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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1344551
審判番号 不服2017-15405  
総通号数 227 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-11-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-10-17 
確定日 2018-09-27 
事件の表示 特願2016- 5828号「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 5月12日出願公開、特開2016- 73841号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成19年5月2日に出願した特願2007-121614号の一部を平成23年10月7日に新たな特許出願(特願2011-222551号)とし、さらにその一部を平成25年5月22日に新たな特許出願(特願2013-107718号)とし、さらにその一部を平成26年4月11日に新たな特許出願(特願2014-81769号)とし、さらにその一部を平成28年1月15日に新たな特許出願(特願2016-5828号)としたものであって、平成28年12月16日付けで拒絶の理由が通知され、平成29年2月14日に意見書及び手続補正書が提出されたところ、平成29年7月11日付けで拒絶査定がなされ、それに対して、平成29年10月17日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正がなされたものである。

第2 平成29年10月17日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成29年10月17日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由](補正の適否の判断)
1 本件補正の概要
本件補正は、特許請求の範囲を補正する内容を含んでおり、本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、
(補正前:平成29年2月14日付け手続補正)
「【請求項1】
始動口への遊技球の入賞を契機として大当たりの抽選を行う大当たり抽選手段と、当該大当たり抽選手段による抽選結果として、複数種類の演出図柄のなかから選択された所定の演出図柄を複数種類の変動パターンのなかから選択された所定の変動パターンで変動表示してから確定表示する演出図柄表示手段を有する遊技機であって、
前記演出図柄表示手段による演出図柄の変動表示中に遊技者の入力操作を受け付ける外部入力手段と、
前記外部入力手段で受け付けた入力操作に基づいて所定の効果音を発生させるか否かの効果音抽選を行う効果音抽選手段と、
当該効果音抽選手段で前記効果音抽選に当選したときに前記所定の効果音を発生する効果音発生手段とを備え、
前記効果音抽選手段は、前記演出図柄表示手段による演出図柄の変動表示中に前記外部入力手段の入力操作を受け付ける期間中に複数回の前記入力操作が可能で、前記期間中に複数回の前記入力操作がある際には、前記入力操作が増えた場合、前記効果音抽選の当選確率を上昇させ、かつ前記期間中に前記外部入力手段による入力操作に基づく前記効果音抽選に当選したときは、前記期間中であっても前記当選した後の前記外部入力手段の入力を無効とし、
前記演出図柄表示手段は、前記効果音発生手段から前記所定の効果音が発生されることに関連して、所定の演出を表示することを特徴とする遊技機。」
から、
(補正後:本件補正である平成29年10月17日付け手続補正)
「【請求項1】
始動口への遊技球の入賞を契機として大当たりの抽選を行う大当たり抽選手段と、当該大当たり抽選手段による抽選結果として、複数種類の演出図柄のなかから選択された所定の演出図柄を複数種類の変動パターンのなかから選択された所定の変動パターンで変動表示してから確定表示する演出図柄表示手段を有する遊技機であって、
前記演出図柄表示手段による演出図柄の変動表示中に遊技者の入力操作を受け付ける外部入力手段と、
前記外部入力手段で受け付けた入力操作に基づいて所定の効果音を発生させるか否かの効果音抽選を行う効果音抽選手段と、
当該効果音抽選手段で前記効果音抽選に当選したときに、前記複数種類の変動パターンのなかから選択された所定の変動パターンに応じて異なる態様の前記所定の効果音を発生する効果音発生手段とを備え、
前記効果音抽選手段は、前記演出図柄表示手段による演出図柄の変動表示中に前記外部入力手段の入力操作を受け付ける期間中に複数回の前記入力操作が可能で、前記期間中に複数回の前記入力操作がある際には、前記入力操作が増えた場合、前記効果音抽選の当選確率を上昇させ、かつ前記期間中に前記外部入力手段による入力操作に基づく前記効果音抽選に当選したときは、前記期間中であっても前記当選した後の前記外部入力手段の入力を無効とし、
前記演出図柄表示手段は、前記効果音発生手段から前記所定の効果音が発生されることに関連して、所定の演出を表示することを特徴とする遊技機。」
に補正された(下線は、補正箇所を明示するために当審で付した。)。

2 本件補正の適否
本件補正は、補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「効果音発生手段」が「発生」する「所定の効果音」に関して、「前記複数種類の変動パターンのなかから選択された所定の変動パターンに応じて異なる態様の」という限定がされていなかったところを、当該補正事項を追加して限定するものであり、また、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載された発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そして、本件補正は、【0073】の記載に基づくものであるから、新規事項を追加するものではないため、特許法第17条の2第3項に違反するところはない。

3 独立特許要件
そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について以下に検討する。

(1)本願補正発明
本願補正発明は、上記1の本件補正の概要において示した次のとおりのものである(A?Fは、本願補正発明を分説するため当審で付した。)。

「【請求項1】
A 始動口への遊技球の入賞を契機として大当たりの抽選を行う大当たり抽選手段と、当該大当たり抽選手段による抽選結果として、複数種類の演出図柄のなかから選択された所定の演出図柄を複数種類の変動パターンのなかから選択された所定の変動パターンで変動表示してから確定表示する演出図柄表示手段を有する遊技機であって、
B 前記演出図柄表示手段による演出図柄の変動表示中に遊技者の入力操作を受け付ける外部入力手段と、
C 前記外部入力手段で受け付けた入力操作に基づいて所定の効果音を発生させるか否かの効果音抽選を行う効果音抽選手段と、
D 当該効果音抽選手段で前記効果音抽選に当選したときに、前記複数種類の変動パターンのなかから選択された所定の変動パターンに応じて異なる態様の前記所定の効果音を発生する効果音発生手段とを備え、
E 前記効果音抽選手段は、前記演出図柄表示手段による演出図柄の変動表示中に前記外部入力手段の入力操作を受け付ける期間中に複数回の前記入力操作が可能で、前記期間中に複数回の前記入力操作がある際には、前記入力操作が増えた場合、前記効果音抽選の当選確率を上昇させ、かつ前記期間中に前記外部入力手段による入力操作に基づく前記効果音抽選に当選したときは、前記期間中であっても前記当選した後の前記外部入力手段の入力を無効とし、
F 前記演出図柄表示手段は、前記効果音発生手段から前記所定の効果音が発生されることに関連して、所定の演出を表示することを特徴とする遊技機。」

