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審決分類 |
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A61K |
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管理番号 | 1344460 |
審判番号 | 不服2015-14361 |
総通号数 | 227 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2018-11-30 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2015-07-30 |
確定日 | 2018-09-18 |
事件の表示 | 特願2010-525375「少なくとも1種の無色ジスルフィド/チオール前駆体を含む染料組成物、およびこの組成物を使用する染色方法」拒絶査定不服審判事件〔平成21年 4月 2日国際公開、WO2009/040354、平成22年12月24日国内公表、特表2010-540419〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、2008年(平成20年)9月23日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2007年9月24日 仏国、2007年10月11日 米国)を国際出願日とする出願であって、平成25年1月28日付けで拒絶理由が通知され、同年8月5日に意見書及び手続補正書が提出され、平成26年3月11日付けで拒絶理由が通知され、同年8月14日に意見書及び誤訳訂正書が提出されたが、平成27年3月26日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、同年7月30日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、それと同時に手続補正がなされた。 その後、当審において、平成29年2月3日付けで拒絶理由が通知され、同年8月4日に意見書及び手続補正書が提出され、同月28日付けで最後の拒絶理由が通知されるとともに審尋がなされ、平成30年3月5日に意見書及び手続補正書が提出され、同月20日から同年4月13日にかけて電話応対が行われたものである。 第2 本願発明 本願の請求項1ないし14に係る発明は、平成30年3月5日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし14に記載されたものであるところ、請求項1には以下の事項が記載されている。 「 【請求項1】 場合によって還元剤で前処理されたケラチン繊維に活性化メチレンを含む無色のジスルフィド前駆体を適用する工程、 前記繊維を洗浄する工程、 前記繊維に無色のアルデヒドベース前駆体を適用する工程、および 前記繊維を洗浄する工程からなる、前記繊維の染色方法であって、 i)前記活性化メチレンを含む無色のジスルフィド前駆体が、式(I_(2)): 【化1】 (式(I_(2))中: ● 【化2】 は、カチオン性窒素原子のほかに、窒素、酸素および硫黄から選択される1から3個のヘテロ原子を含んでいてもよい、かつ炭素原子上にメチル基を担う、5員から13員のカチオン性ヘテロアリール基を表し、An^(-)はアニオン性対イオンを表し、 ●Lは、 i)-N(R_(a))-;-N^(+)(R_(a))(R_(b))-An^(-)(ここで、An^(-)は、アニオン性対イオンを表す);-O-;-S-;-CO-および-SO_(2)-(ここで、R_(a)およびR_(b)は、同一であっても異なっていてもよく、水素、および(C_(1)?C_(6))アルキル、ヒドロキシ(C_(1)?C_(6))アルキル、または(ジ)(C_(1)?C_(6))(アルキル)アミノ(C_(1)?C_(6))アルキル基から選択される)から選択される、1種もしくは複数の二価の基またはその組合せで、あるいは、ii)カチオン性ヘテロ環またはカチオン性ヘテロアリールHet^(+)An^(-)(ここで、An^(-)は、アニオン性対イオンを表し、Het^(+)は、飽和もしくは不飽和の5員から10員のヘテロ環、または5員から10員のヘテロアリールを表す)で場合によって中断された、および/または 前記i)の二価の基またはその組合せで、あるいは前記ii)のカチオン性ヘテロ環またはカチオン性ヘテロアリールHet^(+)An^(-)で場合によってその末端の一方もしくは他方が終了する、 場合によって置換された二価のC_(1)?C_(20)炭化水素系鎖を表す) により示され;ならびに ii)前記無色のアルデヒドベース前駆体が、以下の式(II_(1)): 【化3】 (式(II_(1))中: ●nは0または1を表し; ●Arは、 ・C_(1)?C_(4)アルキル基; ・ヒドロキシル基、 ・C_(1)?C_(4)アルコキシ基、 ・C_(2)?C_(4)(ポリ)ヒドロキシアルコキシ基; ・アルコキシカルボニル基(R_(a)O-C(O)-)(ここで、R_(a)はC_(1)?C_(4)アルキル基を表す); ・アルキルカルボニルオキシ基(R_(a)C(O)-O-)(ここで、R_(a)はC_(1)?C_(4)アルキル基を表す); ・同一であっても異なっていてもよく、少なくとも1個のヒドロキシル基を場合によって担う、1種または複数のC_(1)?C_(4)アルキル基(該2個のアルキル基は、それらが結合している窒素原子と一緒に、窒素と同一または異なる別のヘテロ原子を場合によって担う置換または非置換の5員または6員のヘテロ環を形成していてもよい)で場合によって置換されたアミノ基; ・アルキルカルボニルアミノ基(R_(a)C(O)-NR'_(a)-)(ここで、R_(a)はC_(1)?C_(4)アルキル基を表し、R'_(a)は水素原子またはC_(1)?C_(4)アルキル基を表す); ・(ジ)(アルキル)アミノカルボニル基((R_(a))_(2)N-C(O))(ここで、基R_(a)は、互いに独立して、同一であっても異なっていてもよく、水素原子またはC_(1)?C_(4)アルキル基を表す); ・ウレイド基((R_(a))_(2)N-CO-NR_(b)-)(ここで、基R_(a)およびR_(b)は、互いに独立して、水素原子またはC_(1)?C_(4)アルキル基を表す); ・ハロゲン原子 から選択される1種または複数の基で場合によって置換されたアリールまたはヘテロアリール基を表す) により示される、 (ここで、式(II_(1))の前駆体は、式(I_(2))の前駆体と化学的に反応して、着色または着色かつ蛍光のクロモフォアを形成する) 染色方法。」 (以下「本願発明」という。) 第3 当審の拒絶理由通知書の概要 1 平成29年2月3日付けで通知した当審の拒絶理由のうち、特許法第36条第6項第1号に係る拒絶理由の内容は、次のとおりのものを含む。 請求項1ないし7に係る発明は、無色のジスルフィド前駆体と無色のアルデヒドベース前駆体とをケラチン繊維に適用する工程、又はアルデヒド官能基を含む無色のジスルフィド前駆体と活性化メチルを含む無色の前駆体とをケラチン繊維に適用する工程からなる染色方法の発明であって、2種の前駆体が化学的に反応して着色又は着色かつ蛍光のクロモフォアを形成することが特定されている。 そして、使用する前駆体として特定される化合物は、構造や置換基等の異なる多種の化合物を包含している。 一方、発明の詳細な説明には、毛髪上での2種の前駆体の化学的な反応によりクロモフォアの形成を確認した前駆体の組合せの実例としては、実施例として記載された と4-(N,N-ジメチルアミノ)ベンズアルデヒドとの組合せ、及び、2-[(4-ホルミルフェニル)(メチル)アミノ]エチルイミドチオカルバメートとN-メチルピコリニウムヨーダイドとの組合せの2とおりのみである。 