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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 G09G
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G09G
管理番号 1344624
審判番号 不服2017-15930  
総通号数 227 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-11-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-10-27 
確定日 2018-10-16 
事件の表示 特願2013- 54485「航空機コックピットのディスプレイのための装置」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 9月30日出願公開、特開2013-196005、請求項の数(10)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成25年3月18日(パリ条約による優先権主張 2012年3月20日(以下、「優先日」という。)、英国(グレートブリテン及び北アイルランド連合王国)、2012年6月4日、アメリカ合衆国)の出願であって、平成29年2月22日付けで拒絶理由が通知され、平成29年5月11日付けで手続補正がなされたが、平成29年6月30日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成29年10月27日に拒絶査定不服審判が請求され、同時に手続補正がなされ、当審において、平成30年6月8日付けで拒絶理由が通知され、平成30年7月4日付けで手続補正がなされたものである。

2.本願発明
本願の請求項1-10に係る発明(以下、「本願発明1」-「本願発明10」という。)は、平成30年7月4日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-10に記載された事項により特定されるとおりの発明であって、請求項1、10は、次のとおりのものである。
「【請求項1】
航空機コックピットのディスプレイであって、
行および列で配列されたピクセルを有する液晶マトリクスを有するディスプレイパネルと、
前記液晶マトリクスを照らすためのバックライトと、
動作可能に結合され前記液晶マトリクス内の前記行の全てを各々が駆動する行ドライバをそれぞれが有する独立した第1および第2のビデオチャネルであって、前記第1のビデオチャネルが、動作可能に結合され前記液晶マトリクスの第1の部分の前記列を駆動する第1の列ドライバを有し、前記第2のビデオチャネルが、動作可能に結合され前記液晶マトリクスの第2の部分の前記列を駆動する第2の列ドライバを有し、前記第1の部分が前記第2の部分と同一ではない、独立した第1および第2のビデオチャネルと、
前記独立した第1および第2のビデオチャネルのうちのアクティブなビデオチャネルでの故障を検出する手段と、
前記故障の検出に応答して、自動的に、前記ディスプレイパネルにビデオ信号を表示するために前記独立した第1および第2のビデオチャネルのうちの前記アクティブなビデオチャネルを非アクティブにし、前記独立した第1および第2のビデオチャネルのうちの他方の非アクティブなビデオチャネルをアクティブにするスイッチと
を備える航空機コックピットのディスプレイ。」

「【請求項10】
航空機コックピットのディスプレイであって、
行および列で配列されたピクセルを有する液晶マトリクスを有するLCDパネルと、
前記液晶マトリクスを照らすためのLEDの配列を有するLEDバックライトと、
動作可能に結合され前記液晶マトリクス内の前記行の全てを各々が駆動する行ドライバをそれぞれが有する独立した第1および第2のビデオチャネルであって、前記第1のビデオチャネルが、動作可能に結合され前記液晶マトリクスの第1の部分の前記列を駆動する第1の列ドライバを有し、前記第2のビデオチャネルが、動作可能に結合され前記液晶マトリクスの第2の部分の前記列を駆動する第2の列ドライバを有し、前記第2の部分が前記第1の部分と同一ではない、独立した第1および第2のビデオチャネルと、
前記液晶マトリクスに対してバックライトを制御するために前記LEDの配列に動作可能に結合されたLEDドライバをそれぞれが有する独立した第1および第2のバックライト制御チャネルと、
前記独立した第1および第2のビデオチャネルのうちのアクティブなビデオチャネルでの故障を検出する手段と、
前記故障の検出に応答して、自動的に、前記ディスプレイパネルにビデオ信号を表示するために前記独立した第1および第2のビデオチャネルのうちの前記アクティブなビデオチャネルを非アクティブにし、前記独立した第1および第2のビデオチャネルのうちの他方の非アクティブなビデオチャネルをアクティブにするスイッチと
を備える航空機コックピットのディスプレイ。」

なお、本願発明2-9は、本願発明1を減縮した発明である。
また、本願発明10は、本願発明1における「液晶マトリクスを有するディスプレイパネル」を「液晶マトリクスを有するLCDパネル」と表現を変更し、さらに、「バックライト」を「LEDの配列を有するLEDバックライト」と減縮するとともに、「前記液晶マトリクスに対してバックライトを制御するために前記LEDの配列に動作可能に結合されたLEDドライバをそれぞれが有する独立した第1および第2のバックライト制御チャネル」を備える構成を付加した発明であって、実質的に、本願発明1を減縮した発明である。

第3 原査定の理由について
1.原査定の理由の概要
「この出願の下記の請求項に係る発明は、その優先日に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

・請求項 1-3、10
・引用文献等 1-4

・請求項 4-9
・引用文献等 1-5
<引用文献等一覧>
1.特表2005-535925号公報
2.特開平07-325980号公報(周知技術を示す文献;新たに引用された文献)
3.特開2005-202306号公報(周知技術を示す文献;新たに引用された文献)
4.特開平06-223288号公報(周知技術を示す文献;新たに引用された文献)
5.特開2003-044013号公報」

2.原査定の理由についての当審の判断
(1)刊行物の記載
ア 引用文献1について
原査定の拒絶の理由で引用された、特表2005-535925号公報(以下、「引用文献1」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている(下線は、当審で付与した。)。

「【要約】
本発明は安全な電子アーキテクチャを備え、かつ航空機に用いられる表示装置に関する。各装置は電子コンピュータ及びそれに接続されるマトリクスタイプの表示装置を備える。本発明は基本的に、少数の大画面を有するディスプレイシステムに適用される。
本発明は表示装置を2つの独立した表示ゾーンとして、そしてコンピュータをこれも2つの独立した電子サブアセンブリとして構成することを提案し、このような構成によって、これらの構成要素の内の一方が故障しても、せいぜい表示装置の一つのゾーンだけが故障するだけで済む。
本発明は基本的に、複数の蛍光管をベースとする照明システムを有する液晶マトリクスディスプレイ装置に適用される。
表示ゾーンに関する2つの実施形態について説明する。第1の実施形態では、画面領域の一方の部分のみが故障時に機能しなくなる。第2の実施形態では、表示画面の解像度が故障時に単に2分の1に低下するだけである。」(フロントページ)

