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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) F24F
管理番号 1344511
審判番号 不服2017-7444  
総通号数 227 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-11-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-05-24 
確定日 2018-09-20 
事件の表示 特願2015-124371号「レンジフード」拒絶査定不服審判事件〔平成29年1月12日出願公開,特開2017- 9180号〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 第1 経緯の概略
本願は,平成27年6月22日の出願であって,その経緯は,概ね次のとおりである。
平成28年 6月20日 拒絶理由通知書
平成28年 8月23日 意見書,手続補正書
平成28年10月28日 拒絶理由通知書
平成28年12月26日 意見書,手続補正書
平成29年 2月24日 拒絶査定
平成29年 5月24日 拒絶査定不服審判請求書
平成30年 4月 6日 拒絶理由通知書
平成30年 5月30日 意見書

第2 本願発明について
本願の請求項1?3に係る発明は,平成28年12月26日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?3に記載された事項により特定されるとおりのものであるが,そのうち請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は,以下の事項により特定されるとおりのものである。
【請求項1】
レンジフードの本体に,前面に二次元バーコードを設けたフード外枠と,ファンケーシング内にファンを有する送風機と,前記ファンを回転させるモーターとを設け,携帯端末にて前記二次元バーコードを読み込むとアクセス先情報が表示され,前記アクセス先情報へアクセスすると,知りたい情報を前記携帯端末に表示させる設備機器取扱情報システムを用いたレンジフード。

第3 拒絶理由の概要
当審にて,平成30年4月6日付けで通知した拒絶理由の概要は,次のとおりである。すなわち,本願発明は,その出願前に日本国内又は外国において,頒布された下記の引用例に記載された発明に基いて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
(引用例)
1 特開2013-2685号公報
2 特開2009-250526号公報
3 特開2009-138990号公報

第4 引用例に記載された事項
1 引用例1について
(1) 引用例1には,以下の事項が記載されている。
・「【請求項1】
ケーシング内に排気用ファンが配設され,前記ケーシングの底壁に排気用吸い込み口が形成され,前記排気用吸い込み口の下方に整流板が配設され,前記整流板と前記排気用吸い込み口とを周壁により囲繞するフード部を有し,前記整流板と前記フード部との間に前記排気用吸い込み口に連通する吸込み間隙が形成されるレンジフードであって,
前記フード部内における前記周壁の一辺に照明器具の設置部を設け,
前記整流板の周囲縁部における前記照明器具の設置部と対応する位置に,前記整流板の周囲縁部を上方に変位させた膨出部を形成して透光部を設けたことを特徴とするレンジフード。」
・「【0001】
本発明は,レンジフードに関し,詳しくは例えば,ガスコンロ,電気コンロ,および電磁誘導感熱式クッキングヒータ(IHヒータ)などの加熱調理器具の上方に設置されて,調理中に発生する廃ガスなどの汚染空気(汚染物質)を吸い込み捕集して屋外に排気するためのレンジフードに関するものである。」
・「【0017】
レンジフード1は,図1,図2に示すように,吸い込み部を有する排気用ファン4と,排気用ファン4を収容するケーシング2と,整流板8を揺動可能に取り付けたフード部3とを備えている。排気用ファン4は例えば遠心ファンからなる。
【0018】
ケーシング2の底壁2a側には,下方に開口した排気用吸い込み口7が形成されており,排気用ファン4の吸い込み部が排気用吸い込み口7と連通している。排気用ファン4の吹き出し部に接続された排気ダクト30は,ケーシング2の外部へ延びている。
・・・
【0020】
天板21は底壁2aの排気用吸い込み口7を塞がないように配置される。天板21と隔壁13との間は,制御部5,スイッチ部6,近接センサ11(図8参照)等の配線を行う配線用通路23となっている。
・・・
【0022】
この整流板8が使用状態用位置に位置しているときは,整流板8の周囲縁部とフード部3の外周側壁(以下,周壁3aという)との間に環状の吸込み間隙9が形成されている。また隔壁13下面と整流板8の上面との間はフード内通路22となっており,このフード内通路22を介して吸込み間隙9と底壁2aの排気用吸い込み口7とが連通している。ここで,環状の吸込み間隙9を狭幅に形成することで,整流板8に当たった汚染空気が吸込み間隙9内ヘと高速で流入するようになり,これにより,ケーシング2側方への汚染空気の溢流が抑制されて,底壁2aの排気用吸い込み口7を経由する汚染空気の捕獲率が向上する。
【0023】
フード部3の前面には,排気用ファン4の起動および停止のための指令を入力するスイッチ部6が設けられる。スイッチ部6は,図8に示すように,停止スイッチ,強スイッチ,中スイッチ,弱スイッチ,照明スイッチ,チャイルドロックスイッチを備えている。このスイッチ部6は,押し操作している間だけ接点を閉じられるモーメンタリスイッチ(例えば,タクトスイッチ)が用いられると共に,各スイッチの操作面は図示しないメンブレンシートにより覆われている。
【0024】
スイッチ部6からの指令信号は,制御部5(図8参照)に入力される。制御部5は,スイッチ部6からの信号に応じて排気用ファン4の起動および停止を制御する。
【0025】
本実施形態では,チャイルドロックスイッチを所定時間(例えば,3秒)以上継続して押し操作することで,排気用ファン4の運転中には排気用ファン4の運転を停止し,また,排気用ファン4の運転停止中に強スイッチ,または,中スイッチ,または,弱スイッチが押し操作されても排気用ファン4の回転を開始しない状態である,チャイルドロックモードに移行する。これにより老齢者等の誤操作を未然に防止できる。なお,チャイルドロックモードにおいて,チャイルドロックスイッチを所定時間(例えば,3秒)以上継続して押し操作することでチャイルドロックモードが解除され,通常モード用制御に切り換わり,強スイッチ,または,中スイッチ,または,弱スイッチの押し操作による排気用ファン4の回転が可能となる。
【0026】
また,強スイッチ,または,中スイッチ,または,弱スイッチが押し操作されて,排気用ファン4が強回転,または,中回転,または,弱回転でレンジフード1が運転しているときは,台所等のコンロで発生した上昇汚染空気流が,コンロ上方の吸込み間隙9からレンジフード1内へ吸引され,更に排気用ファン4と排気ダクト30とを経て屋外へ排出される。」
(2) 引用例1の図1,2及び5から,排気用ファン4がケーシング2内のファンケーシング内に設けられている点が見て取れる。
(3) 以上を踏まえると,引用例1の前記記載及び図面の記載によれば,引用例1には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているといえる。
(引用発明)
「ケーシング2と,前面にスイッチ部6を設けたフード部3と,ファンケーシング内の排気用ファン4と,を有するレンジフード1」

