤分包装置」、「給紙部」、「分包部」にそれぞれ相当する。
同様に、甲1発明の「ロールペーパ」、「巻心部材3X」、「分包紙5X」、「分割マス」、「磁性体6X」は、本件発明1の「ロールペーパ」、「中空芯管」、「シート」、「ホッパ」、「磁石」にそれぞれ相当する。
甲1発明の「支軸2」と、本件発明1における、支持軸と支持軸の周りに回転自在に設けられた中空軸とを組み合わせた構造体とは、「ロールペーパが着脱自在に装着される軸」という限りにおいて一致する。
甲1発明の「磁気センサー9」と、本件発明1の「角度センサ」とは、「センサ」という限度で一致する。
甲1発明の「磁気センサ-9と磁性体6Xとの間にロール状に巻かれた分包紙が介在するように巻心部材3Xの周面に磁性体6Xを配置し」と、本件発明1の「角度センサによる検出が可能な位置に磁石を配置し」とは、「センサによる検出が可能な位置に磁石を配置し」という限りにおいて一致する。
よって、本件発明1と甲1発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。
<一致点>
軸に着脱自在に装着されるロールペーパのシートを送り出す給紙部と、
2つ折りされたシートの間にホッパから薬剤を投入する分包部とを備え、
センサを設けた、
薬剤分包装置に用いられ、
中空芯管とその上に薬剤分包用シートをロール状に巻いたロールペーパとから成り、
そのセンサによる検出が可能な位置に磁石を配置し、
その磁石をロールペーパと共に回転するように配設して成る
薬剤分包用ロールペーパ。

<相違点1>
本件発明1の薬剤分包装置の「給紙部」は、「軸」を「非回転に支持された支持軸の周りに回転自在に中空軸を設け、中空軸にはモータブレーキを係合させ」たものであり、さらに、「シート」を「送りローラ」で送り出すものであるのに対し、甲1発明の給紙部分が、そのようなものであるか明らかではない点。
<相違点2>
本件発明1の薬剤分包装置の「分包部」は、「薬剤を投入されたシートを所定間隔で幅方向と両側縁部とを帯状にヒートシールする加熱ローラを有する」のに対し、甲1発明の「分包部分」がそのようなものであるかは明らかではない点。
<相違点3>
「センサ」について、本件発明1は「角度センサ」であって、「ロールペーパの回転角度を検出するため」のものであって、「支持軸の片端」に設けるものであるのに対し、甲1発明は、「磁気センサー9」であって、「分包紙5Xを規定量消費したことを検出するため」のものであり、「ホルダー8」に設けられるものである点。
<相違点4>
本件発明1は、「上記中空軸と上記支持軸の固定支持板間で上記中空軸のずれを検出するずれ検出センサ」及び「分包部へのシート送り経路上でシート送り長さを測定する測長センサ」を設けるものであるのに対し、甲1発明がそのようなセンサを設けるものであるかは明らかではない点。
<相違点5>
本件発明1は、「固定時に両者を一体に回転させる手段」を、「ロールペーパと中空軸が接する端」に設けられるものであるのに対し、甲1発明は、「巻心部材3Xを着脱自在に」「支軸2」に「軸嵌」するものであるものの、一体に回転するものであるか、ロールペーパと中空軸が接する端に設けられるものであるかが明らかではない点。
<相違点6>
本件発明1の「薬剤分包装置」は、「角度センサ及び測長センサの信号に基づいてシート張力をロールペーパ径に応じて調整しながら薬剤を分包するようにし、さらに角度センサの信号とずれ検出センサの信号との不一致により上記中空軸に着脱自在に装着されたロールペーパと上記中空軸とのずれを検出するようにした」ものであるのに対し、甲1発明の「薬剤分包機」がそのようなものであるか明らかではない点。
<相違点7>
「センサ」により検出される「磁石」について、本件発明1の「磁石」は、「ロールペーパのシートの巻量に応じたシート張力を中空軸に付与するために、支持軸に設けた角度センサによる回転角度の検出信号と測長センサの検出信号とからシートの巻量が算出可能であって、その角度センサによる検出が可能な位置」に配置されるものであって、「複数」配置されるのに対し、甲1発明の「磁性体6X」は、「磁気センサー9」と「磁性体6X」との間に巻かれた分包紙が介在するような位置」に配置するものであり、複数配置されるかについては明らかではない点。

(イ)相違点についての検討
a.相違点7について
まず、相違点7について検討する。
上記相違点7は、磁石の配置や機能についての実質的な相違点である。すなわち、本件発明1は、上記相違点7に係る構成を備えることで、「シート巻量」を算出でき「シートの巻量に応じたシート張力を中空軸に付与」することで、シートにおける不具合の発生を防ぐことができるのであるのに対して、甲1発明は、「磁気センサー9」が「分包紙5Xを規定量消費したこと」を検出するものであるものの、「規定量」に達するまでの「シート巻量」を検出するものではないから、上記相違点7は、実質的な相違点である。
したがって、本件発明1は甲1発明ではない。
そして、甲1発明の磁性体6Xは、「分包紙5Xを規定量宛消費した時点で、上記の磁気センサー9が残量の分包紙5Xを透過して外部に到達する磁性体6Xの磁力を検知」するとの作用を奏するから、磁性体6Xを設ける巻心部材3Xの位置は、分包紙5Xの残量が規定量に達するまでは、磁力が分包紙5Xに遮られて検出されない位置であって、分包紙5Xの残量が規定量に達した際に分包紙5Xを透過する磁力が磁気センサー9が検出できるような強さとなるような位置、すなわち、巻心部材3Xの周面であって分包紙5Xに覆われた位置でなければならない。また、磁性体6Xの配置個数も、巻心部材3Xの周面に一つあれば分包紙5Xの残量は検出可能となる。
そうすると、甲1発明において、磁性体6Xを複数設け、かつ、角度センサによる回転角度の検出が可能な位置に配置することの動機付けは生じ得ない。むしろ、角度センサによる回転角度は常時検出する必要があるから、そのような位置に磁性体6Xを配置することは、磁力が分包紙5Xに遮られなくなり、磁力によって分包紙5Xの残量が規定量に達したか否かを区別できなくなるから、阻害事由が存在するというべきである。
ここで、甲7には、上記1.(7)に摘記したとおりの記載があり、ロール紙の回転速度を検出するマークである磁気マーク6は、回転軸4と一体に取り付けられた円板5の外側周辺に複数設けられていることの記載が見受けられるが、そもそも甲1発明には、磁性体6Xを複数とすることや、角度センサによる回転角度が検出可能な位置に配置することの動機付けはなく、むしろ、甲7に記載された事項を組み合わせることの阻害事由が存在するというべきものである。仮に、甲7に記載された事項を甲1発明に組み合わせることができたとしても、甲7に記載された複数の磁気マーク6は、回転軸4と一体に取り付けられた円板5に設けられているところ、本件発明1の「支持軸に設けた角度センサによる検出可能な位置」に相当する箇所に配置しているものではないから、甲1発明に甲7に記載された事項を組み合わせても、上記相違点7に係る本件発明1の構成を得ることはできない。
したがって、上記相違点7は、甲1発明及び甲7に記載された事項に基いて、当業者が容易に想到し得るものではない。
よって、甲1発明について、上記相違点7における本件発明1に係る構成を備えたものとすることは、当業者が容易になし得た事項であるとはいえない。