「【0001】
本発明の技術分野は航空機に使用される電子表示装置に関する分野であり、特に表示装置を構成する際の基本となる電子アーキテクチャを保護する分野に関する。」

「【0007】
この問題を解決するために、本発明は一方においては各表示装置の電子アーキテクチャを2つの独立した電子サブアセンブリとして構成し、他方においては、表示ゾーンを2つの独立したゾーンとして構成して、種々の電子アセンブリの内のいずれか一つのサブアセンブリが故障する、または2つの表示ゾーンの内の一つの表示ゾーンが機能しなくなっても最悪の場合でも表示装置の半分だけが機能しなくなるようにする。図2に示す図は本発明の一般原理を示している。単一の表示画面1は2つの独立したゾーン11及び12として構成され、ゾーン11及び12の各々はサブユニット221または222が制御し、ゾーン専用のサブユニットは画像を演算し、そして生成する。このサブユニットには、その固有の電源供給ユニット231または232が電源を供給する。インターフェイスユニット21は、画像を演算し、そして生成する2つのサブユニット221または222に共通している。表示装置のマトリクス構造によって表示装置を2つの独立した画面として構成することができる。」

「【0009】
更に詳細には、本発明の目的は航空機用途の表示装置であり、この表示装置は、表示装置を制御する電子コンピュータを備え、前記表示装置はN行M列のドットから成るマトリクスとして構成され、前記コンピュータは外部との接続を行なう電子第1アセンブリと、画像を演算し、そして生成する電子第2アセンブリと、そして電源を供給する第3アセンブリと、を基本的に含み、表示装置は2つの独立した表示ゾーンとして構成され、画像を演算し、そして生成する電子第2アセンブリは2つの独立した電子サブアセンブリとして構成され、電源供給第3アセンブリもまた、2つの独立した電子サブアセンブリとして構成されてこれらの種々のサブアセンブリの内のいずれか一つが故障してもせいぜい2つの表示ゾーンの内の一つだけが機能しなくなるだけで済む。
【0010】
本方法を単一タイプのドットを含むモノクロディスプレイに適用することができる。しかしながら、ほとんどの現行のディスプレイはカラーディスプレイである。この場合、複数のドットは画素と呼ばれる同じ3つ組みとして構成され、各画素は3つのドットを含み、各ドットは異なるスペクトル帯域の光を放出する。」

「【0016】
有利なことに、複数の電子サブアセンブリの内のいずれか一つのサブアセンブリが故障した、または2つの表示ゾーンの内の一方のゾーンが機能しなくなって2つの表示ゾーンの内の一方が無効になった場合、一次飛行表示(Primary Flight Display)と呼ばれる飛行上必要な情報は正常に機能し続けている表示ゾーンに表示されるが、この表示動作は、電子サブアセンブリに含まれ、画像を演算し、そして生成して前記表示ゾーンに機能を提供する電子再構成ユニットによって自動的に行なわれる。これは、操縦士に提示される情報が同じ重要性を持つ訳ではないからである。とりわけ、飛行姿勢、高度、速度、飛行方向及び風向きに関する情報を含む一次飛行表示情報は、一部に故障が生じた場合を含めて特に表示され続ける必要がある。故障によって影響を受けるゾーンが上記情報の表示専用になっている場合、さほど重要ではない、例えば3次元眺望または地図画像のような情報に代えて上のような重要情報が正常に機能し続ける画面ゾーンに表示されることになる。」

「【実施例】
【0028】
図3は先行技術によるカラーアクティブマトリクス方式の表示装置の簡易部分展開図を示している。合計9ドットを定義する3行3列構成を示している。この表示装置は基本的に、液晶マトリクス及び照明ユニット7を備え、このユニットは複数の蛍光管71から成る。このマトリクスは基本的に、第1ガラス基板5及び第2ガラス基板6を備える。基板5及び6は平板であり、そして互いに平行である。液晶層(図には示さず)をこれらの2つの基板5と6との間の空間に挿入する。これらの2つの基板の組合せを2つの直線偏光板40と41との間に配置する。基板5は観察者側に位置し、そして基板6は照明管側に位置する。
【0029】
基板5は単一の透明対向電極51を含み、そしてカラーマトリクスの場合には、タイル張り状に形成したカラーフィルタ520,521及び522を含む。各フィルタは一のカラードットに対応する。3つの隣接する異なるカラードットが一のカラー画素に対応する。基板6は電子回路を含み、この電子回路は基本的に、複数の制御ライン61及び複数の制御列62から構成される。TFT(Thin Film Transistor:薄膜トランジスタ)タイプの電子スイッチ63を行と列の交点に配置する。このスイッチは単位電極64を駆動する。一連の制御行は第1電子駆動アセンブリ(図には示さず)によって駆動される。一連の制御列も第2駆動アセンブリによって駆動される。」

