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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G01L
管理番号 1344292
審判番号 不服2018-997  
総通号数 227 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-11-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-01-24 
確定日 2018-10-03 
事件の表示 特願2016-526394「2ピース式の隔離プラグのある隔離部品を有する圧力伝送器」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 1月22日国際公開、WO2015/006977、平成28年 9月 8日国内公表、特表2016-527497、請求項の数(15)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2013年7月19日を国際出願日とする出願であって、平成29年3月15日付けで拒絶理由が通知され、平成29年6月21日付けで手続補正がなされ、平成29年6月29日付けで最後の拒絶理由が通知され、平成29年9月14日付けで意見書が提出されたが、平成29年10月6日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成30年1月24日に拒絶査定不服審判が請求され、同時に手続補正がなされたものである。

第2 原査定の概要
原査定(平成29年10月6日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

この出願の請求項1-17に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記1-4の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

<引用文献等一覧>
1.特表平11-504710号公報
2.特開2002-340717号公報
3.特表2013-506841号公報
4.特開昭58-011823号公報(周知技術を示す文献)

第3 本願発明
本願の請求項1-15に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明15」という。)は、平成30年1月24日付けの手続補正書で補正された特許請求の範囲の請求項1ないし15に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、本願発明1は、次のとおりのものである。
「【請求項1】
プロセスラインに接続可能であり、当該プロセスライン内の圧力に応じた出力を与える圧力伝送器であって、
ベースを有するハウジングであって、当該ベースは当該ハウジング内に形成された内部空洞へと接続されるプロセス端部を有しているようなハウジングと、
前記圧力を検知するためのセンサと、
前記ハウジングの前記プロセス端部に取り付けられており、前記プロセスライン内の流体を前記内部空洞から隔離する隔離部品と、を備え、
前記隔離部品はさらに、
前記プロセスライン内の前記圧力に流体的に接続されるように構成されている隔離ダイアフラムと、
前記ハウジングの前記プロセス端部に位置し、内側凹部が形成されている隔離プラグであって、
前記隔離ダイアフラムに隣接した第1端面を提供する下側プラグ部分と、
前記第1端面から離れて位置しており且つ前記センサが内部に配置されるセンサ空洞に隣接している第2端面を提供する上側プラグ部分と、
前記下側プラグ部分及び前記上側プラグ部分を接合する接合構造と、
隔離流体で充填されており、且つ、前記第1端面から前記下側プラグ及び前記上側プラグ部分を貫通して前記第2端面まで延びている毛細管であって、前記隔離ダイアフラム及び当該毛細管を通じて前記圧力を前記センサ空洞及び前記センサへと接続させる毛細管と、を有する隔離プラグと、
前記隔離プラグによって支持され、前記内側凹部内に配置されるセンサ取付部と、を有し、
前記上側プラグ部分は第1材料で形成されており、前記下側プラグ部分は前記第1材料よりも高い腐食耐性を有する第2材料で形成されており、
前記内側凹部は前記センサ空洞を形成しており、
前記センサ空洞を形成する前記内側凹部は前記上側プラグ部分において形成されていることを特徴とする圧力伝送器。」

なお、本願発明2-15の概略は、次のとおりである。
本願発明2-10は、本願発明1を減縮した発明である。
本願発明11は、本願発明1に係る「圧力伝送器」に用いられる「隔離部品」についての発明である。
本願発明12-15は、本願発明11を減縮した発明である。

第4 引用文献、引用発明等
1.引用文献1について
(1)引用文献1に記載された事項
原査定の拒絶の理由に引用された、特表平11-504710号公報(以下、「引用文献1」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている(下線は、当審で付与した。)。

ア 「【要約】
圧力センサ(10)は、圧力トランスミッタ(10)の内部空所(22)からプロセス流体を隔離するための隔離マウント組立体(12、150)を含む。隔離マウント組立体(12、150)は上記プロセス流体のライン圧を受け、また上記プラグ(66、152)の遠方端に結合されたヘッダ(68、154)によって形成されたセンサ空洞(32)に上記ライン圧を結合するための隔離プラグ(66、152)を含む。隔離プラグ(66、152)とヘッダ(68、154)との間で形成された継ぎ目構造体を補強するため、ヘッダ(68、154)とプラグ(66、152)の遠方端とにリング部材(70)が取り付けられる。他の実施例において、隔離マウント組立体(150)はベース(154)と、第1および第2の相対向する端部(190、202)を有する支持体(181)とを含む。第1の端部(190)は圧力センサ(184)に堅固に接着されるが、エポキシの継ぎ目構造体(200)は支持体(181)の第2の端部(202)をベース(154)に結合する。」(フロントページ)

イ 「【特許請求の範囲】
1.プロセスラインに接続することができ、上記プロセスラインの圧力に応答する出力を供給するトランスミッタであつて、
その内部に形成された内部空所に向けて延在する開口の周りの壁を形成するハウジングと、
上記圧力を検知するためのセンサと、
上記センサに接続されて上記出力を供給する回路と、
上記開口内にマウントされており、上記プロセスライン内の流体を上記内部空所から隔離する隔離組立体であつて、
上記開口内に配置されて、上記ハウジングに結合された隔離プラグであって、通路を介して上記プラグの遠方端に上記圧力を結合するダイヤフラムをその内部に有する隔離プラグ、
上記センサを保持するセンサ空洞を形成するようにプラグの上記遠方端に結合され、上記通路から上記圧力を受けるヘッダ、および
上記隔離プラグおよび上記ヘッダに結合されたリング部材より成る隔離組立体とを具備した圧力トランスミッタ。」(第2頁第1-16行)

ウ 「発明の名称
高圧隔離マウント組立体を有する圧力トランスミッタ」(第6頁第2-3行)

エ 「プラグの内部に形成された通路は空洞から離れる方向に、隔離ダイヤフラムから離れたプラグの端部まで延在する。ヘッダは、プラグの末端とコネクタに溶接される。ヘッダは、プラグの端部と共にセンサ空洞を形成する凹所を有する。そのヘッダは、センサ空洞において圧力センサを支持する。また、センサ空洞は充満流体で満たされている。センサ空洞は通路を通して隔離空洞と流体的に連通されるから、プロセス流体の圧力は充満流体を通して圧力センサに伝達される。圧力センサは、充満流体の圧力、したがってプロセス流体の圧力に比例した出力信号の信号を発生する。」(第6頁第21-28行、なお空白行は行数に算入しない。以下、同様。)

