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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G05D
管理番号 1344467
審判番号 不服2016-19105  
総通号数 227 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-11-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-12-20 
確定日 2018-09-19 
事件の表示 特願2014-523950「プレゼンスセッションを実行するためのシステム、方法、コンピュータプログラム及び記憶媒体」拒絶査定不服審判事件〔平成25年2月7日国際公開、WO2013/019402、平成26年8月28日国内公表、特表2014-522053〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2012年(平成24年)7月17日に国際出願された特願2014-523950号(パリ条約による優先権主張外国庁受理、2011年8月2日、米国)であり、その手続の経緯は、概略、以下のとおりである。
平成27年 6月18日:手続補正書
平成28年 4月18日付け:拒絶理由通知
同 年 7月25日:意見書
同 年 7月25日:手続補正書
同 年 8月23日付け:拒絶査定
同 年 12月20日:審判請求
同 年 12月20日:手続補正書


第2 本願発明
審判請求と同時になされた手続補正は明細書のみを対象とするものであったため、本件の特許請求の範囲は、平成28年7月25日の手続補正書により補正がなされたものであり、その請求項1(以下「本願発明」という。)は、以下のとおりである。

「ロボットを利用する環境において人物とのテレプレゼンスセッションを実行するためのシステムであって、
前記環境において前記ロボットを動かすように形成されるモータと、
カメラ及びマイクロフォンを有するセンサシステムと、
ロボットに関するモジュールを実行するように形成されるプロセッサと
を有し、前記モジュールは、
前記環境において前記ロボットを動かすように形成されるナビゲーションモジュールと、
前記カメラからの画像に顔が存在することを確認するように形成される顔認識モジュールと、
目的の人物の指定を受け付け、前記顔認識モジュール、前記ナビゲーションモジュール又はそれらの組み合わせによるデータを利用して前記環境の中で目的の人物を特定するように形成される人物特定モジュールであって、発見された人物が前記目的の人物であるか否かを判断し、発見された人物が前記目的の人物でなかった場合、前記目的の人物の場所を、前記発見された人物に督促し、前記督促に応じて与えられた回答に示されている場所に前記ロボットを移動させる、人物特定モジュールと
を有する、システム。」


第3 拒絶の理由
平成28年8月23日付けの拒絶査定で示した拒絶の理由は、次のとおりのものである。
この出願については、平成28年4月18日付け拒絶理由通知書に記載した理由(特許法第29条第2項)によって拒絶をすべきものである。

引用文献1:特開2005-103703号公報
引用文献2:特表2009-509673号公報
引用文献3:特開2005-10244号公報
引用文献4:特開2003-39365号公報

