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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A61B
管理番号 1344632
審判番号 不服2016-16481  
総通号数 227 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-11-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-11-04 
確定日 2018-09-26 
事件の表示 特願2012- 28085「超音波トランスデューサアレイおよび位相アンテナアレイを含むエネルギー伝達装置ならびにそれを用いた組織内照射焼灼領域の調整方法」拒絶査定不服審判事件〔平成24年 9月10日出願公開、特開2012-170821〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成24年2月13日(パリ条約による優先権主張 平成23年2月17日 (US) アメリカ合衆国)の特許出願であって、平成28年9月8日付けで拒絶すべき旨の査定がされた。
これに対し、平成28年11月4日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正書が提出され、特許請求の範囲について補正された。その後、平成29年10月2日付けで当審より拒絶の理由が通知され、同年12月6日に意見書とともに手続補正書が提出され、特許請求の範囲についてさらに補正されたものである。

第2 本願発明
本願の請求項1?18に係る発明は、平成29年12月6日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?18に記載された事項により特定されるものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりである。

【請求項1】
「医療装置であって、
組織に隣接して配置された位相アンテナアレイによる組織領域内へのエネルギー伝達を受ける組織領域を表わす超音波トランスデューサアレイから取得したデータを用いて超音波画像を表示するように構成された超音波画像化システムと、
組織内照射焼灼領域を調整するために、前記位相アンテナアレイの放射ビームを選択的に誘導するように前記位相アンテナアレイを調整するように構成された制御システムと、
冷却液源を含み、かつ、前記冷却液源からの冷却流体を電磁窓に出入りさせて循環させるように構成された冷却液供給システムであって、前記冷却液供給システムは前記電磁窓にのみ直接連通しており、前記冷却液源は前記冷却流体を所定の温度に維持するように構成される、冷却液供給システムと、
を含む、医療装置。」

第3 当審が通知した拒絶の理由
平成29年10月2日付けで当審が通知した拒絶の理由のうち、理由4は概略以下のとおりである。
本願発明は、その優先権主張の日前に日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった以下の引用文献1に記載された発明及び引用文献2に記載された事項に基いて、その優先権主張の日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献1:米国特許出願公開第2009/0221999号明細書
引用文献2:米国特許出願公開第2006/0265034号明細書

第4 引用文献の記載事項及び引用発明
(1)引用文献1
引用文献1には、「THERMAL ABLATION DESIGN AND PLANNING METHODS」(熱アブレーションの設計及び計画方法)について、FIG.1?10とともに、以下の事項が記載されている。なお、括弧内の日本語は、当審で付した仮訳である。
(1-ア)
「[0066] The antenna design is crucial for focusing EM radiation required for controlled tumor ablation. As alluded to earlier, it is possible to focus near-field microwave energy using phased antennas without significantly affecting tissue between the instrument and ablation region. This is illustrated in FIGS.1A-1C. In order to create an arbitrary shape suited for targeted thermal therapy, the integrated EM/thermal model is needed to determine the exact antenna geometries and excitation characteristics (frequency, amplitude, phasing) that can produce a desired shape for a hot spot.」([0066]アンテナの設計は、制御された腫瘍アブレーションに必要とされる電磁波放射を集束させるために重要である。前に触れたように、器具と切除領域間の組織に大きな影響を与えることなくフェーズド・アンテナを用いて近接場マイクロ波エネルギーを集束させることができる。これは、図1A-1Cに示されている。目標とする加熱治療に適した任意の形状を作成するために、統合電磁波/熱モデルは、正確なアンテナの幾何学形状及びホットスポットの所望の形状を得ることができる励起特性(周波数、振幅、位相)を決定するために必要である。)