(2)引用文献に記載された事項
(2-1)引用文献1
平成28年12月16日付けの拒絶の理由で引用文献1として引用された、本願の出願遡及日前に頒布された特開2006-311962号公報(以下、「引用文献1」という。)には、次の事項が記載されている(下線は当審で付した。以下同様。)。

(ア)「【0013】
図1には、パチンコ機10の機表側が略示されており、機体の外郭をなす外枠11の開口前面側には、各種の遊技用構成部材をセットする縦長方形の中枠12が開閉及び着脱自在に組み付けられている。中枠12の前面側には、機内部に配置された遊技盤13を透視保護するための保護ガラスが装着されるガラス枠を備えた前枠14と、上球皿15がそれぞれ横開き状態で開閉可能に組み付けられている。前枠14の前面側及び遊技盤13の遊技領域13aには、点灯(点滅)又は消灯し、発光装飾に基づく遊技演出(発光演出)を行う装飾ランプ16が設けられている。外枠11の下部には、各種音声を出力し、音声出力に基づく遊技演出(音声演出)を行うスピーカ17が配置されている。中枠12の下部には、下球皿18及び発射装置19が装着されている。
【0014】
遊技盤13の遊技領域13aの略中央には、液晶ディスプレイ型の表示手段としての可変表示器Hを備えた表示装置20が配設されている。可変表示器Hでは、変動画像(又は画像表示)に基づく遊技演出(表示演出)が行われるようになっている。そして、可変表示器Hでは、複数種類の図柄を複数列で変動させて表示する図柄組み合わせゲーム(図柄変動ゲーム)が行われるようになっている。本実施形態では、図柄組み合わせゲームで3列の図柄による組み合わせを導出し、該組み合わせを形成する各列の図柄の種類を1?8の8種類の数字を模した図柄としている。
・・・
【0017】
また、本実施形態のパチンコ機10には、その機前面側(具体的に言えば、上球皿15の前面側中央)に遊技者が操作可能な演出用操作手段としての演出用ボタン25が設けられている。演出用ボタン25は、押しボタン式とされている。」

(イ)「【0023】
変動パターンは、図柄が変動を開始(図柄組み合わせゲームの開始)してから全列の図柄が確定停止表示(図柄組み合わせゲームの終了)される迄の間の遊技演出のベースとなるパターンを示すものである。変動パターンには、該変動パターン毎に、図柄組み合わせゲームの開始から終了迄の変動時間(演出時間)が定められている。また、複数種類の変動パターンは、大当り演出用の変動パターンと、はずれリーチ演出用の変動パターンと、はずれ演出用の変動パターンとに分類されている。大当り演出は、図柄組み合わせゲームが、最終的に大当りの図柄組み合わせを確定停止表示するように展開される演出である。はずれリーチ演出は、図柄組み合わせゲームが、リーチ演出を経て最終的にはずれの図柄組み合わせを確定停止表示するように展開される演出である。はずれ演出は、図柄組み合わせゲームが、リーチ演出を経ることなく、最終的にはずれの図柄組み合わせを確定停止表示するように展開される演出である。リーチ演出は、リーチが形成された後(リーチ表示された後)、大当りの図柄組み合わせ又ははずれの図柄組み合わせが導出される迄の間に行われる演出である。変動パターンには、図柄組み合わせゲームの演出内容が対応付けられている。このため、変動パターンの決定により、図柄組み合わせゲームの演出内容が決定されることになる。


(ウ)「【0031】
メインCPU26aは、始動入賞口22に遊技球が入賞し、始動口センサSE1からの検知信号を入力すると、RAM26cに記憶(設定)されている始動保留球の記憶数(以下、「保留記憶数」と示す)が予め定められた上限数(本実施形態では4)未満であるか否かを判定する。この判定結果が肯定(上限数未満である)の場合、メインCPU26aは、保留記憶数を1加算(+1)し、書き換える。また、メインCPU26aは、大当り判定用乱数の値と大当り図柄用乱数の値をRAM26cから読み出し、RAM26cの所定の格納領域に順次格納(記憶)する。保留記憶数は、保留中の図柄組み合わせゲームの回数を示すものである。なお、メインCPU26aは、図柄組み合わせゲームの開始時に保留記憶数を1減算(-1)し、書き換える。
【0032】
また、メインCPU26aは、図柄組み合わせゲームの開始直前に、RAM26cに格納されている前記大当り判定用乱数の値とROM26bに記憶されている大当り判定値とを比較して大当りか否かを判定(大当り判定)する。そして、メインCPU26aは、大当り判定の判定結果が肯定(大当り判定用乱数の値と大当り判定値とが一致)の場合、大当りを決定する。大当りを決定したメインCPU26aは、大当り判定用乱数の値とともにRAM26cに記憶した大当り図柄用乱数の値を読み出し、該値に予め対応付けられた図柄を大当り図柄として決定する。大当り図柄は、最終的に確定停止表示される大当りの図柄組み合わせ(最終的な大当り表示結果)を形成する図柄である。また、メインCPU26aは、変動パターン振分乱数の値を読み出し、該値に基づき大当り演出用の変動パターンP1?P4の中から1つの変動パターンを決定する。」

