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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1344635
審判番号 不服2017-9082  
総通号数 227 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-11-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-06-21 
確定日 2018-09-26 
事件の表示 特願2015-542959「スタンプタッチ認証方法及びシステム」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 5月22日国際公開、WO2014/077657、平成28年 2月25日国内公表、特表2016-505922〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由
第1 手続の経緯

本件審判請求に係る出願(以下,「本願」という。)は,2013年11月19日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2012年11月19日(以下,「優先日」という。),2013年9月9日,2013年10月8日,韓国)を国際出願日として出願したものであって,その手続の経緯は以下のとおりである。

平成27年 5月14日 :国内書面の提出
平成27年 6月 9日 :翻訳文の提出
平成27年 6月22日 :手続補正書の提出
平成28年 7月 8日付け :拒絶理由の通知
平成28年12月19日 :意見書,手続補正書の提出
平成29年 2月 7日付け :拒絶査定
平成29年 6月21日 :審判請求書,手続補正書の提出


第2 審判請求時の補正について

1 補正の内容

平成29年6月21日付けの手続補正(以下,「本件補正」という。)の内容は,平成28年12月19日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1乃至21の記載(以下,この特許請求の範囲に記載された請求項を「補正前の請求項」という。)を,

「 【請求項1】
多重タッチ(multi-touch)を支援する静電式タッチスクリーンを具備した無線端末で実行されるスタンプタッチ認証方法であって,
前記静電式タッチスクリーンに多重タッチされた複数個のタッチ点を認識する第1段階と,
特定タッチスタンプに具備されたタッチ部の距離関係及び角度関係の中で少なくとも一つを含む設計上の幾何学的位置関係を利用して,予め設計された固定位置に位置する前記静電式タッチスクリーン上のタッチに相当するN(N≧5)個のタッチ部のうちの1個である指定されたタッチ部と,設計された算出位置に位置するn(n≧4)個の他のタッチ部を含む前記特定タッチスタンプに具備されたタッチ部の幾何学的位置関係が,許容された誤差範囲内で前記タッチ部の設計上の幾何学的位置関係とマッチングするか否かを解釈した結果を認証する第2段階と,
前記認識されたタッチ点の幾何学的位置関係が前記特定タッチスタンプの前記設計上の幾何学的位置関係とマッチングする場合に,前記特定タッチスタンプを使用して多重タッチと連携された指定されたサービスを提供する第3段階と,
を含むことを特徴とするスタンプタッチ認証方法。
【請求項2】
指定された時間間隔で前記静電式タッチスクリーンを通じてタッチ点が認識された場合に,タッチ点を繰り返し認識する段階と,
前記タッチ点が最初に認識された時点から指定された一定時間内にタッチされたタッチ点の個数が前記タッチスタンプに具備されたタッチ部の個数とマッチングするか否かを確認する段階と,
前記確認されたタッチ点の個数が前記一定時間内に前記タッチスタンプに具備されたタッチ部の個数とマッチングする場合に,前記認識されたタッチ点を前記タッチスタンプによりタッチされたタッチ点で判断する段階と,をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載のスタンプタッチ認証方法。
【請求項3】
前記静電式タッチスクリーンを通じて認識されたタッチされたタッチ点を指定された時間間隔で繰り返し認識する段階と,
前記一定時間の間繰り返し認識されたタッチ点の個数が前記タッチスタンプに具備されたタッチ部の個数とマッチングするか否かを確認する段階と,
前記繰り返し確認されたタッチ点の個数が前記タッチスタンプに具備されたタッチ部の個数とマッチングする場合に,前記認識されたタッチ点をタッチスタンプを押す行動習慣によってタッチされたタッチ点で判断する段階と,をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載のスタンプタッチ認証方法。
【請求項4】
指定された時間間隔で前記静電式タッチスクリーンを通じてタッチされたタッチ点を繰り返し認識する段階と,
前記繰り返し認識されたタッチ点の位置を繰り返し確認する段階と,
前記繰り返し確認されたタッチ点の位置を各点別に比較して前記繰り返し確認されたタッチ点の位置が変更されか否かを確認する段階と,
前記タッチ点の位置が変更されない場合に,前記繰り返し確認されたタッチ点をタッチスタンプを押す行動習慣によってタッチされたタッチ点で判断する段階と,をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載のスタンプタッチ認証方法。
【請求項5】
指定された時間間隔で前記静電式タッチスクリーンを通じてタッチされたタッチ点を繰り返し認識する段階と,
前記繰り返し認識されたタッチ点の位置関係を繰り返し確認する段階と,
前記繰り返し確認されたタッチ点の位置関係を比較して前記繰り返し確認されたタッチ点の位置関係が変更されないで静的な状態を維持するか否かを確認する段階と,
前記タッチ点のタッチされた位置関係が静的な状態を維持する場合に,前記繰り返し確認されたタッチ点を前記タッチスタンプに具備された前記タッチ部により実行されたタッチに対応するタッチ点で判断する段階と,をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載のスタンプタッチ認証方法。
【請求項6】
指定された時間間隔で前記静電式タッチスクリーンを通じてタッチされたタッチ点を繰り返し認識する段階と,
前記繰り返し認識されたタッチ点の位置を繰り返し確認する段階と,
前記繰り返し確認されたタッチ点の位置を比較して前記タッチ点の位置関係が指定された規則によって変更される動的な状態であるか否かを確認する段階と,
前記繰り返し確認されたタッチ点の位置関係が動的な状態の場合に,前記繰り返し確認されたタッチ点を前記指定された規則によって移動可能に設計製作されたタッチ部を具備した前記タッチスタンプを利用してタッチしたタッチ点で判断する段階と,をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載のスタンプタッチ認証方法。
【請求項7】
前記静電式タッチスクリーンを通じて少なくとも一つのタッチ点が認識された時点から前記静電式タッチスクリーンにタッチされたタッチ点を繰り返し認識する段階と,
前記タッチ点が繰り返し認識される間に前記タッチ点の個数と位置を繰り返し確認する段階と,
前記繰り返し確認されたタッチ点の前記個数の変化と前記繰り返し確認されたタッチ点の前記位置を判読して前記繰り返し確認されたタッチ点が指定された規則によって順次にタッチされるか否かを確認する段階と,
前記タッチ点が前記指定された規則によって順次にタッチされた場合に,前記タッチ点を指定された規則によって順次にタッチされるように設計製作されたタッチ部を具備した前記タッチスタンプを利用してタッチしたタッチ点で判断する段階と,をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載のスタンプタッチ認証方法。
【請求項8】
前記静電式タッチスクリーンを通じて認識された前記タッチ点に対する構成要素値を判読する段階と,
前記判読された構成要素値を含むタッチ認識情報を指定された経路を通じてネットワーク上の運営サーバに伝送する段階と,をさらに含み,
前記第2段階は,前記認識されたタッチ点の前記幾何学的位置関係が許容された誤差範囲内で前記特定タッチスタンプに具備されたタッチ部の前記設計上の幾何学的位置関係とマッチングするか否かを認証したタッチ認証結果を,前記指定された経路を通じて前記運営サーバから受信することを特徴とする請求項1に記載のスタンプタッチ認証方法。
【請求項9】
前記タッチスタンプに具備された前記タッチ部の設計上の幾何学的位置関係を含むタッチ認証条件を保存する保存段階 - 前記設計上の幾何学的位置関係は,前記タッチ部の距離関係及び角度関係の中で少なくとも一つを含み,
前記静電式タッチスクリーンを通じて認識されたタッチ点の構成要素値を判読する判読段階と,
前記構成要素値を利用して前記静電式タッチスクリーンにタッチされた前記タッチ点の幾何学的位置関係を算出する算出段階と,
前記タッチ認証条件に含まれた設計上の前記幾何学的位置関係が許容された誤差範囲内で前記算出された幾何学的位置関係とマッチングするか否かを解釈する解釈段階と,
をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載のスタンプタッチ認証方法。
【請求項10】
前記タッチスタンプは,前記静電式タッチスクリーンに対するタッチに対応するタッチ部のうち一つである指定されたタッチ部が予め設計された固定位置に位置し,他のタッチ部が設計された算出位置に位置するように設計製作されることを特徴とする請求項1に記載のスタンプタッチ認証方法。
【請求項11】
多重タッチを支援する静電式タッチスクリーンと連携されたシステムを通じて実行されるスタンプタッチ認証方法であって,
タッチスタンプに具備されたタッチ部の距離関係と角度関係の中で少なくとも一つを含む設計上の幾何学的位置関係を含むタッチ認証条件を保存媒体に保存する第1段階と,
前記タッチスタンプに具備された前記タッチ部により実行された前記静電式タッチスクリーンに対するタッチに対応する構成要素値を含むタッチ認識情報を受信する第2段階と,
特定タッチスタンプの分割領域上の予め設計された固定位置に位置するN(N≧5)個のタッチ部のうちの1個である指定されたタッチ部と,前記特定タッチスタンプの分割領域上の設計された算出位置に位置する残りのn(n≧4)個の他のタッチ部をそれぞれ含む前記タッチ部の前記構成要素値を利用して算出された前記静電式タッチスクリーンにタッチされたタッチ点の幾何学的位置関係を識別する第3段階と,
前記算出された幾何学的位置関係が許容された誤差範囲内で前記タッチ認証条件に含まれた設計上の幾何学的位置関係とマッチングするか否かを解釈する第4段階と,
前記算出された幾何学的位置関係が許容された誤差範囲内で前記設計上の幾何学的位置関係とマッチングするか否かを解釈したタッチ認証結果を生成する第5段階と,を含むことを特徴とするスタンプタッチ認証方法。
【請求項12】
前記構成要素値は,前記静電式タッチスクリーンに対応する座標系上の座標値を含んでなることを特徴とする請求項11に記載のスタンプタッチ認証方法。
【請求項13】
前記タッチスタンプに具備された前記タッチ部が相異なるタッチ点で区別して認識されることができる前記タッチ部の中央部分間の距離として設定される最小区別認識距離を設定保存する段階と,
前記タッチ認識情報に含まれた構成要素値を利用して前記静電式タッチスクリーンにタッチされた前記タッチ点の間の距離を計算し,前記計算された前記タッチ点の間の距離が前記最小区別認識距離以上であるか否かを認証する段階と,をさらに含むことを特徴とする請求項11に記載のスタンプタッチ認証方法。
【請求項14】
前記設計上の幾何学的位置関係は,前記タッチスタンプを設計または製作する過程で,前記タッチスタンプに具備された前記タッチ部に対する座標関係をさらに含んでなることを特徴とする請求項11に記載のスタンプタッチ認証方法。
【請求項15】
前記タッチ認識情報を伝送した無線端末の位置情報を確認する段階と,
前記保存媒体に保存されたタッチ認証条件のうち前記無線端末の前記位置情報とマッチングされる位置情報とマッピング保存されたタッチ認証条件を比較対象タッチ認証条件で確認する段階と,をさらに含み,
前記タッチ認証条件は,前記タッチスタンプが提供されたスタンプ利用先の位置情報とマッピング保存されることを特徴とする請求項11に記載のスタンプタッチ認証方法。
【請求項16】
前記タッチ認識情報に含まれた前記構成要素値を利用してタッチ点の間の相互位置関係を判読する段階と,
前記タッチ点の間の前記相互位置関係が前記タッチスタンプの前記タッチ部により実行された前記静電式タッチスクリーンに対するタッチにより形成される位置関係を含むか否かを認証する段階と,をさらに含むことを特徴とする請求項11に記載のスタンプタッチ認証方法。
【請求項17】
前記タッチスタンプは,前記静電式タッチスクリーンに対するタッチに対応するN(N≧5)個のタッチ部のうち一つである指定されたタッチ部が予め設計された固定位置に位置し,n(n≧4)個の他のタッチ部が設計された算出位置に位置するように設計製作され,
前記第4段階は,前記構成要素値を判読して前記予め設計された固定位置に位置した前記1個のタッチ部に対応するタッチ点を指定タッチ点で認識する段階を含んでなることを特徴とする請求項11に記載のスタンプタッチ認証方法。
【請求項18】
前記第4段階は,前記指定タッチ点に対応する基準点を基準として前記構成要素値または前記算出された幾何学的位置関係に対応する前記タッチ点を座標回転し,前記構成要素値または前記算出された幾何学的位置関係に対応する前記タッチ点を前記タッチ認証条件に含まれた前記設計上の幾何学的位置関係と比較可能にマッチングさせる段階をさらに含んでなることを特徴とする請求項17に記載のスタンプタッチ認証方法。
【請求項19】
前記タッチ認識情報に前記タッチスタンプに提供されたサウンド出力機能を通じて出力されたサウンド信号に符号化された固有コードまたはワンタイムコードが含まれた場合,
前記タッチ認識情報に含まれた前記固有コードまたはワンタイムコードを確認する段階と,
前記タッチ認証条件の認証条件を利用して前記確認された固有コードまたはワンタイムコードの有効性を認証する段階と,をさらに含み,
前記タッチ認証条件は,サウンド信号に符号化された前記固有コードまたはワンタイムコードを認証するための認証条件をさらに含み,
前記第5段階は,前記タッチ点の前記幾何学的位置関係の解釈結果と前記固有コードまたはワンタイムコードの認証結果を組み合わせて前記タッチ認証結果を生成する段階をさらに含んでなることを特徴とする請求項11に記載のスタンプタッチ認証方法。
【請求項20】
前記タッチ認識情報が前記タッチスタンプに含まれたNFCチップから受信された固有コードまたはワンタイムコードを含む場合,
前記タッチ認識情報に含まれた前記固有コードまたはワンタイムコードを確認する段階と,
前記タッチ認証条件の認証条件を利用して前記確認された固有コードまたはワンタイムコードの有効性を認証する段階と,をさらに含み,
前記タッチ認証条件は,前記NFCチップを通じて伝送された無線周波数信号に符号化された前記固有コードまたはワンタイムコードを認証するための認証条件をさらに含み,
前記第5段階は,前記タッチ点の前記幾何学的位置関係の解釈結果と前記固有コードまたはワンタイムコードの認証結果を組み合わせて前記タッチ認証結果を生成する段階をさらに含んでなることを特徴とする請求項11に記載のスタンプタッチ認証方法。
【請求項21】
多重タッチを支援する静電式タッチスクリーンを具備する無線端末と通信可能な運営サーバに具現されるスタンプタッチ認証システムであって,
タッチスタンプに具備されるタッチ部の距離関係と角度関係の中で少なくとも一つを含む設計上の幾何学的位置関係を含むタッチ認証条件を保存媒体に保存する認証条件保存部と,
前記タッチスタンプの前記タッチ部により実行された前記静電式タッチスクリーンに対するタッチに対応する構成要素値を含むタッチ認識情報を受信する情報受信部と,
前記構成要素値を利用して前記静電式タッチスクリーンにタッチされたタッチ点に対する認証対象の幾何学的位置関係を算出する位置関係算出部と,
前記算出された認証対象の幾何学的位置関係が許容された誤差範囲内で前記タッチ認証条件に含まれた設計上の幾何学的位置関係とマッチングするか否かを解釈してタッチ認証結果を生成するタッチ認証処理部と,を含み,
特定タッチスタンプに具備された多重タッチ部の幾何学的位置関係は,前記特定タッチスタンプの分割領域上の予め設計された固定位置に位置するN(N≧5)個のタッチ部のうちの1個である指定されたタッチ部と,前記特定タッチスタンプの分割領域上の設計された算出位置に位置する残りのn(n≧4)個の他のタッチ部をそれぞれ含むことを特徴とするスタンプタッチ認証システム。」
(当審注:下線は,請求人が付与したものである。以下,この特許請求の範囲に記載された請求項を「補正後の請求項」という。)