(1-イ)
「[0104] In this example microwave electromagnetic radiation is used to aid in adipose tissue reduction. The medical tool is designed to be manipulated by hand or an articulated arm over the patient's skin. This handheld device includes a monochromatic microwave radiating element (multiple antennas), a microwave beam shaper and a fat-layer sensor. The electromagnetic field delivered by the antennas is transmitted into interferential radiating waves. These interferential waves propagate through and under the patient skin. By constructive and destructive interference, electric field patterns are generated. Since the electrical field is heating tissue, a temperature gradient is generated around the pattern. One or multi-remote heat sources can be created in the depth of the patient body. This technology offers the advantages of a good contrast ratio between the constructive and destructive interference and to generate a remote heat source. Applying this interferometry technology over the skin of a fatty body part, a physician can heat, soften and even “burn” adipose layer without touching any surrounding tissue like the skin, dermis or muscles. FIG. 9 illustrates a handheld microwave device treating a fat layer just below the epidermis. 」([0104]この例ではマイクロ波電磁放射は、脂肪組織低減を支援するために使用される。医療器具は、患者の皮膚上で手や多関節アームによって操作されるようになっている。ハンドヘルド装置は、単色波の放射エレメント(複数のアンテナ)、マイクロ波ビームシェイパー及び脂肪層センサとを備えている。アンテナによって供給される電磁界は、干渉放射波に伝達される。これら干渉波は患者の皮膚を通して下に伝播する。強め合いおよび弱め合いの干渉により、電界パターンが生成される。電界が組織を加熱するため、電界パターンの周囲に温度勾配が生じる。一つまたは複数の離れた熱源が、患者の体内に生成される。この技術は、これらの強め合うおよび弱め合う干渉との間の十分なコントラスト比の利点を提供し、離れた熱源を生成する。脂肪の多い体の部位上にこの干渉法技術を適用すると、医師は、周囲の皮膚、真皮や筋肉組織に触れることなく脂肪層を加熱し、軟化させ、「燃焼」させることができる。 図9は表皮の直下の脂肪層を処理するハンドヘルドマイクロ波デバイスを図示したものである。)


(1-ウ)「[0105] FIG.10 is schematic illustration of the liposuction microwave probe system 100. The system includes a display portion 110, cooling element 101 and modulator 106, US imaging sensor 103 and associated guidance portion 104. A high-frequency modulator 105, operated by a controller 107, controls the spatial distribution of the microwave energy for generating the desired ablation 112b shape by a phase and frequency selection. The display 110 generates an image 112a of the shape based on the chosen antenna characteristics through controller 107. The shape 112a is overlayed on a real-time US image from US sensor 103. The controller 107 is depicted schematically as having a knob to control the MW energy level, and depth and shape for the heat spot.」([0105]図10は脂肪吸引マイクロ波プローブシステム100の概略図である。システムは表示部110、冷却要素101および調整器106、超音波撮像素子103および関連する案内部104とを含む。コントローラ107によって操作される高周波調整器105は、位相及び周波数を選択することにより所望のアブレーション112bの形状を生成するためのマイクロ波エネルギーの空間分布を制御する。ディスプレイ110は、コントローラ107を介して、選択されたアンテナ特性に基づいた形状の画像112aを生成する。形状112aは、超音波センサ103からのリアルタイムの超音波画像上に重ね合わされる。コントローラ107は、マイクロ波エネルギーレベル、熱スポットの深さ及び形状を制御するためのノブを有するように概略的に図示される。)



(1-エ)「[0106] The handheld probe system described above is integrated within a computer control system or station. The station is mobile and can be moved from one patient room to another. The handheld device (e.g., as depicted in FIG.9) for system 100 includes temperature sensors to monitor a patient's skin temperature. As noted, the US sensor 103 generates real-time images of the region beneath the surface of the skin. This sensor may be an ultrasound linear or b-mode sensor which measures the patient's tissue profile. This type of imagery, registered spatially with the interferential element, provides the scaling of the layers necessary to determine the depth of where the heat should be applied and the shape of the hot spot. The microwave antenna 102 and the interferential element are mounted on a mobile platform that can be adjusted to set the proper heat depth of focus in the fat layer. The antenna probe may be oriented so as to minimize second order diffraction and optimize heat contrast.
[0107] The handheld probe is equipped with a cooling mechanism 101 to reduce heat generated at the handheld interface. The cooling mechanism 101 is built with a cooling circulator, a flow sensor and a valve. All three devices are computer controlled to optimize the temperature profile of the patient's body tissue. The fluid flow control, derived by the cooling circulator, regulates the heat absorption at the surface of the patient's skin and can be optimized to improve the heat contrast within the tissue. One can imagine changing the fluid temperature as well to optimize the temperature profile under the patient's skin. The temperature sensors are used as feedback mechanisms to adapt the fluid flow or fluid temperature.」([0106]上述したハンドヘルドプローブシステムはコンピュータ制御システムまたはステーション内に統合される。ステーションは可動性であり、1人の患者の部屋から他の患者の部屋に移動させることができる。システム100のためのハンドヘルド装置(たとえば、図9に示されるような)は、患者の皮膚温度を監視するように構成されている温度センサを含む。上記のように、超音波センサ103は、皮膚の表面下領域のリアルタイム画像を生成する。このセンサは、患者の組織プロファイルを測定する超音波リニアセンサまたはBモードセンサであってもよい。このタイプの干渉素子と空間的に登録され、熱を適用すべきの深さを決定するために必要な層のスケーリング及びホットスポットの形状を提供する。マイクロ波アンテナ102および干渉素子は、脂肪層に焦点が合わされた適切な加熱深さを設定するために調整することができる可動式プラットフォームに取り付けられている。アンテナプローブは、2次回折を最小にし、熱の分布を最適化するように配向することができる。
[0107]ハンドヘルド型プローブは、ハンドヘルド式インタフェースで発生した熱を減少させるために冷却機構101を備える。冷却機構101は、冷却サーキュレータ、流れセンサ及び弁が内蔵されている。全ての3つの器具は、患者の体組織の温度プロファイルを最適化するために、コンピュータ制御される。流体流量制御、冷却サーキュレータであることに起因して、患者の皮膚の表面での熱吸収は調整され、組織内の熱分布を改善するために最適化することができる。想像できるように、流体温度を変えることによって、患者の皮膚の下の温度プロファイルを最適化することができる。温度センサーは、流体の流れあるいは流体温度を適合させるためのフィードバック機構として使用される。)