オ 「発明の概要
圧力トランスミッタはプロセス流体を圧力トランスミッタの内部空所から隔離するための、隔離マウント組立体を含んでいる。隔離マウント組立体はプロセス流体圧力を受けるため、またプラグの末端に結合されたヘッダによつて形成されたセンサ空洞にライン圧を結合するため、隔離プラグを含む。隔離プラグとそのヘッダとの間に形成された継ぎ目構造体を補強するため、リング部材がヘッダとプラグの末端とに取付けられる。」(第7頁第15-21行)

カ 「好ましい実施例の詳細な説明
この発明の隔離マウント組立体12を有するトランスミッタ10が、第1図に示されている。トランスミッタ10は、ベース16を有するハウジング14と、ネジ19でベース16に結合されたハウジング・アダプタ17と、本体拡大部18を含んでいる。ハウジング・アダプタ17は、この発明の隔離マウント組立体を受入れる開口20を含んでいる。隔離マウント組立体12と、以下に記載するトランスミッタ10の他の構成部品とを除いたとすると、開口20は本体拡大部18の内部に形成された内部空所22に通じている。
隔離マウント組立体12は、ここでは矢印24によつて示されるプロセス流体が内部空所22に浸入することを阻止する。一般に、プロセス・パイプ(図示されない)には、柔軟な隔離ダイヤフラム26と接触するように、プロセス流体24が流れている。プロセス流体24は隔離ダイヤフラム26に圧力を及ぼす。通路28内に供給された相当量の充満流体は、同様に充満流体で満たされているセンサ空洞32に具備された圧力センサ30にプロセス流体圧力を伝達する。」(第8頁第9-22行)

キ 「第2図は、隔離マウント組立体12と、この発明の目的のためには、ハウジング14の一部とみなされるハウジング・アダプタ17とを図示している。なお、この実施例においては、ハウジング・アダプタ17は隔離マウント組立体12を受入れているが、ハウジング・アダプタ17がハウジング14とは分離可能な部材である必要はないことは、理解されねばならない。換言すれば、仮にベース16が隔離マウント組立体12を受入れるように適当に設計されるならば、隔離マウント組立体12は直接ベース16に固定することができる。
ハウジング・アダプタ17は開口20の形状を定める環状壁62を提供する。図示された実施例において、隔離マウント組立体12は、コネクタ64、隔離プラグ66、ヘッダ68、及び環状のヘッダリング70を含み、その各々はステンレス鋼(SST 316)のような適当な耐腐食金属から作られている。外向きネジすなわち雄ネジ72は、隔離プラグ66に設けられており、また隔離マウント組立体12をハウジングアダプタ17にマウントするために、壁62の内表面76上の内向きネジすなわち雌ネジ74と螺合する。好ましくは、雄ネジ72および雌ネジ74は、この螺合接触に沿つて炎抑止経路が形成されることを保証するための、(螺合による)密接合を与えるクラス1のネジである。」(第9頁第14行-第10頁第2行)

ク 「コネクタ64は、トランスミッタ10をプロセス流体24のソースに接続するための手段を提供する。コネクタ/隔離プラグ間の継ぎ目構造体67は、コネクタ64を隔離プラグ66に結合する。図示された実施例では、コネクタ/隔離プラグ間の継ぎ目構造体67は、環状の溶接部82と補強ネジ80より成つている。ネジ80は隔離プラグ66の延長部86上に形成された対応するネジ84と螺合する。隔離ダイヤフラム26は、既知の方法で延長部分86に結合され、充満流体をプロセス流体24から隔離する。」(第10頁第3-9行)

ケ 「環状溶接部100は、センサ空洞32を形成するために、ヘッダ68を隔離プラグ66の端部102に結合する。好ましくは、端部102は延長リング部104を含み、一方、ヘッダ68も延長リング部105を有する。延長リング部104は、延長リング部105の上で、凹んだ外部環状面108に面する環状面106を形成する。ヘツダ68を隔離プラグ66の端面102に整列させるために、図示されたように、各々の側壁が重なり合うように延長リング部104、105は精密加工されている。」(第10頁第18-24行)

コ 「圧力センサ30は、絶対圧力用トランスミッタの場合は、例えばシリコーンRTVコンパウンドのような既知の方法で、ヘッダ68に固定される。その一つが120で図示される複数の穴を通して導体122が配線され、該導体122は圧力センサ30と前置回路基板38に電気的に接続される。ガラスシール124は、金属ヘッダ68から導体122を電気的に絶縁すると共に、これを確実に固定する。油が充満されたチューブ(管)126は、ヘッダ68の中にろう接合され、センサ空洞32と通路28を充満流体で満すための、センサ空洞32へのアクセスを提供する。充満された後に、油が充満したチューブ126は溶接により封止される。センサ空洞32内に配設されたスペーサ128はセンサ空洞32の容積を減らし、それによつて充満流体の量を減らしている。」(第10頁第25行-第11頁第7行)

サ 「環状の溶接部134、136は、ヘッダリング70をヘッダ68と隔離プラグ66に結合する。ヘッダリング70と、環状溶接部100、134及び136とが隔離プラグ/ヘッダ継ぎ目構造体101を構成しいる。ヘッダリング70と環状溶接部134、136とが環状溶接部100を補強するので、ヘッダ68は隔離プラグ66により強固に固定される。希望する場合、内部空所22をより確かに隔離し、かつシールするために、ヘッダリング70と共に、Oリングシール140がハウジング・アダプタ17の内面と接触するように使用されることができる。第1図にもどり、その内部に前置回路基板38を固定し、さらに内部空所22をシールするために、ハウジング・アダプタ17の空洞146の内部にポッティング材144が配置される。」(第11頁第8-17行)

シ 「上述のように、隔離マウント組立体12は、内部空所22をプロセス流体24から隔離する。内部空所22に入るプロセス流体24のためのもつとも可能性の高い流路が、隔離ダイヤフラム26から始まつてセンサ空洞32を通して延在するように、コネクタ/隔離プラグ継ぎ目構造体67と隔離プラグ/ヘッダ継ぎ目構造体101が補強されているので、隔離マウント組立体12は特に高圧に応用するのに適している。しかし、仮にプロセス流体24がセンサ空洞32に入るならば、それによつてセンサ30が誤動作を生ずるであろう。トランスミッタ回路42はセンサ30の誤動作を検出して警報表示をなし、プロセス流体24がヘッダ68を腐食させてしまって内部空所22に浸入する前に、トランスミッタ10の問題点をオペレータに通知する。」(第11頁第18-27行)


