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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B41M
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B41M
管理番号 1344550
審判番号 不服2017-14772  
総通号数 227 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-11-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-10-04 
確定日 2018-09-27 
事件の表示 特願2016- 29313「包装フィルムへのレーザマーキング方法、包装フィルム、及び包装体、並びにそれを容器とした容器詰め食品」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 8月 4日出願公開、特開2016-137719〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成24年1月18日に出願した特願2012-7690号の一部を、平成28年2月18日に新たな特許出願としたものであって、平成29年1月20日付けで拒絶理由が通知され、同年5月26日に意見書の提出とともに手続補正がなされ、同年6月23日付けで拒絶査定(以下、「原査定」という。)がされ、これに対し、同年10月4日に拒絶査定不服審判の請求と同時に手続補正(以下、「本件補正」という。)がなされたものである。


第2 本件補正の補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成29年10月4日付けの手続補正を却下する。
[理由]
1 補正の内容
本件補正は、特許請求の範囲を補正するものであって、平成29年5月26日付けの手続補正の特許請求の範囲の請求項1
「 【請求項1】
少なくとも表層及びシール層が積層してなる包装フィルムに、レーザマーキングする方法において、前記包装フィルムは、表層フィルムとシール層フィルムでサンドイッチされた酸化チタンを着色剤に用いた白色インキ層を有し、前記白色インキ層に接する表層フィルムの主成分は、延伸PP(OPP)、無延伸PP(CPP)、延伸Ny(ONy)、あるいは無延伸Ny(CNy)であり、前記白色インキ層に接する前記シール層フィルムの主成分は、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、あるいは無延伸ポリプロピレン(CPP)であり、前記白色インキ層の塗工量は0.1?5g/m^(2)であり、フィルムとフィルムでサンドイッチされた酸化チタンを着色剤に用いた白色インキ層にレーザ光を照射して黒変させ、レーザ光が黒変箇所に再照射しないフォントを用いることを特徴とする包装フィルムへのレーザマーキング方法。」を、
「 【請求項1】
少なくとも表層及びシール層が積層してなる包装フィルムに、レーザマーキングする方法において、前記包装フィルムは厚みが30μmから50μmであり、表層フィルムとシール層フィルムでサンドイッチされた酸化チタンを着色剤に用いた白色インキ層を有し、前記白色インキ層に接する表層フィルムの主成分は、延伸PP(OPP)、無延伸PP(CPP)、延伸Ny(ONy)、あるいは無延伸Ny(CNy)であり、前記白色インキ層に接する前記シール層フィルムの主成分は、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、あるいは無延伸ポリプロピレン(CPP)であり、前記白色インキ層の塗工量は0.1?5g/m^(2)であり、フィルムとフィルムでサンドイッチされた酸化チタンを着色剤に用いた白色インキ層にYVO4レーザ光を照射して黒変させ、レーザ光が黒変箇所に再照射しないフォントを用いることを特徴とする包装フィルムへのレーザマーキング方法。」(下線部は補正箇所を示す。以下、「本件補正発明」という。)とする補正を含むものである。

2 補正の目的
本件補正は、「包装フィルム」について、その厚みを「30μmから50μm」へと限定する補正事項と、「レーザ光」について、「YVO4レーザ」へと限定する補正事項を含むものである。
上記補正事項は、いずれも、発明特定事項を限定するものであり、本件補正前の請求項1に係る発明と本件補正後の請求項1に係る発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

そこで、本件補正発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について、以下に検討する。

3 引用文献の記載及び引用発明
(1)引用文献1
ア 記載事項
原査定の拒絶の理由に引用され、本願出願前に頒布された刊行物である特開2007-55110号公報(以下、「引用文献1」という。)には、次の記載事項がある(なお、下線は当合議体が付したものである。以下、同様。)。

(ア)「【特許請求の範囲】
【請求項1】
顔料、染料および無機材料から選ばれる1種以上の材料を含有し、かつ、波長700?12000nmに吸収を有するレーザー発色性印刷インキ皮膜層と、表面保護層とを有してなる記録材。

(中略)

【請求項4】
顔料が酸化チタン、硫化亜鉛、酸化亜鉛、沈降性硫酸バリウム、炭酸バリウムおよび沈降性炭酸カルシウムから選ばれる1種以上である請求項1または2記載の記録材。

(中略)

【請求項11】
レーザー発色性印刷インキ皮膜層が、食品用または産業資材用の包装用積層体と一体となって形成されることを特徴とする請求項1?10いずれか記載の記録材。

(中略)

【請求項13】
レーザー発色性印刷インキ皮膜層が基材に印刷された請求項1?12いずれか記載の記録材。
【請求項14】
基材がプラスチックまたは紙である請求項13記載の記録材。
【請求項15】
表面保護層がプラスチックフイルムまたは放射線硬化性樹脂を用いた層である請求項1?14いずれか記載の記録材。

(中略)

【請求項17】
請求項1?16いずれか記載の記録材に、YAGレーザーまたはYVO4レーザーを照射することを特徴とする記録方法。」

(イ)「【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザー発色性印刷インキ皮膜層を有する記録材およびこれを用いた記録方法に関する。

(中略)