(1-オ)FIG.10には、少なくとも患者の身体近傍に設置されたマイクロ波アンテナ102、超音波センサ103及び冷却機構101と、表面冷却調整器106とを含む脂肪吸引マイクロ波プローブシステム100が図示されている。

(1-a)摘記事項(1-イ)「[0104]この例ではマイクロ波電磁放射は、脂肪組織低減を支援するために使用される。医療器具は、患者の皮膚上で手や多関節アームによって操作されるようになっている。ハンドヘルド装置は、単色波の放射エレメント(複数のアンテナ)、マイクロ波ビームシェイパー及び脂肪層センサとを備えている。アンテナによって供給される電磁界は、干渉放射波に伝達される。これら干渉波は患者の皮膚を通して下に伝播する。・・・脂肪の多い体の部位上にこの干渉法技術を適用すると、医師は、周囲の皮膚、真皮や筋肉組織に触れることなく脂肪層を加熱し、軟化させ、「燃焼」させることができる。 図9は表皮の直下の脂肪層を処理するハンドヘルドマイクロ波デバイスを図示したものである。」及び摘記事項(1-エ)「マイクロ波アンテナ102および干渉素子は、脂肪層に焦点が合わされた適切な加熱深さを設定するために調整することができる可動式プラットフォームに取り付けられている。アンテナプローブは、2次回折を最小にし、熱の分布を最適化するように配向することができる。」との記載を技術常識を踏まえてみると、引用文献1に記載された医療器具は、患者の皮膚上に配置されたマイクロ波の干渉を利用するマイクロ波アンテナ102および干渉素子を備え、放射されるマイクロ波により、周囲の皮膚、真皮や筋肉組織に触れることなく、脂肪層を加熱することができるものといえる。

(1-b)上記認定事項(1-a)をふまえ、摘記事項(1-ウ)「[0105]図10は脂肪吸引マイクロ波プローブシステム100の概略図である。システムは表示部110、冷却要素101および調整器106、超音波撮像素子103および関連する案内部104とを含む。・・・ディスプレイ110は、コントローラ107を介して、選択されたアンテナ特性に基づいた形状の画像112aを生成する。形状112aは、超音波センサ103からのリアルタイムの超音波画像上に重ね合わされる。」との記載、摘記事項(1-エ)「[0106]・・・上記のように、超音波センサ103は、皮膚の表面下領域のリアルタイム画像を生成する。このセンサは、患者の組織プロファイルを測定する超音波リニアセンサまたはBモードセンサであってもよい。このタイプの干渉素子と空間的に登録され、熱を適用すべきの深さを決定するために必要な層のスケーリング及びホットスポットの形状を提供する。」との記載を技術常識を踏まえてみると、引用文献1の超音波センサ103は、マイクロ波アンテナ102および干渉素子からのマイクロ波により加熱される脂肪層のリアルタイム画像を生成するものということができ、さらに、引用文献1の表示部110は、当該超音波センサ103で生成されるリアルタイム画像を表示するためのものといえる。

(1-c)上記認定事項(1-a)及び(1-b)をさらに整理すると、引用文献1に記載された医療器具は、患者の皮膚上に配置されたマイクロ波アンテナ102及び干渉素子による患者組織領域内へ放射されるマイクロ波により加熱される脂肪層のリアルタイム画像を生成する超音波センサ103と、該リアルタイム画像を表示するように構成された表示部110と、を含むものいうことができる。

