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審決分類 審判 訂正 ただし書き3号明りょうでない記載の釈明 訂正する H01L
審判 訂正 (特120条の4,3項)(平成8年1月1日以降) 訂正する H01L
審判 訂正 ただし書き1号特許請求の範囲の減縮 訂正する H01L
審判 訂正 4項(134条6項)独立特許用件 訂正する H01L
管理番号 1344159
審判番号 訂正2018-390066  
総通号数 227 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-11-30 
種別 訂正の審決 
審判請求日 2018-04-03 
確定日 2018-09-07 
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6056934号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 特許第6056934号の特許請求の範囲を本件審判請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-12〕について訂正することを認める。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6056934(以下「本件特許」という。)の請求項〔1-12〕に係る特許についての主な手続の経緯は、以下のとおりである。

平成27年10月 9日 特許出願
(本件特許に係る出願は、平成20年9月3日に出願された特許出願(特願2008-225408号)の一部を、特許法第44条第1項の規定による新たな特許出願(特願2015-200794号)としたものである。)
平成27年11月 9日 審査請求
平成28年11月 4日 特許査定(起案日)
平成28年12月16日 特許権の設定登録 (特許第6056934号)
平成29年 1月11日 特許掲載公報発行
平成30年 4月 3日 本件訂正審判請求

第2 請求の趣旨
本件訂正審判の請求の趣旨は、本件訂正審判に係る特許第6056934号の特許請求の範囲を本件訂正審判請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1ないし12について訂正することを認める、との審決を求めるものである。

第3 訂正の内容
請求人が求めている具体的な訂正(以下「本件訂正」という。)の内容は、以下の訂正事項のとおり訂正することを求めるものである(当審注:訂正箇所に下線を付した。)。

1 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1において、
「分離後の各発光装置の外側面において前記リードと前記切り欠き部に入り込んだ前記樹脂部とが略同一面となるように、前記リードフレームと前記樹脂成形体とを切断することにより、複数の発光装置に分離する工程」
と記載されているのを、
「分離後の各発光装置の前記4つの外側面のいずれにおいても前記リードと前記切り欠き部に入り込んだ前記樹脂部とが略同一面となるように、前記リードフレームと前記樹脂成形体とを切断することにより、複数の発光装置に分離する工程」に訂正する(請求項1の記載を直接または間接に引用する、請求項2?12も同様に訂正する。)。

第4 当審の判断
1 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び拡張・変更の存否について
(1)訂正事項1について
ア 訂正の目的について
訂正事項1は、請求項1において、リードフレームと樹脂成形体とを切断することにより、複数の発光装置に分離する工程(以下、「分離工程」という。)が、分離後の各発光装置の4つの外側面のいずれにおいてもリードと切り欠き部に入り込んだ樹脂部とが略同一面となるように実施されることを特定するものである。
訂正前の請求項1において、分離工程は、分離後の各発光装置の外側面においてリードと切り欠き部に入り込んだ樹脂部とが略同一面となるように実施されるものとして特定されており、リードと切り欠き部に入り込んだ樹脂部とが略同一面となる外側面の数が特定されておらず、当該数が1つのもの、2つのもの、3つのもの、4つのものいずれをも含んでいたといえるところ、訂正事項1は、訂正後の請求項1において、分離工程が、そのような外側面の数を4つに限定することによって、特許請求の範囲を減縮したものである。
したがって、訂正事項1は、特許法第126条第1項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

イ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであるか否かについて
本件特許の願書に添付した明細書(以下、「本件特許明細書」という。また、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面をまとめて「本件特許明細書等」という。)の段落【0078】には、「次に、切り欠き部21aに沿って樹脂成形体24とリードフレーム21とを切断する。
複数の凹部27が形成された樹脂成形体24は、隣接する凹部27の間にある側壁を略中央で分離されるように長手方向及び短手方向に切断する。切断方法はダイシングソーを用いて樹脂成形体24側からダイシングする。これにより切断面は樹脂成形体24とリードフレーム21とが略同一面となっており、リードフレーム21が樹脂成形体24から露出している。このように切り欠き部21aを設けることにより、切断されるリードフレーム21は少なくなりリードフレーム21と樹脂成形体24との剥離を抑制することができる。また、リードフレーム21の上面だけでなく、切り欠き部21aに相当する側面も樹脂成形体24と密着するため、リードフレーム21と樹脂成形体24との密着強度が向上する。」と記載されている(当審注:下線は合議体が付加した。以下、同じ。)。
また、本件特許明細書等の図1及び図3は、以下のとおりのものである。


上記段落【0078】の記載と図1及び図3に基づけば、リードフレーム21と樹脂成形体との切断は、分離後の各発光装置の4つの外側面のいずれにおいてもリード22と切り欠き部21aに入り込んだ樹脂部25とが略同一面となるように実施されていることは明らかである。
したがって、訂正事項1は、本件特許明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入しないものである。
したがって、訂正事項1は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正である。
よって、訂正事項1は、特許法第126条第5項の規定に適合する。

ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものであるか否かについて
訂正事項1は、請求項1において、発明特定事項を付加するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。また、訂正事項1は、請求項1の記載を直接または間接に引用する請求項2?12においても、同様に、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。
よって、訂正事項1は、特許法第126条第6項の規定に適合する。

2 独立特許要件について
上記1(1)アで検討したとおり、訂正事項1は、特許法第126条第1項ただし書き第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そこで、特許法第126条第7項の規定に適合するか否か、すなわち、本件訂正後の特許請求の範囲に記載されている事項により特定される発明が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否かについて検討する。

訂正審判請求人は、本件審判請求書のなお書きで、本件特許に係る平成29年(ワ)第27238号特許権侵害差止等請求事件において、無効の抗弁がなされている旨述べるとともに、本件の無効論に関する書面の写しなどとして「平成29年(ワ)第27238号特許権侵害差止等請求事件で提出された『被告準備書面(1)』、『被告準備書面(3)』、『原告準備書面(その2)』」などそれぞれの写しを提出している。
「被告準備書面(1)」、「被告準備書面(3)」によれば、無効理由の内容は以下のとおりである。
(当審注:本件審判請求書の第8ページのなお書き、及び上記「原告準備書面(その2)」の写しの第5?16ページの「第2 1?3」によれば、下記における、「本件発明2」は、本件訂正前の請求項1に係る発明が対応し、下記における「本件特許権2」及び「本件特許2」は、本件訂正前の請求項1に係る発明の特許が対応し、下記における「本件明細書等2」は、上記1(1)イの「本件特許明細書等」が対応するものと認められる。)

<無効理由1>(「被告準備書面(1)」第11頁参照。)
本件発明2は、以下のとおり、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしておらず、本件発明2に係る特許は、特許法第123条第1項第4号の規定により、無効とされるべきものである。

本件特許権2の明細書等(以下「本件明細書等2」という。)には、「リードフレームと熱硬化性樹脂組成物との密着性が高く、短時間に多数個の発光装置を製造する簡易かつ安価な方法を提供する」という課題を解決するために、リードフレームの切り欠き部として、個片化した際に、四隅からリードが露出する構成を採用している。また、リードフレームにおいて、正負の異なるリード間の短絡を防止するために、上記正負のリード間に直線状の切り欠き部が設けられていることは当然の前提とされている。
しかしながら、本件発明2では、本件明細書等2で本件発明を解決する手段として実質的に開示されていない、四隅からリードが露出しないような切り欠き部の構成や、また正負のリード間の切り欠き部が直線状ではないものも含まれることになるから、本件発明2は、本件明細書等2に記載された発明とはいえない。

<無効理由2>(「被告準備書面(3)」第4頁「第2」参照。)
本件発明2は、本件原出願日前の他の特許出願であって本件原出願日後に公開された乙11(特開2008-227166号公報)に記載された発明(「以下「乙11発明」という。)と同一であり、本件特許2の出願と当該他の出願とで発明者同一でも出願人同一でもないから、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができない。
したがって、本件発明2に係る特許は特許法第123条第1項第2号の規定により、無効とされるべきものである。

(1)無効理由1について
ア 本件訂正発明
本件訂正後の請求項1に係る発明(以下「本件訂正発明1」という。また、本件訂正後の請求項2?12に係る発明をそれぞれ「本件訂正発明2」?「本件訂正発明12」という。))は、以下のとおりである。

「【請求項1】
リード及び樹脂部を有し、上側から見た外形が略四角形で4つの外側面を有する発光装置の製造方法であって、
リードフレームと、光反射性物質を含有する樹脂成形体と、を有する樹脂成形体付リードフレームを準備する工程であって、前記樹脂成形体付リードフレームの上側には凹部が複数設けられ、前記凹部の底面には前記リードフレームが前記樹脂成形体で分割されて露出されており、前記リードフレームには前記外側面となる4つの位置のいずれにも前記樹脂成形体の一部が入り込んだ切り欠き部が設けられ、且つ前記樹脂成形体付リードフレームの底面にて前記リードフレームが露出している、樹脂成形体付リードフレームを準備する工程と、
前記凹部の底面に発光素子を載置する工程と、
前記凹部内に、前記発光素子を被覆する封止部材を配置する工程と、
分離後の各発光装置の前記4つの外側面のいずれにおいても前記リードと前記切り欠き部に入り込んだ前記樹脂部とが略同一面となるように、前記リードフレームと前記樹脂成形体とを切断することにより、複数の発光装置に分離する工程と、を有することを特徴とする発光装置の製造方法。」