【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明は、黄、藍、紅、橙色等の着色剤を使用した通常のグラビア、オフセット、シルクスクリーンインキ等の印刷物にレーザーマーキングを施すことが可能な記録材、およびその記録方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、顔料、染料および無機材料から選ばれる1種以上の材料を含有し、かつ、波長700?12000nmに吸収を有するレーザー発色性印刷インキ皮膜層と、表面保護層とを有してなる記録材である。
顔料、染料および無機材料から選ばれる1種以上の材料の総含有量が、レーザー発色性印刷インキ皮膜層100重量部に対して、0.1?90重量部であることが好ましい。
また、前記顔料が黄色、紅色および藍色顔料から選ばれる1種以上であることが好ましい。
また、前記顔料が酸化チタン、硫化亜鉛、酸化亜鉛、沈降性硫酸バリウム、炭酸バリウムおよび沈降性炭酸カルシウムから選ばれる1種以上であることも好ましい。
また、前記顔料がカーボンブラック、グラファイトおよびブラックレーキから選ばれる1種以上であることも好ましい。
次に、前記染料がロイコ染料であることが好ましい。。
さらに、無機材料が銅化合物、モリブデン化合物、鉄化合物、ニッケル化合物、クロム化合物、ジルコニウム化合物およびアンチモン化合物から選ばれる1種以上であることが好ましい。また、前記無機材料が銅・モリブデン複合酸化物であることが特に好ましい。

(中略)

【0012】
本発明を構成する表面保護層は、プラスチックフイルムまたは放射線硬化性樹脂を用いた層であることが好ましい。

(中略)

【0014】
本発明は、前記の記録材に、YAGレーザーまたはYVO4レーザーを照射することを特徴とする記録方法である。この記録方法において、レーザーは下記(1)?(3)を少なくとも1つ満たすことが好ましい。

(中略)

【発明の効果】
【0015】
本態様の記録材は、黄、藍、紅、橙、白、黒等の色相を有するレーザー発色性印刷インキ皮膜層と、表面保護層とを有する積層体からなっており、レーザー光照射により印字できる。該印刷物の上に表面保護層が形成されていることにより、印字後の後加工なしに、優れた耐水性、耐油性、耐摩耗性を付与することができる。
また、レーザー発色性印刷インキ皮膜層を形成する印刷インキにレーザー発色性の優れた素材、例えば、染料、金属酸化物等の無機材料、ニトロセルロース樹脂、レーザー吸収性を有する顔料などを使用するとコントラストが鮮明な図柄、文字を記録できる。当然に、表面保護層を有することにより耐久性が良好な記録材を提供できる。
【0016】
さらに、本発明のレーザー発色性印刷インキ皮膜層および表面保護層を有する記録材を用いた記録方法によれば、安定した濃度・色彩をもつコントラストの高い記録を行い得る。」

(ウ)「【0028】
本態様におけるレーザー発色性印刷インキ皮膜層は、顔料、染料または無機材料を含有する。ここで、顔料は有機顔料と無機顔料に大別される。

(中略)

【0031】
次に、無機顔料については白色顔料として、酸化チタン、塩基性硫酸鉛、酸化亜鉛、硫化亜鉛、酸化アンチモンがある。
無機顔料の中で体質顔料としては沈降性硫酸バリウム、炭酸バリウム、沈降性炭酸カルシウム、珪藻土、タルク、クレー、塩基性炭酸マグネシウム、アルミナホワイト等が挙げられる。
【0032】
無機顔料として、酸化チタン、硫化亜鉛、酸化亜鉛、沈降性硫酸バリウム、炭酸バリウム、沈降性炭酸カルシウムから選ばれる1種以上の顔料を用いると視認性の良好な印字物が得られる。とりわけ白色顔料として酸化チタンを使用し、レーザー発色性印刷インキ皮膜層を成す印刷インキの着色剤の一部、或いは全部として用いると視認性の優れた印字物が得られる。酸化チタンとしてはアナターゼ、ルチル型共に使用できる。」

(エ)「【0049】
本態様の記録材では、レーザー発色性印刷インキ皮膜層の上に更に直接、或いは間接的に表面保護層を設ける。好ましくは、少なくとも基材、レーザー発色性印刷インキ皮膜層および表面保護層の3層からなる積層構造にする。該表面保護層により印字時、使用中おいて印字面の剥離、飛散、摩耗等を防ぐことが可能となる。」

(オ)「【0051】
次に記録材の生産工程について説明する。レーザー発色性印刷インキ皮膜層を有する積層記録材の製造は、好ましくは1)レーザー発色性印刷インキ皮膜層用インキの調整、2)フイルム、紙などで構成される基材への印刷、3)表面保護層の形成により行われる。順次説明する。
【0052】
1)レーザー発色性印刷インキ皮膜層用インキの調整
無機材料などを含有しないインキをレーザー発色性印刷インキ被膜層に用いる場合、その製造、調整に特に制約はない。無機材料を印刷インキに添加、若しくは無機材料を主体とする印刷インキの製造についても一般のインキと同様な方法で調整、インキ化できる。
レーザー発色性印刷インキ皮膜層用インキにおける顔料、染料または無機材料の含有量は、印刷インキ全体の全成分量に対して5?90重量%が好ましい。

(中略)