に補正するものである。

そして,本件補正は,願書に最初に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてなされており,特許法第17条の2第3項の規定に適合している。
また,本件補正は,特別な技術的特徴を変更(シフト補正)をしようとするものではなく,特許法第17条の2第4項の規定に適合している。

2 目的要件

本件補正は上記「1 補正の内容」のとおり,本件審判の請求と同時にする補正であり,特許請求の範囲について補正をしようとするものであるから,本件補正が,特許法第17条の2第5項の規定を満たすものであるか否か,すなわち,本件補正が,特許法第17条の2第5項に規定する請求項の削除,特許請求の範囲の減縮(特許法第36条第5項の規定により請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであって,その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるものに限る),誤記の訂正,或いは,明りょうでない記載の釈明(拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項についてするものに限る)の何れかを目的としたものであるかについて,以下に検討する。

(1)補正前の請求項と補正後の請求項とを比較すると,補正後の請求項1乃至21はそれぞれ,補正前の請求項1乃至21に対応することは明らかである。

(2)よって,本件補正は,下記の補正事項1乃至3よりなるものである。

<補正事項1>
補正前の請求項1の
「特定タッチスタンプに具備されたタッチ部の距離関係及び角度関係の中で少なくとも一つを含む設計上の幾何学的位置関係を利用して,前記認識されたタッチ点により形成された幾何学的位置関係が許容された誤差範囲内で前記タッチ部の設計上の幾何学的位置関係とマッチングするか否かを解釈した結果を認証する第2段階と,
n(n≧4)個の分割領域のうちの1個の指定された分割領域上の予め設計された固定位置に位置するN(N≧5)個のタッチ部のうちの1個である指定されたタッチ部と,n(n≧4)個の分割領域上の設計された算出位置に位置するn(n≧4)個の他のタッチ部を含む前記特定タッチスタンプに具備されたタッチ部の前記幾何学的位置関係を識別する第3段階と,
前記認識されたタッチ点の幾何学的位置関係が前記特定タッチスタンプの前記設計上の幾何学的位置関係とマッチングする場合に,前記特定タッチスタンプを使用して多重タッチと連携された指定されたサービスを提供する第4段階と,」との記載を,
補正後の請求項1の
「特定タッチスタンプに具備されたタッチ部の距離関係及び角度関係の中で少なくとも一つを含む設計上の幾何学的位置関係を利用して,予め設計された固定位置に位置する前記静電式タッチスクリーン上のタッチに相当するN(N≧5)個のタッチ部のうちの1個である指定されたタッチ部と,設計された算出位置に位置するn(n≧4)個の他のタッチ部を含む前記特定タッチスタンプに具備されたタッチ部の幾何学的位置関係が,許容された誤差範囲内で前記タッチ部の設計上の幾何学的位置関係とマッチングするか否かを解釈した結果を認証する第2段階と,
前記認識されたタッチ点の幾何学的位置関係が前記特定タッチスタンプの前記設計上の幾何学的位置関係とマッチングする場合に,前記特定タッチスタンプを使用して多重タッチと連携された指定されたサービスを提供する第3段階と,」との記載に変更する補正。

<補正事項2>
補正前の請求項11の
「前記タッチ認識情報に含まれた前記構成要素値を利用して前記静電式タッチスクリーンにタッチされたタッチ点の幾何学的位置関係を算出する第3段階と,
n(n≧4)個の分割領域のうちの1個の指定された分割領域上の予め設計された固定位置に位置するN(N≧5)個のタッチ部のうちの1個である指定されたタッチ部と,n(n≧4)個の分割領域上の設計された算出位置に位置するn(n≧4)個の他のタッチ部を含む前記特定タッチスタンプに具備されたタッチ部の前記幾何学的位置関係を識別する第4段階と,
前記算出された幾何学的位置関係が許容された誤差範囲内で前記タッチ認証条件に含まれた設計上の幾何学的位置関係とマッチングするか否かを解釈する第5段階と,
前記算出された幾何学的位置関係が許容された誤差範囲内で前記設計上の幾何学的位置関係とマッチングするか否かを解釈したタッチ認証結果を生成する第6段階と,」との記載を,
補正後の請求項11の
「特定タッチスタンプの分割領域上の予め設計された固定位置に位置するN(N≧5)個のタッチ部のうちの1個である指定されたタッチ部と,前記特定タッチスタンプの分割領域上の設計された算出位置に位置する残りのn(n≧4)個の他のタッチ部をそれぞれ含む前記タッチ部の前記構成要素値を利用して算出された前記静電式タッチスクリーンにタッチされたタッチ点の幾何学的位置関係を識別する第3段階と,
前記算出された幾何学的位置関係が許容された誤差範囲内で前記タッチ認証条件に含まれた設計上の幾何学的位置関係とマッチングするか否かを解釈する第4段階と,
前記算出された幾何学的位置関係が許容された誤差範囲内で前記設計上の幾何学的位置関係とマッチングするか否かを解釈したタッチ認証結果を生成する第5段階と,」との記載に変更する補正。

<補正事項3>
補正前の請求項21の
「前記算出された認証対象の幾何学的位置関係が許容された誤差範囲内で前記タッチ認証条件に含まれた設計上の幾何学的位置関係とマッチングするか否かを解釈してタッチ認証結果を生成するタッチ認証処理部と,を含む」との記載を,
補正後の請求項21の
「前記算出された認証対象の幾何学的位置関係が許容された誤差範囲内で前記タッチ認証条件に含まれた設計上の幾何学的位置関係とマッチングするか否かを解釈してタッチ認証結果を生成するタッチ認証処理部と,を含み,
特定タッチスタンプに具備された多重タッチ部の幾何学的位置関係は,前記特定タッチスタンプの分割領域上の予め設計された固定位置に位置するN(N≧5)個のタッチ部のうちの1個である指定されたタッチ部と,前記特定タッチスタンプの分割領域上の設計された算出位置に位置する残りのn(n≧4)個の他のタッチ部をそれぞれ含む」との記載に変更する補正。

(3)補正事項1乃至3について

補正前の請求項1,11,21の発明特定事項について,明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。
また,上記補正事項1乃至3は,平成29年2月7日付け拒絶査定において指摘された記載不備の解消のために補正するものであると認められる。

(4)小括
したがって,上記補正事項1乃至3は,特許請求の範囲の請求項における明りょうでない記載の釈明を目的とするものであるから,本件補正は,特許法第17条の2第5項第4号に掲げる事項を目的とするものに該当するといえることから,特許法第17条の2第5項の規定に適合するものである。


第3 本願発明

本願の請求項に係る発明は,平成29年6月21日付け手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1乃至21に記載されたとおりのものであると認められるところ,その請求項11に係る発明(以下,「本願発明」という。)は,以下のとおりのものである。

「 【請求項11】
多重タッチを支援する静電式タッチスクリーンと連携されたシステムを通じて実行されるスタンプタッチ認証方法であって,
タッチスタンプに具備されたタッチ部の距離関係と角度関係の中で少なくとも一つを含む設計上の幾何学的位置関係を含むタッチ認証条件を保存媒体に保存する第1段階と,
前記タッチスタンプに具備された前記タッチ部により実行された前記静電式タッチスクリーンに対するタッチに対応する構成要素値を含むタッチ認識情報を受信する第2段階と,
特定タッチスタンプの分割領域上の予め設計された固定位置に位置するN(N≧5)個のタッチ部のうちの1個である指定されたタッチ部と,前記特定タッチスタンプの分割領域上の設計された算出位置に位置する残りのn(n≧4)個の他のタッチ部をそれぞれ含む前記タッチ部の前記構成要素値を利用して算出された前記静電式タッチスクリーンにタッチされたタッチ点の幾何学的位置関係を識別する第3段階と,
前記算出された幾何学的位置関係が許容された誤差範囲内で前記タッチ認証条件に含まれた設計上の幾何学的位置関係とマッチングするか否かを解釈する第4段階と,
前記算出された幾何学的位置関係が許容された誤差範囲内で前記設計上の幾何学的位置関係とマッチングするか否かを解釈したタッチ認証結果を生成する第5段階と,を含むことを特徴とするスタンプタッチ認証方法。」


