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審決分類 |
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 取り消して特許、登録 G06F 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06F |
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管理番号 | 1344774 |
審判番号 | 不服2017-12692 |
総通号数 | 227 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2018-11-30 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2017-08-28 |
確定日 | 2018-10-23 |
事件の表示 | 特願2016- 17199「表示制御装置、画像表示装置、およびプログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 4月28日出願公開、特開2016- 66387、請求項の数(6)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は,平成24年9月28日を出願日とする特願2012-218671号の一部を,平成28年2月1日に新たな出願としたものであって,平成28年11月18日付けで拒絶理由通知がなされ,平成29年1月23日に意見書及び手続補正書が提出されたが,平成29年5月31日付けで拒絶査定(原査定)がなされ,これに対し,平成29年8月28日に拒絶査定不服審判の請求がなされ,平成30年6月28日付けで拒絶理由通知(以下,「当審拒絶理由通知」という。)がなされ,平成30年8月31日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。 第2 原査定の概要 原査定(平成29年5月31日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。 本願請求項1-3,6に係る発明は,以下の引用文献A-Bに基づいて,その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下,「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 引用文献等一覧 A.特開2012-088886号公報 B.特開2007-328457号公報 第3 当審拒絶理由の概要 当審拒絶理由の概要は次のとおりである。 1 本願請求項1-3,5-6に係る発明は,以下の引用文献1に記載された発明であるから,特許法第29条第1項第3号に該当し,特許を受けることができない。 2 本願請求項1-6に係る発明は,以下の引用文献1に基づいて,当業者が容易に発明できたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 引用文献等一覧 1.特開2011-008556号公報(当審において新たに引用した文献) 第4 平成30年8月31日付けの手続補正について 平成30年8月31日付けの手続補正によって請求項1の「ユーザによって接触されている最中ではない画像である他の画像を移動させ」を「ユーザによって接触されている最中ではない画像である他の画像を,前記指定画像に重ねるための指示により移動させ」とする補正,及び,請求項2の「ユーザによって接触されている最中ではない画像である他の画像が近づき」を「ユーザによって接触されている最中ではない画像である他の画像が,前記指定画像に重ねるための指示により近づき」とする補正は,当初明細書の段落【0067】の「ユーザは,操作パネル14Bに表示された画像を指定して,当該画像を他の画像に近付ける接近操作を行うことにより,複数の画像を重ねて表示させる指示を行う。」との記載から,新規事項を追加するものではないといえる。 また,請求項1,2に「前記指示は,前記表示制御手段により前記他の画像が移動させられる前に前記指定画像が表示されていた表示領域内で,前記タッチパネルに対しユーザによって継続的に行われる接触操作である」という事項を追加する補正は,当初明細書の段落【0064】の「一例として図7Aに示すように,ユーザによって画像B1の表示領域内の位置(指定位置54)が指定され,当該指定位置54が,画像B2が表示されている方向に移動したとする。」との記載,及び,段落【0074】の「これにより,ユーザが操作パネル14B上における接触操作を継続している間,画像を集約する処理が継続され,上記接触操作が停止されたタイミングで,画像を集約する処理が停止する。」