【0057】
2)フイルム、紙などで構成される基材への印刷
本態様に用いられる基材としては、フイルム、紙が挙げられる。フイルムとしては低密度ポリエチレン、無延伸および延伸ポリプロピレン、ポリエステル、ナイロン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネイト、ポリビニルアルコールフイルム等、及びポリ塩化ビニリデン等をコーテイングしたポリプロピレン、ポリエステル、ナイロン、セロファン等のフイルムも挙げられる。また、蒸着フイルム、例えばシリカなどを蒸着したPETフイルムも用いることができる。紙としてはアート紙、コート紙、上質紙、和紙、合成紙等が使用できる。
基材の厚みは特に限定されない。プラスチックフイルムの場合、通常印刷に用いられるフイルムがそのまま適用できる。例えばPETの場合、12?40μm、OPPの場合は20?50μmが好適に用いられる。
【0058】
本態様において、印刷インキによるレーザー発色性印刷インキ皮膜層の形成はスクリーン印刷、フレキソ印刷、グラビア印刷で行うことが好ましい。印刷インキに溶剤を使用している場合、印刷後に乾燥機等により記録材を充分乾燥させる。

(中略)

上記の構成により得られた印刷物は基材と印刷インキ皮膜層からなる。レーザー発色性印刷インキ被膜層の厚みは特に限定されないが、好ましくは1?100μm/層である。1μm未満であると皮膜層が薄いことからレーザー発色濃度が低下し、視認性が劣る。100μmを超えると発色性は十分なものの皮膜層の強度(力学的特性)を得ることができない。
【0059】
3)表面保護層の形成
表面保護層を大別すると、1)レーザー発色性印刷インキ皮膜層上に表面保護層となる塗工液を塗布、乾燥する方法、2)レーザー発色性印刷インキ皮膜層上に、表面保護層となる塗工液を塗布、乾μ燥し、さらに紫外線照射などによる硬化で形成する方法、3)レーザー発色性印刷インキ皮膜層上に、表面保護層となるフイルムを直接、或いは接着剤層を介して貼り合わせる方法、などで形成することができる。
表面保護層の厚みは特に限定されないが、塗工液から形成する方法においては好ましくは1μm以上である。フイルムの貼り合わせで形成する場合は10μm以上が好ましい。

(中略)

【0065】
フイルムを用いて表面保護層を設ける場合、通常のラミネート、プリントラミネートなどに用いられるフイルム、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステルフイルム等を用いることができる。」

(カ)「【0071】
本態様においては、食品包装用、若しくは産業資材用として、印刷時に目的とする基材にレーザー発色性インキを印刷し使用に供される。食品包装用としては、通常の印刷インキと同様に使用することができる。例えば印刷時に所定の大きさに印刷し、必要に応じて更に同印刷部分に重ね刷りをする。次にラミネートし、食品の充填前、充填後、或いは更にボイル、レトルト等の工程後にレーザーによる印字ができる。産業資材用としては、例えば製品、部品用のラベル、タグがある。これらは製品、部品自体、或いはこれらの梱包体の一部に本態様の記録材を接着剤、或いは紐等を介して取り付ける方法である。また。梱包体の場合、予め梱包フイルムの一部、或いは全面に発色性インキを印刷し、更にラミネー加工トして梱包用に供すことが可能である。
【0072】
このようにして、例えば食品包装材、産業資材用の一部、或いは全面に記録することが可能な記録材として用いることができる。記録材には賞味期限、製造日時、ロット番号、流通識別番号等を個別に印刷することも可能となる。このようにレーザー発色層を有するラミネート物に本願の印字方法を適用することにより、従来の印刷物で問題となっていた印字の剥離、傷つきをなくすができ、また油、水分との接触による字のかすれを無くすることができる。
レーザーによる印字は、前述の賞味期限、製造日時、ロット番号、流通識別番号等を直接、英数字、ひらがな、漢字等で印字したり、或いは2次元バーコードとして、更に多量の各種情報を書き込むことも可能である。本態様の記録材は積層、ラミネート体の内部に書き込むため、多くの情報が消えることなく、保存、読み出し可能となる。2次元コードとしては、QR(モデル1)、QR(モデル2)、マイクロQR、DataMatrix等を書き込み、読み出しできる。」

(キ)「【0073】
次いで、本態様の記録方法について説明する。
レーザー発色性印刷インキ皮膜層および表面保護層を有する記録材に、レーザー照射すると層内等で酸化、分解、炭化等が起こり、記録材が発色する。
【0074】
レーザー光としては700?12,000nmの波長を有するものが好ましい。レーザーの発信媒体としては固体、気体、液体がある。また、発信方法としては連続発信(CW)、パルス発信がある。本願に好ましいレーザー光源は上記700?12,000nmの波長を有する物であれば特に、制限はない。本態様に好適に使用できるレーザーとしては、例えば炭酸ガスレーザー(10640nm)、YAGレーザー(1064nm)、YVO4レーザー(1064nm)等が挙げられる。
【0075】
更に好ましくはYVO4レーザーであり、レーザー光の強度分布がシングルモードのパワー分布であることからより精細な印字が可能となる。波長が700nmより小さい場合は発色性が劣り、印字性が乏しい。また、波長が12000nmより大きいと条件によっては表面保護層がダメージを受けやすく、視認性、耐溶剤性、耐水性等の低下が起こりやすい。」

