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審決分類 |
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 G03G 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G03G |
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管理番号 | 1344606 |
審判番号 | 不服2017-8710 |
総通号数 | 227 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2018-11-30 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2017-06-14 |
確定日 | 2018-10-16 |
事件の表示 | 特願2012-196239「画像形成装置」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 3月20日出願公開、特開2014- 52492、請求項の数(8)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成24年9月6日の出願であって、平成27年9月7日付けで手続補正がされ、平成28年6月24日付けで拒絶理由通知がされ、同年9月2日付けで手続補正がされ、平成29年2月28日付けで拒絶査定(原査定)がされ、これに対し、同年6月14日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正がされ、平成30年1月24日付けで拒絶理由通知がされ、同年3月30日付けで手続補正がされ、同年4月25日付けで拒絶理由通知がされ、同年6月29日付けで手続補正がされ、同年7月20日に前置報告がされたものである。 第2 本願発明 本願の請求項1乃至8に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」乃至「本願発明8」という。)は、平成30年6月29日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1乃至8に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1は以下のとおりの発明である。 「第1の感光体と、第2の感光体と、第1の静電潜像を形成するために前記第1の感光体を露光し、第2の静電潜像を形成するために前記第2の感光体を露光する露光装置とを有し、前記第1の感光体上の前記第1の静電潜像を現像して第1色の画像を形成し、前記第2の感光体上の前記第2の静電潜像を現像して第2色の画像を形成する画像形成手段と、 前記画像形成手段により形成された前記第1色の画像と前記第2色の画像とが転写される転写体と、 前記露光装置の第1の温度を検知する第一の温度検知手段と、 前記第一の温度検知手段と異なる位置に設けられ、第2の温度を検知する第二の温度検知手段と、 前記第一の温度検知手段と異なる位置に設けられ、第3の温度を検知する第三の温度検知手段と、 前記転写体に形成された測定用画像を測定する測定手段と、 色ずれ補正値を決定する決定手段と、 前記色ずれ補正値に基づき色ずれ補正を行う補正手段とを有し、 前記第一の温度検知手段と前記第三の温度検知手段との距離は、前記第一の温度検知手段と前記第二の温度検知手段との距離よりも遠く、 前記決定手段は、 前記測定手段の測定結果に基づいて第1の色ずれ補正値を決定する第1決定手段と、 前記第一の温度検知手段によって検知された現在の第1の温度と前記第三の温度検知手段によって検知された現在の第3の温度との差、前記第1決定手段により前記第1の色ずれ補正値が前回決定された際に前記第一の温度検知手段によって検知された第1の基準温度と前記第1決定手段により前記第1の色ずれ補正値が前回決定された際に前記第三の温度検知手段によって検知された第3の基準温度との差、前記第二の温度検知手段によって検知された現在の第2の温度と前記第三の温度検知手段によって検知された現在の第3の温度との差、及び、前記第1決定手段により前記第1の色ずれ補正値が前回決定された際に前記第二の温度検知手段によって検知された第2の基準温度と前記第1決定手段により前記第1の色ずれ補正値が前回決定された際に前記第三の温度検知手段によって検知された第3の基準温度との差に基づいて第2の色ずれ補正値を決定する第2決定手段と、を有し、 前記補正手段は、 前記第1決定手段により前記第1の色ずれ補正値が決定される場合、前記第1の色ずれ補正値に基づいて色ずれ補正を行い、 前記第2決定手段により前記第2の色ずれ補正値が決定される場合、前記第1決定手段により前回決定された第1の色ずれ補正値に前記第2決定手段により決定された前記第2の色ずれ補正値を加算した色ずれ補正値に基づいて色ずれ補正を行うことを特徴とするカラー画像形成装置。」 なお、本願発明2乃至8の概要は以下のとおりである。 本願発明2は、本願発明1を減縮した発明である。 本願発明3は、本願発明1又は2を減縮した発明である。 本願発明4は、本願発明1乃至3のいずれかを減縮した発明である。 本願発明5は、本願発明4を減縮した発明である。 本願発明6は、本願発明1乃至5のいずれかを減縮した発明である。 本願発明7は、本願発明1乃至3のいずれかを減縮した発明である。 本願発明8は、本願発明1乃至3のいずれかを減縮した発明である。 第3 引用文献、引用発明等 1.引用文献1について 原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願日前の平成21年7月2日に頒布された引用文献1(特開2009-145400号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている。 (1)「【特許請求の範囲】 【請求項1】 各種の画像形成ユニットによる画像形成処理により回転体に対して各色の位置ずれ測定用のパターン画像を形成して、当該パターン画像に基づいて主副走査方向の各色の位置ずれ量を検出して補正する位置ずれ補正処理を実行するタンデム方式のカラー画像形成装置において、 前記各画像形成ユニットの温度を検知する温度検知手段と、 前記温度検知手段で検知した前記各画像形成ユニットの温度に基づくものであって位置ずれの増加を予測可能な温度情報を指標として、位置ずれ量の検出の実行条件となる変化量判定値を指定する判定値指定手段と、 前記温度検知手段から取得した前記各画像形成ユニットの温度に基づく前記温度情報と、前回の前記位置ずれ補正処理の実行時の前記温度情報との変化量が前記変化量判定値を超えている場合、前記位置ずれ補正処理を実行すると判定する実行判定手段と、 を備えることを特徴とするカラー画像形成装置。 … 【請求項3】 前記温度情報は前記各画像形成ユニットの温度と室温との温度差であり、 前記判定値指定手段は、前記温度差と予め指定されたしきい温度との比較した結果に応じて前記変化量判定値を指定する、 ことを特徴とする請求項1記載のカラー画像形成装置。 … 【請求項7】 前記画像形成ユニットの1つは、像担持体上の静電潜像を現像する現像ユニットである、 ことを特徴とする請求項1ないし6のいずれか一記載のカラー画像形成装置。 【請求項8】 前記画像形成ユニットの1つは、前記回転体としての中間転写ユニットである、 ことを特徴とする請求項1ないし6のいずれか一記載のカラー画像形成装置。 【請求項9】 前記画像形成ユニットの1つは、画像データに応じた光を照射することによって像担持体上に静電潜像を形成する光書き込みユニットである、 ことを特徴とする請求項1ないし6のいずれか一記載のカラー画像形成装置。」 (2)「【技術分野】 【0001】 本発明は、タンデム方式のカラー画像形成装置およびプログラムに関する。」 (3)「【0027】 中間転写ベルト5は、無端状のベルトであって、複数のローラ10?13によって張架されており、ローラ10?13のいずれかの軸に連結されたモータM(図3参照)により一定速度で回動方向Aに駆動される。中間転写ベルト5および中間転写ベルト5の駆動部(モータMおよびローラ10?13など)により、中間転写ユニットが構成されている。このような中間転写ベルト5の上部側には、その中間転写ベルト5の回動方向Aに沿って、イエロー,シアン,マゼンダ,ブラックの各色用に4個の上述した感光体ドラム2Y,2C,2M,2Kを並列にそれぞれ配置している。」 (4)「【0030】 感光体ドラム2Y,2C,2M,2Kは、回転方向Bに回転駆動され、このとき帯電装置7Y,7C,7M,7Kによって感光体ドラム2Y,2C,2M,2Kの表面が所定の極性に帯電される。次いで、感光体ドラム2Y,2C,2M,2Kの帯電面に、LD、LED、EL等による光書き込みユニットである光ビーム走査装置16から画像データに応じたレーザ光が照射されることによって、感光体ドラム2Y,2C,2M,2Kに静電潜像が形成される。このようにして形成された静電潜像は、現像ユニット3Y,3C,3M,3Kにより各色のトナー像にそれぞれ現像されて可視像化される。」 (5)「【0036】 上述したような現像ユニット3Y,3C,3M,3K、中間転写ベルト5、光ビーム走査装置16などの各画像形成ユニットには、各画像形成ユニットの温度を検知する温度検知手段である温度センサ30(図6参照)が備えられている。」 (6)「【0064】 ここで、図8は位置ずれ補正処理の流れを概略的に示すフローチャートである。図8に示すように、各ユニットの温度を取得し(ステップS1)、判定値ΔTcの値を指定する(ステップS2)。次いで、前回実行時の温度と現在の温度との変化量ΔTmがΔTcを超えていると判断した場合(ステップS3のYes)、トナーパターンTPを中間転写ベルト5上に転写し(ステップS4)、位置ずれデータ(位置ずれの補正量)を算出し(ステップS5)、位置ずれを補正する(ステップS6)。 【0065】 一方、前回実行時の温度と現在の温度との変化量ΔTmがΔTcを超えていないと判定した場合には(ステップS3のNo)、位置ずれ補正は行わない。」 (7)上記(3)より、中間転写ベルトは中間転写ユニットを構成するといえる。 したがって、上記引用文献1には次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。 「各種の画像形成ユニットによる画像形成処理により回転体に対して各色の位置ずれ測定用のパターン画像を形成して、当該パターン画像に基づいて主副走査方向の各色の位置ずれ量を検出して補正する位置ずれ補正処理を実行するタンデム方式のカラー画像形成装置において、 前記各画像形成ユニットの温度を検知する温度検知手段と、 前記温度検知手段で検知した前記各画像形成ユニットの温度に基づくものであって位置ずれの増加を予測可能な温度情報を指標として、位置ずれ量の検出の実行条件となる変化量判定値を指定する判定値指定手段と、 前記温度検知手段から取得した前記各画像形成ユニットの温度に基づく前記温度情報と、前回の前記位置ずれ補正処理の実行時の前記温度情報との変化量が前記変化量判定値を超えている場合、前記位置ずれ補正処理を実行すると判定する実行判定手段と、 を備えるカラー画像形成装置であって、 前記温度情報は前記各画像形成ユニットの温度と室温との温度差であり、 前記判定値指定手段は、前記温度差と予め指定されたしきい温度との比較した結果に応じて前記変化量判定値を指定し、 前記画像形成ユニットの1つは、像担持体上の静電潜像を現像する現像ユニットであり、 前記画像形成ユニットの1つは、前記回転体としての中間転写ユニットであり、 前記画像形成ユニットの1つは、画像データに応じた光を照射することによって像担持体上に静電潜像を形成する光書き込みユニットであり、 現像ユニット、中間転写ユニットを構成する中間転写ベルト、光書き込みユニットである光ビーム走査装置などの各画像形成ユニットには、各画像形成ユニットの温度を検知する温度検知手段である温度センサが備えられている、カラー画像形成装置。」 2.引用文献2について 原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願日前の平成14年7月31日に頒布された引用文献2(特開2002-214858号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている。 (1)「【特許請求の範囲】 【請求項1】帯電器と、帯電器により帯電される感光体と、感光体に露光して電気潜像を形成する露光手段と、電気潜像に対して着色媒体であるトナーを供給する現像機と、電気潜像上に付着したトナーを感光体から中間転写体に転写し、更に紙やOHPなどのメディアに転写した後、定着器においてトナーを定着し、印刷画像を得る電子写真画像形成装置において、 各種構成部品に与える制御量に温度の因子を入れるとともに、温度を検知する温度検知手段を、メディアを収納する収納容器の脇に設置することを特徴とする電子写真画像形成装置。」 (2)「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、電子写真画像形成装置の温度センサにおいて、温度センサの設置場所及びその読みとり方法に関するものである。 【0002】 【従来の技術】電子写真画像形成装置において、各制御部品は演算手段であるマイコンやゲートアレイによって状態量が演算され、適切な制御を行うための制御量が与えられる。