(1-d)上記(1-a)をふまえ、摘記事項(1-イ)「ハンドヘルド装置は、単色波の放射エレメント(複数のアンテナ)、マイクロ波ビームシェイパー及び脂肪層センサとを備えている。アンテナによって供給される電磁界は、干渉放射波に伝達される。これら干渉波は患者の皮膚を通して下に伝播する。強め合いおよび弱め合いの干渉により、電界パターンが生成される。電界が組織を加熱するため、電界パターンの周囲に温度勾配が生じる。一つまたは複数の離れた熱源が、患者の体内に生成される。この技術は、これらの強め合うおよび弱め合う干渉との間の十分なコントラスト比の利点を提供し、離れた熱源を生成する。脂肪の多い体の部位上にこの干渉法技術を適用すると、医師は、周囲の皮膚、真皮や筋肉組織に触れることなく脂肪層を加熱し、軟化させ、「燃焼」させることができる。」との記載及び摘記事項(1-ウ)「コントローラ107によって操作される高周波調整器105は、位相及び周波数を選択することにより所望のアブレーション112bの形状を生成するためのマイクロ波エネルギーの空間分布を制御する。」との記載を技術常識を踏まえてみると、引用文献1の高周波調整器105及びコントローラ107は、アブレーション112bの形状を生成するためのマイクロ波エネルギーの空間分布を制御するために、マイクロ波アンテナ102及び干渉素子からのマイクロ波の位相及び周波数を選択するよう構成されたものであるといえる。

(1-e)摘記事項(1-ウ)「[0105]図10は脂肪吸引マイクロ波プローブシステム100の概略図である。システムは表示部110、冷却要素101および調整器106、超音波撮像素子103および関連する案内部104とを含む。」及び摘記事項(1-エ)「[0107]ハンドヘルド型プローブは、ハンドヘルド式インタフェースで発生した熱を減少させるために冷却機構101を備える。冷却機構101は、冷却サーキュレータ、流れセンサ及び弁が内蔵されている。全ての3つの器具は、患者の体組織の温度プロファイルを最適化するために、コンピュータ制御される。流体流量制御、冷却サーキュレータであることに起因して、患者の皮膚の表面での熱吸収は調整され、組織内の熱分布を改善するために最適化することができる。想像できるように、流体温度を変えることによって、患者の皮膚の下の温度プロファイルを最適化することができる。」との記載及び図示内容(1-オ)からみて、摘記事項(1-ウ)の「冷却要素101」と摘記事項(1-エ)の「冷却機構101」、また摘記事項(1-ウ)の「調整器106」と図示内容(1-オ)の「表面冷却調整器106」とは、それぞれの機能及び同じ符号が付されていることからみて、それぞれ同じものを指していると解される(以下、それぞれ「冷却要素101」、「表面冷却調整器106」と表記を統一して扱うこととする。)から、引用文献1の冷却要素101及び表面冷却調整器106は、患者の体組織の温度プロファイルを最適化するために、冷却流体を冷却要素101に循環するように構成されたものであるといえる。

そこで、引用文献1の上記摘記事項(1-ア)?(1-エ)、図示内容(1-オ)及び上記認定事項(1-a)?(1-e)を図面を参照しつつ技術常識を踏まえ、本願発明に対応させて整理すると、引用文献1には以下の発明(以下「引用発明」という。) が記載されていると認められる。

「医療器具であって、
患者の皮膚上に配置されたマイクロ波アンテナ102及び干渉素子による患者組織領域内へ放射されるマイクロ波により加熱される脂肪層のリアルタイム画像を生成する超音波センサ103と、該超音波センサ103で生成されたリアルタイム画像を表示するように構成された表示部110と、
アブレーション112bの形状を生成するためのマイクロ波エネルギーの空間分布を制御するために、マイクロ波アンテナ102及び干渉素子からのマイクロ波の位相及び周波数を選択するよう構成された高周波調整器105及びコントローラ107と、
冷却流体を循環させるように構成された冷却要素101及び表面冷却調整器106であって、前記冷却要素101及び表面冷却調整器106は、患者の体組織の温度プロファイルを最適化するように構成される、冷却要素101及び表面冷却調整器106と、
を含む、医療器具。」