イ 本件特許明細書の記載事項
本件特許明細書には、以下の事項が記載されている。

・「【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は上述した問題に鑑みて、リードフレームと熱硬化性樹脂組成物との密着性が高く、短時間に多数個の発光装置を製造する簡易かつ安価な方法を提供することを目的とする。」

・「【課題を解決するための手段】
…(略)…
【0014】
本発明は、熱硬化後の、波長350nm?800nmにおける光反射率が70%以上であり、外側面において樹脂部とリードとが略同一面に形成されている樹脂パッケージを有する発光装置の製造方法であって、切り欠き部を設けたリードフレームを上金型と下金型とで挟み込む工程と、上金型と下金型とで挟み込まれた金型内に、光反射性物質が含有される熱硬化性樹脂をトランスファ・モールドして、リードフレームに樹脂成形体を形成する工程と、切り欠き部に沿って樹脂成形体とリードフレームとを切断する工程と、を有する発光装置の製造方法に関する。かかる構成によれば、切り欠き部に熱硬化性樹脂が充填されるため、リードフレームと熱硬化性樹脂との密着面積が大きくなり、リードフレームと熱硬化性樹脂との密着性を向上することができる。また、熱可塑性樹脂よりも粘度が低い熱硬化性樹脂を用いるため、空隙が残ることなく、切り欠き部に熱硬化性樹脂を充填することができる。また、一度に多数個の発光装置を得ることができ、生産効率の大幅な向上を図ることができる。さらに、廃棄されるランナーを低減することができ、安価な発光装置を提供することができる。」
…(略)…
【0022】
樹脂パッケージは、四隅からリードが露出されていることが好ましい。樹脂パッケージの一側面全体にリードを設けるよりも、リードの露出部分を低減するができるため、樹脂部とリードとの密着性の向上を図ることができる。また、正負の異なるリード間に絶縁性の樹脂部が設けられているため短絡を防止することができる。」
・「【発明の効果】
【0030】
本発明にかかる発光装置及びその製造方法によれば、リードフレームと樹脂成形体との密着性の高い発光装置を提供することができる。また、短時間に多数個の発光装置を得ることができ、生産効率の大幅な向上を図ることができる。さらに、廃棄されるランナーを低減することができ、安価な発光装置を提供することができる。」

・「【0032】
<第1の実施の形態>
(発光装置)
…(略)…
【0035】
樹脂パッケージ20の外側面20bの全包囲の長さにおいて、リード22が露出している部分は1/2より短い長さである。後述する発光装置の製造方法において、リードフレーム21に切り欠き部21aを設け、その切り欠き部21aに沿って切断するため、リードフレーム21の切断部分が樹脂パッケージ20から露出される部分である。
【0036】
樹脂パッケージ20は、四隅からリード22が露出している。リード22は外側面20bにおいて露出しており、メッキ処理を施していない。また、リード22は外底面20aにも露出する構造を採ることができ、メッキ処理を施すこともできる。なお、個片化された後にリード22の外側面20bにメッキ処理を施すことは可能である。
…(略)…
(樹脂パッケージ)
…(略)…
【0042】
樹脂パッケージは、外底面と外側面と外上面とを有する。樹脂パッケージの外側面からリードが露出している。樹脂部とリードとは略同一面に形成されている。この略同一面とは同じ切断工程で形成されたことを意味する。
…(略)…
【0045】
リードは正負一対となるように所定の間隔を空けて設けている。…(略)…
(リード、リードフレーム)
…(略)…
【0050】
切り欠き部は、樹脂成形体を個片化して樹脂パッケージとした際、リードが正負一対となるように形成されている。また、切り欠き部は、樹脂成形体を切断する際に、リードを切断する面積を少なくするように形成されている。例えば、正負一対のリードとなるように横方向に切り欠き部を設け、また、樹脂成形体を個片化する際の切り出し部分に相当する位置に切り欠き部を設ける。ただし、リードフレームの一部が脱落しないように、又は、樹脂パッケージの外側面にリードを露出させるためにリードフレームの一部を連結しておく。ダイシングソーを用いて樹脂成形体をダイシングするため、切り欠き部は、縦及び横若しくは斜めに直線的に形成されていることが好ましい。
…(略)…
(第1の実施の形態に係る発光装置の製造方法)
…(略)…
【0078】
次に、切り欠き部21aに沿って樹脂成形体24とリードフレーム21とを切断する。
複数の凹部27が形成された樹脂成形体24は、隣接する凹部27の間にある側壁を略中央で分離されるように長手方向及び短手方向に切断する。切断方法はダイシングソーを用いて樹脂成形体24側からダイシングする。これにより切断面は樹脂成形体24とリードフレーム21とが略同一面となっており、リードフレーム21が樹脂成形体24から露出している。このように切り欠き部21aを設けることにより、切断されるリードフレーム21は少なくなりリードフレーム21と樹脂成形体24との剥離を抑制することができる。また、リードフレーム21の上面だけでなく、切り欠き部21aに相当する側面も樹脂成形体24と密着するため、リードフレーム21と樹脂成形体24との密着強度が向上する。」

ウ 判断
(ア)本件訂正発明1が解決しようとする課題は、本件特許明細書の段落【0011】に記載された「リードフレームと熱硬化性樹脂組成物との密着性が高く、短時間に多数個の発光装置を製造する簡易かつ安価な方法を提供すること」にある。

(イ)本件特許明細書には、「 本発明は、熱硬化後の、波長350nm?800nmにおける光反射率が70%以上であり、外側面において樹脂部とリードとが略同一面に形成されている樹脂パッケージを有する発光装置の製造方法であって、切り欠き部を設けたリードフレームを上金型と下金型とで挟み込む工程と、上金型と下金型とで挟み込まれた金型内に、光反射性物質が含有される熱硬化性樹脂をトランスファ・モールドして、リードフレームに樹脂成形体を形成する工程と、切り欠き部に沿って樹脂成形体とリードフレームとを切断する工程と、を有する発光装置の製造方法に関する。かかる構成によれば、切り欠き部に熱硬化性樹脂が充填されるため、リードフレームと熱硬化性樹脂との密着面積が大きくなり、リードフレームと熱硬化性樹脂との密着性を向上することができる。また、熱可塑性樹脂よりも粘度が低い熱硬化性樹脂を用いるため、空隙が残ることなく、切り欠き部に熱硬化性樹脂を充填することができる。また、一度に多数個の発光装置を得ることができ、生産効率の大幅な向上を図ることができる。さらに、廃棄されるランナーを低減することができ、安価な発光装置を提供することができる。」(段落【0014】)と記載されている。
そうすると、「外側面において樹脂部とリードとが略同一面に形成されている樹脂パッケージを有する発光装置の製造方法」において、「切り欠き部を設けたリードフレーム」を用いることで、切り欠き部に熱硬化性樹脂が充填されるため、リードフレームと熱硬化性樹脂との密着面積が大きくなり、リードフレームと熱硬化性樹脂との密着性を向上することができ、かつ、一度に多数個の発光装置を得ることができ、生産効率の大幅な向上を図ることができることが理解できる。
そして、本件訂正発明1は、「樹脂成形体付リードフレームを準備する工程であって」、「前記リードフレームには前記外側面となる4つの位置のいずれにも前記樹脂成形体の一部が入り込んだ切り欠き部が設けられ」という構成を有するものであって、段落【0014】に記載された発光装置の製造方法と同様に、「外側面において樹脂部とリードとが略同一面に形成されている樹脂パッケージを有する発光装置の製造方法」であり、また、「切り欠き部を設けたリードフレーム」を用いるものであるから、本件訂正発明1は、「リードフレームと熱硬化性樹脂組成物との密着性が高く、短時間に多数個の発光装置を製造する簡易かつ安価な方法を提供する」という発明の課題を解決できることを、当業者であれば認識できる。

(ウ)四隅からリードが露出するように設けられた「切り欠き部」について
「樹脂パッケージは、四隅からリードが露出されていることが好ましい。」(段落【0022】)と記載されているが、個片化した際に「四隅からリードが露出されている」ことは、好ましい例として記載されているにすぎない。
そして、上記(イ)のとおり、「前記リードフレームには前記外側面となる4つの位置のいずれにも前記樹脂成形体の一部が入り込んだ切り欠き部」という構成を備えていれば、「4つの位置」が「四隅」に特定されていなくても、発明の課題が解決できるものといえる。
したがって、個片化した際に、四隅からリードが露出されるように切り欠き部を設けることは、課題解決のために必須であるとはいえない。