b.相違点3について
次に相違点3について検討する。
上記相違点3は、「センサ」の検出する対象や検出することの目的についての実質的な相違点である。すなわち、本件発明1の「角度センサ」は、「角度」を検出対象とするものであって、当該「角度センサによる回転角度の検出信号と測長センサの検出信号とからシートの巻量」を算出可能とすることで、「シートの巻量に応じたシート張力を中空軸に付与」して、シートにおける不具合の発生を防ぐことを目的とするものであるのに対し、甲1発明の「磁気センサー9」は、「磁性体6X」の磁気を検出対象とするものであって、「分包紙5Xを規定量消費したことを検出する」ことを目的とするものであるものの、「規定量」に達するまでの「シート巻量」を検出するものではないから、上記相違点3は、実質的な相違点である。
したがって、この点からも、本件発明1は、甲1発明ではない。
そして、上記a.に示したように、甲1発明において、磁気センサー9は、磁気センサー9と磁性体6Xとの間にロール状に巻かれた分包紙5Xが介在するように巻芯部材3Xの周面に配置された磁性体6Xの磁力を検出するものであるところ、巻芯部材3Xが回転する毎に磁性体6Xの磁力の検出が可能な位置に配置することの動機付けはないし、そのような位置に磁性体6Xを配置することには阻害事由が存在する。そうすると、甲1発明の「磁気センサー9」について、上記相違点3における本件発明1に係る構成である「ロールペーパの回転角度を検出するために」「支持軸の片端」に設けるものとすることを、当業者は容易には想到し得ない。
また、上記a.に示したように、甲1発明に甲7に記載された事項を組み合わせることには阻害事由が存在すること、また、甲1発明に甲7に記載された事項を組み合わせることができたとしても、甲7に記載された磁気センサ7は、本件発明1の「支持軸の片端」に相当する箇所に設けられているものではないから、甲1発明に甲7に記載された事項を組み合わせても、上記相違点3における本件発明1に係る構成を得ることはできない。

(ウ)小括
上記(イ)a.及びb.で検討したとおり、少なくとも上記相違点3及び7は実質的な相違点であるから、本件発明1は、甲1発明ではない。
また、本件発明1は、上記(イ)a.及びb.で検討したとおりであるから、上記相違点以外の相違点について検討するまでもなく、甲1発明及び甲7に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

イ.本件発明2について
本件発明2は、本件発明1の特定事項の全てを包含し、さらに限定されたものであるから、同様に、本件発明2は甲1発明ではない。また、本件発明2は、甲1発明及び甲7に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

ウ.請求人の主張について
請求人は、無効理由2及び3について、以下の(ア)及び(イ)のとおり主張している。(第4 3(2)ウ.)
(ア)薬剤分包用ロールペーパに配置された磁石を検出するのは、本件発明1においては角度センサであり、甲1発明においては紙の残量を検知するための磁気センサであるが、このようなセンサの違いは薬剤分包装置における構成の相違であり、薬剤分包用ロールペーパの構成の相違ではない。角度センサが薬剤分包装置に実際に備えられるかどうかは、薬剤分包用ロールペーパが角度センサによって検出可能な位置に磁石を備えているかどうかという構成の議論とは無関係である。

(イ)甲1発明のロールペーパを、構成要件Aを満たす薬剤分包装置に固定した際に、磁性体6Xが支軸に設けられた角度センサと協働して角度を検出可能であることは明らかである。

上記(ア)及び(イ)について検討すると、甲1発明の磁性体6Xは、角度センサによる回転角度の検出が可能な位置に配置することの動機は存在せず、むしろ、阻害事由が存在するというべきものであることは、上記ア.(イ)に示したとおりであるから、請求人の主張は当を得たものではなく採用できない。

エ.無効理由2(特許法第29条第1項第3号)及び無効理由3(特許法第29条第2項)の結論
以上のとおり、本件発明1及び2は、甲1発明ではないから、特許法第29条第1項第3号に該当せず、その特許は特許法第123条第1項第2号に該当しない。
また、本件発明1及び2は、甲1発明及び甲7に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものではなく、その特許は特許法第123条第1項第2号に該当しない。
よって、本件発明1及び2に係る特許は、無効理由2又は3により無効とすることはできない。

(3)無効理由4(特許法第29条第2項)について
ア.本件発明1について
(ア)対比
本件発明1と甲2発明とを対比する。
甲2発明の「薬剤分包機」、「給紙部分」、「分包部分」は、その機能と構成からみて、本件発明1の「薬剤分包装置」、「給紙部」、「分包部」にそれぞれ相当する。
同様に、甲2発明の「支持軸1」、「ロールペーパ」、「筒体2」、「巻心6」、「ペーパ4」は、本件発明1の「支持軸」、「ロールペーパ」、「中空軸」、「中空芯管」、「シート」にそれぞれ相当する。
甲2発明の「支持軸1の端部にねじ軸部11を形成し、このねじ軸部11にねじ係合した調整摘み12と上記支持軸1の外側に嵌合した摩擦板13との間にスプリング14を配置し、上記スプリング14の弾力により摩擦板13を筒体2の内周に設けたフランジ15に圧接している制動機構10を有し、制動機構10により筒体2に回転方向の負荷を付与し、」と、本件発明1の「中空軸にはモータブレーキを係合させ、」とは、「中空軸に中空軸の回転を制動する機構を作用させる」という限りにおいて一致する。
甲2発明の「巻芯6の端面と筒体2の端面に固定された円板5とが接する面に設けた」、「巻芯6を筒体2に着脱可能に嵌合して両者を磁力結合させる強磁性板8」と、「巻芯6の端面に」取り付けられた「筒体2の端面に固定された円板5に設けられた強磁性板8と磁力結合する複数の永久磁石7」は、「巻芯6」と「筒体2」とが「磁力結合」した状態では、両者は「固定」されているといえるから、本件発明1の「ロールペーパを上記中空軸に着脱自在に固定してその固定時に両者を一体に回転させる手段をロールペーパと中空軸が接する端に設け」たものに相当する。
そして、甲2発明と本件発明1は、「ロールペーパに複数の磁石を配置している」という限りにおいて一致する。
よって、本件発明1と甲2発明の一致点及び相違点は、次のとおりである。
<一致点>
非回転に支持された支持軸の周りに回転自在に中空軸を設け、
中空軸に中空軸の回転を制動する機構を作用させ、
中空軸に着脱自在に装着されるロールペーパのシートを送り出す給紙部分と、
2つ折りされたシートの間に薬剤を投入し、薬剤を投入されたシートをシールする分包部とを備え、
ロールペーパを上記中空軸に着脱自在に固定してその固定時に両者を一体に回転させる手段をロールペーパと中空軸が接する端に設けた、
薬剤分包装置に用いられ、
中空芯管とその上に薬剤分包用シートをロール状に巻いたロールペーパとから成り、
複数の磁石を配置している、
薬剤分包用ロールペーパ。