2 引用例2に記載された事項
引用例2には,以下の事項が記載されている。
・「【請求項1】
浴室換気乾燥機と浴室換気乾燥機の運転操作を行う浴室外の壁面に備えられた浴室換気乾燥機の操作部と,この操作部にQRコードを表示し,QRコード読み取り機能を有する携帯電話を用い,浴室換気乾燥機の情報を携帯電話に表示する情報表示システム。」
・「【0037】
(実施の形態1)
図1に示すように,本発明の実施の形態1の情報表示システムは,浴室1の天井面に設置された浴室換気乾燥機2Aと,この浴室換気乾燥機2A内に設けた浴室換気乾燥機の運転を制御する制御手段3Aと,浴室1外の壁面に設置され,浴室換気乾燥機2Aの制御手段3Aと接続され,有線通信にて浴室換気乾燥機2Aの運転操作を行い,携帯電話4AのQRコード読み取り機能にて読み取り可能な機器の名称,製造年月日,取扱い方法および,製造メーカーのホームページアドレスをコード化して記憶させたQRコード5が印刷された操作手段6Aと,浴室換気乾燥機2Aの使用情報を登録する製造メーカーが管理するサーバー7内の製造メーカーデーターベース8により構成される。」
・「【0041】
上記構成により,ユーザーが携帯電話4Aにて操作手段6Aに印刷されたQRコード5を読み取ると,携帯電話4Aの画面に機器の名称と製造年月日情報と,取扱い説明方法,製造メーカーデーターベース8へリンクするホームページアドレスが表示される。そして携帯電話4Aの画面に表示されたホームページアドレスを選択すると,製造メーカーデーターベース8へ接続され,浴室換気乾燥機2Aの使用登録としてユーザー名,電子メールアドレス,使用場所住所,使用開始日を入力することと,QRコード5に記憶されている機器の名称と製造年月日情報が同時に送信され,製造メーカーデーターベース8に浴室換気乾燥機2Aの使用情報登録が行われる。そして,浴室換気乾燥機2Aの使用が製造メーカーの定める期間経過後,製造メーカーデーターベース8に登録されている情報をもとに,登録されたユーザーの電子メールアドレスへ浴室換気乾燥機2Aの点検実施の案内を送信することで,ユーザーに浴室換気乾燥機2Aの点検を促す。」
・「【0044】
取扱い方法をコード化し,QRコード5に記憶させたが,取扱い説明方法が簡単な場合は,QRコード5に記憶できるが,複雑な場合は,QRコード5に記憶されているホームページアドレスより製造メーカーデーターベース8に接続し,取扱い説明方法の確認を可能としても取扱い方法が確認できれば記憶しなくても同様な効果が得られる。」
・「【0054】
定期的なメンテナンスにより機器の性能を維持することが必要な家庭用電化製品や産業用機器への利用も可能である。」

