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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  C21B
審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  C21B
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  C21B
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  C21B
管理番号 1344812
異議申立番号 異議2018-700098  
総通号数 227 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2018-11-30 
種別 異議の決定 
異議申立日 2018-02-06 
確定日 2018-08-17 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6179286号発明「高炉の操業状況判定方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6179286号の明細書、特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書、訂正特許請求の範囲のとおり〔1-6〕について訂正することを認める。 特許第6179286号の請求項1ないし6に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6179286号の請求項1ないし6に係る特許(以下、「本件特許」という。)についての出願は、平成25年9月6日に特許出願され、平成29年7月28日に特許権の設定登録がされ、同年8月16日に特許掲載公報が発行され、その後、その特許に対し、平成30年2月6日に特許異議申立人 吉田敦子により特許異議の申立てがされ、平成30年3月27日付けで取消理由が通知され、その指定期間内である同年5月28日に意見書の提出及び訂正の請求があり、この訂正の請求に対して申立人から同年7月5日に意見書が提出されたものである。

第2 訂正の適否についての判断
1.訂正の内容
平成30年5月28日付け訂正請求書による訂正請求(以下、「本件訂正請求」という。)による訂正の内容は、以下の訂正事項1?6のとおりである(当審注:下線は訂正箇所を示すため当審が付与した。)。
(1)訂正事項1
請求項1に「G成分画像の輝度に基づいて炉内状況又は設備状況を指数化して、その指数又はその指数の経時変化に基づいて」とあるのを、「G成分画像の輝度を二値化し、二値化によって得られる画像明部の面積比の経時変化に基づいて」と訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2?6も同様に訂正する。)。

(2)訂正事項2
請求項1に「G成分画像の輝度に基づいて炉内状況又は設備状況を指数化して、炉周方向の指数分布を求め、その分布又はその分布の経時変化に基づいて」とあるのを、「G成分画像の輝度を二値化し、二値化によって得られる画像明部の面積比の炉周方向の分布又はその分布の経時変化に基づいて」と訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2?6も同様に訂正する。)。

(3)訂正事項3
願書に添付した明細書の【0019】に「G成分画像の輝度に基づいて炉内状況又は設備状況を指数化して、その指数又はその指数の経時変化に基づいて」とあるのを、「G成分画像の輝度を二値化し、二値化によって得られる画像明部の面積比の経時変化に基づいて」と訂正する。

(4)訂正事項4
願書に添付した明細書の【0019】に「G成分画像の輝度に基づいて炉内状況又は設備状況を指数化して、炉周方向の指数分布を求め、その分布又はその分布の経時変化に基づいて」とあるのを、「G成分画像の輝度を二値化し、二値化によって得られる画像明部の面積比の炉周方向の分布又はその分布の経時変化に基づいて」と訂正する。

(5)訂正事項5
願書に添付した明細書の【0033】に「G成分画像の輝度に基づいて炉内状況又は設備状況を指数化して、その指数又はその指数の経時変化に基づいて」とあるのを、「G成分画像の輝度を二値化し、二値化によって得られる画像明部の面積比の経時変化に基づいて」と訂正する。

(6)訂正事項6
願書に添付した明細書の【0033】に「G成分画像の輝度に基づいて炉内状況又は設備状況を指数化して、炉周方向の指数分布を求め、その分布又はその分布の経時変化に基づいて」とあるのを、「G成分画像の輝度を二値化し、二値化によって得られる画像明部の面積比の炉周方向の分布又はその分布の経時変化に基づいて」と訂正する。

