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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G01N
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 G01N
管理番号 1344455
審判番号 不服2017-4549  
総通号数 227 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-11-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-03-31 
確定日 2018-10-12 
事件の表示 特願2015-117340「音響サイトメータにおける粒子分析」拒絶査定不服審判事件〔平成27年10月 1日出願公開、特開2015-172602、請求項の数(11)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯

特許出願: 平成27年6月10日
(特願2013-35328号(原出願日平成20年12月19日、パリ条約による優先権主張2007年12月19日、2008年9月11日、2008年9月11日、いずれも米国)の一部を新たな特許出願とした分割出願)
拒絶査定: 平成28年12月26日(送達日:同年同月28日)
拒絶査定不服審判の請求: 平成29年3月31日
手続補正: 平成29年3月31日
拒絶理由通知: 平成30年2月19日
(以下、「当審拒絶理由」という。発送日:同年同月20日)
手続補正: 平成30年7月20日(以下、「本件補正」という。)
意見書: 平成30年7月20日


第2 原査定の概要
原査定(平成28年12月26日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

この出願の請求項1-11に係る発明は、その優先日前に日本国内又は外国において、頒布された以下の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

・請求項1?11について
・引用文献等:引用文献A?G

<引用文献等一覧>
A.特開平07-047259号公報
B.国際公開第2006/031299号(周知技術を示す文献)
C.国際公開第2006/032703号
D.特開平08-266891号公報
E.特開平11-014533号公報
F.特表2007-530924号公報(周知技術を示す文献)
G.国際公開第2006/115241号(本査定で新たに引用する文献)


第3 当審拒絶理由の概要
当審拒絶理由の概要は、以下のとおりである。

1 本件出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
2 本件出願の下記の請求項に係る発明は、その優先日前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となつた発明に基づいて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。



引用刊行物
1.特開平8-266891号公報(拒絶査定時の引用文献D、以下「引用例1」という)
2.特開平7-47259号公報(拒絶査定時の引用文献A、以下「引用例2」という)
3.特開平11-14533号公報(拒絶査定時の引用文献E、以下「引用例3」という)

1 理由1について(請求項1-11に対して)
a 請求項1,5,7,10,11には「単一の圧電セラミックソース」の記載があるが、「単一の」圧電セラミックソースとはどのようなものを指すのかが不明瞭である。
すなわち、「単一の」圧電セラミックソースとは、
(1)振動子を一つのみ有する圧電セラミックソースのみを指す。
(2)複数の振動子を含む圧電セラミックソースであって、単にそれらが一つにまとめられて一体の圧電セラミックソース装置を構成しているものを含む。
のいずれであるのかが不明である。
したがって、請求項1,5,7,10,11、及びこれらを引用する請求項2-4,6,8,9に係る発明は、明確といえない。

b 請求項3において、「輸送するステップは、前記フローの中心軸へと前記大きい方の粒子を輸送する、請求項2に記載の方法。」とあるが、引用する請求項2において「輸送すること」とは、「分離された粒子」を「フローサイトメータに輸送すること」であって、粒子を分離する工程自体である「フローの中心軸へと・・・輸送する」こととは対応せず、上記記載の意味が不明瞭である。
したがって、請求項3に係る発明は、明確といえない。


2 理由2について(請求項1-11に係る発明に対して)
・請求項1-4,11
・引用例1,2

・請求項5-10
・引用例1-3


第4 本願発明
本願の請求項1ないし11に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明11」という。)は、本件補正によって補正された明細書、特許請求の範囲、及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし11に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、その請求項1-11に係る発明は次のとおりである。

