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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B65D
管理番号 1344207
審判番号 不服2017-13193  
総通号数 227 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-11-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-09-06 
確定日 2018-09-14 
事件の表示 特願2013-110811「電子レンジ用紙カップ」拒絶査定不服審判事件〔平成26年12月 8日出願公開、特開2014-227221〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成25年5月27日を出願日とする出願であって、その手続の経緯は、概略、以下のとおりである。
平成29年3月8日付け :拒絶理由通知書
平成29年5月12日 :意見書、手続補正書の提出
平成29年5月29日付け:拒絶査定
平成29年9月6日 :審判請求書、手続補正書の提出

第2 平成29年9月6日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成29年9月6日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 本件補正について(補正の内容)
(1)本願補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正により、特許請求の範囲の請求項2の記載は、次のとおり補正された。
「筒状の胴部と,胴部の下端を閉鎖する底部とを備え,上記胴部と上記底部の紙が重なる接合部分が上記底部に沿って接合されているフラット・ボトム・タイプの紙カップにおいて,上記底部が紙を主成分とする基材とこの基材の少なくとも一面に設けられた発泡断熱層とを含み,上記底部の周縁部が外面に折り返され,この折り返し部分に上記胴部の下端屈曲部が接合されている,電子レンジ用紙カップ。」

(2)本件補正前の特許請求の範囲
本件補正前の、平成29年5月12日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。
「筒状の胴部と,胴部の下端を閉鎖する底部とを備え,上記胴部と上記底部の紙が重なる接合部分が上記底部に沿って接合されているフラット・ボトム・タイプの紙カップにおいて,上記底部が紙を主成分とする基材とこの基材の少なくとも一面に設けられた発泡断熱層とを含むことを特徴とする,電子レンジ用紙カップ。」

2 補正の適否
本件補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「底部」と「胴部」の接合態様について、「上記底部の周縁部が外面に折り返され,この折り返し部分に上記胴部の下端屈曲部が接合されている」との限定を付加するものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項2に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項2に記載される発明(以下「本件補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。

(1)本件補正発明
本件補正発明は、上記1(1)に記載したとおりのものである。

(2)引用文献の記載事項及び引用発明
ア 引用文献1
(ア)原査定の拒絶の理由に引用された本願の出願日前に頒布された刊行物である特開2012-91808号公報(平成24年5月17日出願公開。以下「引用文献1」という。)には、図面とともに、次の記載がある。

a
「【技術分野】
【0001】
本発明は紙製のどんぶり型容器に関する。更に詳細には、本発明は胴部材と底板部材とからなる紙製のどんぶり型断熱性容器に関する。」

b
「【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら本発明のどんぶり型紙製容器の好ましい実施態様について詳細に説明する。図1は本発明のどんぶり型紙製容器の一例の概要断面図である。本発明のどんぶり型紙製容器1は基本的に胴部材3と底板部材5とからなる。・・・」

c
「【0013】
本発明のどんぶり型紙製容器1における胴部材3は紙基材9の内壁面側にフィルム11がラミネートされた原紙から形成されている。・・・
【0014】
本発明のどんぶり型紙製容器1における底板部材5は紙基材9の内壁面側にフィルム11がラミネートされた原紙から形成されている。・・・
【0015】
胴部材3と異なり、底板部材5は紙基材9の外壁面側に発泡断熱層13を有する。・・・
【0016】
本発明のどんぶり型紙製容器1を片手で把持する場合、一般的に、親指は口縁部7の上端面に接するように添えられ、残りの幾本かの指は底板部材5の外壁面(すなわち、発泡断熱層13)に接するように添えられる。発泡断熱層13の存在により、発泡断熱層13に接するように添えられた指は殆ど高温の容器内容物の熱気を感じることなく極めて安定的に容器1を把持することができる。・・・」

d
「【0027】
・・・本発明のどんぶり型紙製容器は熱湯を注いで内容物を復元させるタイプの即席食品類(例えば、即席饂飩、即席蕎麦、即席ラーメン、即席スープ、即席お茶漬けなど)の他、電子レンジで調理するタイプの温熱食品類にも使用できる。」