請求項1ないし7に係る発明で特定される前駆体が有するようなメチル基及びアルデヒド基の相互反応をスムーズに行うためには、触媒の存在下で反応を行う必要があるというのが本願優先日当時の技術常識(例えば、国際公開第2006/134043号の10頁1行?11頁11行、下記引用文献2の2635頁左欄10?17行参照。)であることに鑑みると、毛髪上で2種の前駆体を接触させただけでは前駆体が有するメチル基及びアルデヒド基の相互反応が進行して十分なクロモフォアが形成されるとは考え難いから、使用する前駆体として多種の化合物を包含する請求項1ないし7に係る発明の範囲まで、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化するための根拠も見いだせない。 よって、請求項1ないし7に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものとはいえない。 2 また、平成29年8月28日付け拒絶理由通知書でした審尋の内容は、次のとおりである。 平成29年2月3日付けの当審の拒絶理由通知書(以下「当審最初の拒絶理由」という。)において「第3 理由2(特許法第36条第6項第1号)及び理由3(特許法第36条第4項第1号)について」で通知した拒絶の理由(いわゆるサポート要件及び実施可能要件)については、平成29年8月4日付け意見書において、当該拒絶の理由を有しないことについて実質的な主張がなされていないため、判断を保留しています。 当審最初の拒絶理由で示した、「請求項1ないし7に係る発明で特定される前駆体が有するようなメチル基及びアルデヒド基の相互反応をスムーズに行うためには、触媒の存在下で反応を行う必要がある」という本願優先日当時の技術常識があるにもかかわらず、「新請求項1から7に係る発明は、当業者が実施できる程度に十分かつ明確に発明の詳細な説明に記載されており、かつ十分に発明の詳細な説明に記載されている」と主張されるのであれば、意見書において、4-(N,N-ジメチルアミノ)ベンズアルデヒドとの組合せ、及び、2-[(4-ホルミルフェニル)(メチル)アミノ]エチルイミドチオカルバメートとN-メチルピコリニウムヨーダイドとの組合せの2とおり以外の組合せにおいても、触媒の存在なしに前駆体が有するメチル基及びアルデヒド基の相互反応が進行して十分なクロモフォアが形成されることの裏付けとなる具体的な理由(当審が提示した技術常識とは異なる技術常識、実験データなど)を示して主張してください。 具体的な理由は、サポート要件及び実施可能要件を判断する上で有効な情報であることに留意してください。 第4 本願の発明の詳細な説明の記載 本願の発明の詳細な説明には、請求項1に関連する記載として以下の記載がある。 (本説ア)「【技術分野】 【0001】 本発明は、少なくとも一方がジスルフィド/チオール単位を含む2種の無色の染料前駆体を用いるケラチン物質の染色であって、該前駆体が化学的に一緒に反応して、その色をインサイツで形成する、染色に関する。」 (本説イ)「【0012】 毛髪の直接染料または酸化染色を用いるこれら2つのタイプの方法は、汚染性(soiling)であるという欠点を有する。特に、その繊維に適用された組成物が既に着色している直接染色の場合、および処理中に、高度に急速に着色されるようになる酸化染色の場合、その染料組成物の利用およびリーブオン(leave-on)時間中に、衣類、染色道具、洗面器またはタオルを汚す危険性が大きい。 【0013】 さらに、繊維に適用された組成物の初期の色、または処理中に現れる色は、繊維の最終の着色を隠蔽し、特定の困難をもたらし得る。その第一は、組成物の色は、しばしば高度に有色であり、または眼に攻撃的でさえあるが、その組成物の色が、染料組成物が適用されている人を悩まし、そしてこの人にこのような毛髪処理を受ける習慣がない場合にいっそうそうであり得ることである。 【0014】 別の欠点は、女性が得られた色が満足であると気付く時点でその処理を止めるように女性が要望し得るという意味で、その処理が行われている人が着色の任意の調節を与える方法が現時点で存在しないことである。 【0015】 標準的な染色方法を用いるとき、例えば、ケラチン繊維を変性することなく、使用するにつれ、数日後または数週間後にも次第に毛髪に色を生じるシャンプー中に含まれる反応剤を適用することによって「進行的染色(progressive dyeing)」または「進行的ライトニング効果を伴う染色」を行うことも可能でない。 【0016】 さらに、直接染料に代えて、化学反応によってインサイツで色を形成する染料前駆体を、ケラチン繊維に適用することは知られている慣行である。例えば、インサイツで直接染料を形成する、芳香族アルデヒド/ケトン前駆体、および活性化CHを有する前駆体は、米国特許第6790239号および米国特許第6770102号の特許に記載されている。これらの前駆体は、ジスルフィドまたはチオール官能基を全くもたない。 【0017】 (ヘテロ)アリールジスルフィド化合物は、毛髪の染色の分野以外の分野で、例えば、イソクロマンおよびイソチオクロマンの反応性の研究において[Justus Liebigs Annalen der Chemie(1978年)、(7)、1123?8頁;同文献(1974年)、(5)、734?40頁];水素結合の相互作用による分子認識のモデルにおいて[Chemical Communications(1996年)、(10)、1193?1194頁];金親和性多層物質の形成において[Organic Letters (2000年)、2巻(26号)、4141?4144頁、Chemistry Letters (2006年)、35巻(8号)、870?871頁];シトクロムCと金の電子間の電子移動の制御において[Langmuir (2003年)、19巻(6号)、2378?2387頁、Journal of the American Chemical Society (2003年)、125巻(25号)、7704?7714頁];液晶において[Molecular Crystals and Liquid Crystals Science and Technology、Section A: (2002年)、377、137?140頁];または変性ナノ粒子の合成において[Journal of the American Chemical Society (2004年)、126巻(10号)、3026?3027頁]、広範囲に使用されている。しかし、この先行技術は、ケラチン繊維を染色するためのジスルフィドまたはチオール前駆体の使用に言及していない。」 (本説ウ)「【発明が解決しようとする課題】 【0020】 本発明の目的は、上述の欠点を有さず、かつある種の変形の場合に、処理の間に生じた色による問題を解決することを可能にし、同時に、着色、特にライトニング効果の効力を低下させない、特に黒髪に対して、特にライトニング効果を有する、ケラチン繊維を染色する方法を提案することである。 【0021】 得られる着色は、さらに強力、有色で、低い選択性であり、かつ日光、汗および特にシャンプーなどの外部要因に対してあせない。」 (本説エ)「【課題を解決するための手段】 【0022】 したがって、本発明の1つの主題は、ケラチン繊維、特に毛髪、より詳細には黒髪の染色方法であって、還元剤: i)少なくとも1種の式(I): 式(I): [Z-A-L-S]_(x)-(Y)_(y) の無色のチオール/ジスルフィド染料前駆体を含む化粧品的に許容される組成物、 ii)および少なくとも1種の式(II): 式(II): B-X の無色の染料前駆体を含む化粧品的に許容される組成物 [ここで、式(II)の前駆体のB部分は、式(I)の前駆体のA部分と化学的に反応して、着色または着色かつ蛍光のクロモフォアB-X'-A-を形成し; 式(I)および(II)中: →yは、0または1を表し; →xは、1または2を表し; →Lは、 i)-N(R_(a))-;-N^(+)(R_(a))(R_(b))-、An^(-)、-O-;-S-;-CO-および-SO_(2)-(ここで、R_(a)およびR_(b)は、同一であっても異なっていてもよく、水素、および(C_(1)?C_(6))アルキル、ヒドロキシ(C_(1)?C_(6))アルキル、または(ジ)(C_(1)?C_(6))(アルキル)アミノ(C_(1)?C_(6))アルキル基から選択され、An^(-)は、アニオン性対イオンを表す)から選択される、1種もしくは複数の二価の基またはその組合せで、あるいはii)カチオン性ヘテロ環またはカチオン性ヘテロアリールHet^(+)、An^(-)(ここで、An^(-)は、上記に定義されたとおりであり、Het^(+)は、飽和もしくは不飽和の5員から10員のヘテロ環、または5員から10員のヘテロアリール(イミダゾリウム、ピリジニウム、ピペラジニウム、ピペリジニウム、ピロリジニウムもしくはベンズイミダゾリウムなど)を表す)で、場合によって中断されたおよび/またはその末端の一方もしくは他方で場合によって終了する、場合によって置換された二価のC_(1)?C_(20)炭化水素系鎖を表し;Lは特に、結合NR、-NRC(O)-または-C(O)NR-を介してAに結合された(C_(1)?C_(6))アルキレン鎖を表し; →AおよびBは、同一であっても異なっていてもよく、無色のクロモフォアを表し; AおよびBは特に、カチオン性または非カチオン性のアリールまたはヘテロアリール基を表し; 場合によって置換されたアリール基は特に、フェニル、ビフェニル、ナフチル、インデニル、アントラセニルまたはテトラヒドロナフチル、より詳細には場合によって置換されたフェニルを表し; 場合によって置換されたヘテロアリール基は特に、1から4個のヘテロ原子を含む以下のカチオン性または非カチオン性のヘテロアリール基: i)5員、6員、または7員の単環式基、例えば、フラニルまたはフリル、ピロリルまたはピリル、チオフェニルまたはチエニル、ピラゾリル、オキサゾリル、オキサゾリウム、イソオキサゾリル、イソオキサゾリウム、チアゾリル、チアゾリウム、イソチアゾリル、イソチアゾリウム、1,2,4-トリアゾリル、1,2,4-トリアゾリウム、1,2,3-トリアゾリル、1,2,3-トリアゾリウム、1,2,4-オキサゾリル、1,2,4-オキサゾリウム、1,2,4-チアジアゾリル、1,2,4-チアジアゾリウム、ピリリウム、チオピリジル、ピリジニウム、ピリミジニル、ピリミジニウム、ピラジニル、ピラジニウム、ピリダジニル、ピリダジニウム、トリアジニル、トリアジニウム、テトラジニル、テトラジニウム、アゼピン、アゼピニウム、オキサゼピニル、オキサゼピニウム、チエピニル、チエピニウム、イミダゾリル、イミダゾリウム; ii)8員から11員の二環式基、例えば、インドリル、インドリニウム、ベンズイミダゾリル、ベンズイミダゾリウム、ベンゾオキサゾリル、ゼンゾオキサゾリウム、ジヒドロキベンゾオキサゾリニル、ベンゾチアゾリル、ベンゾチアゾリウム、ピリドイミダゾリル、ピリドイミダゾリウム、チエノシクロヘプタジエニル(該基は、(C_(1)?C_(3))アルケニル基の二重結合(複数可)が二重結合-C=Gと共役している官能基-C=(G)-R^(0)を担う(C_(1)?C_(3))アルケニル基で置換されていてもよく;ここで、R^(0)は、水素原子または(C_(1)?C_(4))アルキル基を表し、Gは、酸素もしくは硫黄原子または基NR'を表し、RおよびR'は同一であっても異なっていてもよく;特に、該基は、二環の非芳香族部分に直接結合された二重結合を有する基=CR-C(G)R^(0)で置換されていてもよい) から選択される基を表し; より詳細には、AまたはBは、以下: 【0023】 【化1】 【0024】 (ここで、 - R^(1)は、同一であっても異なっていてもよく、ハロゲン原子または(C_(1)?C_(6))アルキル、(C_(1)?C_(6))アルコキシ、(C_(1)?C_(6))アルキルチオ、(ジ)(C_(1)?C_(6))アルキルアミノ、(C_(1)?C_(6))ポリハロアルキル、ヒドロキシル、(C_(1)?C_(6))ポリヒドロキシアルキル、ポリヒドロキシ(C_(1)?C_(6))アルコキシ、シアノ、R-G-C(G')-、R-C(G')-G-、R'S(O)_(2)-N(R)-、RR'N-S(O)_(2)-基(ここで、GまたはG'は、同一であっても異なっていてもよく、酸素もしくは硫黄原子または基NR'を表し、RおよびR'は、同一であっても異なっていてもよく、水素原子または(C_(1)?C_(6))アルキル基を表す)を表し; R^(1)は、特に5位にあり、より詳細にはR^(1)は、ハロゲン(塩素など)、または(C_(1)?C_(6))アルコキシ基(メトキシなど)、RR'N-S(O)_(2)-(Me-S(O)_(2)など)、もしくはRR'N-C(O)-(H_(2)N-C(O)-など)を表すか; - または2個の隣接する基R^(1)は、それらを担う2個の炭素原子と一緒に場合によって置換されたベンゾ基を形成し; - tは、0から4(両数字を含めて)の整数を表し; - GおよびR^(0)は、前に定義されたとおりであり; - Rは、水素原子または(C_(1)?C_(4))アルキル基を表し; - R"は、水素原子または(ポリヒドロキシ)(C_(1)?C_(4))アルキル基を表し; - Z'は、酸素もしくは硫黄原子またはメチレン基-C(R^(2))(R^(3))-(ここで、R^(2)およびR^(3)は、同一であっても異なっていてもよく、水素原子または(C_(1)?C_(6))アルキル基を表す)を表し; 好ましくは、該ヘテロアリール基は、ピリジル、ピリジニウム、トリアジニウム、イミダゾリル、イミダゾリウム、ピラゾリル、チアゾリウム、オキサゾリウム、ベンゾチアゾリウム、ベンゾオキサゾリウム、キノリニウム、インドリル、インドリニウムまたは前に定義されたとおりの基: 【0025】 【化2】 【0026】 を表し; →XおよびZは、一緒に反応して基X'を形成することができる化学官能基を表し; X'は、クロモフォアAとクロモフォアBとの間の電子移動を可能にする分子鎖を表し;X'は特に、1から4個の共役二重結合(=CH-CH=CH-など)を含む二価のC_(2)?C_(8)アルキレン基、C_(1)?C_(7)(ポリ)メチン鎖、1から3個の共役二重結合(-CR=N-、-N=CR-、-CR=CR-N=CR-、-N=CR-CR=CR-、=CR-N=CH-など)を含む二価の(C_(1)?C_(7))アルキレンイミノ基、アザ基-N=N-、トリアザ基-N=N-N-、ヒドラゾノ基-CH=N-NR-、NR-N=CH-、=CR-、=CR-CR=CR-であり;ここで、Rは、同一であっても異なっていてもよく、水素原子または(C_(1)?C_(4))アルキル基を表し; →Yは、i)水素原子;ii)アルカリ金属;iii)アルカリ土類金属;iv)アンモニウム基:N^(+)R^(α)R^(β)R^(γ)R^(δ)、An"^(-)またはホスホニウム基:P^(+)R^(α)R^(β)R^(γ)R^(δ)、An"^(-)(ここで、R^(α)、R^(β)、R^(γ)およびR^(δ)は、同一であっても異なっていてもよく、水素原子または(C_(1)?C_(4))アルキル基を表し、An"^(-)はアニオン性対イオンである);またはv)チオール官能基のための保護基を表し; xが2であるとき、yはゼロであり、xが1であるとき、yは1であることが理解される] で場合によって前処理された、該繊維に適用する工程からなる、方法である。 