• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G09F
管理番号 1344777
審判番号 不服2017-9834  
総通号数 227 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-11-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-07-04 
確定日 2018-10-23 
事件の表示 特願2016-132741「発光表示スティック装置及び発光表示システム」拒絶査定不服審判事件〔平成30年 1月11日出願公開、特開2018- 5006、請求項の数(11)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
特許出願: 平成28年7月4日
拒絶査定: 平成29年3月28日(送達日:同年4月4日)
拒絶査定不服審判の請求: 平成29年7月4日
手続補正: 平成29年7月4日


第2 原査定の概要
原査定(平成29年3月28日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

・請求項1-11
・引用文献等1-6

引用文献等一覧
1.国際公開第2012/077552号
2.国際公開第2012/108076号
3.特開2003-122275号公報
4.特開2014-044166号公報(周知技術を示す文献)
5.特開2004-093358号公報(周知技術を示す文献)
6.特開2005-055567号公報


第3 本願発明
本願請求項1-11に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明11」という。)は、平成29年7月4日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-11に記載された事項により特定される発明であり、以下のとおりの発明である。

「【請求項1】
長尺基板に略直線状に配置した複数個の発光素子と、
前記複数の発光素子を点灯するための点灯駆動部と、
前記複数の発光素子の任意の基準角度からの角度を検出する角度センサと、
送信装置からの受信情報を受信するための無線受信器と、
前記無線受信器用の受信アンテナと、
前記複数の発光素子の各々の点灯データを収納するためのメモリと、
前記角度センサからの角度情報に対応させて前記メモリから該当する発光素子に係る点灯データを引出して該発光素子を点灯するように制御し、前記無線受信器によって受信された前記受信情報である前記メモリのアドレス情報に相当する前記メモリ中のアドレスに書き込まれた表示内容のうち前記角度センサからの角度情報に対応する座標の表示データを読み取り該読み取られた前記座標の表示データに相当する発光素子を点灯させるように制御する第1のマイクロコンピュータと
を具備することを特徴とする発光表示スティック装置。
【請求項2】
発光表示スティック装置及び送信装置を備えた発光表示システムであって、
前記発光表示スティック装置は、
長尺基板に略直線状に配置した複数個の発光素子と、前記複数の発光素子を点灯するための点灯駆動部と、前記複数の発光素子の任意の基準角度からの角度を検出する角度センサと、前記送信装置からの受信情報を受信するための無線受信器と、前記無線受信器用の受信アンテナと、前記複数の発光素子の各々の点灯データを収納するためのメモリと、前記角度センサからの角度情報に対応させて前記メモリから該当する発光素子に係る点灯データを引出して該発光素子を点灯するように制御し、前記無線受信器によって受信された前記受信情報である前記メモリのアドレス情報に相当する前記メモリ中のアドレスに書き込まれた表示内容のうち前記角度センサからの角度情報に対応する座標の表示データを読み取り該読み取られた前記座標の表示データに相当する発光素子を点灯させるように制御する第1のマイクロコンピュータとを備え、
前記送信装置は、
前記無線受信器に情報を送信するための第2のマイクロコンピュータ及び送信機を備えた
ことを特徴とする発光表示システム。
【請求項3】
請求項2記載の発光表示システムにおいて、前記発光表示スティック装置にモード切替スイッチをさらに備え、該モード切替スイッチを切り換えることにより表示形式が変更され得ることを特徴とする発光表示システム。
【請求項4】
請求項2もしくは3記載の発光表示システムにおいて、前記発光表示スティック装置は発光色切替スイッチをさらに備え、該発光色切替スイッチを切り換えることにより前記発光素子の発光色を切り換えられることを特徴とする発光表示システム。
【請求項5】
請求項2乃至4のうちいずれか1項記載の発光表示システムにおいて、前記発光表示スティック装置の前記発光素子は前記長尺基板の表裏両側に装備されることを特徴とする発光表示システム。
【請求項6】
請求項2乃至5のうちいずれか1項記載の発光表示システムにおいて、前記発光表示スティック装置に装備される前記無線受信器によって前記送信装置からの送信信号情報が受信され、前記第1のマイクロコンピュータは前記受信された送信信号情報に基づき前記複数の発光素子を点灯させることを特徴とする発光表示システム。
【請求項7】
請求項2乃至6のうちいずれか1項記載の発光表示システムにおいて、前記第1のマイクロコンピュータ及び前記第2のマイクロコンピュータのそれぞれに結合するためのインタフェースコネクタをさらに備えることを特徴とする発光表示システム。
【請求項8】
請求項2乃至7のうちいずれか1項記載の発光表示システムにおいて、
前記送信装置は
複数の前記発光表示スティック装置に同時に送信情報を送信できると共に前記送信情報に識別番号を付加し、
特定の前記識別番号を有する発光表示スティック装置のみに情報を送信することを特徴とする発光表示システム。
【請求項9】
請求項2乃至8のうちいずれか1項記載の発光表示システムにおいて、前記送信装置に指向性アンテナが用いられることを特徴とする発光表示システム。
【請求項10】
請求項2乃至9のうちいずれか1項記載の発光表示システムにおいて、前記発光表示スティック装置の先端部に小型プロジェクタが装備されることを特徴とする発光表示システム。
【請求項11】
請求項2乃至10のうちいずれか1項記載の発光表示システムにおいて、前記発光表示スティック装置にはマイクがさらに備えられ、前記第1のマイクロコンピュータは前記マイクからの音声信号を音声認識することにより前記発光素子の表示を変化させることを特徴とする発光表示システム。 」


