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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1344723
審判番号 不服2017-17183  
総通号数 227 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-11-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-11-20 
確定日 2018-10-04 
事件の表示 特願2012-260121号「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成26年6月9日出願公開、特開2014-104199号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成24年11月28日の出願であって、平成27年7月27日に手続補正書が提出され、平成28年5月13日付けで拒絶の理由が通知され、同年7月20日に意見書及び手続補正書が提出され、平成29年1月10日付けで最後の拒絶の理由が通知され、同年3月17日に意見書及び手続補正書が提出されたところ、同年8月4日付けで、同年3月17日付け手続補正が却下されるとともに拒絶査定(以下「原査定」という。)がなされ、それに対して、同年11月20日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正がなされたものである。

第2 平成29年11月20日付けの手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成29年11月20日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 補正の内容
本件補正は、特許請求の範囲を補正する内容を含んでおり、本件補正により、本件補正前の平成28年7月20日付けの手続補正書における特許請求の範囲の請求項1及び2が削除されるとともに、請求項3が、
「【請求項3】
所定の開始条件の成立に基づいて複数の識別情報を変動表示する変動表示ゲームを実行する遊技機において、
所定の画像を表示可能な表示手段と、
前記識別情報が表示可能であるとともに、所定の位置に移動可能な第1表示領域および当該第1表示領域に表示される内容と別の情報が表示される第2表示領域を前記表示手段に表示する制御を実行可能な表示制御手段と、を備え、
前記表示制御手段は、前記表示手段に表示する前記第1表示領域の面積の変化量に応じて、前記表示手段に表示する前記第2表示領域の面積を変化可能であることを特徴とする遊技機。」
から、本件補正後の請求項1として、
「【請求項1】
A 所定の開始条件の成立に基づいて複数の識別情報を変動表示する変動表示ゲームを実行する遊技機において、
B 所定の画像を表示可能な表示手段と、
C 前記識別情報が表示可能であるとともに、所定の位置に移動可能な第1表示領域および当該第1表示領域に表示される内容と別の情報が表示される第2表示領域を前記表示手段に表示する制御を実行可能な表示制御手段と、を備え、
D 前記表示制御手段は、前記表示手段に表示する前記第1表示領域の面積の変化量に応じて、前記表示手段に表示する前記第2表示領域の面積を前記表示手段の画像を表示可能な範囲に対して変化可能であることを特徴とする遊技機。」
に補正された(下線は、補正箇所を明示するために当審にて付した。また、当審においてA?Dに分説した。)。

2 補正の適否
本件補正は、願書に最初に添付された特許請求の範囲、明細書及び図面の段落【0306】?【0334】、図16?26等の記載に基づいて、補正前の請求項3に記載した発明を特定するために必要な事項である「表示制御手段」に関して、「変化可能で」である「前記表示手段に表示する前記第2表示領域の面積」を「前記表示手段の画像を表示可能な範囲に対して」変化させることに限定するものであって、かつ、補正前の請求項に記載された発明と補正後の請求項に記載された発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるので、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、本件補正は、新規事項を追加するものではなく、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たすものである。

3 独立特許要件
そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について、以下に検討する。

(1)引用例1
ア 引用例1の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用文献1として引用された特開平7-155445号公報(以下「引用例1」という。)には、図面とともに以下の(1-a)?(1-e)の事項が記載されている。

(1-a)「【要約】
【目的】 パチンコ遊技機の表示板に図柄表示のみでなく、絵柄を変動して表示させ、絵柄の変動によりリーチ後の図柄の決定を暗示させるようにする。
【構成】 表示板20は、表示面に下寄りに配置された変動図柄表示領域21を設けており、変動図柄表示領域は横方向に3個の表示部21a?21cを設けている。変動図柄表示領域の上部には絵柄表示領域22が設けられている。表示部には、15種類の図柄要素が1個づつ表示される。遊戯球が第1種始動口13に入賞すると、駆動装置により各表示部における図柄要素のスクロールが開始される。左図柄、中図柄が同一内容に確定し、いわゆるスーパーリーチになると、変動図柄表示領域の大きさが縮小し、かつ下側に移動する。そして、表示板の残された部分が絵柄表示領域になり、ここに力士の取り組みが変動絵柄として表示される。変動絵柄がリーチの結果を暗示するように変動する。」