との記載,並びに,当初図面の図7A-7Bから他の画像が移動させられる前に指定画像B1の表示領域内に指定位置54があり,図7C-7Dから他の画像が移動させられる最中にも指定画像B1の表示領域内に指定位置54があることが読み取れることから,新たな技術的事項を導入するものではなく,新規事項を追加する補正ではないといえる。 よって,平成30年8月31日付けの手続補正は,当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものといえる。 第5 本願発明 本願請求項1-6に係る発明(以下,それぞれ「本願発明1」-「本願発明6」という。)は,平成30年8月31日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-6に記載された事項により特定される発明であり,本願発明1-2は以下のとおりの発明である。 「 【請求項1】 複数の画像のうち,タッチパネルを介してユーザによって接触されている最中の単一の画像である指定画像が表示されている表示位置に,少なくとも前記複数の画像のうちの一つであって,ユーザによって接触されている最中ではない画像である他の画像を,前記指定画像に重ねるための指示により移動させ,前記指定画像を前記他の画像の上側に重ねた画像束を表示する表示制御手段 を備え, 前記指示は,前記表示制御手段により前記他の画像が移動させられる前に前記指定画像が表示されていた表示領域内で,前記タッチパネルに対しユーザによって継続的に行われる接触操作である 表示制御装置。 【請求項2】 複数の画像のうち,タッチパネルを介してユーザによって接触されている最中の単一の画像である指定画像が表示されている表示位置に,少なくとも前記複数の画像のうちの一つであって,ユーザによって接触されている最中ではない画像である他の画像が,前記指定画像に重ねるための指示により近づき,前記指定画像を前記他の画像の上側に重ねた画像束を表示する表示制御手段 を備え, 前記指示は,前記表示制御手段により前記他の画像が移動させられる前に前記指定画像が表示されていた表示領域内で,前記タッチパネルに対しユーザによって継続的に行われる接触操作である 表示制御装置。」 なお,本願発明3-6は,本願発明1又は2を直接又は間接的に引用した発明である。 第6 引用文献,引用発明等 当審拒絶理由に引用された引用文献1には,図面とともに次の事項が記載されている(なお,下線は重要箇所に対して当審が付した。以下,同様。)。 1 段落【0024】 「【0024】 図1は,本発明にかかる通信機器並びに携帯通信機器の一実施形態の概略構成を示すブロック図である。図1に示すように携帯通信機器10は,基本的に,CPU(Central Processing Unit)22と,通信部26と,音声処理部30と,表示デバイス32と,入力デバイス34と,ROM36と,RAM38と,内部ストレージ40と,外部ストレージインターフェース(I/F,interface)42を有する。また,携帯通信機器10は,外部ストレージI/F42を介して外部ストレージ46と接続されている。なお,携帯通信機器10は,上記構成の他にも撮像部や,各種端子等,携帯通信機器として有する各種構成を有している。また,携帯通信機器の外形形状は,ヒンジで連結された2つの部材で構成され,折りたたみ可能な形状や,2つの部材をスライドさせる形状や,1つの箱型の形状等,種々の形状とすることができる。」 2 段落【0027】 「【0027】 CPU22は,複数のアプリケーションプログラムを実行する機能を有する。CPU22が実行するアプリケーションプログラムとしては,例えば,表示デバイス32に画像を表示させる画像表示アプリケーションプログラムや,入力デバイス34で検出した入力に基づいて入力された操作を算出する操作検出アプリケーションプログラムや,絞込み検索を行う検索アプリケーションプログラムや,インターネット通信を行うインターネットアプリケーションプログラムや,メールを作成するメールアプリケーションプログラム,電話をかけるための電話アプリケーションプログラム等の複数のアプリケーションプログラムがある。」 3 段落【0030】-【0031】 「【0030】 表示デバイス32は,液晶ディスプレイ(LCD,Liquid Crystal Display)や,有機EL(Organic Electro-Luminescence)パネルなどの表示パネルを備え,CPU22から供給される映像データに応じた映像,画像データに応じた画像を表示パネルに表示させる。 【0031】 入力デバイス34は,表示デバイス32の前面に配置されたタッチパネルであり,操作者が表面を触るとその接触を入力として検出する。