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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 取り消して特許、登録 C07K
審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 取り消して特許、登録 C07K
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 C07K
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 C07K
管理番号 1344413
審判番号 不服2017-3547  
総通号数 227 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-11-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-03-09 
確定日 2018-10-09 
事件の表示 特願2014-129164「N-11短縮化アミロイド-ベータモノクローナル抗体、組成物、方法および使用」拒絶査定不服審判事件〔平成26年11月 6日出願公開、特開2014-208678、請求項の数(16)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2003年(平成15年)9月9日(優先権主張 平成14年9月27日)を国際出願日とする特許出願である特願2004-538886号の一部を、特許法第44条第1項の規定に基づいて平成26年6月24日に分割出願としたものであって、その手続の経緯は以下のとおりである。

平成27年 7月31日付け:拒絶理由通知
平成28年 2月 5日 :意見書、手続補正書の提出
平成28年 6月20日付け:最後の拒絶理由通知
平成28年 9月28日 :意見書、手続補正書の提出
平成28年10月14日付け:拒絶査定(原査定)
平成29年 3月 9日 :審判請求書の提出
平成29年 4月20日 :手続補正書(方式)の提出
平成29年12月27日付け:拒絶理由通知(以下、「当審拒絶理由通知」という。)
平成30年 7月 6日 :意見書、手続補正書の提出


第2 原査定の概要
原査定(平成28年10月14日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

本願請求項1-16に係る発明は、本願出願前に頒布された刊行物である下記の引用文献1-7に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
1. 国際公開第02/47466号
2. J. Biol. Chem., 2002, Vol.277, No.39, p.36415-36424
3. Neurosci. Lett., 2001, Vol.315, No.3, p.145-148
4. J. Biol. Chem., 1994, Vol.269, No.21, p.15253-15257
5. Biochemistry, 2002, Vol.41, p.3128-3136
6. J. Biol. Chem., 2002, Vol.277, No.18, p.16278-16284
7. Neurosci. Lett., 1993, V215, N3, p.173-176


第3 当審拒絶理由の概要
当審拒絶理由の概要は次のとおりである。

(理由1)
本願請求項1に記載の「他のAPP断片」の意味するところが明らかでないため、本願請求項1-6、8-16に係る発明は明確ではない。

(理由2及び理由3)
本願明細書には、Aβ11-xペプチドを特異的に認識するモノクローナル抗体がAβ11-xペプチド以外の任意のAPP断片の全てと交差反応性が無いことが記載されているとは認められず、本願明細書の記載から、当該モノクローナル抗体が、Aβ11-xペプチド以外の任意のAPP断片の全てと交差反応性が無いことを合理的に理解できるともいえない。よって、本願請求項1-6、8-16に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものではなく、本願の発明の詳細な説明は、当業者が本願請求項1-6、8-16に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものでもない。

(理由4及び理由5(A))
本願請求項1-2、5、8、16に係る発明は、本願優先日前に頒布された刊行物である下記の引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができない。また、本願請求項1-2、5、8、16に係る発明は、本願優先日前に頒布された刊行物である下記の引用文献1に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

(理由5(B))
本願請求項1-5、8-9、11、13-16に係る発明は、本願優先日前に頒布された刊行物である下記の引用文献1、2に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
1.Biochemistry, 2002, Vol.41, p.3128-3136
2.国際公開第02/47466号


第4 本願発明
本願の請求項1-16に係る発明は、平成30年7月6日提出の手続補正書による補正後の特許請求の範囲の請求項1-16に記載された事項により特定されるものと認めるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである。

「【請求項1】
Glu11でのBACE-1によるAPPタンパク質の切断後に得られるAβ11-xペプチドを特異的に認識するモノクローナル抗体であって、
該モノクローナル抗体は、完全長AβであるAβ1-40との交差反応性が無く、かつ、完全長AβであるAβ1-42との交差反応性が無く、
β-セクレターゼ 11切断部位の最初の5?7個のヒトのアミノ酸、すなわち配列番号1および配列番号2、またはβ-セクレターゼ 11切断部位の最初の5?7個のマウスのアミノ酸、すなわち配列番号3および配列番号4を免疫原として特異的に認識する、
上記モノクローナル抗体。」


第5 引用文献
1.引用文献1
当審拒絶理由の引用文献1には、以下の事項が記載されている。なお、英文であるから当審による訳文を記載する。

(1-1)「C末端側のAβx-40(BA27)やAβx-42(BC05)に特異的な抗体と同様に、残基1-10(Ban50)、11-28[BNT77(16)]及び17-24(4G8)に特異的なAβに対するいくつかのマウスモノクローナル抗体もこの研究において用いられた。」(第3129頁右欄第2行?第6行)