(1-b)「【0012】
【実施例】以下、本発明の一実施例を図面により説明する。図1及び図2は、本発明に係るパチンコ遊技機を正面図及び背面図により概略的に示したものである。」

(1-c)「【0014】表示板20は、液晶表示形式の表示板であり、図3(a)に示すように、表示面には下寄りに配置された左中右の3個の表示部21a?21cからなる変動図柄表示領域21と、その上部に配置された絵柄表示領域22を設けている。各表示部21a?21cには、1?15の数字を表した15種類の図柄要素P1?P15のうち1つづつが表示され、第1種始動口13に遊技球が入賞したときに図柄要素が縦方向に連続的にスクロールされて表示されるようになっている。そして、表示部21a,21bが同一図柄要素で確定されたとき、図3(b)に示すように、リーチ状態になる。このときは、絵柄表示領域22には変動しない背景絵柄が表示される。ここで、リーチ状態になったときに、特定の確率でいわゆるスーパーリーチ状態になる。スーパーリーチ状態とは、その後の図柄確定時における大当たりの発生確率が、通常のリーチ時より格段に高くなるように定められている。そして、スーパーリーチ状態になると、図3(c)に示すように、変動図柄表示領域21は縮小されて下方に移動する。同時に、相対的に大きくなった絵柄表示領域22aには、スポーツ例えば相撲の取り組みが変動状態で表示される。」

(1-d)「【0018】つぎに、上記表示板の電気制御装置について図4により説明する。電気制御装置60は、ROM,CPU,RAM,確率カウンタ及びI/O等を有するマイクロコンピュータにより構成された制御回路61を備えている。制御回路61は、図5に示すフローチャートに対応した「表示板制御プログラム」を実行するものである。制御回路61の入力側には、上記第1種始動口入賞検出スイッチ14が接続されている。また、制御回路61の出力側には、表示板20が駆動回路20aを介して接続されている。そして、表示板20は駆動回路20aの駆動により所定の変動図柄及び変動絵柄を表示する。
【0019】つぎに、上記のように構成した実施例の動作について説明する。電源スイッチ(図示しない)をオンさせ、遊技者が貯留皿30に遊技球を投入し操作ハンドル42を操作することによりゲームが開始される。制御回路61は、図7に示す「表示板制御プログラム」の実行をステップ70にて開始し、ステップ71にて各種変数の初期化を行い、ステップ72にて遊技球が第1種始動口13へ入球したか否かを判定する。遊技球が第1種始動口13へ入球し第1種始動口入賞検出スイッチ14から入賞信号が送られたときは、制御回路61はステップ72にて「YES」との判定の下にプログラムをステップ73に移行させ、駆動回路20aに変動図柄表示信号及び絵柄表示信号を出力する。これを受けて駆動回路20aは、表示板20の図柄表示領域21の図柄表示を開始させると共に、絵柄表示領域22に力士の固定した絵柄を表示させる。」

(1-e)「【0021】上記ステップ72?78の処理の繰り返し中に、たまたまスーパーリーチ状態が発生すると、制御回路61はステップ76にて「YES」との判定の下にプログラムをステップ80に移行させ、ステップ80にて図柄表示領域縮小信号を出力する。これに応じて、駆動回路20aは、図3(c)に示すように、図柄表示領域21を縮小させて画面下側に移動させると共に絵柄表示領域22を相対的に拡大させる。さらに、制御回路61はプログラムをステップ81に移行させ、絵柄変動開始信号を出力する。駆動回路20aはこれに応じて、絵柄表示領域22aに相撲の取り組みの絵柄を変動して表示させる(取り組み図は省略する)。この変動絵柄は、右図柄21cの確定による大当たり状態か外れ状態かの発生に応じて、いずれかの発生を暗示させるように変動する。そして、右図柄が確定したときは、制御回路61はステップ82にて「YES」との判定の下にプログラムをステップ83に移行させ大当たりか否かを判定する。」