<相違点1>
「中空軸に中空軸の回転を制動する機構を作用させ」る点について、本件発明1は、「中空軸にモータブレーキを係合させ」るのに対し、甲2発明は、「支持軸1の端部にねじ軸部11を形成し、このねじ軸部11にねじ係合した調整摘み12と上記支持軸1の外側に嵌合した摩擦板13との間にスプリング14を配置し、上記スプリング14の弾力により摩擦板13を筒体2の内周に設けたフランジ15に圧接している制動機構10」を設け、「制動機構10により筒体2に回転方向の負荷を付与」するものである点。
<相違点2>
「給紙部」における「シート」の送り出しについて、本件発明1は、「ローラ」で送り出すものであるのに対し、甲2発明は、どのような手段によるものかは明らかではない点。
<相違点3>
本件発明1の「分包部」は、「ホッパから薬剤を投入」するものであるのに対し、甲2発明の「分包部分」が、どこから薬剤が投入されるかが明らかではない点。
<相違点4>
本件発明1の「分包部」は、「薬剤を投入されたシートを所定間隔で幅方向と両側縁部とを帯状にヒートシールする加熱ローラ」を有するものであるのに対し、甲2発明は、「シール」のためにどのような手段を有するかが明らかではない点。
<相違点5>
本件発明1は、「薬剤分包装置」に用いられる「薬剤分包用ロールペーパ」であって、当該「薬剤分包装置」については、「ロールペーパの回転角度を検出するために支持軸の片端に角度センサ」、「中空軸と支持軸の固定支持板間で中空軸のずれを検出するずれ検出センサ」及び「分包部へのシート送り経路上でシート送り長さを測定する測長センサ」が設けられ、「薬剤分包用ロールペーパ」については、当該「角度センサにより検出可能な位置」に、「複数の磁石」を配置したものであって、それにより、「角度センサ及び測長センサの信号に基づいてシート張力をロールペーパ径に応じて調整しながら薬剤を分包」し、「角度センサの信号とずれ検出センサの信号との不一致により上記中空軸に着脱自在に装着されたロールペーパと上記中空軸とのずれを検出するように」し、及び、「ロールペーパのシートの巻量に応じたシート張力を中空軸に付与するために、支持軸に設けた角度センサによる回転角度の検出信号と測長センサの検出信号とからシートの巻量が算出可能」なものであるのに対し、
甲2発明は、「薬剤分包装置」に用いられる「薬剤分包用のロールペーパ」であるものの、当該「薬剤分包装置」については、「角度センサ」、「ずれ検出センサ」及び「測長センサ」を備えたものであるか明らかではなく、「薬剤分包用のロールペーパ」に取り付けられた「複数の永久磁石7」は、「筒体2」の端面に固定された「円板5」に設けられた「強磁性板8」と磁力結合させるためのものである点。

(イ)相違点についての検討
まず、相違点5について検討する。
本件発明1の「薬剤分包用ロールペーパ」に配置した「複数の磁石」は、「薬剤分包装置」の「支持軸の片端」に設けられた「角度センサ」によって検出されるもので、当該構成を採用することで、「角度センサの信号とずれ検出センサの信号との不一致により上記中空軸に着脱自在に装着されたロールペーパと上記中空軸とのずれを検出するように」し、及び、「ロールペーパのシートの巻量に応じたシート張力を中空軸に付与するために、支持軸に設けた角度センサによる回転角度の検出信号と測長センサの検出信号」とからシートの巻量の算出を可能とするものである。
これに対し、甲2発明は、従来の巻芯の支持装置の「巻芯の装着動作において突起と切欠部とを位置合わせする必要があり、また筒体から巻芯を取外す場合にストツパを半径方向に押圧する必要があるため、巻芯の着脱に手間がかかるという欠点」及び「筒体にかかる負荷が調整操作の誤まり等によつて設定値より大きくなつた場合には、巻戻ししたペーパに大きな張力が作用して紙切れする」との欠点を解消しようとして、「巻芯の着脱操作が簡単に行なえ、しかも巻芯の支持用筒体に作用する回転方向の負荷が設定値を超えた場合にも巻戻したペーパが紙切れするようなことのない巻芯の支持装置を提供すること」を目的とするものである(上記1.(2)イ.参照)。そして、そのために、甲2発明は、「薬剤分包用のロールペーパ」に複数の「永久磁石7」を取り付け、筒体2の端面に固定された円板5に設けられた「強磁性板8」と磁力結合させたものである。このような構成を採用することで、「巻芯6と筒体2とを回転方向に結合することができる」、及び、「ペーパ4の引き出し作業時に、・・・筒体2に付与した負荷が設定値以上に保持されていると、巻芯6と筒体2との磁力結合部においてスリツプし、紙切れすることなくペーパ4を引き出すことができる」との作用効果を奏するものである(上記1.(2)エ.参照)。
そうすると、甲2発明の複数の「永久磁石7」は、あくまで、「ロールペーパ」と「筒体2」を磁力結合させるための固定手段であって、角度センサを機能させるための磁石ではない。また、甲2には、薬剤分包装置に角度センサを設けること、及び、複数の永久磁石7を角度センサを機能させるために用いることの記載や、示唆する記載はない。
よって、甲2に接した当業者にとって、甲2発明の固定手段としての複数の永久磁石7について、角度センサを機能させるものとして用いるようにすることの動機付けがあるということはできない。
また、甲2発明において、「ロールペーパ」と「筒体2」とが磁力結合された際には、「複数の永久磁石7」が設けられている巻芯6の端面は、「強磁性板8」が磁力結合して覆われることになり、個々の永久磁石7の位置を角度センサで判別できるような磁界が得られないものとなることが、その構成上明らかであるから、甲2発明の複数の永久磁石7を角度センサを機能させるために用いることには阻害事由が存在するといえる。
ここで、甲7には、上記1.(7)に摘記したとおりの記載があり、ロール紙の回転速度を検出するマークである磁気マーク6は、回転軸4と一体に取り付けられた円板5の外側周辺に複数設けられていることの記載が見受けられるが、上記したように、そもそも甲2発明の複数の「永久磁石7」は固定手段であって、角度センサを機能させるものとして用いることの動機付けがあるとはいえないし、角度センサを機能させるものとして用いることには阻害事由が存在するというべきものである。仮に、甲7に記載された事項を甲2発明に組み合わせることができたとしても、甲7に記載された複数の磁気マーク6は、回転軸4と一体に取り付けられた円板5に設けられているところ、本件発明1の「支持軸の片端」に設けられた「角度センサにより検出可能な位置」に相当する箇所に配置しているものではないから、甲2発明に甲7に記載された事項を組み合わせても、上記相違点5における本件発明1に係る構成を得ることはできない。
さらに、例えば、甲7の「ロール1」の端面に取り付けた「円板5」に「磁気マーク6」を設けることの記載や、甲8の「従動ローラ1」の「端面11」に配置された「ターゲット素子6」を設けることの記載から、ロールペーパの回転角度を検知する手段として、ロールペーパと一体回転する回転体の端部に磁石を設け、非回転部に磁気センサを設けることが、従来周知であったとしても、甲2発明の「支持軸1」の片方の端部、すなわち片端には、「制動機構10」の「調整摘み12」が「ねじ軸部11」に螺着されており、これは「調整摘み12の回転操作によつて筒体2に回転方向の負荷を付与し、ペーパ4を巻戻したときに筒体2が惰性回転しないようにする。」(上記1.(2)エ.参照)ためのものとして、制動機構10の必須の構成であるところ、当該位置に「調整摘み12」に代えて、角度センサを設けるようにすることには、阻害事由が存在する。したがって、甲2発明について、上記相違点5における本件発明1に係る構成(ロールペーパの回転角度を検出するために支持軸の片端に角度センサを設ける点)を備えたものとすることは、当業者が容易になし得ることとはいえない。

(ウ)小括
よって、本件発明1は、上記相違点5以外の相違点について検討するまでもなく、甲2発明並びに、甲1に記載された事項、甲7に記載された事項、及び、従来周知の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

イ.本件発明2(特許法第29条第2項)について
本件発明2は、本件発明1の特定事項の全てを包含し、さらに限定されたものであるから、本件発明2も、甲2発明並びに、甲1に記載された事項、甲7に記載された事項、及び、従来周知の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

ウ.請求人の主張について
請求人は、本件訂正後の本件発明1の構成要件Cについて、上記第4 3.(2)エ.に示したとおりの事項が、甲7に記載されているから、薬剤分包装置における残量検知という課題が共通している甲2発明に、甲1に記載された事項および甲7に記載された事項を組み合わせることによって、当業者は本件訂正後特許発明1および2に容易に想到し得たから、被請求人の主張は誤りである、と主張している。(第4 3.(3)ウ.)
しかし、甲7に、ロールペーパの回転角度を検知する手段として、ロールペーパと一体に回転する回転体に複数の磁石を設けるものが記載されているとしても、甲2発明には、ロールペーパの回転角度を検知するための複数の磁石を追加することの動機付けはないし、甲2発明に甲7に記載された事項を組み合わせても、本件発明1の「支持軸1の片端に角度センサを設ける」構成を得ることができないことは、上記ア.(イ)に示したとおりであるから、請求人の主張は当を得たものではなく、採用することはできない。