e





(イ)上記(ア)から、引用文献1には、次の技術的事項が記載されているといえる。
a 引用文献1には、「どんぶり型紙製容器1」と記載されており、図1にその図示がある。
一般に、どんぶり形状の容器をカップと呼称することが広く行われていることからすると(例えば、特開2000-180383号公報の【0002】、特開平11-28067号公報の【0008】参照)、引用文献1の「どんぶり型紙製容器1」は「紙カップ」であるといえる。
b また、引用文献1の【0027】には、「本発明のどんぶり型紙製容器は・・・電子レンジで調理するタイプの温熱食品類にも使用できる。」と記載されていることから、引用文献1の「どんぶり型紙製容器1」は電子レンジ用であることも記載されているといえる。
c 上記a、bより、引用文献1の「どんぶり型紙製容器1」は、電子レンジ用紙カップであるといえる。

(ウ)上記(ア)、(イ)を踏まえると、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているといえる。
「筒状の胴部材3と,胴部材3の下端を閉鎖する底板部材5とを備える紙カップにおいて、上記底板部材5が紙を主成分とする紙基材9とこの紙基材9の外壁面に設けられた発泡断熱層13とを含む、電子レンジ用紙カップ。」

イ 引用文献2
(ア)同じく原査定に引用され、本願の出願日前に頒布された刊行物である特開平11-11541号公報(平成11年1月19日出願公開。以下「引用文献2」という。)には、図面とともに次の記載がある。

a
「【0007】
【発明の実施の形態】以下に、図面を参照しながら、本発明について、さらに詳しく説明する。図2は、本発明による電子レンジ用紙カップの一実施例を示している。電子レンジ用紙カップAは、胴部材1と底部材2とからなっている。
【0008】一般的な紙カップは、図1に示すように、底部材2の外周辺部を下方へ屈曲し、その屈曲部5を挟んで胴部材1の下端部を内側に折り込み、加熱圧着して接合して形成されている。この底部材2の屈曲部5を挟んで折り込んだ部分を糸じり部4と称し、底部を上げ底にしている。この糸じり部4の一部が、電子レンジ内で畜熱し、焦げを生じる。
【0009】本発明の電子レンジ用紙カップは、糸じり部を設けずに、図2に示すように、胴部材1の下端部を内側に屈曲させ、その胴部材1の屈曲部6と底部材2の外周辺部の外面とで接着接合して形成されている。底部材2は、図2のような外周辺部が屈曲していない平らな形状の電子レンジ用紙カップAと、図3のような外周辺部が外側に折り返された折り返し部7を有する形状の電子レンジ用紙カップBとがある。後者の形状では、底部材2の紙の端面がでない構造のため、底部材2への内容物のしみ込みがないという利点がある。」

b












(3)引用発明との対比
ア 本件補正発明と引用発明とを対比する。
引用発明の「胴部材3」、「底板部材5」、「紙基材9」、「外壁面」、「発泡断熱層13」は、それぞれ、本件補正発明の「胴部」、「底部」、「基材」、「少なくとも一面」、「発泡断熱層」に相当する。

イ そうすると、本件補正発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。
<一致点>
「筒状の胴部と,胴部の下端を閉鎖する底部とを備える紙カップにおいて,上記底部が紙を主成分とする基材とこの基材の少なくとも一面に設けられた発泡断熱層とを含む、電子レンジ用紙カップ。」

<相違点>
本件補正発明の「紙カップ」は、「胴部と底部の紙が重なる接合部分が底部に沿って接合されているフラット・ボトム・タイプ」であり、「上記底部の周縁部が外面に折り返され、この折り返し部分に上記胴部の下端屈曲部が接合されている」のに対し、引用発明の「紙カップ」は、フラット・ボトム・タイプであり、底部の周縁部が外面に折り返され、この折り返し部分に胴部に下端屈曲部が接合されているかは明らかでない点。

