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審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B65H 審判 査定不服 特17 条の2 、4 項補正目的 特許、登録しない。 B65H 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B65H |
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管理番号 | 1344727 |
審判番号 | 不服2018-407 |
総通号数 | 227 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2018-11-30 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2018-01-12 |
確定日 | 2018-10-04 |
事件の表示 | 特願2016-83216「光ファイバ巻取用ボビン,光ファイバ巻取方法,およびボビン巻き光ファイバ」拒絶査定不服審判事件〔平成29年10月12日出願公開,特開2017-186158〕について,次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は,成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は,平成28年3月31日に出願され,平成29年1月19日付けで拒絶の理由が通知され,同年3月24日に意見書の提出がなされ,さらに,同年6月21日付けで拒絶理由が通知され,同年8月10日に意見書及び手続補正書が提出されたが,同年10月18日付けで,同年6月21日付けの拒絶理由通知により通知された理由(以下,「原査定の理由」という。)による拒絶査定がなされ,その謄本は同年10月24日に請求人に送達された。 これに対し,平成30年1月12日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに,それと同時に手続補正書が提出されたものである。 第2 平成30年1月12日にされた手続補正についての補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 平成30年1月12日にされた手続補正(以下,「本件補正」という。)を却下する。 [補正の却下の決定の理由] 1 本件補正の内容について (1)本件補正は,特許請求の範囲を全文にわたって補正するものであり,その補正の一部には,本件補正前の請求項1の記載を本件補正後の請求項1のとおりに補正する補正事項(以下,「本件補正事項」という。)を含むものである。 ア 本件補正前の特許請求の範囲の請求項1の記載 「【請求項1】外周面に光ファイバが巻回される主巻取胴部における中心軸方向の両端部に,それぞれ径方向の外側に向けて突出する主巻取鍔が設けられた光ファイバ巻取用ボビンにおいて, 前記主巻取鍔のうち,径方向の外側寄りに位置する外周部には,前記主巻取胴部と連なる内周縁部における前記中心軸方向の厚みよりも,前記中心軸方向の厚みが小さい薄肉部が形成され, 前記主巻取鍔の前記中心軸方向における内側の側面は,前記主巻取胴部に対して直立していることを特徴とする光ファイバ巻取用ボビン。」 イ 本件補正後の特許請求の範囲の請求項1の記載 「【請求項1】 外周面に光ファイバが巻回される主巻取胴部における中心軸方向の両端部に,それぞれ径方向の外側に向けて突出する主巻取鍔が設けられた光ファイバ巻取用ボビンにおいて, 前記主巻取鍔のうち,径方向の外側寄りに位置する外周部には,前記主巻取胴部と連なる内周縁部における前記中心軸方向の厚みよりも,前記中心軸方向の厚みが小さい薄肉部が形成され, 前記主巻取鍔の前記中心軸方向における内側の側面は,前記主巻取胴部に対して直立し, 前記主巻取鍔の前記中心軸方向に沿う前記主巻取胴部の反対側を向く外側面のうち,前記主巻取鍔の外周縁部には,その全周にわたって前記外側面から外側に向けて突出する補強リングが形成され, 前記外側面には,該外側面から外側に向けて突出するリブが形成され, 前記リブにおける外側の端面および前記補強リングにおける外側の端面は互いに面一に形成されていることを特徴とする光ファイバ巻取用ボビン。」