制御量の変わるものとして、感光体帯電電圧,現像バイアス電圧,感光体へ転写する第一転写電圧,紙へ転写する第二転写電圧,定着温度、そのほか各種制御量があるが、これらの制御量は外気温によって影響を受ける。これまで外気温を測定する外気温センサは、電源脇、もしくはモータ脇,パネル脇などの制御基板上に実装されていた。」 (3)上記(1)、(2)より、感光体帯電電圧,現像バイアス電圧,感光体へ転写する第一転写電圧,紙へ転写する第二転写電圧,定着温度、そのほか各種制御量が【請求項1】の各種構成部品に与える制御量に対応する。 したがって、上記引用文献2には次の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。 「帯電器と、帯電器により帯電される感光体と、感光体に露光して電気潜像を形成する露光手段と、電気潜像に対して着色媒体であるトナーを供給する現像機と、電気潜像上に付着したトナーを感光体から中間転写体に転写し、更に紙やOHPなどのメディアに転写した後、定着器においてトナーを定着し、印刷画像を得る電子写真画像形成装置において、 感光体帯電電圧,現像バイアス電圧,感光体へ転写する第一転写電圧,紙へ転写する第二転写電圧,定着温度、そのほか各種制御量に温度の因子を入れるとともに、温度を検知する温度検知手段を、メディアを収納する収納容器の脇に設置する電子写真画像形成装置。」 3.引用文献3について 原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願日前の平成21年6月25日に頒布された引用文献3(特開2009-139644号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている。 (1)「【特許請求の範囲】 【請求項1】 光源から出射される光ビームを色毎に設けられた複数の結像光学系を介して光走査する光走査手段と、 色毎に並べられた複数の画像形成媒体上を前記光走査手段によって走査して光書き込みを行い、各画像形成媒体毎に異なる色の画像を形成し、各色画像を重畳して複数色の画像を形成する画像形成手段と、 各色の位置ずれ測定用パターンを発生させ、各色間の位置ずれを測定し、測定した位置ずれ量から補正ずれ量を計算し、補正するずれ量補正手段と、 を有する画像形成装置において、 前記複数の結合光学系のうち、各色間のずれを測定する際の基準となる基準色ステージに対し、環境変化に応じた他のステージの作像色とのずれ量を予め測定して得られたずれ量データを格納したずれ量テーブルと、 前記環境変化を検出する検出手段と、 を備え、 前記ずれ量補正手段は、 前記各色の位置ずれ測定用パターンを発生させて、前記測定、計算及び補正を行う第1のモードと、 前記ずれ量テーブルを参照し、前記検出手段の検出結果に対応するずれ量を前記ずれ量テーブルから取得し、当該取得されたずれ量に基づいてずれ量を補正する第2のモードと、 を有することを特徴とする画像形成装置。 … 【請求項5】 請求項1記載の画像形成装置において、 前記ずれ量補正手段は、一定の環境変化に応じ前記第1のモードによるずれ補正処理を実行し、前記一定の環境変化より小さい環境変化に対しては前記第2のモードによる補正処理を実行することを特徴とする画像形成装置。」 (2)「【技術分野】 【0001】 本発明は、複数色を重畳して画像形成を行う画像形成装置に係り、特に光ビーム書き込み系を使用して色毎に画像を書き込むエンジンを有するプリンタ、複写機、FAX等の画像形成装置に関する。」 (3)「【0033】 図11及び図17の特性から分かるように、基準が端部の場合はもう一方の端部が、基準が真中付近の場合は両方の端部がずれ量が大きくなる傾向になるため、補正回数を多くしてずれを補正することによってずれを目立たなくすることができる。その際、基準から離れた作像ステージは予め環境変化についてステップを細かくとってテーブルを作成するとよい。図18は、テーブルを参照して色ずれ補正するときの簡略な制御手順を示すフローチャートである。この制御手順では、光学系について温度モニタによる監視結果に基づいてテーブルを用いた補正を行っている。具体的には、温度センサ8により装置内温度をモニタし、前回モニタしたときと温度差がt以上大きくなると(ステップS201-Y)、現在の温度に対応した補正値をテーブル21aから導き(ステップS202)、現在のずれ量に前記テーブル21aから導いた補正値を加算し(ステップS203)、ずれを補正する。なお、図18のフローチャートでは、検出された現在の温度に基づいてずれ量を補正しているが、環境変化のパラメータとして温度の他に湿度を用いることもできる。この場合も、湿度と対応した補正値を記憶したテーブルを参照することにより、図18のフローチャートで示した手順で色ずれの補正を行う。」 (4)上記(1)、(3)より、装置内温度は、【請求項1】の環境に対応し、装置内温度をモニタする温度センサは、【請求項1】の環境変化を検出する検出手段に対応する。 したがって、上記引用文献3には次の発明(以下、「引用発明3」という。)が記載されていると認められる。 「光源から出射される光ビームを色毎に設けられた複数の結像光学系を介して光走査する光走査手段と、 色毎に並べられた複数の画像形成媒体上を前記光走査手段によって走査して光書き込みを行い、各画像形成媒体毎に異なる色の画像を形成し、各色画像を重畳して複数色の画像を形成する画像形成手段と、 各色の位置ずれ測定用パターンを発生させ、各色間の位置ずれを測定し、測定した位置ずれ量から補正ずれ量を計算し、補正するずれ量補正手段と、 を有する画像形成装置において、 前記複数の結合光学系のうち、各色間のずれを測定する際の基準となる基準色ステージに対し、装置内温度変化に応じた他のステージの作像色とのずれ量を予め測定して得られたずれ量データを格納したずれ量テーブルと、 前記装置内温度をモニタする温度センサと、 を備え、 前記ずれ量補正手段は、 前記各色の位置ずれ測定用パターンを発生させて、前記測定、計算及び補正を行う第1のモードと、 前記ずれ量テーブルを参照し、前記検出手段の検出結果に対応するずれ量を前記ずれ量テーブルから取得し、当該取得されたずれ量に基づいてずれ量を補正する第2のモードと、 を有し、 前記ずれ量補正手段は、一定の装置内温度変化に応じ前記第1のモードによるずれ補正処理を実行し、前記一定の装置内温度変化より小さい装置内温度変化に対しては前記第2のモードによる補正処理を実行する、画像形成装置。」 4.引用文献4について 前置報告で引用され、本願の出願日前の平成18年11月9日に頒布された引用文献4(特開2006-308988号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている。 (1)「【特許請求の範囲】 【請求項1】 複数色の画像を形成し重ね合わせた際の該各色画像間に生じた画像形成位置のずれを補正するカラー画像形成装置において、 カラー画像形成装置内の温度を検出する温度検出手段と、 前記画像形成位置のずれ量を検出するずれ量検出手段と、 前記ずれ量検出手段により検出されたずれ量と前記温度検出手段により検出された温度との相関データを求める相関データ取得手段と、 ずれ調節手段とを備え、 前記ずれ調節手段は、前記温度検出手段により検出されたカラー画像形成装置内の温度と前記相関データに基づいて該画像形成位置のずれを補正することを特徴とするカラー画像形成装置。 … 【請求項6】 カラー画像形成装置の電源投入後の所定のタイミングで前記温度検出手段により該カラー画像形成装置内の温度を検出して基準温度とし、この基準温度からの前記温度検出手段により検出された温度の変化分を求めており、 前記相関データは、前記ずれ量検出手段により検出されたずれ量と前記温度の変化分との相関データであることを特徴とする請求項1に記載のカラー画像形成装置。 【請求項7】 前記ずれ量検出手段は前記基準温度の設定のときに画像形成位置のずれ量を検出し、 前記ずれ調節手段は、前記基準温度の設定のときに、前記ずれ量検出手段により検出されたずれ量に基づいて画像形成位置を補正することを特徴とする請求項6に記載のカラー画像形成装置。」 (2)「【技術分野】 【0001】 本発明は、デジタルカラー複合機やカラーレーザープリンタ等の電子写真方式の画像形成装置に関するものであり、詳しくは、複数色の画像を形成し重ね合わせて、カラー画像を形成するカラー画像形成装置に関する。」 (3)「【0067】 このときの画像のずれの補正の概略は、各色のテストパターン58B、58Y、58M、58Cを転写ベルト11上に形成し、黒のテストパターン58Bの副走査方向位置を基準位置とした上で、他の各色のテストパターン58Y、58M、58C別に、この基準位置に対するテストパターンの規定位置からの副走査方向のずれ量を検出し、このずれ量を解消するための副走査方向のシフト量(ドット数)を求め、このドット数だけ画像形成位置がずれる様なレーザダイオード変調制御の開始タイミングを設定するというものである。」 (4)「【0091】 また、制御部57は、記録用紙の印刷を行わない状態が一定時間継続して(ステップS103で「No」)、カラー画像形成装置が待機状態になると、待機中処理を実行する。 【0092】 この待機中処理において、まず、制御部57は、該制御部57に内蔵のタイマー(図示せず)を参照して、タイマーにより計時されている年月日がカラー画像形成装置に固有の相関データテーブルを作成するための規定期間であるか否かを判定する(ステップS501)。そして、計時されている年月日が規定期間でなければ(ステップS501で「No」)、次の処理に移ることなく、図6のステップS103に戻る。 【0093】 尚、ステップS501においては、年月日が規定期間であるか否かの判定だけではなく、後で述べる様にカラー画像形成装置に固有の相関データテーブルを求めるための処理も行われる。 【0094】 計時されている年月日が規定期間であれば(ステップS501で「Yes」)、制御部57は、温度センサ54の検出出力を取り込んで、この検出出力により示される装置内の温度を求め、基準温度Tからの温度変化分Δtを求める(ステップS502)。 【0095】 そして、制御部57は、調整用画像データを記憶部56から読み出し、この調整用画像データに応じて各レーザーダイオード31a?31dを変調制御して、各感光体ドラム23a?23d表面にそれぞれの静電潜像を形成し、各現像ユニット21a?21dにより各感光体ドラム23a?23d表面の静電潜像を現像させて、各感光体ドラム23a?23d表面にそれぞれの色のテストパターンを形成し、各感光体ドラム23a?23d表面の各色のテストパターンを転写ベルト11に転写させて、各色のテストパターン58B、58Y、58M、58Cを転写ベルト11上に形成する(ステップS503)。 【0096】 ただし、ステップS503においては、図6のステップS102における各色の画像のずれが補正されたときと同じ条件で、つまり各レーザダイオード変調制御の開始タイミングを変更せずに、各色のテストパターン58B、58Y、58M、58Cを転写ベルト11上に形成する。これは、ステップS102における基準温度Tでの画像形成位置を基準にして、基準温度Tからの温度変化分Δtがあったときの各色の画像のずれ量を検出するためである。 【0097】 次に、制御部57は、レジストセンサ55の検出出力を取り込んで、各色のテストパターンの副走査方向位置を求め(ステップS504)、黒のテストパターン58Bの副走査方向位置を基準位置とした上で、他の各色のテストパターン58Y、58M、58C別に、この基準位置に対するテストパターンの規定位置からの副走査方向のずれ量を求め、更に該ずれ量を解消するための副走査方向のシフト量(ドット数)を求める(ステップS505)。 【0098】 そして、制御部57は、他の各色であるシアン、マゼンタ、イエロー別に、ステップS502で求めた温度変化分ΔtとステップS505で求めたシフト量とを記憶部56に記憶する(ステップS506)。」 したがって、上記引用文献4には次の発明(以下、「引用発明4」という。)が記載されていると認められる。 「複数色の画像を形成し重ね合わせた際の該各色画像間に生じた画像形成位置のずれを補正するカラー画像形成装置において、 カラー画像形成装置内の温度を検出する温度検出手段と、 前記画像形成位置のずれ量を検出するずれ量検出手段と、 前記ずれ量検出手段により検出されたずれ量と前記温度検出手段により検出された温度との相関データを求める相関データ取得手段と、 ずれ調節手段とを備え、 前記ずれ調節手段は、前記温度検出手段により検出されたカラー画像形成装置内の温度と前記相関データに基づいて該画像形成位置のずれを補正し、 カラー画像形成装置の電源投入後の所定のタイミングで前記温度検出手段により該カラー画像形成装置内の温度を検出して基準温度とし、この基準温度からの前記温度検出手段により検出された温度の変化分を求めており、 前記相関データは、前記ずれ量検出手段により検出されたずれ量と前記温度の変化分との相関データであり、 前記ずれ量検出手段は前記基準温度の設定のときに画像形成位置のずれ量を検出し、 前記ずれ調節手段は、前記基準温度の設定のときに、前記ずれ量検出手段により検出されたずれ量に基づいて画像形成位置を補正するカラー画像形成装置。」 5.引用文献5について 前置報告で引用され、本願の出願日前の平成21年6月25日に頒布された引用文献5(特開2009-139709号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている。 (1)「【特許請求の範囲】 【請求項1】 カラー画像を形成するための各色に対応した複数の感光体と、前記複数の感光体にレーザ光を照射するための複数の光学素子と、プリント動作を行うプリントモード及び待機中であるスタンバイモードを含む複数の動作モードと、を備え、機内の熱の影響により前記光学素子のレーザ光照射位置のずれ量が除々に変化する画像形成装置であって、 前記複数の動作モードの少なくとも1つの動作モードにおける経時変化に伴い前記各色間のレーザ光照射位置のずれ量が除々に大きくなり、更なる経時変化に伴い前記各色間のレーザ光照射位置のずれ量が除々に小さくなり、更なる経時変化に伴い前記各色間のレーザ光照射位置のずれ量が収束する、レーザ光照射位置の経時変化に伴うずれ量を演算により求めるずれ量演算手段を備え、 前記ずれ量演算手段により求められた前記ずれ量に基づき、色ずれ補正が行われることを特徴とする画像形成装置。 【請求項2】 前記ずれ量演算手段は、前記画像形成装置における第1の熱影響における温度変化に伴うずれ量と、前記画像形成装置における第2の熱影響における温度変化に伴うずれ量と、に基づき、前記複数の動作モードのいずれかの単一の動作モードでの前記レーザ光照射位置の経時変化に伴うずれ量を演算により求めることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。 … 【請求項4】 前記第1の熱影響と前記第2の熱影響における温度変化の度合いを評価するために機内に設けられ、前記機内の環境条件を検出する複数の環境検出手段を備え、 前記ずれ量演算手段は、前記複数の環境検出手段により検出された結果の差分に基づき、前記レーザ光照射位置の経時変化に伴うずれ量を演算により求めることを特徴とする請求項2に記載の画像形成装置。 【請求項5】 排紙部と前記光学素子を含む光学ユニットとの間に空気を流すことにより冷却するファンを備え、 前記複数の環境検出手段は、複数の温度検出手段であり、 前記複数の温度検出手段の1つは、前記排紙部と前記光学ユニットとの間で、且つ、前記排紙部からの熱を含んだ空気であって前記ファンにより流された空気の熱を検出すべく前記ファンによる空気の流れの下流側に配置されることを特徴とする請求項4に記載の画像形成装置。」 (2)「【技術分野】 【0001】 本発明は、画像形成装置、色ずれ補正方法及びプログラムに関するものである。特に、画像形成装置におけるレーザ光照射位置に係るずれ量を予測する仕組みに関するものである。」 (3)「【0077】 まず、2つの温度センサ(複数の環境検出手段、複数の温度検出手段)の配置について述べる。図9に断面を示す通り、排紙トレイ27と第一スキャナ10aの近接エリア50近傍に、第一温度センサ51を配置するとともに、この近接エリア50から離れた位置に、第二温度センサ52を配置した。第一温度センサ51は、この近接エリア50(図中、斜線部)の周辺温度を検出し、第二温度センサ52は、第一スキャナ10a及び第二スキャナ10bが配置されている空間の平均的な雰囲気温度を検出する。 【0078】 また図12に上視図を示すように、第一スキャナ10a、第二スキャナ10bの配置された空間には、排紙トレイ27からの熱影響を緩和(低減)する目的で、第一スキャナ10aと排紙トレイ27の間に、断熱用のエアフロー58(空気の流れ)が設けられている。そして、第一温度センサ51は、排紙トレイ27上のシート積載エリアの幅方向中央55(シートが移動する方向とは垂直の方向)に対して、エアフロー58の下流側に配置されている。本体奥側の冷却ファン54(ファン)によってスキャナエリアへ送られた断熱エアは、第一温度センサ51に到達するまでの間に、排紙トレイ27の裏面に沿って、画像幅方向と略平行に流れる。この際、排紙トレイ27に積載されるシートのサイズや、その積載状態に応じて、断熱エアが排紙トレイ27から受ける熱量が変化し、第一温度センサ51の検出温度に差が生じる。例として、図11(a)の測定条件における第一温度センサ51と第二温度センサ52の出力を、図13に示す。図13(a)が排紙トレイ27上に出力紙を放置した場合、図13(b)が出力紙を除去した場合の結果を示している。 【0079】 第二温度センサ52の検出温度は、画像形成装置の機内昇温分も含んだスキャナエリアの平均的な雰囲気温度なのに対し、第一温度センサ51の検出温度は、そのスキャナエリアの雰囲気温度に排紙トレイ27から受ける熱影響を加味した温度だと言える。つまり、第一温度センサ51の検出温度のみを監視しているとどんどん上昇してしまうが、第一温度センサ51と第二温度センサ52の両方の検出温度を監視することで次のようなことがわかる。すなわち、2つの検出結果の差分をとることで、第一温度センサ51のみの上昇がわかり、その後、第二温度センサ52と同じ温度になることを監視できる。よって、両者の温度差を求めることで、第一スキャナ10aが排紙トレイ27から受け取る熱影響の度合いを抽出することができる。両温度センサの温度差をdTと定義する。」 (4)「【0104】 熱的外乱への対応という観点では、実施例2において、排紙トレイ27上の出力紙から受ける熱影響を例に挙げ、スキャナエリアに設けた2つの温度センサ51,52の温度差(dT)を演算アルゴリズムにフィードバックする例を示した。しかし、本発明はこの実施形態に限定されるものではない。温度センサの数は任意であるとともに、その配置場所も本発明で制限するものではない。」 したがって、上記引用文献5には次の発明(以下、「引用発明5」という。)が記載されていると認められる。 「カラー画像を形成するための各色に対応した複数の感光体と、前記複数の感光体にレーザ光を照射するための複数の光学素子と、プリント動作を行うプリントモード及び待機中であるスタンバイモードを含む複数の動作モードと、を備え、機内の熱の影響により前記光学素子のレーザ光照射位置のずれ量が除々に変化する画像形成装置であって、 前記複数の動作モードの少なくとも1つの動作モードにおける経時変化に伴い前記各色間のレーザ光照射位置のずれ量が除々に大きくなり、更なる経時変化に伴い前記各色間のレーザ光照射位置のずれ量が除々に小さくなり、更なる経時変化に伴い前記各色間のレーザ光照射位置のずれ量が収束する、レーザ光照射位置の経時変化に伴うずれ量を演算により求めるずれ量演算手段を備え、 前記ずれ量演算手段により求められた前記ずれ量に基づき、色ずれ補正が行われ、 前記ずれ量演算手段は、前記画像形成装置における第1の熱影響における温度変化に伴うずれ量と、前記画像形成装置における第2の熱影響における温度変化に伴うずれ量と、に基づき、前記複数の動作モードのいずれかの単一の動作モードでの前記レーザ光照射位置の経時変化に伴うずれ量を演算により求め、 前記第1の熱影響と前記第2の熱影響における温度変化の度合いを評価するために機内に設けられ、前記機内の環境条件を検出する複数の環境検出手段を備え、 前記ずれ量演算手段は、前記複数の環境検出手段により検出された結果の差分に基づき、前記レーザ光照射位置の経時変化に伴うずれ量を演算により求め、 排紙部と前記光学素子を含む光学ユニットとの間に空気を流すことにより冷却するファンを備え、 前記複数の環境検出手段は、複数の温度検出手段であり、 前記複数の温度検出手段の1つは、前記排紙部と前記光学ユニットとの間で、且つ、前記排紙部からの熱を含んだ空気であって前記ファンにより流された空気の熱を検出すべく前記ファンによる空気の流れの下流側に配置される画像形成装置。」 