エ.無効理由4(特許法第29条第2項)の結論
以上のとおり、本件発明1及び2は、甲2発明並びに、甲1に記載された事項、甲7に記載された事項、及び、従来周知の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものではなく、その特許は特許法第123条第1項第2号に該当しない。
よって、本件発明1及び2に係る特許は、無効理由4により無効とすることはできない。

(4)無効理由5(特許法第29条第2項)について
ア.本件発明1について
(ア)対比
本件発明1と甲2発明とを対比すると、上記(3)ア.(ア)に示した<一致点>で一致し、かつ、<相違点1>?<相違点5>において相違する。

(イ)相違点についての検討
まず、相違点5について検討する。
a.相違点5についての判断は、上記(3)ア(イ)に示したとおりである。すなわち、甲2に接した当業者にとって、甲2発明の固定手段としての複数の永久磁石7について、角度センサを機能させるものとして用いるようにすることの動機付けがあるということはできない。また、甲2発明の複数の永久磁石7を角度センサを機能させるために用いることには阻害事由が存在するといえる。
また、甲2発明に甲7に記載された事項を組み合わせる動機付けはないし、むしろ甲2発明に甲7に記載された事項を組み合わせることには阻害事由が存在するといえるものである。そして、仮に、甲2発明に甲7に記載された事項を組み合わせることができたとしても、当業者は、上記相違点5における本件発明1に係る構成を容易に想到し得ない。
さらに、角度センサ自体が周知であったとしても、甲2発明の「支持軸1」の片方の端部、すなわち片端に「調整摘み12」に代えて、角度センサを設けるようにすることには、阻害事由が存在するといえる。

b.甲5については、2つ折りされた包装用フィルムFをヒートシールするものにおいて、包装用フィルムFのテンション値を検出し、検出した値が一定となるように制御する事項が記載されている。しかし、上記a.に示したように、甲2発明の薬剤分包用ロールペーパからは、角度センサが検出できるような回転角度に関する信号が得られないので、仮に甲5に記載された事項を甲2発明に組み合わせたとしても、上記相違点5における本件発明1に係る構成である「支持軸に設けた角度センサによる回転角度の検出信号と測長センサの検出信号とからシートの巻量が算出」できず、ひいては、「ロールペーパのシートの巻量に応じたシート張力を中空軸に付与する」ことはできない。よって、甲5に倣って、シート張力を一定に保つように制御するにしても、当該シート張力をシート巻量に応じたものとすることは、当業者が容易になし得た事項であるとはいえない。さらに、甲5に記載されたものは、縦シールによりフィルムFを筒状に形成し、横シールにより底部を形成した後に、食料品等の被包装物を充填し、最後に袋口側横シールして被包装物を封止する(甲5 段落【0002】)ものであって、本件発明1の構成要件A-dの「薬剤を投入されたシートを所定間隔で幅方向と両側縁部とを帯状にヒートシール」のように、全ての箇所のシールに先立って、薬剤を投入することは、甲5には記載されていないし、示唆する記載もない。むしろ、甲5に記載されたものにおいて、シールに先だって被包装物を投入したならば、フィルムFから被包装物がこぼれ落ちることは明らかであるから、そうすることの阻害事由が存在する。

c.甲6については、巻出し軸4の回転角度を検出するために、第1及び第2の回転検出器の信号に基づいて巻出し物のロール径に応じて、張力を調整しながら巻き出すとの事項及び角度センサによる検出が可能な位置に突起を配置しその突起を巻出し軸4と共に回転するように配設する事項が記載されているから、甲6が、巻出し物のロール径に応じて、張力を調整しながら巻出すのは、巻出し軸4の回転角度が検出できることが前提である。しかし、上記したとおり、甲2発明の薬剤分包用ロールペーパからは、角度センサが検出できるような回転角度に関する信号が得られないのであるから、甲6に記載された上記事項を適用することは、当業者が容易になし得た事項であるとはいえない。そして、仮に甲6に記載された事項を、甲2発明に適用しようとしても、甲6の「第1の回転検出器5は、例えば、巻出し軸4の周囲に所定の角度毎に突起を設け、その周囲にこの突起に対向して近接スイッチを設ける」(甲6 段落【0011】)との記載、及び、【図1】の図示から、甲6に開示されているのは、巻出し軸4側に突起を、その突起に対向する位置、すなわち、装置側に近接スイッチと第1の回転検出器5を設ける構成であり、上記相違点5における本件発明1に係る構成である「支持軸に角度センサを設け」る点は開示されていない。

d.甲7及び甲8に例示されるように、ロールペーパの回転角度を検知する手段として、ロールペーパと一体に回転する回転体に複数の磁石、非回転部に磁気センサを設けるとの事項が従来周知であって、さらに、甲7に、ロールペーパの回転速度を検出するための複数の磁気マーク6を、回転軸4に一体に取り付けられた円板5の外側周辺に設けることが記載されていたとしても、上記(3)ア.(イ)に示したとおり、甲2発明の「支持軸1」の片端に、「調整摘み12」に代えて、角度センサを設けるようにすることには、阻害事由が存在する。

e.甲9については、「フィルムの先端が経路の途中に引っ掛かりする等の原因で、走行に過大な抵抗が発生した場合に、速やかに駆動モータを停止して、フィルムの折れ曲がりや切断等の事故を未然に防ぐ」(甲9 段落【0003】、【0004】)ものであるところ、甲2は、「ペーパ4の引き出し作業時に、制動機構10の調整間違いなどによって筒体2に付与した負荷が設定値以上に保持されていると、巻芯6と筒体2との磁力結合部においてスリップし、紙切れすることなくペーパ4を引き出すことができる」(甲2 2ページ6?11行)ものであるから、大きな「負荷」が作用し得る状況下においても、甲2発明の磁力結合部のスリップによって、紙切れが生じないようにしたものであり、甲2発明に、甲9に記載された事項を適用して回転ずれの発生を検出することの動機付けはない。さらに、甲9には従動側回転センサーS4と駆動側回転センサーS5とから得られるパルス信号が一致しなくなることにより回転ずれの発生を検出する事項が記載されているが、上記に示したとおり、甲2発明の「永久磁石7」は固定手段であって、角度センサを機能させるために用いることには阻害事由が存在する。

したがって、本件発明1は、甲2発明並びに、甲5に記載された事項、甲6に記載された事項、甲7に記載された事項、甲9に記載された事項及び、従来周知の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(ウ)小括
よって、本件発明1は、上記相違点5以外の相違点について検討するまでもなく、甲2発明並びに、甲5に記載された事項、甲6に記載された事項、甲7に記載された事項、甲9に記載された事項、及び、従来周知の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

イ.本件発明2について
本件発明2は、本件発明1の特定事項の全てを包含し、さらに限定されたものであるから、本件発明2も、甲2発明並びに、甲5に記載された事項、甲6に記載された事項、甲7に記載された事項、甲9に記載された事項、及び、従来周知の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

ウ.無効理由5(特許法第29条第2項)の結論
以上のとおり、本件発明1及び2は、甲2発明並びに、甲5に記載された事項、甲6に記載された事項、甲7に記載された事項、甲9に記載された事項、及び、従来周知の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものではなく、その特許は特許法第123条第1項第2号に該当しない。
よって、本件発明1及び2に係る特許は、無効理由5により無効とすることはできない。