なお、本願発明は、上記文献のうち、引用文献1を主たる発明とし、引用文献3を周知技術であることを示す証拠とした上で拒絶の査定がなされている。


第4 引用文献の記載及び引用発明

1 引用文献1の記載
拒絶査定で用いられた引用文献1(特開2005-103703号公報)には、以下の事項が記載されている(下線は、当審で付した。以下同じ。)。

(1)
「【特許請求の範囲】
【請求項1】
電話機が着脱可能に搭載されたロボットにおいて、登録者を登録する手段を備え、
前記電話機の発呼信号に基づいて、前記登録者の近傍まで移動することを特徴とするロボット。
【請求項2】
請求項1に記載のロボットにおいて、登録者を認識する認識手段を更に備え、前記電話機に発呼があった場合に、前記認識手段からの認識信号に基づいて登録者を探索して、登録者の近傍まで移動することを特徴とするロボット。」
(2)
「【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、移動手段を備えたロボット(以下、「ロボット」と称する)に電話機を搭載して、電話機の使い勝手を向上させることを目的とする。」
(3)
「【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。図1は、本発明に係るロボットの構成例を示すブロック図である。
【0012】
ロボットは、ロボット本体10と、受話器20(「電話機」と称する場合もある)と、カメラ部30と、障害物センサ40と、移動手段50と、バッテリー60を備えている。更に、ロボットは、音声スピーカ70と指向性マイク80とを備えている。また、ロボット本体10は、電話部12と、画像処理部13と、移動制御部14と、マップ情報15と、表示部16とを備えている。
【0013】
上記の構成において、統括制御部11は、各部の動作を制御する。電話部12は、統括制御部11と受話器20との信号のやり取りを行う。なお、受話器20は送受話可能な電話機である。画像処理部13は、カメラ部30で撮像した画像を処理する。移動制御部14は、統括制御部11からの制御信号とマップ情報とに基づいて、例えば車輪からなる移動手段50を駆動制御する。また、マップ情報に基づいて自律的な移動も可能にしている。更に、移動制御部14は、近接センサなどからなる障害物センサ40からの信号を入力して、進行方向に障害物があるかどうかを検知して、障害物との衝突を回避する制御も行う。なお、マップ情報15は家や会社などのマップの情報であって、不揮発性メモリや磁気ディスク或いは光ディスクなどに格納されて利用される。また、マップ情報15を記憶する部分には、登録者に関するデータも記憶(登録)される。バッテリー60は、ロボット全体に電源を供給する。なお、音声スピーカ70と指向性マイク80については、詳細は後述する。上記のように構成された具体的な構成例について、以下説明する。
【0014】
(第1の具体例)
図2は、本発明の第1の具体例に係るロボットの外観を示す図である。また、図3は、第1の具体例の動作を示すフローチャートを示す図である。第1の具体例おいては、登録者の電話に発呼があった場合に、登録者を探索して、登録者のもとまでロボットを移動させるようにしたものである。
【0015】
第1の具体例に係るロボットは、ロボット本体10と、受話器20と、カメラ部30とを備えている。カメラ部30は、周囲状況を撮像する。カメラ部30で撮像された画像は画像処理部13で処理され、撮像画像内の人物が認識される。また、移動制御部14は、上記のように、マップ情報に基づいて自律的な移動を行う。このような構成により、ロボットは家屋内をマップ情報に基づき、車輪駆動により移動すると同時に、カメラ部30により各部屋、廊下の状況を撮像し、その映像を画像処理することにより人物を探す。
【0016】
図3により、発呼があった場合における動作の流れを説明する。
電話機20に発呼があると、ロボットはカメラ部30で撮影した画像を処理しながら登録者を探索する(ステップ31)。登録者を見付けると、登録者の場所近傍までロボットが移動する(ステップ32)。そして、ロボットが登録者の位置まで移動したら、登録者はロボットが搭載している電話機20で通話を行うことができる(ステップ33)。
【0017】
上記のように、第1の具体例に係るロボットを用いることにより、電話機から離れた場所で手の放せない作業中、もしくは電話機から離れているため呼び出し音が聞こえない場合等において、登録者を探索し、電話機側が移動することにより、登録者は確実に電話に出ることができる。」
(4)
「【0020】
(第3の具体例)
図5は、第3の具体例の動作を示すフローチャートを示す図である。なお、図5において、図3と同じ部分には同じ符号を付し、詳細な説明は省略する。第3の具体例の構成は第1及び第2の具体例のいずれであっても良いので、図示及び説明を省略する。・・・画像処理部13は、撮像した画像から顔認証により人物を特定する機能を有する。」
(5)
「【0028】
(第5の具体例)
図7は、第5の具体例の動作を示すフローチャートを示す図である。なお、図7において、図3及び図5と同じ部分には同じ符号を付し、詳細な説明は省略する。第5の具体例の構成は第1から第4の具体例のいずれであっても良いので、図示及び説明を省略する。第5の具体例は、発呼者からのリモート操作により、ロボットが移動する機能を有している。
【0029】
図7のフローチャートに示すように、電話を受信すると、ロボットはカメラにより登録者を探索する(ステップ31)。登録者の探索開始後、一定時間経過しても登録者を発見できない場合に(ステップ71のNo)、その旨を発呼者へ通知する(ステップ72)。発呼者は、リモート操作によりロボットを移動し、登録者を探索する(ステップ73)。その際、発呼者はロボット搭載のカメラの映像を受信し、その画像を見ながらロボットを誘導する。そして、登録者を発見できた後は、第1の具体例と同様に、登録者の場所近傍までロボットは移動する(ステップ32)。登録者はロボットが搭載している電話で通話を開始する。
【0030】
第5の具体例によれば、ロボットを発呼者側から操作して登録者を探索することができるようにしたので、登録者と確実に通話することができる。一方、登録者が事故等で電話にでることができない状況であれば、遠隔地からその状況を確認し対処することが可能となる。
【0031】
本発明は、上記各実施の形態や具体例に限ることなく、その他、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々の変形を実施し得ることが可能である。例えば、上記の各具体例においては、主に電話の受信時における動作を説明したが、上述したようにユーザが発呼を行う場合についても、登録者の近傍まで電話機を移動させるような機能を持たせても良いし、更には、登録者が1人であるような場合において、登録者を常に監視して、必要に応じて追尾するように機能を付加しても良い。さらに、上記各実施形態には、種々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件における適宜な組合せにより種々の発明が抽出され得る。」