(2)引用文献2
引用文献2には、「MICROWAVE DEVICES FOR TREATING BIOLOGICAL SAMPLES AND TISSUE AND METHODS FOR USING SAME」(生物学的サンプル及び組織を治療するためのマイクロ波装置及びその使用方法。)について、Fig.1?20とともに、次の事項が記載されている。なお、括弧内の日本語は、当審で付した仮訳である。

(2-ア)「FIELD OF INVENTION
[0002] The invention relates to energy emitting devices that can be used to subject samples or living tissue to energy, particularly focused energy capable of heating fluid samples or tissue. In preferred embodiments, the device comprises a patch, annular or concentric antenna device capable of being placed in electrical contact with the sample or tissue. In other preferred embodiments, flexible material is used to sufficiently contact tissue or surface contours without deteriorating the energy delivery or efficiency of the antenna used. In other preferred embodiments, a water or solutionfilled bolus chamber encased in a solid material is used. The methods of the invention include: a method to treat skin tissue to reduce or eliminate fine lines, age lines, or wrinkles; a method for treating muscle pain or muscle fatigue for example, after exercise; a method of treating blood samples to reduce or eliminate microorganisms and viruses; and a method for treating, purifying, or decontaminating water or fluid, such as water or fluid used in or circulating through a building, such as in a heating or cooling system. Compared to other probes, electrodes, and antenna used previously, the devices and methods of the invention provide added control and/or focusing potential in emitting energy to advantageously treat or heat specific points under the surface of skin or tissue without adversely effecting nearby tissue.・・・」(技術分野
[0002]この発明は、サンプルまたは生体組織に与えるエネルギー、液体サンプルまたは組織を加熱することができる特に収束エネルギーのエネルギー放出装置に関するものである。好ましい実施形態では、装置は、試料または組織と電気的に接触して配置可能なパッチ、環状または同心アンテナ装置を備えている。他の好ましい実施形態では、可撓性材料は、使用されるアンテナのエネルギー送達または効率を悪化させることなく、組織または表面輪郭に良好に接触するために使用される。他の好ましい実施形態では、固体材料に包まれた溶液が充填されたボーラスチャンバが使用される。本発明の方法は、小ジワ、年齢線やシワを減少又は除去する方法、例えば運動後の筋肉痛又は筋肉疲労を治療する方法、微生物およびウイルスを減少又は除去するために血液サンプルを処理する方法、そして、暖房や冷房システムの中の水又は流体のような、建物内を循環する水または流体を処理、精製、除染する方法を含む。従来用いられていた他のプローブ、電極、アンテナに比べて、本発明の装置および方法は、近くの組織に悪影響を及ぼすことなく、皮膚表面下又は組織の特定点を有利に治療または加熱するために、エネルギー放射の制御性及び/又は集束の可能性を増加する。・・・)

(2-イ)「[0012] In certain embodiments, the bolus is filled with water, deionized water, distilled water, saline solution, or a solution of silicon in water. Similarly, the substrate for certain or any embodiment is a polymer or copolymer, preferably a POM (polyoxymethylene) polymer having a dielectric coefficient of approximately 3.5. In an embodiment where the solution is deionized or distilled water, the temperature of the water in the bolus can be selected from between about 17℃. and about 28℃. The temperature of the solution or water in the bolus can be regulated by circulating the water or solution into or with a temperature controlled bath external to the bolus and/or by using commercially available temperature controlling devices. 」([0012]ある実施形態では、ボーラスは、水、脱イオン水、蒸留水、生理食塩水溶液、または水にシリコンの溶液が充填されている。同様に、特定のまたは任意の実施形態の基板は重合体または共重合体、好ましくは誘電率が3.5程度のPOM(ポリオキシメチレン)ポリマーである。溶液が脱イオン水または蒸留水である実施形態では、ボーラス内の水の温度は、約17℃と約28℃との間から選択することができる。ボーラスの溶液または水の温度は、ボーラスの外部の温度制御槽および/または商業的に入手可能な温度制御装置を用いて水または溶液を循環させることによって制御することができる。)