第7 まとめ
以上のとおり、本件発明1及び2に係る特許は、請求人の主張する無効理由1?5によっては無効とすることはできない。
審判費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人の負担とする。
よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
薬剤分包用ロールペーパ
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
非回転に支持された支持軸の周りに回転自在に中空軸を設け、中空軸にはモータブレーキを係合させ、中空軸に着脱自在に装着されるロールペーパのシートを送りローラで送り出す給紙部と、2つ折りされたシートの間にホッパから薬剤を投入し、薬剤を投入されたシートを所定間隔で幅方向と両側縁部とを帯状にヒートシールする加熱ローラを有する分包部とを備え、ロールペーパの回転角度を検出するために支持軸の片端に角度センサを設け、上記中空軸と上記支持軸の固定支持板間で上記中空軸のずれを検出するずれ検出センサを設け、分包部へのシート送り経路上でシート送り長さを測定する測長センサを設け、ロールペーパを上記中空軸に着脱自在に固定してその固定時に両者を一体に回転させる手段をロールペーパと中空軸が接する端に設け、角度センサ及び測長センサの信号に基づいてシート張力をロールペーパ径に応じて調整しながら薬剤を分包するようにし、さらに角度センサの信号とずれ検出センサの信号との不一致により上記中空軸に着脱自在に装着されたロールペーパと上記中空軸とのずれを検出するようにした薬剤分包装置に用いられ、中空芯管とその上に薬剤分包用シートをロール状に巻いたロールペーパとから成り、ロールペーパのシートの巻量に応じたシート張力を中空軸に付与するために、支持軸に設けた角度センサによる回転角度の検出信号と測長センサの検出信号とからシートの巻量が算出可能であって、その角度センサによる検出が可能な位置に複数の磁石を配置し、その磁石をロールペーパと共に向転するように配設して成る薬剤分包用ロールペーパ。
【請求項2】
前記角度センサをホール素子センサとし、測長センサから基準信号を得てずれを検出することを特徴とする請求項1に記載の薬剤分包用ロールペーパ。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、ロールペーパから引き出されるシートの張力を調整しながら給紙部からシートを送り分包部で薬剤を分包する薬剤分包装置に用いられる薬剤分包用ロールペーパに関する。
【0002】
【従来の技術】
薬剤分包装置として、熱融着性分包紙のシートをロール状に巻いたものを回転自在に支持したシート供給部からシートを引き出して移送する移送路にシール装置が設けられ、このシール装置の上流側でシートを2つ折りにすると共にその間に薬剤を供給した後シール装置によりシートを幅方向と両側縁部とを帯状に加熱融着して薬剤を分包するようにしたものが知られている。
【0003】
シートが使用されて無くなると新しいロールに交換され、その新しいロールからシートが引き出されて分包装置にセットされる。このシートロールから引き出されるシートは、2つ折りされた後周縁等を融着する際に正確に2つ折りされず、少しずれた状態で融着されることのないように常に一定の張力で引き出すのが好ましいが、実際にはシートの引出量に応じてロール径が変化するため、引出張力も少しずつ変動する。
【0004】
このため、上記シートロールの径の変化が生じても張力がほぼ一定となるように調整するシート張力調整装置が実公平1-36832号公報により提案されている。この公報によるシート張力調整装置は、シートロールをロール支持筒に着脱自在に嵌合装着し、シートロール側方に複数の巻径検出センサを径方向に配置し、この検出センサの信号によりロール支持筒内部に設けた電磁ブレーキの電磁力を調整してロール径が小さくなるにつれて段階的にブレーキ力を弱めることにより張力を一定となるように調整している。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上述した従来のシート張力調整装置では、シートの使用による巻量の変化を径方向に配置した巻径検出センサで段階的に検出する方式を採用しているため、検出センサのランクが切替わる径になると、芯管軸の偏心、シートの重量、巻き歪みなどの原因により電磁ブレーキのブレーキ力ランクが1回転毎に上下に変動するバイブレーション現象が生じる。このため、張力変動により分包部でシートを2つ折りした際にシートの縁部が正確に重ならない、いわゆる耳ずれが生じ、包装不良部分が生じることがある。
【0006】
又、ブレーキ力のランクが急激に変動するため幅方向に裂傷が生じたりすることもある。検出センサの誤動作の原因は、上記以外にも、光反射式のものを用いていることによるものもある。薬剤包装装置に使用されるシートの材料として、グラシン紙(半透明)、セロポリ紙(透明)等種々のものがあるが、これらシートの端面位置が各層毎に微妙に変化すると反射される反射光の戻りが異なり信号として検出されないため検出精度が悪化したり、特にセロポリ紙では湿度変化による影響が大きいため蛇行巻きされ易く、端面の凹凸が原因で検出精度が悪くなることもある。
【0007】
さらに、シートを分包部で2つ折りする位置より上流側に一般には分包紙に印字するためのサーマルプリンタが設けられるが、このサーマルプリンタにおいて印字ドットの欠けや印字装置の残量表示機構のランプが、バイブレーション現象により耐久性の低下を起こしたりする。
【0008】
一方、薬剤分包装置に用いられるロールペーパは、上述したグラシン紙やセロポリ紙の30μm程度の極薄のシートを中空芯管の外周にロール状に巻き付けて形成され、その長さは一般に300?500mとかなり長尺である。このようなロールペーパの巻径の変化を検出する上記巻径検出センサによる方法以外の方法として、ロールペーパを装着する回転支持軸上に支持軸の回転数を検出するセンサを取付ける方法、あるいはロールペーパの中空芯管の端に突出部を設け、突出部に設けたマークを光センサで読取る方法などが考えられる。
【0009】
しかし、回転支持軸上のセンサではロールペーパのシートを繰り出す際の張力の程度によっては回転支持軸と中空芯管との間に回転のずれが生じることがあり、ロールペーパの回転を正確に検出するためにはロールペーパ自身の回転を直接検出する必要があり、回転支持軸上のセンサによる方法は必らずしも適当ではない。
【0010】
又、中空芯管の端に突出部を設ける方法は、上記のような長尺のロールペーパは全体としてかなりの重さとなるため、回転支持軸への装着などの操作が重く、操作時に突出部を周囲の機器に当てて損傷させる虞れがあり、突出部を設ける方法は好ましくない。
【0011】
この発明は、上記のような従来の薬剤分包装置における問題点に留意して、極薄のシートを巻いたロールペーパの巻状態によるロールペーパ直径の微妙な変動による影響で制御すべき段階的に選択されるブレーキ力のレベル変動を生じることなく各段階毎に的確にブレーキ力を設定しロールペーパの直径に応じた適正な張力を安定して給紙部に与え、シートに耳ずれや裂傷が生じたりせずに分包シートで薬剤を分包することのできる薬剤分包装置に用いられ、分包装置の給紙部における角度センサに対し回転角度データを与えることのできる薬剤分包用ロールペーパを提供することを課題とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
この発明は、上記課題を解決する手段として、非回転に支持された支持軸の周りに回転自在に中空軸を設け、中空軸にはモータブレーキを係合させ、中空軸に着脱自在に装着されるロールペーパのシートを送りローラで送り出す給紙部と、シートを2つ折りしその間にホッパから薬剤を投入し、薬剤を投入されたシートを所定間隔で幅方向と両側縁部とを帯状にヒートシールする加熱ローラを有する分包部とを備え、ロールペーパの回転角度を検出するために支持軸に角度センサを設け、分包部へのシート送り経路上でシート送り長さを測定する測長センサを設け、ロールペーパを上記中空軸に着脱自在に固定してその固定時に両者を一体に回転させる手段をロールペーパと中空軸が接する端に設け、両センサの信号に基づいてシート張力をロールペーパ径に応じて調整しながら薬剤を分包するようにした薬剤分包装置に用いられ、中空芯管とその上に薬剤分包用シートをロール状に巻いたロールペーパとから成り、ロールペーパのシートの巻量に応じたシート張力を中空軸に付与するために、支持軸に設けた角度センサによる回転角度の検出信号と測長センサの検出信号とからシートの巻量が算出可能であって、その角度センサによる検出が可能な位置に磁石を配置して成る薬剤分包用ロールペーパとしたのである。