イ 引用発明
上記記載事項(ア)に基づけば、引用文献1には、請求項1、4、11、13?15を引用する請求項17に係る記録方法の一態様として、次の発明が記載されていると認められる。
「顔料を含有し、かつ、波長700?12000nmに吸収を有するレーザー発色性印刷インキ皮膜層と、表面保護層とを有してなる記録材であって、顔料が酸化チタンであり、レーザー発色性印刷インキ皮膜層が、食品用の包装用積層体と一体となって形成されるものであって、レーザー発色性印刷インキ皮膜層が基材に印刷され、基材がプラスチックであり、表面保護層がプラスチックフイルムを用いた層である記録材に、YVO4レーザーを照射する記録方法。」(以下、「引用発明」という。)

(2)引用文献2
原査定の拒絶の理由に引用され、本願出願前に頒布された刊行物である特開2010-264691号公報(以下、「引用文献2」という。)には、次の記載事項がある。

ア 「【技術分野】
【0001】
本発明は、文字などの線画を非接触又は接触に描画する際の描画情報を生成する、情報処理装置、レーザ照射装置、描画情報生成方法、制御システム、プログラム、記憶媒体及び描画情報記憶装置に関する。」

イ 「【0091】
<S100:ストロークの分割・短縮>
図10に戻り、ストローク分割・短縮手段109は、距離がゼロの一対のストローク、端点とストロークの距離又は端点間の最短距離が文字の太さ以下の距離となった一対のストロークについて、一方のストロークを分割又は短縮する。一方のストロークとしたのは、どちらか一方の分割又は短縮することで重複を解消できるからである。
【0092】
どちらのストロークを、分割・短縮するかは次のルールにより決定する。
R1)分割・短縮することで一方のストロークのみが完全に消失する場合、他方のストロークを分割・短縮する。
R2)どちらのストロークも完全には消失しない、又は、どちらのストロークも完全に消失する場合、分割・短縮により消失するストローク長が短いほうを分割又は短縮対象とする(これは、消失長が短いほうが情報量の欠落が小さいとの考えに基づくものである。)。例えば、過度に短縮すると、接触しているべきストローク同士が離れてしまい、文字の品質は低下する。どの位置に新たな(分断・縮小された)ストロークの端点を決めるかは、ストロークの太さに依存する。
【0093】
図22は、分割・短縮されるストロークを模式的に説明する図の一例である。図22(a)は分割又は短縮する前のストロークにより描画された文字を示す。ストローク51の端点は(E,F)と(G,H)であり、ストローク52の端点は(G,H)と(J,K)であり、ストローク53の端点は(L,M)と(N,O)である。
【0094】
重複ストローク算出手段108は、ストローク51の端点(G,H)とストローク53の端点(L、M)との距離、ストローク52の端点(G,H)とストローク53の端点(L、M)との距離、がそれぞれ文字の太さ以下であることを検出する。なお、厳密には、ストローク51と52の端点(G,H)が一致するのでここでも重複すると判定されるが、このように交差の角度が小さい重複は後述するように無視できる。
【0095】
まず、ストローク分割・短縮105は、交点がないこと、及び、どちらを短縮しても一方のストロークのみが完全に消失しないので、ルールR2が適用されると判定する。このため、ストローク分割・短縮手段109は、仮に、ストローク51と52を両方とも短縮した場合と、ストローク53を短縮した場合とで、短縮量を比較する。
【0096】
図22(b)は、ストローク53を短縮して描画された文字の一例を、図22(c)は、ストローク51,52を短縮して描画された文字の一例を、それぞれ示す。重複ストローク算出手段108は、分割・短縮により消失するストローク長が短いほうを分割又は短縮対象とする。
【0097】
ストローク分割・短縮手段109は、ストローク53を短縮する場合の短縮量と、ストローク51、52をそれぞれ短縮する場合の短縮量を算出し、どちらを短縮するかを決定する。ストローク51とストローク53の重複量と、ストローク52とストローク53の重複量が等しい場合、ストローク53を短縮する場合は、「1×重複量」が短縮量になるのに対し、ストローク51、52を短縮する場合は、「2×重複量」が短縮量になる。したがって、ストローク53を短縮した方が、消失するストローク長が短い。
【0098】
ストローク分割・短縮手段109は、かかる計算に基づきストローク53を短縮すると決定する。短縮量は重複量と同じである。したって、ストローク分割・短縮手段109は、ストローク53の端点(L、M)を短縮量だけ短縮して、そのストローク53の短縮後の座標を決定する。
【0099】
図23は、分割・短縮されるストロークの別の例を模式的に説明する図の一例である。図23(a)は分割又は短縮する前のストロークにより描画された文字を示す。重複ストローク算出手段(正確にはストローク交点検出手段)108は、ストローク54とストローク55が交差することを検出する。
【0100】
このため、ストローク分割・短縮手段109は、ストローク54又は55のいずれかを分割又は短縮する。交点の場合は、分割することになる。
【0101】
まず、ストローク分割・短縮105は、仮に、両方のストロークをそれぞれ分割してみて、重複量だけ分割後のストロークを短縮した場合に、一方のストロークのみが完全に消失するか否かを判定する。
【0102】
図23(b)は、ストローク55を仮に分割して、重複量を短縮して描画された文字の一例を、図23(c)は、ストローク54を仮に分割して重複量を短縮して描画された文字の一例を、それぞれ示す。図23(b)に示すように、ストローク55を、ストローク54と重複しないように分割すると、ストローク55が完全に消失してしまう。したがって、図23の文字の場合、ルールR1が適用されるので、重複ストローク算出手段108は、ストローク54を分割対象とする。
【0103】
なお、完全に消失してしまうことは、ストローク55の端点(V,W)と交点(P,Q)の距離が、文字の太さより短いことから検出される。
【0104】
交差する場合、ストローク分割・短縮手段109は、交点をストロークの一方の端点としてストローク54を分割し、端点が(R,S)(P,Q)のストローク54aと端点が(P,Q)(T,U)のストローク54bを生成し、ストローク55との重複量を算出する。交差している場合、端点(P,Q)がストローク55と重複する重複量は文字の太さの半分と同じなので、特に算出することなく重複量を検出できる。短縮量は、短縮して移動した端点の広がりを考慮して文字の太さに等しい。
【0105】
したがって、ストローク分割・短縮手段109は、ストローク54を分割したストローク54aの2つの端点の座標を(R,S)(P、Q+太さ)に決定する。同様に、ストローク54を分割したストローク54bの2つの端点の座標を(P、Q-太さ)(T,U)に決定する。以上から、図23(c)のように、交差を解消した文字を描画することができる。
【0106】
このように、ストロークの分割・短縮を、重複がなくなる最低限度行うことで、文字の品質低下を最小限に抑制することができる。」
(合議体注:図22及び図23は、以下のとおりのものである。)