なお,入力デバイス34は,接触された位置や,その接触の強さ等を検出する。タッチパネルとしては,マトリクススイッチ,抵抗膜方式,表面弾性波方式,赤外線方式,電磁誘導方式,静電容量方式等種々の方式のタッチパネルを用いることができる。ここで,表示デバイス32に電源キー,通話キー,数字キー,文字キー,方向キー,決定キー,発信キーなど,各種の機能が割り当てられたキーの画像を表示させた状態のときに操作者によって入力デバイス34が押されたら,入力デバイス34は,押された位置(接触があった位置)を検出する。携帯通信機器10のCPU22は,入力デバイス34が接触を検出した位置に対応するキーの操作が入力されたとして,その処理を行う。」 4 段落【0036】 「【0036】 ここで,図3を用いて,絞込み検索が行われる際に画面上に表示される各部を説明する。図3は,表示デバイスに表示される画像の一例を示す説明図である。図3に示すように,表示デバイスには,複数の項目オブジェクト104を有するグループオブジェクト102と,検索条件となるキーオブジェクト106とが表示されている。ここで,図3に示す例では,グループオブジェクト102は,複数の項目オブジェクト104が記憶されたフォルダであり,「Aさん」という名称のグループオブジェクトと,「Bさん」という名称のグループオブジェクトが表示されている。また,各グループオブジェクト102は,グループオブジェクトの表示領域の外周(輪郭)が実線で囲われている。つまり,グループオブジェクトと他の部分との境界線,つまり,グループオブジェクトの輪郭線が表示されている。また,グループオブジェクト102の内部には,グループオブジェクト102に所属する項目オブジェクト104が表示されている。」 5 段落【0051】 「【0051】 まず,図2に示す各ソフトウェアが起動されている場合は,画面上には,図3に示すように,複数の項目オブジェクトを有するグループオブジェクトと,複数のキーオブジェクトが表示デバイス32に表示されている。このように,複数の項目オブジェクトを有するグループオブジェクトと,複数のキーオブジェクトが表示されている場合に,所定の操作が行われた場合に絞込み検索が行われる。なお,キーオブジェクトは,AモードキーオブジェクトとBモードキーオブジェクトの2種類のキーオブジェクトがそれぞれ複数個ずつ表示されている。なお,AモードとBモードとは,キーオブジェクトの操作に基づいて決定される抽出する項目オブジェクトの適合率の範囲(閾値)を異なる方法で求めている点が異なる。そのため,AモードキーオブジェクトとBモードキーオブジェクトでは,絞り込みを行う検索条件(キーワード,基準値,基準条件)が同一のものもある。」 6 段落【0099】-【0102】 「【0099】 次に,図8-1から図12を用いて,具体的な操作例の一例を説明する。図8-1から図8-3は,それぞれオブジェクト吸着Bモードで操作が行われた場合の携帯通信機器の動作を説明するための説明図である。また,図9は,携帯通信機器の動作を説明するためのグラフである。また,図10-1,図10-2及び図11も,それぞれオブジェクト吸着Bモードで操作が行われた場合の携帯通信機器の動作を説明するための説明図である。また,図12は,携帯通信機器の動作を説明するためのグラフである。なお,図8-1から図8-3,図10-1,図10-2及び図11もそれぞれ,操作の対象に関係のあるグループオブジェクト,キーオブジェクトを表示させ,一部のグループオブジェクト,キーオブジェクトを省略した。 【0100】 まず,図8-1に示すように,キーオブジェクトの1つ,本実施例では「複数」のキーオブジェクト106bに対応する領域が操作者によりタッチされると,検索部60は,「複数」のキーオブジェクト106bが選択されたと判定して,オブジェクト吸着Bモードに移行する。 【0101】 次に,操作者により「複数」のキーオブジェクト106bが移動される。このとき,キーオブジェクト106bが短時間で通過するとグループオブジェクト102aは,吸着モードにならないため,絞り込み検索は行われず,図8-2に示すように,キーオブジェクト106bには,項目オブジェクトが吸着されない。このように,短時間のみで通過した場合は吸着モードに移行しないように設定することで,キーオブジェクト106bでグループオブジェクト102cの絞り込み検索を行いたい場合でも,キーオブジェクト106bをグループオブジェクト102aの領域を迂回させるように移動させる必要がなくなる。 【0102】 また,操作者により操作され,一定時間以上,一定速度以上でキーオブジェクト106bがグループオブジェクト102aの領域内を移動させられると,グループオブジェクト102aが吸着モードとなる。