【0013】
上記薬剤分包装置では、分包部での分包作用において耳ずれや裂傷が生じないように給紙部から供給されるシートのシート張力を調整して分包作業が行われる。その際、測長センサと角度センサの2つのセンサによる信号検出が前提である。上記2つのセンサによる検出信号を得ると、そのいずれか一方のセンサの所定量を基準として他方のセンサの変化による巻量の変化を直接得る。
【0014】
巻量の変化の所定範囲をロールペーパの巻量直径の変化に予め対応させておけば、巻量の変化を検出するだけでブレーキ力の段階的な制御のレベルを選択することができ、従って巻量の直径に応じてブレーキ力を制御しシート張力を各段階毎に最適な張力に調整することができることとなる。
【0015】
この場合、ブレーキ力を段階的に変化させてもその切替えによる張力の変化によって耳ずれや裂傷が生じない範囲内でブレーキ力が変化するようにブレーキ力の各ランクが順次大きい方から小さい方へ切替えられるようになっているから、従来のようにロールペーパの巻径をセンサで直接検出する方式では巻径の不均等な巻きによりブレーキ力のランク切替え直径付近でブレーキ力の各ランクが急激に上下に変動するような不都合はその制御方式の違いにより生じることはない。
【0016】
上記本発明の薬剤分包用ロールペーパは、上記薬剤分包装置に用いられる。使用の際は給紙部における支持軸の中空軸に着脱自在かつ接合回転自在に装着され、上記角度センサに対し中空軸に係合するブレーキ手段を制御するためシートの巻量データを検出可能に配設した磁石により発生させる。
【0017】
【実施の形態】
以下、この発明の実施形態について図面を参照して説明する。図1は薬剤分包装置の給紙部と分包部とを取り出した概略構成図である。給紙部は水平に支持された支持軸1に芯管Pに薬剤分包用のシートをロール状に巻いたロールペーパRが回転自在に装着され、上記ロールペーパRから引き出された包装シートSが送りローラ2、3を通り、次の分包部へ供給されるように形成されている。
【0018】
分包部は、三角板4で2つ折りにされた際にホッパ5から所定量の薬剤が投入された後、ミシン目カッタを有する加熱ローラ6により所定間隔で幅方向と両側縁部とを帯状にヒートシールするように設けられている。なお、分包部はこれ以外の構成部材も多数あるが、複雑になるのを避けるため必要な部材のみを示している。
【0019】
図2は給紙部にロールペーパRと芯管Pを装着した状態の主縦断面図である。図示のように、支持軸1はその一端がナットにより支持板11に取付固定された中心軸1aと、これに一体に嵌合された外軸1bと、上記外軸1bの左右両端寄り位置に設けた軸受12、12を介して回転自在に取り付けられる中空軸1cとから成る。
【0020】
13は中心軸1aの片端の軸ヘッド、14は外軸1bの片端のフランジ部である。中空軸1cの反対側端にもフランジ部15が設けられている。上記支持軸1に芯管Pとこれに巻回されたロールペーパRが装着されると、ロールペーパRは、支持軸1に中空軸1cを介して回転自在に支持されると共に、フランジ部15の内径面に適宜間隔に配置された複数個の磁石16とこれに対向して予め芯管Pの端面円周に沿って配設された強磁性体(鉄部)17に対する吸着力により、装着された芯管PとロールペーパRが中空軸1cに着脱自在に固定される。その固定時、芯管PとロールペーパRは中空軸1cと一体に回転する。
【0021】
上記中空軸1cにはモータブレーキ20が係合し、ロールペーパRから繰り出される包装シートSに適度な張力を付与している。モータブレーキ20は支持板11に取付けられており、図示しない伝動ベルトを介して歯車ユニット21を回転させ、その出力軸上に設けたピニオン22が、フランジ部15の外端面に設けた大歯車23に係合して中空軸1cにブレーキ力を与えるようになっている。
【0022】
モータブレーキ20は、小さな交流モータ(AC)であり、供給電源として直流電圧を加えることによりブレーキ力を与えるように使用される。この場合、後で説明するように、直流電圧の値を4段階に変化させて繰り出される包装シートSの張力の大きさに応じてブレーキ力を変化させる。
【0023】
磁石24とホール素子センサ25、及び近接スイッチ26と突起27については、さらに図2及び図5に示すように、芯管Pに設けた磁石24とホール素子センサ25から成る回転角度センサからの信号、及び近接スイッチ26と突起27から成る包装シートのずれ検出センサからの信号が、図3に示すように、制御回路30へ入力される(制御回路30については後で説明する)。
【0024】
即ち、第1実施形態の測長センサの信号と、上記回転角度センサの信号とからロールペーパRの包装シートSの繰出量を正確に算出してロールペーパRの巻直径の変化に対応したブレーキ力の調整をし張力調整を適正に行おうとするものである。
【0025】
図6に示すように、この実施形態の芯管Pの内周沿いと支持軸1の片端にそれぞれ設けられる磁石24とホール素子センサ25は、4つの磁石24が1つの基点から67.5°ずつ位置が異なる各4点に配置され、4つのホール素子センサ25は上記基点を通る中心線とこれに直交する中心線上の4つの位置に配置されている。
【0026】
上記配置は、磁石24とホール素子センサ25の数と配置が最も合理的な組合せとして選定したものであり、例えば図7の(a)?(d)に示すように、種々の変形例があり得る。しかし、いずれの配置であれホール素子センサ25が芯管Pの回転を表す角度信号は芯管Pが22.5°回転する毎に1つのパルス信号を発する点ではいずれの配置であってもよいことは説明するまでもない。
【0027】
なお、上記芯管Pの回転を検出する検出器として上記例では磁石24とホール素子25の組合せとしたが、これ以外にも光センサを用いることもできる。光センサは、発光素子と受光素子から成るものとし、これらをホール素子25と同様に支持軸1(外軸1b)の片端に固定して取り付ける。
【0028】
但し、取付位置は図2のホール素子センサ25より外端寄りに外軸1bのフランジ端の一部を延長し、又は同等の取付座を形成し、これに対応して芯管Pの側端にも突起部を所定の角度ピッチ22.5°で、かつ光センサの発光素子と受光素子で突起部を挾むように設ける。光センサと突起部の数はホール素子センサ25の場合と同様である。
【0029】
図3は給紙部から包装シートを分包部へ送り薬剤を分包する装置の主要部材を制御する回路の概略ブロック図である。制御回路30は、エンドセンサ31からの信号、送りローラ3に設けられたロータリエンコーダ32からの信号、あるいは加熱ローラ6の軸に連結されるモータ6aの出力軸上でその回転数を計測する回転数カウンタ33からの信号のいずれかによりモータブレーキ20へブレーキ力を与えるための制御指令、及びモータ6aへの制御指令を出力するように構成されている。なお、34は外部からデータを入力するための入力部である。
【0030】
図5は図2の矢視V-Vから見た側面図であり、主として上記包装シートのずれ検出センサの配置を示すためのものである。この例では支持板11に1つの近接スイッチ26が設けられ、支持軸1の回転する中空軸1c端のフランジ部15に16ケの突起27が形成されている。
【0031】
このずれ検出センサは、前述したホール素子センサ25による回転角度センサの信号を基準として、その基準信号と同一ピッチの信号が検出されないことにより包装シートの繰出しずれの有無を検出しようとするものである。
【0032】
以上の構成とした実施形態の薬剤分包装置ではシート張力を次のように調整しながら薬剤の分包作業が行われる。この実施形態では給紙部にセットされるロールペーパRは最大径d_(max)、最小径d_(0)とし、図8に示すように、ロータリエンコーダ32による測長信号に基づいて得られる包装シートの繰出量lと、角度センサであるホール素子センサ25のパルス信号に基づく角度θとによってモータブレーキ20のブレーキ力を4段階に制御してロールペーパRの直径の変化に応じて最適なブレーキ力で張力調整を行う。
【0033】
図示の例のロールペーパRは、最大径d_(max)=160mm、最小径d_(0)≒64mm、シート厚みγ=30μmが用いられている。従って、直径が包装シートSの使用によって変化する範囲を単純に4段階に分けるとすると、(160-64)/4=24mm直径が減少する毎にモータブレーキを変化させればよい。
【0034】
このとき、各段階毎のシート長さは次のようになる。任意の直径のときのロールペーパRの巻き長さLは次式で表される。
【0035】
【数1】