「 【請求項1】
粒子をサイズによって分離するための方法であって、前記方法は、
圧電セラミックソースと連絡しているキャピラリ内に粒子のフローを形成することであって、前記圧電セラミックソースは、前記キャピラリの外壁と軸方向に接触している、ことと、
前記圧電セラミックソースを駆動し、これにより、音響放射圧から生じる半径方向の力を前記フロー内に誘起することであって、前記圧電セラミックソースは、光学的散乱平面内に前記粒子を配向するように構成されている、ことと、
前記粒子をサイズによって分離することと
を含む、方法。
【請求項2】
前記分離された粒子のうちの大きい方の粒子をフローサイトメータに輸送することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記大きい方の粒子を分析することをさらに含む、および/または、前記分離するステップは、前記フローの中心軸へと前記大きい方の粒子を輸送する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記粒子をインライン分離することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
粒子を分析するための装置であって、
粒子をその中に含む流体を流動させるためのキャピラリと、
前記キャピラリの外壁と軸方向に接触している圧電セラミックソースであって、前記圧電セラミックソースは、前記キャピラリ内の音響場の効果のもとで非対称粒子を配向するために、音響放射圧から生じる半径方向の力を誘起するために、音響信号生成トランスデューサとして機能する、圧電セラミックソースと、
粒子分析器と
を含み、
前記圧電セラミックソースは、光学的散乱平面内に前記非対称粒子を配向するように構成されている、装置。
【請求項6】
前記音響信号生成トランスデューサは、前記粒子を前記キャピラリ内で濃縮するように適合されていることと、
前記音響信号生成トランスデューサは、前記粒子を整列させる音響場を形成するように適合されていることと
のうちの少なくとも一方をさらに含む、請求項5に記載の装置。
【請求項7】
粒子分析器内で粒子を分析するための方法であって、
前記方法は、
圧電セラミックソースと連絡しているキャピラリ内に粒子のフローを形成することであって、前記圧電セラミックソースは、前記キャピラリの外壁と軸方向に接触している、ことと、
前記圧電セラミックソースを駆動し、これにより、前記フロー内の非対称粒子を配向する音響放射圧から生じる半径方向の力を前記フロー内に誘起することと、
検査点を通じて各粒子を輸送することと
前記粒子の各々を分析することと
を含み、
前記圧電セラミックソースは、光学的散乱平面内に前記非対称粒子を配向するように構成されている、方法。
【請求項8】
前記フロー内の前記粒子を整列させることをさらに含む、および/または、前記粒子をフロー内で濃縮することをさらに含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
整列させることは、音響場または流体力学的収束による、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
フロー内の1つ以上の粒子を分析する分析のために、音響放射圧を印加するための方法であって、
ランタニドにより1つ以上の粒子を標識することと、
圧電セラミックソースと連絡しているキャピラリ内に粒子のフローを形成することであって、前記圧電セラミックソースは、前記キャピラリの外壁と接触しており、前記接触の角開口は、45度よりも大きい、ことと、
前記圧電セラミックソースを駆動し、これにより、光学的散乱平面内に前記粒子を配向し、前記フローの方向に沿って粒子を整列させる、音響放射圧から生じる半径方向の力を前記フロー内に誘起することと、
前記ランタニドにより標識された前記粒子の少なくとも一部分を分析することと
を含む、方法。
【請求項11】
粒子を分析するための装置であって、
粒子をその中に含む流体を流動させるためのキャピラリと、
前記キャピラリの外壁と軸方向に接触している圧電セラミックソースであって、前記圧電セラミックソースは、前記キャピラリ内の音響場の効果のもとで粒子サイズにしたがって粒子を配置するために、音響放射圧から生じる半径方向の力を誘起するために、音響信号生成トランスデューサとして機能する、圧電セラミックソースと、
粒子分析器と
を含み、
前記圧電セラミックソースは、光学的散乱平面内に非対称粒子を配向するように構成されている、装置。」


第5 引用例記載の事項・引用発明
1 引用例1について
当審拒絶理由に引用された引用例1には、次の事項が記載されている。(下線は当審による。以下同様。)

「【請求項6】濃縮部あるいは濃縮部の下流に配置された微粒子観測窓および微粒子を観測する手段によって得られた微粒子の形状あるいは、分布の情報を基に、超音波発生源の強度を調節したり、あるいは、溶液の流れの速度を調節したり、あるいは、抽出する細管の吸引位置、吸引速度を調節する機能を有する解析制御装置を有する請求項1記載の微粒子取扱装置。」

「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、流体中における微粒子、溶質の濃縮、除去あるいは分画のための取扱装置に関する。」

「【0051】また、超音波を集束させる別の手法として図3(a)に示したような、管壁に複数の超音波振動子3を取り付け管壁の周りに円周に沿って配置された複数の同型の超音波振動子3において、円周上にN個配列した超音波振動子の各番号を時計回りに1番からN番まで付けたとき、各超音波振動子に発生させる超音波を、数式14、15のようにする。」