第4 対比・判断 1.本願発明1について (1)対比 本願発明1と引用発明1とを対比すると、 後者の「像担持体」、「画像データに応じた光を照射することによって像担持体上に静電潜像を形成する光書き込みユニット」、「像担持体上の静電潜像を現像する現像ユニット」、「回転体としての中間転写ユニット」、「『光書き込みユニットである光ビーム走査装置』に備えられている『温度を検知する温度検知手段である温度センサ』」、「『現像ユニット』に備えられている『温度を検知する温度検知手段である温度センサ』」、「『中間転写ユニットを構成する中間転写ベルト』に備えられている『温度を検知する温度検知手段である温度センサ』」、及び「回転体に対して形成された『各色の位置ずれ測定用のパターン画像』」は、それぞれ、前者の「感光体」、「静電潜像を形成するために感光体を露光する露光装置」、「感光体上の静電潜像を現像して画像を形成する画像形成手段」、「画像形成手段により形成された画像が転写される転写体」、「露光装置の第1の温度を検知する第一の温度検知手段」、「第一の温度検知手段と異なる位置に設けられ、第2の温度を検知する第二の温度検知手段」、「第一の温度検知手段と異なる位置に設けられ、第3の温度を検知する第三の温度検知手段」、及び「転写体に形成された測定用画像」に相当する。 後者は、「カラー画像形成装置」であるから、少なくとも2組(第1、第2)の、感光体、露光装置、画像形成手段、を有することは明らかである。 後者の「カラー画像形成装置」は、「各種の画像形成ユニットによる画像形成処理により回転体に対して各色の位置ずれ測定用のパターン画像を形成して、当該パターン画像に基づいて主副走査方向の各色の位置ずれ量を検出して補正する位置ずれ補正処理を実行する」ものであるから、後者の「カラー画像形成装置」は、「転写体に形成された測定用画像を測定する測定手段」、「色ずれ補正値に基づき色ずれ補正を行う補正手段」、及び「測定手段の測定結果に基づいて第1の色ずれ補正値を決定する第1決定手段」、すなわち「色ずれ補正値を決定する決定手段」を有しているといえる。 後者の「温度情報」は、「各画像形成ユニットの温度と室温との温度差」であり、後者の「室温」を、前者の「第3の温度」に対応付けると、後者の「『光書き込みユニットである光ビーム走査装置』の温度と『室温』との温度差」は、前者の「第一の温度検知手段によって検知された現在の第1の温度と第三の温度検知手段によって検知された現在の第3の温度との差」に相当し、後者の「『現像ユニット』の温度と『室温』との温度差」は、前者の「第二の温度検知手段によって検知された現在の第2の温度と第三の温度検知手段によって検知された現在の第3の温度との差」に相当する。 したがって、両者は、 「第1の感光体と、第2の感光体と、第1の静電潜像を形成するために前記第1の感光体を露光し、第2の静電潜像を形成するために前記第2の感光体を露光する露光装置とを有し、前記第1の感光体上の前記第1の静電潜像を現像して第1色の画像を形成し、前記第2の感光体上の前記第2の静電潜像を現像して第2色の画像を形成する画像形成手段と、 前記画像形成手段により形成された前記第1色の画像と前記第2色の画像とが転写される転写体と、 前記露光装置の第1の温度を検知する第一の温度検知手段と、 前記第一の温度検知手段と異なる位置に設けられ、第2の温度を検知する第二の温度検知手段と、 前記第一の温度検知手段と異なる位置に設けられ、第3の温度を検知する第三の温度検知手段と、 前記転写体に形成された測定用画像を測定する測定手段と、 色ずれ補正値を決定する決定手段と、 前記色ずれ補正値に基づき色ずれ補正を行う補正手段とを有し、 前記決定手段は、 前記測定手段の測定結果に基づいて第1の色ずれ補正値を決定する第1決定手段と、を有し、 前記第1決定手段により前記第1の色ずれ補正値が決定される場合、前記第1の色ずれ補正値に基づいて色ずれ補正を行う、カラー画像形成装置。」 の点で一致し、以下の点で相違している。 [相違点1] 本願発明1の「第一の温度検知手段と第三の温度検知手段との距離は、前記第一の温度検知手段と第二の温度検知手段との距離よりも遠く」であるのに対し、引用発明1は、そのようなものか不明な点。 [相違点2] 本願発明1が、第一の温度検知手段によって検知された現在の第1の温度と第三の温度検知手段によって検知された現在の第3の温度との差、「第1決定手段により第1の色ずれ補正値が前回決定された際に前記第一の温度検知手段によって検知された第1の基準温度と前記第1決定手段により前記第1の色ずれ補正値が前回決定された際に前記第三の温度検知手段によって検知された第3の基準温度との差」、第二の温度検知手段によって検知された現在の第2の温度と前記第三の温度検知手段によって検知された現在の第3の温度との差、「及び、前記第1決定手段により前記第1の色ずれ補正値が前回決定された際に前記第二の温度検知手段によって検知された第2の基準温度と前記第1決定手段により前記第1の色ずれ補正値が前回決定された際に前記第三の温度検知手段によって検知された第3の基準温度との差に基づいて第2の色ずれ補正値を決定する第2決定手段と、を有し、 補正手段は、 前記第2決定手段により前記第2の色ずれ補正値が決定される場合、前記第1決定手段により前回決定された第1の色ずれ補正値に前記第2決定手段により決定された前記第2の色ずれ補正値を加算した色ずれ補正値に基づいて色ずれ補正を行う」ものであるのに対し、引用発明1は、そのようなものでない点。 (2)判断 1.本願発明1について 上記相違点2について検討する。 引用発明3の「補正ずれ量」は、各色の位置ずれ測定用パターンを発生させ、各色間の位置ずれを測定し、測定した位置ずれ量から計算したものであるから、本願発明1の「第1の色ずれ補正値」に相当する。 しかし、引用発明2は、感光体帯電電圧,現像バイアス電圧,感光体へ転写する第一転写電圧,紙へ転写する第二転写電圧,定着温度、そのほか各種制御量に温度の因子を入れ、温度を検知する温度検知手段を、メディアを収納する収納容器の脇に設置するものであるが、本願発明1の「露光装置の第1の温度を検知する第一の温度検知手段と、前記第一の温度検知手段と異なる位置に設けられ、第2の温度を検知する第二の温度検知手段と、前記第一の温度検知手段と異なる位置に設けられ、第3の温度を検知する第三の温度検知手段」というように、3つの異なる位置の温度を検知する第一から第三の温度検知手段を有するものではない。 