【0027】 本発明の主題はさらに、少なくとも1種の、式(I_(1))、(I_(2))の無色のジスルフィド染料前駆体、または式(I_(3))、(I_(4))もしくは(I_(5))の無色のチオールもしくはチオール保護染料前駆体: 【0028】 【化3】 【0029】 (式(I_(1))、(I_(2))、(I_(3))、(I_(4))または(I_(5))中: ●Arは、場合によって置換されたアリーレンまたはヘテロアリーレン基(フェニレン、ナフチレン、ピリジニレンまたはピラゾレン、より詳細には、フェニレンを表し; ●Rは、水素原子または(C_(1)?C_(6))アルキル基を表し; ●Yは、i)水素原子;ii)アルカリ金属;iii)アルカリ土類金属;iv)アンモニウム基:N^(+)R^(α)R^(β)R^(γ)R^(δ)、An^(-)またはホスホニウム基:P^(+)R^(α)R^(β)R^(γ)R^(δ)、An^(-)(ここで、R^(α)、R^(β)、R^(γ)およびR^(δ)は、同一であっても異なっていてもよく、水素原子または(C_(1)?C_(4))アルキル基を表し、An^(-)はアニオン性対イオンを表す);またはv)チオール官能基のための保護基を表し; ●Lは、前に定義されたとおりであり; ●nは、0または1であり;有利には、nは0であり、 ● 【0030】 【化4】 【0031】 は、カチオン性窒素原子のほかに、窒素、酸素および硫黄から選択される1から3個のヘテロ原子を含んでいてもよい、かつ炭素原子上にメチル基を担う、5員から13員のカチオン性ヘテロアリール基を表し;特に、該ヘテロアリール基は、メチル基によってオルトまたはパラ位で置換されたピリジニウム基を表し; ●Het^(+)は、 【0032】 【化5】 【0033】 (基(A)から(E)中: - Het^(+)基(C)および(D)のメチル基は、2位または4位であり; - R^(1)は、ハロゲン原子または(C_(1)?C_(6))アルキル、(C_(1)?C_(6))アルコキシ、(C_(1)?C_(6))アルキルチオ、(ジ)(C_(1)?C_(6))(アルキル)アミノ、(C_(1)?C_(6))ポリハロアルキル、ヒドロキシル、(C_(1)?C_(6))ポリヒドロキシアルキル、ポリヒドロキシ(C_(1)?C_(6))アルコキシ、シアノ、R-G-C(G')-、R-C(G')-G-、R'S(O)_(2)-N(R)-、RR'N-S(O)_(2)-基(ここで、GまたはG'は、同一であっても異なっていてもよく、酸素もしくは硫黄原子または基NR'を表し、RおよびR'は、同一であっても異なっていてもよく、水素原子または(C_(1)?C_(6))アルキル基を表す)を表し; 特に、R^(1)は5位にあり、R^(1)はより詳細には、ハロゲン(塩素など)または(C_(1)?C_(6))アルコキシ基(メトキシなど)、RR'N-S(O)_(2)-(Me-S(O)_(2)など)、もしくはRR'N-C(O)-(H_(2)N-C(O)-など)を表し; - Rは、水素原子もしくは(ポリヒドロキシ)(C_(1)?C_(4))アルキル基を表すか; - または代わりに、2個の隣接する基R^(1)は、それらを担う2個の炭素原子と一緒に場合によって置換されたベンゾ基を形成し; - tは、0から4(両数字を含めて)の整数を表し; - t'は、0から2(両数字を含めて)の整数を表し; - Z'は、酸素もしくは硫黄原子またはメチレン基-C(R^(2))(R^(3))-(ここで、R^(2)およびR^(3)は、同一であっても異なっていてもよく、水素原子または(C_(1)?C_(6))アルキル基を表す) から選択される少なくとも1つのメチル基を担うカチオン性ヘテロアリーレン基を表し; ●An^(-)は、アニオン性対イオンを表し; 式(I_(1))、(I_(2))、(I_(3))、(I_(4))または(I_(5))の化合物は、以下の化合物(i)から(xxxiv): 【0034】 【化6】 【0035】 【化7A】 【0036】 【化7B】 【0037】 を表すことができないと理解され; 式(I_(1))、(I_(3))および(I_(4))のアルデヒド官能基は、例えば、アセタールで保護され得ると理解される)、 それらの有機もしくは無機酸の塩、光学異性体、幾何異性体、および溶媒和物(水和物など)を含む化粧用組成物である。」 (本説オ)「【0040】 本発明による染色過程は、すすぎ洗い液が着色していないので、ケラチン繊維、特に黒髪の染色をきれいに染色することを可能にする。本発明による染料前駆体を含む組成物は、その特定の変形の文脈において、無色であり、かつその組成物のリーブオン時間の間にそのままである利点を有する。 【0041】 さらに、そしてこれは、本発明による方法の別の特定の利点を示し、該方法の間に、その繊維が式(II)の無色の前駆体を含む組成物の作用下で着色されるまたはライトニングされることが見られ得、この色は、繊維に適用された組成物の色によって隠蔽されない真の着色である。したがって、処理が行われている人は、着色が所望の水準に達したときにその処理を止めるように求めることができる。 【0042】 対照的に、本組成物を用いて得られる着色は、進行性の着色を得ることも可能にする。具体的には、式(I)の前駆体をケラチン繊維と反応させ、次いで、数日またはさらに数週間後に、色を「発現させる」または「それを強める」ことができる。式(I)の第1の前駆体と反応して色を生成することができる式(II)の前駆体を添加することによってその色を発現させる。式(I)の前駆体と反応することができる式(II)の前駆体を添加することによって、またはその発現の間に添加されたものとは異なる、別の式(II)の無色の前駆体を添加することによって、その色を強めるまたはその色を修正する。 【0043】 本発明による染色方法により、ヒトの黒いケラチン繊維、特に黒髪を視認可能な程度に染色することが可能になる。 【0044】 本発明による染色方法はまた、標準的なライトニング剤の使用を必要とせず、同時に、酸化染料を用いることによって得られる着色の程度の強力な着色に近づけるという利点を有する。具体的には、酸化剤を使用することを必要とせずに、別々に取られた式(I)または(II)の無色の前駆体を用いるライトニングによって染色することが可能であり、したがって、これはケラチン繊維を劣化させることを回避する。 【0045】 本発明による組成物はまた、自然の色、例えば、金色、ブロンズ色、茶色、赤褐色および黒色のケラチン繊維に染色することを可能にするが、この染色配合物を着色することはしない。さらに、式(I_(1))から(I_(5))の染料前駆体由来の染料および色は、色の範囲を黄色から緑色に広げる。これはまた、脱色されたケラチン繊維の強い、かつ有色の染色を得ることを可能にする。 【0046】 本発明の方法は、毛髪を劣化させることなく、毛髪上の着色を得ることを可能にし、これは、洗髪、通常の攻撃因子(日光および汗)、およびヘアトリートメントに対して残っている。」 (本説カ)「【0066】 本発明の1つの主題は、ケラチン繊維を染色する方法であって、還元剤: i)少なくとも1種の式(I)の無色のチオール/ジスルフィド染料前駆体を含む化粧品的に許容される組成物;および ii)少なくとも1種の式(II)の無色の染料前駆体を含む化粧品的に許容される組成物、 (そのB部は、A部と化学的に反応して、着色または無色で、かつ蛍光のクロモフォアB-X'-A-を形成する); (ここで、式(I)および(II)の化合物は、前に定義されたとおりである) で場合によって前処理された、該繊維に適用する工程からなる方法に関する。 【0067】 1つの特定の様式は、1に等しいxおよびyを有して、水素原子またはアルカリ金属を表す基Yを含む無色の染料前駆体(I)を用いる染色方法に関する。有利には、Yは水素原子を表す。」 (本説キ)「【0072】 本発明の1つの特定の様式は、式(I)および(II)の前駆体由来の最終生成物B-X'-A-のクロモフォアが、イミン、(ポリ)メチン、スチリル、アゾメチンまたはアゾ基;より詳細には、スチリルを表す基X'を含む、染色方法に関する。 【0073】 無色の染料前駆体は、例えば、 - B-CH=N-A-を表すクロモフォアB-X'-A-を与える、[H_(2)N-A-L-S]_(x)-(Y)_(y)を表す前駆体(I)および式B-C(G)-Hの染料前駆体(II)(ここで、Gは、酸素または硫黄原子を表す); この反応は、例えば、文献:J. Heterocyclic Chem.、44巻(3号)、617?626頁、2007年に記載されている; - B-N=CH-A-を表すクロモフォアB-X'-A-を与える、[H-C(G)-A-L-S]_(x)-(Y)_(y)を表す前駆体(I)および式B-NH_(2)の染料前駆体(II)(ここで、Gは上に定義されたとおりである); この反応は、例えば、文献:Huaxue shijie 46(6)、352?3頁、357頁、2005年に記載されている; - -B-CH=CH-A-を表すクロモフォアB-X'-A-を与える、[H_(3)C-A-L-S]_(x)-(Y)_(y)を表す前駆体(I)および式B-C(G')-の染料前駆体(II)(ここで、G'は、酸素もしくは硫黄原子またはNHを表す); この反応は、以下に詳述されるKnoevenagel reactionとして当業者に知られており、以下に詳述される; - B-CH=CH-A-を表すクロモフォアB-X'-A-を与える、[H-C(G')-A-L-S]_(x)-(Y)_(y)を表す前駆体(I)および式B-CH_(3)の染料前駆体(II)(ここで、G'は上に定義されたとおりである); この反応は、例えば、文献:Chemische Berichte 113巻(2号)、457?70頁、1980年;J.Heterocyclic Chem.、16巻(8号)、1583?7頁、1979年に記載されている; - B-N=A'-を表すクロモフォアB-X'-A-を与える、[G''-A-L-S]_(x)-(Y)_(y)を表す前駆体(I)および式B-NOのニトロソ由来染料前駆体(II)(ここで、A'は、G''がヒドロキシル基を表す場合、オキソ官能基、または代わりにG''が(C_(1)?C_(6))(アルキル)アミノ基を表す場合、イミノ基を含む、A由来のアリールまたはヘテロアリール基を表す); この反応は、例えば、文献:J. Amer. Chem. Soc.、68、2641?3頁、1946年;同文献71、3260?2頁、1949年;Heterocycles 12巻(3号)、323?7頁、1979年に記載されている; - B'=N-A-を表すクロモフォアB-X'-A-を与える、ニトロソ誘導体[ON-A-L-S]_(x)-(Y)_(y)を表す前駆体(I)および式B-G''の染料前駆体(II)(ここで、B'は、G''がヒドロキシル基を表す場合、オキソ官能基、または代わりに、G''が(C_(1)?C_(6))(アルキル)アミノ基を表す場合、イミノ基を含む、B由来のアリールまたはヘテロアリールを表す); この反応は、例えば、文献:J. Amer. Chem. Soc.、68、2641?3頁、1946年;同文献71、3260?2頁、1949年;Heterocycles 12巻(3号)、323?7頁、1979年に記載されている; - B-N=N-Aを表すクロモフォアB-X'-A-を与える、[G''-A-L-S]_(x)-(Y)_(y)を表す前駆体(I)および式B-N_(2)^(+)の染料前駆体(II)(ここで、G''は、水素原子を表す); この反応は、例えば、文献:Color Chemistry、H.Zollinger編、ISBN 3-906390-23-3 172?186頁に記載されている; - B-N=N-Aを表すクロモフォアB-X'-A-を与える、「N_(2)^(+)-A-L-S]_(x)-(Y)_(y)を表す前駆体(I)および式B-G''の染料前駆体(II)(ここで、G''は、水素原子を表す); この反応は、文献:Color Cehmistry、H.Zollinger編 ISBN 3-906390-23-3 172?186頁に記載されている; - B-N(R)-N=CH-A-を表すクロモフォアB-X'-A-を与える、[H-C(G)-A-L-S]_(x)-(Y)_(y)を表す前駆体(I)および式B-N(R)-NH_(2)の染料前駆体(II)(ここで、Gは、上に定義されたとおりであり、Rは、水素原子または(ポリヒドロキシ)(C_(1)?C_(4))アルキル基を表す); この反応は、文献:J. Amer. Chem. Soc.、62、3522頁、1940年;Chemische Berichte 95、562?70頁、1962年に記載されている; - B-N(R)-N=CH-A-を表すクロモフォアB-X'-A-を与える、[H_(3)C-A-L-S]_(x)-(Y)_(y)を表す前駆体(I)および式B-N_(2)^(+)の染料前駆体(II)(ここで、G'は、酸素もしくは硫黄原子またはNHを表し、Rは上に定義されたとおりである); この反応は、文献:Jpn Kokai TOKKYO Koho 2001019866 2001年1月23日;Zhurnal Obshchei Khimii 48巻(8号)、1793?8頁、1978年;Khimiko-farmatseuticheskii Zhurnal 12巻(11号)、48?53頁、1978年に記載されている、 から選択される。 【0074】 本発明の1つの特定の実施形態によれば、本発明による染色方法に有用である式(I)の染料前駆体は、 -アリール基[(C_(1)?C_(6))アルキル、(C_(1)?C_(6))アルコキシ、(C_(1)?C_(6))アルキルチオ、(ジ)(C_(1)?C_(6))(アルキル)アミノ、(C_(1)?C_(6))ポリハロアルキル、ヒドロキシル、(C_(1)?C_(6))ポリヒドロキシアルキル、ポリヒドロキシ(C_(1)?C_(6))アルコキシ、シアノ、R-G-C(G')-、R-C(G')-G-、R'S(O)_(2)-N(R)-、RR'N-S(O)_(2)-基(ここで、GまたはG'は、同一であっても異なっていてもよく、酸素もしくは硫黄原子または基NR'を表し、RおよびR'は、同一であっても異なっていてもよく、水素原子または(C_(1)?C_(6))アルキル基を表す)で場合によって置換された、フェニル、ナフチル、インドリルまたはピリジルなど]を表す基A(この場合に、式(II)の前駆体の基Bは、カチオン性ヘテロアリール基[(C_(1)?C_(6))アルキル、(C_(1)?C_(6))アルコキシ、(C_(1)?C_(6))アルキルチオ、(ジ)(C_(1)?C_(6))(アルキル)アミノ、(C_(1)?C_(6))ポリハロアルキル、ヒドロキシル、(C_(1)?C_(6))ポリヒドロキシアルキル、ポリヒドロキシ(C_(1)?C_(6))アルコキシ、シアノ、R-G-C(G')-、R-C(G')-G-、R'S(O)_(2)-N(R)-、RR'N-S(O)_(2)-基(ここで、GまたはG'は、同一であっても異なっていてもよく、酸素もしくは硫黄原子または基NR'を表し、RおよびR'は、同一であっても異なっていてもよく、水素原子または(C_(1)?C_(6))アルキル基を表す)で場合によって置換された、イミダゾリウム、ピリジニウム、キノリニウムまたはインドリニウムなど]を表す); -または、カチオン性ヘテロアリール基[(C_(1)?C_(6))アルキル、(C_(1)?C_(6))アルコキシ、(C_(1)?C_(6))アルキルチオ、(ジ)(C_(1)?C_(6))(アルキル)アミノ、(C_(1)?C_(6))ポリハロアルキル、ヒドロキシル、(C_(1)?C