イ 認定事項
上記「ア」から、次の(1-f)?(1-i)の事項が認定できる。

(1-f)
段落【0014】には、「表示面には下寄りに配置された左中右の3個の表示部21a?21cからなる変動図柄表示領域21と、その上部に配置された絵柄表示領域22を設けている。各表示部21a?21cには、1?15の数字を表した15種類の図柄要素P1?P15のうち1つづつが表示され、第1種始動口13に遊技球が入賞したときに図柄要素が縦方向に連続的にスクロールされて表示されるようになっている。」と記載され、段落【0019】には、「遊技者が貯留皿30に遊技球を投入し操作ハンドル42を操作することによりゲームが開始される。」と記載され、段落【0012】には、「本発明に係るパチンコ遊技機」と記載されているから、引用例1には、第1種始動口13に遊技球が入賞したときに複数種類の図柄要素が縦方向に連続的にスクロールして表示するゲームを行うパチンコ遊技機が記載されているといえる。

(1-g)
段落【0014】には、「表示板20は、液晶表示形式の表示板であり、図3(a)に示すように、表示面には下寄りに配置された左中右の3個の表示部21a?21cからなる変動図柄表示領域21と、その上部に配置された絵柄表示領域22を設けている。各表示部21a?21cには、1?15の数字を表した15種類の図柄要素P1?P15のうち1つづつが表示され」及び「絵柄表示領域22には変動しない背景絵柄が表示される。」と記載されていることから、引用例1には、図柄要素や背景絵柄を表示する表示板20が記載されているといえる。

(1-h)
段落【0014】には、「表示面には下寄りに配置された左中右の3個の表示部21a?21cからなる変動図柄表示領域21と、その上部に配置された絵柄表示領域22を設けている。各表示部21a?21cには、1?15の数字を表した15種類の図柄要素P1?P15のうち1つづつが表示され」及び「絵柄表示領域22には変動しない背景絵柄が表示される。」と記載され、段落【0021】には、「駆動回路20aは、図3(c)に示すように、図柄表示領域21を縮小させて画面下側に移動させると共に絵柄表示領域22を相対的に拡大させる。さらに、制御回路61はプログラムをステップ81に移行させ、絵柄変動開始信号を出力する。駆動回路20aはこれに応じて、絵柄表示領域22aに相撲の取り組みの絵柄を変動して表示させる」と記載され、段落【0018】には、「表示板20は駆動回路20aの駆動により所定の変動図柄及び変動絵柄を表示する。」と記載されていることから、引用例1には、図柄要素を表示するとともに画面下側に移動可能な変動図柄表示領域21、及び、背景絵柄や相撲の取り組みの絵柄を表示する絵柄表示領域22の表示を表示板20に駆動する駆動回路20aが記載されているといえる。

(1-i)
段落【0014】には、「表示板20は、液晶表示形式の表示板であり、図3(a)に示すように、表示面には下寄りに配置された左中右の3個の表示部21a?21cからなる変動図柄表示領域21と、その上部に配置された絵柄表示領域22を設けている。」と記載され、段落【0021】には、「駆動回路20aは、図3(c)に示すように、図柄表示領域21を縮小させて画面下側に移動させると共に絵柄表示領域22を相対的に拡大させる。」と記載され、【要約】には、「変動図柄表示領域の大きさが縮小し、かつ下側に移動する。そして、表示板の残された部分が絵柄表示領域になり、ここに力士の取り組みが変動絵柄として表示される。」と記載され、段落【0012】には、「本発明に係るパチンコ遊技機」と記載されていることから、引用例1には、駆動回路20aは、表示板20に表示する変動図柄表示領域21を縮小させて画面下側に移動させると共に表示板20に表示する絵柄表示領域22を相対的に拡大させ、変動図柄表示領域21の大きさが縮小して下側に移動して表示板20の残された部分が絵柄表示領域22となる、パチンコ遊技機が記載されているといえる。

ウ 引用例1に記載された発明
上記(1-a)?(1-e)の記載事項及び(1-f)?(1-i)の認定事項を総合すると、引用例1には、次の発明が記載されていると認められる(以下「引用発明」という。)。

「a 第1種始動口13に遊技球が入賞したときに複数種類の図柄要素が縦方向に連続的にスクロールして表示するゲームを行うパチンコ遊技機において、(認定事項1-f)
b 図柄要素や背景絵柄を表示する表示板20と、(認定事項1-g)
c 図柄要素を表示するとともに画面下側に移動可能な変動図柄表示領域21、及び、背景絵柄や相撲の取り組みの絵柄を表示する絵柄表示領域22の表示を表示板20に駆動する駆動回路20aと、(認定事項1-h)
d 駆動回路20aは、表示板20に表示する変動図柄表示領域21を縮小させて画面下側に移動させると共に表示板20に表示する絵柄表示領域22を相対的に拡大させ、変動図柄表示領域21の大きさが縮小して下側に移動して表示板20の残された部分が絵柄表示領域22となる、パチンコ遊技機。(認定事項1-i)」