(2)用語について
引用文献1の記載には、用語についての「ぶれ」が認められるので、次のとおり統一する。
特許請求の範囲の請求項1(上記「イ」)における「ハウジング」が、明細書の「好ましい実施例の詳細な説明」(上記「カ」-「シ」)に記載された「ハウジング14」に対応し、以下、同様に、「トランスミッタ」が「トランスミッタ10」に対応し、(圧力を検知するための)「センサ」が「圧力センサ30」に対応し、「隔離プラグ」(「プラグ」とも表記されている)が、「隔離プラグ66」に対応し、「ダイヤフラム」が「隔離ダイヤフラム26」に対応し、「センサ空洞」が「センサ空洞32」に対応し、「ヘッダ」が「ヘッダ68」に対応し、「リング部材」が「ヘッダリング70」に対応し、「隔離組立体」が「隔離マウント組立体12」に対応する。
また、「ア」における「継ぎ目構造体」は、明細書の「好ましい実施例の詳細な説明」(上記「カ」-「シ」)に記載された「継ぎ目構造体101」に対応する。
また、特許請求の範囲の請求項1(上記「イ」)及び「ア」における、「隔離プラグ」の「遠方端」とは、明細書の「好ましい実施例の詳細な説明」(上記「カ」-「シ」)に記載された、「隔離プラグ66」の「端部102」に対応するから、「遠方端」を「遠方端(端部102)」と表記する。

(3)引用文献1に記載された発明について
上記対応関係に基づいて、特許請求の範囲の請求項1(上記「イ」)に記載された用語を、明細書の「好ましい実施例の詳細な説明」(上記「カ」-「シ」)における、対応する用語及び符号に置き換えれば、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。

「プロセスラインに接続することができ、上記プロセスラインの圧力に応答する出力を供給するトランスミッタ10であつて、
その内部に形成された内部空所に向けて延在する開口の周りの壁を形成するハウジング14と、
上記圧力を検知するための圧力センサ30と、
上記圧力センサ30に接続されて上記出力を供給する回路と、
上記開口内にマウントされており、上記プロセスライン内の流体を上記内部空所から隔離する隔離マウント組立体12であつて、
上記開口内に配置されて、上記ハウジング14に結合された隔離プラグ66であって、通路を介して上記隔離プラグ66の遠方端(端部102)に上記圧力を結合する、隔離ダイヤフラム26を有する隔離プラグ66、
上記圧力センサ30を保持するセンサ空洞32を形成するように隔離プラグ66の上記遠方端(端部102)に結合され、上記通路から上記圧力を受けるヘッダ68、および、
上記隔離プラグ66および上記ヘッダ68に結合されたヘッダリング70、より成る隔離マウント組立体12とを具備し(以上、上記「(1)」「イ」より。以下、同様。)、
ハウジング14はベース16を有し(「カ」より。)、
隔離マウント組立体12は、コネクタ64、隔離プラグ66、ヘッダ68、及び環状のヘッダリング70を含み、その各々はステンレス鋼(SST 316)のような適当な耐腐食金属から作られ(「キ」より。)、
隔離ダイヤフラム26は、隔離プラグ66の延長部分86に結合され、充満流体をプロセス流体24から隔離し(「ク」より。)
圧力センサ30は、ヘッダ68に固定され(「コ」より。)、
隔離プラグ66とヘッダ68との間で形成された継ぎ目構造体101を補強するため、ヘッダ68と隔離プラグ66の遠方端(端部102)とにリング部材70が取り付けられ(「ア」より。)、継ぎ目構造体101が補強されているので、隔離マウント組立体12は特に高圧に応用するのに適し(「シ」より。)、
コネクタ64は、トランスミッタ10をプロセス流体24のソースに接続するための手段を提供し、コネクタ64を隔離プラグ66に結合する(「クより。)、
トランスミッタ10(「イ」より。)。」

2.引用文献2について
(1)引用文献2に記載された事項
原査定の拒絶の理由に引用された、特開2002-340717号公報(以下、「引用文献2」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている(下線は、当審で付与した。)。
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、耐食性が向上され且つ安価な圧力測定装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】図3は従来より一般に使用されている従来例の構成説明図で、例えぱ、実開昭63-63737号公報に示されている。図において、2は、測定装置本体1の一端に設けられた凸部である。
【0003】3は、この凸部2の頂面に設けられた接液ダイアフラムである。4は、測定装置本体1の凸部側に接続されたニップルである。5は、このニップル4の凸部2に対向する面に設けられ、このニップル4の貫通孔6に連通され、凸部2が挿入される凹部である。
【0004】この場合は、測定装置本体1やニップル4には、適度な耐食性を有し、安価で、加工性の良い等の機能を兼ね備えている材料、例えば、JIS規格のSUS316ステンレス材等が用いられている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかし、プロセス流体が腐食性の流体の場合、耐食仕様の圧力測定装置が供給されるが、この仕様に於いては、測定流体に接液する部分の部品全てに、耐食材料を用いて受圧部分を構成する。
【0006】しかしながら、耐食材料は非常に高価である。これらの材料は、標準の材質、例えば、JIS規格のSUS316ステンレス材に対し、耐食性という機能は優れるものの、材料そのものの価格が高価なばかりでなく、材料によっては加工性も劣っている。
【0007】特に、耐食仕様の圧力測定装置に、主に使用されている、例えば、ニッケル・モリブデン・クロム合金材、具体的には、JIS規格のH4551?H4554で規定されているNW0276合金材(商品名ハステロイC-276)は非常に高価であり、加工性が悪く、加工によるコストも、標準材料の場合より多く掛る。
【0008】この耐食材料を、圧力測定装置本体1,接液ダイアフラム3,ニップル4全部に使用した場合、材料費及び加工費の総コストに占める比重が大きくなり、製品のコスト全体を押し上げる結果となっている。
【0009】本発明の目的は、上記の課題を解決するもので、本発明の目的は、耐食性が向上され且つ安価な圧力測定装置を提供することにある。
【0010】即ち、本発明は、多くの部分に標準の材料を用いる構造を工夫することで、必要とする材料費、加工費等を極力圧縮し、製品全体のコストを低減する事を目的とする。」(なお、引用文献2の図面には、図3が存在しないから、段落【0002】に記載された「図3」は、「図2」の誤記と認められる。)