「【0033】
図4は、本発明の第1の実施形態によるカラーアクティブマトリクス方式の表示装置の簡易部分展開図を示している。モノクロマトリクス(図示せず)の場合、説明する構成は同じとなるが、この場合、カラーフィルタを単純に取り除き、そしてドットは全て同じとする。図4に示す実施形態では、表示装置はディスプレイの右側部分を占有するゾーンと、ディスプレイの左側部分を占有するゾーンと、から成る。合計18ドットを定義する3行6列構成を示している。これらの2つの右側表示ゾーン及び左側表示ゾーンを個別に形成するために、次の条件を設定する。
・基板5の対向電極51を、2つの異なる電圧が供給される2つの独立した対向電極511及び512に置き換える。
・各制御行61を2つの制御行611及び612に置き換え、第1の行611は画面の右側部分として機能し、そして第2の行612は画面の左側部分として機能する。一連の行611は第1電子ドライバ661が駆動し、そして一連の行612は第2電子ドライバ662が駆動する。2つの電子ドライバは独立し、かつ2つの異なるコンピュータサブアセンブリによって制御される。
・画面の右側ゾーンとして機能する制御列は第1電子ドライバ651が駆動し、そして画面の左側ゾーンとして機能する制御列は第2電子ドライバ652が駆動する。そして
・照明ユニット7を2つの独立した照明ユニット71及び72に置き換え、これらの照明ユニット71及び72はそれぞれ画面の右側ゾーンの下方、及び画面の左側ゾーンの下方に配置される。
【0034】
従って、これらの構成によって、画面は2つの完全に独立したゾーンに分割されて、電源供給装置または電子ドライバのいずれかが故障する、或いは照明ゾーンが機能しなくなっても2つの表示ゾーンの内の一つのゾーンにしか影響が及ばず、残りのゾーンは正常に動作し続けるようになる。
【0035】
一の変形例(図示せず)では、アクティブマトリクスの第1ガラス基板は2つの独立した電源供給サブアセンブリから電源供給される単一の対向電極を含む。2つの異なる電源供給源によって供給される共通電圧によって、この単一電極の動作を劣化させてはならない。」

「【0039】
故障が生じた場合、不良ゾーンの複数の列への制御電圧を、これらの列が制御する複数のドットの透光率が最小になるような値にまで下げる。この場合、表示情報のコントラストは維持される。しかしながら、平均としてディスプレイの明るさは半減する。
【0040】
従って最初の輝度を取り戻すには、蛍光管の輝度を2倍にする必要がある。蛍光管の寿命を延ばすために、これらの蛍光管は普通、通常動作モードでは電力を下げた状態となるので最大光束よりもかなり少ない光束を放出する。故障が生じると、これらの蛍光管への供給電圧を上げて蛍光管がこの最大光束を放出するようにする。従って、画像の平均輝度が維持される。供給電圧上昇によりもたらされるこれらの蛍光管の寿命の劣化は、故障が必ず迅速に処置される限り、さしたる問題ではない。」

よって、引用文献1には、「第1の実施形態」による表示装置として、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。
「航空機に用いられる表示装置であって、複数の蛍光管をベースとする照明システムを有する液晶マトリクスディスプレイ装置に適用され、表示装置を2つの独立した表示ゾーンとして、そしてコンピュータをこれも2つの独立した電子サブアセンブリとして構成し、このような構成によって、これらの構成要素の内の一方が故障しても、せいぜい表示装置の一つのゾーンだけが故障するだけで済み(フロントページ、【要約】より。以下同様。)、
この表示装置は、表示装置を制御する電子コンピュータを備え、前記表示装置はN行M列のドットから成るマトリクスとして構成され、前記コンピュータは外部との接続を行なう電子第1アセンブリと、画像を演算し、そして生成する電子第2アセンブリと、そして電源を供給する第3アセンブリと、を基本的に含み、表示装置は2つの独立した表示ゾーンとして構成され、画像を演算し、そして生成する電子第2アセンブリは2つの独立した電子サブアセンブリとして構成され(【0009】)、
表示装置はディスプレイの右側部分を占有するゾーンと、ディスプレイの左側部分を占有するゾーンと、から成り、これらの2つの右側表示ゾーン及び左側表示ゾーンを個別に形成するために、
・各制御行61を2つの制御行611及び612に置き換え、第1の行611は画面の右側部分として機能し、そして第2の行612は画面の左側部分として機能し、一連の行611は第1電子ドライバ661が駆動し、そして一連の行612は第2電子ドライバ662が駆動し、2つの電子ドライバは独立し、かつ2つの異なるコンピュータサブアセンブリによって制御され、
・画面の右側ゾーンとして機能する制御列は第1電子ドライバ651が駆動し、そして画面の左側ゾーンとして機能する制御列は第2電子ドライバ652が駆動し、そして
・照明ユニット7を2つの独立した照明ユニット71及び72に置き換え、これらの照明ユニット71及び72はそれぞれ画面の右側ゾーンの下方、及び画面の左側ゾーンの下方に配置され(【0033】)、
これらの構成によって、画面は2つの完全に独立したゾーンに分割されて、電源供給装置または電子ドライバのいずれかが故障する、或いは照明ゾーンが機能しなくなっても2つの表示ゾーンの内の一つのゾーンにしか影響が及ばず、残りのゾーンは正常に動作し続けるようになり(【0034】)、
複数の電子サブアセンブリの内のいずれか一つのサブアセンブリが故障した、または2つの表示ゾーンの内の一方のゾーンが機能しなくなって2つの表示ゾーンの内の一方が無効になった場合、飛行上必要な情報は正常に機能し続けている表示ゾーンに表示されるが、この表示動作は、電子サブアセンブリに含まれ、画像を演算し、そして生成して前記表示ゾーンに機能を提供する電子再構成ユニットによって自動的に行なわれ、故障によって影響を受けるゾーンが上記情報の表示専用になっている場合、さほど重要ではない情報に代えて上のような重要情報が正常に機能し続ける画面ゾーンに表示されることになる(【0016】)、
表示装置(【要約】)。」

イ 引用文献2について
周知技術を示す文献として原査定の備考欄で引用された、特開平07-325980号公報(以下、「引用文献2」という。)には、図面とともに、次の技術が記載されている(下線は、当審で付与した。)。