また、引用発明3は、装置内温度変化を検出する手段を有するものの、本願発明1の「露光装置の第1の温度を検知する第一の温度検知手段と、前記第一の温度検知手段と異なる位置に設けられ、第2の温度を検知する第二の温度検知手段と、前記第一の温度検知手段と異なる位置に設けられ、第3の温度を検知する第三の温度検知手段」というように、3つの異なる位置の温度を検知する第一から第三の温度検知手段を有するものではない。 そうすると、引用発明2及び引用発明3のいずれも、上記相違点2に係る本願発明1の発明特定事項を有していないことは明らかであるし、設計的事項といえる理由もない。 したがって、上記相違点1について検討するまでもなく、本願発明1は、引用発明1乃至引用発明3に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。 そして、本願発明1は、上記相違点2に係る本願発明1の発明特定事項により、「温度変化に応じた色ずれ補正値を高精度に予測することができる。」(【0010】参照。)という作用効果を奏するものである。 また、前置報告で提示された引用発明4は、カラー画像形成装置内の温度を検出する温度検出手段を有するものの、本願発明1の「露光装置の第1の温度を検知する第一の温度検知手段と、前記第一の温度検知手段と異なる位置に設けられ、第2の温度を検知する第二の温度検知手段と、前記第一の温度検知手段と異なる位置に設けられ、第3の温度を検知する第三の温度検知手段」というように、3つの異なる位置の温度を検知する第一から第三の温度検知手段を有するものではない。 また、引用発明4の「基準温度」及び「ずれ量」は、それぞれ、本願発明1の「第1の基準温度」及び「第1の色ずれ補正値」に相当する。しかし、引用発明4のずれ調節手段は、温度検出手段により検出されたカラー画像形成装置内の温度とずれ量検出手段により検出されたずれ量と基準温度からの温度検出手段により検出された温度の変化分との相関データに基づいて画像形成位置のずれを補正するものであるから、上記相違点2に係る本願発明1の発明特定事項を有していないことは明らかであるし、設計的事項といえる理由もない。 また、前置報告で提示された引用発明5は、「温度検出手段」を複数備えていることから、引用発明5の「複数の温度検出手段」は、本願発明1の「『第一の温度検知手段』、『第二の温度検知手段』及び『第三の温度検知手段』」に相当する。また、引用発明5の「複数の環境検出手段により検出された結果の差分」は、本願発明1の「『第一の温度検知手段によって検知された現在の第1の温度と第三の温度検知手段によって検知された現在の第3の温度との差』及び『第二の温度検知手段によって検知された現在の第2の温度と第三の温度検知手段によって検知された現在の第3の温度との差』」を包含するものである。さらに、引用発明5の「複数の温度検出手段(複数の環境検出手段)」は、「第1の熱影響と第2の縁津影響における温度変化の度合いを評価するため」のものであって、引用発明5の「レーザ照射位置のずれ量」は、「動作モードにおける経時変化に伴い」、「すれ量が徐々に大きくな」ったり、「徐々に小さくな」ったりするから、引用発明5の「複数の温度検出手段(複数の環境検出手段)」は、「複数の温度」の「経時変化」を検出していること、すなわち、「色ずれ補正が行われ」た際の「複数の温度」を検出していることは明らかであるから、引用発明5の「複数の環境検出手段により検出された結果の差分」は、本願発明1の「『第1決定手段により第1の色ずれ補正値が前回決定された際に第一の温度検知手段によって検知された第1の基準温度と前記第1決定手段により前記第1の色ずれ補正値が前回決定された際に第三の温度検知手段によって検知された第3の基準温度との差』、及び『第1決定手段により第1の色ずれ補正値が前回決定された際に第二の温度検知手段によって検知された第2の基準温度と前記第1決定手段により前記第1の色ずれ補正値が前回決定された際に第三の温度検知手段によって検知された第3の基準温度との差』」を包含するものである。 しかし、引用発明5は、複数の温度検出手段により検出された結果の差分に基づきレーザ光照射位置のずれ量を演算により求めているものの、上記相違点2に係る本願発明1のように、「補正手段は、第2決定手段により第2の色ずれ補正値が決定される場合、第1決定手段により前回決定された第1の色ずれ補正値に前記第2決定手段により決定された前記第2の色ずれ補正値を加算した色ずれ補正値に基づいて色ずれ補正を行う」ものとはいえないし、設計的事項といえる理由もない。 したがって、本願発明1は、引用発明1乃至引用発明3に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。 2.本願発明2乃至8について 本願発明2乃至8は、本願発明1の発明特定事項にさらなる発明特定事項を追加して限定を付したものであるから、上記「1. (2)」と同様の理由により、本願発明2乃至8が、引用発明1乃至引用発明3に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。 第5 原査定の概要及び原査定についての判断 原査定は、 「(進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 記 (引用文献等については引用文献等一覧参照) ・請求項 1-6,9 ・引用文献等 1-3 <引用文献等一覧> 1.特開2009-145400号公報 2.特開2002-214858号公報 3.特開2009-139644号公報」 というものである。 しかしながら、平成30年6月29日付け手続補正により補正された請求項1乃至8は、それぞれ「前記第一の温度検知手段によって検知された現在の第1の温度と前記第三の温度検知手段によって検知された現在の第3の温度との差、前記第1決定手段により前記第1の色ずれ補正値が前回決定された際に前記第一の温度検知手段によって検知された第1の基準温度と前記第1決定手段により前記第1の色ずれ補正値が前回決定された際に前記第三の温度検知手段によって検知された第3の基準温度との差、前記第二の温度検知手段によって検知された現在の第2の温度と前記第三の温度検知手段によって検知された現在の第3の温度との差、及び、前記第1決定手段により前記第1の色ずれ補正値が前回決定された際に前記第二の温度検知手段によって検知された第2の基準温度と前記第1決定手段により前記第1の色ずれ補正値が前回決定された際に前記第三の温度検知手段によって検知された第3の基準温度との差に基づいて第2の色ずれ補正値を決定する第2決定手段」という事項により第2決定手段が具体的に特定され、また、「前記補正手段は、前記第1決定手段により前記第1の色ずれ補正値が決定される場合、前記第1の色ずれ補正値に基づいて色ずれ補正を行い、前記第2決定手段により前記第2の色ずれ補正値が決定される場合、前記第1決定手段により前回決定された第1の色ずれ補正値に前記第2決定手段により決定された前記第2の色ずれ補正値を加算した色ずれ補正値に基づいて色ずれ補正を行うこと」という事項により補正手段が具体的に特定されており、上記のとおり、本願発明1乃至8は、上記引用発明1乃至引用発明3に基づいて、当業者が容易に発明できたものではない。 