(エ)正負の異なるリード間の短絡を防止するための直線状の「切り欠き部」について
「切り欠き部は、樹脂成形体を個片化して樹脂パッケージとした際、リードが正負一対となるように形成されている。」(段落【0050】)、「正負の異なるリード間に絶縁性の樹脂部が設けられているため短絡を防止することができる。」(段落【0022】)、「樹脂パッケージは内底面と内側面とを持つ凹部を形成している。凹部の内底面にはリードを配している。」(段落【0044】)、「リードは正負一対となるように所定の間隔を空けて設けている。」(段落【0045】)との記載からみれば、本件訂正発明1の「前記凹部の底面には前記リードフレームが前記樹脂成形体で分割されて露出されており」という構成は、リードフレームの切り欠き部が、リードフレームが樹脂成形体で分割される(すなわち、正負の異なるリード間に絶縁性の樹脂部が設けられるように形成されている)ことを意味すると解されるところ、リードフレームが、直線状に樹脂成形体で分割されるものに限定されることをうかがわせるような記載は本件特許明細書には見出せない。
そして、本件訂正発明1が、「前記凹部の底面には前記リードフレームが前記樹脂成形体で分割されて露出されており」という構成を有していれば、直線状の切り欠き部で分割されるか否か(切り欠き部が直線状か否か)にかかわらず、正負の異なるリード間は短絡が防止されることができ、ひいては、発明の課題が解決できるものといえる。
したがって、正負のリード間に直線状の切り欠き部が設けられていることは、課題解決のために必須であるとはいえない。

(オ)以上のとおり、本件特許明細書の記載に接した当業者であれば、本件訂正発明1が発明の課題を解決できることを認識することができ、本件訂正発明1は、発明の詳細な説明に記載したものということができる。
したがって、本件訂正後の特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしている。
よって、無効理由1には、理由がない。

(2)無効理由2について
ア 本件訂正発明
本件訂正発明1は、上記(1)アに記載のとおりのものである。

イ 先願明細書等の記載と先願発明
(ア)先願明細書等の記載
本件特許の原出願の日前の他の特許出願であって、当該原出願後に出願公開がされた特願2007-63698号(以下「先願」という。特開2008-227166号公報(本件の審判請求書において添付された乙第11号証)参照。)の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、先願の願書に最初に添付した明細書を「先願明細書」といい、先願の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲及び図面をまとめて「先願明細書等」という。)には、以下の事項が記載されている。

・「【技術分野】
【0001】
この発明は、半導体発光素子を塔載するための半導体発光装置および半導体発光装置用多連リードフレームに関する。」

・「【0016】
また、主表面上に、封止樹脂と接触しないように設けられた反射体をさらに備えることが望ましい。または、絶縁体の周縁よりも半導体発光素子から離れる側に設けられた反射体をさらに備えることが望ましい。このように構成された半導体発光装置によれば、半導体発光素子を封止している封止樹脂の形状だけでは制御できないような光学特性を得ることができる。同時に、半導体発光素子が発生した光を、より効率よく外部へ取り出すことが可能となる。
…(略)…
【0018】
この発明に係る他の半導体発光装置用多連リードフレームは、半導体発光装置を構成するリードフレームが複数個連なったリードフレーム基材を含む。また、リードフレームを取り囲むようにリードフレーム基材に形成された隙間に充填された、半導体発光装置を構成する絶縁体となるべき絶縁体基材を含む。半導体発光装置用多連リードフレームは、基板状に成形されている。そして、上記隙間の一部に、絶縁体基材が充填されていない溝構造が形成されている。この場合は、半導体発光装置用多連リードフレームの切断に際し、切断金型による切断を行なうことができる。半導体発光装置用多連リードフレームの金属部分は金型により切断し、絶縁体としての樹脂部分をダイシングにより切断すれば、金属と樹脂とを同時にダイシングカットする際に発生するバリなどのカット不良の発生を防止することができる。また、半導体発光装置の特性検査を、個辺化された半導体発光装置単位に限らず、多連リードフレーム単位で実施することができるので、生産効率の向上を図ることができる。」

・「【0024】
(実施の形態1)
図1は、この発明の実施の形態1の半導体発光装置の断面を示す模式図である。図2は、図1に示す半導体発光装置の平面図である。図1および図2に示すように、この半導体発光装置は、主平面1aを有するリードフレーム1と、リードフレーム1を取り囲む構造に設けられ、リードフレーム1の厚み以下の厚みを有するように設けられた絶縁体としての樹脂部2と、主平面1a上に設けられた半導体発光素子としてのLEDチップ4と、金属線5と、LEDチップ4および金属線5を完全に覆うように設けられた封止樹脂としての熱硬化性樹脂3とを備える。
【0025】
リードフレーム1は、主表面1a上にLEDチップ4を搭載した半導体発光素子搭載部1cを含む。またリードフレーム1は、LEDチップ4と金属線5によって電気的に接続された、半導体発光素子搭載部1cと同一平面上に延在する金属線接続部1dを含む。半導体発光素子搭載部1cおよび金属線接続部1dは、樹脂部2により周縁を取り囲まれており、樹脂部2によって半導体発光装置の外形が形成されている。
【0026】
半導体発光素子搭載部1cおよび金属線接続部1dは、板形状を有し、所定のパターンニング加工が施されることで離間している。離間している半導体発光素子搭載部1cと金属線接続部1dとの間に、主表面1aから、主表面1aと反対側の面である裏面1bにまで達する、スリット状の溝1mが形成されている。半導体発光素子搭載部1cと金属線接続部1dとは、樹脂部2と同じ絶縁体である樹脂素材が充填されているスリット状の溝1mによって、電気的に絶縁されている。つまり、後述するように、スリット状の溝1mには、樹脂部2に樹脂を充填するときに、樹脂部2に充填される樹脂材料と同じ樹脂材料が充填される。
…(略)…
【0033】
樹脂部2は、図2に示すように、リードフレーム1(半導体発光素子搭載部1cおよび金属線搭載部1d)を取り囲む構造に成型されている。かつ樹脂部2は、リードフレーム1の主表面1aおよび裏面1b上に突起しないように、リードフレーム1の厚み以下の厚みを有するように、成形されている。また、リードフレーム1に接触する樹脂部2の表面積を大きくしかつ楔効果を持たせるために、リードフレーム1の主表面1aおよび裏面1bの適切な場所を加工し、樹脂を挿入して樹脂部2を成形することにより、リードフレーム1から樹脂部2が剥離、脱落することを防止し、製品強度を向上させることができる。また、厚みの異なる銅または銅合金条を金型加工して作製した異形条の(すなわち、厚みが一定でない)リードフレーム1を使用し、樹脂部2でリードフレーム1全体を取り囲むように成型させることでも、製品強度を向上させることができる。リードフレーム1の裏面1bには、半導体発光装置を実装基板などに接続するための端子部が設けられている。
【0034】
樹脂部2に充填される絶縁体としては、製造時におけるリフロー工程を考慮して、耐熱性に優れた材料が使用される。また、LEDチップ4から発生する光を反射するために、反射率が高い白色の材料で形成されることが望ましい。さらに、LEDチップ4からの光で劣化しない、熱膨張係数がリードフレーム1と近い材料を用いることが望ましい。上記条件を満たす具体的な材料としては、液晶ポリマーやポリアミド系樹脂などの熱可塑性樹脂を用いることができる。また、エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂も、樹脂部2を形成する材料として使用できる。さらに、アルミナなどのセラミックについても、樹脂部2を形成する材料として使用することができる。
…(略)…
【0038】
LEDチップ4および金属線5を封止する封止樹脂としては、熱硬化性樹脂(たとえばエポキシ樹脂、シリコーン樹脂など)を用いることができる。この熱硬化性樹脂3の形状により、LEDチップ4が発生する光に目的とする光学特性を持たせることができる。また、封止樹脂に高屈折率の樹脂を使用することにより、半導体発光装置によっては、従来の半導体発光装置の外周部に設けられていた反射板を取り除くことも可能となる。具体的には、図1に示すように封止樹脂の形状をドーム形状にすることにより、LEDチップ4から発せられる光の指向角は小さくなる(つまり、光の広がりが抑えられる)。逆に、指向特性が必要ない製品に対しては、封止樹脂を円柱形状として、封止を行なうことができる。さらに、封止樹脂は、外部からの物理的または電気的な接触に対して、LEDチップ4および金属線5を保護する役割を果たしている。
【0039】
次に、図1に示す半導体発光装置の製造方法について説明する。図3は、実施の形態1における半導体発光装置の製造方法を示す流れ図である。図4は、実施の形態1の半導体発光装置に用いられる、多連リードフレームの模式図である。図3に示すように、まず工程(S1)において、金属の板材を、たとえば打ち抜きプレス加工やエッチング加工などの適当な加工手段によって、所定形状にパターンニングして、リードフレーム基材が加工される。図4に示すリードフレーム基材201は、半導体発光装置を構成するリードフレーム1が複数個連なったものであって、リードフレーム基材201の両端のサポートフレーム202と、サポートフレーム202間に架橋するように渡され骨組み状となっている複数の桟フレーム203とを含む。図1に示す半導体発光装置において半導体発光素子搭載部1cを構成する部分と、半導体発光装置において金属線接続部1dを構成する部分とは、リードフレーム基材201では分離されており、隣接する桟フレーム203によって吊られるように保持される。
…(略)…
【0041】
次に工程(S2)において、半導体発光装置を構成する絶縁体としての樹脂部2となるべき、樹脂基材207を形成する。樹脂基材207は、リードフレーム基材201においてリードフレーム1を構成する部分を取り囲むように形成された隙間の全てに、樹脂が充填されて形成される。たとえばインサート成型によって、樹脂基材207を形成することと金属線接続部1dを構成する部分との間の隙間(つまり、半導体発光装置においてスリット状の溝1mに相当する部分)にも、樹脂が充填されるので、図1に示す半導体発光装置において、樹脂部2とスリット状の溝1mには、同じ樹脂が充填されていることになる。樹脂基材207は、リードフレーム基材201の厚み以下の厚みを有するように成形される。工程(S2)が終了した時点で、リードフレーム基材201と樹脂基材207とは、1枚の基板状になるように成形されている。
【0042】
次に工程(S3)において、熱硬化性の銀ペースト6などの導電性ペーストを、リードフレーム基材201の、半導体発光装置において半導体発光素子搭載部1cを構成する部分の主表面1aに相当する表面に塗布する。そして、導電性ペーストを介在させて半導体発光素子としてのLEDチップ4を主表面1aに実装する、ダイボンドが行なわれる。次に工程(S4)において、実装されたLEDチップ4の電極と、半導体発光装置において金属線接続部1dを構成する部分の主表面1aに相当する表面とを、たとえば直径20?30μmの金(Au)からなる金属線5によって電気的に接続する、ワイヤーボンドが行なわれる。これにより、半導体発光装置としての回路が形成される。
【0043】
次に工程(S5)において、LEDチップ4と金属線5とを完全に覆うように、樹脂による封止を行ない、半導体発光装置としての回路は外気から遮断されて保護される。封止材として使用される樹脂は、熱硬化性樹脂であって、エポキシ系、シリコーン系などの透明樹脂を用いることができる。半導体発光装置が白色照明の場合は、封止樹脂として、ガドリニウムおよびセリウムが添加されたYAG系(イットリウム・アルミニウム・ガーネット)などの蛍光体を含有させた樹脂を使用することができる。このとき、封止樹脂は、液状や固形の樹脂を使用した金型成型によって成形されるので、たとえば図1に示すドーム形状などの、LEDチップ4が発生する光に関して目的とされる光学特性に基づいた形状に成形することが容易に可能であり、かつその形状安定性を確保することができる。金型内で樹脂硬化を行なうため、従来の液状樹脂封止の課題となっていた粘度変化などに起因する滴下量バラツキ、硬化時の揮発成分の蒸発や硬化収縮による封止形状バラツキを抑えることができる。
【0044】
次に工程(S6)において、リードフレーム基材201の裏面(図1に示す半導体発光装置において、半導体発光素子が実装基板上に実装されるとき実装基板と接触する裏面1bに相当する部分)にメッキ処理が行なわれる。メッキ処理は、たとえばスズ(Sn)、ビスマス(Bi)メッキや、スズ(Sn)鉛(Pd)メッキ(半田メッキ)を用いたメッキ処理とすることができる。工程(S6)が終了した時点で、図4に示すように、複数の半導体発光装置が格子状に配列された多連リードフレーム200が完成する。
【0045】
続いて工程(S7)において、ダイシング装置を用いて、格子状に配列された半導体発光装置の外形に沿って(つまり、図4中の二点鎖線に沿って)、多連リードフレーム200を切断する。これにより、複数の半導体発光装置が多連リードフレーム200より切り出され、単個のリードフレーム1と、リードフレーム1を取り囲む樹脂部2とを備える、単個の半導体発光装置へと分離される、個辺化が行なわれる。その後、工程(S8)において、半導体発光装置の検査工程を実施し、さらにその後、工程(S9)において、半導体発光装置を所定の出荷状態に整えるテーピング工程を実施する。」