第4 引用文献、引用発明等
1.引用文献1について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には、次の事項が記載されている。(下線は当審による。以下同様。)

「[請求項1] 複数個の発光素子を備えた発光表示スティック(棒)において、該発光素子を点灯するための点灯駆動部と各発光素子の点灯を制御するマイクロコンピュータと基準角度設定スイッチと角度センサ及び各発光素子の点灯データを収納するメモリを備え、角度センサからの角度情報により前記メモリから点灯データを引き出し発光素子を点灯することを特徴とする発光表示スティック。」

「[請求項6] 請求項1乃至4のいずれか1項記載の発光表示スティックにおいて、外部よりメモリデータを書き込み及び書き換え可能とし、書き込み及び書き換えのためのインタフェース部を更に備えることを特徴とする発光表示スティック。 」

「[0025] 図1は、本発明の一実施形態に係る発光表示スティック1の外観図である。文字表示スティック1は、取っ手2に結合された基板3と同じく取っ手2と結合され基板3を覆うカバー4から構成される。基板3の表側Aには発光ダイオードやランプのような5-1、5-2、5-3、・・・・、5-nから構成される複数の発光素子5が長手方向に装備されている。カバー4は、発光素子の発光を透過する素材で作られている。

[0026] 図1の取っ手2には電池26(図示せず)が収納されており、電池収納蓋9で固定されている。また、取っ手2の側面には文字表示のスタート角度を設定するためのスタートボタン6と電源ON/OFF及び文字表示モードと全点灯モードとを切り替えるモード切替スイッチ7と表示文字の種類を選択したり全点灯の発光色を選択するセレクトスイッチ8及びパソコンや携帯電話との接続をするためのインタフェースコネクタ10(図1ではコネクターカバーが付いた状態)が備えられている。

[0027] 図2は、本発明の一実施形態に係る発光表示スティック1のブロックダイヤグラムである。クロック発生部25によって駆動されるマイクロコンピュータ(「μCPU」と略)20は、角度センサ24からの角度情報によりメモリ部21の当該アドレスの表示データを読み出し、表示素子点灯ドライバを介して、表示データに従って基板3に装着された当該表示素子LED-1、LED-2、・・・・、LED-nを点灯させる。メモリ部21には複数の表示文字データ、表示色データ及び表示素子全点灯時の表示色データ、点滅パターンデータが格納されている。」

「[0033] 図5は、本発明の一実施形態に係る発光表示スティック1を用いて文字表示を行う場合の説明図である。まず、文字を表示したい角度(図5の例では左端)に発光表示スティック1をかざし、表示開始スタートボタンを押す、発光表示スティック1を右に振っていくと次々に発光素子が発光し、眼には残像が残って空間に文字が表示されていく。図3の説明を例に取れば、発光表示スティック1が右に60度振られたところで表示文字が全部表示される(図5の例では「トマレ」)。60度を超えて振られてもメモリには60度までのデータしか収納されていないので発光素子が発光することはない。」




また、引用文献1の上記段落[0025]及び図1の記載から、長尺基板である基板3に、複数個の発光素子5が略直線状に配置されていることが読み取れる。そうすると、上記引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「長尺基板に略直線状に配置した複数個の発光素子と、([0025]、図1参照。)
該発光素子を点灯するための点灯駆動部と、([請求項1]参照。)
角度センサと、([請求項1]参照。)
各発光素子の点灯データを収納するメモリと、([請求項1]参照。)
角度センサからの角度情報により前記メモリから点灯データを引き出し発光素子を点灯する([請求項1]参照。)、マイクロコンピュータ([0027]参照。)と、
を備える発光表示スティック([請求項1]参照。)であって、
文字を表示したい角度に発光表示スティック1をかざし、表示開始スタートボタンを押し、発光表示スティック1を右に振っていくと次々に発光素子が発光し、発光表示スティック1が右に60度振られたところで表示文字が全部表示され、60度を超えて振られてもメモリには60度までのデータしか収納されていないので発光素子が発光することはない、([0033]参照。)
発光表示スティック。」