3 引用例3に記載された事項
引用例3には,以下の事項が記載されている。
・「【0050】
(実施の形態1)
図1?図3に示すように,本発明のレンジフードは,調理器(図示せず)の上方に設置されるフード外枠1と,フード外枠1内面に沿う形状の内フード2と,ファンケーシング天板3aと渦巻状のファンケーシング側板3bで構成されるファンケーシングと,ファンケーシング天板3aに設けたモーター4により水平方向に回転する遠心ファン5とからなる。・・・ファンケーシング3の吐出部には,室外と連通するダクト10と接続可能なアダプター11が設置され,フード外枠1前面には,レンジフードの運転,停止を行なうための操作スイッチ12が設けられている。・・・
【0051】
上記構成において,調理時に操作スイッチ12を押し,レンジフードを運転すると,調理で発生した油煙,廃ガスを含んだ空気は,内フード2下面から吸い込まれ,グリスフィルター9を通過し,ファンケーシング底板6中央の吸込口から吸い込まれ,ファンケーシング3内,アダプター11,ダクト10を通って屋外に排出される。」

第5 対比及び判断
1 対比
本願発明と引用発明とを,その有する機能に照らして対比すると,引用発明の「レンジフード1」は本願発明の「レンジフード」に相当し,引用発明の「ケーシング2」及び「フード部3」は,「レンジフード1」の本体を構成しているものであるから,本願発明の「フード外枠」に相当する。
引用発明の「ファンケーシング内の排気用ファン4」がファンを有することは明らかであり,「排気用ファン4」がモーターによりファンを回転させるものであることは当然であるから(引用例3(前記第4・3)),引用発明は,本願発明と同様に,ファンケーシング内にファンを有する送風機と,前記ファンを回転させるモーターとを設けたものである。
そうすると,本願発明と引用発明とは,以下の点で一致し,相違するといえる。
(一致点)
「レンジフードの本体に,フード外枠と,ファンケーシング内にファンを有する送風機と,前記ファンを回転させるモーターとを設けたレンジフード。」
(相違点)
本願発明は,「フード外枠」の「前面に二次元バーコードを設けた」ものであって,「携帯端末にて前記二次元バーコードを読み込むとアクセス先情報が表示され,前記アクセス先情報へアクセスすると,知りたい情報を前記携帯端末に表示させる設備機器取扱情報システムを用いた」ものであるのに対し,引用発明は,そのような構成を有していない点。