・「【0055】
(実施の形態4)
図9は、実施の形態4の半導体発光装置の断面を示す模式図である。図10は、図9に示す実施の形態4の半導体発光装置の平面図である。図9および図10に示すように、実施の形態4の半導体発光装置は、図1および図2に示す実施の形態1の半導体発光装置と比較して、絶縁体としての樹脂部2の周縁から、半導体発光素子としてのLEDチップ4から離れる側に突出した、リード端子7を備える点において異なっている。図9では、射出成型法により封止樹脂としての熱硬化性樹脂3を形成するために、スリット状の溝1mの内部に配置された樹脂の主表面1a側の表面に、ランナー/エアベント用の窪み1eが形成されている。ダムシート成型によって封止する場合には、実施の形態2において説明したように、窪み1eを形成する必要はない。
【0056】
実施の形態4では、リードフレーム1を取り囲むように形成されている樹脂部2は、半導体発光装置の製品強度が十分に保てる最低限度の樹脂量のみで限定的にリードフレーム1を取り囲み、実装基板などと接続するためのリード端子7の端部は樹脂部2で囲われていない。また、このリード端子7の太さは、半導体発光装置の製造工程における金型による切断を考慮し、リードフレーム1の強度が十分に保てる範囲で、できるだけ細く形成されている。
【0057】
このように構成された半導体発光装置によれば、実施の形態1において説明した効果と同様の効果を得ることができ、加えて、リード端子7が樹脂部2から突出しているため、従来のダイシング方法に加え、金型による切断が可能となる。また、リード端子が樹脂部2によって囲われている実施の形態1?4では、リード端子の切断面は金属が剥き出しとなり、この金属が酸化することにより半田に対する濡れ性が低下する。実施の形態4の半導体発光装置では、リード端子7が外部へ(すなわち、LEDチップ4から離れる側に)突出しているため、リード端子7の切断面だけでなく側面においても半田のりしろを確保でき、半田濡れ性の低下を防ぐことができる。よって、半導体発光装置を基板などに実装する際に、リード端子7に良好な半田付けを行なうことができる。実施の形態4における半導体発光装置のその他の構成については、実施の形態1において説明した通りであるので、その説明は繰り返さない。
【0058】
次に、実施の形態4の半導体発光装置の製造方法について説明する。図11は、実施の形態4における半導体発光装置の製造方法を示す流れ図である。図12は、実施の形態4の半導体発光装置に用いられる、多連リードフレームの模式図である。工程(S101)(S106)は、図3に示す実施の形態1の(S1)?(S6)と同様の工程であって、工程(S101)において、リードフレーム基材201の両端のサポートフレーム(クレードル)202には、鍵構造205が形成される。鍵構造205は、リードフレーム基材201においてリードフレーム1を構成する部分を取り囲むように形成された隙間に樹脂が充填されて樹脂基材207が形成されたとき、リードフレーム基材201と樹脂基材207との接続力を向上させるために設けられたものである。
【0059】
続く工程(S102)において、樹脂基材207は、リードフレーム基材201においてリードフレーム1を構成する部分を取り囲むように形成された隙間に樹脂が充填されて形成される。ここで、図12に示す実施の形態4の多連リードフレーム200では、樹脂基材207と桟フレーム203との間に樹脂が充填されていない溝構造204が形成されており、上記隙間の全てに樹脂が充填された構造をもつ実施の形態1とは構造が異なる。たとえば、圧縮成形法によって樹脂を充填するとき、樹脂流入を防ぐためのマスクを設置すれば、溝構造204を形成することができる。
…(略)…
【0061】
続いて、工程(S107)において、切断金型による切断を実施する。切断金型の材質は、一般的に金属フレームを切断する金型に使用される材質(超硬合金など)とすることができる。リード端子7のLEDチップ4から離れる側の端部が樹脂で覆われていないため、桟フレーム203に沿った方向の多連リードフレーム列間の切断は、実施の形態1で説明したダイシング装置による切断を行なわず、切断金型による切断を行なうことが可能である。その結果、図13に示すように、桟フレーム203が形成されていた部分には打ち抜き部208が形成され、打ち抜き部208によって、隣接する樹脂基材207(合議体注:「樹脂素材207」は誤記と認定した。)によって取り囲まれた隣接するリードフレーム1は、分離される。鍵構造205によってリードフレーム基材201と樹脂基材207との接合力が高められているため、桟フレーム203を切断金型にて切断した後でも、樹脂基材207はサポートフレーム(クレードル)202と繋がっている。なお図13は、多連リードフレームに打ち抜き部が形成された状態を示す模式図である。
【0062】
この状態では、個々の半導体発光装置は、樹脂基材207によってサポートフレーム(クレードル)202とつながっているが、電気的にはそれぞれ独立している。このため、続く工程(S108)において、多連リードフレーム単位での半導体発光装置の特性検査が可能となる。その後、工程(S109)においてダイシング装置にて樹脂基材207を切断し、半導体発光装置を個辺化する。工程(S110)のテーピング工程は、実施の形
態1で説明した通りである。
【0063】
このように構成された、実施の形態4の半導体発光装置用多連リードフレーム、および半導体発光装置の製造方法によれば、リード端子7は金型による切断を行い、ダイシングする部分は樹脂基材207のみのため、金属と樹脂とを同時にダイシングカットする際に発生するバリなどのカット不良を解決することができる。多連リードフレーム200に溝構造204が形成されているので、金型切断時に必要となる力を低減させることができ、金型の簡素化およびプレス機の小型化を図ることができる。または、同じ能力のプレス機によってより多量の半導体発光装置を切断することができる。また、前述のように、これまで半導体発光装置を個辺化して実施していた特性検査を、多連リードフレーム単位で実施できる。したがって、半導体発光装置の生産効率向上を図ることができる。」