(エ)「【0041】
また、統括CPU27aは、再変動フラグに「1」が設定されている場合、図柄組み合わせゲームの開始後、所定時間の経過時に演出用ボタン25の操作が有効となる操作有効期間を設定する。詳しく言えば、統括CPU27aは、所定時間が経過すると、RAM27cに設定される操作有効期間設定フラグに「1」を設定するとともに、操作有効期間を設定したことを示す期間設定コマンドを表示制御基板28に出力する。操作有効期間設定フラグは、演出用ボタン25の操作が有効であるか否かを示すフラグである。また、統括制御プログラムには変動パターン毎の変動時間が定められており、統括CPU27aは、統括制御プログラムにしたがって図柄組み合わせゲームの開始とともに経過時間を計時する。そして、統括CPU27aは、再変動演出を行う変動パターン毎に定められたはずれの図柄組み合わせが一旦停止表示される迄の時間(所定時間)を計時すると、操作有効期間設定フラグの設定とともに期間設定コマンドを出力する。例えば、統括CPU27aは、変動パターン指定コマンドで指示される変動パターンが変動パターンP1の場合、時間TR1の経過時に操作有効期間設定フラグに「1」を設定するとともに期間設定コマンドを出力する。本実施形態では、統括CPU27aが、期間設定手段として機能する。
【0042】
また、統括CPU27aは、演出用ボタン25からの操作信号を入力したか否かを判定する。操作信号は、演出用ボタン25の操作時に該演出用ボタン25から出力される信号である。統括CPU27aは、操作有効期間設定フラグに「1」が設定されている場合に操作信号を入力すると、演出用ボタン25の操作を有効とする。そして、統括CPU27aは、大当りフラグに「1」が設定されている場合、大当り予告演出を行うか否かを抽選で決定する。一方、統括CPU27aは、大当りフラグに「0」が設定されている場合、大当り予告演出を行うか否かの抽選を行わない。以下、この抽選を「予告抽選」と示す。具体的に言えば、統括CPU27aは、予告抽選用乱数の値をRAM27cから読み出し、該値と予告判定値とを比較して予告抽選を行う。予告判定値は、図3に示すように変動パターンP1?P4毎の予告出現率に対応するように定められている。このため、統括CPU27aは、変動パターン指定コマンドで指示される変動パターンに対応する予告判定値をROM27bから読み出し、予告抽選を行う。予告判定値は、例えば、予告抽選用乱数の値が「0」?「9」までの全10通りの整数を取り得る場合、変動パターンP2であれば、全10個の数値の中から4個の値が定められ、予告出現率40%に対応している。本実施形態において統括CPU27aは、操作有効期間設定フラグに「1」が設定されている間、演出用ボタン25の操作を有効とし、予告抽選を行う。本実施形態では、統括CPU27aが、予告抽選手段として機能する。
【0043】
統括CPU27aは、操作信号の入力時に読み出した予告抽選用乱数の値と予告判定値が一致する場合、予告抽選に当選したので、大当り予告演出の実行を指示する予告実行指示コマンドを表示制御基板28に出力する。そして、統括CPU27aは、大当り予告演出が実行されるので、操作有効期間を終了させるために操作有効期間設定フラグに「0」を設定するとともに期間終了コマンドを表示制御基板28に出力する。すなわち、統括CPU27aは、大当り予告演出が実行される場合、以降、演出用ボタン25の操作を無効とする。」

(オ)「【0048】
再変動演出が行われる場合、サブCPU28aは、期間設定コマンドを入力すると、演出用ボタン25の操作を促す報知を行わせるように可変表示器Hに「PUSH」の文字画像IN(図5(d)に示す)を画像表示させる。そして、サブCPU28aは、予告実行指示コマンドを入力すると、キャラクタKY(図5(e)に示す)を画像表示させて大当り予告演出を行わせるとともに文字画像INを非表示させるように可変表示器Hを制御する。また、サブCPU28aは、期間終了コマンドを入力すると、文字画像INを非表示させるように可変表示器Hを制御する。サブCPU28aは、期間終了コマンドを入力する迄の間、文字画像INを継続表示させ、演出用ボタン25の操作を促す報知を継続させる。本実施形態では、サブCPU28aが、予告制御手段として機能する。また、本実施形態では、可変表示器Hが、報知手段及び予告手段として機能する。」

(カ)「【0054】
本実施形態では、再変動演出の開始後、最終的な大当りの図柄組み合わせ(又は最終的なはずれの図柄組み合わせ)が導出される迄の間、操作有効期間が設定されている。このため、予告抽選に落選した場合、可変表示器Hでは、図5(d)の状態が繰り返される。そして、図5(d)から図5(e)には、予告抽選に当選した場合に移行するので、当選する迄の間は演出用ボタン25を操作する毎に予告抽選が繰り返し行われる。したがって、大当り予告演出が行われるためには、演出用ボタン25を操作して遊技者自身で予告抽選に当選させる必要があり、大当り予告演出が出現しない場合には何度も演出用ボタン25を操作して予告抽選の抽選機会(抽選回数)を増加させる必要性が生じる。また、本実施形態では、操作有効期間が設定されても、演出用ボタン25を操作して予告抽選に当選しない限り、大当り予告演出が行われない。そして、演出用ボタン25を操作した場合と操作しなかった場合では、その途中に大当り予告演出が行われるか否かの相違のみで、再変動演出が開始してから最終的な大当りの図柄組み合わせ(又ははずれの図柄組み合わせ)が確定停止表示される迄の間は同一内容で図柄組み合わせゲームが進行する。すなわち、演出用ボタン25を操作した遊技者は、大当り予告演出を見られる機会(チャンス)があるとともに最終的な大当りの図柄組み合わせ(又ははずれの図柄組み合わせ)を見ることもできる。その一方で、演出用ボタン25を操作しない遊技者は、最終的な大当りの図柄組み合わせ(又ははずれの図柄組み合わせ)のみを見ることができる。」