これにより,検索部60は,グループオブジェクト102aに含まれる各項目オブジェクトの,キーオブジェクト106bの検索条件に対する適合率を算出する。本実施例では,項目オブジェクトが画像ファイルであり,キーオブジェクトが「複数」であるので,人物が複数で写っている画像ファイルであるかを判断基準として適合率(この場合は一致率にもなる)を算出する。なお,適合率の高さは,完全に複数で写っていると判定できる画像ファイルが適合率100%となり,不明瞭な状態になったり,人物と思われる対象が複数写っていると判定できたりという画像ファイルでは,適合率が低くなる。検索部60は,各項目オブジェクトの適合率を算出したら,キーオブジェクト106bの移動距離,移動速度に基づいて,取得適合率(つまり適合率の範囲)を算出し,グループオブジェクト102aの項目オブジェクトの中から,その適合率の範囲に含まれる適合率の項目オブジェクトを抽出し,図8-3に示すように,抽出した項目オブジェクト104cを,「複数」のキーオブジェクト106b側に移動させて,キーオブジェクト106bに吸着された状態とする。」 7 段落【0104】 「【0104】 次に,図10-1に示すように,グループオブジェクト内の項目オブジェクト104cがキーオブジェクト106bに吸着された状態で,キーオブジェクトをグループオブジェクトの領域の外に移動させた後,ドラッグ状態から解放させると,図10-2に示すように,新たなグループオブジェクト102dとして分離して表示される。また,このとき新たなグループオブジェクト102dは,元のグループオブジェクト102aの名称にキーオブジェクト106bの名称を加えたものとなる。つまり,抽出に用いた検索条件がグループオブジェクトの名称として表示される。これにより,グループオブジェクトの属性をわかりやすくすることができる。」 上記キの記載及び図10-1より,「グループオブジェクト内の項目オブジェクト104cがキーオブジェクト106bに吸着された状態では,キーオブジェクト106bを上側として,キーオブジェクト106bとグループオブジェクト内の項目オブジェクト104cが重畳して表示されること」が読み取れる。 したがって,引用文献1には,次の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「CPU(Central Processing Unit)22と,表示デバイス32と,入力デバイス34と,を有する携帯通信機器10であって, CPU22は,複数のアプリケーションプログラムを実行する機能を有し,CPU22が実行するアプリケーションプログラムとしては,例えば,表示デバイス32に画像を表示させる画像表示アプリケーションプログラムや,入力デバイス34で検出した入力に基づいて入力された操作を算出する操作検出アプリケーションプログラムであり, 表示デバイス32は,CPU22から供給される映像データに応じた映像,画像データに応じた画像を表示パネルに表示させ, 入力デバイス34は,表示デバイス32の前面に配置されたタッチパネルであり,操作者が表面を触るとその接触を入力として検出し, 絞込み検索が行われる際に画面上には,複数の項目オブジェクト104を有するグループオブジェクト102と,検索条件となるキーオブジェクト106とが表示され, グループオブジェクト102は,複数の項目オブジェクト104が記憶されたフォルダであり,「Aさん」という名称のグループオブジェクトと,「Bさん」という名称のグループオブジェクトが表示され, グループオブジェクト102の内部には,グループオブジェクト102に所属する項目オブジェクト104が表示され, キーオブジェクトは,AモードキーオブジェクトとBモードキーオブジェクトの2種類のキーオブジェクトがそれぞれ複数個ずつ表示され,AモードとBモードとは,キーオブジェクトの操作に基づいて決定される抽出する項目オブジェクトの適合率の範囲(閾値)を異なる方法で求めている点が異なり, 「複数」のキーオブジェクト106bに対応する領域が操作者によりタッチされると,「複数」のキーオブジェクト106bが選択されたと判定して,オブジェクト吸着Bモードに移行し, 操作者により「複数」のキーオブジェクト106bが移動され,一定時間以上,一定速度以上でキーオブジェクト106bがグループオブジェクト102aの領域内を移動させられると,グループオブジェクト102aが吸着モードとなり,グループオブジェクト102aに含まれる各項目オブジェクトの,キーオブジェクト106bの検索条件に対する適合率を算出し, 各項目オブジェクトの適合率を算出したら,キーオブジェクト106bの移動距離,移動速度に基づいて,取得適合率(つまり適合率の範囲)を算出し,グループオブジェクト102aの項目オブジェクトの中から,その適合率の範囲に含まれる適合率の項目オブジェクトを抽出し, 抽出した項目オブジェクト104cを,「複数」のキーオブジェクト106b側に移動させて,キーオブジェクト106bに吸着された状態とし, グループオブジェクト内の項目オブジェクト104cがキーオブジェクト106bに吸着された状態では,キーオブジェクト106bを上側として,キーオブジェクト106bとグループオブジェクト内の項目オブジェクト104cが重畳して表示される, 携帯通信機器10。」 