2 引用発明
上記1からみて、引用文献1には、以下の発明が記載されている(以下、「引用発明」という。)。

(引用発明)
「各部屋、廊下を自走させて登録者への電話の取り次ぎをさせる、電話機を搭載し発呼者との通話を行うロボットであって、
前記ロボットは、車輪からなる移動手段50と、カメラ部30と、指向性マイク80と、統括制御部11からの制御信号とマップ情報15とに基づいて自律的な移動を行う前記移動手段50を駆動制御する移動制御部14と、前記カメラ部30で撮像された画像から顔認証により撮像画像内の人物を認識する画像処理部13と、各部の動作を制御する統括制御部11と、を有し、
電話機のユーザはマップ情報15を記憶する部分に当該ユーザに関するデータが記憶・登録されており、
前記ロボットは、家屋内を、マップ情報に基づき車輪駆動により移動すると同時に、カメラ部30により各部屋、廊下の状況を撮像し、その映像を画像処理して顔認証により人物の特定をすることによりユーザ登録された者を探し、音声スピーカ70から登録者の名前を呼び、指向性マイク80で登録者からの呼び出しを受信してロボットを移動させ、発見したら登録者の場所へ移動することにより前記登録者への電話の取り次ぎを行う
ロボット。」

3 引用文献3の記載
同じく、拒絶査定で引用された引用文献3(特開2005-10244号公報)には、以下の事項が記載されている。

「【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、パ-ティー会場等の会場で自動的に撮影を行う撮影装置に関する。」

「【0003】
これに対し最近は、自らが自律的に移動して構図を決定し、撮影を行う次世代の撮影機器が提案されている。
このような撮影機器として、例えば、ワシントン大学で開発されたフォトグラファーロボット「ルイス」(Lewis the Robotic Photographer)が
知られている。
この「ルイス」によれば、実際に人々が行き交う室内空間を舞台とし、そこで活動する人々の自然な表情を適切な構図で自動撮影することができる。・・・(中略)・・・
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、パーティー会場等は、プリクラの撮影ボックス内とは異なり、様々な人々が集い行き交う空間であるため、必ずしも写真撮影を望まない人々が撮影空間の中に混在していたり、逆に撮影を望んでいても撮影機器との位置的な巡り合わせが悪く制限時間内に被写体とはなり得なかったり、また、期待した最低撮影枚数に達しない等様々な問題が生じていた。
【0006】
すなわち、撮影を自律的に行う撮影機器においては、どの人物が被撮影者となり得るかは、双方の位置的な巡り合わせ、つまり偶然性によるところが非常に大きかった。
また、一つの極端な例としては次のようなケースも生じ得る。
例えば、撮影を強く希望する積極的な利用者は、撮影機器の被写体となるべく、自ら撮影機器に繰り返しアプローチして長時間にわたって撮影機器を占有してしまったり、逆に撮影を希望していながらも消極的な性格のためにチャンスを逃してしまい、制限時間内で1枚も撮影記録が残らないなど、同じ使用料金を支払った利用者でありながら結果的に両者間の撮影枚数に大幅な差が生じてしまい、不平等感を与えてしまう場合も十分に考えられる。
【0007】
さらに、近年では、肖像権の侵害問題等が益々重要性を帯びてきているために上述の様な撮影漏れや撮影枚数の管理以外にも、細心の注意を払うべき課題が存在する。
本発明は、かかる従来の問題を解決するためになされたもので、会場に集まった複数の人間の撮影に対する個人的要望を容易,確実に満足することができる撮影装置を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
請求項1の撮影装置は、複数の被撮影者の識別情報を登録情報として登録しておく事前登録手段と、画像内の被撮影者から前記識別情報を抽出する情報抽出手段と、前記情報抽出手段で抽出された被撮影者の前記識別情報と前記登録情報を照合し前記画像内の被撮影者を特定する被撮影者特定手段と、前記被撮影者特定手段で特定された被撮影者と前記登録情報を照合して撮影漏れの有無を検出する撮影漏れ検出手段と、前記撮影漏れ検出手段で撮影漏れが有ることが検出された時に撮影漏れ情報を出力する報知手段とを備えていることを特徴とする。
【0009】
請求項2の撮影装置は、請求項1記載の撮影装置において、前記事前登録手段に登録される前記登録情報は、被撮影者の映像情報であり、前記情報抽出手段で抽出される識別情報は、被撮影者の映像情報であることを特徴とする。
請求項3の撮影装置は、請求項1記載の撮影装置において、前記事前登録手段に登録される前記登録情報は、被撮影者が携行する識別タグの識別情報であり、前記情報抽出手段で抽出される識別情報は、被撮影者が携行する前記識別タグの識別情報であることを特徴とする。」