_(6))ポリヒドロキシアルキル、ポリヒドロキシ(C_(1)?C_(6))アルコキシ、シアノ、R-G-C(G')-、R-C(G')-G-、R'S(O)_(2)-N(R)-、RR'N-S(O)_(2)-基(ここで、GまたはG'は、同一であっても異なっていてもよく、酸素もしくは硫黄原子または基NR'を表し、RおよびR'は、同一であっても異なっていてもよく、水素原子または(C_(1)?C_(6))アルキル基を表す)で場合によって置換された、イミダゾリウム、ピリジニウム、キノリニウムまたはインドリニウムなど]を表す基A(この場合に、式(II)の前駆体の基Bは、アリール基[(C_(1)?C_(6))アルキル、(C_(1)?C_(6))アルコキシ、(C_(1)?C_(6))アルキルチオ、(ジ)(C_(1)?C_(6))(アルキル)アミノ、(C_(1)?C_(6))ポリハロアルキル、ヒドロキシル、(C_(1)?C_(6))ポリヒドロキシアルキル、ポリヒドロキシ(C_(1)?C_(6))アルコキシ、シアノ、R-G-C(G')-、R-C(G')-G-、R'S(O)_(2)-N(R)-、RR'N-S(O)_(2)-基(ここで、GまたはG'は、同一であっても異なっていてもよく、酸素もしくは硫黄原子または基NR'を表し、RおよびR'は、同一であっても異なっていてもよく、水素原子または(C_(1)?C_(6))アルキル基を表す)で場合によって置換された、フェニル、ナフチル、インドリルまたはピリジルなど]を表す) のいずれかを含む。」 (本説ク)「【0075】 1つの特定の実施形態は、場合によって前もって還元されたケラチン繊維に、前に定義されたとおりの式(I_(2))の活性化メチレンを含む無色のジスルフィド前駆体;[「活性化メチレン」という用語は、電子求引性基と反応するのに十分に求核的であり、したがって、AからBへの電子移動(および逆もまた同じ)を可能にする結合を形成するメチレン基であると考えられることが理解される]; 【0076】 【化9】 【0077】 および以下の式(II_(1)): 【0078】 【化10】 【0079】 [式(II_(1))中、 nは、0または1を表し; Arは、場合によって置換されたアリールまたはヘテロアリール基、特にアリール[ ・C_(1)?C_(4)アルキル基; ・ヒドロキシル基、 ・C_(1)?C_(4)アルコキシ基、 ・C_(2)?C_(4)(ポリ)ヒドロキシアルコキシ基; ・アルコキシカルボニル基(R_(a)O-C(O)-)(ここで、R_(a)はC_(1)?C_(4)アルキル基を表す); ・アルキルカルボニルオキシ基(R_(a)C(O)-O-)(ここで、R_(a)はC_(1)?C_(4)アルキル基を表す); ・同一であっても異なっていてもよく、少なくとも1個のヒドロキシル基を場合によって担う、1種または複数のC_(1)?C_(4)アルキル基(該2個のアルキル基は、それらが結合している窒素原子と一緒に、窒素と同一または異なる別のヘテロ原子(例えば、酸素)を場合によって担う、置換または非置換の5員または6員のヘテロ環を形成していてもよい)で場合によって置換されたアミノ基; ・アルキルカルボニルアミノ基(R_(a)C(O)-NR'_(a)-)(ここで、R_(a)はC_(1)?C_(4)アルキル基を表し、R'_(a)は水素原子またはC_(1)?C_(4)アルキル基を表す); ・(ジ)(アルキル)アミノカルボニル基((R_(a))_(2)N-C(O))(ここで、基R_(a)は、互いに独立して、同一であっても異なっていてもよく、水素原子またはC_(1)?C_(4)アルキル基を表す); ・ウレイド基((R_(a))_(2)N-CO-NR_(b)-)(ここで、基R_(a)およびR_(b)は、互いに独立して、水素原子またはC_(1)?C_(4)アルキル基を表す); ・ハロゲン原子、好ましくは塩素、フッ素または臭素 で場合によって置換されたフェニルなど]を表す] の無色のアルデヒドベース前駆体を適用する工程からなる染色方法に関する。」 (本説ケ)「【0092】 別の特定の実施形態は、場合によって前もって還元されたケラチン繊維に、式(II)の無色のアルデヒドベース前駆体と一緒に、式(I)の活性化メチレンを含む無色のヘテロ環式ジスルフィド前駆体を適用する工程からなる染色方法に関する。 【0093】 例えば、該染色方法は、 i)第1の段階において、以下の式: 【0094】 【化16】 【0095】 の一般式(I)および(I_(2))に属する活性化メチレンを含むビスピリジニウムジスルフィド化合物を含む化粧用組成物する工程、場合によって、前もって還元されたケラチン繊維への該ジスルフィド前駆体の定着を向上させるために、酸化剤などの定着剤を添加する工程;および次いで、 ii)式(II)および(II_(1))に属するアルデヒド官能基を含む前駆体(4-(N,N-ジメチルアミノ)ベンズアルデヒドなど)を含む組成物を適用する工程からなり得る。この方法は、以下のとおり概略的に表され得る: 【0096】 【化17】 【0097】 第1の工程の間に、式(I)および(I_(2))に属する無色の前駆体を含む化粧用組成物が、有利には前還元されている、ケラチン繊維に適用され、および工程2の間に、式(II)および(II_(1))に属する無色の前駆体を含む化粧用組成物が該ケラチン繊維に適用される。 ・・・ 【0108】 本発明による染料組成物は一般に、室温で適用される。しかし、20から180℃の範囲の温度で適用され得る。」 (本説コ)「【0122】 挙げることができる例には、以下の式(I)または(I_(2)): 【0123】 【表3】 【0124】 の前駆体が含まれる。」 (本説サ)「【0129】 挙げることができる例には、以下の、求電子基を含む式(II): バニリン(4-ヒドロキシ-3-メトキシベンズアルデヒド)、イソバニリン(3-ヒドロキシ-4-メトキシベンズアルデヒド)、3,4-ジヒドロキシ-ベンズアルデヒド、4-ヒドロキシベンズアルデヒド、3,5-ジメトキシ-4-ヒドロキシベンズアルデヒド、4-ヒドロキシベンズアルデヒド、4-ジメチルアミノベンズアルデヒド、4-メチル-5-イミダゾール-カルボキサルデヒド、4-ジメチル-アミノシンナムアルデヒド、4-ヒドロキシ-2-メトキシベンズアルデヒド、3,5-ジメチル-4-ヒドロキシ-ベンズアルデヒド、4-ジメチルアミノ-2-メトキシベンズアルデヒド、2-ヒドロキシベンズアルデヒド、4-ヒドロキシ-1-ナフトアルデヒド、4-メトキシ-1-ナフトアルデヒド、4-ジメチルアミノ-1-ナフトアルデヒド、4'-ヒドロキシビフェニル-1-カルボキサルデヒド、2-ヒドロキシ-3-メトキシベンズアルデヒド、2,4-ジヒドロキシベンズアルデヒド、3,4-ジヒドロキシベンズアルデヒド、2,5-ジヒドロキシベンズアルデヒド、2,3,4-トリヒドロキシベンズアルデヒド、3,4,5-トリヒドロキシベンズアルデヒド、2,4,6-トリヒドロキシベンズアルデヒド、2,4-ジメトキシベンズアルデヒド、2,3-ジメトキシベンズアルデヒド、2,5-ジメトキシベンズアルデヒド、3,5-ジメトキシベンズアルデヒド、3,4-ジメトキシベンズアルデヒド、インドール-3-カルボキサルデヒド、ベンゼン-1,4-ジカルボキサルデヒド、4-エトキシベンズアルデヒド、2-メチル-1,4-ナフトキノン、4-カルボキシベンズアルデヒド、4-ヒドロキシ-3-メトキシシンナムアルデヒド、3,5-ジメトキシ-4-ヒドロキシシンナムアルデヒド、3-メトキシ-4-(1-ピロリジニル)ベンズアルデヒド、4-ジメチルアミノ-3-メトキシベンズアルデヒド、1,2,-フタルアルデヒド、ピロール-2-アルデヒド、チオフェン-2-アルデヒド、チオフェン-3-アルデヒド、クロモン-3-カルボキサルデヒド、6-メチル-4-オキソ-1(4H)-ベンゾピラン-3-カルボキサルデヒド、N-メチルピロール-2-アルデヒド、5-メチルフルフラール、6-ヒドロキシクロメン-3-カルボキシアルデヒド、6-メチルインドール-3-カルボキサルデヒド、4-ジブチルアミノ-ベンズアルデヒド、N-エチルカルバゾール-3-アルデヒド、4-ジエチルアミノ-2-ヒドロキシベンズアルデヒド、3,4-ジメトキシ-5-ヒドロキシベンズアルデヒド、5-[4-(ジメチルアミノ)フェニル]-2,4-ペンタジエナール、2,3-チオフェンカルボキサルデヒド、2,5-チオフェンジカルボキサルデヒド、2-メトキシ-1-ナフトアルデヒド、3-エトキシ-4-ヒドロキシベンズアルデヒド の前駆体が含まれる。 