「【0006】
【実施例】図1は全ての表示器用の制御回路を2重化した一実施例を示すブロック図であり、例えば代表として速度、圧力、電流を検出した信号が各種センサから供給されると、それがインターフェイス回路1を介して制御回路2aおよび2bに並列に供給される。制御回路2aおよび2bは供給された信号を取り込んで、それぞれの信号用の表示器に適した信号となるように、時分割で処理する。
【0007】制御回路2aおよび2bは、処理部21、トライステートバッファ22、故障検出回路23を有している。故障検出回路23は処理部21の動作を監視しており、処理部21から正常であることを表す信号が端子23cに供給されているときは、端子23bから「0」レベルの信号を送出しているが、処理部21から異常であることを表す信号が供給されたときは、端子23bから「1」レベルの信号が送出されるようになっている。
【0008】また、トライステートバッファ22は故障検出回路23の端子23bから「0」レベルの信号が供給されているとき入力信号を出力し、端子23cから供給される信号が「1」レベルの時は入力信号を送出しないようになっている。更に、端子23aに供給される信号が「1」レベルの時は前述のように端子23cに供給される信号によって端子23bから出力される信号レベルが支配されるが、端子23aに供給される信号が「0」レベルの時は端子23cに供給される信号に係わらず端子23bから「1」レベルの信号を送出するようになっている。
【0009】このように構成された制御回路2a、2bを図1に示すように入力側に共通な信号を供給し、バッファ22の出力信号は共通にして表示器3に供給するようにしている。一方、制御回路2aの端子23aは制御回路2bの端子23bに接続し、制御回路2bの端子23aはオープンにしておく。
【0010】このように構成された装置の動作は次の通りである。制御回路2aおよび2bのいずれも正常であるとき、双方の制御回路内の処理部21は正常であることを表す信号を出力し、故障検出回路23の端子23cに供給している。一方、制御回路2bの端子23aはオープンになっているので、故障検出回路23は端子23bから「0」レベルの信号を送出している。このため、トライステートバッファ22はオン状態になっており、処理部21から出力される信号を表示器3に供給している。
【0011】制御回路2bにおける故障検出回路23の端子23bから出力された「0」レベルの信号は制御回路2aにおける故障検出回路23の端子23aに供給されるが、故障検出回路23はこの端子に「0」レベルの信号が供給されたとき、端子23bから無条件に「1」レベルの信号を送出する。このため、トライステートバッファ22はオフ状態になり、入力信号を出力側に送出しない。即ち、制御回路2aおよび2bの出力側は共通接続されているが、制御回路2bから出力された信号だけが表示器3に供給される。
【0012】ここで制御回路2bの処理部21が故障し、故障信号が故障検出回路23の端子23cに供給されると、故障検出回路23は端子23bから「1」レベルの信号を出力するようになる。この結果、制御回路2bのトライステートバッファ22はオフ状態になり、出力信号を送出しなくなる。一方、制御回路2aの故障検出回路23は端子23aに「1」レベルの信号が供給されるようになったことにより、端子23bから出力される信号レベルが端子23cに供給される信号レベルに支配されるようになる。
【0013】このときの動作は前述したように、処理部21が正常であるとき端子23bから「0」レベルの信号が出力されるので、トライステートバッファ22がオン状態になり処理部21の出力信号が表示器3に供給される。したがって、故障検出回路23の出力端子をディージーチェン接続することによって制御回路2bに優先権が与えられ、その優先権の与えられた制御回路が故障したとき優先権の低い制御回路が動作するようになる。なお、図1では通常の制御回路を2台用いて2重系を構成しているが、3台用いて同様にディージーチェーン接続すれば3重系になり、更に信頼度の良いものが構成できる。また、本発明は動作する制御回路の切換に付いてしか論じていないが、実際の製品としては処理部21から出力される故障信号を監視し、故障信号が送出されたときは故障表示する等のことが必要になるが、そのことは本願発明の要旨とは関係がないので記載を省略している。」

よって、引用文献2には、次の技術事項が記載されていると認められる。
「制御回路2aおよび2bは、処理部21を有し(段落【0007】より。以下、同様。)、制御回路2a、2bを入力側に共通な信号を供給し、バッファ22の出力信号は共通にして表示器3に供給するようにし(【0009】)、
制御回路2aおよび2bのいずれも正常であるとき、制御回路2bの処理部21から出力される信号を表示器3に供給し(【0010】)、
制御回路2bの処理部21が故障すると、制御回路2aの処理部21の出力信号が表示器3に供給される(【0012】、【0013】)、
表示器用の制御回路(【0006】)。」