「【0013】
【発明の実施の形態】以下図面を用いて本発明を詳しく説明する。図1は本発明の一実施例の要部構成説明図である。図において、図2と同一記号の構成は同一機能を表す。以下、図2と相違部分のみ説明する。
【0014】図において、11は、凸部2の頂面側に設けられ耐食材よりなる接液ブロックである。12は、接液ブロック11の頂面に設けられた耐食材よりなる接液ダイアフラムである。
【0015】13は、測定装置本体1の凸部側に接続された耐食材よりなるニップルである。14は、ニップル13の、凸部2に対向する面に設けられ、ニップル13の貫通孔15に連通され、凸部2が挿入される凹部である。
【0016】この場合は、接液ブロック11,接液ダイアフラム12,ニップル13には、ニッケル・モリブデン・クロム合金材、具体的には、JIS規格のH4551?H4554で規定されているNW0276合金材(商品名ハステロイC-276)が使用されている。
【0017】16は、接液ブロック11の側周面と凹部15の側周面とをリング状に溶接する溶接部である。この場合は、電子ビーム溶接が使用されている。
【0018】即ち、凸部2の頂面側に接液ブロック11を溶接21により組み立てる。接液ブロック11の頂面に接液ダイアフラム12を溶接22により組み立てる。これにニップル13を溶接16組み立てることで、受圧部分を構成する。
【0019】しかし、このままでは、ニップル13の貫通孔15より流入する腐食性の測定流体FLが、接液ブロック11と凹部14との隙間を通って、測定装置本体1に接触するため、測定装置本体1が腐食される。
【0020】そこで、接液ブロック11の側周面とニップル13の凹部14の側周面との隙間に、溶接部16を設ける事により、腐食性の測定流体FLが、測定装置本体1に接触する事を防ぐ。溶接部16は、溶融する材料が、全て耐食材料であるために、耐食性は母材と同等であり、腐食性の測定流体FLによる腐食に耐える事が出来る。
【0021】この結果、
(1)凸部2の頂面側に設けられ耐食材よりなる接液ブロック11と、この接液ブロック11の頂面に設けられた耐食材よりなる接液ダイアフラム12と、測定装置本体1の凸部側に接続された耐食材よりなるニップル13と、このニップル13の凸部2に対向する面に設けられ、このニップル13の貫通孔15に連通され、凸部2が挿入される凹部14と、接液ブロック1114と凹部の側周面とをリング状に溶接する溶接部16とが設けられた。
【0022】従って、少ない材料で接液部分を全て耐食性の特殊材質で構成出来る。これにより、高価な材料の使用を必要最小限に抑える事ができるので、耐食性が向上され且つ安価な圧力測定装置が得られる。
【0023】(2)接液ブロック11と接液ダイアフラム12とニップル13とがニッケル・モリブデン・クロム合金材により構成されたので、更に、耐食性が向上され且つ安価な圧力測定装置が得られる。
【0024】具体的には、一例として、測定装置本体1全てを、JIS規格のH4551?H4554で規定されているNW0276合金材(商品名ハステロイC-276)で構成した場合は、材料費は約1万円、加工費は約5千円となり、総コストは計約15千円となる。
【0025】これに対して、本発明の構造によるコストは、JIS規格のH4551?H4554で規定されているNW0276合金材(商品名ハステロイC-276)による材料費は約2千円、加工費は約1千円で、測定装置本体部分をステンレスJIS規格のSUS316Lを使用した場合、材料費+加工費は約1千円、これに溶接工数の約1千円を加えて、総コストは計約5千円となる。従って、1台当たり1万円のコスト低減が得られた。」(なお、段落【0018】における「ニップル13を溶接16組み立てる」とは、「ニップル13を溶接16により組み立てる」の誤記と認められる。)

(2)引用文献2に記載された技術事項について
以上より、引用文献2には、次の技術事項が記載されているものと認められる。
「圧力測定装置であって(段落【0001】より。以下、同様。)、
測定装置本体1の一端に設けられた凸部2(【0002】)の頂面側に接液ブロック11を溶接21により組み立て、接液ブロック11の頂面に接液ダイアフラム12を溶接22により組み立て、これにニップル13を溶接16により組み立てることで、受圧部分を構成し(【0018】)、接液ブロック11の側周面とニップル13の凹部14の側周面との隙間に、溶接部16を設ける事により、腐食性の測定流体FLが、測定装置本体1に接触する事を防ぎ(【0020】)、
測定装置本体部分をステンレスJIS規格のSUS316Lを使用し(【0025】)、
接液ブロック11と接液ダイアフラム12とニップル13とがニッケル・モリブデン・クロム合金材により構成され、更に、耐食性が向上され(【0023】)、
ニッケル・モリブデン・クロム合金材は、JIS規格のSUS316ステンレス材に対し、耐食性という機能が優れる(【0006】、【0007】)、
圧力測定装置(【0001】)。」

3.引用文献3について
(1)引用文献3に記載された事項
原査定の拒絶の理由に引用された、特表2013-506841号公報(以下、「引用文献3」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている(下線は、当審で付与した。)。
「【0001】
発明の背景
本発明は、工業プロセス制御及びモニタリング用途における使用のための圧力トランスミッタに関する。より具体的には、本発明は、圧力トランスミッタにおいて電気的分離を提供する圧力センサマウントに関する。
【0002】
圧力トランスミッタ及び他の圧力感知機器は、プロセス流体の圧力を感知する圧力センサを含む。圧力センサは、圧力トランスミッタ(又は圧力機器)出力を生成する電気回路に電気的出力を提供する。
【0003】
一部のタイプの圧力センサは、トランスミッタのボディからの電気的分離を要する。圧力センサを実現するために用いられる技術に依存して、場合によっては、トランスミッタボディからの電気的分離を提供しつつ、トランスミッタボディ内に圧力センサを取り付けることは困難であることがある。」

「【発明の概要】
【0004】
圧力センサマウントを備えた圧力トランスミッタは圧力計測回路を含む。圧力トランスミッタの金属ボディは、プロセス圧に結合するように構成された圧力カップリングを有する。圧力センサは、プロセス圧に関する出力を圧力計測回路に提供するように構成されている。導管が圧力センサに結合され、プロセス圧に対応する印加圧を圧力センサに加えるように構成されている。非導電性スペーサが金属ボディと導管との間に配置され、導管を金属ボディから電気的に分離するように構成されている。非導電性スペーサは、その中に形成された開口を有し、印加圧を金属ボディから導管に運ぶように配設されている。」