2 判断
(1) 前記相違点について検討するに,引用例2には,浴室換気乾燥機の操作手段にQRコード(なお,「QRコード」は登録商標である。以下同じ。)を印刷し,当該QRコードを携帯電話にて読み込むと,ホームページアドレスが表示される点,ホームページアドレスより製造メーカーデータベースに接続し,取扱い説明方法の確認を可能とする点が記載されている(前記第4・2)。すなわち,引用例2には,携帯電話にてQRコード(二次元バーコード)を読み込むとホームページアドレス(アクセス先情報)が表示され,前記ホームページアドレス(アクセス先情報)へアクセスすると,取扱い説明方法(知りたい情報)を前記携帯電話に表示させるシステムを用いる点が記載されている。
また,引用発明において,取扱説明書を参照しながら操作やメンテナンス・清掃等を行うことは当然想定されている。
そして,引用発明,引用例2に記載された事項のいずれも,家庭用の換気に係る機器に関する技術である点で共通し,引用例2には,定期的なメンテナンスにより機器の性能を維持することが必要な家庭用電化製品や産業用機器への利用も可能である旨記載されていることからしても(【0054】(前記第4・2)),当該操作やメンテナンス・清掃等を行うの際の便宜のために,引用発明に引用例2に記載された事項を適用し,取扱い説明方法など,すなわち,使用者が知りたい情報にアクセス可能な二次元バーコード(QRコード)を設けておくことは,当業者にとって格別困難なことではない。
その場合,当該二次元バーコード(QRコード)を機器のどの部位に設けるかは,機器の構造を踏まえ,利便性等を考慮し,当業者が適宜に決定できるものである。引用例2には操作部に設ける点が記載されている上,引用発明において,スイッチ部6があるフード部3の前面が,使用者にとって構造上認識しやすくアクセスしやすい部位であることは,当業者が容易に理解できるから,引用発明には,フード部3の前面に当該二次元バーコードを設けることに関する動機付けが十分に認められる。
(2) 請求人の主張について
ア 請求人は,引用例2には,浴室換気乾燥機本体が設置されている浴室とは別の場所に設けられたコントローラーにQRコードを設ける技術が開示されているだけで,引用例2に記載された事項をレンジフードに適用すると,キッチンとは別の場所にQRコードを設けたコントローラーを設けることとなる,などと主張している(審判請求書)。
確かに,引用例2には,浴室換気乾燥機とは別体の操作手段にQRコードを印刷する点が記載されているが,QRコードの読み取りのしやすさや,取扱い説明方法を参照する際の状況を考えれば,操作手段に設けることが重要であって,他の家庭用電化製品や産業用機器に利用するに当たっては,利用する製品・機器に応じた部位に設けることが合理的であることは,当業者であれば容易に理解できる。
そして,引用例1,3に記載されているように,レンジフードはキッチンとは別の場所にコントローラーを有するものではなく,通常使用時の利便性に照らしても,引用発明に引用例2に記載された事項を適用する場合に,キッチンとは別の場所にコントローラーを設けることを想定することは困難で,操作手段であるスイッチ部6を設けたフード部3の前面に当該二次元バーコードを設けることが合理的である。
イ また,請求人は,通常,レンジフードはリモコン対応なものが一般的であり,リモコン付きのレンジフードが一般的に知られている以上,引用例2に記載された事項をレンジフードに適用する場合には,レンジフードのリモコンにQRコードを設けることが合理的であって,油煙により汚れやすくQRコードが読み取りづらくなるレンジフード本体にQRコードを設ける理由はない,とも主張している(平成30年5月30日付け意見書)。
しかし,リモコン付きのレンジフードが一般的に知られているとしても,引用発明は,フード部3の前面にスイッチ部6が設けられ,当該スイッチ部6の操作によりレンジフード1を運転するもので(引用例1【0024】?【0026】(前記第4・1)),本体での操作が予定されているものである(引用例3にも同旨の記載がある(前記第4・3))。このように本体で操作するものである以上,引用発明には,フード部3の前面に当該二次元バーコードを設けることに関する動機付けが十分に認められる。
また,引用例1の記載からすると(【0022】,【0026】(前記第4・1)),フード部3の前面は油煙に接触しづらい部位であって,当該二次元バーコードを設ける部位として特段差し支えないことは,当業者が容易に理解できる。
そうすると,引用例2に記載された事項を知り得た当業者にとって,このような運転操作に係るスイッチ部6が設けられたフード部3の前面に当該二次元バーコードを設けることは,格別困難なことではない。
(3) 本願発明の奏する効果をみても(油煙により汚れることがないなどの効果も含め),当業者であれば引用発明及び引用例2に記載された事項から予測可能な範囲内のものであって,格別ではない。
(4) そうすると,引用発明に引用例2に記載された事項を適用し,フード部3の前面に当該二次元バーコードを設けること,すなわち,前記相違点に係る本願発明の構成とすることは,当業者が容易に想到できたものである。

3 以上のとおりであるから,本願発明は,引用発明及び引用例2に記載された事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものである。

第6 むすび
以上のとおり,本願発明は,引用発明及び引用例2に記載された事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により,特許を受けることができない。
そして,本願発明(請求項1に係る発明)が特許を受けることができない以上,その余の請求項に係る発明について検討するまでもなく,本願は拒絶すべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2018-07-11 
結審通知日 2018-07-17 
審決日 2018-07-30 
出願番号 特願2015-124371(P2015-124371)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (F24F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 岡澤 洋久保田 信也町田 豊隆  
特許庁審判長 山崎 勝司
特許庁審判官 槙原 進
窪田 治彦
発明の名称 レンジフード  
代理人 前田 浩夫  
代理人 鎌田 健司  

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