ウ 「【0173】
〔太文字の描画方法の適用例〕
平行ストローク発生手段105が発生させた平行ストロークから、ストローク除去手段107が、最も端の2つの平行ストロークのみを残して、除去することで、内部が塗りつぶされない太文字、又は、袋文字を描画することができる。
図32は、内部が塗りつぶされた太文字と、内部が塗りつぶされていない太文字を示す図の一例である。図32(a)では「3」という文字が3本の平行ストロークで太文字にされている。
【0174】
図32(a)の「3」から、中心部の平行ストロークを削除し、外側だけ残すことにより、内部が塗りつぶされていない太文字が描画される 。「3」の中心部のように折れ線部の角度が深いと、重複を解消することに伴い塗りつぶされない空白部が生じるが、中心部のストロークを削除することで意匠性が向上する。
【0175】
また、図32(b)において、さらに他と接続しない平行ストロークの端部(点線部)に、平行ストロークとは垂直の方向のストロークを新たに発生させることで、輪郭のみからなる「袋文字」を描画することができる。例えば、平行ストローク発生手段105は、他と接続しない平行ストロークの端部から、太文字の太さ程度の距離内に別の、他と接続しない平行ストロークの端部を検出する。そして、それぞれの端部から重複しないように離れた位置に、平行ストロークの座標を決定することで、平行ストロークの端部に、平行ストロークとは垂直の方向のストロークを新たに発生させることができる。
【0176】
以上説明したように、本実施例のレーザ照射装置200は、太文字のためにストロークを発生させ、さらに、レーザ光の太さを考慮して、重複又は断絶を解消するので、サーマルリライタブルメディア20を過熱せずにかつ優れた美観の太文字を描画できる。」
(合議体注:図32は、以下のとおりのものである。)


(3)引用文献3
原査定の拒絶の理由に引用され、本願出願前に頒布された刊行物である特開2011-148094号公報(以下、「引用文献3」という。)には、次の記載事項がある。

ア 「【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも表層、中間層及びシール層が積層してなる積層体に、レーザ光を照射して中間層の樹脂を炭化黒変させるレーザマーキング方法において、レーザ光が炭化黒変箇所に再照射しないフォントを用いることを特徴とする蓋用積層体へのレーザマーキング方法。」

イ 「【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る蓋用積層体へのレーザマーキング方法は、少なくとも表層、中間層及びシール層が積層してなる積層体に、レーザ光を照射して中間層の樹脂を炭化黒変させるレーザマーキング方法において、レーザ光が炭化黒変箇所に再照射しないフォントを用いることを行うことを特徴とする。

(中略)

【0008】
これら、レーザ光を用いて樹脂を炭化させ黒変させることによりマーキングができるが、下地が白であると黒変箇所とのコントラストが大きく、明瞭に表示させることができる。白色顔料としては二酸化チタンが用いられ、さらに一度黒変させた箇所に再度レーザ光を照射すると炭化が一気に加速され、ガスが発生して積層断面中に空洞が発生してしまう。そこでレーザ光が同じ場所に照射しない特別のフォントを用いることが肝要である。」

ウ 「【0014】
表層は、非晶質無延伸PET(APET)、延伸PET(OPET)、結晶性PET(CPET)、延伸PP(OPP)、無延伸PP(CPP)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、延伸Ny(ONy)、無延伸Ny(CNy)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、延伸PS(OPS)などが挙げられるものであれば特に限定されない。」

エ 「【0022】
シール層は、低密度ポリエチレン(LDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)のうちのいずれか、又はこれらの混合物で構成される層である。」