「【0006】
詳細な説明
本発明は、圧力トランスミッタ中の圧力センサのための、圧力センサを圧力トランスミッタのボディから電気的に分離するために使用することができるマウントを提供する。
【0007】
図1は、プロセス流体16を運ぶプロセス配管14に結合された圧力トランスミッタ12を含むプロセス制御又は計測システム10を示す図である(トランスミッタ12はシステム10の計測部品である)。プロセス流体16は圧力トランスミッタ12に圧力Pを加える。圧力トランスミッタ12は、たとえば2線式プロセス制御ループ20を介して制御室22のような離れた場所に出力を提供する。プロセス制御ループ20は、適切なプロトコルにしたがって作動することができる。一つの構成において、プロセス制御ループ20は、プロセス圧Pに関する「プロセス変量」を表すためにアナログ電流レベルが使用される2線式プロセス制御ループを含む。もう一つの例示的態様において、プロセス制御ループ20は、プロセス圧Pに関するデジタル値を運ぶ。そのようなプロトコルの例は、HART(登録商標)又はFOUNDATION FieldBus通信プロトコルを含む。もう一つの例示的プロセス制御ループはワイヤレス通信リンクを含む。そのような構成において、要素20は、トランスミッタ12とプロセス制御室22との間のワイヤレス通信リンクを表す。
【0008】
トランスミッタ12は、適切な技術にしたがって作動することができる圧力センサ(圧力センサダイ)40を含む。例示的な技術は、たとえば、印加圧に応答して変化する電気的性質を有する要素を有するマイクロマシンコンフィギュレーションを含む。プロセスカップリング42がトランスミッタ12のボディ又はハウジング18をプロセス配管14に結合する。これが、プロセス圧Pがトランスミッタ12の分離ダイヤフラム50に加えられることを可能にする。圧力Pはダイヤフラム50の撓みを生じさせ、その撓みが、分離流体を運ぶ毛管52を介して圧力センサ40に伝達される。毛管52は、同じく圧力センサ40を支持する圧力センサモジュール54の中を通って延びている。センサモジュール54は、圧力センサ40を取り付けるように構成されているセンサマウント38を含む。圧力センサ40は電気的出力60を計測回路62に提供する。計測回路62は端子板70に接続し、この端子板はプロセス制御ループ20に結合している。一つの例示的構成において、プロセス制御ループ20はまた、トランスミッタ12の回路、たとえば計測回路62にパワーを提供するためにも使用される。」

「【0009】
図2は、センサマウント38をさらに詳細に示す、トランスミッタ12の一部分の拡大断面図である。図2においては、分離ダイヤフラム50をより詳細に見ることができ、ダイヤフラム50とセンサモジュール54との間に、ヘッダ100中の毛管又は導管52に結合するキャビティ80が画定されている。圧力Pがプロセス流体から加えられると、分離ダイヤフラム50が、キャビティ80及び導管52に収容された充填流体に圧力を加え、その圧力Pは圧力センサ40に伝達される。図1及び2において、センサマウント38及び圧力センサ40は、原寸に比例する尺度で示されておらず、図解のために拡大されていることに留意すること。
【0010】
トランスミッタボディからの電気的分離を要する、圧力センサダイを取り付けるために使用される一般的な技術は高価な部品及び方法に依存する。これらの方法は、多くの場合、実現するのが困難であり、信頼性の問題を招くおそれがある。本発明は、圧力センサダイとトランスミッタボディとの間に電気的分離を提供しつつ、圧力センサダイを圧力トランスミッタ中に取り付けるための技術を提供する。」

「【0013】
一つの実施態様にしたがって、図3は、圧力センサダイ40を取り付けるためのセンサマウント38の拡大断面図である。マウント38は、一般にはステンレス鋼などであるヘッダボディ100を含む。センサダイ40を担持するキャビティ102がヘッダボディ100中に形成されている。図2に示すように、通路又は毛管82がヘッダ100の中を通って延びている。誘電性スペーサ110がキャビティ102の底に配置され、通路82と整合した、その中に形成された開口112を有している。中に形成された開口を有する金属管120が誘電性スペーサ112中の開口と整合し、毛管82をダイ(圧力センサ)マウント管122に結合している。管120は、気密シールガラス材130によってキャビティ102中に固定されている。この構成において、誘電性スペーサ110はスペーサとしてのみ機能する。したがって、スペーサ110には何も取り付ける必要がなく、それが、従来技術設計の難題のいくつかを解消する。」

(2)引用文献3に記載された技術事項
以上より、引用文献3には、次の技術事項が記載されているものと認められる。
「圧力センサを圧力トランスミッタのボディから電気的に分離するために使用することができるマウント(段落【0006】より、以下、同様。)であって、
計測システム10は、プロセス流体16を運ぶプロセス配管14に結合された圧力トランスミッタ12を含み、プロセス流体16は圧力トランスミッタ12に圧力Pを加え、圧力トランスミッタ12は、出力を提供し(【0007】)、
トランスミッタ12は、圧力センサ(圧力センサダイ)40を含み、プロセスカップリング42がトランスミッタ12のボディ又はハウジング18をプロセス配管14に結合し、これが、プロセス圧Pがトランスミッタ12の分離ダイヤフラム50に加えられることを可能にし、圧力Pはダイヤフラム50の撓みを生じさせ、その撓みが、分離流体を運ぶ毛管52を介して圧力センサ40に伝達され、毛管52は、同じく圧力センサ40を支持する圧力センサモジュール54の中を通って延び、センサモジュール54は、圧力センサ40を取り付けるように構成されているセンサマウント38を含み(【0008】)、
圧力センサダイ40を取り付けるためのセンサマウント38は、一般にはステンレス鋼などであるヘッダボディ100を含み、センサダイ40を担持するキャビティ102がヘッダボディ100中に形成され、通路又は毛管82がヘッダ100の中を通って延び、誘電性スペーサ110がキャビティ102の底に配置され、通路82と整合した、その中に形成された開口112を有し、中に形成された開口を有する金属管120が誘電性スペーサ112中の開口と整合し、毛管82をダイ(圧力センサ)マウント管122に結合し、誘電性スペーサ110はスペーサとしてのみ機能する(【0013】)
マウント(【0006】)。」

4.引用文献4について
(1)引用文献4に記載された事項
原査定の拒絶の理由に、周知技術を示す文献として引用された、特開昭58-011823号公報(以下、「引用文献4」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている(下線は、当審で付与した。)。
ア 「3.発明の詳細な説明
本発明は差圧伝送器の改良に関する。
第1図は従来の差圧伝送器本体と補償回路を収納するシリンダーの取付構造を示す。」(第1頁左下欄第10-12行)

イ 「次に本体11とシリンダー12の接合について説明する。レーザ溶接は、周知のように電子ビーム溶接と同じようにエネルギー密度が高く高速度溶接ができる。本体11とシリンダー12は図示しない回転装置に取付けられている。溶接時には連続回転させられる。」(第2頁右上欄第11-16行)