2.引用文献2について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2には、次の事項が記載されている。

「[0002] 従来、一列に並べられた複数のLED(Light Emitting Diode)が棒状部材等に設けられ、ユーザがスイング動作を行うことによって空間に文字や図形等の画像を表示させるスイング式の表示装置が知られている。このような表示装置には、通常、LEDを点灯又は消灯(以下、「点滅」とする)させるタイミングが予め設定され、ユーザがスイングした際に、予め設定された所定のタイミングでLEDを点滅させることにより、図11に示すような画像を、残像現象を利用して空間に表示させることができる(例えば、特許文献1及び2を参照)。」

「[0024] 図1は、本発明にかかる表示装置の使用形態を示す。同図に示す例は、残像現象を利用して空間に画像を表示する表示装置1と、PC(Personal Computer)等の編集装置30とを伝送路20で接続し、表示装置1と編集装置30との間で、空間に表示させる画像の表示パターンを示す表示パターンデータを伝送する場合の例である。編集装置30は、伝送路20を介して表示装置1から伝送された表示パターンを編集して記憶すると共に、編集装置30上で新規作成された表示パターンデータを伝送路20を介して表示装置1に伝送することができる。」

「[0107] また、上述の例では、伝送路20としてUSBを用いて表示装置1及び編集装置30の間で通信を行う場合について説明したが、通信方式としては、これに限られず、例えば、赤外線を用いた無線通信を用いてもよい。この場合、表示装置1及び編集装置30に設けられる通信I/F部16及び33は、例えば、赤外線通信に対応するプロトコルに従って通信を行うようにすればよい。この場合には、図2に示す接続端子7として、赤外線通信が可能な端子を設ける。こうすることにより、表示装置1及び編集装置30を接続する際の接続ケーブルが不要となり、表示装置1及び編集装置30を容易に接続することができる。

[0108] さらに、無線通信としては、赤外線による通信に限られず、例えば、Bluetooth(登録商標)を用いてもよい。」




3.引用文献3について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献3には、図面とともに次の事項が記載されている。

「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、回転表示装置に関し、特に、360度のパノラマ映像を生ずるように回転表示装置が柱に取り付けられる、柱を囲むように設けられる回転表示装置に関する。」

「【0021】図6を参照するに、制御装置30は、マイクロ波受信装置31と主制御回路32とを含む。制御装置30は遠隔制御ホスト60との信号接続を行う。制御ホスト60は、少なくとも、デジタル映像再生装置61と、デジタル映像処理装置62と、マイクロ波送信装置63とを含む。デジタル映像再生装置61がデジタル映像信号を送出したとき、デジタル映像処理装置62は符号化のような処理を実行する。その後、マイクロ波送信装置63は、処理された信号を制御装置30に送信する。
【0022】制御装置30は、制御ホスト60から送られたマイクロ波信号を受信するためにマイクロ波受信装置31を用いる。受信された信号は、処理のために主制御回路に送られる。それらの信号は表示ユニット20の各発光モジュール23へ出力され、映像を形成して表示するために特定のLED230が点灯される。」

4.引用文献4について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献4には、図面とともに次の事項が記載されている。

「【0001】
本発明は、進行方向を提示する電子機器、進行方向提示方法およびプログラム。
【背景技術】
【0002】
プロジェクタの小型化に伴ってプロジェクタを内蔵する携帯端末が実用化されている。また、かかるプロジェクタを内蔵する携帯端末に関連して、特許文献1に記載の携帯端末は、携帯端末が存在する現在位置を示す現在位置情報を取得し、目的地と現在位置とを含む地図情報を基にして、現在位置から目的地までの到達可能なルートを示すルート情報を解析する。さらに、ルート情報を基にして、現在位置において進むべき方向を決定し、現在位置における進むべき方向を示す情報を、プロジェクタを用いて被投写体に投写する。また、例えば、当該携帯端末を首からかけた場合には、ユーザの前方の地面にプロジェクタからの投写光が投写され、この投写像内に、進むべき方向を示す矢印の画像を挿入する。
これにより、ユーザは、携帯端末を注視することなく、進むべき方向を知ることが可能となる、とされている。」