(2)対比・判断
本願補正発明と引用発明とを対比する(下記の(a)?(d)は、引用発明の構成に対応している。)。

(a)引用発明の「第1種始動口13に遊技球が入賞したとき」、「複数種類の図柄要素が縦方向に連続的にスクロールして表示するゲーム」、及び「パチンコ遊技機」は、本願補正発明の「所定の開始条件の成立」、「複数の識別情報を変動表示する変動表示ゲーム」、及び「遊技機」にそれぞれ相当する。
よって、引用発明の「第1種始動口13に遊技球が入賞したときに複数種類の図柄要素が縦方向に連続的にスクロールして表示するゲームを行うパチンコ遊技機」は、本願補正発明の「所定の開始条件の成立に基づいて複数の識別情報を変動表示する変動表示ゲームを実行する遊技機」に相当する。

(b)引用発明の「図柄要素や背景絵柄」は、本願補正発明の「所定の画像」に相当する。
よって、引用発明の「図柄要素や背景絵柄を表示する表示板20」は、本願補正発明の「所定の画像を表示可能な表示手段」に相当する。

(c)引用発明の「図柄要素を表示するとともに画面下側に移動可能な変動図柄表示領域21」は、本願補正発明の「前記識別情報が表示可能であるとともに、所定の位置に移動可能な第1表示領域」に相当する。
また、引用発明の「背景絵柄や相撲の取り組みの絵柄」は、変動図柄表示領域21に表示される数字を表した図柄要素とは異なる絵柄であり別の情報を示していることから、引用発明の「背景絵柄や相撲の取り組みの絵柄を表示する絵柄表示領域22」は本願補正発明の「当該第1表示領域に表示される内容と別の情報が表示される第2表示領域」に相当する。
よって、引用発明の「図柄要素を表示するとともに画面下側に移動可能な変動図柄表示領域21、及び、背景絵柄や相撲の取り組みの絵柄を表示する絵柄表示領域22の表示を表示板20に駆動する駆動回路20a」は、本願補正発明の「前記識別情報が表示可能であるとともに、所定の位置に移動可能な第1表示領域および当該第1表示領域に表示される内容と別の情報が表示される第2表示領域を前記表示手段に表示する制御を実行可能な表示制御手段」に相当する。

(d)引用発明においては「変動図柄表示領域21を縮小させて画面下側に移動させると共に表示板20に表示する絵柄表示領域22を相対的に拡大させ」、それと同時に「表示板20の残された部分が絵柄表示領域22とな」っている。そして、画像を表示する表示板には表示可能な範囲である表示可能領域が定められていることは技術常識である。
したがって、引用発明においては、表示板20の表示可能領域の中の変動図柄表示領域21を縮小させて面積が減った量に応じて、表示可能領域のうちの残された部分を絵柄表示領域22として拡大させて面積を増やしており、引用発明は、表示板20に表示する変動図柄表示領域21の面積が減った量に応じて、表示板20に表示する絵柄表示領域22の面積を表示板20の表示可能領域に対して増やしているといえ、引用発明の「表示板20に表示する変動図柄表示領域21を縮小させて画面下側に移動させると共に表示板20に表示する絵柄表示領域22を相対的に拡大させ、変動図柄表示領域21の大きさが縮小して下側に移動して表示板20の残された部分が絵柄表示領域22となる」ことは、本願補正発明の「前記表示手段に表示する前記第1表示領域の面積の変化量に応じて、前記表示手段に表示する前記第2表示領域の面積を前記表示手段の画像を表示可能な範囲に対して変化可能である」ことに相当する。
よって、引用発明の「駆動回路20aは、表示板20に表示する変動図柄表示領域21を縮小させて画面下側に移動させると共に表示板20に表示する絵柄表示領域22を相対的に拡大させ、変動図柄表示領域21の大きさが縮小して下側に移動して表示板20の残された部分が絵柄表示領域22となる、パチンコ遊技機」は、本願補正発明の「前記表示制御手段は、前記表示手段に表示する前記第1表示領域の面積の変化量に応じて、前記表示手段に表示する前記第2表示領域の面積を前記表示手段の画像を表示可能な範囲に対して変化可能であることを特徴とする遊技機」に相当する。