ウ 「以上のように本発明によれば、本体とシリンダーとの接合部に段部を設け、この接合部をレーザ溶接にて行なうようにしたので、(1)電子ビーム溶接をする場合のように真空引きの際の急激な外圧変化による半導体感圧素子の破損が生じにくい、(2)真空引きの時間が不要となり高能率な溶接が得られる、(3)隔液ダイヤフラムの特性変化も回避されるので、耐久性および信頼性を向上することができる。」(第2頁左下欄第20行-同頁右下欄第8行)

(2)引用文献4に記載された技術事項
以上より、引用文献4には、次の技術事項が記載されているものと認められる。
「差圧伝送器本体と補償回路を収納するシリンダーの取付構造(上記「(1)」「ア」より。以下、同様。)であって、本体とシリンダーとの接合部に段部を設け、この接合部をレーザ溶接にて行なうようにした(「ウ」より)取付構造(「ア」より)。」

第5 対比・判断
1.本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明1とを対比すると、次のことがいえる。
ア 引用発明1における「プロセスラインに接続することができ、上記プロセスラインの圧力に応答する出力を供給するトランスミッタ10」が、本願発明1における「プロセスラインに接続可能であり、当該プロセスライン内の圧力に応じた出力を与える圧力伝送器」に相当する。

イ 引用発明1における「ハウジング14」は「ベース16を有し」ているから、本願発明1における「ベースを有するハウジング」に相当する。

ウ 引用発明1における「ハウジング14」の「開口」は、「ハウジング14」の「内部に形成された内部空所に向けて延在」しているとともに、その「開口」には(より正確には、「開口」に「配置」された「隔離プラグ66」には)、「プロセス流体24のソースに接続」する「コネクタ64」が結合されている。
よって、引用発明1における「ハウジング14」の「開口」が、本願発明1における「ハウジング」の「プロセス端部」に相当する。

エ 上記「イ」、「ウ」を踏まえると、引用発明1における「ハウジング14」が上記「開口」を有していることと、本願発明1における「当該ベースは当該ハウジング内に形成された内部空洞へと接続されるプロセス端部を有している」こととは、「ベースを有するハウジングであって、当該ハウジングは当該ハウジング内に形成された内部空洞へと接続されるプロセス端部を有している」点で共通する。

オ 引用発明1における「上記圧力を検知するための圧力センサ30」が、本願発明1における「前記圧力を検知するためのセンサ」に相当する。

カ 上記「ウ」を踏まえると、引用発明1における、「ハウジング14」の「上記開口内にマウントされており、上記プロセスライン内の流体を上記内部空所から隔離する隔離マウント組立体12」が、本願発明1における「前記ハウジングの前記プロセス端部に取り付けられており、前記プロセスライン内の流体を前記内部空洞から隔離する隔離部品」に相当する。

キ 引用発明1における「隔離ダイヤフラム26」は、「プロセスラインの圧力」を「通路を介して上記隔離プラグ66の遠方端(端部102)に」「結合」するものであるから、本願発明1における「前記プロセスライン内の前記圧力に流体的に接続されるように構成されている隔離ダイアフラム」に相当する。

ク 「隔離プラグ」について
(ア)上記「ウ」を踏まえると、引用発明1における、「ハウジング14」の「上記開口内に配置されて、上記ハウジングに結合された隔離プラグ66」と、本願発明1における「前記ハウジングの前記プロセス端部に位置し、内側凹部が形成されている隔離プラグ」とは、「前記ハウジングの前記プロセス端部に位置している隔離プラグ」の点で共通する。

(イ) 引用発明1の「隔離プラグ66」における、「ダイヤフラム26」を「結合」する「延長部分86」が端面を有すること、及び、「上記圧力センサ30を保持するセンサ空洞32を形成する」「遠方端(端部102)」が「隔離プラグ66」の端面であることは引用文献1の図2及び図3より明らかであるから、引用発明1の「隔離プラグ66」が、「ダイヤフラム26」を「結合」する「延長部分86」と、「上記圧力センサ30を保持するセンサ空洞32を形成する」「遠方端(端部102)」とを有していることと、本願発明1における「隔離プラグ」が「前記隔離ダイアフラムに隣接した第1端面を提供する下側プラグ部分と、前記第1端面から離れて位置しており且つ前記センサが内部に配置されるセンサ空洞に隣接している第2端面を提供する上側プラグ部分と、前記下側プラグ部分及び前記上側プラグ部分を接合する接合構造」を有していることとは、「隔離プラグ」が「前記隔離ダイアフラムに隣接した第1端面を提供する下側部分と、前記第1端面から離れて位置しており且つ前記センサが内部に配置されるセンサ空洞に隣接している第2端面を提供する上側部分と」を有している点で共通するといえる。

(ウ) 引用発明1における「隔離プラグ66」が有する「通路」は、「ダイヤフラム26」と「充満流体」により、「圧力センサ30を保持するセンサ空洞32を形成する」「上記隔離プラグ66の遠方端(端部102)」に、該「通路を介して」「プロセスラインの圧力」を「結合」するものである。
よって、上記「(イ)」を踏まえると、引用発明1における上記「通路」と、本願発明1における「隔離流体で充填されており、且つ、前記第1端面から前記下側プラグ及び前記上側プラグ部分を貫通して前記第2端面まで延びている毛細管であって、前記隔離ダイアフラム及び当該毛細管を通じて前記圧力を前記センサ空洞及び前記センサへと接続させる毛細管」とは、「隔離流体で充填されており、且つ、前記第1端面から、隔離プラグの前記下側及び前記上側部分を貫通して前記第2端面まで延びている毛細管であって、前記隔離ダイアフラム及び当該毛細管を通じて前記圧力を前記センサ空洞及び前記センサへと接続させる毛細管」の点で共通する。

ケ 引用発明1における「隔離マウント組立体12」は、「上記圧力センサ30を保持するセンサ空洞32を形成するように隔離プラグ66の上記遠方端(端部102)に結合され、上記通路から上記圧力を受けるヘッダ68、および、上記隔離プラグ66および上記ヘッダ68に結合されたヘッダリング70」を具備している。また、引用発明1における「圧力センサ30は、ヘッダ68に固定されている」。
よって、引用発明1における「隔離マウント組立体12」が、「隔離プラグ66の上記遠方端(端部102)に結合され」、「圧力センサ30」を「固定」する「ヘッダ68」を具備していることと、本願発明1における「隔離部品」が、「前記隔離プラグによって支持され、前記内側凹部内に配置されるセンサ取付部」を有していることは、「隔離部品」が「センサ取付部」を有している点で共通する。