「【0066】
また、装置本体11とアンテナロボットとを被撮影者を挟んでゲート式に配置し、装置本体11とアンテナロボットとの間の被撮影者のみを検出するようにしても良い。
なお、上述した第1および第2の実施形態では、報知手段49により、登録者間の撮影枚数の格差を解消するようにした例について説明したが、例えば、撮影装置の移動を下記のように制御することにより、登録者間の撮影枚数の格差を効率的に解消することが可能になる。
【0067】
(1)制御装置が、自ら撮影装置が移動してきた軌跡を分析し、まだ巡回していない(または巡回時間が少ない)場所へとルートを変更する。
(2)各被撮影者の撮影枚数と、それぞれの画像を撮影した場所のデータから、被撮影者の存在位置を確率分布的に推測し、巡回すべき場所の優先順位を重み付けする。
【0068】
(3)被撮影者に携帯させた発信器等から存在位置を分析して、該当者の居場所へと向かう。
(4)周囲を全周スキャンして人物抽出、個人特定を行い、該当者を探してアプローチする。
(5)周囲の人々に該当者の居場所を音声や映像で積極的に質問して情報を得る。
【0069】
すなわち、このように被撮影者の位置を特定したり、巡り会う確率を高めることにより、撮影漏れや撮影枚数格差の問題をより効果的に解消することができる。」


第5 対比
本願発明と引用発明を対比すると、以下のとおりとなる。
引用発明の「電話機を搭載し発呼者との通話を行う」ようなロボットの行為は、本願発明の「ロボットを利用する環境において人物とのテレプレゼンスセッションを実行する」に相当する。
また、引用発明の「車輪からなる移動手段50」のロボットを移動させる機能は、本願発明の「前記環境において前記ロボットを動かすように形成されるモータ」の果たす機能において一致する。
また、引用発明の「カメラ部30」及び「指向性マイク80」は、本願発明の「カメラ及びマイクロフォンを有するセンサシステム」に相当する。
また、引用発明の「マップ情報に基づいて自律的な移動を行う前記移動手段50を駆動制御する移動制御部14」は、本願発明の「前記環境において前記ロボットを動かすように形成されるナビゲーションモジュール」に相当し、引用発明の「カメラ部30」の「撮像画像内の人物を認識する」とした「画像処理部13」は、本願発明の「前記カメラからの画像に顔が存在することを確認するように形成される顔認識モジュール」に相当する。
さらに、引用発明の「電話機のユーザはマップ情報15を記憶する部分に当該ユーザに関するデータが記憶・登録されており」は、本願発明の「人物特定モジュール」のうち、「目的の人物の指定を受け付け」ることに一致し、また、引用発明の「前記ロボットは、家屋内を、マップ情報に基づき車輪駆動により移動すると同時に、カメラ部30により各部屋、廊下の状況を撮像し、その映像を画像処理して顔認証により人物の特定をすることによりユーザ登録された者を探」して「発見したら登録者の場所へ移動することにより前記登録者への電話の取り次ぎを行う」ことは、本願発明の「人物特定モジュール」のうち、「前記顔認識モジュール、前記ナビゲーションモジュール又はそれらの組み合わせによるデータを利用して前記環境の中で目的の人物を特定する」とした点について一致する。
そうすると、「移動制御部14」と「画像処理部13」と「ユーザに関するデータ」の「マップ情報15を記憶する部分」へ「記憶・登録」し、「ロボット」に対して「家屋内を、マップ情報に基づき車輪駆動により移動すると同時に、カメラ部30により各部屋、廊下の状況を撮像し、その映像を画像処理して顔認証により人物の特定をすることによりユーザ登録された者を探」して「発見したら登録者の場所へ移動することにより前記登録者への電話の取り次ぎを行う」とした一連の処理について「各部の動作を制御する統括制御部11」は、本願発明の「ロボットに関するモジュールを実行するように形成されるプロセッサ」に相当する。
したがって、本願発明と引用発明とは、下記の点で一致し、また相違する。
(一致点)
「ロボットを利用する環境において人物とのテレプレゼンスセッションを実行するためのシステムであって、
前記環境において前記ロボットを動かす手段と、
カメラ及びマイクロフォンを有するセンサシステムと、
を有し、前記モジュールは、
前記環境において前記ロボットを動かすように形成されるナビゲーションモジュールと、
前記カメラからの画像に顔が存在することを確認するように形成される顔認識モジュールと、
目的の人物の指定を受け付け、前記顔認識モジュール、前記ナビゲーションモジュール又はそれらの組み合わせによるデータを利用して前記環境の中で目的の人物を特定するように形成される人物特定モジュールであって、発見された人物が前記目的の人物であるか否かを判断し、前記ロボットを移動させる、人物特定モジュールと
を有する、システム」