「【0020】
電子機器100は、投影部130にてナビゲーション情報の投影を行う。
図2は、電子機器100の使用形態の例を示す説明図である。同図に示すように、電子機器100は、例えばストラップにて首からぶら下げて使用される。
ここで、電子機器100がストラップでぶら下げられた状態において、電子機器100の下側に投影部130の投影装置(プロジェクタ)が位置している。電子機器100は、この投影装置から、ナビゲーション情報を地面に投影する。
なお、以下では、投影部130の投影装置を、単に「投影装置」と表記する。
ここでいうナビゲーション情報とは、電子機器100のユーザ(以下、単に「ユーザ」と表記する)の進むべき向きを示す情報である。図2の例では、電子機器100は、ユーザの進むべき向きを矢印にて示す画像をナビゲーション情報として投影している。」

5.引用文献5について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献5には、図面とともに次の事項が記載されている。

「【0026】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照しながら、本発明の携帯端末及び携帯端末により実行可能なプログラム並びにナビゲーションシステムの実施の形態について説明する。図1は、本発明の実施の形態の携帯端末を示す模式図であり、図1(a)は、本発明の実施の形態の携帯端末を示す断面図、図2(b)は、本発明の実施の形態の携帯端末を示す正面図である。図1に示す携帯端末100は、内蔵アンテナ1、GPS信号受信手段2、バッテリ3、スピーカ4、プロジェクタ5、レンズ6、通信回路7、CPU(Central Processing Unit:中央処理手段)8、メモリ9、スイッチ10、距離センサ11、ストラップ12を有している。
【0027】
内蔵アンテナ1は、近隣の無線基地局との通信を行う手段であり、無線基地局を介して、携帯端末100と、インターネットやサーバ、データベースなどとの接続を可能とするものである。また、GPS信号受信手段2は、携帯端末100の現在位置を判断するため、GPS衛星からの信号を受信する手段である。また、バッテリ3は、各手段において必要な電圧を供給する電源である。また、スピーカ4は、必要に応じて音声情報を出力する音声出力手段である。また、プロジェクタ5は、文字情報や画像情報を光によって外部に投写するための手段であり、特に、携帯端末100を用いるユーザを目的地まで誘導するための情報や、近隣の施設情報、内蔵アンテナ1を介して無線基地局から取得したリアルタイム情報など、様々な情報を任意の場所に投写することを可能とする手段である。また、レンズ6は、プロジェクタ5から投写される投写光の倍率調節(ズーム調節)や焦点調節(ピント調節)を可能とする手段である。」

6.引用文献6について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献6には、図面とともに次の事項が記載されている。

「【0062】
3次元画像表示装置400は、円形の台座部402と回転板6とにより構成され、台座部402の周囲に外部環境の変化を検知するセンサー(後述)などが取り付けてあり、更に台座部402の上部に透明な風防404が取り付けてある。この風防404内に第1の実施の形態の図1で示した有機ELパネル8が収容される。また、台座部402の外周面には複数のビデオカメラ406、指向性マイク(単にマイクと称することもある)408、スピーカ410が等間隔に配置されているが、ビデオカメラ406は台座部402の傾斜部分に配置され、図示されない撮像画像レンズが少し上向くようになっている。この例では、ビデオカメラ(以降、単にカメラと称する)406、マイク408が外部環境の変化を検知するセンサーである。尚、この図では3次元画像表示装置により電子受付嬢500の上半身の3次元画像が表示されている。但し、特許請求の範囲の撮像手段はビデオカメラ406に、集音手段は指向性マイク408に相当する。」

「【0065】
上記のように本実施の形態の3次元画像表示装置は、電子受付嬢(アニメーション)500の画像を3次元表示して電子受付機能を有している。それ故、3次元画像表示装置の周囲には、均等に8個のカメラ406と8個の指向性マイク408が取り付けてあり、その周囲360度方向の画像と音声を取り込むことができるようになっている。この画像と音声の入力に従って、3次元画像の電子受付嬢500が反応を示すようになっている。また、3次元表示された電子受付嬢500の動作や向きに応じた音を出力するための8個のスピーカ410も取り付けてある。」