【0130】 これらの化合物は、式(I_(2))または(I_(5))の化合物と反応する。」 (本説シ)「【0230】 染色の実施例 I)式(I)および(II)の染料前駆体を含む組成物1から4対比較例: 【0231】 【表7】 【0232】 (実施例1) 本発明の染色 組成物1を、90%の天然グレー(NG)の毛髪およびパーマネントウェーブ処理したグレー(PWG)の毛髪を含むグレーの毛髪の房に室温(約20℃)で適用した。適用後のリーブオン時間は15分である。この房を水ですすぎ洗いする。次いで、本発明による無色のジスルフィド前駆体を含む組成物2をこの房に適用し、適用後のリーブオン時間は30分である。次いで、この房を水ですすぎ洗いし、すすぎ洗いした水は着色していない。次いで、本発明による他の無色の前駆体を含む組成物4をこの房に適用する。適用後のリーブオン時間は30分である。この房を水ですすぎ洗いし、次いで、空気乾燥させる。 【0233】 染色液およびすすぎ洗い液は着色されていないことを認めた。 【0234】 (実施例2) 比較例による染色 組成物1をグレーの毛髪の房に室温(約20℃)で適用した。適用後のリーブオン時間は15分である。この房を水ですすぎ洗いする。次いで、非ジスルフィド前駆体を含む組成物3をこの房に適用し、適用後のリーブオン時間は30分である。次いで、この房を水ですすぎ洗いし、本発明による他の無色の前駆体を含む組成物4をこの房に適用する。適用後のリーブオン時間は30分である。この房を水ですすぎ洗いし、次いで、空気乾燥させる。 【0235】 染色液およびすすぎ洗い液は着色されていることが認められる。 【0236】 洗髪 このようにして染色した房を洗浄定着力試験にかけ、これは、5回のシャンプー洗浄を行うこと(標準的なシャンプーで)、およびこれらの5回のシャンプー洗浄後にその色を評価することからなる。 【0237】 実施例1について、すすぎ洗い液は着色されないことが見いだされる。一方、比較例について、その液は、5回目のシャンプー洗浄後に常に着色されている。 【0238】 染色後に、房の色を、CIEL^(*)a^(*)b系においてMinolta CM2600d分光測色計(反射成分が含まれる、10°角、光源D65)を用いて測定する。この系において、L^(*)は、色の強度を表し、a^(*)は、緑/赤の色軸を示し、b^(*)は、青/黄の色軸を示す。 【0239】 ΔEは、「洗髪前」の毛髪の房と「洗髪後」の染色毛髪の房との間の色の変化を示し、以下の式: 【0240】 【数1】 【0241】 (式中、L^(*)、a^(*)およびb^(*)は、「洗髪前」の房について測定した値を示し、L_(0)^(*)、a_(0)^(*)およびb_(0)^(*)は、「洗髪後」の房について測定した値を示す) から決定される。 【0242】 得られた測色結果は、以下の表に示す。 【0243】 【表8】 【0244】 これらの結果は、本発明(実施例1)の染色により、比較組成物(実施例2)と比べて、シャンプー定着力の点で改善された染色を得ることが可能になることを示す。」 (本説ス)「【0245】 II)比較例のジスルフィド染料対本発明の、N-メチルピコリニウムヨーダイドと一緒の2-[(4-ホルミル-フェニル)(メチル)アミノ]-エチルイミドチオカルバメート 【0246】 II-1)本発明:以下の溶液を調製した。 【0247】 【表9】 【0248】 本発明についての染色方法および結果 溶液A(5g)を、90%グレーの天然毛髪(0.5g)に30分間適用した。この毛髪を水ですすぎ洗いした。処理された毛髪に関して色の変化はなく、その後のすすぎ洗い水は全く着色されていない。次いで、溶液B(5g)を15分間適用した。この毛髪を水で再度すすぎ洗いした。処理された毛髪上に着色が現れ、そのすすぎ洗いされたその後の水は全く着色されていない。溶液C(10g)をこの毛髪に30分間適用した。毛髪を水ですすぎ洗いし、その水は着色されないままであった。次いで、毛髪を5回洗髪し、次いで、乾燥させる。ムース状物は着色されていない。 この毛髪は、明るいオレンジ色に着色され、洗髪に耐性であった(5回洗髪後、目視による色変化なし)。 【0249】 この染色を暗褐色の毛髪で繰り返し、すすぎ洗い水の着色を全く認めることなく色は目視でより明るかった。この毛髪は、さらに5回の洗髪後も目視でより明るいままであった。 【0250】 II-2)比較例 従来技術による蛍光染料は以下: 【0251】 【化41】 【0252】 である。 【0253】 以下の溶液を比較例として調製した。 【0254】 【表10】 【0255】 溶液C'(市販) 還元剤(Dolce vital DV2(登録商標)-チオグリコール酸アンモニウム) 溶液D' 過酸化水素(20容量) 【0256】 比較例について染色方法および結果 方法1 比較例の溶液A'(5g)を90%グレー天然毛髪(0.5g)に30分間適用した。この毛髪は明るいオレンジ色に着色された。すすぎ洗いの間に、その水はオレンジ色に着色された。その後の5回の洗髪の間に、そのムース状物は、オレンジ色に着色され、洗髪ごとに次第に薄くなった。 【0257】 溶液B'(5g)を90%グレー天然毛髪(0.5g)に30分間適用した。この毛髪は明るいオレンジ色に着色された。すすぎ洗いの間に、その水は顕著にオレンジ色に着色された。その後の5回の洗髪の間に、そのムース状物は、オレンジ色に着色され、洗髪ごとに次第に薄くなった。 【0258】 方法2 溶液C'(10g)を90%グレーの天然毛髪(0.5g)に10分間適用した。この毛髪をすすぎ洗いし、次いで、溶液A'(5g)を20分間適用した。この毛髪をすすぎ洗いし(すすぎ洗い水は着色された)、次いで、溶液D'(5g)を10分間適用した。この毛髪をすすぎ洗いすると、すすぎ洗い水はわずかに着色された。その後の洗髪の間に、そのムース状物は、4回の洗髪後にそのすすぎ洗い水がもはや着色されなくなるまで、次第に着色が薄くなった。」 第5 当審の判断 1 本願発明について 上記(本説イ)及び(本説ウ)によれば、本願発明が解決しようとする課題は、毛髪染料組成物の利用及びリーブオン時間中に、衣類、染色道具、洗面器又はタオルを汚すことがなく(【0012】)、毛髪染料組成物の初期の色又は処理中に現れる色が毛髪の最終の着色を隠蔽することがなく(【0013】)、染毛処理が行われている人が着色の任意の調節を与えることができる(【0014】)、ケラチン繊維を染色する方法を提供すること(【0020】)である。 発明の詳細な説明には、上記課題に関連するケラチン繊維を染色する方法として、ケラチン繊維に、式(I_(2))の活性化メチレンを含む無色のジスルフィド前駆体、及び式(II_(1))の無色のアルデヒドベース前駆体を適用する工程からなる染色方法が記載されている(上記(本説ク)参照)。 そして、「『活性化メチレン』という用語は、電子求引性基と反応するのに十分に求核的であり、したがって、AからBへの電子移動(および逆もまた同じ)を可能にする結合を形成するメチレン基であると考えられることが理解される」(上記(本説ク)【0075】参照)と記載されており、両前駆体が化学的に反応して結合することができる理由は、電子求引性基と反応するのに十分に求核的である活性化メチレンの存在によるものである旨説明されている。 