・「【0067】
(実施の形態6)
図16は、実施の形態6の半導体発光装置の断面を示す模式図である。図16に示すように、実施の形態6の半導体発光装置は、図9に示す実施の形態4の半導体発光装置と比較して、樹脂部2およびリード端子7の周縁よりもLEDチップ4から離れる側に設けられた反射体10をさらに備える点において異なっている。
【0068】
反射体10は、LEDチップ4で発せられ、熱可塑性樹脂3を透過してきた光を効率よく反射するために、反射率が高い白色の樹脂で形成することができる。また、樹脂部2と同様、製造時におけるリフロー工程を考慮して、耐熱性に優れた樹脂で形成することができる。また、光をより効率よく反射するために、反射体10のLEDチップ4と対向する表面である内周面を、たとえば銀メッキ、ニッケルメッキ、ニッケル-クロムメッキなどのメッキ処理してもよい。また反射体10は、Al、Cu、Fe、Mgなどの熱伝導率の高い金属製であってもよい。また、反射体10は、リードフレーム1および樹脂部2で形成されたパッケージを搭載する基板12に、エポキシ系樹脂などの透明樹脂からなる接着剤11により接続されていてもよく、接着シートによって基板12に接合されていてもよい。反射体10の内周面の形状は、光を効率よく放出できるように、円錐面、楕円錐面、球面または放物面の一部としてもよい。
【0069】
このように構成された半導体発光装置によれば、実施の形態4において説明した効果と同様の効果を得ることができ、加えて、封止樹脂の封止形状だけでは実現できなかった光学特性を得ることができると同時に、光取り出し効率も向上する。また、熱硬化性樹脂3は、金型成型またはダムシート成型により成形されるため、図21に示す従来例のように反射体10と熱硬化性樹脂3とは接触していない。つまり、従来問題となっている反射体10と熱硬化性樹脂3との剥離不良は発生しない。
【0070】
反射板10は半導体発光装置の外周部に設けられる。そのため、図17に示すような複数個一括の反射体10のパッケージを作成し、実装基板12に特性検査済みのLEDパッケージ100のみを実装し、その後図18に示すように、反射体10のパッケージ(すなわち、平板状のベース部材に複数の貫通孔が形成され、当該貫通孔の内壁は反射体10の内周面と同じ形状に形成されている部材をいう)をLEDパッケージ100の外周へ設けることができる。なお、実施の形態6における半導体発光装置のその他の構成および製造工程については、実施の形態1および4において説明した通りであるので、その説明は繰り返さない。」

・「【0071】
(実施の形態7)
図19は、実施の形態7の半導体発光装置の断面を示す模式図である。図19に示すように、実施の形態7の半導体発光装置は、図16に示す実施の形態6の半導体発光装置と比較して、反射体10は主表面1a上に、封止樹脂としての熱硬化性樹脂3と接触しないように設けられている点において異なっている。反射体10は、接着剤11によってリードフレーム1の主表面1a上に固定されてもよく、接着シートによって固定されてもよいが、接着剤11が用いられる場合、接着剤11の厚みは接着強度を保つ範囲で十分に薄いほうが望ましい。これは、接着剤11の厚みが大きい場合、透明樹脂である接着剤11から光漏れが発生し、光取り出し効率が低下するためである。
【0072】
図20は、実施の形態7における半導体発光装置の製造方法を示す流れ図である。この場合、多連リードフレームには、図12に示した形状を用いている。図11に示す流れ図と比較して、工程(S307)において金型切断後、工程(S308)において、リードフレーム1の主表面1a上に接着剤11によって図17に示す反射体10のパッケージを貼付し、その後工程(S309)において樹脂基材207および反射体10をダイシングによって切断する点で異なっている。
【0073】
このように構成された半導体発光装置によれば、実施の形態4において説明した効果と同様の効果を得ることができ、加えて、封止樹脂の封止形状だけでは実現できなかった光学特性を得ることができると同時に、反射体10の内周面とLEDチップ4との距離が短くなるためより効率よく光を外部へ放出することができ、光取り出し効率も向上する。さらに、主表面1a上に反射体10を貼付することにより、樹脂部2に加え反射体10にも半導体発光装置の外形を保持させることができるため、半導体発光装置の製品強度が向上する。これにより、リードフレーム1の厚みを小さくし、スリット状の溝1mの間隔を狭くすることにより、半導体発光装置のサイズを小さく保ちつつ、マルチチップ化(実装基板上に複数個の半導体発光装置を搭載)することが可能となる。なお、実施の形態7における半導体発光装置のその他の構成および製造工程については、実施の形態1および4において説明した通りであるので、その説明は繰り返さない。」

・図1?4、9、10、12、13、19、20は以下のとおりのものである。


(イ)先願明細書等に記載された発明
先願明細書等の段落【0071】の「図19に示すように、実施の形態7の半導体発光装置は、図16に示す実施の形態6の半導体発光装置と比較して、…(略)…いる点において異なっている。」、段落【0067】の「実施の形態6の半導体発光装置は、図9に示す実施の形態4の半導体発光装置と比較して、…(略)…さらに備える点において異なっている」、段落【0055】の「図9および図10に示すように、実施の形態4の半導体発光装置は、図1および図2に示す実施の形態1の半導体発光装置と比較して、…(略)…を備える点において異なっている。」、及び段落【0072】の「工程(S308)において、リードフレーム1の主表面1a上に…(略)…反射体10のパッケージを貼付し」との記載、並びに図9、10、19を参照すると、実施の形態7の半導体発光装置は、リードフレーム1及び反射体10を有し、上側から見た外形が略四角形で4つの外側面を有するものであるといえる。

以上から、先願明細書等の実施の形態1についての段落【0024】?【0039】、【0041】?【0044】の記載、実施の形態4についての段落【0055】?【0059】、【0063】の記載、及び実施の形態6についての段落【0067】?【0068】の記載、並びに図1?4、9?13、16、17を参酌してまとめると、先願明細書等には、段落【0071】?【0073】及び図19、20に開示の実施の形態7について、以下の発明(以下「先願発明」という。)が記載されている。

「リードフレーム1及び反射体10を有し、上側から見た外形が略四角形で4つの外側面を有する半導体発光装置の製造方法であって、
(a)リードフレーム基材201を加工する工程(S301)であって、
リードフレーム基材201は、両端のサポートフレーム202と、サポートフレーム202間に架橋するように渡され骨組み状となっている複数の桟フレーム203とを含む、リードフレーム基材加工工程(S301)と、
(b)半導体発光装置を構成する絶縁体としての樹脂部2となるべき、樹脂基材207を形成する、絶縁体充填工程(S302)であって、
樹脂基材207は、リードフレーム基材201においてリードフレーム1を構成する部分を取り囲むように形成された隙間に樹脂を充填して形成され、ここで樹脂基材207と桟フレーム203との間に樹脂が充填されていない溝構造204が形成されており、
工程(S302)が終了した時点で、リードフレーム基材201と樹脂基材207とは、1枚の基板状になるように成形されている、絶縁体充填工程(S302)と、
(c)半導体発光素子4をリードフレーム基材201に実装する、半導体発光素子実装工程(S303)と、
(d)金属線5によるワイヤーボンド工程(S304)と、
(e)半導体発光素子4と金属線5とを完全に覆うように、樹脂3による封止を行う、樹脂封止工程(S305)と、
(f)外装メッキ工程(S306)であって、
工程(S306)が終了した時点で、多連リードフレーム200が完成する、外装メッキ工程(S306)と、
(g)金型切断工程(S307)であって、
桟フレーム203に沿った方向の多連リードフレーム列間を、切断金型により切断し、その結果、隣接する樹脂基材207によって取り囲まれた隣接するリードフレーム1が分離される、金型切断工程(S307)と、
(h)反射体10のパッケージを、リードフレーム1の主表面a上に、封止樹脂と接触しないように固定する、反射体貼付工程(S308)であって、
反射体10は、光を効率よく反射するために、反射率が高い白色の樹脂で形成されている、反射体貼付工程(S308)と、
(i)樹脂基材207及び反射体10をダイシングによって切断し、半導体発光装置を個片化する、ダイシング工程(S309)と、
をこの順に有し、
半導体発光装置において、樹脂部2はリードフレーム1を取り囲み、絶縁体としての樹脂部2の周縁から、半導体発光素子4から離れる側に突出したリード端子7を備え、リード端子7の端部は樹脂部2で囲われておらず、
リードフレーム1の裏面1bには、端子部が設けられており、
樹脂部2に充填される絶縁体は、LEDチップ4から発生する光を反射するために、反射率が高い白色の材料を使用する、半導体発光装置の製造方法。」