オ 「【実施例3】
【0036】
レーザ光が炭化黒変箇所に再照射しないフォントを図3の一例をもとに説明する。
説明のため数字1から4とアルファベットのml、DPJ、クロス部分を示す+の印字例としてレーザ光を照射する奇跡を白抜きで示した。レーザ光を照射した印字は白抜きのない文字である。Dと4と+にレーザ光が重なる部分を避ける箇所21の例を示した。
さらに説明すると
数字の「3」は上部の「つ」と下部の「つ」の重なりをなくすために下部の「つ」の書き出し位置を短くする。数字の「0」は書き出しと書き終わりがなく、連続しているため書き出し位置と書き終わりの位置が重なっていることから強調あるいは発泡してしまう。そこで、書き出し位置と書き終わりの位置をわずかに離すことにより解決させる。
同様にアルファベットの「m」は「l」「つ」「つ」とそれぞれの書き出しを短くして重なりをなくすことにより、解決ができる。
同様に「+」のようにクロスする場合は一方を切断分離する。すなわち「l」と「-」「-」に分離することにより重なりをなくすことができる。
他の文字、数字、記号はこれらを組み合わせて重なりや重複を防止するフォントを作成することによりガスの発生や強調を防止し、見た目のよい(文字)マーキングを提供することが可能とできる。これらのフォントはマーキング装置にて記憶させておくことで対応が可能である。」
(合議体注:図3は、以下のとおりのものである。)
【図3】


4 対比
本件補正発明と引用発明とを対比する。

(1)引用発明の「表面保護層」は、表面に設けられる層であって、「プラスチックフイルムを用いた層」であるから、本件補正発明の「表層」及び「表層フィルム」に相当する。

(2)引用発明は、「レーザー発色性印刷インキ皮膜層が、食品用の包装用積層体と一体となって形成されるもの」であるから、引用発明のレーザー発色性印刷インキ皮膜層が印刷される「基材」は「包装用積層体」であるといえる。そうすると、引用発明の「基材」は「層」状又は「フィルム」状の形状を有するものといえる。したがって、引用発明の「基材」と本件補正発明の「シール層」とは、「基材層」又は「基材層フィルム」である点で共通する。

(3)引用発明の「レーザー発色性印刷インキ皮膜層」は、顔料を含有するものであって、顔料が酸化チタンである。そうすると、引用発明の「レーザー発色性印刷インキ皮膜層」と本件補正発明の「酸化チタンを着色剤に用いた白色インキ層」とは、「酸化チタンを着色剤に用いたインキ層」である点で共通する。
そして、引用発明の「表面保護層」は、記録材の表面を保護する部材であって、レーザー発色性印刷インキ皮膜層が基材に印刷されて形成された包装用積層体の表面に位置するものである。そうすると、引用発明の「レーザー発色性印刷インキ皮膜層」は、「表面保護層」と「基材」の間に位置するものであることは明らかであるから、本件補正発明の表層フィルムとシール層フィルムで「サンドイッチされた」とする要件を満たしている。

(4)引用発明の「記録材」は、「表面保護層」、「レーザー発色性印刷インキ皮膜層」及び、「包装用積層体」からなる「基材」が積層されており、「食品用の包装用」として用いられるものである。したがって、引用発明の「記録材」は、本件補正発明の「包装フィルム」に相当する。

(5)引用発明の「記録材に、YVO4レーザーを照射する記録方法」は、本件補正発明の「YVO4レーザ光を照射」する「包装フィルムへのレーザマーキング方法」に相当する。

(6)以上より、本件補正発明と引用発明とは、
「少なくとも表層及び基材層が積層してなる包装フィルムに、レーザマーキングする方法において、表層フィルムと基材層フィルムでサンドイッチされた酸化チタンを着色剤に用いたインキ層を有し、フィルムとフィルムでサンドイッチされた酸化チタンを着色剤に用いたインキ層にYVO4レーザ光を照射する包装フィルムへのレーザマーキング方法。」である点で一致し、以下の点で相違する。
[相違点1]包装フィルムが、本件補正発明は、厚みが30μmから50μmであるのに対し、引用発明は厚みを特定していない点。
[相違点2]本件補正発明は、表層フィルムの主成分が、延伸PP(OPP)、無延伸PP(CPP)、延伸Ny(ONy)、あるいは無延伸Ny(CNy)であり、基材層がシール層であって、シール層フィルムの主成分が、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、あるいは無延伸ポリプロピレン(CPP)であるのに対し、引用発明は表面保護層の材質を特定しておらず、基材がシール層とされておらず、その材質を特定していない点。
[相違点3]本件補正発明は、インキ層の塗工量が0.1?5g/m^(2)であるのに対し、引用発明は、レーザー発色性印刷インキ皮膜の塗工量を特定していない点。
[相違点4]本件補正発明は、インキ層が白色であり、レーザ光を照射して黒変させるのに対し、引用発明は、インキ層の色及びレーザ光を照射した後の色を明らかにしていない点。
[相違点5]本件補正発明は、レーザ光が再照射しないフォントを用いるのに対し、引用発明はレーザ光が再照射しないフォントを用いていない点。