コ 引用発明1における「隔離プラグ66」が「ステンレス鋼(SST 316)のような適当な耐腐食金属から作られ」ていることと、本願発明1における、「前記上側プラグ部分は第1材料で形成されており、前記下側プラグ部分は前記第1材料よりも高い腐食耐性を有する第2材料で形成されて」いることとは、「前記プラグは腐食耐性を有する材料で形成されて」いる点で共通する。

サ 上記「ア」を踏まえれば、引用発明1における「トランスミッタ10」が、本願発明1における「圧力伝送器」に相当する。

以上より、本願発明1と引用発明1との一致点、相違点は次のとおりである。
(一致点)
プロセスラインに接続可能であり、当該プロセスライン内の圧力に応じた出力を与える圧力伝送器であって、
ベースを有するハウジングであって、当該ハウジングは当該ハウジング内に形成された内部空洞へと接続されるプロセス端部を有しているようなハウジングと、
前記圧力を検知するためのセンサと、
前記ハウジングの前記プロセス端部に取り付けられており、前記プロセスライン内の流体を前記内部空洞から隔離する隔離部品と、を備え、
前記隔離部品はさらに、
前記プロセスライン内の前記圧力に流体的に接続されるように構成されている隔離ダイアフラムと、
前記ハウジングの前記プロセス端部に位置している隔離プラグであって、
前記隔離ダイアフラムに隣接した第1端面を提供する下側部分と、
前記第1端面から離れて位置しており且つ前記センサが内部に配置されるセンサ空洞に隣接している第2端面を提供する上側部分と、
隔離流体で充填されており、且つ、前記第1端面から隔離プラグの前記下側及び前記上側部分を貫通して前記第2端面まで延びている毛細管であって、前記隔離ダイアフラム及び当該毛細管を通じて前記圧力を前記センサ空洞及び前記センサへと接続させる毛細管と、を有する隔離プラグと、
センサ取付部と、を有し、
前記プラグは腐食耐性を有する材料で形成されていることを特徴とする圧力伝送器。」

(相違点1)
本願発明1では、「ベース」が、ハウジング内に形成された内部空洞へと接続されるプロセス端部を有しているのに対し、引用発明1では、「ハウジング14」は「ベース16を有し」ているものの、「ベース16」が、「ハウジング14」の「内部に形成された内部空所に向けて延在」する「開口」(本願発明1における「プロセス端部」に相当する。)を有することは示されていない点。

(相違点2)
本願発明1では、「隔離プラグ」が「前記隔離ダイアフラムに隣接した第1端面を提供する下側プラグ部分と、前記第1端面から離れて位置しており且つ前記センサが内部に配置されるセンサ空洞に隣接している第2端面を提供する上側プラグ部分と」、「前記下側プラグ部分及び前記上側プラグ部分を接合する接合構造」とを有し、「毛細管」が「前記下側プラグ及び前記上側プラグ部分を貫通して」おり、「前記上側プラグ部分は第1材料で形成されており、前記下側プラグ部分は前記第1材料よりも高い腐食耐性を有する第2材料で形成されて」いるのに対し、
引用発明1における「隔離プラグ66」は、「ダイヤフラム26」を「結合」する「延長部分86」と、「上記圧力センサ30を保持するセンサ空洞32を形成する」「遠方端(端部102)」と、「通路」とを有し、「ステンレス鋼(SST 316)のような適当な耐腐食金属から作られ」、観念上、「隔離プラグ66」が、前記「延長部分86」を提供する下側部分と、前記「遠方端(端部102)」を提供する上側部分から構成されているといえるものの、「隔離プラグ66」が、前記下側プラグ部分及び前記上側プラグ部分を接合する接合構造とからなることも、「通路」が、「接合構造」とされた「前記下側プラグ及び前記上側プラグ部分」を貫通していることも、「前記上側プラグ部分は第1材料で形成されており、前記下側プラグ部分は前記第1材料よりも高い腐食耐性を有する第2材料で形成されて」いることも、示されていない点。

(相違点3)
本願発明1における「隔離プラグ」には、「内側凹部が形成され」ており、「前記内側凹部内」に「センサ」が「配置され」、「前記内側凹部は前記センサ空洞を形成しており、前記センサ空洞を形成する前記内側凹部は前記上側プラグ部分において形成されて」いるのに対し、
引用発明1における「隔離プラグ66」は、その「遠方端(端部102)」に内側凹部が形成されておらず、「圧力センサ30」は、「隔離プラグ66の上記遠方端(端部102)」ではなく「ヘッダ68に固定され」、「上記圧力センサ30を保持するセンサ空洞32」は、「隔離プラグ66の上記遠方端(端部102)」と、「隔離プラグ66の上記遠方端(端部102)に結合され、上記通路から上記圧力を受けるヘッダ68、および、上記隔離プラグ66および上記ヘッダ68に結合されたヘッダリング70」とにより「形成」されている点。

(2)判断
ア 相違点1について
引用文献1には、「ベース16が隔離マウント組立体12を受入れるように適当に設計」(前記「第3」「1.」「(1)」「キ」参照。)することが示唆されているから、引用発明1における「ベース16」を「隔離マウント組立体12を受入れるように適当に設計」することで、「ベース」が、「ハウジング14」の「内部に形成された内部空所に向けて延在」する「開口」(本願発明1における「プロセス端部」に相当する。)を有するようにし、上記相違点1に係る本願発明1の構成とすることにすることは、当業者が適宜なし得たことである。