第4 原査定の拒絶の理由

原査定の拒絶の理由は,この出願の請求項11-21に係る発明は,本願の優先権主張の日前に日本国内又は外国において,頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1-10に記載された発明及び周知技術に基づいて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない,というものである。

引 用 文 献 等 一 覧

1.米国特許第8310453号明細書
2.特開平11-149454号公報
3.特開2012-98844号公報
4.特開2012-164272号公報
5.特開2001-307102号公報
6.米国特許出願公開第2011/0227871号明細書
7.特開2012-168619号公報
8.蛭子 隆彦,音響信号を利用した個人認証システム,沖テクニカルレ
ビュー,沖電気工業株式会社,2006年1月1日,第205号,
Vol.73,No.1,52-55頁
9.特開平5-89220号公報
10.特開2010-282322号公報

<付記>
・請求項1-10について,
平成28年12月19日付けでした手続補正が,下記の点で国際出願日における国際特許出願の明細書若しくは図面(図面の中の説明に限る。)の翻訳文,国際出願日における国際特許出願の請求の範囲の翻訳文又は国際出願日における国際特許出願の図面(図面の中の説明を除く。)(以下,当初翻訳文等という。)に記載した事項の範囲内においてしたものでないから,特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていないと考えられますので,補正の際には留意して下さい。

・請求項1,11,21について
「前記特定タッチスタンプに具備されたタッチ部の前記幾何学的位置関係を識別する」ことについて,請求項1,11,21に係る発明では「幾何学的位置関係を算出する」こととの関係は明示されておらず,また,段落[0086]に記載の指定領域の確認処理や,座標回転処理のような,どの方向からタッチしてもよい識別方法に特有の処理も,特定されていない。
このため,請求項1,11,21に係る発明は,所定の設計基準で配置されたタッチ部を具備した特定タッチスタンプが存在し,その特定タッチスタンプのタッチ部の幾何学的位置関係を単純に識別することしか特定されていない点に留意して下さい。


第5 引用例,引用発明等

1 引用例1に記載されている技術的事項および引用発明

ア 本願の優先日前に頒布又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となり,原審の拒絶査定の理由である平成28年7月8日付けの拒絶理由通知において引用された,米国特許第8310453号明細書(2012年11月13日公開,以下,「引用例1」という。)には,以下の技術的事項が記載されている。
(当審注:下線は,参考のために当審で付与したものである。)

A 「FIELD OF THE INVENTION

The invention relates generally to security systems and more specifically to security systems for touch-screen electronic devices.」(1欄第3-7行)
当審仮訳; 「発明の分野

本発明は,概してセキュリティシステムに関し,より詳細には,タッチスクリーン式の電子デバイスのためのセキュリティシステムに関するものである。」

B 「SUMMARY

These and other needs are addressed by various embodiments and configurations of the present invention. The present invention is directed generally to a system, device, and method for facilitating a touch screen sign-in key. The method generally comprises:
simultaneously detecting a plurality of contact points on a touch-screen of an electronic device, wherein the contact points correspond to contact sensing elements of the touch-screen that have been activated by receiving contact from a sign-in key;
analyzing the plurality of contact points;
determining key information based on the plurality of contact points; and
making a determination to admit or deny a user access to the electronic device based on the determined key information.
In accordance with at least some embodiments of the present invention, a sign-in key containing a plurality of pins or contactors laid out in a random order is provided. This sign-in key may be presented to the touch-screen thus creating the contact points. The device touch-screen driver is then operable to recognize the relative orientation of the contact points (i.e., the pattern and configuration of the contact points) and make a determination to either admit or deny a user access to the electronic device and/or applications stored thereon. This low-cost sign-in key may be produced of plastic, metal, composite, or any other type of material suitable for contacting a touch-screen.
This approach of authenticating one's self to an electronic device (e.g., via presenting a sign-in key to a touch-screen of an electronic device) is faster than previously proposed security systems as there is no longer a need to enter a username and password using the touch-screen graffiti language via a stylus, for example.」(1欄第47行-2欄第15行)
当審仮訳; 「発明の概要

これらの必要性および他の必要性は,本発明の様々な実施形態および構成によって述べられる。本発明は,一般的にシステム,装置,およびタッチスクリーンのサインインキーを容易に用いる方法を対象とする。この方法は,一般的に以下を含む。
サインインキーからの接触を受けることによって活性化された,タッチスクリーンの接触感知素子に対応する,電子デバイスのタッチスクリーン上の複数の接触点を検出すると同時に,
複数の接触点を分析し,
複数の接触点に基づいたキー情報を決定し,
決定されたキー情報に基づいて,電子デバイスへのユーザのアクセスを許可または拒否の判定をする。
本発明の少なくともいくつかの実施形態によれば,ランダムな順序に配置されたピンまたは複数の接触子を含むサインインキーが設けられている。このサインインキーはタッチスクリーンに提示され,それにより接触点を形成することができる。デバイスのタッチスクリーンドライバは,接触点(すなわち,接触点のパターン及び形状)の相対的な向きを識別し,かつ電子デバイスおよび/またはそこに格納されているアプリケーションへのユーザのアクセスを許可または拒否の判定をするように動作可能である。この低コストなサインインキーは,プラスチック,金属,複合材,またはタッチスクリーンに接触するのに適したその他の種類の材料で製造することができる。
電子デバイスへ自分自身を認証するこのアプローチ(例えば,電子デバイスのタッチスクリーンにサインインキーを介して)は,スタイラスを介してタッチスクリーングラフィティ言語を用いてユーザ名とパスワードを入力する必要のない以前に提案されたセキュリティシステムよりも高速である。」

C 「FIG. 1 is a block diagram depicting a portable electronic device, 100 in accordance with at least some embodiments of the present invention. The electronic device 100 may comprise a touch-screen 104 as well as a keypad 108 . The touch-screen 104 may serve as both a user input and user output for the electronic device 100 . The keypad 108 may comprise a plurality of keys that are operable to receive user inputs and operate various applications provided by the electronic device 100 . The electronic device 100 may comprise any type of processing unit operable to store applications thereon and allow the user to access such applications.
…(中略)…
With reference now to FIGS. 2A and 2B , a first key 200 will be described in accordance with at least some embodiments of the present invention. The key 200 may comprise a base 204 having a plurality of contactors 208 located thereon. The contactors 208 of the first key 200 may be in a two-dimensional configuration as can be seen in FIG. 2A . The location of the contactors 208 on the base 204 may be randomly assigned and the size of the contactors 208 may correspond to the size of the contact detecting elements used in the touch-screen 104 . In accordance with at least some embodiments of the present invention, each contactor 208 may comprise a first end for connecting to the base 204 and a second end for contacting the touch-screen 104 . The contactors 208 may comprise a conical shape whereby the connecting end of the contactor 208 comprises a larger radius that the contacting end of the contactor 208 . The contacting end of the contactors 208 may come to a point that is equal to or smaller in size than the contact detecting elements of the touch-screen 104 . Of course, various other shapes of contactors 208 may be employed to further secure the electronic device 100 . If the proper shape contactor 208 is not detected on the touch-screen 104 , then access to the electronic device 100 may be denied. A combination of differently shaped contactors 208 may also be employed on the same key 200 to help maintain the security of the electronic device 100 .
…(中略)…
FIGS. 4A-4D depict the various ways that a key 200 , 300 can be presented to a touch-screen 104 for a user to activate the electronic device 100 or otherwise gain access to one or more applications stored thereon. The key 200 , 300 may be presented to the touch-screen 104 in any location where the touch-screen 204 is sensitive and responsive to multiple simultaneous contact points. As can be seen in FIGS. 4A and 4B , a two-dimensional key 200 may contact the touch-screen 104 at a contact area 400 . As can be seen in FIGS. 4C and 4D , the one-dimensional key 300 may be presented to the touch-screen 104 at any location or rotational orientation. Although not depicted, one skilled in the art will also recognize that the two-dimensional key 200 may be presented to the touch-screen 104 in any location and/or rotational orientation.」(5欄第11行-6欄第28行)
当審仮訳; 「図1は,本発明の少なくともいくつかの実施形態に対応する携帯型電子デバイス100を表すブロック図である。電子デバイス100は,タッチスクリーン104およびキーパッド108を含むことができる。タッチスクリーン104は,電子デバイス100のユーザの入力および出力の両方として機能することができる。キーパッド108は,ユーザ入力を受け取り,電子デバイス100によって提供される様々なアプリケーションを操作するための複数のキーを備えていてもよい。電子デバイス100は,各種アプリケーションを記憶し,ユーザがそのようなアプリケーションへアクセスすることを可能にするように動作可能な任意のタイプの処理ユニットを含むことができる。
…(中略)…
図2A及び図2Bを参照して,本発明の少なくともいくつかの実施形態にしたがい,第1のキー200が説明される。キー200は,上部に配置される複数の接触子208を有するベース204を含んでいてもよい。第1のキー200の接触子208は,図2Aに見られるような2次元形状であってもよい。ベース204上の接触子208の位置はランダムに割り付けられてもよく,また接触子208のサイズは,タッチスクリーン104に使用される接触検知素子のサイズに対応することができる。本発明の少なくともいくつかの実施形態によれば,各接触子208は,ベース204に接続するための第1の端部と,タッチスクリーン104と接触するための第2の端部を含むことができる。接触子208は,接触子208の接続端部が接触子208の接触端部より大きな半径を有するような円錐形状を有している。接触子208の接触端部がタッチスクリーン104の接触検知素子よりサイズが小さい点に至る。当然のことながら,接触子208の種々の他の形状は,電子デバイス100をさらに安全にするために使用することができる。適切な形状の接触子208がタッチスクリーン104で検出されない場合,電子デバイス100へのアクセスは拒否されることがある。異なる形状の接触子208との組合せもまた,電子デバイス100のセキュリティの維持に寄与するために,同様のキー200に使用することができる。
…(中略)…
図4A-図4Dは様々な方法を図示し,その方法は,キー200,300が,電子デバイス100を活性化するか,またはその上に格納された1つまたは複数のアプリケーションへのアクセスを得るために,ユーザがタッチスクリーン104に提示することができるというものである。キー200,300は,タッチスクリーン204が感知可能で複数の同時接触点に応答できる任意の位置においてタッチスクリーン104に提示されてもよい。図4Aおよび4Bに見られるように,2次元キー200はコンタクト領域400でタッチスクリーン104と接触してもよい。図4Cと4Dに見られるように,一次元キー300は,任意の位置又は回転位置でタッチスクリーン104に提示されてもよい。図示していないが,当業者はまた,2次元キー200が任意の位置および/または回転配向においてタッチスクリーン104に提示されてもよいことを認識するであろう。」