5 判断
(1)[相違点1]について
引用発明は、記録材の厚みを特定していないが、記録材の厚みをどの程度とするかは、記録材の用途やそれぞれの層が果たす機能に応じて当業者が適宜設定し得ることである。そして、引用文献1の記載事項(オ)には、「基材の厚みは特に限定されない。プラスチックフイルムの場合、通常印刷に用いられるフイルムがそのまま適用できる。例えばPETの場合、12?40μm、OPPの場合は20?50μmが好適に用いられる。」、「レーザー発色性印刷インキ被膜層の厚みは特に限定されないが、好ましくは1?100μm/層である。1μm未満であると皮膜層が薄いことからレーザー発色濃度が低下し、視認性が劣る。100μmを超えると発色性は十分なものの皮膜層の強度(力学的特性)を得ることができない。」、「表面保護層の厚みは特に限定されないが、塗工液から形成する方法においては好ましくは1μm以上である。フイルムの貼り合わせで形成する場合は10μm以上が好ましい。」との記載があり、厚みの下限を30μm程度とすることも示唆されているといえる。
したがって、引用発明において、記録材の厚みを30μm?50μmの範囲とすることは、当業者が適宜設計しうる事項である。また、本願の明細書の記載を参酌しても、そのような範囲としたことにより、臨界的な効果の差異が生じるとはいえない。

(2)[相違点2]について
引用文献1の記載事項(オ)には、基材として、フイルム、紙が挙げられ、フイルムとしては低密度ポリエチレン、無延伸ポリプロピレン等が挙げられること、フイルムを用いて表面保護層を設ける場合、通常のラミネート、プリントラミネートなどに用いられるフイルム、例えば、ポリプロピレン等を用いることができることが記載されている。そして、引用文献1の記載事項(カ)には、食品包装用として、印刷時に目的とする基材にレーザー発色性インキを印刷し使用に供されること、ラミネートし、食品の充填前、充填後、或いは更にボイル、レトルト等の工程後にレーザーによる印字ができることが記載されている。そして、ラミネートに用いる基材をシール層とすることも周知技術である。したがって、引用文献1の記載に基づき、表面保護層の主成分を低密度ポリエチレン、無延伸ポリプロピレン等とし、引用発明の基材を、主成分が低密度ポリエチレン、無延伸ポリプロピレン等からなるシール層とすることは、当業者が適宜なし得ることである。
また、引用文献3にも、記載事項ウに、表層を延伸PP(OPP)、無延伸PP(CPP)、延伸Ny(ONy)、無延伸Ny(CNy)などとすることが記載されており、記載事項エに、シール層を、低密度ポリエチレン(LDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)のうちのいずれかとすることが記載されている。当該記載に基づいて、引用発明の表面保護層と基材を、本件補正発明の相違点2に係る構成とすることは、当業者が容易になし得たことであるともいえる。

(3)[相違点3]について
引用文献1には、レーザー発色性印刷インキ皮膜の塗工量についての記載はないものの、記載事項(オ)には、「レーザー発色性印刷インキ被膜層の厚みは特に限定されないが、好ましくは1?100μm/層である。1μm未満であると皮膜層が薄いことからレーザー発色濃度が低下し、視認性が劣る。100μmを超えると発色性は十分なものの皮膜層の強度(力学的特性)を得ることができない。」と記載されており、インキ皮膜の厚みを、発色濃度と皮膜の強度に鑑みて調整することが記載されている。そして、発色濃度や皮膜の強度は、インキに含まれる顔料や樹脂の種類や割合に応じて異なるものの、インキ皮膜の厚みを調整することにより、塗工量も調整されることとなることは自明である。
したがって、引用発明において、発色濃度と皮膜の強度を好ましいものとなるように調整するため、レーザー発色性印刷インキ皮膜の塗工量を最適化し、その範囲を0.1?5g/m^(2)とすることは当業者が適宜なし得ることである。そして、本願の明細書の記載を参酌しても、そのような範囲としたことにより、臨界的な効果の差異が生じるとはいえない。

(4)[相違点4]について
引用文献1の記載事項(ウ)には、「無機顔料については白色顔料として、酸化チタン、塩基性硫酸鉛、酸化亜鉛、硫化亜鉛、酸化アンチモンがある。」と記載されており、酸化チタンは「白色顔料」とされている。したがって、顔料として酸化チタンを含有する引用発明のレーザー発色性印刷インキ被膜層は、白色のインキ層であるといえる。また、引用文献1の記載事項(キ)には、「レーザー発色性印刷インキ皮膜層および表面保護層を有する記録材に、レーザー照射すると層内等で酸化、分解、炭化等が起こり、記録材が発色する。」と記載されている。炭化等が起こることにより、一般に炭化黒変が生じることは技術常識であるといえる。したがって、[相違点3]は実質的な相違点ではないといえる。
また、仮に実質的な相違点であったとしても、例えば引用文献3の「ーザ光を用いて樹脂を炭化させ黒変させることによりマーキングができるが、下地が白であると黒変箇所とのコントラストが大きく、明瞭に表示させることができる。白色顔料としては二酸化チタンが用いられ、さらに一度黒変させた箇所に再度レーザ光を照射すると炭化が一気に加速され、ガスが発生して積層断面中に空洞が発生してしまう。」との記載に基づけば、白色顔料として二酸化チタンを含有する層にレーザ光を照射することにより黒変させることができることは従来より周知であったといえる。したがって、引用発明のインキ層を白色とし、レーザ光を照射した後を黒変させることは、当業者にとって自明である。