(キ)「【0073】
なお、各実施形態は、以下のように変更しても良い。
・各実施形態において、予告抽選の当選確率、すなわち、大当り予告演出の出現率(予告出現率)を変更しても良い。また、演出用ボタン25の操作により予告抽選が行われる毎に、予告抽選の当選確率を変更しても良い。例えば、操作回数をカウントし、該カウント数の増加に伴って当選確率を高めても良い。
【0074】
・各実施形態において、大当り予告演出を行う予告手段を可変表示器Hに代えて他の装置に変更しても良い。例えば、装飾ランプ16やスピーカ17に変更しても良い。また、複数の装置を組み合わせて大当り予告演出を行っても良い。また、可変表示器Hにて大当り予告演出を行う場合、その大当り予告演出の内容(形態)を変更しても良い。例えば、「大当りだよ!」の文字を表示しても良い。」

以上の記載事項(ア)?(キ)から、以下の事項が導かれる。

(a)上記【0031】?【0032】には、「始動入賞口22に遊技球が入賞・・・前記大当り判定用乱数の値とROM26bに記憶されている大当り判定値とを比較して大当りか否かを判定(大当り判定)する」、「大当り判定の判定結果が肯定・・・の場合、大当りを決定・・・予め対応付けられた図柄を大当り図柄として決定」、「大当り図柄は、最終的に確定停止表示される大当りの図柄組み合わせ・・・を形成する図柄」、「大当り演出用の変動パターンP1?P4の中から1つの変動パターンを決定する」と記載されている。また、上記【0023】には「変動パターンは、図柄が変動を開始(図柄組み合わせゲームの開始)してから全列の図柄が確定停止表示(図柄組み合わせゲームの終了)される迄の間の遊技演出のベースとなるパターンを示す」、上記【0014】には、「可変表示器Hでは、複数種類の図柄を複数列で変動させて表示する図柄組み合わせゲーム(図柄変動ゲーム)が行われる」、上記【0013】には「パチンコ機10」と記載されている。
よって、引用文献1には、始動入賞口22に遊技球が入賞すると、大当り判定用乱数の値とROM26bに記憶されている大当り判定値とを比較して大当りか否かを判定し、判定結果として、複数種類の図柄から、予め対応付けられた図柄を、複数種類の変動パターンの中から決定された1つの変動パターンで変動を開始してから、確定停止表示する可変表示器Hを有するパチンコ機10が記載されている。

(b)上記【0017】には、「遊技者が操作可能な演出用操作手段としての演出用ボタン25」、上記【0041】には「図柄組み合わせゲームの開始後、所定時間の経過時に演出用ボタン25の操作が有効となる」と記載されているから、引用文献1には、図柄組み合わせゲームの開始後、所定時間の経過時に、遊技者が操作可能な演出用ボタン25が記載されている。

(c)上記【0042】には「統括CPU27aは、操作有効期間設定フラグに「1」が設定されている間、演出用ボタン25の操作を有効とし、予告抽選を行う」及び「操作信号は、演出用ボタン25の操作時に該演出用ボタン25から出力される信号である」と記載され、上記【0041】には「操作有効期間設定フラグは、演出用ボタン25の操作が有効であるか否かを示すフラグ」と記載され、上記【0043】には「操作信号の入力時に読み出した予告抽選用乱数の値と予告判定値が一致する場合、予告抽選に当選したので、大当り予告演出の実行を指示する」と記載され、上記【0048】には「予告実行指示コマンドを入力すると・・・大当り予告演出を行わせる」と記載されており、上記【0074】には、「大当り予告演出を行う予告手段を・・・スピーカ17に変更しても良い」と記載されているので、引用文献1には、演出用ボタン25の操作時に、スピーカ17によって大当り予告演出を行うか否かの予告抽選を行う統括CPU27aが記載されているといえる。

(d)上記(c)において検討したように、「操作信号の入力時に読み出した予告抽選用乱数の値と予告判定値が一致する場合、予告抽選に当選したので、大当り予告演出の実行を指示」し、「大当り予告演出を行う予告手段を・・・スピーカ17に変更しても良い」のであるから、引用文献1には、大当り予告演出を行うか否かの予告抽選に当選したときに、大当たり予告演出を行うスピーカ17が記載されているといえる。

(e)上記【0054】には、「再変動演出の開始後、最終的な大当りの図柄組み合わせ・・・が導出される迄の間・・・演出用ボタン25を操作する毎に予告抽選が繰り返し行われる」、上記【0073】には「演出用ボタン25の操作により予告抽選が行われる毎に、予告抽選の当選確率を変更しても良い。例えば、操作回数をカウントし、該カウント数の増加に伴って当選確率を高めても良い」と記載されており、また、【0043】には「予告抽選に当選したので・・・以降、演出用ボタン25の操作を無効とする」と記載されているので、引用文献1には、統括CPU27aは、再変動演出の開始後、最終的な大当りの図柄組み合わせが導出される迄の間、演出用ボタン25を操作する毎の予告抽選を繰り返し行う事が可能であり、操作回数をカウントし、該カウント数の増加に伴って予告抽選の当選確率を高め、かつ、予告抽選に当選した場合、以降、演出用ボタン25の操作を無効とすることが記載されているといえる。

(f)上記【0074】には、「大当り予告演出を行う予告手段を・・・スピーカ17に変更しても良い・・・複数の装置を組み合わせて大当り予告演出を行っても良い。」と記載されており、上記(d)において検討したように、「スピーカ17は」「大当り予告演出を行うか否かの予告抽選に当選したときに、大当たり予告演出を行う」のであり、上記【0013】には「パチンコ機10」と記載されているから、引用文献1には、大当たり予告演出を行う際に、スピーカ17を含む複数の装置を組み合わせて大当り予告演出を行うパチンコ機10が記載されていると言える。