D 「The data storage 520 may further include a device security application 528 . The device security application 528 may be used to ensure that the electronic device 100 , the operation of the processor 504 , and access to applications 520 are limited to only validated users. In accordance with at least some embodiments of the present invention, the device security application 528 may comprise a contact detection module 532 and a contact analysis module 536 .
…(中略)…
The contact analysis module 536 may be operable to work in concert with the contact detection module 532 to determine if a valid key 200 , 300 has been presented to the touch-screen 104 . The contact analysis module 536 may be operable to determine which contact sensing elements have been contacted and determine if such simultaneous contact of the elements corresponds to a valid presentation of a key 200 , 300 . The contact analysis module 536 may be adapted to determine the distance between each contact point 404 as well as the relative angles created between three or more contact points 404 . The contact analysis module 536 may be able to determine based on the calculated distances and angles between contact points 404 whether or not the user has presented a valid key 200 , 300 to the touch-screen 104 .」(7欄第29-65行)
当審仮訳; 「データ記憶装置520は,デバイスセキュリティアプリケーション528をさらに含むことができる。デバイスセキュリティアプリケーション528は,電子デバイス100,又はプロセッサ504の動作,およびアプリケーション520へのアクセスが,有効なユーザに対してのみに限定されることを確実にするために使用することができる。本発明の少なくともいくつかの実施形態によると,デバイスセキュリティアプリケーション528は,接触検知モジュール532と接触分析モジュール536を含んでもよい。
…(中略)…
接触分析モジュール536は,接触検知モジュール532と協働して,有効なキー200,300がタッチスクリーン104に提示されているかどうかを決定するように動作することができる。接触分析モジュール536は,どの接触感知素子が検知しているかを決定するとともに,そのような素子の同時接触が,キー200,300の有効な提示に対応するかどうかを決定するように動作することができる。接触分析モジュール536は,各接触点404の間の距離と同様に,3点以上の接触点404の間の相対角度を決定するように構成されてもよい。接触分析モジュール536は,接触点404の間の計算された距離と角度に基づいて,ユーザが有効なキー200,300をタッチスクリーン104に提示しているか否かを決定することができる。」

E 「Referring now to FIG. 6 , a method of initializing security features of the electronic device 100 will be described in accordance with at least some embodiments of the present invention. The method begins by identifying a user that is requesting protection of an electronic device 100 (step 604 ). The step of identifying a user and the user's information is useful in situations where there are more than one user allowed to use and/or access a particular electronic device 100 . The information retrieved during this identification step may include the user name, employee number, access credentials, and the like. The user then presents a key 200 , 300 to the touch-screen 104 of the electronic device 100 that the user would like to use when signing back in to the electronic device 100 .
After the user has been identified and presented the key 200 , 300 to the touch-screen 104 , the method continues with the device security application 528 employing the contact detection module 532 and contact analysis module 536 to determine the number of contact points 404 on the touch-screen 104 (step 608 ). In this step, the contact detection module 532 determines which contact detecting elements have been contacted by the contactors 208 , 308 of a key 200 , 300 . The contact detection module 532 identifies the number of contact detection elements that have been activated by a contactor 208 , 308 .
Once the number of contact points 404 have been determined, the method continues with the contact analysis module 536 determining, for each contact point 404 , the distance to the closest two contact points 404 (step 612 ). A valid key 200 , 300 may be defined for each contact point 404 based on the two closest contact points 404 to that contact point 404 .
The contact analysis module 536 may then determine, for each contact point 404 , the relative angle created between the contact point 404 under inspection and the two closest contact points 404 (step 616 ). In addition to a key 200 , 300 being defined by the distance between contact points 404 , a key 200 , 300 may also be defined by the relative angles created between a contact point 404 and the two closest contact points 404 . The angle measured may be the angle created with the contact point 404 of interest as the vertex connecting the other two closest contact points 404 . The angle created between the contact points 404 may be any value less than or equal to 180 degrees. Alternatively, the angle may be defined as any value greater than or equal to 180 degrees.
After the distances and angles have been determined for each contact point 404 , the device security application 528 may save the key information so that a user can present the same key 200 , 300 at a later point-in-time and access the electronic device 100 (step 620 ). In this step, the device security application 528 may store the determined distances and relative angles for each contact point 404 . These determined distances and relative angles may be used to recognize when the same key 200 , 300 is presented at a later time. The key information may also be stored with the identified user information to define what applications and/or preferences the electronic device 100 will provide the user when the key 200 , 300 is pressed to the touch-screen 104 .」(8欄第24行-9欄第13行)
当審仮訳; 「ここで図6を参照すると,電子デバイス100のセキュリティ機能を初期化する方法が,本発明の少なくともいくつかの実施形態に従って説明される。この方法は,電子デバイス100の保護を要求するユーザを識別することによって開始する(ステップ604)。ユーザおよびユーザの情報を識別するステップは,特定の電子デバイス100の使用及び/又はアクセスを許可された2人以上のユーザが存在する状況において有用である。この識別ステップの間に検索された情報は,ユーザ名,従業員番号,アクセス証明書などを含むことができる。ユーザは,電子デバイス100のタッチスクリーン104に,電子デバイス100にサインバックする時にユーザが使用したいキー200,300を提示する。
ユーザが識別され,キー200,300をタッチスクリーン104に提示した後,その方法は,接触検知モジュール532,接触分析モジュール536を使用するデバイスセキュリティアプリケーション528によって継続し,タッチスクリーン104の接触点404の数を決定する(ステップ608)。この工程では,接触検知モジュール532は,いずれの接触検知素子がキー200,300の接触子208,308と接触しているかを決定する。接触検知モジュール532は,接触子208,308により活性化された接触検知素子の数を識別する。
接触点404の数が決定されると,その方法は,各接触点404について最も近い2つの接触点404との距離を決定する接触分析モジュール536によって継続する(ステップ612)。有効なキー200,300は,各接触点404について,その接触点404に最も近い2つの接触点404に基づき規定されてもよい。
接触分析モジュール536は次いで,各接触点404について,検査中の接触点404と最も近い2つの接触点404との間に生じた相対角度を決定してもよい(ステップ616)。キー200,300は,接触点404との間の距離によって規定されることに加えて,キー200,300は,接触点404と最も近い2つの接触点404との間に生成される相対角度によって定義することができる。測定された角度は,他の2つの最も近い接触ポイント404を連結する頂点として,対象の接触点404によって形成される角度であってもよい。接触点404との間に形成される角度は,180度より小さいか又はこれに等しい任意の値であってもよい。また,この角度は,180度よりも大きいか又はこれに等しい任意の値として定義することができる。
各接触点404について距離及び角度が決定された後,デバイスセキュリティアプリケーション528は,キー情報を保存することができ,そのため,ユーザは後の時点で同一のキー200,300を提示し,電子デバイス100にアクセスすることができる(ステップ620)。このステップにおいて,デバイスセキュリティアプリケーション528は,各接触点404について決定された距離及び相対角度を記憶することができる。これらの決定された距離及び相対角度は,同一のキー200,300が後の時点で提示されるときに,認識のために使用されてもよい。キー情報は,キー200,300は,タッチスクリーン104に押圧されたときに電子デバイス100がユーザに提供するアプリケーションおよび/またはプリファランスを定義するために,識別されたユーザ情報とともに格納してもよい。」

F 「With reference now to FIG. 7 , a method of completing a user sign-in process will be described in accordance with at least some embodiments of the present invention. The method is initiated when the contact detection module 532 detects at least one point of contact at the user input 512 (step 704 ). In response to detecting the contact, the device security application 528 determines whether a valid key is required to be presented to the touch-screen 104 prior to allowing the user access to the electronic device 100 and/or applications stored thereon (step 708 ). In other words, the device security application 528 determines whether the electronic device 100 is under password/key protection. Device security is generally desirable in circumstances where the electronic device 100 contains some amount of sensitive information or if the owner/user of the electronic device 100 wants to prevent a potential thief of the electronic device 100 from being able to use it.
If a key is not required, then the device security application 528 allows the user to access the electronic device 100 and the user may utilize the electronic device 100 in the normal fashion (step 732 ). On the other hand, if there is some security desired for the electronic device 100 and a key is required to be presented before the user can access the electronic device 100 , then the method continues with the device security application 528 employing the contact detection module 532 to determine the number of contact points 404 on the touch-screen 104 (step 712 ). This step is similar to step 608 described in connection with FIG. 6 .
After the contact detection module 532 has determined the number of contact points 404 detected, it can access the stored key information to determine which, if any, keys have the same number of contact points 404 . The contact analysis module 536 can then analyze the key 200 , 300 currently being presented with only those keys identified as having the same number of contact points 404 . The contact analysis module 536 continues by determining the location information for each contact point 404 (step 716 ). More specifically, the contact analysis module 536 determines when contact detecting elements in the touch-screen 104 have been contacted by a contactor 208 , 308 . In determining the location information, the contact analysis module 536 can determine, for each contact point 404 , the distance to the closest two contact points 404 as well as the relative angle created there between. This location information for the key 200 , 300 is useful because it neither depends upon the location of the contact area 400 in the touch-screen 104 nor the rotational orientation of the key 200 , 300 on the touch-screen 104 . Accordingly, the key information may be defined by the relative distances and angles created within the contact area 400 , thereby making use of the key 200 , 300 more user friendly.
Once the contact analysis module 536 has determined the necessary location information for the key 200 , 300 currently being presented to the touch-screen 104 , the location information is compared to the stored key information to determine if there are any matches between the currently presented key 200 , 300 and any validated keys. The comparison between the contact point distances and relative angles helps to make the determination as to whether or not the key 200 , 300 is recognized by the electronic device 100 . If a match is found, then the relevant user information and key information is transferred from the contact analysis module to the device security application 528 (step 720 ). The device security application 528 then analyzes the key location information as well as the user information to determine if the key 200 , 300 and its associated user are allowed access to the electronic device 100 and/or applications stored thereon (step 724 ). If the user is not validated, based either on the user information or the lack of having presented a valid key 200 , 300 , then the device security application 528 denies the user access to the electronic device 100 (step 728 ). Alternatively, if the device security application 528 validates the user and the key 200 , 300 presented to the touch-screen 104 as a valid key, then the user is allowed access to the electronic device 100 (step 732 ). In accordance with at least some embodiments of the present invention, the device security application 528 may determine what applications the user is allowed access to based on the key 200 , 300 presented and/or the user information. This way a plurality of users can be allowed general access to an electronic device 100 while only specified users are allowed access to certain sensitive information and/or applications.
As can be appreciated by one skilled in the art, although specific methods and algorithms have been described for determining key information based on the location of contact points 404 on a touch-screen 104 (e.g., via distance and angle calculations for near contact points 404 ), other known pattern recognition methods can be employed to determine key information and further determine whether a valid key has been presented to a touch-screen 104 based on the relative location of contact points 404 .」(9欄第14行-10欄第35行)
当審仮訳; 「図7を参照すると,ユーザサインインプロセスを完了するための方法が,本発明の少なくともいくつかの実施形態にしたがって説明される。この方法は,接触検知モジュール532がユーザ入力512から少なくとも1つの接触点を検出することによって開始される(ステップ704)。接触を検出したことに応答して,デバイスセキュリティアプリケーション528は,電子デバイス100および/またはその上に格納されているアプリケーションへのユーザアクセスを許可する前に,有効なキーがタッチスクリーン104に提示される必要があるかを判定する(ステップ708)。すなわち,デバイスセキュリティアプリケーション528は,電子デバイス100がパスワード/キーの保護下にあるかどうかを判定する。電子デバイス100がいくらかの量の機密情報を含む場合,あるいは,電子デバイス100の所有者/ユーザが,盗難の可能性のある者による電子デバイス100の使用を阻止することを望むような状況においては,デバイスセキュリティが一般的に望まれる。
キーが必要とされない場合,デバイスセキュリティアプリケーション528はユーザが電子デバイス100にアクセスすることを許可し,ユーザは電子デバイス100を通常の方法で利用することができる(ステップ732)。一方,電子デバイス100のための所望のセキュリティが存在し,ユーザが電子デバイス100にアクセスできる前に提示する必要があるならば,その方法は,タッチスクリーン104の接触点404の数を決定するための接触検知モジュール532を使用するデバイスセキュリティアプリケーション528によって継続する(ステップ712)。このステップは,図6に関連して説明したステップ608と同様である。
接触検知モジュール532は,検知された接触点404の数を決定した後,格納されているキー情報にアクセスし,もしあるならば,どのキーと接触点404の数が同じであるかを決定することができる。次に,接触分析モジュール536は,接触点404の数と同じ数を有すると同定された,これらキーのみを用いて提示された現在キー200,300を分析することができる。接触分析モジュール536は,各接触点404についての位置情報を決定することによって継続する(ステップ716)。より具体的には,接触分析モジュール536は,タッチスクリーン104の接触検知素子が,接触子208,308により接触されたときを検出する。位置情報を決定するとき,接触分析モジュール536は,各接触点404について,最も近い2つの接触点404との距離と同様に,それら最も近い2つの接触点404との間に形成される相対角度を決定することができる。キー200,300についてのこの位置情報は有用である,なぜなら,タッチスクリーン104上のタッチスクリーン104の接触領域400およびキー200,300の回転方向の位置に依存しないからである。これにより,キー情報が接触領域400内に生成される相対距離や相対角度により定義することができるので,キー200,300の使用は,よりユーザフレンドリになる。
接触分析モジュール536は,タッチスクリーン104に現在提示されているキー200,300について必要な位置情報を決定すると,現在提示されているキー200,300と任意の有効キーとの間に一致があるかどうかを判定するため,その位置情報が記憶されたキー情報と比較される。接触点の距離と相対角度との間の比較によって,キー200,300が電子デバイス100によって認識されたか否かの判定を可能とする。一致が見つかった場合には,当該ユーザ情報及びキー情報は,接触分析モジュールからデバイスセキュリティアプリケーション528に転送される(ステップ720)。デバイスセキュリティアプリケーション528は,キー200,300とそれに関連するユーザが電子デバイス100および/またはその上に記憶されたアプリケーションへのアクセスが許可されるかどうかを判定するために,キー位置情報をユーザ情報と同様に解析する(ステップ724)。ユーザ情報または有効キー200,300の提示がない,のいずれかに基づいてユーザが確認されない場合,デバイスセキュリティアプリケーション528は,電子デバイス100へのユーザアクセスを拒否する(ステップ728)。あるいは,デバイスセキュリティアプリケーション528は,ユーザ及びタッチスクリーン104に提示されるキー200,300を有効とする場合,ユーザは電子デバイス100へのアクセスを許可される(ステップ732)。本発明の少なくともいくつかの実施形態によると,デバイスセキュリティアプリケーション528は,提示されるキー200,300及び/又はユーザ情報に基づいて,ユーザのアクセスが許可されるのはどのアプリケーションかを決定することができる。このようにして,複数のユーザによる電子デバイス100への一般的なアクセスを許可することができ,特定のユーザだけが,所定の機密情報および/またはアプリケーションへのアクセスが許可される。
当業者であれば理解されるように,特定の方法及びアルゴリズムは,タッチ画面104上の接触点404の位置に基づいて(例えば,近くの接触点404の距離・角度の計算を介して),キー情報を決定することについて記載されているが,キー情報を決定し,接触点404の相対的な位置に基づいて有効キーがタッチスクリーン104に表示されているかどうかを更に決定するための他の既知のパターン認識方法を使用することができる。」