(2-ウ)「[0020] FIG.1 shows a cross-section view of an exemplary embodiment of the aspect of a device of the invention that can be placed in contact with skin, tissue, or a sample. Antenna element (1) is formed in a circular aperture or concentric form around the edge. The substrate (3) surrounds and maintains the form of the antenna and is typically prepared of a solid material having a desired dielectric constant. Surface (2) is the back side or side opposite to the direction of the emitted microwaves into skin or tissue or sample, and surface (2) can be coated in metal or other material to prevent energy from being emitted. Bolus (5) is formed on the opposite side with respect to surface (2) and is intended to contact the skin, tissue, or sample involved. Bolus chamber (4) is filled with a solution, preferably deionized water, and the temperature of the solution can be controlled. In some embodiments, changing the temperature of the water or solution within the bolus acts as a focusing effect on the energy emitted into the skin or tissue, such that select temperatures can direct energy to a certain depth and/or area under the surface, and other temperatures can be selected for different depth and/or areas. In a preferred embodiment, the thickness of bolus chamber (4) is about 5 mm when contact with skin is desired. 」([0020]図1は、皮膚、組織、または試料に接触させることができる本発明の装置の態様の例示的な実施形態の断面図を示している。アンテナ素子(1)は縁の周囲に、円形開口をなすようまたは同心状に形成されている。基板(3)は、アンテナの形状を包囲し、維持し、典型的には、所望の誘電率を有する固体材料からなる。表面(2)は、皮膚又は組織又はサンプルに放射されたマイクロ波の方向とは反対の裏面又は側面であり、さらに表面(2)は、エネルギーが放出されるのを防止するために、金属または他の材料で被覆することができる。ボーラス(5)は、表面(2)に対して反対側に形成され、皮膚、組織、または試料に接触するように意図されている。ボーラス室(4)は、溶液、好ましくは脱イオン水で満たされており、液の温度を制御することができる。いくつかの実施形態では、皮膚又は組織内に放出されたエネルギーの集束効果を奏するように、ボーラス内の水または溶液の温度を変化させる、すなわち表面下の特定の深さ及び/または領域にエネルギーを向けることができるように温度を選択し、異なる深さおよび/または領域となるように他の温度を選択する。好ましい実施形態では、皮膚と接触が所望される場合にはボーラス室(4)の厚さは約5mmである。)


(2-エ)「[0022] FIG.3 shows an exemplary array antenna embodiment with a bolus of 5mm in thickness. The elements as noted in the text are shown, including a circulating bolus inlet and outlet to control the temperature of the bolus, a connection to a power source or supply, in the form of a coaxial cable, and a connector to distribute energy to each aperture antenna in the array via microstrips. Both the number and type of antennae that can be selected for use can be varied from that shown in order to, for example, vary the depth of energy penetration into the skin or tissue and/or to vary the size or area of focused energy emitted to skin or tissue.」([0022]図3は厚さ5mmのボーラスを有する例示的なアレイアンテナの実施例を示す。テキストが付された要素は、ボーラスの温度を制御するための循環ボーラス入口と出口、同軸ケーブルの形態の電源又は供給への接続、マイクロストリップを介してアレイ内の各開口面アンテナにエネルギーを分配する電気コネクター(60,80,90,100)を含む。アンテナの数及びタイプは例えば、皮膚又は組織へエネルギーが透過する深さ及び/又は皮膚又は組織に放射されるエネルギーの収束エリアの大きさにより選択することができ、図示されたものから変更することができる。)




第4 対比
本願発明と引用発明(以下、それぞれを「前者」、「後者」といい、それらを併せて「両者」ということがある。)とを、各々の構成が奏する機能及び技術常識を踏まえ対比すると、後者の「医療器具」は前者の「医療装置」に相当し、同じく後者の「患者の皮膚上に配置された」は前者の「組織に隣接して配置された」に、後者の「患者組織領域内へ放射されるマイクロ波により加熱される脂肪層」は前者の「組織領域内へのエネルギー伝達を受ける組織領域」に、後者の「マイクロ波アンテナ102及び干渉素子」は前者の「位相アンテナアレイ」に、後者の「超音波センサ103」は前者の「超音波トランスデューサアレイ」に、後者の「表示部110」は前者の「超音波画像化システム」に、後者の「高周波調整器105及びコントローラ107」は前者の「制御システム」に、後者の「冷却要素101及び表面冷却調整器106」は前者の「冷却液供給システム」に、それぞれ相当する。また、技術常識を踏まえれば、後者における「超音波センサ103で生成されたリアルタイム画像を表示するように構成された」は前者における「超音波トランスデューサアレイから取得したデータを用いて超音波画像を表示するように構成された」ということができること、さらに、後者における「アブレーション112bの形状を生成するためのマイクロ波エネルギーの空間分布を制御するために、マイクロ波アンテナ102及び干渉素子からのマイクロ波の位相及び周波数を選択するよう構成された」は、前者の「組織内照射焼灼領域を調整するために、前記位相アンテナアレイの放射ビームを選択的に誘導するように前記位相アンテナアレイを調整するように構成された」といえることも明らかである。