(下線は,当審で付加したものである。下線については,以下同じである。) (2)本件補正の目的について 本件補正事項は,本件補正前の請求項1における発明特定事項において,「前記主巻取鍔の前記中心軸方向に沿う前記主巻取胴部の反対側を向く外側面のうち,前記主巻取鍔の外周縁部には,その全周にわたって前記外側面から外側に向けて突出する補強リングが形成され, 前記外側面には,該外側面から外側に向けて突出するリブが形成され, 前記リブにおける外側の端面および前記補強リングにおける外側の端面は互いに面一に形成されている」を追加するものであるところ,本件補正事項により規定される「補強リング」及び「リブ」は,本件補正前の請求項1において記載されているいずれかの発明特定事項を限定するものに該当しないから,本件補正事項の目的は,特許法第17条の2第5項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮に該当するものとはいえない。 また,当該補正事項が誤記の訂正や明りょうでない記載の釈明を目的とするものに該当しないことは明らかである。 してみると。本件補正事項による補正は,特許法第17条の2第5項の規定に違反してされたものというほかないから,同法第159条第1項において読み替えて適用される同法第53条の規定により却下すべきものである。 2 独立特許要件についての検討 上記のとおり,本件補正事項は,特許法第17条の2第5項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮(いわゆる限定的減縮)を目的とするものに該当するものではないものの,主巻取鍔に新たな構成である「補強リング」及び「リブ」を追加するものである点で主巻取鍔の構造を限定するものであることから,念のため,本件補正事項の目的がいわゆる限定的減縮に該当するものであると仮定し,本件補正後の請求項1に係る発明(以下,「本件補正発明」という。)が特許出願の際に独立して特許を受けることができるものであるか(同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか否か)について以下に検討する。 (1)本件補正発明 本件補正発明は,上記1(1)イにおいて摘示したとおりの発明特定事項により特定されるものである。 (2)引用例 ア 原査定の拒絶の理由の引用文献1として引用され,本願の出願前に頒布された刊行物である特許第4806062号公報(以下,「引用文献1」という。)には,つぎの事項が記載されている。 (ア)「【0017】 本発明は,特別に設計された輸送スプールのリードメータバレル部および主バレル部の両方に,自動的な順番で光ファイバを巻回可能にすることによって,従来のこれらの欠点を克服する有益な巻回システムを提供する。図2A,図2Bは,本発明による第1の実施形態の輸送スプール22の側面図および底面図をそれぞれ示す。図2Aに示す如く,スプール22は,光ファイバが巻回される主バレル部24を含む。主バレル部24上に巻回される光ファイバの外端は,外側フランジ26と内側フランジ27により画成される。本実施形態においては,軽くて頑丈なものとするためフランジにリブが形成されている。後述する図11は,本発明の実施に使用してもよい効果的なリブの模様の別の実施形態を示す 図2Aおよび2Bに示すスプール22は,光ファイバのリードメータ部が巻回されるリードメータバレル部(lead meter barrel portion)28をさらに含む。本発明のリードメータバレル部28は,上記の如く従来の輸送スプール10のリードメータバレル部16とは違って,引っ込んでおらず,外側フランジ26から軸方向にむしろ突出している。さらに,本発明のリードメータバレル部28の幅は,対する従来技術のものの幅より幾分大きい。リードメータバレル部28は,外側フランジ26によって,主バレル部24から分けられている。リードメータバレル部28の外側の限界は,外側フランジ26およびリードメータフランジ30により画成される。図2Aおよび図2Bから明らかなように,リードメータバレル部28およびリードメータフランジ30は,同じ縦軸に沿って位置する,即ち主バレル24,内側フランジ26および外側フランジ27と同軸である。」 (イ)【図2A】から,外側フランジ26の中心軸方向に沿う主バレル部24の反対側を向く外側面のうち,前記外側フランジ26の外周縁部には,その全周にわたって前記外側面から外側に向けて突出する環状リブが形成され,さらに,外周縁部の環状リブの内側に同心円状にさらに2つの環状リブと,該3つの環状のリブをつなぐ多数の半径方向の直線状リブを外側フランジ26の外側面から外側に向けて突出するように形成したことが看て取れる。 図2Aは以下のものである。 (ウ)【図2B】から,リブは,外側フランジ26の外側面にも,内側フランジ27の外側面にも設けられていること,外側フランジ26及び,内側フランジ27の中心軸方向における内側の側面は,主バレル部24に対して直立していること,主バレル部24における中心軸方向の両端部に,それぞれ径方向の外側に向けて突出する外側フランジ26及び,内側フランジ27が設けてスプール22を構成していることが看て取れる。 図2Bは以下のものである。 (エ)【図3E】から,主バレル部24の外周面に光ファイバが巻回されることが看て取れる。 図3Eは以下のものである。 引用文献1の上記記載事項を含め,引用文献1の全記載を総合すると,引用文献1には以下の事項(以下,「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。 「外周面に光ファイバが巻回される主バレル部24における中心軸方向の両端部に,それぞれ径方向の外側に向けて突出する外側フランジ26及び,内側フランジ27が設けられたスプール22において, 外側フランジ26及び,内側フランジ27の中心軸方向における内側の側面は,主バレル部24に対して直立し, 前記外側フランジ26及び,内側フランジ27の前記中心軸方向に沿う前記主バレル部24の反対側を向く外側面のうち,前記外側フランジ26及び,内側フランジ27の外周縁部には,その全周にわたって前記外側面から外側に向けて突出する環状リブが形成され, 前記外側面には,該外側面から外側に向けて突出する直線状リブが形成される光ファイバ巻取用スプール22。」 ウ 平成29年1月19日付けの拒絶理由通知において引用文献2として引用され,本願の出願前に頒布された刊行物である特開2009-274829号公報(以下,「引用文献2」という。)には,つぎの事項が記載されている。 (ア)「【0001】 本発明は,電子部品や半導体の実装・搬送・保管等に供されるTAB(Tape Automated Bonding)テープ,キャリアテープ,スペーサーテープ等のテープ類,或いは,その他各種の帯状,線状,又はチェーン状をなす可撓性長尺物を巻き取って,それらの輸送や管理,繰り出し作業等に供される物流用リールに関し,特に,合成樹脂材料の射出成形によって形成される物流用リールにあって,所定の規格寸法を維持しつつフランジの剛性を高め得るように構成した射出成形製の物流用リールに関する。」 (イ)「【0020】 例示した物流用リール1は,電子部品実装用のTABテープ(不図示)等を巻き付けて利用されるものであって,該テープの幅に相当する巻き幅を備えた略円筒状のコア2と,該コア2の両端から円盤状に張り出す一対のフランジ3とを備えている。そして,この場合,コア2及びフランジ3は,合成樹脂材料の射出成形によって一体的に形成されている。ただし,本発明においては,両フランジ3とコア2とが一体的に成形されていてもよいし,例えばコア2が2分割された半割二つ合わせの成形体であってもよい。」 (ウ)「【0023】 前記フランジ3は,ドラム部24の両端から張り出すようにしてコア2と一体的に成形されている。例示形態に係る両フランジ3は同一の形状をなしており,互いに向かい合う内側面は凹凸の無い平滑面となされている。フランジ3には,正面視略扇形(乃至おむすび形)の窓開口31が3箇所に設けられており,これら窓開口31の間には,コア2側から外周側へと放射状乃至略扇形状に延びる3箇所のスポーク部32が形成されている。 【0024】 フランジ3には,その外周縁に沿って略等幅で連続する外周リブ33や,コア2の周縁から放射状に延びる放射リブ34が形成されている。