以上の検討から、引用文献1には、次の発明が記載されていると認められる(以下、「引用発明1」という。a?fは引用発明1を分説するため当審で付した。)。

「a 始動入賞口22に遊技球が入賞すると、大当り判定用乱数の値とROM26bに記憶されている大当り判定値とを比較して大当りか否かを判定し、判定結果として、複数種類の図柄から、予め対応付けられた図柄を、複数種類の変動パターンの中から決定された1つの変動パターンで変動を開始してから、確定停止表示する可変表示器Hを有するパチンコ機10であって、
b 図柄組み合わせゲームの開始後、所定時間の経過時に、遊技者が操作可能な演出用ボタン25と、
c 演出用ボタン25の操作時に、スピーカ17によって大当り予告演出を行うか否かの予告抽選を行う統括CPU27aと、
d 大当り予告演出を行うか否かの予告抽選に当選したときに、大当たり予告演出を行うスピーカ17とを備え、
e 統括CPU27aは、再変動演出の開始後、最終的な大当りの図柄組み合わせが導出される迄の間、演出用ボタン25を操作する毎の予告抽選を繰り返し行う事が可能であり、操作回数をカウントし、該カウント数の増加に伴って予告抽選の当選確率を高め、かつ、予告抽選に当選した場合、以降、演出用ボタン25の操作を無効とし、
f 大当たり予告演出を行う際に、スピーカ17を含む複数の装置を組み合わせて大当り予告演出を行うパチンコ機10。」

(2-2)引用文献2
本願の出願遡及日前に頒布された特開2002-253812号公報(以下、「引用文献2」という。)には、次の事項が記載されている。

(ク)「【0019】
【発明の実施の形態】以下に、本発明の好適な実施例を図面に基づいて説明する。図1に示すように、本実施例のパチンコ機10は、大きくは長方形の外枠11と前面枠12とからなり、外枠11の左隣に公知のカードリーダ13が設けられている。前面枠12は、左端上下のヒンジ14により外枠11に対し回動可能に取り付けられている。前面枠12の下方には上皿15が設けられ、この上皿15に貸出釦16、精算釦17及び残高表示部18が設けられている。カードリーダ(プリペイドカードユニットともいう。)13のカード口19にプリペイドカードを挿入すると、記憶された残高が残高表示部18に表示され、貸出釦16を押下すると遊技球の貸出しが実行され上皿15の払い出し口より遊技球が排出される。」

(ケ)「【0056】前記ステップS300?S330の処理を実行することにより、当否判定結果、リーチの有無、時短の有無、及び各静止図柄が読み込まれると、続く処理では、これらの読み込まれたデータに従って基本変動パターンが決定される(ステップS340)。基本変動パターンの決定は、図11に示すように、ステップS340の処理に移行すると(STP1)、先ず、当否判定の結果により大当たり(STP2)又は外れ(STP3)に振り分けられる。外れの場合には、更に、リーチ有り(STP4)又はリーチ無し(STP5)に振り分けられる。大当たり(STP2)、外れ(STP3)のリーチ有り(STP4)又はリーチ無し(STP5)のいずれかに振り分けられると、各々について時短が有るか否かにより振り分けられる(STP6?STP11)。」

(コ)「【0072】前述のステップS612?S692においては、図19の一覧図表の通り図柄制御基板32b、ランプ制御基板34及び音制御基板35のそれぞれのROMに備えた各テーブルを使用する。即ち、主制御基板30から送信されてくる基本変動パターン1?9のそれぞれに対して、図柄制御基板32b、ランプ制御基板34及び音制御基板35において、それぞれ、同数のテーブルポインタが対応し、各ポイント値に対応して、複数の実行パターン(表示パターン、点灯パターン、音パターン)がそれぞれ整合を取りながら記憶されている。
・・・
【0075】次に第2の具体例の動作を説明する。まず、主制御基板30は、第1種始動口スイッチ36aのオンに応答して、9個の基本変動パターンからランダムに1つの基本変動パターンを選択し、該選択された基本変動パターンのデータをそれぞれ含む、画像表示コマンド、音コマンド、点灯コマンドをそれぞれ図柄制御基板32b、音制御基板35及びランプ制御基板34へ一方向に送信する。図柄制御基板32b、音制御基板35及びランプ制御基板34は、前記各コマンドを受信する毎に、選択された基本変動パターンに対して設定されている各々の実行パターンの整合を取りながら、それぞれ1つをテーブルポインタの更新によって順番に選択してゆく。即ち、主制御基板30から図柄制御基板32bへ送信された画像表示コマンドにより、基本的変動パターンをLCD32a側で受け取り、LCD32a内で表示パターンを決定し、予告等の演出を決めている。そのLCD32a側の表示パターンは、乱数等による抽選を使わずにテーブルポインタによって、予め設定された順番で表示を行う。それに伴い、音及びランプの制御も同様なテーブルに従って、表示内容にあわせた効果音、装飾光等の演出を同期して行う。例えば、主制御基板30が基本的変動パターン1が選択された場合、図柄制御基板32b、音制御基板35及びランプ制御基板34のテーブルポインタは同じ値、例えば、「0」が選択されると、表示パターン11、音パターン11、点灯パターン11が読み出され、それらに従って、LCD32aでは表示パターン11に従った画像の演出を、音制御基板35でも音パターン11に従った音の演出を、ランプ制御基板34も点灯パターン11に従った点灯の演出を行い、次の更新時基本的変動パターン1用のテーブルポインタの値は「1」が選択され、「2」「3」「0」「1」「2」「3」・・・の順で更新されて行く。また、主制御基板30がランダムに基本的変動パターンを選択することから、複数のテーブルポインタの更新はランダムなものとなり、例えば、前回、基本的変動パターン1のテーブルポインタが更新されても、次回は、必ずしも基本的変動パターン1のテーブルポインタが更新されるとは限らず、他の基本的変動パターンのテーブルポインタが更新されることもある。
【0076】以上説明した第2の具体例によれば、選択された基本的変動パターンに従って、画像と音と光の演出が同期して行われる上、各実行パターン毎に全く違った演出を違和感なく行え、しかも、内容面でも、画像と音と光の演出の調和の取れた演出が可能となる。また、各実行パターンの決定は、更新されたテーブルポインタにより行われる。これにより、第1の具体例と同様の効果を奏する他、テーブルポインタの値により大当たり予告、リーチ予告を図柄制御基板32bで指示実行することができ、この各予告に対して効果音及びランプ点灯の同期をとることができるという優れた効果を有する。即ち、同一の基本的変動パターンに対して制御の開始と終了の同期をとるだけでなく、制御の途中におけるキャラクタの突然の出現等に対して効果音及びランプ点灯の同期をとることができるのである。」