(4)判断
以下、相違点について検討する。
ア 電子レンジ用紙カップについて、紙カップを、胴部と底部の紙が重なる接合部分が底部に沿って接合されているフラット・ボトム・タイプとし、上記底部の周縁部が外面に折り返され、この折り返し部分に上記胴部の下端屈曲部を接合し、もって焦げが生じる糸じり部を設けないことは、周知の技術である(例えば、上記(2)イで摘記した引用文献2の電子レンジ用紙カップB参照)。
引用発明の電子レンジ用紙カップについても、焦げを生じさせないことは当業者が配慮し得たことといえるから、上記周知の技術(引用文献2参照)を適用する動機があるといえる。また、引用発明について、上記周知の技術(引用文献2参照)を適用する阻害要因はない。
ゆえに、引用発明について上記周知の技術(引用文献2参照)を適用すること、すなわち、上記相違点に係る本件補正発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

イ そして、上記相違点を勘案しても、本件補正発明の奏する作用効果は、引用発明及び上記周知の技術(引用文献2参照)から当業者であれば予測できる範囲内のものにすぎず、格別顕著なものともいえない。

ウ なお、請求人は、審判請求書の第3の項目4で、「引用文献2には糸じりのない紙カップが開示されているが,紙を主成分とする基材とこの基材の少なくとも一面に設けられた発泡断熱層とを含む底部の周縁部が外面に折り返され,この折り返し部分に胴部の下端屈曲部が接合されているという特徴は引用文献2には示されていない。したがって,本願第2発明の進歩性もまた否定されるべきではない。」と主張している。
しかしながら、本件補正発明には、「上記底部が紙を主成分とする基材とこの基材の少なくとも一面に設けられた発泡断熱層とを含み,上記底部の周縁部が外面に折り返され,この折り返し部分に上記胴部の下端屈曲部が接合されている」と記載されており、発明特定事項として、発泡断熱層が底部の基材の少なくとも一面に設けられる構成を有しているものの、発泡断熱層が「一面」の全部に設けられるのか、「一面」の一部に設けられるのか、「一面」の周縁部に設けられるのか特定されていない。そうすると、本件補正発明について、底部の周縁部が発泡断熱層を含み、この発泡断熱層を含む周縁部が外面に折り返されるという構成のみを特定するものとだたちに認定することはできない。ゆえに、上記請求人の主張は請求項2の記載に基いたものではない。

エ したがって、本件補正発明は、引用発明及び上記周知の技術(引用文献2参照)に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

3 本件補正についてのむすび
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法126条第7項の規定に違反するので、同法159条第1項の規定において読み替えて準用する同法53条第1項の規定により却下すべきものである。

よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、平成29年5月12日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?9に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、前記第2[理由]1(2)に記載のとおりのものである。

2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項1に係る発明は、本願の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明及び周知の技術(引用文献2参照)に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

引用文献1:特開2012-091808号公報
引用文献2:特開平11-11541号公報

3 引用文献
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1、2及びその記載事項は、前記第2の[理由]2(2)に記載したとおりである。

4 対比・判断
本願発明は、前記第2の[理由]2で検討した本件補正発明から、「上記底部の周縁部が外面に折り返され,この折り返し部分に上記胴部の下端屈曲部が接合されている」という限定事項を削除したものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明は、前記第2の[理由]2(3)、(4)に記載したとおり、引用発明及び周知の技術(引用文献2参照)に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、引用発明及び周知の技術(引用文献2参照)に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2018-07-12 
結審通知日 2018-07-17 
審決日 2018-07-31 
出願番号 特願2013-110811(P2013-110811)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B65D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 秋山 誠佐藤 正宗  
特許庁審判長 門前 浩一
特許庁審判官 西藤 直人
井上 茂夫
発明の名称 電子レンジ用紙カップ  
代理人 高城 貞晶  
代理人 牛久 健司  
代理人 井上 正  

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