【0036】
一方、ロールペーパRの直径は次式となる。
【0037】
d_(max)=d_(0)+2×nγ ……(2)
(1)式からロールペーパRが最大径のときの巻き長さL_(max)は、
L_(max)=〔64×n+n(n+1)×30×10^(-3)〕π
(2)式から d_(max)=64+2×30n×10^(-3)=160(mm)
よって n=96/6×10^(-2)=1600 回
故に、L_(max)=(64+1601×30×10^(-3))×1600π
=562.688(m)
今、ロールペーパRの直径が減少する段階を4段階に分けて、最大径から順に径が小さくなる各段階NをN=1,2,3,4と呼ぶこととするとそれぞれの段階での各巻長さの最大長は次のようになる。
【0038】
N=1の時 L_(max)=562.688(m) (n=1600,d_(max)=160)
N=2の時 L_(max)=376.800(m) (n=1200,d_(max)=136)
N=3の時 L_(max)=221.056(m) (n= 800,d_(max)=112)
N=4の時 L_(max)= 95.456(m) (n= 400,d_(max)= 88)
なお、図8では磁石24とホール素子センサ25の数は前述したこの実施形態の例とは異なっているが、前述したように角度22.5°回転する毎に1つのパルス信号が出力されることについては同じであるから、理解し易いように、又説明の便宜上異なる配置例を用いている。
【0039】
図示のように、包装シートの繰出量lを繰出す際に(a)のように巻量半径が大きければ角度センサのパルス数は少なく、(b)のように巻量半径が小さければパルス数は多くなる。従って、最大径のパルス数が例えば図示のように3、最小径の数が10であれば、パルス数が3?10に変化する過程を、例えば4段階に分けてロールペーパRの直径の変化に対応させて各直径段階に対応した張力を包装シートSに付与し得る直流電圧をモータブレーキ20へ送りブレーキ力を調整する。
【0040】
上記張力レベルN=1?4とパルス数との関係は図1の実際の例では次の通りである。ロールペーパRの製品の最大径160mm、最小径64mmとすると、最大径での1回転の繰出量はπ×160mmであり、角度センサ25は22.5°間隔で1つの(1回転当り16ケ)パルス信号を発するから、1つのパルス信号を発する毎に繰出される包装シートSの長さは、π×160/16=314m/mとなり、3140m/mの繰出量ではパルス数10ケとなる。
【0041】
同様に最小径での繰出量とパルス数との関係は、π×64/16=129.5m/mから3140m/mの繰出量ではパルス数3140/1295×10=24.2ケとなる。
【0042】
上記パルス数の変化を4段階に分けて直流電圧を各張力レベル毎に対応させて変化させると次のようになる。
【0043】