以上の記載事項から、以下の認定をすることができる。

(d’)上記【0056】には「当否判定結果・・・に従って基本変動パターンが決定され」と記載され、上記【0072】には「基本変動パターン1?9のそれぞれに対して・・・音制御基板35において・・・テーブルポインタが対応し、各ポイント値に対応して、複数の実行パターン(表示パターン、点灯パターン、音パターン)がそれぞれ整合を取りながら記憶されている」と記載され、上記【0075】には「図音制御基板35・・・基本変動パターンに対して設定されている各々の実行パターン」を「テーブルポインタの更新によって順番に選択してゆく」及び「音制御基板35でも音パターン11に従った音の演出を」行うと記載されている。また、上記【0076】には「各実行パターン毎に全く違った演出を違和感なく行」う、及び「内容面でも、画像と音と光の演出の調和の取れた演出が可能となる」と記載されており、音の演出について、各実行パターン毎に全く違った演出を行うに際して、それの演出において画像と音と光の演出の調和が取れるのであるから、各実行パターン毎に異なった音の演出がなされていることは明らかである。また、上記【0019】には「パチンコ機10」と記載されている。

したがって、引用文献2には、「演出で使われる音が、複数種類の基本変動パターンに対する複数の実行パターンの中から選択された基本変動パターン及び実行パターン毎に異なった態様である、パチンコ機10」(以下、「引用文献2記載事項」という。)が記載されているといえる。

(3)対比
本願補正発明と引用発明1とを対比する(対比の見出しとしての(a)?(f)は、引用発明1の分説構成及び本願補正発明を分説するために当審で付したA?Fと対応させた。)。

(a)引用発明1における、「始動入賞口22」及び「可変表示器H」は、それぞれ本願補正発明における「始動口」及び「演出図柄表示手段」に相当し、引用発明1における「大当り判定用乱数の値とROM26bに記憶されている大当り判定値とを比較して大当りか否かを判定」することは、本願補正発明における「大当たりの抽選を行う」ことに相当し、引用発明1における「判定結果として、複数種類の図柄から、予め対応付けられた図柄を、複数種類の変動パターンの中から決定された1つの変動パターンで変動を開始してから、確定停止表示する」ことは、本願補正発明における「抽選結果として、複数種類の演出図柄のなかから選択された所定の演出図柄を複数種類の変動パターンのなかから選択された所定の変動パターンで変動表示してから確定表示する」ことに相当するので、引用発明1における「始動入賞口22に遊技球が入賞すると、大当り判定用乱数の値とROM26bに記憶されている大当り判定値とを比較して大当りか否かを判定し、判定結果として、複数種類の図柄から、予め対応付けられた図柄を、複数種類の変動パターンの中から決定された1つの変動パターンで変動を開始してから、確定停止表示する可変表示器Hを有するパチンコ機10」は、本願補正発明における「始動口への遊技球の入賞を契機として大当たりの抽選を行う大当たり抽選手段と、当該大当たり抽選手段による抽選結果として、複数種類の演出図柄のなかから選択された所定の演出図柄を複数種類の変動パターンのなかから選択された所定の変動パターンで変動表示してから確定表示する演出図柄表示手段を有する遊技機」に相当する。

(b)引用発明1における「図柄組み合わせゲームの開始後、所定時間の経過時」は、本願補正発明における「前記演出図柄表示手段による演出図柄の変動表示中」に相当するので、引用発明1における「図柄組み合わせゲームの開始後、所定時間の経過時に、遊技者が操作可能な演出用ボタン25」は、本願補正発明における「前記演出図柄表示手段による演出図柄の変動表示中に遊技者の入力操作を受け付ける外部入力手段」に相当する。

(c)引用発明1における「スピーカ17によって大当り予告演出を行うか否かの予告抽選」を行うことは、本願補正発明における「所定の効果音を発生させるか否かの効果音抽選を行う」ことに相当するので、引用発明1における「演出用ボタン25の操作時に、スピーカ17によって大当り予告演出を行うか否かの予告抽選を行う統括CPU27a」は、本願補正発明における「前記外部入力手段で受け付けた入力操作に基づいて所定の効果音を発生させるか否かの効果音抽選を行う効果音抽選手段」に相当する。

(d)引用発明1における「大当り予告演出を行うか否かの予告抽選に当選したとき」は、本願補正発明における「当該効果音抽選手段で前記効果音抽選に当選したとき」に相当するので、引用発明1における「大当り予告演出を行うか否かの予告抽選に当選したときに、大当たり予告演出を行うスピーカ17」と、本願補正発明における「当該効果音抽選手段で前記効果音抽選に当選したときに、前記複数種類の変動パターンのなかから選択された所定の変動パターンに応じて異なる態様の前記所定の効果音を発生する効果音発生手段」とは、「当該効果音抽選手段で前記効果音抽選に当選したときに、」「前記所定の効果音を発生する効果音発生手段」であることにおいて共通する。