「【0052】
【数14】

【0053】
【数15】



「【0054】ただし、ここでA0(i)はi番目の超音波振動子の振幅を示し、ωはその周波数を、k(i)はその波数ベクトルを示している。このような超音波を発生させると、mの次数によって管中のX軸方向にm次のベッセル関数状の音状態が生じ、図3(b)のような音状態を作り出すことができる。この管中で微粒子を濃縮してゆくには、管中で次数mの高い状態から徐々に次数mの低い状態へ変化させてゆくか、あるいは、同じ次数の場合であっても超音波振動子の振動数を上げてゆくことで管内にある微粒子を管中心へ徐々に集めることができる。管中の流体は静止していても、流れていてもよく、また、流れている溶液中の微粒子を集めるためには、集める微粒子の大きさに応じて超音波の強度を調節したり、管の長さを調節したり、流れる速度を調節すればよい。」

「【0062】一般に細胞は負の電荷を水中で持ち、アルミナは正の電荷を持つことから、図4(a)で示した濃縮分画装置部を用いることで、溶液中の細胞と、不純物のアルミナを分離することができる。従って、細胞あるいは不純物の位置に応じて細管の位置を制御することで、細胞のみを選択的に回収させることができる。また、生きた細胞と死んだ細胞とで細胞の持つ電荷が異なることから、生きた細胞のみを選択的に回収させることもできる。同じ材質の試料に関しては、電場と超音波の輻射圧を組み合わせて用いることで、粒子を粒径に応じて分画させることもできるので、欲しい粒径の微粒子を選択的に回収することもできる。」




また上記図3(a)から、「複数の超音波振動子3」が、円管の「管壁7」に対し、管の軸方向に接触して取り付けられていることが明らかである。
したがって、上記引用例1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「流体中における微粒子を粒径に応じて分画させるための方法であって、(【0001】、【0062】)
管壁に複数の超音波振動子3を取り付け(【0051】)、複数の超音波振動子3は管壁7に対し、円管の軸方向に接触して取り付けられ、管中の流体は流れていてもよく(【0054】)、
流れている溶液中の微粒子を集めるためには、集める微粒子の大きさに応じて超音波の強度を調節したり、流れる速度を調節すればよい(【0054】)、
流体中における微粒子を粒径に応じて分画させるための方法。」

2 引用例2について
当審拒絶理由に引用された引用例2には、図面とともに次の事項が記載されている。

「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、流体中の微粒子に作用する超音波によって微粒子が受ける力を利用して、プラスチック粒、粒状高分子物質等の微粒子や、微生物、組織細胞切片、卵、精子等の生体粒子の流体中での閉じ込めあるいは結合、前記の粒子群の捕獲、前記の粒子の液体中での運搬、前記の粒子等の濃縮と排除、さらには、屈折率の異なる微粒子の配列を制御することによる光の回折、散乱への応用等の幅広い超音波による流体中の微粒子処理装置に関する。」

「【0029】(微粒子を捕獲、移動させる実施例)図4に、上記第1の基本構成を適用して、水溶液中に浮遊する微粒子を捕獲、移動させるように構成した本発明の一実施例の模式図を示す。図2に示したように平板上に2次元に配列させた超音波発生素子よりなる一対の装置本体は、溶液4で満たされており、その溶液中に微細粒子5が浮遊している。平面板に取付けられている超音波発生素子1は、ZnO、PLDP系セラミックスなどにより構成されている。これらの発生素子は透明であるため、顕微鏡等で外部よりこれら発生素子を透過して、溶液4中の微細粒子5を直接観察することができる。各超音波発生素子1の強度は、独立に調節することができるようになっており、前述した作用の欄の第1の基本構成で述べた原理、手法を用いて、3MHzの超音波で、10ミクロンのラテックスビーズを捕獲運搬することができた。また、3MHzの超音波で、カエルの卵を非破壊的に捕獲運搬することができた。また、この例においては、上下に対称に超音波発生素子を配置することによって、集束超音波がもたらす副次的な流体の流れを押さえた。」

上記記載から明らかなように、「水溶液中に浮遊する微粒子を捕獲、移動させる」方法に用いられる「超音波発生素子」として、「ZnO、PLDP系セラミックスなどにより構成されている」もの、すなわち圧電セラミックソースは周知である。(以下、「周知技術1」という。)