(1-2)「Ban50を用いたサンドウィッチELISAは、Aβ1-40とAβ1-42のレベルを決定するために実施され、他方、BNT77を用いたELISAは、Aβ11-40やAβ11-42と同様に、Aβ1-40とAβ1-42のレベルを測定するために実施された。」(第3129頁右欄下から13行?下から9行)

2.引用文献2
当審拒絶理由の引用文献2には、以下の事項が記載されている。なお、英文であるから当審による訳文を記載する。

(2-1)「30.アルツハイマー病を有しているか、あるいは、有しているリスクがある被験者を診断するための方法であって、当該方法は、被験者から得た生物学的試料に含まれるAβ11-40/42を測定し、そのAβ11-40/42の量を、正常な試料と、あるいは、Aβ11-40/42の通常の値と比較する方法であって、正常な試料における量や通常の値との違いが、被験者がアルツハイマー病を有しているか、あるいは、有しているリスクがあるかの指標となり得る方法。
・・・
34.Aβ11-40/42の量が、Aβ11-40/42に特異的に結合することができる作用剤と試料を接触させることにより検出される、請求項30に記載の方法。

35.作用剤が抗体である、請求項34に記載の方法。

36.抗体がモノクローナル抗体である請求項35に記載の方法。」(第82頁)


第6 当審の判断
1.当審拒絶理由の理由1について
平成30年7月6日提出の手続補正書により、補正前の本願請求項1に記載されていた「他のAPP断片との交差反応性がなく」という事項は、「完全長AβであるAβ1-40との交差反応性が無く、かつ、完全長AβであるAβ1-42との交差反応性が無く」と補正された。
これにより、「他のAPP断片」が、「完全長AβであるAβ1-40」と「完全長AβであるAβ1-42」であることが明確になったため、補正後の本願請求項1-6、8-16に係る発明が明確ではないとはいえない。

2.当審拒絶理由の理由2及び理由3について
平成30年7月6日提出の手続補正書により、補正前の本願請求項1に記載されていた「他のAPP断片との交差反応性がなく」という事項は、「完全長AβであるAβ1-40との交差反応性が無く、かつ、完全長AβであるAβ1-42との交差反応性が無く」と補正された。
本願明細書【0066】?【0074】には、配列番号1?4で示されるペプチドを免疫原として用いることで、ヒトAβ1-40に対する交差反応無しでヒトAβ11-40を特異的に認識することができる抗体(J&JPRD/hAβ11/1およびJ&JPRD/hAβ11/2)を取得したことが記載されている。
したがって、本願明細書には、配列番号1?4で示されるペプチドを免疫原として特異的に認識し、完全長AβであるAβ1-40との交差反応性が無く、かつ、完全長AβであるAβ1-42との交差反応性が無く、Aβ11-xを特異的に認識する抗体がその製造方法とともに記載されていると認められる。
よって、本願請求項1-6、8-16に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものではないとはいえず、本願の発明の詳細な説明は、当業者が本願請求項1-6、8-16に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものではないともいえない。

3.当審拒絶理由の理由4及び理由5(A)について
(1)引用発明
第5の1.(1-1)、(1-2)に摘記したように、モノクローナル抗体BNT77は、Aβ11-28を特異的に認識するもので、また、Aβ1-40、Aβ1-42、Aβ11-40、及び、Aβ11-42のレベルを測定するELISAに用いられるから、これらも特異的に認識するものと認められる。したがって、引用文献1には、次の発明が記載されていると認められる。

「Aβ1-40、Aβ1-42、Aβ11-40、Aβ11-42、及び、Aβ11-28を特異的に認識するモノクローナル抗体BNT77。」

(2)対比
本願発明と引用文献1に記載された発明を対比すると、両者の一致点と相違点は次のとおりである。

【一致点】
「Glu11でのBACE-1によるAPPタンパク質の切断後に得られるAβ11-xペプチドを特異的に認識するモノクローナル抗体。」

【相違点1】
前者は、「該モノクローナル抗体は、完全長AβであるAβ1-40との交差反応性が無く、かつ、完全長AβであるAβ1-42との交差反応性が無」いのに対して、後者は、Aβ1-40、Aβ1-42も認識するものであるから、Aβ1-40、Aβ1-42との交差反応性がある点。

【相違点2】
前者は「β-セクレターゼ 11切断部位の最初の5?7個のヒトのアミノ酸、すなわち配列番号1および配列番号2、またはβ-セクレターゼ 11切断部位の最初の5?7個のマウスのアミノ酸、すなわち配列番号3および配列番号4を免疫原として特異的に認識する」のに対して、後者は免疫原が明示されていない点。