なお、上記説明では繰出量を一定とし角度センサのパルス数の変化により張力レベルNを調整するとしたが、反対に角度センサの一定数のパルス数を基準として繰出量の変化によりペーパ巻量の状態を推定して張力レベルを調整するようにしてもよいことは説明するまでもない。以下前者の調整法を中心にさらに具体的に説明する。
【0044】
図9、図10に上記張力調整の作用のフローチャートを示す。図9は張力調整装置が通常モードに入るための特殊モードのフローチャート、図10は通常モードのフローチャートである。
【0045】
図9の特殊モードは分包装置における通常の分包作業に入る前に予め動作条件をチェックし、通常モードに入りやすい状態に条件を揃えておくための予備的な作用を意味する。包装シートを分包装置に最初にセットして分包作業を開始するまでにシートのセット状態が正しく行われているかの準備作業は、一般的には手動によりインチング操作して行われることが前提であり、必ず制御モードはこの特殊モードを通過する。
【0046】
ステップS_(0)での特殊モードであるかの判定は、条件としてエンドセンサ、ジョイントシールの作動、インチングモード、巻量センサの逆転検出のいずれか1つでも検出されれば、特殊モードの作動を行うように判定される。ジョイントシールの作動とは1つのロールペーパが消費され紙切れとなっている間に次のロールペーパを給紙部にセットし前のロールペーパとの紙継ぎ動作をすることである。
【0047】
インチングモードとは、全ての作用の開始前に制御回路はスイッチによりインチングモードに投入され前述のように手作業で包装シートがセットされるが、その動作中はずっとインチングモードであるからこれを確認するための条件である。
【0048】
なお、作業の前提として特殊モードに入る必要があるのは、ロールペーパを供給する際に必ずしも新しい完全なロールペーパとは限らず巻量が例えば半分程度のものを途中からセットする場合があるからである。従って、以下で説明するように、ロールペーパが半分程度のものである場合、全量の巻量に対応する張力より小さいがその巻量に合致する張力より少し大きい中間的な張力に予め張力調整が行われる。
【0049】
まず、ステップS_(0)で特殊モードと判定されると、ステップSS_(1)で張力を最大張力に設定し、同時に各種センサ(基準センサ、回転数カウンタ、巻量センサ、芯管滑りセンサ)を作動状態とする(SS_(2))。この状態で手動によるインチング操作で包装シートを少しずつ送り、測長センサであるロータリエンコーダ32の信号と角度センサであるホール素子センサ25の信号を読取る。
【0050】
上記読取られた各センサの信号からステップSS_(5)でロールペーパ巻量を演算する。演算は前述した概略説明による計算方法に従って行われる。この演算によりロールペーパの巻量が全量か又は例えば半分程度であるかが求められ、この演算が行えないとき(NO)はステップSS_(3)に戻り、演算が行われたときはステップSS_(7)で再び特殊モードへ入る時の条件と同じ条件が全て解除されているかどうかを判断し、全ての条件が解除されていれば、ステップSS_(8)で適正張力に制御する。なお、ステップSS_(9)、SS_(10)は芯管の滑り検出制御であり、これについては後で説明する。
【0051】
上記ステップSS_(8)での張力制御は、例えばロールペーパ巻量が全量(新品)のときは、最大張力の直流電圧を25Vに設定する。あるいは巻量が半分程度の時は20V程度に設定し、急激な張力変動を生じないような値に予めセットしておく。
【0052】
上記適正張力の制御が行われると、フローの先頭に戻り、再びステップS_(0)で特殊モードの判定を行うが、上記予備的な作用によりここでは当然通常モードの処理〔A〕へ進む。
【0053】
図10の通常モードへフローが進みインチングモードのスイッチが手動で切替えられると、まずステップS_(1)で前回設定データの読出しをし、各種センサを引続き作動状態とする(S_(2))。従って、この場合包装装置の通常作動が始まっており、作動開始時には張力は特殊モードで適正に設定された直流電圧値で制御されている。
【0054】
次に、ステップS_(3)、S_(4)、S_(5)で特殊モードの時と同様に測長センサ信号、角度センサ信号が読込まれ、ロールペーパの巻量演算が行われる。この演算も基本的に前述した演算方法に従って行われる。その結果、全量の巻量で始まるロールペーパRの場合は、図示のように、各ステップS_(6)、S_(8)、S_(10)、S_(12)での巻量の各判定に従って各ステップS_(7)、S_(9)、S_(11)、S_(13)で25V、16V、12V、8Vの直流電圧への制御が行われる。以上の巻量と直流電圧制御の関係は図11に示す通りである。
【0055】
上記各ステップを経ていずれかのルートでの張力制御が行われた後、この実施形態ではさらに芯管の滑り動作の有無がステップS_(14)で行われる。この滑り動作のチェックは、前述した近接スイッチ26を用いて行う。近接スイッチ26の配置は、図5に示すように、1つの近接スイッチ26と16ケの突起(強磁性体)の組合せで前述した角度センサとしてのホール素子センサ25による角度検出手段の場合と同様に角度22.5°に1つずつのパルス信号が得られる。
【0056】
上記2種類の角度センサは、両方共同じ形式のセンサを用いてもよいことは言うまでもない。このような角度センサによる各回転角度毎のパルス信号と回転角度の関係を図12のタイムチャートに示す。図示のように、巻量検出チャートで示されるパルス信号に対し滑り検出センサによるパルス信号が、芯管の巻状態が張力によって変動しない限り、同じタイミングで同期して得られる。
【0057】
しかし、上述した各直流電圧によるモータブレーキ20の回転抵抗が適当でなく、例えばある張力レベルN=2において張力がやや強過ぎたとするとロールペーパRと芯管Pが一体となって強く回転し、例えば磁石16による強磁性体17への吸着固定位置がずれたりすると、ホール素子センサ25による信号は各22.5°の角度ずつのパルス信号を発するが、近接スイッチ26によるパルス信号は上記ずれによって同じ位置で2つが重なり、次の角度位置ではパルス信号が出ないということがある。
【0058】
以上のようなずれを起こしたときのパルス信号の変化を図12に示している。滑り検出センサのパルス信号は1回転後のC、Dの位置でパルス信号がなく、その後DとAの間に少しずれてパルス信号が生じた場合を示している。
【0059】
この場合は、1回転Cの位置で滑り検出センサのパルスがないことを巻量検出センサを基準として検出することにより滑りを検出し、張力が例えばN=2における直流電圧16Vでは大き過ぎる場合14Vに電圧を減少させるというように張力の緊張緩和制御を行って適正張力に調整することにより位置Dを過ぎた任意の位置で再びパルス信号が出力されるようになる。
【0060】
以上のようにして芯管Pの張力ずれに対する制御を必要に応じて行った後、ステップS_(16)でロールペーパの残量の有無をエンドセンサ31の信号によりチェックし、包装シートが終端でない限りステップS_(3)の前に戻り、上記演算を繰り返して包装シートの巻量に応じた適正な張力の制御を続行する。
【0061】
エンドセンサ31で包装シートSの終端が検出されるとその信号に基づいて張力制御は終了する。但し、さらに分包作業を続行したいときは、特殊モードに切替えてロールペーパRを新しいものに取り替え紙継ぎをして上記動作を続行すればよいことは説明するまでもない。
【0062】
なお、前述した特殊モードにおけるフローチャートの説明でステップSS_(9)、SS_(10)は点線で示しているが、これは特殊モードでは必ずしも必要ないが、設けるとすると上述した通常モードでの滑り検出動作のステップS_(14)、S_(15)と同様にして行えばよい。
【0063】
以上の説明ではロールペーパRは完全な全量巻の製品であることを前提として説明したが、たとえばロールペーパRとして半分程度の巻量のものが給紙部にセットされたときは、特殊モードで予め張力状態を全量巻きのロールペーパを繰り出して半分程度となったときの通常モードでの張力制御状態より少し大きい張力状態に制御した後通常モードに入るから、張力状態が大きく異なるため急激に張力状態を変化させることがなくスムースに通常モードに入り得ることは明らかであろう。
【0064】
又、上記実施形態では近接スイッチ26と複数の突起27(16ケ)の組合わせによるセンサは、芯管Pの中空軸1cに対する「すべり」を検出するものとして説明したが、このセンサを前述した磁石24とホール素子センサ25の組合わせによるセンサに代えて角度検出センサとして用いることもできる。
【0065】
近接スイッチ26と突起27の組合わせによるセンサは、ブレーキモータ20によるブレーキ力の付与に異常(例えば故障によりブレーキモータ20が停止することなど)が生じない限り、検出パルスは図12に示すようにホール素子センサ25による角度の検出と同じタイミングでパルス信号を出力しており、従ってそのパルス信号をそのまま角度検出信号として用いればよい。
【0066】
但し、近接スイッチ26による信号を角度検出センサとして用いる場合は、当然ホール素子センサ25による角度検出センサは省略される。この場合、近接スイッチ26による角度検出センサは角度検出をすると共にすべり検出センサとしても共用することとなるが、すべり検出センサとしてすべりを検出する際には基準となる信号が必要である。この基準信号としてロータリエンコーダ32の信号を用いるものとする。
【0067】
前記ブレーキ力の異常が生じた場合中空軸1cとそのフランジ15がブレーキモータ20と共に停止し、このため芯管Pとフランジ15との間ですべりが生じるが、紙の送りがある程度行なわれている限りロータリエンコーダ33が信号を発生し、そのパルス信号と近接スイッチ26によるパルス信号が不一致となった瞬間からすべりが生じていることとなるからである。
【0068】
【効果】
以上詳細に説明したように、薬剤分包装置に用いられるこの発明の薬剤分包用ロールペーパは、中空芯管とこれに巻付けたロールペーパとから成り、シート巻量が検出できる位置に配置した磁石を支持軸の角度センサで検出してシート張力の調整を可能とするものとしたから、簡易な構成のロールペーパであって、これを薬剤分包装置に用いることによりその分包作用において耳ずれや裂傷のない分包作用を実現できるという利点が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】分包装置の給紙部と分包部の主要構成の概略図
【図2】ロールペーパを装着した給紙部の縦断面図
【図3】包装シートの張力調整装置の制御回路の概略ブロック図
【図4】図2の矢視IV-IVから見た給紙部の側面図
【図5】図2の矢視V-Vから見た給紙部の側面図
【図6】角度センサの概略配置構成図
【図7】角度センサの他の変形例の概略配置構成図
【図8】原理作用を説明する図
【図9】特殊モード作用を説明するフローチャート
【図10】同上の通常モード作用を説明するフローチャート
【図11】同上の演算モードでの直流電圧と巻量との関係を示すグラフ
【図12】滑り検出センサによる滑り作用検出方法の説明図
【符号の説明】
1 支持軸
2 送りローラ
3 送りローラ
4 三角板
5 ホッパ
6 加熱ローラ
7 プリンタ
20 モータブレーキ
25 ホール素子センサ
26 近接スイッチ
30 制御回路
31 エンドセンサ
32 ロータリエンコーダ
33 回転数カウンタ
S 包装シート
P 芯管
R ロールペーパ
W 分包シート
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2018-06-11 
結審通知日 2018-06-13 
審決日 2018-06-26 
出願番号 特願2000-166273(P2000-166273)
審決分類 P 1 113・ 537- YAA (B65B)
P 1 113・ 121- YAA (B65B)
P 1 113・ 113- YAA (B65B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 岩田 健一関谷 一夫山崎 勝司  
特許庁審判長 千壽 哲郎
特許庁審判官 久保 克彦
小野田 達志
登録日 2008-10-03 
登録番号 特許第4194737号(P4194737)
発明の名称 薬剤分包用ロールペーパ  
代理人 福永 聡  
代理人 吉田 昌司  
代理人 村上 友紀  
代理人 松下 外  
代理人 飯島 歩  
代理人 藤田 知美  
代理人 村上 友紀  
代理人 松下 外  
代理人 石川 大輔  
代理人 難波 早登至  
代理人 横井 知理  
代理人 吉田 昌司  
代理人 町野 静  
代理人 山本 健策  
代理人 飯島 歩  
代理人 横井 知理  
代理人 町野 静  
代理人 山本 秀策  
代理人 真鍋 怜子  
代理人 橋本 卓行  
代理人 藤田 知美  
代理人 真鍋 怜子  

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