3 引用例3について
当審拒絶理由に引用された引用例3には、次の事項が記載されている。

「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、超音波輻射圧あるいは超音波流動現象と画像処理技術とを利用した溶液中の微粒子形状測定装置に関する。」

「【0005】超音波輻射圧を微粒子に作用させることで、微粒子を回転、あるいは配向させることもできる。たとえば、直交する2つの音源から90度位相をずらした超音波を照射することで、音場中の微粒子は回転を始めるが、バルマッツ(M. B. Barmatz)らはさらに米国特許4、800、756( 1989年1月31日)の中で、2つの直交する超音波振動子の発生する超音波の位相のずれを調節することで、音場中の微粒子の回転の速度を調節することができたり、または、形状異方性のある微粒子の配向させる方向を調節することができることを報告している。」

「【0013】
【発明の実施の形態】図1に、本発明の第1の実施例の模式図を示す。本実施例は、管中に作り出した直交する2つの平面定在波によって作り出される直交する2方向のポテンシャル面を組み合わせることで、微粒子の配向する方向を制御するものである。形状を観察する微粒子は、観察窓20を持つ管10中を流れる。管の中の微粒子は光源80によって照明され、テレビカメラ60によって、微粒子の像が撮影され、制御解析装置部70に画像データが記録される。微粒子の配向する向きを制御するために、微粒子を含む溶液が連続的に流れる管10の隣り合った2つの壁面に、超音波振動子30と31が配置され、制御解析装置部70からの指令に応じて、波形合成器40で作られた電圧振幅の波形が各々増幅器50、51で増幅された後、超音波振動子30、31に導入されるように構成されている。超音波振動子30、31は各々管中に互いに直交した平面定在波を発生させることができ、各平面定在波はその波面で作られる定在波の位置ポテンシャルの極小面上に微粒子を配向させることができる。」




また、上記図1から、光源80が管の中の微粒子を側面から照明し、テレビカメラ60が正面から微粒子の像を撮影していることが分かる。
そうすると、上記記載から明らかなように、超音波輻射圧を微粒子に作用させることで、微粒子を配向させ、管の中の微粒子を側面から光源80によって照明し、テレビカメラ60によって、正面から微粒子の像を撮影する、溶液中の微粒子形状測定方法は周知である。(以下、「周知技術2」という。)


第6 当審拒絶理由についての判断
1.特許法第29条第2項について
(1)本願発明1について
ア 対比
本願発明1と引用発明とを、主たる構成要件毎に、順次対比する。
まず、引用発明における「流体中における微粒子を粒径に応じて分画させるための方法」は、本願発明1における「粒子をサイズによって分離するための方法」に相当する。
また、引用発明においては、「管中の流体は流れていてもよ」いとされていることから、管内には微粒子のフローが形成されているといえる。そうすると、引用発明において、「管壁に複数の超音波振動子3を取り付け、複数の超音波振動子3は管壁7に対し、円管の軸方向に接触して取り付けられ、管中の流体は流れていてもよ」いとされていることと、本願発明1において、「圧電セラミックソースと連絡しているキャピラリ内に粒子のフローを形成することであって、前記圧電セラミックソースは、前記キャピラリの外壁と軸方向に接触している」こととは、「圧電ソースと連絡しているキャピラリ内に粒子のフローを形成することであって、前記圧電ソースは、前記キャピラリの外壁と軸方向に接触している」点で共通するといえる。
次に、引用発明において「複数の超音波振動子3は管壁7に対し、円管の軸方向に接触して取り付けられ」ていることから、「複数の超音波振動子3」による音響放射圧から生じる半径方向の力が、管内の微粒子のフローに誘起されていることは明らかといえる。そうすると、引用発明において、「管壁に複数の超音波振動子3を取り付け、複数の超音波振動子3は管壁7に対し、円管の軸方向に接触して取り付けられ、管中の流体は流れていてもよ」いとされていることは、本願発明1において、「前記圧電セラミックソースを駆動し、これにより、音響放射圧から生じる半径方向の力を前記フロー内に誘起することであって、前記圧電セラミックソースは、光学的散乱平面内に前記粒子を配向するように構成されている」ことに対しても、「前記圧電ソースを駆動し、これにより、音響放射圧から生じる半径方向の力を前記フロー内に誘起すること」である点で共通するといえる。