したがって、本願補正発明と引用発明とは、
「A 所定の開始条件の成立に基づいて複数の識別情報を変動表示する変動表示ゲームを実行する遊技機において、
B 所定の画像を表示可能な表示手段と、
C 前記識別情報が表示可能であるとともに、所定の位置に移動可能な第1表示領域および当該第1表示領域に表示される内容と別の情報が表示される第2表示領域を前記表示手段に表示する制御を実行可能な表示制御手段と、を備え、
D 前記表示制御手段は、前記表示手段に表示する前記第1表示領域の面積の変化量に応じて、前記表示手段に表示する前記第2表示領域の面積を前記表示手段の画像を表示可能な範囲に対して変化可能であることを特徴とする遊技機。」
である点で一致し、相違するところはない。

よって、本願補正発明は、引用発明である。仮に、本願補正発明と引用発明に相違点があるとしても、本願補正発明は引用発明から当業者が容易に発明をすることのできたものである。

(3)請求人の主張について
請求人は、審判請求書において「補正後の本願発明は、引用文献1の発明と比較すると、
『前記表示制御手段は、前記表示手段に表示する前記第1表示領域の面積の変化量に応じて、前記表示手段に表示する前記第2表示領域の面積を前記表示手段の画像を表示可能な範囲に対して変化可能である』という特徴的構成を有する。
上記の本願発明の特徴的構成によれば、表示手段に表示する第1表示領域の面積が大きく変化した場合、表示手段に表示する第2表示領域の面積が減少することによって、第1表示領域および第2表示領域の全体に表示されている内容はそのままの大きさで表示されることとなる。そのため、遊技者は、違和感なく情報を把握することができる。
これに対して引用文献1に記載の発明は、変動図柄表示領域21を縮小させ下方に移動させること、絵柄表示領域22aが相対的に大きくなること、が記載されている。
しかしながら、引用文献1に記載の発明は、上記の本願発明の特徴的構成のように「表示手段に表示する前記第1表示領域の面積の変化量に応じて、前記表示手段に表示する前記第2表示領域の面積を前記表示手段の画像を表示可能な範囲に対して変化」させているわけではない。」と主張しており(審判請求書の「3.本願が特許されるべき理由(4)本願発明と引用文献に記載の発明との対比」参照。)、引用文献1(引用例1)には、「前記表示制御手段は、前記表示手段に表示する前記第1表示領域の面積の変化量に応じて、前記表示手段に表示する前記第2表示領域の面積を前記表示手段の画像を表示可能な範囲に対して変化可能である」という構成が開示されていない旨を主張している。
しかしながら、上記「(2)対比・判断」において検討したように、引用例1には、上記構成に相当する構成(構成d)が記載されている。
よって、請求人の上記主張は採用できない。

(4)まとめ
以上のとおりであるから、本願補正発明は、特許法第29条第1項第3号、又は、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。

4 むすび
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項3に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成28年7月20日付けの手続補正書により補正された、上記第2の1で示した特許請求の範囲の請求項3に記載されたとおりのものである。

2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、本願発明は引用例1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない、又は、本願発明は、引用例1に記載された発明から、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

3 引用例
原査定の拒絶の理由に引用文献1として引用された引用例1の記載事項は、上記第2の3(1)に記載したとおりである。

4 対比・判断
本願発明は、本願補正発明の発明特定事項から、上記第2の1の補正箇所を示す下線部の構成に係る限定事項を削除したものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項をすべて含み、さらに他の限定事項を付加したものに相当する本願補正発明が、上記第2の3(2)で検討したとおり、引用例1に記載された発明であるか、又は、当業者が引用例1に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、引用例1に記載された発明であるか、又は、当業者が引用例1に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものである。

第4 むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、特許法第29条第1項第3号、又は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2018-07-25 
結審通知日 2018-07-31 
審決日 2018-08-20 
出願番号 特願2012-260121(P2012-260121)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A63F)
P 1 8・ 113- Z (A63F)
P 1 8・ 575- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 藤脇 沙絵寺田 祥子  
特許庁審判長 平城 俊雅
特許庁審判官 松川 直樹
田付 徳雄
発明の名称 遊技機  
代理人 特許業務法人後藤特許事務所  

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