そうすると、両者は、
(一致点)
「医療装置であって、
組織に隣接して配置された位相アンテナアレイによる組織領域内へのエネルギー伝達を受ける組織領域を表わす超音波トランスデューサアレイから取得したデータを用いて超音波画像を表示するように構成された超音波画像化システムと、
組織内照射焼灼領域を調整するために、前記位相アンテナアレイの放射ビームを選択的に誘導するように前記位相アンテナアレイを調整するように構成された制御システムと、
冷却流体を循環させるように構成された冷却液供給システムと、
を含む、医療装置。」 の点で一致し、以下の点で相違する。

(相違点)
冷却液供給システムについて、本願発明では「冷却液源を含み、かつ、前記冷却液源からの冷却流体を電磁窓に出入りさせて循環させるように構成され」るとともに「前記電磁窓にのみ直接連通しており、前記冷却液源は前記冷却流体を所定の温度に維持するように構成される」ものであるのに対して、引用発明ではそのような構成であるか明らかでない点。

第5 相違点の検討
(1)本願発明における「電磁窓」について
上記相違点について検討するにあたり、まず本願発明の「電磁窓」について検討する。

本願明細書には、「電磁窓」に関して以下の記載がある。
(ア)「【0020】・・・本説明で使用されている「電磁窓」とは一般に、使用時に電磁信号が通過するあらゆる種類のレードームおよび窓を指す。」

(イ)「【0031】
図1に示すように、ハウジング15は、遠位端13を含む本体部材17を含む。本体部材17は、遠位端13に組織接触面14と、組織接触面14に接続される近位縁部を含む上面12と、超音波トランスデューサ装置67およびマイクロ波位相アンテナアレイ61をその中に含むように構成された内部チャンバ7とを画定している。組織接触面14は、任意の好適な構成(例えば、平坦、平面または湾曲構成)を有していてもよく、上面12に対してほぼ垂直に配置されていてもよい。
【0032】
組織接触面14は一般に、使用時に電磁信号が通過する1つまたは複数の電磁窓を画定する1つまたは複数の領域を含む。いくつかの実施形態では、組織接触面14は、超音波透過窓27を画定する第1の領域28と、マイクロ波透過窓21を画定する第2の領域22とを含む。図1に示すように、第1の領域28は組織接触面14の下部に対応し、第2の領域22は組織接触面14の上部に対応する。超音波トランスデューサ装置67の動作は、超音波透過窓27を通して超音波エネルギーを導き、超音波透過窓27を通して超音波エネルギーを受信することを伴ってもよい。
【0033】
超音波透過窓27およびマイクロ波透過窓21は、低損失誘電体で構成されていてもよい。当然のことながら、超音波透過窓27およびマイクロ波透過窓21が互いに対して任意の好適な関係で(例えば、一方が他方の上(または下)に)配置されていてもよく、例えば、本体部材17内に収容された超音波トランスデューサ装置67および/またはマイクロ波位相アンテナアレイ61の特定の構成に応じて、任意の好適な形状を有していてもよい。
【0034】
本体部材17またはその一部は、金属、熱可塑性材料(例えば、ポリカーボネート)、複合体(例えば、プラスチック金属もしくはセラミック金属複合体)または他の材料で形成されていてもよく、手で保持可能であるように構成されていてもよい。超音波透過窓27およびマイクロ波透過窓21の設計または材料は、例えば、所望の電気性能を達成するために、組織接触面14の1つまたは複数の構造部分と比較して異なっていてもよい。」


(ウ)「【0048】
電気外科手術システム100は、医療装置10の1つまたは複数の部品と流体連通するように接続された冷却液供給システム(例えば、図3に示す350)を含んでいてもよい。いくつかの実施形態では、冷却液供給システムは、冷却流体(例えば、図3に示す「F」)を、ハウジング15の近位端13に配置された電磁窓(例えば、図3に示す390)を出入りしながら循環させるように構成されていてもよい。」

(エ)「【0054】
図3は、信号源310と、信号源310に接続された位相アンテナアレイ360と、位相アンテナアレイ360の近位端に配置された放射電磁エネルギー透過構造390(本明細書では「電磁窓」ともいう)とを含むエネルギー伝達システム(全体として300で示されている)の一実施形態の概略図である。・・・」