イ ここで,引用例1に記載されている事項を検討する。

(ア)上記Aの「本発明は,概してセキュリティシステムに関し,より詳細には,タッチスクリーン式の電子デバイスのためのセキュリティシステムに関するものである。」との記載,上記Bの「本発明の少なくともいくつかの実施形態によれば,ランダムな順序に配置されたピンまたは複数の接触子を含むサインインキーが設けられている。このサインインキーはタッチスクリーンに提示され,それにより接触点を形成することができる。デバイスのタッチスクリーンドライバは,接触点(すなわち,接触点のパターン及び形状)の相対的な向きを識別し,かつ電子デバイスおよび/またはそこに格納されているアプリケーションへのユーザのアクセスを許可または拒否の判定をするように動作可能である。」との記載からすると,電子デバイスへのユーザのアクセスを許可または拒否の判定をするために,「サインインキー」がタッチスクリーンに提示されると認められ,このような動作は「電子デバイスのためのセキュリティシステム」によることは明らかであるから,「タッチスクリーン式の電子デバイスのためのセキュリティシステム」において,「ランダムな順序に配置されたピンまたは複数の接触子を含むサインインキー」がタッチスクリーンに提示されることが読み取れる。
また,上記Bの「サインインキーからの接触を受けることによって活性化された,タッチスクリーンの接触感知素子に対応する,電子デバイスのタッチスクリーン上の複数の接触点を検出すると同時に,複数の接触点を分析し,複数の接触点に基づいたキー情報を決定し,決定されたキー情報に基づいて,電子デバイスへのユーザのアクセスを許可または拒否の判定をする。」との記載,「電子デバイスへ自分自身を認証するこのアプローチ(例えば,電子デバイスのタッチスクリーンにサインインキーを介して)は,スタイラスを介してタッチスクリーングラフィティ言語を用いてユーザ名とパスワードを入力する必要のない以前に提案されたセキュリティシステムよりも高速である。」との記載からすると,「決定されたキー情報に基づいて,電子デバイスへのユーザのアクセスを許可または拒否の判定をする」ことは,「電子デバイス」へアクセスするユーザの認証を行うことであると認められるから,「決定されたキー情報に基づいて」,「電子デバイス」へアクセスするユーザを認証し,「アクセスを許可または拒否の判定をする」方法が読み取れるから,引用例1には,
“タッチスクリーン式の電子デバイスのためのセキュリティシステムにおいて,ランダムな順序に配置されたピンまたは複数の接触子を含むサインインキーがタッチスクリーンに提示され,サインインキーからの接触を受けることによって活性化された,タッチスクリーンの接触感知素子に対応する,電子デバイスのタッチスクリーン上の複数の接触点を検出すると同時に,複数の接触点を分析し,複数の接触点に基づいたキー情報を決定し,決定されたキー情報に基づいて,電子デバイスへアクセスするユーザを認証し,前記ユーザによるアクセスについて許可または拒否の判定をする方法”
が記載されていると解される。

(イ)上記Cの「図2A及び図2Bを参照して,本発明の少なくともいくつかの実施形態にしたがい,第1のキー200が説明される。キー200は,上部に配置される複数の接触子208を有するベース204を含んでいてもよい。第1のキー200の接触子208は,図2Aに見られるような2次元形状であってもよい。ベース204上の接触子208の位置はランダムに割り付けられてもよく,また接触子208のサイズは,タッチスクリーン104に使用される接触検知素子のサイズに対応することができる。」との記載,「図4A-図4Dは様々な方法を図示し,その方法は,キー200,300が,電子デバイス100を活性化するか,またはその上に格納された1つまたは複数のアプリケーションへのアクセスを得るために,ユーザがタッチスクリーン104に提示することができるというものである。キー200,300は,タッチスクリーン204が感知可能で複数の同時接触点に応答できる任意の位置においてタッチスクリーン104に提示されてもよい。」との記載からすると,上記(ア)での検討より,「キー200」は「電子デバイス」の「タッチスクリーン」に提示される「サインインキー」であることは明らかであり,「上部に配置される複数の接触子」は2次元形状の態様を含み,ユーザが「タッチスクリーン」に提示することによって,「電子デバイス100を活性化する」態様を含む「サインインキー」を使用することが読み取れるから,引用例1には,
“上部に配置される複数の2次元形状の接触子を有するベースを含み,電子デバイスを活性化するために,ユーザがタッチスクリーンに提示することができるサインインキーを使用すること”
が記載されていると解される。

(ウ)上記Eの「ここで図6を参照すると,電子デバイス100のセキュリティ機能を初期化する方法が,本発明の少なくともいくつかの実施形態に従って説明される。この方法は,電子デバイス100の保護を要求するユーザを識別することによって開始する(ステップ604)。」との記載,「ユーザが識別され,キー200,300をタッチスクリーン104に提示した後,その方法は,接触検知モジュール532,接触分析モジュール536を使用するデバイスセキュリティアプリケーション528によって継続し,タッチスクリーン104の接触点404の数を決定する(ステップ608)。…(中略)… 接触点404の数が決定されると,その方法は,各接触点404について最も近い2つの接触点404との距離を決定する接触分析モジュール536によって継続する(ステップ612)。…(中略)… 接触分析モジュール536は次いで,各接触点404について,検査中の接触点404と最も近い2つの接触点404との間に生じた相対角度を決定してもよい(ステップ616)。」との記載からすると,キーを用いた電子デバイスのセキュリティ機能の初期化について,ユーザが識別され,「キー」が「タッチスクリーン」に提示されると,「デバイスセキュリティアプリケーション」が,「タッチスクリーン104の接触点404の数を決定」し,「接触点404の数が決定されると」,「各接触点404について最も近い2つの接触点404との距離を決定」し,「次いで,各接触点404について,検査中の接触点404と最も近い2つの接触点404との間に生じた相対角度を決定」することが読み取れる。
また,上記Eの「各接触点404について距離及び角度が決定された後,デバイスセキュリティアプリケーション528は,キー情報を保存することができ,そのため,ユーザは後の時点で同一のキー200,300を提示し,電子デバイス100にアクセスすることができる(ステップ620)。このステップにおいて,デバイスセキュリティアプリケーション528は,各接触点404について決定された距離及び相対角度を記憶することができる。これらの決定された距離及び相対角度は,同一のキー200,300が後の時点で提示されるときに,認識のために使用されてもよい。」との記載からすると,「電子デバイス」にアクセスしようとするユーザにより「同一のキー」が後の時点で提示されたときに,認識に使用するため,「デバイスセキュリティアプリケーション」は,「キー情報」である「各接触点404について決定された距離及び相対角度」を保存することが読み取れるから,引用例1には,
“電子デバイスのセキュリティ機能の初期化時に,ユーザが識別され,サインインキーがタッチスクリーンに提示されると,デバイスセキュリティアプリケーションが,タッチスクリーンの接触点の数を決定し,接触点の数が決定されると,各接触点について最も近い2つの接触点との距離を決定し,次いで,各接触点について,検査中の接触点と最も近い2つの接触点との間に生じた相対角度を決定するとともに,電子デバイスにアクセスしようとするユーザにより,同一のサインインキーが後の時点で提示されたときに認識に使用するため,キー情報である各接触点について決定された距離及び相対角度を保存すること”
が記載されていると解される。

(エ)上記Fの「図7を参照すると,ユーザサインインプロセスを完了するための方法が,本発明の少なくともいくつかの実施形態にしたがって説明される。この方法は,接触検知モジュール532がユーザ入力512から少なくとも1つの接触点を検出することによって開始される(ステップ704)。」との記載,「接触検知モジュール532は,検知された接触点404の数を決定した後,格納されているキー情報にアクセスし,もしあるならば,どのキーと接触点404の数が同じであるかを決定することができる。…(中略)… 接触分析モジュール536は,各接触点404についての位置情報を決定することによって継続する(ステップ716)。より具体的には,接触分析モジュール536は,タッチスクリーン104の接触検知素子が,接触子208,308により接触されたときを検出する。位置情報を決定するとき,接触分析モジュール536は,各接触点404について,最も近い2つの接触点404との距離と同様に,それら最も近い2つの接触点404との間に形成される相対角度を決定することができる。」との記載からすると,上記(ウ)での検討より,「ユーザサインインプロセス」は,ユーザが「サインインキー」を提示して「電子デバイス」にアクセスしようとするときに起動されると認められる。
また,上記Dの「本発明の少なくともいくつかの実施形態によると,デバイスセキュリティアプリケーション528は,接触検知モジュール532と接触分析モジュール536を含んでもよい。…(中略)… 接触分析モジュール536は,接触検知モジュール532と協働して,有効なキー200,300がタッチスクリーン104に提示されているかどうかを決定するように動作することができる。」との記載から,「接触検知モジュール532」,「接触分析モジュール536」は,「デバイスセキュリティアプリケーション528」に含まれる機能モジュールとみることができるから,「ユーザサインインプロセス」は,「デバイスセキュリティアプリケーション」が「ユーザ入力512から少なくとも1つの接触点を検出することによって開始され」,「デバイスセキュリティアプリケーション」が,「タッチスクリーン104の接触検知素子が,接触子208,308により接触されたときを検出」し,「各接触点404についての位置情報を決定」し,「各接触点404について,最も近い2つの接触点404との距離と同様に,それら最も近い2つの接触点404との間に形成される相対角度を決定する」ことが読み取れるから,引用例1には,
“ユーザがサインインキーを提示して電子デバイスにアクセスするとき,ユーザサインインプロセスでは,デバイスセキュリティアプリケーションがユーザ入力から少なくとも1つの接触点を検出することによって開始され,タッチスクリーンの接触検知素子がサインインキーの接触子により接触されたときを検出し,各接触点についての位置情報を決定し,各接触点について,最も近い2つの接触点との距離と同様に,それら最も近い2つの接触点との間に形成される相対角度を決定すること”
が記載されていると解される。