第7 対比・判断 1 本願発明1について (1)対比 本願発明1と引用発明とを対比すると,次のことがいえる。 ア 引用発明では,「複数の項目オブジェクト104を有するグループオブジェクト102」や複数の「キーオブジェクト106」が表示されており,これらは,本願発明1の「複数の画像」に相当する。 イ 引用発明は,「入力デバイス34」として「タッチパネル」を有している。 そして,「「複数」のキーオブジェクト106bに対応する領域が操作者によりタッチされると,「複数」のキーオブジェクト106bが選択されたと判定して,オブジェクト吸着Bモードに移行し」ており,この「操作者によりタッチされる」「領域」に「対応する」「「複数」のキーオブジェクト106b」は,本願発明1の「タッチパネルを介してユーザによって接触されている最中の単一の画像である指定画像」に相当する。 ウ 引用発明では,「操作者により「複数」のキーオブジェクト106bが移動され,一定時間以上,一定速度以上でキーオブジェクト106bがグループオブジェクト102aの領域内を移動させられると,グループオブジェクト102aが吸着モードとなり,グループオブジェクト102aに含まれる各項目オブジェクトの,キーオブジェクト106bの検索条件に対する適合率を算出し」,「グループオブジェクト102aの項目オブジェクトの中から,その適合率の範囲に含まれる適合率の項目オブジェクトを抽出し,抽出した項目オブジェクト104cを,「複数」のキーオブジェクト106b側に移動させて,キーオブジェクト106bに吸着された状態とし」ており,この「抽出した項目オブジェクト104c」は,本願発明1の「少なくとも前記複数の画像のうちの一つであって,ユーザによって接触されている最中ではない画像である他の画像」に相当する。 エ 上記ウで述べたとおり,引用発明では,「抽出した項目オブジェクト104c」を,「「複数」のキーオブジェクト106b側に移動させ」ており,このことは,本願発明1の「指定画像が表示されている表示位置に」,「他の画像を移動させ」ることに相当する。 また,引用発明では,「グループオブジェクト内の項目オブジェクト104cがキーオブジェクト106bに吸着された状態では,キーオブジェクト106bを上側として,キーオブジェクト106bとグループオブジェクト内の項目オブジェクト104cが重畳して表示され」ており,このことは,本願発明1の「前記指定画像を前記他の画像の上側に重ねた画像束を表示する」ことに相当する。 そして,引用発明では,「CPU22が実行するアプリケーションプログラムとして」「表示デバイス32に画像を表示させる画像表示アプリケーションプログラム」があり,「表示デバイス32は,CPU22から供給される映像データに応じた映像,画像データに応じた画像を表示パネルに表示させ」るから,「指定画像が表示されている表示位置に」,「他の画像を移動させ」ることや「キーオブジェクト106bを上側として,キーオブジェクト106bとグループオブジェクト内の項目オブジェクト104cが重畳して表示され」ることは,「CPU22」での「画像表示アプリケーションプログラム」の実行によるものといえる。 そうすると,引用発明の「CPU22」は,本願発明1の「表示制御部」に相当するといえる。 オ そして,上記のごとき「CPU22」を有する引用発明の「携帯通信機器10」は,「表示制御装置」といい得るものである。 したがって,本願発明1と引用発明との間には,次の一致点,相違点があるといえる。 (一致点) 「複数の画像のうち,タッチパネルを介してユーザによって接触されている最中の単一の画像である指定画像が表示されている表示位置に,少なくとも前記複数の画像のうちの一つであって,ユーザによって接触されている最中ではない画像である他の画像を移動させ,前記指定画像を前記他の画像の上側に重ねた画像束を表示する表示制御手段 を備えた表示制御装置。」 (相違点) (相違点1)本願発明1では,「他の画像を,前記指定画像に重ねるための指示により移動させ」るのに対して,引用発明では,「グループオブジェクト102aに含まれる各項目オブジェクトの,キーオブジェクト106bの検索条件に対する適合率を算出し,各項目オブジェクトの適合率を算出したら,キーオブジェクト106bの移動距離,移動速度に基づいて,取得適合率(つまり適合率の範囲)を算出し,グループオブジェクト102aの項目オブジェクトの中から,その適合率の範囲に含まれる適合率の項目オブジェクトを抽出し,抽出した項目オブジェクト104cを,「複数」のキーオブジェクト106b側に移動させ」る点。 (相違点2)本願発明1では,「前記指示は,前記表示制御手段により前記他の画像が移動させられる前に前記指定画像が表示されていた表示領域内で,前記タッチパネルに対しユーザによって継続的に行われる接触操作である」のに対して,引用発明では,「項目オブジェクト104cを,「複数」のキーオブジェクト106b側に移動させて,キーオブジェクト106bに吸着された状態」とするための操作が,「操作者により「複数」のキーオブジェクト106bが移動され,一定時間以上,一定速度以上でキーオブジェクト106bがグループオブジェクト102aの領域内を移動させ」ることである点。 (2)相違点についての判断 事案に鑑みて,まず相違点2について検討すると,相違点2に係る本願発明1の「前記指示は,前記表示制御手段により前記他の画像が移動させられる前に前記指定画像が表示されていた表示領域内で,前記タッチパネルに対しユーザによって継続的に行われる接触操作である」という事項は,上記引用文献1には記載されておらず,本願出願前において周知技術であるともいえない。 したがって,本願発明1は,相違点1を検討するまでもなく,本願発明1は,当業者であっても,引用発明に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。 また,本願発明1と引用発明とは,相違点1-2で相違するから同一ではない。 2 本願発明2について 本願発明2も,本願発明1と同じく,「前記指示は,前記表示制御手段により前記他の画像が移動させられる前に前記指定画像が表示されていた表示領域内で,前記タッチパネルに対しユーザによって継続的に行われる接触操作である」という事項を有しているから,本願発明1と同じ理由により,引用発明とは同一ではなく,また,当業者であっても,引用発明に基づいて容易に発明できたものとはいえない。 3 本願発明3,5-6について 本願発明3,5-6も,本願発明1又は2と同じく,「前記指示は,前記表示制御手段により前記他の画像が移動させられる前に前記指定画像が表示されていた表示領域内で,前記タッチパネルに対しユーザによって継続的に行われる接触操作である」という事項を有しているから,本願発明1と同じ理由により,引用発明とは同一ではなく,また,当業者であっても,引用発明に基づいて容易に発明できたものとはいえない。 4 本願発明4について 本願発明4も,本願発明1又は2と同じく,「前記指示は,前記表示制御手段により前記他の画像が移動させられる前に前記指定画像が表示されていた表示領域内で,前記タッチパネルに対しユーザによって継続的に行われる接触操作である」という事項を有しているから,本願発明1と同じ理由により,当業者であっても,引用発明に基づいて容易に発明できたものとはいえない。 第8 原査定について 平成30年8月31日付けの補正により,本願発明1-6は「前記指示は,前記表示制御手段により前記他の画像が移動させられる前に前記指定画像が表示されていた表示領域内で,前記タッチパネルに対しユーザによって継続的に行われる接触操作である」という事項を有しており,当該事項は拒絶査定において引用された引用文献A-Bは記載されておらず,当業者であっても,拒絶査定において引用された引用文献A-Bに基づいて容易に発明できたものとはいえない。 したがって,原査定の理由を維持することはできない。 第9 むすび 以上のとおり,原査定の理由によっては,本願を拒絶することはできない。 また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって,結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2018-10-09 |
出願番号 | 特願2016-17199(P2016-17199) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(G06F)
P 1 8・ 113- WY (G06F) |
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 円子 英紀 |
特許庁審判長 |
▲吉▼田 耕一 |
特許庁審判官 |
稲葉 和生 松田 岳士 |
発明の名称 | 表示制御装置、画像表示装置、およびプログラム |
代理人 | 中島 淳 |
代理人 | 福田 浩志 |
代理人 | 中島 淳 |
代理人 | 加藤 和詳 |
代理人 | 福田 浩志 |
代理人 | 加藤 和詳 |