(オ)「【0057】
エネルギー伝達システム300は、位相アンテナアレイ360と組織「T」との間に配置される電磁窓390を含む。電磁窓390は、水ボーラス(water bolus)または他の誘電体を含んでいてもよい。いくつかの実施形態では、電磁窓390は、冷却液源355を含む冷却液供給システム350と流体連通するように接続されている。
【0058】
冷却液源355は、冷却流体「F」の貯蔵部を含む任意の好適なハウジングであってもよく、冷却流体「F」を所定の温度に維持するものであってもよい。例えば、冷却液源355は、電磁窓390から戻ってきた冷却流体「F」を冷却することができる冷却装置(図示せず)を含んでいてもよい。冷却流体「F」は、電磁窓390を冷却または緩衝するために使用することができる任意の好適な流体、例えば、脱イオン水または他の好適な冷却媒体であってもよい。・・・」


(カ)「【0073】
・・・いくつかの実施形態では、電磁窓390を、位相アンテナアレイ360と組織「T」との間に配置する。」

本願の図1及び3を参照しつつ、上記(ア)?(カ)の記載をふまえて検討すると、本願発明における「電磁窓」とは、電磁エネルギーを放射するアンテナアレイと組織との間に配置され、使用時に電磁エネルギーが透過するものと解することができる。

(2)相違点についての検討
上記(1)の「電磁窓」についての検討をふまえ、相違点について検討する。
上記第4(2)に示した記載事項(2-ア)?(2-エ)及びFig.1及び3を参照しつつ技術常識をふまえて整理すると、引用文献2には、「皮膚組織にマイクロ波を照射する装置において、マイクロ波を放出するアレイアンテナと組織との間に、使用時にマイクロ波が透過するボーラスを配置するとともに、該ボーラスはその内部に水又は溶液が充填されており、当該水又は溶液はボーラスの入口及び出口を介して、外部の温度制御装置と循環することにより約17?28℃から選択した温度に温度制御されること」(以下、「引用文献2事項」という。)が記載されているといえる。

ここで、マイクロ波は電磁エネルギーといえることは明らかであるから引用文献2事項の「ボーラス」は、本願発明の「電磁窓」ということができる。また、引用文献2事項のボーラスに充填される「水又は溶液」は約17?28℃から選択した温度という、患者の体温よりも低い温度に温度制御されることからみて、引用文献2事項はマイクロ波が照射されることにより温度上昇する皮膚表面や周辺組織を冷却することを目的としたものということができる。それを前提として、各々の機能をふまえて比較すると、引用文献2事項の「外部の温度制御装置」は本願発明の「冷却液源」に、同様に「水又は溶液」は「冷却流体」に、「温度制御する」は「所定の温度に維持する」に、「ボーラス」及び「外部の温度制御装置」は「冷却液供給システム」にそれぞれ相当するということができる。また、引用文献2事項の水又は溶液は、ボーラスの入口及び出口を介して、外部の温度制御装置と循環するのであるから、引用文献2事項の「外部の温度制御装置」は、水又は溶液をボーラスに出入りさせて循環させるように構成され、ボーラスに直接連通しているということができる。

そして、引用文献2事項は、皮膚組織にマイクロ波を照射する装置において、マイクロ波が照射されることにより温度上昇する皮膚表面や周辺組織を冷却することを目的としたものであるから、引用発明と同じ技術分野に属するとともに、引用発明の冷却要素及び表面冷却調整器と同じ目的を有するものといえる。
そうすると、引用発明の患者の体組織の温度プロファイルを最適化するように構成される冷却要素及び表面冷却調整器に上記引用文献2事項を適用するとともに、その際に冷却要素及び表面冷却調整器を電磁窓にのみ直接連通するよう構成して、相違点に係る本願発明の構成とすることは当業者が容易になし得ることといえる。

してみると、引用発明において、上記引用文献2事項を適用して、相違点における本願発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得ることである。

(3)効果について
上記相違点による効果も、引用文献1、2記載の事項から予測し得る範囲内のものであって、格別顕著なものとはいえない。

(4)まとめ
したがって、本願発明は、引用発明及び引用文献2事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第6 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び引用文献2事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2018-04-27 
結審通知日 2018-05-01 
審決日 2018-05-16 
出願番号 特願2012-28085(P2012-28085)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (A61B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 西尾 元宏森林 宏和近藤 利充  
特許庁審判長 高木 彰
特許庁審判官 熊倉 強
内藤 真徳
発明の名称 超音波トランスデューサアレイおよび位相アンテナアレイを含むエネルギー伝達装置ならびにそれを用いた組織内照射焼灼領域の調整方法  
代理人 高岡 亮一  

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