(オ)上記Fの「接触分析モジュール536は,タッチスクリーン104に現在提示されているキー200,300について必要な位置情報を決定すると,現在提示されているキー200,300と任意の有効キーとの間に一致があるかどうかを判定するため,その位置情報が記憶されたキー情報と比較される。接触点の距離と相対角度との間の比較によって,キー200,300が電子デバイス100によって認識されたか否かの判定を可能とする。一致が見つかった場合には,当該ユーザ情報及びキー情報は,接触分析モジュールからデバイスセキュリティアプリケーション528に転送される(ステップ720)。」との記載からすると,上記(エ)での検討より,「接触分析モジュール536」は,「デバイスセキュリティアプリケーション528」に含まれる機能モジュールとみることができるとともに,「キー200,300」は「サインインキー」であるから,「デバイスセキュリティアプリケーション528」は,「タッチスクリーン」に現在提示されている「サインインキー」について必要な位置情報を決定すると,「記憶されたキー情報と比較され」,その比較は,両者の「接触点の距離と相対角度との間の比較」によって行われ,その比較結果に基づき「電子デバイス100によって認識されたか否かの判定を可能とする」こと,提示された「サインインキー」の位置情報と,記憶された「キー情報」とが一致した場合,「当該ユーザ情報及びキー情報」を取得することが読み取れる。
また,上記Fの「あるいは,デバイスセキュリティアプリケーション528は,ユーザ及びタッチスクリーン104に提示されるキー200,300を有効とする場合,ユーザは電子デバイス100へのアクセスを許可される(ステップ732)。…(中略)… このようにして,複数のユーザによる電子デバイス100への一般的なアクセスを許可することができ,特定のユーザだけが,所定の機密情報および/またはアプリケーションへのアクセスが許可される。」との記載からすると,「デバイスセキュリティアプリケーション528」は,提示された「サインインキー」の位置情報と記憶された「キー情報」とが一致した場合に取得した「当該ユーザ情報及びキー情報」を更に判定し,認識された「ユーザ」及び提示された「サインインキー」に基づき「有効」と判定した場合に,ユーザによる「電子デバイス」へのアクセスを許可することが読み取れるから,引用例1には,
“デバイスセキュリティアプリケーションは,タッチスクリーンに現在提示されているサインインキーについて必要な位置情報を決定すると,記憶されたキー情報と比較し,両者の接触点の距離と相対角度との間の比較結果に基づき,サインインキーが電子デバイスによって認識されたか否かの判定を行い,一致した場合には,当該ユーザ情報及びキー情報を取得すること,
デバイスセキュリティアプリケーションは,取得したユーザ情報及びキー情報に基づき,有効と判定した場合に,ユーザによる電子デバイスへのアクセスを許可すること”
が記載されていると解される。

ウ 以上,上記イの(ア)乃至(オ)で示した事項から,引用例1には,次の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されているものと認める。

「タッチスクリーン式の電子デバイスのためのセキュリティシステムにおいて,ランダムな順序に配置されたピンまたは複数の接触子を含むサインインキーがタッチスクリーンに提示され,前記サインインキーからの接触を受けることによって活性化された,前記タッチスクリーンの接触感知素子に対応する,前記電子デバイスの前記タッチスクリーン上の複数の接触点を検出すると同時に,前記複数の接触点を分析し,前記複数の接触点に基づいたキー情報を決定し,決定された前記キー情報に基づいて,前記電子デバイスへアクセスするユーザを認証し,前記ユーザによるアクセスについて許可または拒否の判定をする方法であって,
上部に配置される複数の2次元形状の接触子を有するベースを含み,電子デバイスを活性化するために,ユーザがタッチスクリーンに提示することができるサインインキーを使用すること,
前記電子デバイスのセキュリティ機能の初期化時に,前記ユーザが識別され,前記サインインキーが前記タッチスクリーンに提示されると,デバイスセキュリティアプリケーションが,前記タッチスクリーンの接触点の数を決定し,接触点の数が決定されると,各接触点について最も近い2つの接触点との距離を決定し,次いで,各接触点について,検査中の接触点と最も近い2つの接触点との間に生じた相対角度を決定するとともに,前記電子デバイスにアクセスしようとするユーザにより,同一のサインインキーが後の時点で提示されたときに認識に使用するため,キー情報である各接触点について決定された距離及び相対角度を保存すること,
ユーザがサインインキーを提示して前記電子デバイスにアクセスするとき,ユーザサインインプロセスでは,前記デバイスセキュリティアプリケーションがユーザ入力から少なくとも1つの接触点を検出することによって開始され,前記タッチスクリーンの接触検知素子が前記サインインキーの接触子により接触されたときを検出し,各接触点についての位置情報を決定し,各接触点について,最も近い2つの接触点との距離と同様に,それら最も近い2つの接触点との間に形成される相対角度を決定すること,
前記デバイスセキュリティアプリケーションは,前記タッチスクリーンに現在提示されている前記サインインキーについて必要な位置情報を決定すると,記憶されたキー情報と比較し,両者の接触点の距離と相対角度との間の比較結果に基づき,前記サインインキーが前記電子デバイスによって認識されたか否かの判定を行い,一致した場合には,当該ユーザ情報及びキー情報を取得すること,
前記デバイスセキュリティアプリケーションは,取得したユーザ情報及びキー情報に基づき,有効と判定した場合に,前記ユーザによる前記電子デバイスへのアクセスを許可すること,
を含む方法。」

2 引用例2に記載されている技術的事項

本願の優先日前に頒布又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となり,原審の拒絶査定の理由である平成28年7月8日付けの拒絶理由通知において引用された,特開平11-149454号公報(平成11年6月2日出願公開,以下,「引用例2」という。)には,以下の技術的事項が記載されている。
(当審注:下線は,参考のために当審で付与したものである。)

G 「【0021】座標検出器6は,入力された座標値を検出したり,抵抗式の場合には入力された座標に対応する抵抗値を検出したりなどするものである。この座標検出器6は,CRT上に表示された画面,液晶上に表示された画面,タブレットなどの入力された座標値を検出するものである。これらの,CRT上に表示された画面,液晶ディスプレイ上に表示された画面,タッチパネル,タブレット,抵抗式のタブレットなどの全ての座標を検出するものを含めて本願発明では座標検出器と呼んでいる。例えば,液晶ディスレイ,プラズマ放電パネルの上に薄膜抵抗式のデジタイザを配したタッチパネルや,液晶ディスプレイやプラズマ放電パネルの下に電磁誘導方式のデジタイザを配したタッチパネル等でも良い。電磁誘導方式の場合は,画面(例えば液晶ディスプレイ)の下方に配置した座標検出器により,ペン(又はスタイラス)からの磁気を感知して座標を検出する。」

H 「【0082】図17は,本発明の比較説明図(固定値)を示す。位置検出装置で検出した座標には,検出誤差が含まれ,かつユーザ個人のペンの当て方にもクセがあり,検出座標と登録座標の比較には必ず許容範囲を設ける必要がある。図17において,ステップS121は,許容範囲Δx,Δyを設定する。これは,既述した画面11上に表示されたカード枠12にカードを当ててペンで押下して座標入力して検出ときの許容範囲を固定値のΔx,Δyと設定する。
【0083】ステップS122は,Xとxn±Δxの比較を行う。これは,入力座標(X,Y)のうちのXと,n個目の登録データ(xn,yn)のうちのxnに±Δxを加算した値とを比較する。ステップS123は,xn-Δx≦X≦xn+Δxの範囲内か判別する。これは,入力座標のXがステップS121で設定した許容誤差Δxの範囲内にあるか判別する。ステップS123の判別結果がYESの場合には,許容範囲内にあると判明したので,処理はステップS124に進む。ステップS123の判別結果がNOの場合には,許容範囲外と判明したので,不一致出力をし,処理は終了する。
【0084】ステップS124は,ステップS122と同様に,Yとyn±Δyの比較を行う。これは,入力座標(X,Y)のうちのYと,n個目の登録データ(xn,yn)のうちのynに±Δyを加算した値とを比較する。ステップS125は,yn-Δy≦Y≦yn+Δyの範囲内か判別する。これは,入力座標のYがステップS121で設定した許容誤差Δyの範囲内にあるか判別する。ステップS125の判別結果がYESの場合には,許容範囲内にあると判明したので,ステップS126で座標一致出力し,処理は終了する。ステップS125の判別結果がNOの場合には,許容範囲外と判明したので,不一致出力をし,処理は終了する。
【0085】以上によって,許容範囲Δx,Δy(固定値)を設定し,画面11上から検出した座標入力(X,Y)が登録データの許容範囲Δx,Δyにあるときに座標一致として判定し,座標入力時の誤差がある程度あっても許容範囲内のときは正しく判定されることとなる。図18は,本発明のセキュリティレベル設定説明図を示す。」

したがって,上記引用例2には,「タッチパネルのような座標検出装置において,検出座標と登録座標の比較時に検出誤差があっても,許容範囲内であれば座標は一致すると判定する」という技術的事項(以下,「引用例2記載技術」という。)が記載されていると認められる。

3 参考文献1に記載されている技術的事項

本願の優先日前に頒布又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった,特開2010-140322号公報(平成22年6月24日出願公開,以下,「参考文献1」という。)には,以下の技術的事項が記載されている。
(当審注:下線は,参考のために当審で付与したものである。)

J 「【0051】
ここで,図4を参照して,読取部112による静電式タッチパネルを用いたパターン情報の読み取りについて説明する。図4では,導電性を有する物質で形成されたパターン情報がQRコードである場合について説明する。例えば,図4に示したように,媒体300に導電性インクで形成されたQRコード301が記述されている。
【0052】
ユーザにより,静電式タッチパネルを備える情報処理装置100がQRコード301に接触または近接される。上記したように,判別部110は,読み取り対象のエッジ特性などにより,当該読み取り対象がQRコード等のパターン情報かユーザの指であるか否かを判別する。判別部110により読み取り対象がQRコード等のパターン情報であると判別された場合には,読取部112は媒体300に記述されたQRコード等のパターン情報を読み取る。
【0053】
図4の説明図310は,静電式タッチパネルをQRコード311が記述されている媒体に接触または近接した場合に検出される静電容量の変化情報を説明する説明図である。図4の説明図310に示したように,QRコード311に沿って形成された金属情報をもとに,領域312のような静電容量の変化を検出することができる。金属情報を有さない領域313は,静電容量が変化していない領域である。」

4 参考文献2に記載されている技術的事項

本願の優先日前に頒布又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった,特開2003-346077号公報(平成15年12月5日出願公開,以下,「参考文献2」という。)には,以下の技術的事項が記載されている。
(当審注:下線は,参考のために当審で付与したものである。)

K 「【0013】ここで,本実施例において使用する2次元コード例えばマイクロQRコードについて,図3ないし図9を参照して説明する。まず,図3に従って,周知のマイクロQRコード31について簡単に説明する。このマイクロQRコード31は,情報単位であるデータセルを配置したデータセル領域31a(多数の白黒セルで埋まった幅広い逆L字状の領域)と,このデータセル領域31aの位置情報を記録したファインダーパターン領域31bと,これらデータセル領域31a及びファインダーパターン領域31bの周囲に位置するように設けられ上記2つの領域31a,31bを他の領域と区画する周辺領域31c(矩形枠状の空白の領域)とから構成されている。」