ウ 引用文献3について
周知技術を示す文献として原査定の備考欄で引用された、特開2005-202306号公報(以下、「引用文献3」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている(下線は、当審で付与した。)。
「【0008】
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1による大画面表示システムを示す構成図である。また、図2は大画面表示システムのディスプレイを示す構成図であり、図3は大画面表示システムのサブPCを示す構成図であり、図4は大画面表示システムのメインPCを示す構成図である。
図において、ディスプレイ1?4はマルチ画面の一部を構成し、4台のディスプレイ1?4の画面から1つのマルチ画面が構成される。この例では、4台のディスプレイ1?4を設置しているが、複数台であれば4台に限るものでないことは言うまでもない。
ディスプレイ1?4の入力切換器11は入力端子#1又は入力端子#2のいずれか一方を表示処理部12に接続する。表示処理部12はディスプレイ1?4の本体であり、サブPC23?27から出力される描画命令にしたがって画面を表示する部分である。
【0009】
表示制御装置であるメインPC21は例えばパーソナルコンピュータで構成され、マルチ画面全体の画面データを生成するとともに、サブPC23?27とディスプレイ1?4間の接続の切換処理等を実施する。マルチキャスタ22はメインPC21により生成されたマルチ画面全体の画面データをサブPC23?27にマルチ配信する。
画面表示装置であるサブPC23?27は例えばパーソナルコンピュータで構成され、自己が接続されているディスプレイ1?4に対応する画面データをマルチキャスタ22によりマルチ送信されたマルチ画面全体の画面データの中から選択し、その選択した画面データにしたがって当該ディスプレイに画面を表示する。この例では、5台のサブPC23?27を設置し、1台のサブPCを予備として利用するが、サブPCはディスプレイより少なくとも1台以上多く設置する必要がある。
【0010】
メインPC21の画面データ生成アプリ31はマルチ画面全体の画面データを生成し、その画面データをマルチキャスタ22に送信する処理を実施する。なお、画面データ生成アプリ31及びマルチキャスタ22からマルチ送信手段が構成されている。
サブPC23?27のOS41はオペレーティングシステムであり、メインPC21から起動指令を受けると起動して、画面表示アプリ42や監視アプリ43を起動する。サブPC23?27の画面表示アプリ42はマルチキャスタ22によりマルチ送信されたマルチ画面全体の画面データの中から自己が接続されているディスプレイ1?4に対応する画面データを選択し、その選択した画面データにしたがって当該ディスプレイに画面を表示する処理を実施する。なお、画面表示アプリ42はメインPC21の指示の下、出力端子#1又は出力端子#2のいずれか一方から描画命令をディスプレイ1?4に出力することにより、ディスプレイ1?4に画面を表示する。
【0011】
サブPC23?27の監視アプリ43は画面表示アプリ42の状態を監視し、その画面表示アプリ42に障害が発生していることを検知すると、障害が発生している旨をメインPC21に通知する。なお、監視アプリ43は障害検知手段を構成している。
メインPC21の接続管理アプリ32はいずれかのサブPCの監視アプリ43から障害発生通知を受けると、そのサブPCをディスプレイから切り離し、予備のサブPCをディスプレイに接続する接続管理手段を構成している。
【0012】
ここでは、画面データ生成アプリ31及び接続管理アプリ32がメインPC21に実装され、メインPC21の図示せぬCPUが画面データ生成アプリ31及び接続管理アプリ32を実行するものについて説明するが、画面データ生成アプリ31及び接続管理アプリ32の処理内容を実行する専用のハードウェア(例えば、IC集積回路等からなるスロット基板)をメインPC21に実装するようにしてもよい。
また、ここでは、画面表示アプリ42及び監視アプリ43がサブPC23?27に実装され、サブPC23?27の図示せぬCPUが画面表示アプリ42及び監視アプリ43を実行するものについて説明するが、画面表示アプリ42及び監視アプリ43の処理内容を実行する専用のハードウェア(例えば、IC集積回路等からなるスロット基板)をサブPC23?27に実装するようにしてもよい。」

よって、引用文献3には、次の技術事項が記載されていると認められる。
「ディスプレイ1?4はマルチ画面の一部を構成し、4台のディスプレイ1?4の画面から1つのマルチ画面が構成され(段落【0008】より。以下、同様。)、
表示制御装置であるメインPC21は例えばパーソナルコンピュータで構成され、マルチ画面全体の画面データを生成するとともに、サブPC23?27とディスプレイ1?4間の接続の切換処理等を実施し、マルチキャスタ22はメインPC21により生成されたマルチ画面全体の画面データをサブPC23?27にマルチ配信し、画面表示装置であるサブPC23?27は例えばパーソナルコンピュータで構成され、マルチ送信されたマルチ画面全体の画面データの中から選択し、その選択した画面データにしたがって当該ディスプレイに画面を表示し(【0009】)、
サブPC23?27の監視アプリ43は画面表示アプリ42の状態を監視し、その画面表示アプリ42に障害が発生していることを検知すると、障害が発生している旨をメインPC21に通知し、メインPC21の接続管理アプリ32はいずれかのサブPCの監視アプリ43から障害発生通知を受けると、そのサブPCをディスプレイから切り離し、予備のサブPCをディスプレイに接続する(【0011】)、
大画面表示システム(【0008】)。」

エ 引用文献4について
周知技術を示す文献として原査定の備考欄で引用された、特開平06-223288号公報(以下、「引用文献4」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている(下線は、当審で付与した。)。

「【0001】
【産業上の利用分野】この発明は計算機により制御されるプラントの運転状態を表示する運転状態表示システムに関するものである。

「【【0017】実施例2(請求項2対応).図3はこの発明の実施例2に係る運転状態表示システムのブロック図である。図3において、図1に示す構成要素に対応するものには同一の符号を付し、その説明を省略する。なお、図3では図1に示す通信制御装置4、データ入出力装置5、データ入力装置6、画像ファイル7、及び計算機8が省略されている(以下の実施例3,4,5,についても同様に省略する)。図3において、10a,10bは画像信号発生装置2a,2bからそれぞれ出力された画像信号を分配する分配手段としての分配器、9a,9bは分配器10a,10bで分配された画像信号を切替えてビデオプロジェクタ1a,1bに与える切替器である。
【0018】次にこの実施例2の動作について説明する。画像信号発生装置2aからは図4に示すように画像信号Aが出力され、画像信号発生装置2bからは画像信号Bが出力されるとすると、切替器9a,9bは画像信号A又は画像信号Bを出力しビデオプロジェクタ1a,1bにそれぞれ与える。したがってビデオプロジェクタ1a,1bには画像信号A,Aと画像信号A,Bと画像信号B,Aと画像信号B,Bの4種類の組合わせの画面が表示される。」

よって、引用文献4には、次の技術事項が記載されているものと認められる。
「画像信号発生装置2a,2bからそれぞれ出力された画像信号を分配する分配手段としての分配器10a,10bと、分配器10a,10bで分配された画像信号を切替えてビデオプロジェクタ1a,1bに与える切替器9a,9bとを備え(段落【0017】より。以下、同様。)、
画像信号発生装置2aからは画像信号Aが出力され、画像信号発生装置2bからは画像信号Bが出力され、切替器9a,9bは画像信号A又は画像信号Bを出力しビデオプロジェクタ1a,1bにそれぞれ与え、したがってビデオプロジェクタ1a,1bには画像信号A,Aと画像信号A,Bと画像信号B,Aと画像信号B,Bの4種類の組合わせの画面が表示される(【0018】)、
運転状態表示システム(【0001】)。」