ウ 対比
本件訂正発明1と先願発明とを対比する。

(ア)先願発明の「半導体発光装置」、「リードフレーム1」、「リードフレーム基材201」、「樹脂部2」、「樹脂基材207」、「半導体発光素子4」は、それぞれ、本件訂正発明1の「発光装置」、「リード」、「リードフレーム」、「樹脂部」、「樹脂成形体」、「発光素子」に相当する。

(イ)先願発明は、「リードフレーム1及び反射体10を有し、上側から見た外形が略四角形で4つの外側面を有する半導体発光装置の製造方法」であって、(h)において、「反射体10は、光を効率よく反射するために、反射率が高い白色の樹脂で形成されている」から、本件訂正発明1と先願発明とは、「リード及び樹脂部を有し、上側から見た外形が略四角形で4つの外側面を有する発光装置の製造方法」である点で一致する。

(ウ)先願発明は、「(b)半導体発光装置を構成する絶縁体としての樹脂部2となるべき、樹脂基材207を形成する、絶縁体充填工程(S302)」であって、「樹脂基材207は、リードフレーム基材201においてリードフレーム1を構成する部分を取り囲むように形成された隙間に樹脂を充填して形成され」る、「絶縁体充填工程(S302)」を有し、「樹脂部2に充填される絶縁体は、LEDチップ4から発生する光を反射するために、反射率が高い白色の材料である」ものである。
したがって、先願発明の「樹脂基材207」(樹脂成形体)は光反射性であるといえる。また、先願発明の「絶縁体充填工程(S302)」は、本件訂正発明1の「樹脂成形体付リードフレームを準備する工程」に相当する。
よって、本件訂正発明1と先願発明とは、「リードフレームと、光反射性の樹脂成形体と、を有する樹脂成形体付リードフレームを準備する工程」を有する点で一致する。

(エ)本件訂正発明1の「前記凹部の底面には前記リードフレームが前記樹脂成形体で分割されて露出されており」と、先願発明の(b)における「樹脂基材207は、リードフレーム基材201においてリードフレーム1を構成する部分を取り囲むように形成された隙間に樹脂を充填して形成され、ここで樹脂基材207と桟フレーム203との間に樹脂が充填されていない溝構造204が形成されており」とを対比する。
本件訂正発明1は、「前記樹脂成形体付リードフレームの上側には凹部が複数設けられ、前記凹部の底面には前記リードフレームが前記樹脂成形体で分割されて露出されて」いるものであるから、「前記凹部の底面」は、リードフレームの上面であるといえる。また、先願発明の当該記載から、「リードフレーム基材201の上面は、リードフレーム基材201が樹脂基材207で分割されて露出されて」いるといえる。
したがって、本件訂正発明1と先願発明とは、「前記リードフレームの上面は前記リードフレームが前記樹脂成形体で分割されて露出されて」いる点で一致する。

(オ)先願発明の(b)の「絶縁体充填工程(S302)」は、「樹脂基材207は、リードフレーム基材201においてリードフレーム1を構成する部分を取り囲むように形成された隙間に樹脂を充填して形成され」るものであるから、リードフレーム基材201には、絶縁体としての樹脂部2の一部が入り込んだ隙間が設けられているといえる。
また、先願発明の「隙間」は、リードフレーム基材201における「隙間」であるから、本件訂正発明1の「切り欠き部」に相当する。
したがって、本件訂正発明1と先願発明とは、「前記リードフレームには前記樹脂成形体の一部が入り込んだ切り欠き部が設けられ」ている点で一致する。

(カ)先願発明において、「リードフレーム1の裏面1bには、端子部が設けられて」いるから、(b)の「絶縁体充填工程(S302)」における絶縁基材207を形成後のリードフレーム基材207は、その底面にてリードフレーム基材201が露出しているといえる。
したがって、本件訂正発明1と先願発明とは、「前記樹脂成形体付リードフレームの底面にて前記リードフレームが露出している」点で一致する。

(キ)先願発明は、「(c)半導体発光素子4をリードフレーム基材201に実装する、半導体発光素子実装工程(S303)」を有するから、本件訂正発明1と先願発明とは、「前記リードフレームの上面に発光素子を載置する工程」を有する点で一致する。

(ク)先願発明は、「(e)半導体発光素子4と金属線5とを完全に覆うように、樹脂3による封止を行う、樹脂封止工程(S305)」を有するから、本件訂正発明1と先願発明とは、「前記発光素子を被覆する封止部材を配置する工程」を有する点で一致する。

(ケ)本件訂正発明1の「分離後の各発光装置の前記4つの外側面のいずれにおいても前記リードと前記切り欠き部に入り込んだ前記樹脂部とが略同一面となるように、前記リードフレームと前記樹脂成形体とを切断することにより、複数の発光装置に分離する工程」と、先願発明の「(i)樹脂基材207及び反射体10をダイシングによって切断し、半導体発光装置を個片化する、ダイシング工程(S309)」とを対比する。
先願発明は、(g)において、「桟フレーム203に沿った方向の多連リードフレーム列間を、切断金型により切断し、その結果、隣接する樹脂基材207によって取り囲まれた隣接するリードフレーム1が分離される、金型切断工程(S307)」と、「(i)樹脂基材207及び反射体10をダイシングによって切断し、半導体発光装置を個片化する、ダイシング工程(S309)」とを有するものであるから、ダイシング工程(S309)は、樹脂基材207を切断することにより、複数の発光装置に分離する工程であるといえる。
したがって、本件訂正発明1と先願発明とは、「前記樹脂成形体を切断することにより、複数の発光装置に分離する工程」を有する点で一致する。

(コ)以上をまとめると、本件訂正発明1と先願発明は、
「リード及び樹脂部を有し、上側から見た外形が略四角形で4つの外側面を有する発光装置の製造方法であって、
リードフレームと、光反射性の樹脂成形体と、を有する樹脂成形体付リードフレームを準備する工程であって、前記リードフレームの上面は前記リードフレームが前記樹脂成形体で分割されて露出されており、前記リードフレームには前記樹脂成形体の一部が入り込んだ切り欠き部が設けられ、且つ前記樹脂成形体付リードフレームの底面にて前記リードフレームが露出している、樹脂成形体付リードフレームを準備する工程と、
前記リードフレームの上面に発光素子を載置する工程と、
前記発光素子を被覆する封止部材を配置する工程と、
前記樹脂成形体を切断することにより、複数の発光装置に分離する工程と、を有する発光装置の製造方法。」
である点で一致し、以下の点で一応相違する。

<相違点1>
樹脂成形体が、本件訂正発明1では、「光反射性物質を含有する」ものであるのに対し、先願発明では、「樹脂部2に充填される絶縁体は、LEDチップ4から発生する光を反射するために、反射率が高い白色の材料である」ものの、「反射率が高い白色の材料」についてそのような特定はなされていない点。

<相違点2>
樹脂成形体付リードフレームを準備する工程が、本件訂正発明1では、「前記樹脂成形体付リードフレームの上側には凹部が複数設けられ」ているのに対し、先願発明の絶縁体充填工程(S302)では、そのような特定はなされていない点。
そのため、本件訂正発明1では、「前記リードフレーム」が「露出され」ているのは、「前記凹部底面」であり、「発光素子を載置する」面は、「前記凹部の底面」であり、「封止部材を配置する」のは、「前記凹部内」であるのに対し、先願発明では、「絶縁体充填工程(S302)」におけるリードフレーム基材201の露出についてと、「半導体発光素子実装工程(S303)」と、「樹脂封止工程(S305)」において、本件訂正発明1のような特定はなされていない点。

<相違点3>
リードフレームに設けられた「前記樹脂成形体の一部が入り込んだ切り欠き部」について、本件訂正発明1では、「前記外側面となる4つの位置のいずれにも」設けられているのに対し、先願発明では、リードフレーム基材201について、本件訂正発明1のような特定はなされていない点。

<相違点4>
複数の発光装置に分離する工程について、本件訂正発明1は、「分離後の各発光装置の前記4つの外側面のいずれにおいても前記リードと前記切り欠き部に入り込んだ前記樹脂部とが略同一面となるように、前記リードフレームと前記樹脂成形体とを切断することにより」、分離するのに対し、先願発明では、「半導体発光装置を個片化する、ダイシング工程(S309)」は、「樹脂基材207及び反射体10をダイシングによって切断」するものであり、分離後の各半導体発光装置(発光装置)の「外側面」において「リードフレーム1(リード)と樹脂基材207(樹脂部)とが略同一面となる」ように、「リードフレーム基材201(リードフレーム)と樹脂基材207(樹脂成形体)とを切断することにより」、分離するものではない点。