(相違点)
「目的の人物を特定するように形成される人物特定モジュール」に関して、本願発明では「発見された人物が前記目的の人物でなかった場合、前記目的の人物の場所を、前記発見された人物に督促し、前記督促に応じて与えられた回答に示されている場所に」ロボットを移動させるとしているのに対して、引用発明のロボットは、周囲にスピーカ70を用いて登録者の名前を呼びかけて、登録者自身に呼び出しを促して、呼び出しの方角を指向性マイク80で受信することで、ロボットを移動させるようにしている点。


第6 判断
上記相違点について、判断する。
本願発明が有する上記相違点に係る発明特定事項は、周囲の人に捜索中の人物の居場所を尋ねる行動そのものであることが明らかである。
また、係る行動は、人が通常、尋ね人の捜索を行う場合に採る行動類型のうち、一般的な一つに属する行動そのものと理解できる。
そして、自律移動ロボットにより特定人物を捜索させるために用いる態様として、上記相違点に係る構成、すなわち、他者へ特定人物の場所を尋ねて、特定人物の場所を聞き出すとした督促を行い、場所の情報を頼りにロボットを移動させるとした事項は、引用文献3の上記記載事項ウの下線部分に記載された技術的事項であるから、現に人が通常行う行動をロボットへ適用させる試みが公知であることが明らかといえる。
更に、引用発明のロボットでも、移動しても登録者がカメラ部30で取得した画像内に認識されなかった場合に、音声スピーカ70で名前を呼びかけるとした、一般の人間が行う人捜しの別の手法を採用していることから見て、人が通常採る行動そのものをロボットへ適用させようとする動機を阻害する要因は特に見当たらない。
以上まとめると、引用発明に接した当業者であれば、他の人物捜索手法である引用文献3に記載された公知の、近くの人物に捜索中の人物の居場所を尋ね、居場所情報を移動に用いるとした公知手法をも捜索手法として採用することは容易に想到する事項にすぎない。
よって、本願発明は、引用発明及び公知技術に基づいて、当業者が容易に発明できたものと認められる。


第7 むすび
以上のとおり、本願発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献1に記載された発明及び引用文献3に記載された事項に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
そして,本願発明が特許を受けることができない以上,その余の請求項に係る発明について検討するまでもなく,本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2018-04-12 
結審通知日 2018-04-17 
審決日 2018-05-07 
出願番号 特願2014-523950(P2014-523950)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G05D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 稲垣 浩司  
特許庁審判長 平岩 正一
特許庁審判官 中川 隆司
西村 泰英
発明の名称 プレゼンスセッションを実行するためのシステム、方法、コンピュータプログラム及び記憶媒体  
代理人 伊東 忠重  
代理人 伊東 忠彦  
代理人 大貫 進介  

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