したがって、原査定を維持することはできない。 第6 当審拒絶理由について 当審では、 「1.この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。 2.この出願は、発明の詳細な説明の記載について下記の点で、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。 記 1.に関して (1-1) 発明の詳細な説明には、「色ずれ予測補正値算出処理を行うタイミングは、例えば、色ずれ実測補正値算出処理の実行時点および前回の色ずれ予測補正値算出処理の実行時点からのプリント枚数が所定枚数に達した場合もしくは所定時間経過した場合である。」(【0084】)と記載され、第2決定手段を行う処理(色ずれ予測補正値算出処理)に先だって、第1決定手段を行う処理(色ずれ実測補正値算出処理)が行われており、少なくとも、転写体に形成された測定用画像を測定する測定手段の測定結果は得ているものと、理解し得る。 そうすると、請求項1乃至10の測定手段の測定結果が何ら考慮されない第2決定手段は、発明の詳細な説明に記載されたものとはいえない。 (1-2) 発明の詳細な説明には、「図13に図11に対応したレーザースキャナー部の温度と色ずれ変化量の関係図を示す。また、レーザースキャナー部の温度と色ずれ変化量との一次の線形近似の結果を示す。色ずれ変化量は、ある基準時からの色ずれの変化量を示す。図13における基準は、変化量が0の点、すなわちA区間の初めの実測値である。図13から、レーザースキャナー部の温度と色ずれの変化量との関係には一次の相関がないことが分かる。また、高次の線形近似を行っても相関がない。これは、昇温時と降温時でヒステリシスの影響や、レーザースキャナー部以外にも感光体ドラムや一次転写部の温度変化による影響を受けているからである。」(【0055】)と記載され、第一?第三の温度検知手段からの単一の検知された温度だけでは、温度と色ずれとの相関が取れないことがわかる。 そうすると、請求項1乃至9の第1の温度、第2の温度、及び、第3の温度に基づいてとの記載だけでは、色ずれとの相関が取れるように、第1の温度、第2の温度、及び、第3の温度をどのように用いるのかが定かでないから、発明の課題を解決する手段が記載されているものとはいえない。 (1-3) 請求項1の「前記補正手段は、前記第1決定手段により決定された前記第1の色ずれ補正値と前記第2決定手段により決定された前記第2の色ずれ補正値とに基づいて色ずれ補正を行うこと」との記載では、「第1の色ずれ補正値」と「第2の色ずれ補正値」の両方を用いた色ずれ補正も包含するが、発明の詳細な説明にはそのような事項に対応する事項が記載も示唆もされていない。 1.及び2.に関して 請求項1に記載の「第2の色ずれ補正値」について、発明の詳細な説明には、 「ΔX=α・ΔTls+β・ΔTdrm・・・(1) ΔTls=(Tls(1)-Tenv(1))-(Tls(0)-Tenv(0))・・・(2) ΔTdrm=(Tdrm(1)-Tenv(1))-(Tdrm(0)-Tenv(0))・・・(3)」(【0066】参照。) と記載され、“色ずれ実測補正値算出処理において記憶した温度データ”と“現在の温度データ”とから算出しているが、請求項1には、「前記第一の温度検知手段によって検知された前記第1の温度と前記第三の温度検知手段によって検知された前記第3の温度との差、及び、前記第二の温度検知手段によって検知された前記第2の温度と前記第三の温度検知手段によって検知された前記第3の温度との差に基づいて」としか記載されておらず、“現在の温度データ”のみから算出するものも包含する。そうすると、請求項1に係る発明は、発明の詳細な説明に記載されていない事項を包含するものである。 また、“現在の温度データ”のみから算出する「第2の色ずれ補正値」なるものをどのように算出するのか不明であるから、実施可能要件違反にも該当する。」 との拒絶の理由を通知しているが、平成30年6月29日付けの補正において、上記指摘に対して、請求項1乃至8は、「前記第一の温度検知手段によって検知された現在の第1の温度と前記第三の温度検知手段によって検知された現在の第3の温度との差、前記第1決定手段により前記第1の色ずれ補正値が前回決定された際に前記第一の温度検知手段によって検知された第1の基準温度と前記第1決定手段により前記第1の色ずれ補正値が前回決定された際に前記第三の温度検知手段によって検知された第3の基準温度との差、前記第二の温度検知手段によって検知された現在の第2の温度と前記第三の温度検知手段によって検知された現在の第3の温度との差、及び、前記第1決定手段により前記第1の色ずれ補正値が前回決定された際に前記第二の温度検知手段によって検知された第2の基準温度と前記第1決定手段により前記第1の色ずれ補正値が前回決定された際に前記第三の温度検知手段によって検知された第3の基準温度との差に基づいて第2の色ずれ補正値を決定する第2決定手段と、を有し、前記補正手段は、前記第1決定手段により前記第1の色ずれ補正値が決定される場合、前記第1の色ずれ補正値に基づいて色ずれ補正を行い、前記第2決定手段により前記第2の色ずれ補正値が決定される場合、前記第1決定手段により前回決定された第1の色ずれ補正値に前記第2決定手段により決定された前記第2の色ずれ補正値を加算した色ずれ補正値に基づいて色ずれ補正を行うこと」との発明特定事項を備えるものとされた結果、上記の拒絶の理由はいずれも解消した。 第7 むすび 以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2018-10-01 |
出願番号 | 特願2012-196239(P2012-196239) |
審決分類 |
P
1
8・
537-
WY
(G03G)
P 1 8・ 121- WY (G03G) |
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 野口 聖彦、松本 泰典 |
特許庁審判長 |
尾崎 淳史 |
特許庁審判官 |
藤本 義仁 森次 顕 |
発明の名称 | 画像形成装置 |
代理人 | 黒岩 創吾 |
代理人 | 阿部 琢磨 |