エ 判断
(ア)相違点2について
まず、相違点2について検討する。
本件訂正発明1は、樹脂成形体付リードフレームを準備する工程で準備される、当該樹脂成形体付リードフレームが、相違点2に係る「前記樹脂成形体付リードフレームの上側には凹部が複数設けられ」ているという構成を備えるものである。
これに対し、先願発明は、(h)の「反射体貼付工程(S308)」を有しており、この工程(S308)が終了した時点で、反射体10の内壁とリード端子7の表面によって凹部が形成されるものであるから、「反射体貼付工程(S308)」よりも前の工程である、(b)の「絶縁体充填工程(S302)」(本件訂正発明1の「樹脂成形体付リードフレームを準備する工程」に相当。)では、本願訂正発明1のように、凹部が複数設けられているものではなく、本件訂正発明1とは全く異なる製造方法である。
また、先願発明では、「絶縁体充填工程(S302)」において、凹部の底面にリードフレーム基材201が露出されているものではなく、「半導体発光素子実装工程(S303)」において、半導体発光素子4を凹部の底面に実装するものではなく、「樹脂封止工程(S305)」において、凹部内に、半導体発光素子4を覆うように、樹脂3による封止を行うものではなく、つまり、先願発明は、本件訂正発明1のように、「樹脂成形体付リードフレームを準備する工程」であって、「前記凹部底面」には「前記リードフレーム」が「露出され」ているものではなく、本件訂正発明1のように、「前記凹部の底面に発光素子を載置する工程」を有するものではなく、本件訂正発明1のように、「前記凹部内」に、「封止部材を配置する工程」を有するものではない。
したがって、先願発明は、相違点2に係る本件訂正発明1の構成を備えるものではない。
よって、相違点2は、実質的なものである。

(イ)相違点3について
次に、相違点3について検討する。
本件訂正発明1は、樹脂成形体付リードフレームを準備する工程で準備される、当該樹脂成形体付リードフレームが有するリードフレームに設けられた「前記樹脂成形体の一部が入り込んだ切り欠き部」について、相違点3に係る「前記外側面となる4つの位置のいずれにも」設けられているという構成を備えるものである。
これに対し、先願発明は、「(b)半導体発光装置を構成する絶縁体としての樹脂部2となるべき、樹脂基材207を形成する、絶縁体充填工程(S302)であって、樹脂基材207は、リードフレーム基材201においてリードフレーム1を構成する部分を取り囲むように形成された隙間に樹脂を充填して形成され、ここで樹脂基材207と桟フレーム203との間に樹脂が充填されていない溝構造204が形成されて」いる、「絶縁体充填工程(S302)」と、「(g)金型切断工程(S307)であって、桟フレーム203に沿った方向の多連リードフレーム列間を、切断金型により切断し、その結果、隣接する樹脂基材207によって取り囲まれた隣接するリードフレーム1が分離される、金型切断工程(S307)」と、「(i)樹脂基材207及び反射体10をダイシングによって切断し、半導体発光装置を個片化する、ダイシング工程(S309)」と、を有し、「半導体発光装置において、樹脂部2はリードフレーム1を取り囲み、絶縁体としての樹脂部2の周縁から、半導体発光素子4から離れる側に突出したリード端子7を備え、リード端子7の端部は樹脂部2で囲われて」いないものであり、本件訂正発明1とは全く異なる製造方法であるから、半導体発光装置の外側面となる4つの位置のうち、多連リードフレーム列間が、切断金型により切断される方向の2つの外側面となる位置(図12の溝構造204の位置)には、樹脂基材207は設けられていない。
すなわち、先願発明では、多連リードフレーム列間が切断される方向の、リードフレーム基材201の少なくとも2つの外側面となる当該位置には、樹脂基材207の一部が入り込んだ切り欠き部は設けられていないから、4つの外側面全てに切り欠き部が設けられているものではない。
したがって、先願発明は、本件訂正発明1のように「外側面となる4つの位置のいずれにも」切り欠き部が設けられているものではなく、相違点3に係る本件訂正発明1の構成を備えるものではない。
よって、相違点3は、実質的なものである。

(ウ)相違点4について
次に、相違点4について検討する。
本件訂正発明1は、複数の発光装置に分離する工程が、相違点4に係る「分離後の各発光装置の前記4つの外側面のいずれにおいても前記リードと前記切り欠き部に入り込んだ前記樹脂部とが略同一面となるように、前記リードフレームと前記樹脂成形体とを切断することにより」、分離するという構成を備えることで、このように切り欠き部21aを設けることにより、リードフレームと樹脂成形体との剥離を抑制することができ、また、リードフレームと樹脂成形体との密着高度が向上するとの効果を奏するものである(上記(1)イの本件特許明細書の段落【0078】を参照。)。
これに対し、先願発明において、「リードフレーム基材201」の切断は、「金型切断工程(S307)」において、外装メッキ工程(S306)で完成した多連リードフレーム200の切断により行われるから、「半導体発光装置を個片化する、ダイシング工程(S309)」は、「樹脂基材207及び反射体10」を切断するものであり、「リードフレーム基材201」を切断する工程ではなく、先願発明は本件訂正発明1とは全く異なる製造方法である。
したがって、先願発明は、分離後の各半導体発光装置(発光装置)の「外側面」において「リードフレーム1(リード)と樹脂基材207(樹脂部)とが略同一面となる」ように、「リードフレーム基材201(リードフレーム)と樹脂基材207(樹脂成形体)とを切断することにより」、分離するものではなく、相違点4に係る本件訂正発明1の構成を備えるものではない。
よって、相違点4は、実質的なものである。

(エ)判断のまとめ
したがって、相違点1について検討するまでもなく、本件訂正発明1と先願発明とが実質的に同一であるということはできない。
また、本件訂正発明1の発明特定事項を全て含む本件訂正発明2ないし本件訂正発明12についても、本件訂正発明1と同様の理由で先願発明とが実質的に同一であるということはできない。
よって、本件訂正発明1ないし本件訂正発明12は、先願発明と同一であるとはいえない。

オ 他の先願発明及び対比・判断
上記イ?エのとおりであり、「被告準備書面(3)」「第4 引用発明等の説明」「1」「(2) 乙11発明の認定」(17ページ)「ア」には、「乙11には、半導体発光装置の「実施の形態7」について…。そこで、以下では、半導体発光装置の「実施の形態7」について、実施の形態1及び4の記載を参酌して、その製造工程に関する記載を摘示する。」と記載されているものの、「第5 無効理由(2)(拡大先願)」「1 本件発明2と乙11発明との対比」の(1)(27ページ)、(4)(29ページ)、(5)(30ページ)、(8)(31ページ)では、実施の形態1の半導体発光装置の平面図の図2を参照しており、被告は、先願明細書等に記載の発明として、実施の形態1についての発明を認定しているとも解される。
そこで、念のため、本件訂正発明1ないし本件訂正発明12が、先願明細書等に記載の他の発明(以下に記載の「実施の形態1の変形例」についての発明)と同一であるか否かについても、以下において検討する。

(ア)上記イ(ア)に摘記したように、先願明細書等の段落【0038】には、「封止樹脂に高屈折率の樹脂を使用することにより、半導体発光装置によっては、従来の半導体発光装置の外周部に設けられていた反射板を取り除くことも可能となる。」と記載されていることから、先願明細書等には、実施の形態1において、反射体(反射板)を半導体発光装置の外周部に設けたものも示唆されているといえる。
先願明細書等の図20を参考に、実施の形態1において、反射体(反射板)を半導体発光装置の外周部に設けた場合であって、反射体貼付工程が、図3に示された「外装メッキ工程(S6)」と「ダイシング工程(S7)」との間に行われる場合(以下「実施の形態1の変形例」という。)について検討する。

(イ)実施の形態1の変形例において、絶縁体充填工程(S2)、半導体発光素子実装(ダイボンド)工程(S3)及び樹脂封止工程(S5)は、反射体貼付工程の前の工程となる。
したがって、絶縁体充填工程(S2)は、本件訂正発明1のように、「前記樹脂成形体付リードフレームの上側には凹部が複数設けられ」たものではなく、半導体発光素子実装工程(S3)では、本件訂正発明1の「前記凹部の底面」は存在せず、樹脂封止工程(S5)では、本件訂正発明1の「前記凹部内」は存在しない。

(ウ)次に、複数の発光装置に分離する工程について検討する。
本件訂正発明1は、「分離後の各発光装置の前記4つの外側面のいずれにおいても前記リードと前記切り欠き部に入り込んだ前記樹脂部とが略同一面となるように、前記リードフレームと前記樹脂成形体とを切断することにより」、分離するのに対し、実施の形態1の変形例では、図2、4から見てとれるように、行方向の切断面は、リードフレーム基材201は存在しないので、本願訂正発明1のように「前記リードフレームと前記樹脂成形体とを切断することにより」、分離するものではない。