第5 対比・判断
1.本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比する。
まず、引用発明における「長尺基板に略直線状に配置した複数個の発光素子」、「該発光素子を点灯するための点灯駆動部」、「各発光素子の点灯データを収納するメモリ」、及び「発光表示スティック」は、それぞれ本願発明1の「長尺基板に略直線状に配置した複数個の発光素子」、「前記複数の発光素子を点灯するための点灯駆動部」、「前記複数の発光素子の各々の点灯データを収納するためのメモリ」、及び「発光表示スティック装置」に相当する。
また、引用発明において「角度センサ」を用いる動作は、「文字を表示したい角度に発光表示スティック1をかざし、表示開始スタートボタンを押し、発光表示スティック1を右に振っていくと次々に発光素子が発光し、発光表示スティック1が右に60度振られたところで表示文字が全部表示され、60度を超えて振られてもメモリには60度までのデータしか収納されていないので発光素子が発光することはない、」というものであるから、該「角度センサ」が任意の「文字を表示したい角度」からの「発光素子」の角度を検出するものであることは明らかである。そうすると、引用発明の上記「角度センサ」は、本願発明1の「前記複数の発光素子の任意の基準角度からの角度を検出する角度センサ」に相当するといえる。
次に、引用発明の「角度センサからの角度情報により前記メモリから点灯データを引き出し発光素子を点灯する、マイクロコンピュータ」と、本願発明1の「前記角度センサからの角度情報に対応させて前記メモリから該当する発光素子に係る点灯データを引出して該発光素子を点灯するように制御し、前記無線受信器によって受信された前記受信情報である前記メモリのアドレス情報に相当する前記メモリ中のアドレスに書き込まれた表示内容のうち前記角度センサからの角度情報に対応する座標の表示データを読み取り該読み取られた前記座標の表示データに相当する発光素子を点灯させるように制御する第1のマイクロコンピュータ」とは、共に「前記角度センサからの角度情報に対応させて前記メモリから該当する発光素子に係る点灯データを引出して該発光素子を点灯するように制御」「する第1のマイクロコンピュータ」である点で共通するといえる。
してみると、両者の一致点及び相違点は、以下のとおりである。

(一致点)
「長尺基板に略直線状に配置した複数個の発光素子と、
前記複数の発光素子を点灯するための点灯駆動部と、
前記複数の発光素子の任意の基準角度からの角度を検出する角度センサと、
前記複数の発光素子の各々の点灯データを収納するためのメモリと、
前記角度センサからの角度情報に対応させて前記メモリから該当する発光素子に係る点灯データを引出して該発光素子を点灯するように制御する第1のマイクロコンピュータと
を具備することを特徴とする発光表示スティック装置。」

(相違点)
相違点1:本願発明1は、「送信装置からの受信情報を受信するための無線受信器」及び「前記無線受信器用の受信アンテナ」を備えるのに対し、引用発明は無線受信器に関する構成を有さない点。

相違点2:本願発明1の「第1のマイクロコンピュータ」は、「前記無線受信器によって受信された前記受信情報である前記メモリのアドレス情報に相当する前記メモリ中のアドレスに書き込まれた表示内容のうち前記角度センサからの角度情報に対応する座標の表示データを読み取り該読み取られた前記座標の表示データに相当する発光素子を点灯させるように制御する」ものであるのに対し、引用発明の「マイクロコンピュータ」は「角度センサからの角度情報により前記メモリから点灯データを引き出し発光素子を点灯する」ものではあるが、その際に「前記無線受信器によって受信された前記受信情報である前記メモリのアドレス情報に相当する前記メモリ中のアドレスに書き込まれた表示内容のうち」に限定して読み取りを行うものではない点。

(2)相違点についての判断
本願発明1の内容に鑑み、上記相違点2について検討する。
上記「第4」2.の引用文献2に記載されているとおり、「スイング式の表示装置」(本願発明1の「発光表示スティック装置」に相当。)において無線通信を行うという技術的事項は、本願出願日前において周知技術であったといえる。
しかしながら、上記周知技術において無線通信により伝送されているものは「表示パターンデータ」自体であって、データに関するメモリ中のアドレス情報ではない。また、発光表示スティック装置において該アドレス情報を無線通信により伝送する(すなわち、無線通信により発光表示スティック装置の表示内容の選択を行う)という技術的事項は、引用文献3-6においても、記載も示唆もされていない。
したがって、上記相違点1について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても、引用文献1ないし6に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

2.本願発明2-11について
本願発明2-11も、本願発明1の上記相違点2に係る構成と同一の構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用文献1ないし6に基づいて容易に発明できたものとはいえない。


第6 原査定について
本願発明1-11は、上記相違点2に係る構成を有するものであって、当業者であっても、拒絶査定において引用された引用文献1-6に基づいて、容易に発明できたものとはいえない。したがって、原査定の理由を維持することはできない。


第7 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2018-10-09 
出願番号 特願2016-132741(P2016-132741)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G09F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 小野 博之  
特許庁審判長 小林 紀史
特許庁審判官 中塚 直樹
中村 説志
発明の名称 発光表示スティック装置及び発光表示システム  
代理人 友野 英三  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