したがって,上記参考文献2には,「コード全体を複数に分割する分割領域の各々に,白セル又は黒セルを対応づけて2次元コードを構成し,特に,5個以上の黒セルを含み,その内1個は位置決めのために指定されたファインダーパターンの黒セルとし,白黒セルの位置関係に基づき当該2次元コードを識別する」という技術的事項が記載されていると認められる。

5 参考文献3に記載されている技術的事項

本願の優先日前に頒布又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった,特開平11-120311号公報(平成11年4月30日出願公開,以下,「参考文献3」という。)には,以下の技術的事項が記載されている。
(当審注:下線は,参考のために当審で付与したものである。)

L 「【0016】又,2次元コードは図4(A)に示すように,図2(A)に示すデータLijと同じであるが,右端セルLn15(ここで,nは1?7)の基準マークを略して簡便に形成した点と,左端セルLn1の左側に1セルの読取基準マークMaが,右端セルLn15の右側には1セルの読取基準マークMbが,前記拡大マーク10a(又は10b)に対応させてほぼ中央に付記してある点を異にする。
【0017】この2次元コードは,図4(C)に示すように,先ず,コードリーダの先端部1bを番組欄上におき,拡大鏡6を見ながら,読取基準マークMa,Mbを拡大マーク10a(又は10b)に合わせると,CCDカメラは,2次元コードが基準位置に一致した状態で読み取ることができ,縦横の回転等のデータ補正を行うことなく解読可能となる。その結果,2次元コードを迅速に且つ正確に読み取ることができ,番組予約を簡便に行うことが可能となる。このように,2次元コードに読取基準マークMa,Mbを附すと共に,拡大鏡6を取り付けると,容易に基準位置合わせができるので迅速に2次元コードを解読できる。
【0018】尚,前記2次元コードに附す読取基準マークMa,Mbは,左右側の他,上下側であってもよいし,何れか1箇所であってもよい。即ち,拡大マーク10a(又は10b)によって,読取基準マークMa(又はMb)を介して基準位置合わせを行うので,データの回転補正を行う必要がなく,例えば,読取基準マークMa(又はMb)との基準位置合わせが行える程度の長さに形成してあれば,1個の読取基準マークMa(又はMb)であってもよい。」

したがって,上記参考文献3には,「コード全体を複数に分割する分割領域の各々に,黒マーク又は白マークを対応づけて2次元コードを構成し,特に,5個以上の黒マークを含み,その内1個は位置決めのために指定された読取基準(黒)マークとし,白黒マークの位置関係に基づき当該2次元コードを識別する」という技術的事項が記載されていると認められる。

第6 対比

1 本願発明と引用発明とを対比する。

(1)引用発明は,「タッチスクリーン式の電子デバイスのためのセキュリティシステム」において,ユーザにより「タッチスクリーン」に提示された「ランダムな順序に配置されたピンまたは複数の接触子を含むサインインキー」による「複数の接触点」に基づき「キー情報」を決定するところ,「サインインキー」の「複数の接触子」は同時に「タッチスクリーン」に接触(タッチ)することから,「タッチスクリーン」は多重タッチを支援するといえ,「セキュリティシステム」が「タッチスクリーン」と連携することは明らかであるから,引用発明の「タッチスクリーン」,「セキュリティシステム」はそれぞれ,本願発明の「タッチスクリーン」,「システム」に相当するといえる。
また,引用発明では,「決定された前記キー情報に基づいて,前記電子デバイスへアクセスするユーザを認証し,前記ユーザによるアクセスについて許可または拒否の判定をする」ところ,「複数の接触子を含むサインインキー」はスタンプ形状であり,当該「サインインキー」による「タッチスクリーン」への接触(タッチ)を検出して,ユーザ認証を実行しているといえる。
そうすると,引用発明と本願発明とは,“多重タッチを支援するタッチスクリーンと連携されたシステムを通じて実行されるスタンプタッチ認証方法”である点で一致するといえる。

(2)引用発明では,「前記サインインキーが前記タッチスクリーンに提示される」ところ,上記(1)での検討より,「複数の接触子を含むサインインキー」はスタンプ形状であり,当該「サインインキー」による「タッチスクリーン」への接触(タッチ)を検出して,ユーザ認証を実行しているといえ,一方,本願発明の「タッチスタンプ」は「タッチ部」を「静電式タッチスクリーン」にタッチして「スタンプタッチ認証」を行うと認められるから,引用発明の「サインインキー」,「接触子」は,本願発明の「タッチスタンプ」,「タッチ部」に相当するといえる。
また,引用発明では,「前記電子デバイスのセキュリティ機能の初期化時に,前記ユーザが識別され,前記サインインキーが前記タッチスクリーンに提示されると,デバイスセキュリティアプリケーションが,前記タッチスクリーンの接触点の数を決定し,接触点の数が決定されると,各接触点について最も近い2つの接触点との距離を決定し,次いで,各接触点について,検査中の接触点と最も近い2つの接触点との間に生じた相対角度を決定するとともに,前記電子デバイスにアクセスしようとするユーザにより,同一のサインインキーが後の時点で提示されたときに認識に使用するため,キー情報である各接触点について決定された距離及び相対角度を保存する」ところ,「電子デバイスのセキュリティ機能の初期化時」の「サインインキー」提示による「タッチスクリーン」の「各接触点について決定された距離及び相対角度」は,「各接触点について最も近い2つの接触点との距離を決定し,次いで,各接触点について,検査中の接触点と最も近い2つの接触点との間に生じた相対角度を決定する」から,予め登録される「サインインキー」の複数の「接触子」の“設計上の幾何学的位置関係”であるといえ,引用発明における「タッチスクリーン」の「各接触点について決定された距離及び相対角度」は,“距離関係と角度関係の中で少なくとも一つを含む設計上の幾何学的位置関係”とみることができる。
加えて,引用発明では,「前記電子デバイスにアクセスしようとするユーザにより,同一のサインインキーが後の時点で提示されたときに認識に使用する」ことから,保存される「キー情報」は“認証条件”として使用されると解され,引用発明の「キー情報である各接触点について決定された距離及び相対角度」は“距離関係と角度関係の中で少なくとも一つを含む設計上の幾何学的位置関係を含むタッチ認証条件”であるといえる。
そうすると,引用発明の「前記電子デバイスのセキュリティ機能の初期化時に,前記ユーザが識別され,前記サインインキーが前記タッチスクリーンに提示されると,デバイスセキュリティアプリケーションが,前記タッチスクリーンの接触点の数を決定し,接触点の数が決定されると,各接触点について最も近い2つの接触点との距離を決定し,次いで,各接触点について,検査中の接触点と最も近い2つの接触点との間に生じた相対角度を決定するとともに,前記電子デバイスにアクセスしようとするユーザにより,同一のサインインキーが後の時点で提示されたときに認識に使用するため,キー情報である各接触点について決定された距離及び相対角度を保存すること」と,
本願発明の「タッチスタンプに具備されたタッチ部の距離関係と角度関係の中で少なくとも一つを含む設計上の幾何学的位置関係を含むタッチ認証条件を保存媒体に保存する第1段階」とに実質的な差異はない。

(3)引用発明では,「ユーザがサインインキーを提示して前記電子デバイスにアクセスするとき,ユーザサインインプロセスでは,前記デバイスセキュリティアプリケーションがユーザ入力から少なくとも1つの接触点を検出することによって開始され,前記タッチスクリーンの接触検知素子が前記サインインキーの接触子により接触されたときを検出し,各接触点についての位置情報を決定」するところ,上記(1)の検討より,引用発明の「各接触点についての位置情報」は「サインインキー」の「複数の接触子」が同時に「タッチスクリーン」に接触(タッチ)することにより決定されると解されるから,引用発明の「各接触点についての位置情報」は本願発明の「タッチに対応する構成要素値」に相当するといえる。
また,上記(2)での検討より,引用発明の「タッチスクリーンの接触点」の情報は,「前記電子デバイスにアクセスしようとするユーザにより,同一のサインインキーが後の時点で提示されたときに認識に使用する」ことから,検出される「ユーザ入力から少なくとも1つの接触点」の「各接触点についての位置情報」は「ユーザサインインプロセス」において認識される情報であると解され,“タッチ認識情報”とみることができる。
そうすると,引用発明の「ユーザがサインインキーを提示して前記電子デバイスにアクセスするとき,ユーザサインインプロセスでは,前記デバイスセキュリティアプリケーションがユーザ入力から少なくとも1つの接触点を検出することによって開始され,前記タッチスクリーンの接触検知素子が前記サインインキーの接触子により接触されたときを検出し,各接触点についての位置情報を決定」することと,
本願発明の「前記タッチスタンプに具備された前記タッチ部により実行された前記静電式タッチスクリーンに対するタッチに対応する構成要素値を含むタッチ認識情報を受信する第2段階」とは,後記する点で相違するものの,
“前記タッチスタンプに具備された前記タッチ部により実行された前記タッチスクリーンに対するタッチに対応する構成要素値を含むタッチ認識情報を受信する第2段階”である点で共通するといえる。


(4)引用発明では,「ユーザがサインインキーを提示して前記電子デバイスにアクセスするとき,」「各接触点についての位置情報を決定し,各接触点について,最も近い2つの接触点との距離と同様に,それら最も近い2つの接触点との間に形成される相対角度を決定する」ところ,上記(2)の検討より,引用発明における「タッチスクリーン」の「各接触点について決定された距離及び相対角度」は,“距離関係と角度関係の中で少なくとも一つを含む設計上の幾何学的位置関係”とみることができる。
また,上記(3)の検討より,引用発明の「各接触点についての位置情報」は,「サインインキー」の「複数の接触子」が同時に「タッチスクリーン」に接触(タッチ)することにより決定されると解され,引用発明の「各接触点についての位置情報」は本願発明の「タッチに対応する構成要素値」に相当するといえるから,引用発明と本願発明とは,“タッチスタンプ”の“タッチ部”の“構成要素値を利用して算出された前記タッチスクリーンにタッチされたタッチ点の幾何学的位置関係を識別する”点で一致するといえる。
加えて,引用発明において,「ユーザサインインプロセス」でユーザが提示する「サインインキー」の「複数の接触子」は,「電子デバイスのセキュリティ機能の初期化時」に「キー情報である各接触点について決定された距離及び相対角度を保存」した特定の「サインインキー」と同一の幾何学的位置関係で設計されたN個の「接触子」であるといえることから,本願発明の「特定タッチスタンプの分割領域上の予め設計された固定位置に位置するN(N≧5)個のタッチ部のうちの1個である指定されたタッチ部と,前記特定タッチスタンプの分割領域上の設計された算出位置に位置する残りのn(n≧4)個の他のタッチ部をそれぞれ含む前記タッチ部」と“特定タッチスタンプの予め設計された位置のN個のタッチ部”である点で一致するといえる。
そうすると,引用発明の「各接触点について,最も近い2つの接触点との距離と同様に,それら最も近い2つの接触点との間に形成される相対角度を決定すること」と,
本願発明の「特定タッチスタンプの分割領域上の予め設計された固定位置に位置するN(N≧5)個のタッチ部のうちの1個である指定されたタッチ部と,前記特定タッチスタンプの分割領域上の設計された算出位置に位置する残りのn(n≧4)個の他のタッチ部をそれぞれ含む前記タッチ部の前記構成要素値を利用して算出された前記静電式タッチスクリーンにタッチされたタッチ点の幾何学的位置関係を識別する第3段階」とは,後記する点で相違するものの,
“特定タッチスタンプの予め設計された位置のN個のタッチ部の前記構成要素値を利用して算出された前記タッチスクリーンにタッチされたタッチ点の幾何学的位置関係を識別する第3段階”である点で共通するといえる。