してみると、両者の一致点及び相違点は、以下のとおりである。

(一致点)
「粒子をサイズによって分離するための方法であって、前記方法は、
圧電ソースと連絡しているキャピラリ内に粒子のフローを形成することであって、前記圧電ソースは、前記キャピラリの外壁と軸方向に接触している、ことと、
前記圧電ソースを駆動し、これにより、音響放射圧から生じる半径方向の力を前記フロー内に誘起することと、
前記粒子をサイズによって分離することと
を含む、方法。」

(相違点1)
本願発明1においては、「圧電セラミックソース」が用いられているのに対し、引用発明の「超音波振動子3」がセラミックソースであるか否かは不明である点。

(相違点2)
本願発明1においては、圧電セラミックソースが「光学的散乱平面内に前記粒子を配向するように構成されている」のに対し、引用発明の「超音波振動子3」は光学的散乱平面内に微粒子を配向するように構成されてはいない点。

イ 相違点についての判断
事案に鑑みて、上記相違点2について検討する。
まず、本願発明1における「光学的散乱平面」とは、本願明細書の
「【0003】
粒子からの光散乱強度の角度依存が、粒子の内因性特性および外因性特性に関連する豊富な情報を含むことが、フローサイトメトリの開発の初期段階で認識されている。例えば・・・フローサイトメトリ選別における効率的なXおよびY精子区別における最も重大な側面が、光学的な散乱平面における精子の配向であることが示されている。近年、新規のノズル幾何学的形状により、約2000粒子/sの分析率において、光学的散乱平面における精子頭部の60%以上の適切な配向が、選別効率に著しく影響を及ぼすことが実
証されている。・・・」
等の記載からみて、フローサイトメトリ等で用いられる光散乱分析における光散乱平面を指すものであるといえる。
一方、上記周知技術2は、「管の中の微粒子を側面から光源80によって照明し、テレビカメラ60によって、正面から微粒子の像を撮影する、溶液中の微粒子形状測定方法」であって、光散乱分析を行うものではない。そうすると、周知技術2において上記撮影のために「超音波輻射圧を微粒子に作用させることで、微粒子を配向させ」ることは、「光学的散乱平面内に」微粒子を配向することであるとはいえない。
また、上記相違点2に係る本願発明1の構成は、引用例2においても記載も示唆もされていない。
したがって、他の相違点について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても、引用例1ないし3に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

(2)本願発明5,7,10,11について
本願発明5,7,10,11も、上記相違点2に係る本願発明1の構成に対応する構成を備えるものであるから、本願発明1と同様の理由により、当業者であっても、引用例1ないし3に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

(3)本願発明2-4,6,8,9について
本願の請求項2-4,6,8,9は、本願の請求項1,5,7のいずれかを直接または間接的に引用するものであるから、本願発明1,5,7のいずれかと同じ理由により、当業者であっても、引用例1ないし3に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

2.特許法第36条第6項第2号について
当審では、請求項1-11に係る発明は明確といえないとの拒絶の理由を通知しているが、本件補正によって、請求項の記載が補正された結果、この拒絶の理由は解消した。


第7 原査定についての判断
1.特許法第29条第2項について
本件補正により、補正後の請求項1-11は、圧電セラミックソースが「光学的散乱平面内に前記粒子を配向するように構成されている」という技術的事項、もしくはそれに対応する技術的事項を有するものとなった。当該技術的事項は、原査定における引用文献A?Gのいずれにも記載も示唆もされておらず、また本願優先日前における周知技術でもないので、本願発明1-11は、当業者であっても、原査定における引用文献A?Gに基づいて容易に発明できたものではない。したがって、原査定を維持することはできない。


第8 むすび
以上のとおり、原査定の理由によって、本願を拒絶することはできない。
また他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2018-10-02 
出願番号 特願2015-117340(P2015-117340)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G01N)
P 1 8・ 537- WY (G01N)
最終処分 成立  
前審関与審査官 土岐 和雅  
特許庁審判長 清水 稔
特許庁審判官 中塚 直樹
▲うし▼田 真悟
発明の名称 音響サイトメータにおける粒子分析  
代理人 石川 大輔  
代理人 森下 夏樹  
代理人 飯田 貴敏  
代理人 山本 健策  
代理人 山本 秀策  

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