(e)引用発明1における「再変動演出の開始後、最終的な大当りの図柄組み合わせが導出される迄の間、演出用ボタン25を操作する毎の予告抽選を繰り返し行う事が可能であ」ることは、本願補正発明における「前記演出図柄表示手段による演出図柄の変動表示中に前記外部入力手段の入力操作を受け付ける期間中に複数回の前記入力操作が可能で」あることに相当し、
引用発明1における「操作回数をカウントし、該カウント数の増加に伴って予告抽選の当選確率を高め」ることは、本願補正発明における「前記入力操作が増えた場合、前記効果音抽選の当選確率を上昇させ」ることに相当し、引用発明1における「予告抽選に当選した場合、以降、演出用ボタン25の操作を無効と」することは、本願補正発明における「前記期間中に前記外部入力手段による入力操作に基づく前記効果音抽選に当選したときは、前記期間中であっても前記当選した後の前記外部入力手段の入力を無効と」することに相当するので、引用発明1における「統括CPU27aは、再変動演出の開始後、最終的な大当りの図柄組み合わせが導出される迄の間、演出用ボタン25を操作する毎の予告抽選を繰り返し行う事が可能であり、操作回数をカウントし、該カウント数の増加に伴って予告抽選の当選確率を高め、かつ、予告抽選に当選した場合、以降、演出用ボタン25の操作を無効と」することは、本願補正発明における「前記効果音抽選手段は、前記演出図柄表示手段による演出図柄の変動表示中に前記外部入力手段の入力操作を受け付ける期間中に複数回の前記入力操作が可能で、前記期間中に複数回の前記入力操作がある際には、前記入力操作が増えた場合、前記効果音抽選の当選確率を上昇させ、かつ前記期間中に前記外部入力手段による入力操作に基づく前記効果音抽選に当選したときは、前記期間中であっても前記当選した後の前記外部入力手段の入力を無効と」することに相当する。

(f)本願補正発明において、「効果音発生手段から前記所定の効果音が発生される」際に「前記演出図柄表示手段」が「所定の演出を表示」することは、引用発明1における「複数の装置」が「大当り予告演出を行う」ことに含まれるので、引用発明1における「大当たり予告演出を行う際に、スピーカ17を含む複数の装置を組み合わせて大当り予告演出を行うパチンコ機10」は、本願補正発明における「前記演出図柄表示手段は、前記効果音発生手段から前記所定の効果音が発生されることに関連して、所定の演出を表示する」と「前記効果音発生手段から前記所定の効果音が発生されることに関連して、複数の装置が所定の演出を行う遊技機」であることで共通する。

上記(a)?(f)の検討により、本願補正発明と引用発明1とは、

「A 始動口への遊技球の入賞を契機として大当たりの抽選を行う大当たり抽選手段と、当該大当たり抽選手段による抽選結果として、複数種類の演出図柄のなかから選択された所定の演出図柄を複数種類の変動パターンのなかから選択された所定の変動パターンで変動表示してから確定表示する演出図柄表示手段を有する遊技機であって、
B 前記演出図柄表示手段による演出図柄の変動表示中に遊技者の入力操作を受け付ける外部入力手段と、
C 前記外部入力手段で受け付けた入力操作に基づいて所定の効果音を発生させるか否かの効果音抽選を行う効果音抽選手段と、
D 当該効果音抽選手段で前記効果音抽選に当選したときに、前記所定の効果音を発生する効果音発生手段とを備え、
E 前記効果音抽選手段は、前記演出図柄表示手段による演出図柄の変動表示中に前記外部入力手段の入力操作を受け付ける期間中に複数回の前記入力操作が可能で、前記期間中に複数回の前記入力操作がある際には、前記入力操作が増えた場合、前記効果音抽選の当選確率を上昇させ、かつ前記期間中に前記外部入力手段による入力操作に基づく前記効果音抽選に当選したときは、前記期間中であっても前記当選した後の前記外部入力手段の入力を無効とし、
F 前記効果音発生手段から前記所定の効果音が発生されることに関連して、複数の装置が所定の演出を行う遊技機。」である点で一致し、以下の相違点1及び相違点2で相違する。

[相違点1](構成D)
本願補正発明は、「所定の効果音」が「前記複数種類の変動パターンのなかから選択された所定の変動パターンに応じて異なる態様の」ものであるのに対し、引用発明1では、このような特定はされていない点。

[相違点2](構成F)
本願補正発明は、「前記効果音発生手段から前記所定の効果音が発生されることに関連して」「演出図柄表示手段」が「所定の演出を表示する」のに対し、引用発明1においてはそのような特定はされていない点。

(4)判断
ア [相違点1](構成D)について
引用文献2記載事項の「複数種類の基本変動パターンに対する複数の実行パターンの中から選択された基本変動パターン及び実行パターン毎に異なった態様である」という構成は、本願補正発明の「複数種類の変動パターンのなかから選択された所定の変動パターンに応じて異なる態様の」という構成に相当することは明らかである。そして、引用発明1の「所定の効果音」は引用文献2記載事項の「演出で使われる音」に含まれていることも明らかである。
そして、引用発明1と引用文献2記載事項は、共に図柄変動ゲームを行うパチンコ機において、図柄変動に対し効果音等を用いて演出を行うものであって、その目的も「図柄組み合わせゲーム全体の演出内容にバリエーションを持たせることができ、興趣の向上を図ることが出来る(引用文献1【0072】)」、「複数の画像変動パターンに対して複数の音パターンを備え・・・画像と音とのパターンの調和を図り・・・遊技者に娯楽感あふれる弾球遊技機を提供する(引用文献2【0006】)」と同様のものであるので、引用発明1の予告抽選に当選したときに行う、演出で使われる音でもある、「前記所定の効果音」(効果音抽選に当選したときの効果音)に対して、引用文献2記載事項を適用し、上記相違点1に係る本願補正発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たものである。