(5)引用発明では,「前記デバイスセキュリティアプリケーションは,前記タッチスクリーンに現在提示されている前記サインインキーについて必要な位置情報を決定すると,記憶されたキー情報と比較し,両者の接触点の距離と相対角度との間の比較結果に基づき,前記サインインキーが前記電子デバイスによって認識されたか否かの判定を行」うところ,「タッチスクリーンに現在提示されている前記サインインキーについて必要な位置情報」から「接触点の距離と相対角度」が算出されてマッチングされるといえるから,上記(4)の検討より,「タッチスクリーンに現在提示されている前記サインインキーについて必要な位置情報」に基づく「接触点の距離と相対角度」は,“算出された幾何学的位置関係”とみることができる。
また,上記(2)での検討より,引用発明の「キー情報である各接触点について決定された距離及び相対角度」は“距離関係と角度関係の中で少なくとも一つを含む設計上の幾何学的位置関係を含むタッチ認証条件”であるといえることから,引用発明の「記憶されたキー情報」は,“タッチ認証条件に含まれた設計上の幾何学的位置関係”とみることができる。
そうすると,引用発明において,「前記デバイスセキュリティアプリケーションは,前記タッチスクリーンに現在提示されている前記サインインキーについて必要な位置情報を決定すると,記憶されたキー情報と比較し,両者の接触点の距離と相対角度との間の比較結果に基づき,前記サインインキーが前記電子デバイスによって認識されたか否かの判定を行」うことは,“前記算出された幾何学的位置関係が前記タッチ認証条件に含まれた設計上の幾何学的位置関係とマッチングするか否かを解釈する”といえる。

(6)引用発明における「前記ユーザによる前記電子デバイスへのアクセスを許可すること」は,「一致した場合には,当該ユーザ情報及びキー情報を取得すること,取得したユーザ情報及びキー情報に基づき,有効と判定した場合」,すなわち,提示された「サインインキー」によりユーザが認証された結果としての「電子デバイスのためのセキュリティシステム」の動作であるといえ,“タッチ認証結果”とみることができるから,
引用発明と本願発明とは,“算出された幾何学的位置関係が前記設計上の幾何学的位置関係とマッチングするか否かを解釈したタッチ認証結果を生成する”点で一致するといえる。
そうすると,引用発明の「前記デバイスセキュリティアプリケーションは,前記タッチスクリーンに現在提示されている前記サインインキーについて必要な位置情報を決定すると,記憶されたキー情報と比較し,両者の接触点の距離と相対角度との間の比較結果に基づき,前記サインインキーが前記電子デバイスによって認識されたか否かの判定を行い,一致した場合には,当該ユーザ情報及びキー情報を取得すること,
前記デバイスセキュリティアプリケーションは,取得したユーザ情報及びキー情報に基づき,有効と判定した場合に,前記ユーザによる前記電子デバイスへのアクセスを許可すること」と,
本願発明の「前記算出された幾何学的位置関係が許容された誤差範囲内で前記タッチ認証条件に含まれた設計上の幾何学的位置関係とマッチングするか否かを解釈する第4段階と,
前記算出された幾何学的位置関係が許容された誤差範囲内で前記設計上の幾何学的位置関係とマッチングするか否かを解釈したタッチ認証結果を生成する第5段階」とは,後記する点で相違するものの,
“前記算出された幾何学的位置関係が前記タッチ認証条件に含まれた設計上の幾何学的位置関係とマッチングするか否かを解釈する第4段階と,
前記算出された幾何学的位置関係が前記設計上の幾何学的位置関係とマッチングするか否かを解釈したタッチ認証結果を生成する第5段階”である点で共通するといえる。

2 以上から,本願発明と引用発明とは,以下の点で一致し,また,以下の点で相違する。

<一致点>

「多重タッチを支援するタッチスクリーンと連携されたシステムを通じて実行されるスタンプタッチ認証方法であって,
タッチスタンプに具備されたタッチ部の距離関係と角度関係の中で少なくとも一つを含む設計上の幾何学的位置関係を含むタッチ認証条件を保存媒体に保存する第1段階と,
前記タッチスタンプに具備された前記タッチ部により実行された前記タッチスクリーンに対するタッチに対応する構成要素値を含むタッチ認識情報を受信する第2段階と,
特定タッチスタンプの予め設計された位置のN個のタッチ部の前記構成要素値を利用して算出された前記タッチスクリーンにタッチされたタッチ点の幾何学的位置関係を識別する第3段階と,
前記算出された幾何学的位置関係が前記タッチ認証条件に含まれた設計上の幾何学的位置関係とマッチングするか否かを解釈する第4段階と,
前記算出された幾何学的位置関係が前記設計上の幾何学的位置関係とマッチングするか否かを解釈したタッチ認証結果を生成する第5段階と,
を含むことを特徴とするスタンプタッチ認証方法。」

<相違点1>
多重タッチを支援するタッチスクリーンに関し,本願発明では,「静電式タッチスクリーン」による「スタンプタッチ認証方法」であるのに対して,
引用発明では,「電子デバイス」の「タッチスクリーン」によりアクセスするユーザを認証するものの,「タッチスクリーン」が静電式であるかどうか特定されていない点。

<相違点2>
タッチ認識情報の受信に関し,本願発明では,「静電式タッチスクリーン」に対する「タッチ認識情報」を受信するのに対して,
引用発明では,「タッチスクリーン」の接触点の位置情報を決定するものの,「タッチスクリーン」が静電式であるかどうか特定されていない点。

<相違点3>
タッチ点の幾何学的位置関係の識別に関し,本願発明では,「特定タッチスタンプの分割領域上の予め設計された固定位置に位置するN(N≧5)個のタッチ部のうちの1個である指定されたタッチ部と,前記特定タッチスタンプの分割領域上の設計された算出位置に位置する残りのn(n≧4)個の他のタッチ部をそれぞれ含む前記タッチ部の前記構成要素値を利用して算出」するのに対して,
引用発明では,「各接触点についての位置情報を決定し,各接触点について,最も近い2つの接触点との距離と同様に,それら最も近い2つの接触点との間に形成される相対角度を決定する」ものの,「サインインキー」の「複数の接触子」が5個以上であること,「サインインキー」の分割領域上に「接触子」が位置することについて言及されていない点。

<相違点4>
算出された幾何学的位置関係と設計上の幾何学的位置関係とのマッチングに関し,本願発明では,「算出された幾何学的位置関係が許容された誤差範囲内で前記設計上の幾何学的位置関係とマッチングするか否かを解釈」するのに対して,
引用発明では,「タッチスクリーンに現在提示されている前記サインインキーについて必要な位置情報を決定すると,記憶されたキー情報と比較し,両者の接触点の距離と相対角度との間の比較」を行うものの,許容された誤差範囲内でマッチングするか否かを解釈するかどうか言及されていない点。

第7 当審の判断

上記相違点1乃至4について検討する。

1 相違点1,2について

多重タッチを支援するタッチスクリーンに関し,引用発明では,「電子デバイス」の「タッチスクリーン」により提示される「サインインキー」の複数の接触点を検出し,アクセスするユーザを認証するところ,静電式のタッチスクリーン(タッチパネル)は,例えば,参考文献1(上記Jを参照のこと)に記載されるように,本願優先日前にはタッチスクリーンの方式としては周知慣用であった。
そして,サインインキーの接触点の検出のために,いずれの方式のタッチスクリーンを使用するかは,サインインキーの接触点の幾何学的位置関係の識別に関わりのない事項であり,当業者であれば適宜に選択し得た事項である。
そうすると,引用発明において,電子デバイスのタッチスクリーンとして,適宜,静電式タッチスクリーンを採用し,静電式タッチスクリーン上の接触点に基づき電子デバイスにアクセスするユーザを認証すること,すなわち,上記相違点1,2に係る構成とすることは,当業者が容易に想到し得たことである。

2 相違点3について

タッチスタンプによりタッチされたタッチスクリーン上のタッチ点の幾何学的位置関係の識別について,引用発明では,「各接触点についての位置情報を決定し,各接触点について,最も近い2つの接触点との距離と同様に,それら最も近い2つの接触点との間に形成される相対角度を決定する」ところ,タッチスタンプ(サインインキー)のタッチ部(接触子)は2次元形状であることが特定されており,識別対象の複数のタッチ点(接触点)は白黒セルから成る2次元コードを構成するといえる。
また,2次元コードの技術分野において,コード全体を複数に分割する分割領域の各々に,黒マーク又は白マークを対応づけて2次元コードを構成し,特に,5個以上の黒マークを含み,その内1個は位置決めなどのために指定された黒マークとし,黒マークの位置関係に基づき当該2次元コードを識別する旨の技術は,例えば,参考文献2(上記Kを参照),参考文献3(上記Lを参照)などに記載されるように,本願の優先日前には当該技術分野における周知技術であり,白黒セルから成る2次元コードは様々な態様のものが周知であった。
そして,引用発明において,複数のタッチ点(接触点)により形成される,白黒セルを含む2次元コードとして,如何なる形態の2次元コードを識別対象とするかは,各タッチ点(接触点)の幾何学的位置関係により識別できる限り,当業者であれば適宜に選択し得た事項である。
そうすると,引用発明において上記周知技術を適用し,適宜,特定タッチスタンプを,特定タッチスタンプの分割領域上の予め設計された固定位置に位置するN(N≧5)個のタッチ部のうちの1個である指定されたタッチ部と,前記特定タッチスタンプの分割領域上の設計された算出位置に位置する残りのn(n≧4)個の他のタッチ部をそれぞれ含むように構成し,前記タッチ部の構成要素値を利用して算出されたタッチ点の幾何学的位置関係を識別すること,すなわち,上記相違点3に係る構成とすることは,当業者が容易に想到し得たことである。

3 相違点4について

引用発明では,「タッチスクリーンに現在提示されている前記サインインキーについて必要な位置情報を決定すると,記憶されたキー情報と比較し,両者の接触点の距離と相対角度との間の比較」を行うところ,サインインキーの認識のために,タッチスクリーン上の複数のタッチ点の位置情報から算出された幾何学的位置関係と,記憶されたキー情報に基づく設計上の幾何学的位置関係とのマッチング処理を実行するといえる。
そして,引用例2記載技術の如く,タッチパネルのような座標検出装置において,検出座標と登録座標の比較時に検出誤差があっても,許容範囲内であれば座標は一致すると判定することは,当該技術分野における周知技術である。
そうすると,引用発明において引用例2記載技術を適用し,適宜,算出された幾何学的位置関係が許容された誤差範囲内で設計上の幾何学的位置関係とマッチングするか否かを解釈すること,すなわち,上記相違点4に係る構成とすることは,当業者が容易に想到し得たことである。

4 小括

上記で検討したごとく,相違点1乃至4に係る構成は当業者が容易に想到し得たものであり,そして,これらの相違点を総合的に勘案しても,本願発明の奏する作用効果は,上記引用発明,引用例2記載技術,及び参考文献1乃至3に記載の当該技術分野の周知技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず,格別顕著なものということはできない。
したがって,本願発明は,上記引用発明,引用例2記載技術,及び参考文献1乃至3に記載の当該技術分野の周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであり,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。


第8 むすび

以上のとおり,本願の請求項11に係る発明は,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから,その余の請求項に係る発明について検討するまでもなく,本願は拒絶すべきものである。

よって,結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2018-04-11 
結審通知日 2018-04-24 
審決日 2018-05-08 
出願番号 特願2015-542959(P2015-542959)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 戸島 弘詩圓道 浩史  
特許庁審判長 仲間 晃
特許庁審判官 辻本 泰隆
須田 勝巳
発明の名称 スタンプタッチ認証方法及びシステム  
代理人 山川 政樹  
代理人 小池 勇三  
代理人 山川 茂樹  

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