オ 引用文献5について
周知技術を示す文献として原査定の備考欄で引用された、特開2003-044013号公報(以下、「引用文献5」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている(下線は、当審で付与した。)。
「【0004】この発明の目的は、カーナビゲーション画面では高精細な地図表示を行うことができ、またTV画面では表示画面を縮小することなしにTV画像の表示を可能とする駆動回路、電極基板及び液晶表示装置を提供することにある。」

「【0072】次に、上記のように構成された走査線駆動回路301及び303において、第1表示モードであるカーナビゲーション画面の表示を行う場合と、第2表示モードであるTV画面の表示を行う場合の動作について説明する。なお、ここでは上記各部のうち主要な回路部の動作についてのみ説明する。
【0073】カーナビゲーション画面の表示を行う場合、走査線駆動回路301に対しては、図12のタイミングチャートに示すように、表示モード切替信号ENA=H、/ENA=Lを供給し、走査線駆動回路303に対しては、表示モード切替信号ENB=H、/ENB=L(図示せず)を供給する。
【0074】この時は、走査線駆動回路301のバッファ回路部405では、表示モード切替信号ENAによりインバータ回路413がオンするため、シフトレジスタ回路部401から二段毎に出力された走査信号は、図12に示すように走査線1ライン毎(G1,G2,…Gn)に出力される。一方、走査線駆動回路303のバッファ回路部505では、表示モード切替信号ENBによりインバータ回路511,512はオフするため、バッファ回路部505の出力はフローティング状態となる。
【0075】このように、カーナビゲーション画面の表示を行う期間中は、走査線駆動回路301からは走査線1ライン毎に走査信号が出力される一方、走査線駆動回路303は停止した状態となる。
【0076】TV画面の表示を行う場合は、走査線駆動回路301に対しては、表示モード切替信号ENA=L、/ENA=H(図示せず)を供給し、走査線駆動回路303に対しては、図13のタイミングチャートに示すように、表示モード切替信号ENB=L、/ENB=Hを供給する。
【0077】この時は、走査線駆動回路303のバッファ回路部505では、表示モード切替信号ENBによりインバータ回路511,512がオンするため、シフトレジスタ回路部501から二段毎に出力された走査信号は、図13に示すように走査線2ライン同時(G1+G2,G3+G4,…Gn-1+Gn)に出力される。一方、走査線駆動回路301のインバータ回路413がオフするため、バッファ回路部405の出力はフローティング状態となる。
【0078】このように、TV画面の表示を行う期間中は、走査線駆動回路303からは走査線2ライン同時に走査信号が出力される一方、走査線駆動回路301は停止した状態となる。」

よって、引用文献5には、次の技術事項が記載されているものと認められる。
「カーナビゲーション画面では高精細な地図表示を行うことができ、またTV画面では表示画面を縮小することなしにTV画像の表示を可能とする駆動回路、及び液晶表示装置(段落【0004】より。以下、同様。)であって、
カーナビゲーション画面の表示を行う場合、走査線駆動回路303のバッファ回路部505の出力はフローティング状態となり(【0073】、【0074】)、カーナビゲーション画面の表示を行う期間中は、走査線駆動回路301からは走査線1ライン毎に走査信号が出力される一方、走査線駆動回路303は停止した状態となり(【0075】)、
TV画面の表示を行う場合は、走査線駆動回路301のバッファ回路部405の出力はフローティング状態となり(【0076】、【0077】)、TV画面の表示を行う期間中は、走査線駆動回路303からは走査線2ライン同時に走査信号が出力される一方、走査線駆動回路301は停止した状態となる(【0078】)、
駆動回路、及び液晶表示装置(【0004】)」

(2)対比・判断
ア 本願発明1について
本願発明1と引用発明とを対比する。
(ア)引用発明における「航空機に用いられる表示装置」は、「飛行上必要な情報」を表示するものであるから、本願発明1における「航空機コックピットのディスプレイ」に相当する。

(イ)引用発明における「液晶マトリクスディスプレイ装置」は、「N行M列のドットから成るマトリクスとして構成され」ているから、本願発明1における「行および列で配列されたピクセルを有する液晶マトリクスを有するディスプレイパネル」に相当する。

(ウ)引用発明の「液晶マトリクスディスプレイ装置」における「複数の蛍光管をベースとする照明システム」が、本願発明1における「前記液晶マトリクスを照らすためのバックライト」に相当する。

(エ)引用発明では、「各制御行61を2つの制御行611及び612に置き換え、第1の行611は画面の右側部分として機能し、そして第2の行612は画面の左側部分として機能し、一連の行611は第1電子ドライバ661が駆動し、そして一連の行612は第2電子ドライバ662が駆動し、2つの電子ドライバは独立し、かつ2つの異なるコンピュータサブアセンブリによって制御され」るから、引用発明における「2つの電子ドライバ」と、本願発明1における「動作可能に結合され前記液晶マトリクス内の前記行の全てを各々が駆動する行ドライバ」とは、「動作可能に結合され前記液晶マトリクス内の行を駆動する行ドライバ」の点で共通する。

(オ)引用発明における「一連の行」及び「制御列」を「駆動する」「2つの電子ドライバ」、及び「画像を演算し、そして生成して前記表示ゾーンに機能を提供する電子再構成ユニット」を含む「2つの独立した電子サブアセンブリ」(以下、便宜上、これらを総称して「2つの独立した電子サブアセンブリ等」ということがある。)が、本願発明1における「独立した第1および第2のビデオチャネル」に相当する。