イ [相違点2](構成F)について
引用発明1における「所定の演出を行う」「複数の装置」について、引用文献1の【0074】における「各実施形態において、大当り予告演出を行う予告手段を可変表示器Hに代えて他の装置に変更しても良い。例えば、装飾ランプ16やスピーカ17に変更しても良い。また、複数の装置を組み合わせて大当り予告演出を行っても良い。」との記載を参酌すると、「複数の装置」には、「可変表示器H」、「装飾ランプ16」及び「スピーカ17」が含まれる。そして、これらの演出のための複数の装置のうち、どの装置を用いて複数の装置の組み合わせとするかについては、当業者が適宜選択し得ることであって、大当り予告演出を、「スピーカ17」及び「可変表示器H」で行うこととし、上記相違点に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たものである。

ウ 本願発明が奏する効果について
上記相違点によって本願発明が奏する効果は、当業者が引用発明1及び引用文献2記載事項から予測し得る程度のものであって、格別のものではない。

(5)請求人の主張について
請求人は、平成29年10月17日付け意見書において、「補正後の請求項1に係る発明(以下、必要に応じて「本願補正発明」という)は、・・・ (b)効果音抽選に当選したときに、選択された変動パターンに応じて異なる態様の所定の効果音を発生するようにしたため、演出のバリエーションが増え、遊技性をより向上させることができる。
これに対し、・・・引用文献1には、本願補正発明の発明特定事項「当該効果音抽選手段で前記効果音抽選に当選したときに、前記複数種類の変動パターンのなかから選択された所定の変動パターンに応じて異なる態様の前記所定の効果音を発生する効果音発生手段」に対応する開示や示唆はありません。」と主張している。
確かに、請求人が主張するように、引用文献1には、「当該効果音抽選手段で前記効果音抽選に当選したときに、前記複数種類の変動パターンのなかから選択された所定の変動パターンに応じて異なる態様の前記所定の効果音を発生する効果音発生手段」に対応する開示や示唆は無い。しかしながら、上記「(4)判断 ア」で検討したように「複数種類の変動パターンのなかから選択された所定の変動パターンに応じて異なる態様の前記所定の効果音を発生する効果音発生手段」は、引用文献2に記載されていることであり、上記のとおり、引用発明1に引用文献2記載事項を適用し、上記相違点1に係る本願補正発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たものであるので、本願補正発明は、当業者が引用文献1及び引用文献2に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものである。

(6)まとめ
以上のように、本願補正発明は、当業者が引用文献1及び引用文献2に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。

4 補正却下の決定についてのむすび
上記3より、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正(平成29年10月17日付け手続補正)は上記第2のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成29年2月14日付け手続補正書により補正された、上記「第2[理由]1」で前述した特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである。
「【請求項1】
始動口への遊技球の入賞を契機として大当たりの抽選を行う大当たり抽選手段と、当該大当たり抽選手段による抽選結果として、複数種類の演出図柄のなかから選択された所定の演出図柄を複数種類の変動パターンのなかから選択された所定の変動パターンで変動表示してから確定表示する演出図柄表示手段を有する遊技機であって、
前記演出図柄表示手段による演出図柄の変動表示中に遊技者の入力操作を受け付ける外部入力手段と、
前記外部入力手段で受け付けた入力操作に基づいて所定の効果音を発生させるか否かの効果音抽選を行う効果音抽選手段と、
当該効果音抽選手段で前記効果音抽選に当選したときに前記所定の効果音を発生する効果音発生手段とを備え、
前記効果音抽選手段は、前記演出図柄表示手段による演出図柄の変動表示中に前記外部入力手段の入力操作を受け付ける期間中に複数回の前記入力操作が可能で、前記期間中に複数回の前記入力操作がある際には、前記入力操作が増えた場合、前記効果音抽選の当選確率を上昇させ、かつ前記期間中に前記外部入力手段による入力操作に基づく前記効果音抽選に当選したときは、前記期間中であっても前記当選した後の前記外部入力手段の入力を無効とし、
前記演出図柄表示手段は、前記効果音発生手段から前記所定の効果音が発生されることに関連して、所定の演出を表示することを特徴とする遊技機。」

2 原査定における拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項1に係る発明は、引用文献1に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

引用文献1:特開2006-311962号公報

3 引用文献1に記載された事項
原査定の平成28年12月16日付け拒絶理由に引用された本願出願遡及日前に頒布された引用文献1の記載事項及び引用発明の認定については、上記「第2[理由]3(2)」に記載したとおりである。

4 対比・判断
本願発明は、上記「第2[理由]1」で検討した本願補正発明から、「効果音発生手段」が「発生」する「所定の効果音」に関して、「前記複数種類の変動パターンのなかから選択された所定の変動パターンに応じて異なる態様の」という限定を付加した部分を削除したものである。
このような本願発明は、上記本願補正発明から、上記「第2[理由]3(3)」で示した本願補正発明と引用発明1の相違点である[相違点1]に関する構成を省いたものと言える。

そうすると、本願発明と引用発明1の相違点は[相違点2]のみとなり、当該[相違点2]については、上記「第2[理由]3(4)」に記載したとおり、当業者が容易に想到し得たものであるから、本願発明は、引用発明1に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

5 むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
したがって、他の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2018-07-23 
結審通知日 2018-07-24 
審決日 2018-08-14 
出願番号 特願2016-5828(P2016-5828)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (A63F)
P 1 8・ 121- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 藤澤 和浩最首 祐樹  
特許庁審判長 奥 直也
特許庁審判官 井海田 隆
▲高▼橋 祐介
発明の名称 遊技機  
代理人 竹沢 荘一  
代理人 竹ノ内 勝  
代理人 横堀 芳徳  

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