(5)[相違点5]について
引用文献2の記載事項イの「ストロークの分割・短縮を、重複がなくなる最低限度行う」ことにより得られた「図23(c)のように、交差を解消した文字」は、レーザ光が再照射しないフォントであるといえる。また、記載事項ウの図32(b)に示される、中心部のストロークを削除することで意匠性が向上した太文字も、「レーザ光の太さを考慮して、重複又は断絶を解消」した文字であるから、レーザ光が再照射しないフォントであるといえる。さらに、引用文献3にも、記載事項アに「レーザ光が炭化黒変箇所に再照射しないフォントを用いる」と記載されている。以上のとおり、レーザ光を用いてマーキングを行うにあたり、レーザ光が炭化黒変箇所に再照射しないフォントを用いることは周知技術であるといえる。
したがって、引用発明においても、周知のレーザ光が炭化黒変箇所に再照射しないフォントを採用することは、当業者が適宜なし得ることである。そして、その効果も、引用文献2や引用文献3の記載から自明のものである。

(6)請求人の意見について
審判請求人は、審判請求書において、「本願発明は、特殊なインキを用いることなく酸化チタンの発色を最適にするために、フィルムの成分、厚み、インキの塗工量を限定し、YVO4レーザーで再照射すると穴が開く程度までに酸化チタンを黒変させることによって、年齢を重ねた人でも情報が分かりやすい表示を実現したものであります。」とし、「引用文献2は複数の発色インクや無機材料の使用を前提とする発明であるため、実施例2の酸化チタンの発色を最適にするよう本願発明との相違点である複数の構成要素を調整しようとする動機づけが存在しない」と主張している。
しかし、前記(1)?(3)に記載したとおり、記録材の厚み、フィルムの成分、インキの塗工量を調整しようとする動機付けは存在する。そして、本願の発明の詳細な説明は、段落【0013】に、「表層は、延伸PP(OPP)、無延伸PP(CPP)、延伸Ny(ONy)、無延伸Ny(CNy)などが挙げられるものであれば特に限定されない。」と記載しており、段落【0014】に、「また、シール層としては、ヒートシール性のある直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、あるいは無延伸ポリプロピレン(CPP)などが挙げられる。」と記載されており、フィルムの成分が例示されているものの、各フィルムを特定の成分としたことと酸化チタンの発色との関係について何も記載していない。また、包装フィルムの厚みについても、段落【0028】に、「実施例に使用した包装用フィルム1の構成は表層11からOPP/印刷層/接着性CPPのシール層12構成で総厚みが30μmから50μmであった。」と記載するのみであり、包装フィルムの厚みの技術的意味やその効果について何ら記載していない。さらに、インキの塗工量については、段落【0019】に「白色の印刷層の塗工量は0.1g/m^(2)?5g/m^(2)、好ましくは1.0g/m^(2)?2.0g/m^(2)である。0.1g/m^(2)未満では効果を発揮することができない場合があるし、5g/m^(2)を超えて塗工しても、塗工量の増加に見合う効果は得られない。」と記載しているが、インク皮膜が薄い、つまり、塗工量が少ないと、レーザー発色濃度が低下し、インク皮膜が特定の値を超える、つまり、塗工量が特定の値を超えると、発色性は十分なものの皮膜層の強度を得ることができないことは、前記(3)に記載したとおり、引用文献1に記載された事項である。以上のとおりであるから、フィルムの成分、厚み、インキの塗工量を限定したことによる効果が、当業者が予測し得ない格別なものであるとする根拠を見いだせない。そして、本件補正発明は、YVO4レーザ光を照射して黒変させるものではあるが、「再照射すると穴が開く程度までに酸化チタンを黒変させる」と限定されてもいない。
よって、請求人の意見を採用することはできない。

(7)むすび
以上のとおり、本件補正発明は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

6 補正却下の決定のむすび
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。


第3 本件発明について
1 本件発明
本件補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1?4に係る発明は、平成29年5月26日付けの手続補正の特許請求の範囲の請求項1?4に記載された事項により特定されるとおりのものと認められ、その請求項1に係る発明(以下、「本件発明」という。)は、前記第2の1に記載したとおりのものである。

2 引用刊行物の記載及び引用発明
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献及びその記載事項は、前記第2の3に記載したとおりである。

3 対比・判断
本件発明は、本件補正発明における「包装フィルム」の厚みを「30μmから50μm」とする限定及び、「レーザ光」を「YVO4レーザ」とする限定を省いたものである。
そうすると、本件発明の構成要件をすべて含み、さらに限定を付加したものに相当する本件補正発明が、前記第2の5に記載したとおり、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明も同様の理由により、当業者が容易に発明をすることができたものである。

4 むすび
以上のとおり、本件発明は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、その他の請求項について検討するまでもなく、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2018-07-30 
結審通知日 2018-07-31 
審決日 2018-08-14 
出願番号 特願2016-29313(P2016-29313)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (B41M)
P 1 8・ 121- Z (B41M)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 野田 定文  
特許庁審判長 中田 誠
特許庁審判官 宮澤 浩
清水 康司
発明の名称 包装フィルムへのレーザマーキング方法、包装フィルム、及び包装体、並びにそれを容器とした容器詰め食品  
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