また,外周リブ33の内側にて部分的に三重の同心円弧をなす弧状リブ35や,コア2の周縁から短く複数本,突き出した補助リブ36,窓開口31の両肩部を構成する湾曲リブ37等も形成されている。これらのリブは全て,図3に示すように,その頂面がコア2の軸方向における外端面と合致する肉厚に統一されている。なお,例示したフランジ3の形状は一例であり,本発明において両フランジ3は必ずしも同一形状でなくてもよいし,各リブの形状も適宜改変可能である。」 (エ)「【0025】 本発明の要部は,上記のようなリブによって囲まれたスポーク部32が,コア2側から順に,厚肉部41,変肉部42,及び薄肉部43の3領域によって構成される点にある。 【0026】 厚肉部41は,外周リブ33や放射リブ34と同程度の,ただしそれらリブの厚さを超えない略一様の厚さを有しており,フランジ3の有効径のうちコア2側の1/5乃至1/3程度を占める同心円弧状の領域に設けられている。 【0027】 変肉部42は,厚肉部41の外縁から外周側に向けて肉厚を傾斜的に減じている部分であり,フランジ3の有効径のうち中間部分の1/3乃至2/3程度を占める同心円弧状の領域に設けられている。内縁(厚肉部41側)から外縁(薄肉部43側)にかけての肉厚の低減率は,概ね1/2乃至1/3程度に設定されている。 【0028】 薄肉部43は,変肉部42の外縁に連続して略一様の厚さに形成されており,フランジ3の有効径のうち外周側の1/5乃至1/3程度を占める円弧状の領域に設けられている。」 (オ)【図2】から,フランジ3の心軸方向における内側の側面は,コア2に対して直立していることが看て取れる。 図2は以下のものである。 (カ)【図3】から,フランジ3の厚さは,コア2と連なる内周縁部における前記軸方向の厚みを最大として,厚肉部41,変肉部42,薄肉部43と,中心から外周方向に向かうにしたがって厚みを減じ,フランジ3の外周縁部に設けられた外周リブ33においてコア2と連なる内周縁部における前記軸方向の厚みに等しくなることが看て取れる。 図3は以下のものである。 引用文献2の上記記載事項を含め,引用文献2の全記載を総合すると,引用文献2には以下の事項(以下,「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。 「長尺物が巻き付けられる略円筒状のコア2と,該コア2の両端から円盤状に張り出す一対のフランジ3とを備えた物流用リール1において, 前記フランジ3には,窓開口31が3箇所に設けら,これら窓開口31の間には,コア2側から外周側へと放射状乃至略扇形状に延びる3箇所のスポーク部32が形成され, 該スポーク部32の径方向の外側寄りに位置する外周部には,前記コア2と連なる内周縁部における前記軸方向の厚みよりも,前記中心軸方向の厚みが小さい変肉部42及び薄肉部43が形成され, 前記フランジ3の前記軸方向における内側の側面は,前記コア2に対して直立し, 前記フランジ3の前記軸方向に沿う前記コア2の反対側を向く外側面のうち,前記フランジ3の外周縁部には,その全周にわたって前記外側面から外側に向けて突出する外周リブ33が形成され, 前記外側面には,該外側面から外側に向けて突出する放射リブ34,弧状リブ35,補助リブ36,及び湾曲リブ37が形成され, 前記放射リブ34,弧状リブ35,補助リブ36,及び湾曲リブ37における外側の頂面および前記外周リブ33における外側の頂面は,全てコア2の軸方向における外端面と合致する肉厚に統一されている物流用リール。」 (3)対比 ア 本件補正発明と引用発明1とを対比する。 引用発明1の「主バレル部24」は,本件補正発明の「主巻取胴部」に相当する。 以下同様に,「外側フランジ26」及び「内側フランジ27」は,「主巻取鍔」に, 「環状リブ」は,「補強リング」に, 「直線状リブ」は,「リブ」に, 「光ファイバ巻取用スプール22」は,「光ファイバ巻取用ボビン」に,それぞれ相当する。 イ 一致点及び相違点 上記アの対比を踏まえると,本件補正発明と引用発明1とは,つぎの一致点において一致し,つぎの各相違点で相違する。 <一致点> 「外周面に光ファイバが巻回される主巻取胴部における中心軸方向の両端部に,それぞれ径方向の外側に向けて突出する主巻取鍔が設けられた光ファイバ巻取用ボビンにおいて, 前記主巻取鍔の前記中心軸方向における内側の側面は,前記主巻取胴部に対して直立し, 前記主巻取鍔の前記中心軸方向に沿う前記主巻取胴部の反対側を向く外側面のうち,前記主巻取鍔の外周縁部には,その全周にわたって前記外側面から外側に向けて突出する補強リングが形成され, 前記外側面には,該外側面から外側に向けて突出するリブが形成される光ファイバ巻取用ボビン。」 <相違点1> 本件補正発明の主巻取鍔は「径方向の外側寄りに位置する外周部には,主巻取胴部と連なる内周縁部における中心軸方向の厚みよりも,前記中心軸方向の厚みが小さい薄肉部が形成」されるものであるのに対して,引用発明の「外側フランジ26」及び「内側フランジ27」が「薄肉部」を有するものではない点。 <相違点2> 本件補正発明において「リブにおける外側の端面および補強リングにおける外側の端面は互いに面一に形成されている」ものであるのに対して,引用発明の「直線状リブにおける外側の端面および環状リブにおける外側の端面」の突出高さが不明であるため,両者の「端面は互いに面一に形成されている」かについて不明である点。 (4)相違点についての検討 ア 相違点1について 長尺物が巻き付けられる物流用リールである,引用発明2のフランジ3のスポーク部32には「(フランジ3の)径方向の外側寄りに位置する外周部には,前記コア2と連なる内周縁部における前記軸方向の厚みよりも,前記中心軸方向の厚みが小さい変肉部42及び薄肉部43が形成」されている。 ここで,引用発明2の「フランジ3」は本願補正発明の「主巻取鍔」に相当し,以下同様に「コア2」は「主巻取胴部」に,「変肉部42及び薄肉部43」は「薄肉部」に相当するから,相違点1に係る本願補正発明の発明特定事項は引用発明2に記載されているといえる。 そして,引用発明1も引用発明2も,引用発明1の光ファイバを含む,可撓性長尺物を巻回する物流用リールである点で共通する技術分野に属し,物流用リールにおいて軽量化は当業者にとって自明な課題にすぎず,また当該自明な課題を解決するための「薄肉部(薄肉化)」は,引用文献2に記載されるように,また,特開昭56-99175号公報(拒絶査定における引用文献3:特に第2図実施例),実開昭49-10073号公報(拒絶査定における引用文献4:特に第3図実施例)に記載されるように周知技術にすぎない。 してみると,引用発明に周知技術を用いて,相違点1に係る本件補正発明の発明特定事項のようにすることは当業者が容易に想到し得るものである。 イ 相違点2について 長尺物が巻き付けられる物流用リールである,引用発明2のフランジ3の外側面には「(フランジ3の)外側面から外側に向けて突出する放射リブ34,弧状リブ35,補助リブ36,及び湾曲リブ37における外側の頂面および前記外周リブ33における外側の頂面は,全てコア2の軸方向における外端面と合致する肉厚に統一され」ている。 ここで,引用発明2の「フランジ3」は本願補正発明の「主巻取鍔」に相当し,以下同様に「放射リブ34,弧状リブ35,補助リブ36,及び湾曲リブ37」は「リブ」に,「外周リブ33」は「補強リング」に,「(各リブの頂面)」は「端面」に相当するから,引用発明2は,本願補正発明の「リブにおける外側の端面および前記補強リングにおける外側の端面は互いに面一に形成され」に相当する構成を備えており,相違点2に係る本願補正発明の発明特定事項は引用発明2に記載されているといえる。 そして,本願補正発明において,相違点2に係る本願補正発明の発明特定事項を備えることによる格別な作用効果について,本願明細書等に何ら記載されていないことを踏まえると,「リブにおける外側の端面および補強リングにおける外側の端面は互いに面一に形成されている」ようにすることは,当業者が適宜なし得る程度の技術的事項にすぎない。 してみると,引用発明1の環状リブと直線状リブについて,引用発明2を適用して,相違点2に係る本件補正発明の発明特定事項のようにすることは当業者が容易に想到し得るものである。 また,本願補正発明の発明特定事項全体によって奏される作用効果も,引用発明1,2,及び周知技術から,当業者が予測しうる程度のものである。 したがって,本願補正発明は,引用発明1,2,及び周知技術から当業者が容易に発明をすることができたものである。 (4)独立特許要件の検討に関する小括 以上検討したように,本件補正発明は,引用発明1,2,及び周知技術から当業者が容易に発明をすることができたものであって,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。 したがって,本件補正発明は,特許出願の際,独立して特許を受けることができないものであるから,本件補正は,特許法第17条の2第6項において読み替えて準用する同法第126条第7項の規定に違反する。 3 補正の却下の決定のむすび 以上のとおり,本件補正は,上記1(2)において検討したように,本件補正事項の目的が特許法第17条の2第5項各号に規定するいずれにも該当しないことから,同項の規定に違反してされたものであり,また,仮に本件補正事項の目的が同項第2号に該当するとしても,本件補正発明が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するものであるから,本件補正は,同法第159条第1項で読み替えて準用する第53条第1項の規定により却下されるべきものである。 よって,上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。 第3 本願発明について 1 本願発明 本件補正は,上記第2のとおり却下されたので,本願の請求項1ないし8に係る発明は,平成29年8月10日にされた手続補正による補正後の特許請求の範囲の請求項1ないし8に記載された事項により特定されるものであって,そのうち請求項1に係る発明は,上記第2の1(1)アにおいて説示したとおりのものである。(以下,請求項1に係る発明を「本願発明」という。) 2 引用例及びその記載事項 原査定で引用された引用文献1に記載の事項並びに引用発明1は,それぞれ,上記第2の2(2)において説示し,認定したとおりである。 3 本願発明と引用発明との対比・判断 上記第2の2で検討した本件補正発明は,本願発明に「前記主巻取鍔の前記中心軸方向に沿う前記主巻取胴部の反対側を向く外側面のうち,前記主巻取鍔の外周縁部には,その全周にわたって前記外側面から外側に向けて突出する補強リングが形成され, 前記外側面には,該外側面から外側に向けて突出するリブが形成され, 前記リブにおける外側の端面および前記補強リングにおける外側の端面は互いに面一に形成されている」ものであることをさらに追加して特定するものである。 そうすると,本願発明と引用発明1とは,上記第2の2(3)イにおいて認定した相違点1において相違し,その余の点において一致するものといえる。 そして,上記相違点1については,同(4)のアで検討したとおり,相違点1に係る本件補正発明の発明特定事項は周知技術にすぎないものである。 以上のことからすれば,本願発明は,引用発明1及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 4 むすび 上記で検討したとおり,本願発明は,本件出願の出願日前に頒布された刊行物である引用文献1に記載された発明(引用発明1),本件出願の出願日前に頒布された刊行物である引用文献2に記載された発明(引用発明2),及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって,他の請求項について論及するまでもなく,本願は拒絶すべきものである。 よって,上記結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2018-07-30 |
結審通知日 | 2018-07-31 |
審決日 | 2018-08-17 |
出願番号 | 特願2016-83216(P2016-83216) |
審決分類 |
P
1
8・
57-
Z
(B65H)
P 1 8・ 575- Z (B65H) P 1 8・ 121- Z (B65H) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 西村 賢、西本 浩司、藤井 眞吾、松林 芳輝、佐々木 一浩 |
特許庁審判長 |
尾崎 淳史 |
特許庁審判官 |
畑井 順一 吉村 尚 |
発明の名称 | 光ファイバ巻取用ボビン、光ファイバ巻取方法、およびボビン巻き光ファイバ |
代理人 | 五十嵐 光永 |
代理人 | 小室 敏雄 |
代理人 | 棚井 澄雄 |
代理人 | 清水 雄一郎 |