より具体的な染色方法としては、 の一般式(I_(2))に属する活性化メチレンを有するビスピリジニウムジスルフィド化合物である無色の前駆体を含む化粧用組成物をケラチン繊維に適用する第1の工程と、一般式(II_(1))に属するアルデヒド官能基を有する4-(N,N-ジメチルアミノ)ベンズアルデヒドである無色の前駆体を含む化粧用組成物をケラチン繊維に適用する第2の工程を有し、ケラチン繊維に定着したビスピリジニウムジスルフィド前駆体の活性化メチレンと4-(N,N-ジメチルアミノ)ベンズアルデヒド前駆体のアルデヒド官能基とが反応してクロモフォアを形成するケラチン繊維の染色方法が記載されている(上記(本説ケ)参照)。 そして、本願発明に対応するケラチン繊維の染色の実例としては、式(I_(2))の活性化メチレンを含む無色のジスルフィド前駆体として を毛髪に適用し、水ですすいだ後に、式(II_(1))の無色のアルデヒドベース前駆体として4-(N,N-ジメチルアミノ)ベンズアルデヒドを毛髪に適用し、水ですすいだ後に空気乾燥させ、染色液及びすすぎ洗い液が着色していないことを確認した実施例1のみが記載されている(上記(本説シ)参照)。 また、本願発明に直接対応するものではないが、染色の実例として、アルデヒドベース前駆体として2-[(4-ホルミル-フェニル)(メチル)アミノ]-エチルイミドチオカルバメート、活性化メチレンを含む前駆体としてN-メチルピコリニウムヨーダイドを用い、毛髪上に着色が現れたことを確認したことが記載されている(上記(本説ス)参照)。 これらの発明の詳細な説明の記載によれば、無色のジスルフィド前駆体をケラチン繊維に定着させた後に無色のアルデヒドベース前駆体と反応させて発色させることができれば、上記課題と関連して、染毛処理中に毛髪の着色の状態を確認することができるとともに、衣類等の汚れを防止することができることが理解できる。 すなわち、上記課題を解決するためには、その前提として毛髪を染色することができなければならず、そのためには、無色のジスルフィド前駆体と無色のアルデヒドベース前駆体とが、毛髪上でスムーズに化学的に反応して結合することができるものでなければならない。 しかしながら、発明の詳細な説明には、無色のジスルフィド前駆体と無色のアルデヒドベース前駆体とが反応して結合することができる理由として、上記したように電子求引性基と反応するのに十分に求核的である活性化メチレンの存在によるものである旨説明されているが、それ以上の論理的な説明はされていない。 また、反応条件に関しては、「本発明による染料組成物は一般に、室温で適用される。しかし、20から180℃の範囲の温度で適用され得る。」(上記(本説ケ)【0108】参照)、「(実施例1)・・・室温(約20℃)で適用した・・・リーブオン時間は30分である。」(上記(本説シ)【0232】参照)との記載があるのみであり、触媒を使用することは記載されていない。 ここで、本願発明の式(I_(2))においては、カチオン性ヘテロアリール基に結合したメチル基が活性化メチレンに該当するものと認められるが、カチオン性ヘテロアリール基に結合したメチル基とアルデヒド基とをスムーズに反応させて結合するためには、触媒の存在下で反応を行う必要があることが技術常識として知られている(例えば、国際公開第2006/134043号の10頁1行?11頁11行、Chemistry of Materials,2000年,Vol.12,No.9,2635頁左欄10?17行参照。)。 そして、実施例1の両前駆体が触媒の存在なしに反応して結合することができるものであったとしても、構造や置換基等が異なる他の化合物であってもカチオン性ヘテロアリール基に結合したメチル基を含んでいれば、触媒の存在なしにアルデヒド基との反応がスムーズに進行するものであることを認めるに足りる証拠も見当たらない。 そうすると、発明の詳細な説明の「『活性化メチレン』という用語は、電子求引性基と反応するのに十分に求核的であり、したがって、AからBへの電子移動(および逆もまた同じ)を可能にする結合を形成するメチレン基であると考えられることが理解される」(【0075】)という記載及び実施例の記載だけでは、本件出願の優先日当時の技術常識を参酌しても、本願発明の式(I_(2))の無色のジスルフィド前駆体と式(II_(1))の無色のアルデヒドベース前駆体の範囲内であれば、触媒の存在下でなくても毛髪上で接触させるだけで相互反応が進行して着色し、上記課題を解決できると当業者が認識できる程度に記載しているとはいえない。 したがって、本願発明は、発明の詳細な説明において発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲を超えるものである。 2 請求人の主張について 請求人は、平成29年8月4日提出の意見書において、 「 請求人は、新請求項1から7に係る発明は、当業者が実施できる程度に十分かつ明確に発明の詳細な説明に記載されており、かつ十分に発明の詳細な説明に記載されていると思料致します。そして、請求項に係る発明を、実施例に記載された範囲の発明のみについてサポート要件及び実施可能要件を満たすとすることは、特許請求の範囲を過度に制限するものであります。従って、該拒絶理由は解消したものと思料致します。」 と主張した。 上記主張は、いわゆるサポート要件を満たしていることについての実質的な主張ではなかったため、平成29年8月28日付け拒絶理由通知書において審尋をし、具体的な理由を示して主張するように求めたところ、請求人の平成30年3月5日提出の意見書における回答は、 「請求人は、平成29年8月4日付意見書で申し述べたとおり、新請求項1から7に係る発明は、当業者が実施できる程度に十分かつ明確に発明の詳細な説明に記載されており、かつ十分に発明の詳細な説明に記載されていると思料致します。そして、請求項に係る発明を、実施例に記載された範囲の発明のみについてサポート要件及び実施可能要件を満たすとすることは、特許請求の範囲を過度に制限するものであります。従って、該拒絶理由は解消したものと思料致します。」 というものであり、具体的な理由を示した主張はされなかった。 そこで、平成30年3月20日から同年4月13日にかけて行われた電話応対において、当審から請求人に対して、本願発明の前駆体であれば実施例1以外の前駆体であっても触媒の存在なしに相互反応することを示す実験データ又は文献の提出を求めたところ、請求人からの回答は、現状で実験データ等を提出するのは困難であり、本件については権利化を断念するというものであった。 以上のとおり、請求人の主張は具体的な理由を示しておらず、採用することができない。 第6 むすび 以上のとおりであるから、本願は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしておらず、拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審理終結日 | 2018-04-26 |
結審通知日 | 2018-04-27 |
審決日 | 2018-05-08 |
出願番号 | 特願2010-525375(P2010-525375) |
審決分類 |
P
1
8・
537-
WZ
(A61K)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 八次 大二朗、小出 直也 |
特許庁審判長 |
大熊 幸治 |
特許庁審判官 |
関 美祝 渡戸 正義 |
発明の名称 | 少なくとも1種の無色ジスルフィド/チオール前駆体を含む染料組成物、およびこの組成物を使用する染色方法 |
代理人 | 阿部 達彦 |
代理人 | 村山 靖彦 |
代理人 | 実広 信哉 |