(3)判断
上記相違点1、2について検討すると、引用文献1には、「完全長AβであるAβ1-40との交差反応性が無く、かつ、完全長AβであるAβ1-42との交差反応性が無」い、Aβ11-xペプチドを特異的に認識する抗体は記載も示唆もされておらず、また、そのような抗体を取得するために、「β-セクレターゼ 11切断部位の最初の5?7個のヒトのアミノ酸、すなわち配列番号1および配列番号2、またはβ-セクレターゼ 11切断部位の最初の5?7個のマウスのアミノ酸、すなわち配列番号3および配列番号4」のような免疫原を用いることについても記載も示唆もされていない。
よって、本願発明は、引用文献1に記載された発明ではなく、引用文献1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。同様の理由により、本願発明を引用する本願請求項2-16に係る発明も引用文献1に記載された発明ではなく、引用文献1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

4.当審拒絶理由の理由5(B)について
(1)引用発明
第5の2.(2-1)に摘記した引用文献2の記載からみて、引用文献2には、次の発明が記載されていると認められる。

「Aβ11-40/42に特異的に結合することができるモノクローナル抗体。」

(2)対比
本願発明と引用文献2に記載された発明を対比すると、両者の一致点と相違点は次のとおりである。

【一致点】
「Glu11でのBACE-1によるAPPタンパク質の切断後に得られるAβ11-xペプチドを特異的に認識するモノクローナル抗体。」

【相違点1】
前者は、「該モノクローナル抗体は、完全長AβであるAβ1-40との交差反応性が無く、かつ、完全長AβであるAβ1-42との交差反応性が無」いのに対して、後者は、Aβ1-40やAβ1-42との交差反応性が不明である点。

【相違点2】
前者は「β-セクレターゼ 11切断部位の最初の5?7個のヒトのアミノ酸、すなわち配列番号1および配列番号2、またはβ-セクレターゼ 11切断部位の最初の5?7個のマウスのアミノ酸、すなわち配列番号3および配列番号4を免疫原として特異的に認識する」のに対して、後者は、免疫原が不明である点。

(3)判断
上記相違点1、2について検討すると、引用文献2には、「完全長AβであるAβ1-40との交差反応性が無く、かつ、完全長AβであるAβ1-42との交差反応性が無」い、Aβ11-xペプチドを特異的に認識する抗体は記載も示唆もされておらず、また、そのような抗体を取得するために、「β-セクレターゼ 11切断部位の最初の5?7個のヒトのアミノ酸、すなわち配列番号1および配列番号2、またはβ-セクレターゼ 11切断部位の最初の5?7個のマウスのアミノ酸、すなわち配列番号3および配列番号4」のような免疫原を用いることについても記載も示唆もされていない。
また、これらの事項が引用文献1においても、記載も示唆もされていないことは、3.(3)において述べたとおりである。
よって、本願発明は、引用文献1、2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。同様の理由により、本願発明を引用する本願請求項2-16に係る発明も、引用文献1、2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

5.原査定について
平成30年7月6日提出の手続補正書により、補正前の本願請求項1に記載されていた「他のAPP断片との交差反応性がなく」という事項が、「完全長AβであるAβ1-40との交差反応性が無く、かつ、完全長AβであるAβ1-42との交差反応性が無く」と補正されたところ、原査定で引用されたいずれの引用文献においても、「完全長AβであるAβ1-40との交差反応性が無く、かつ、完全長AβであるAβ1-42との交差反応性が無」い、Aβ11-xペプチドを特異的に認識する抗体は記載も示唆もされておらず、また、そのような抗体を取得するために、「β-セクレターゼ 11切断部位の最初の5?7個のヒトのアミノ酸、すなわち配列番号1および配列番号2、またはβ-セクレターゼ 11切断部位の最初の5?7個のマウスのアミノ酸、すなわち配列番号3および配列番号4」のような免疫原を用いることについても記載も示唆もされていない。
したがって、原査定を維持することはできない。


第7 むすび
以上のとおり、当審が通知した拒絶理由や原査定の理由によって、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2018-09-25 
出願番号 特願2014-129164(P2014-129164)
審決分類 P 1 8・ 537- WY (C07K)
P 1 8・ 536- WY (C07K)
P 1 8・ 113- WY (C07K)
P 1 8・ 121- WY (C07K)
最終処分 成立  
前審関与審査官 鳥居 敬司中根 知大田ノ上 拓自坂崎 恵美子  
特許庁審判長 中島 庸子
特許庁審判官 高堀 栄二
山中 隆幸
発明の名称 N-11短縮化アミロイド-ベータモノクローナル抗体、組成物、方法および使用  
代理人 片山 英二  
代理人 岩田 耕一  
代理人 鈴木 康仁  
代理人 小林 純子  
代理人 大森 規雄  
代理人 小林 浩  

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