イ 相違点2について
引用文献2には、「圧力測定装置であって」「測定装置本体1の一端に設けられた凸部2の頂面側に接液ブロック11を溶接21により組み立て、接液ブロック11の頂面に接液ダイアフラム12を溶接22により組み立て、これにニップル13を溶接16により組み立てることで、受圧部分を構成し、接液ブロック11の側周面とニップル13の凹部14の側周面との隙間に、溶接部16を設ける事により、腐食性の測定流体FLが、測定装置本体1に接触する事を防ぎ」、「測定装置本体部分をステンレスJIS規格のSUS316Lを使用し」、「接液ブロック11・・・がニッケル・モリブデン・クロム合金材により構成され」、「ニッケル・モリブデン・クロム合金材は、JIS規格のSUS316ステンレス材に対し、耐食性という機能が優れる」技術が記載されている。
そして、引用文献2に記載された技術は、引用文献2における図2(従来例)と対比すれば明らかなように、従来、「接液ダイアフラム12」に臨んでいた「測定装置本体1の一端に設けられた凸部2」を、「測定装置本体1の一端に設けられ」た「凸部2」と、「接液ダイアフラム12」に臨む「接液ブロック11」とに分割し、「測定装置本体1の一端に設けられた凸部2の頂面側に接液ブロック11を溶接21により組み立て」、「凸部2」に「JIS規格のSUS316ステンレス材」を使用し、「接液ブロック11」に、該「凸部2」より耐食性という機能が優れる「ニッケル・モリブデン・クロム合金材」を使用するという技術を開示するものと認めることができる。
そして、引用発明1においても、「隔離マウント組立体12は、コネクタ64、隔離プラグ66、ヘッダ68、及び環状のヘッダリング70を含み、その各々はステンレス鋼(SST 316)のような適当な耐腐食金属から作られ」ているように、「隔離ダイヤフラム26」に臨む部材の腐食に対する考慮が払われていることから、引用発明1における、「隔離ダイヤフラム26」に臨む「隔離プラグ66」について、引用文献2に記載された技術を適用し、「隔離ダイヤフラム26」に臨む「隔離プラグ66」を、「ダイヤフラム26」を「結合」する「延長部分86」を含む、下側プラグ部分と、「上記圧力センサ30を保持するセンサ空洞32を形成する」「遠方端(端部102)」を含む上側プラグ部分とに分割し、上側プラグ部分の分割面側に下側プラグ部分を溶接により組み立てて、「隔離プラグ66」とし、その結果、「通路」が、溶接により組み立てられた上側プラグ部分と下側プラグ部分とを貫通するものとし、さらに、上側プラグ部分に「JIS規格のSUS316ステンレス材」を使用し、下側プラグ部分に、上側プラグ部分より耐食性という機能が優れる「ニッケル・モリブデン・クロム合金材」を使用して、上記相違点2に係る本願発明1の構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。

ウ 相違点3について
(ア)引用文献3には、「圧力センサを圧力トランスミッタのボディから電気的に分離するため」に、「センサモジュール54は、圧力センサ40を取り付けるように構成されているセンサマウント38を含み、圧力センサダイ40を取り付けるためのセンサマウント38は、一般にはステンレス鋼などであるヘッダボディ100を含み、センサダイ40を担持するキャビティ102がヘッダボディ100中に形成され」、「誘電性スペーサ110がキャビティ102の底に配置され」「毛管82をダイ(圧力センサ)マウント管122に結合し、誘電性スペーサ110はスペーサとしてのみ機能する」技術が記載されている。

(イ)そして、引用文献3に記載された「センサマウント38」に含まれる、「ステンレス鋼などであるヘッダボディ100」の「キャビティ102」が、本願発明1における「隔離プラグ」に形成された「内側凹部」に相当すると認められる(なお、「キャビティ102」について、引用文献3には「ヘッダボディ100中に形成され」、「誘電性スペーサ110」が「底に配置され」るものであると記載されているに過ぎないが、引用文献3の図3を併せみれば、上記のように認定できる。)。

(ウ)しかし、引用発明1は、発明の名称(「高圧隔離マウント組立体を有する圧力トランスミッタ」)(前記「第3」「1.」「(1)」「ウ」参照。)が示すとおり、「圧力センサ30は、ヘッダ68に固定され、隔離プラグ66とヘッダ68との間で形成された継ぎ目構造体101を補強するため、ヘッダ68と隔離プラグ66の遠方端(端部102)とにリング部材70が取り付けられ、継ぎ目構造体101が補強されているので、隔離マウント組立体12は特に高圧に応用するのに適する」ようにした発明である。

(エ)したがって、引用発明1において、引用文献3のように「圧力センサを圧力トランスミッタのボディから電気的に分離するため」の構成を採用する動機を見出すことができないだけでなく、仮に、引用発明1から「圧力センサ30」を「固定」していた「ヘッダ68」と、「隔離プラグ66とヘッダ68との間で形成された継ぎ目構造体101を補強するため」の「リング部材70」とを省き、引用文献3に記載された技術のように「センサダイ40を担持するキャビティ102」を「隔離プラグ66」の「遠端側(端部102)」に形成した場合には、隔離マウント組立体12は、もはや高圧に応用するのに適さなくなり、引用発明1が解決しようとした課題を解決できなくなることは明らかである。

(オ)よって、引用文献3に記載された技術事項は、引用発明1における課題の解決手段と相容れないから、当業者であっても、上記相違点3に係る本願発明1の構成は、引用発明1及び引用文献3に記載された技術事項より容易になし得たことであるとはいえない。
また、上記相違点3に係る本願発明1の構成は、引用文献2、引用文献4に記載も示唆もされていない。

(3)まとめ
以上のとおり、本願発明1は、当業者であっても、引用発明1及び引用文献2-4に記載された技術事項に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえない。

2.本願発明2-10について
本願発明2-10は、本願発明1を減縮した発明であって、本願発明1と同じく、「隔離プラグ」には、「内側凹部が形成され」ており、「前記内側凹部内」に「センサ」が「配置され」、「前記内側凹部は前記センサ空洞を形成しており、前記センサ空洞を形成する前記内側凹部は前記上側プラグ部分において形成されて」いる構成を備えるものであるから、本願発明1と同一の理由により、当業者であっても、引用発明1及び引用文献2-4に記載された技術事項に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえない。

3.本願発明11-15について
本願発明11は、本願発明1に係る「圧力伝送器」に用いられる「隔離部品」についての発明であり、本願発明12-15は、本願発明11を減縮した発明である。
そして、本願発明11-15は、上記相違点3に係る本願発明1と同じく、「隔離プラグ」には、「内側凹部が形成され」ており、「前記内側凹部内」に「センサ」が「配置され」、「前記内側凹部は前記センサ空洞を形成しており、前記センサ空洞を形成する前記内側凹部は前記上側プラグ部分において形成されて」いる構成を備えるものであるから、本願発明1と同一の理由により、当業者であっても、引用発明1及び引用文献2-4に記載された技術事項に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえない。

第6 むすび
以上のとおり、本願発明1-15は、当業者が引用発明1及び引用文献2-4に記載された技術事項に基づいて容易に発明をすることができたものではない。
したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2018-09-19 
出願番号 特願2016-526394(P2016-526394)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G01L)
最終処分 成立  
前審関与審査官 公文代 康祐  
特許庁審判長 中塚 直樹
特許庁審判官 清水 稔
中村 説志
発明の名称 2ピース式の隔離プラグのある隔離部品を有する圧力伝送器  
代理人 阪本 清孝  
代理人 阪本 清孝  
代理人 田邉 壽二  
代理人 阪本 清孝  
代理人 田邉 壽二  
代理人 田邉 壽二  

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