(カ)引用発明における「第1電子ドライバ651」は、「液晶マトリクスディスプレイ装置」の「画面の右側ゾーンとして機能する制御列」を「駆動」しているから、本願発明1における「動作可能に結合され前記液晶マトリクスの第1の部分の前記列を駆動する第1の列ドライバ」に相当する。
そして、上記(オ)を踏まえると、引用発明における「2つの独立した電子サブアセンブリ等」のうち、一方の「電子サブアセンブリ等」が上記「第1電子ドライバ651」を有していることが、本願発明1における「前記第1のビデオチャネルが、動作可能に結合され前記液晶マトリクスの第1の部分の前記列を駆動する第1の列ドライバを有し」ていることに相当する。

同様に、引用発明における「第2電子ドライバ652」は、「液晶マトリクスディスプレイ装置」の「画面の左側ゾーンとして機能する制御列」を「駆動」しているから、本願発明1における「動作可能に結合され前記液晶マトリクスの第2の部分の前記列を駆動する第2の列ドライバ」に相当する。
そして、上記(オ)を踏まえると、引用発明における「2つの独立した電子サブアセンブリ等」のうち、他方の「電子サブアセンブリ等」が上記「第2電子ドライバ652」を有していることが、本願発明1における「前記第2のビデオチャネルが、動作可能に結合され前記液晶マトリクスの第2の部分の前記列を駆動する第2の列ドライバを有し」ていることに相当する。

(キ)引用発明の「2つの独立した電子サブアセンブリ等」において、「2つの独立した表示ゾーン」のうち、「飛行上必要な情報」である「重要情報」を表示する「表示ゾーン」の「表示動作」を行う、「電子サブアセンブリ等」が、本願発明1における「前記独立した第1および第2のビデオチャネルのうちのアクティブなビデオチャネル」に相当する。

(ク)引用発明では、「複数の電子サブアセンブリの内のいずれか一つのサブアセンブリが故障した、または2つの表示ゾーンの内の一方のゾーンが機能しなくなって2つの表示ゾーンの内の一方が無効になった場合、飛行上必要な情報は正常に機能し続けている表示ゾーンに表示されるが、この表示動作は、電子サブアセンブリに含まれ、画像を演算し、そして生成して前記表示ゾーンに機能を提供する電子再構成ユニットによって自動的に行なわれ」ているから、引用発明における「電子サブアセンブリ」は、その「電子再構成ユニット」内に、「飛行上必要な情報」を表示していた「電子サブアセンブリ」や「表示ゾーン」(つまり、「電子サブアセンブリ等」)(本願発明1でいう「アクティブなビデオチャネル」)の「故障」を検出する手段を有していることは明らかである。
よって、引用発明の「電子サブアセンブリ」が有する、「飛行上必要な情報」の「表示ゾーン」の「表示動作」を行う「電子サブアセンブリ等」の「故障」を検出する手段が、本願発明1における「前記独立した第1および第2のビデオチャネルのうちのアクティブなビデオチャネルでの故障を検出する手段」に相当するといえる。

(ケ)引用発明における、「電子サブアセンブリに含まれ、画像を演算し、そして生成して前記表示ゾーンに機能を提供する電子再構成ユニット」は、「2つの表示ゾーンの内の一方が無効になった場合、飛行上必要な情報は正常に機能し続けている表示ゾーンに表示されるが」、「故障によって影響を受けるゾーンが上記情報の表示専用になっている場合、さほど重要ではない情報に代えて上のような重要情報が正常に機能し続ける画面ゾーンに表示される」ことを「自動的に行な」っているから、上記「カ」、「キ」及び「ク」を踏まえると、本願発明1における「前記故障の検出に応答して、自動的に、前記ディスプレイパネルにビデオ信号を表示するために前記独立した第1および第2のビデオチャネルのうちの前記アクティブなビデオチャネルを非アクティブにし、前記独立した第1および第2のビデオチャネルのうちの他方の非アクティブなビデオチャネルをアクティブにするスイッチ」とは、「前記故障の検出に応答して、自動的に、前記ディスプレイパネルにビデオ信号を表示するために前記独立した第1および第2のビデオチャネルのうちの前記アクティブなビデオチャネルを非アクティブにする装置」の点で共通するといえる。

よって、本願発明1と引用発明との一致点、相違点は、次のとおりである。
(一致点)
「航空機コックピットのディスプレイであって、
行および列で配列されたピクセルを有する液晶マトリクスを有するディスプレイパネルと、
前記液晶マトリクスを照らすためのバックライトと、
動作可能に結合され前記液晶マトリクス内の前記行を駆動する行ドライバをそれぞれが有する独立した第1および第2のビデオチャネルであって、前記第1のビデオチャネルが、動作可能に結合され前記液晶マトリクスの第1の部分の前記列を駆動する第1の列ドライバを有し、前記第2のビデオチャネルが、動作可能に結合され前記液晶マトリクスの第2の部分の前記列を駆動する第2の列ドライバを有し、前記第1の部分が前記第2の部分と同一ではない、独立した第1および第2のビデオチャネルと、
前記独立した第1および第2のビデオチャネルのうちのアクティブなビデオチャネルでの故障を検出する手段と、
前記故障の検出に応答して、自動的に、前記ディスプレイパネルにビデオ信号を表示するために前記独立した第1および第2のビデオチャネルのうちの前記アクティブなビデオチャネルを非アクティブにする装置と
を備える航空機コックピットのディスプレイ。」

(相違点1)
本願発明1では、「行ドライバ」が「動作可能に結合され前記液晶マトリクス内の前記行の全てを各々が駆動する」のに対し、引用発明では「各制御行61」は「2つの制御行611及び612に置き換え」られており、「第1電子ドライバ661」は、「画面の右側部分として機能」する「第1の行611」を駆動し、「第2電子ドライバ662」は、「画面の右側部分として機能」する「第2の行612」を駆動している点。