(エ)以上のとおりであるから、本件訂正発明1と上記実施の形態1の変形例に係る発明とが実質的に同一であるということはできない。

カ 無効理由2についてのまとめ
したがって、本件訂正発明1ないし本件訂正発明12の特許は、特許法第29条の2の規定に違反してされたものであるとはいえない。
よって、無効理由2には、理由がない。

(3)他の拒絶理由
本件訂正発明1ないし本件訂正発明12について、他に特許出願の際独立して特許を受けることができない理由は見出せない。

(4)独立特許要件についてのまとめ
(1)ないし(3)で説示したとおりであるから、本件訂正発明1ないし本件訂正発明12が特許出願の際独立して特許を受けることができないものとすることはできない。
したがって、本件訂正後の特許請求の範囲に記載されている事項により特定される発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるから、訂正事項1は、特許法第126条第7項の規定に適合する。

第5 むすび
したがって、本件審判の請求は、特許法第126条第1項第1号ないしは第3号に掲げる事項を目的とし、かつ、同条第5項ないし第7項の規定に適合する。

よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リード及び樹脂部を有し、上側から見た外形が略四角形で4つの外側面を有する発光装置の製造方法であって、
リードフレームと、光反射性物質を含有する樹脂成形体と、を有する樹脂成形体付リードフレームを準備する工程であって、前記樹脂成形体付リードフレームの上側には凹部が複数設けられ、前記凹部の底面には前記リードフレームが前記樹脂成形体で分割されて露出されており、前記リードフレームには前記外側面となる4つの位置のいずれにも前記樹脂成形体の一部が入り込んだ切り欠き部が設けられ、且つ前記樹脂成形体付リードフレームの底面にて前記リードフレームが露出している、樹脂成形体付リードフレームを準備する工程と、
前記凹部の底面に発光素子を載置する工程と、
前記凹部内に、前記発光素子を被覆する封止部材を配置する工程と、
分離後の各発光装置の前記4つの外側面のいずれにおいても前記リードと前記切り欠き部に入り込んだ前記樹脂部とが略同一面となるように、前記リードフレームと前記樹脂成形体とを切断することにより、複数の発光装置に分離する工程と、を有することを特徴とする発光装置の製造方法。
【請求項2】
前記切り欠き部は、製造される前記発光装置の全包囲周の1/2以上にわたって設けられている、請求項1に記載の発光装置の製造方法。
【請求項3】
前記樹脂成形体付リードフレームを準備する工程において、
前記複数の発光装置に分離する工程において、分離後の発光装置が、前記リードとして正リード及び負リードを有し、前記正リードの一部が対向する2つの外側面のうち一方の外側面の少なくとも2か所にて露出し、前記負リードの一部が前記対向する2つの外側面のうち他方の外側面の少なくとも2か所にて露出するように、前記切り欠き部を設けておくことを特徴とする請求項1または2に記載の発光装置の製造方法。
【請求項4】
前記樹脂成形体付リードフレームを準備する工程において、
前記複数の発光装置に分離する工程において、分離後の発光装置が、前記リードとして正リード及び負リードを有し、前記正リードの一部が少なくとも2つの外側面に露出し、且つ前記負リードの一部が少なくとも2つの外側面に露出するように、前記切り欠き部を設けておくことを特徴とする請求項1または2に記載の発光装置の製造方法。
【請求項5】
前記樹脂成形体付リードフレームを準備する工程において、
前記複数の発光装置に分離する工程において、分離後の発光装置が、前記リードとして正リード及び負リードを有し、前記正リードの一部が3つの外側面に露出し、前記負リードの一部が3つの外側面に露出するように、前記切り欠き部を設けておくことを特徴とする請求項1または2に記載の発光装置の製造方法。
【請求項6】
前記樹脂成形体付リードフレームを準備する工程は、
前記切り欠き部が設けられたリードフレームを上金型と下金型とで挟み込む工程と、
前記リードフレームを前記上金型と前記下金型とで挟み込むことにより形成された、前記切り欠き部を含めた空間内に光反射性物質が含有される樹脂を入り込ませた後、前記リードフレームが底面に露出した複数の凹部が形成され、且つ前記リードフレームの底面が露出するように、前記リードフレームと一体に樹脂成形体を形成して樹脂成形体付リードフレームを得る工程と、
を有する、請求項1?5のいずれか1項に記載の発光装置の製造方法。
【請求項7】
前記樹脂成形体付リードフレームは、
前記切り欠き部が設けられたリードフレームを上金型と下金型とで挟み込む工程と、
前記リードフレームを前記上金型と前記下金型とで挟み込むことにより形成された、前記切り欠き部を含めた空間内に光反射性物質が含有される樹脂を入り込ませた後、前記リードフレームが底面に露出した複数の凹部が形成され、且つ前記リードフレームの底面が露出するように、前記リードフレームと一体に樹脂成形体を形成して樹脂成形体付リードフレームを得る工程と、
を経て製造されたものである、請求項1?5のいずれか1項に記載の発光装置の製造方法。
【請求項8】
前記樹脂成形体付リードフレームを準備する工程において、前記リードフレームは、全面に銀メッキ処理が施されている、請求項1?7のいずれか1項に記載の発光装置の製造方法。
【請求項9】
前記樹脂成形体付リードフレームを準備する工程において、前記リードフレームは、前記切り欠き部を画定する部分すべてに、段差又は凹凸を有する、請求項1?8のいずれか1項に記載の発光装置の製造方法。
【請求項10】
前記樹脂成形体付リードフレームを準備する工程において、前記リードフレームは、前記リードフレームを貫通しないように片面からエッチングされた部分を有する、請求項1?8のいずれか1項に記載の発光装置の製造方法。
【請求項11】
前記樹脂成形体は、トリアジン誘導体エポキシ樹脂を含む、請求項1?10のいずれか1項に記載の発光装置の製造方法。
【請求項12】
前記封止部材を配置する工程において、前記封止部材として蛍光物質を含有する封止部材を用いる、請求項1?11のいずれか1項に記載の発光装置の製造方法。
【請求項13】
正リード及び負リードを有するリードと樹脂部とを有し、前記正リードの一部及び前記負リードの一部のそれぞれが露出した底面を有する凹部が設けられた樹脂パッケージと、
前記凹部の底面に載置された発光素子と、前記凹部内において前記発光素子を被覆する封止部材と、を備え、上側から見た外形が略四角形で4つの外側面を有する発光装置であって、
前記リードは、前記発光装置の底面にて露出し、前記4つの外側面のいずれにも切り欠き部を有し、
前記樹脂部の一部は、前記切り欠き部のそれぞれに入り込んでおり、
前記4つの外側面それぞれにおいて、前記樹脂部から前記リードの一部が露出し、前記切り欠き部に入り込んだ樹脂部と前記リードとが略同一面となっている、発光装置。
【請求項14】
前記切り欠き部は、前記発光装置の全包囲周の1/2以上にわたって設けられている、請求項13に記載の発光装置。
【請求項15】
前記正リードの一部が、対向する2つの外側面のうち、一方の外側面の少なくとも2か所にて露出し、
前記負リードの一部が、前記対向する2つの外側面のうち、他方の外側面の少なくとも2か所にて露出している、請求項13または14に記載の発光装置。
【請求項16】
前記正リードの一部が少なくとも2つの外側面に露出し、
前記負リードの一部が少なくとも2つの外側面に露出している、請求項13または14に記載の発光装置。
【請求項17】
前記正リードの一部が3つの外側面に露出し、
前記負リードの一部が3つの外側面に露出している、請求項13または14に記載の発光装置。
【請求項18】
前記リードは、前記外側面を除く全面に銀メッキ処理が施されている、請求項13?17のいずれか1項に記載の発光装置。
【請求項19】
前記リードは、前記切り欠き部を画定する部分すべてに、段差又は凹凸を有する、請求項13?18のいずれか1項に記載の発光装置。
【請求項20】
前記リードは、前記リードを貫通しないように片面側から薄肉化された部分を有する、請求項13?18のいずれか1項に記載の発光装置。
【請求項21】
前記樹脂部は、トリアジン誘導体エポキシ樹脂を含む、請求項13?20のいずれか1項に記載の発光装置。
【請求項22】
前記封止部材は蛍光物質を含有する、請求項13?21のいずれか1項に記載の発光装置。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2018-08-13 
結審通知日 2018-08-15 
審決日 2018-08-30 
出願番号 特願2015-200794(P2015-200794)
審決分類 P 1 41・ 856- Y (H01L)
P 1 41・ 851- Y (H01L)
P 1 41・ 853- Y (H01L)
P 1 41・ 841- Y (H01L)
最終処分 成立  
前審関与審査官 村井 友和  
特許庁審判長 森 竜介
特許庁審判官 恩田 春香
近藤 幸浩
登録日 2016-12-16 
登録番号 特許第6056934号(P6056934)
発明の名称 発光装置、樹脂パッケージ、樹脂成形体並びにこれらの製造方法  
代理人 山尾 憲人  
代理人 玄番 佐奈恵  
代理人 玄番 佐奈恵  
代理人 田村 啓  
代理人 田村 啓  
代理人 山尾 憲人  

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