(相違点2)
本願発明1では、「前記故障の検出に応答して、自動的に、前記ディスプレイパネルにビデオ信号を表示するために前記独立した第1および第2のビデオチャネルのうちの前記アクティブなビデオチャネルを非アクティブにし、前記独立した第1および第2のビデオチャネルのうちの他方の非アクティブなビデオチャネルをアクティブにするスイッチ」を備えているのに対し、
引用発明では、「複数の電子サブアセンブリの内のいずれか一つのサブアセンブリが故障した、または2つの表示ゾーンの内の一方のゾーンが機能しなくなって2つの表示ゾーンの内の一方が無効になった場合、飛行上必要な情報は正常に機能し続けている表示ゾーンに表示されるが、この表示動作は、電子サブアセンブリに含まれ、画像を演算し、そして生成して前記表示ゾーンに機能を提供する電子再構成ユニットによって自動的に行なわれ」るものの、「飛行上必要な情報」が表示されるのは、「無効」(本願発明1でいう、「非アクティブ」)とされていた「表示ゾーン」ではなく、「正常に機能し続けている表示ゾーン」であって、「電子再構成ユニット」は、「無効」とされていた「表示ゾーン」のための「電子サブアセンブリ等」(本願発明1でいう「非アクティブなビデオチャネル」)を、「正常に機能」する(本願発明1でいう「アクティブにする」)ようにする「スイッチ」を備えるものではない点。

そこで上記相違点について検討する。

(ア)(相違点1)について
引用発明では、「各表示装置の電子アーキテクチャを2つの独立した電子サブアセンブリとして構成し、他方においては、表示ゾーンを2つの独立したゾーンとして構成して、種々の電子アセンブリの内のいずれか一つのサブアセンブリが故障する、または2つの表示ゾーンの内の一つの表示ゾーンが機能しなくなっても最悪の場合でも表示装置の半分だけが機能しなくなるようにする」(引用文献1の段落【0007】)ことを課題として、従来の表示装置における「各制御行61」を、「2つの制御行611及び612に置き換え」、「画面の右側部分」を、「第1電子ドライバ661」が駆動し、「画面の左側部分」を、「第2電子ドライバ662」が駆動するようにしたものである。
すると、引用発明において、「2つの制御行611及び612」を、敢えて従来の表示装置のように、1つの「制御行61」に構成し直しすことは、引用発明における上記課題解決にそぐわない構成を採用することになるから、当業者に動機付けられないことである。
また、「2つの制御行611及び612」を1つの「制御行61」に構成し直したうえで、上記相違点1に係る本願発明の構成のように、「第1電子ドライバ661」及び「第2電子ドライバ662」の「各々」が「各制御行61」の「全て」を駆動するようにして、上記課題を解決することは、引用文献1に記載されていないだけでなく(なお、引用文献1の「第2の実施形態」は、「表示画面の解像度が故障時に単に2分の1に低下するだけである」ようにするため、「第1電子ドライバは第1、第3、そして一般的には奇数列を駆動する。第2電子ドライバは第2、第4、そして一般的には偶数列を駆動する。」(段落【0036】)ようにしているのであるから、「第2の実施形態」に示された制御行についての構成だけを「第1の実施形態」に適用することは困難である。)、引用文献2-5にも記載も示唆もされていない。
よって、引用発明1において、上記相違点1に係る本願発明1のような構成を採用することは、当業者が容易になし得たことであるとはいえない。

(イ)したがって、上記相違点2について検討するまでもなく、本願発明1は、当業者が引用発明及び引用文献2-5に記載された技術に基づいて、容易に発明をすることができたものとはいえない。

イ 本願発明2-10について
本願発明2-9は、本願発明1を減縮した発明であり、また、本願発明10も、実質的に、本願発明1を減縮した発明であって、本願発明2-10は、上記「ア」に記載した「(相違点1)」に係る本願発明1の構成、つまり、「行ドライバ」が「動作可能に結合され前記液晶マトリクス内の前記行の全てを各々が駆動する」構成を備えている。
よって、本願発明2-10は、本願発明1について述べたのと同様の理由により、当業者が引用発明及び引用文献2-5に記載された技術に基づいて、容易に発明をすることができたものとはいえない。

(3)小括
以上のとおり、本願発明1-10は、当業者が引用発明及び引用文献2-5に記載された技術に基づいて、容易に発明をすることができたものとはいえない。
よって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することができない。

第4 当審拒絶理由について
1.当審拒絶理由の概要
「この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。


1.請求項1には「動作可能に結合され前記液晶マトリクス内の前記行の全てをの各々が駆動する行ドライバ」とあるが、該記載中の「全てをの各々が」との記載は日本語として不適切であるので、請求項1に係る発明における「行ドライバ」の構成が不明確である(「全てを各々が」の誤記と認められる。)。

2.請求項1には「前記故障を検出に応答して、・・・スイッチ」とあるが、、該記載中の「故障を検出に応答して」との記載は日本語として不適切であるので、請求項1に係る発明における「スイッチ」の構成が不明確である(「故障の検出に応答して」の誤記と認められる。)。

3.請求項10にも、上記「1.」「2.」で指摘したのと同様に、「全てをの各々が」、及び「故障を検出に応答して」との記載が用いられているため、請求項10に係る発明における「行ドライバ」及び「スイッチ」の構成が不明確である。

よって、請求項1、請求項10、及び請求項1を引用する請求項2-9に係る発明は明確でない。」

2.当審拒絶理由の判断
平成30年7月4日付けの手続補正によって、請求項1、10における「全てをの各々が」は、「全てを各々が」と補正され、「故障を検出に応答して」は、「故障の検出に応答して」と補正された。このことにより、請求項1-10に係る発明は明確となった。

第5 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2018-10-02 
出願番号 特願2013-54485(P2013-54485)
審決分類 P 1 8・ 537- WY (G09G)
P 1 8・ 121- WY (G09G)
最終処分 成立  
前審関与審査官 西島 篤宏  
特許庁審判長 小林 紀史
特許庁審判官 清水 稔
須原 宏光
発明の名称 航空機コックピットのディスプレイのための装置  
代理人 小倉 博  
代理人 黒川 俊久  
代理人 荒川 聡志  
代理人 田中 拓人  

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