2.訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び、特許請求の範囲の拡張・変更の存否、一群の請求項について
(1)訂正事項1について
訂正事項1による訂正は、「炉内状況又は設備状況を判定する」に際して、「R成分画像の輝度、又は、・・・G成分画像の輝度に基づいて炉内状況又は設備状況を指数化して、その指数又はその指数の経時変化に基づいて」行うことを、「R成分画像の輝度、又は、・・・G成分画像の輝度を二値化し、二値化によって得られる画像明部の面積比の経時変化に基づいて」行うことに限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、訂正事項1に関連する記載として、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「本件明細書等」という。)の【0043】?【0047】及び【図4】には、R成分の画像の輝度を指数化し、羽口逆流又は羽口閉塞を検知する画像処理手順として、撮像画像の輝度がある一定以上ある場合、その画像を二値化するための閾値を演算し、この閾値に基づいて二値化を行い、画像における明部の面積比を演算し、この面積比が基準値未満であれば、基準値未満が継続する時間を判定し、継続時間が基準値未満であれば、その後の処理をせず、継続時間が基準値以上であれば、操業条件の迅速な変更のために警報を出力することが記載されていることから、本件明細書等には、「炉内状況又は設備状況を判定する」に際して用いる「指数」が、成分画像の輝度を二値化し、二値化によって得られる画像明部の面積比であることが記載されているといえる。
したがって、本件明細書等には、「炉内状況又は設備状況を判定する」に際して、「R成分画像の輝度、又は、・・・G成分画像の輝度を二値化し、二値化によって得られる画像明部の面積比の経時変化に基づいて」行うことが記載されているから、訂正事項1による訂正は、新規事項の追加に該当しない。
また、訂正事項1は、上記のように発明特定事項を限定するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではない。
以上のとおり、訂正事項1による訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(2)訂正事項2について
訂正事項2による訂正は、「炉内状況又は設備状況を判定する」に際して、「R成分画像の輝度、又は、・・・G成分画像の輝度に基づいて炉内状況又は設備状況を指数化して、炉周方向の指数分布を求め、その分布又はその分布の経時変化に基づいて」行うことを、「R成分画像の輝度、又は、・・・G成分画像の輝度を二値化し、二値化によって得られる画像明部の面積比の炉周方向の分布又はその分布の経時変化に基づいて」行うことに限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、前記(1)で検討したように、本件明細書等には、「炉内状況又は設備状況を判定する」に際して用いる「指数」が、成分画像の輝度を二値化し、二値化によって得られる画像明部の面積比であることが記載されているといえる。
したがって、本件明細書等には、「炉内状況又は設備状況を判定する」に際して、「R成分画像の輝度、又は、・・・G成分画像の輝度を二値化し、二値化によって得られる画像明部の面積比の炉周方向の分布又はその分布の経時変化に基づいて」行うことが記載されているから、訂正事項2による訂正は、新規事項の追加に該当しない。
また、訂正事項1は、上記のように発明特定事項を限定するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではない。
以上のとおり、訂正事項1による訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(3)訂正事項3ないし6について
訂正事項3ないし6による訂正は、訂正事項1、2による訂正によって生じる特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明との記載の不一致を解消して、記載の整合を図るものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(4)一群の請求項について
訂正前の請求項2ないし6は、訂正事項1及び2に係る訂正前の請求項1を引用しているから、訂正前の請求項1に連動して訂正されるものであって、本件訂正前の請求項1ないし6は一群の請求項である。
また、訂正事項3ないし6に係る明細書の訂正は、これら一群の請求項の全てについて請求するものである。
なお、本件訂正請求は、請求項1を訂正することにより請求項1を引用する請求項2ないし6も訂正するものであるが、全ての請求項(請求項1ないし6)に対して特許異議の申立てがされているので、特許法第120条の5第9項において読み替えて準用する同法第126条第7項の規定(独立特許要件の具備)は適用されない。

3.まとめ
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び同第3号に規定する事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項及び同条第9項において準用する同法第126条第4項ないし同第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項〔1-6〕について訂正を認める。

第3 訂正後の請求項1ないし6に係る発明
本件訂正請求により訂正された請求項1ないし6に係る発明(以下、「本件発明1ないし6」といい、これらをまとめて「本件発明」ともいう。)は、その特許請求の範囲の請求項1ないし6に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】
高炉の羽口の観察孔に配置したカラー画像撮像装置で、レースウエイ内の燃焼状態を経時的に撮像し、撮像画像に基づいて炉内状況又は設備状況を判定する操業判定方法において、
(i)撮像画像からR(赤)成分を抽出して作成したR成分画像の輝度、又は、撮像画像からG(緑)成分を抽出して作成したG成分画像の輝度を二値化し、二値化によって得られる画像明部の面積比の経時変化に基づいて炉内状況又は設備状況を判定する、又は、
(ii)撮像画像からR(赤)成分を抽出して作成したR成分画像の輝度、又は、撮像画像からG(緑)成分を抽出して作成したG成分画像の輝度を二値化し、二値化によって得られる画像明部の面積比の炉周方向の分布又はその分布の経時変化に基づいて炉内状況又は設備状況を判定する
ことを特徴とする高炉の操業状況判定方法。
【請求項2】
前記炉内状況が、生鉱落ちであることを特徴とする請求項1に記載の高炉の操業状況判定方法。
【請求項3】
前記炉内状況が、微粉炭吹込み形状であることを特徴とする請求項1に記載の高炉の操業状況判定方法。
【請求項4】
前記設備状況が、微粉炭吹込みランスの状況であることを特徴とする請求項1に記載の高炉の操業状況判定方法。
【請求項5】
前記設備状況が、羽口からコークスや微粉炭が逆流した状況、又は、羽口が閉塞した状況であることを特徴とする請求項1に記載の高炉の操業状況判定方法。
【請求項6】
前記設備状況が、ノロ湧きであることを特徴とする請求項1に記載の高炉の操業状況判定方法。」

第4 特許異議申立理由の概要
特許異議申立人は、証拠として後記する甲第1号証ないし甲第11号証を提出し、以下の理由により、請求項1ないし6に係る特許を取り消すべきものである旨主張している。

1.申立理由1(取消理由として不採用)
(1)本件発明1について
本件発明1は、甲第1号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、同発明に係る特許は取り消されるべきものである。
また、本件発明1は、甲第1号証に記載された発明と甲第2、3号証に記載された技術手段に基いて、又は、甲第4号証に記載された発明と甲第1ないし3号証に記載された技術手段に基いて、又は、甲第4号証に記載された発明と甲第1ないし3号証に記載された技術手段と甲第8号証に記載された技術手段に基いて、又は、甲第5号証に記載された発明と甲第1ないし3号証に記載された技術手段と甲第8号証に記載された技術手段に基いて、又は、甲第6号証に記載された発明と甲第1ないし3号証に記載された技術手段に基いて、又は、甲第6号証に記載された発明と甲第1ないし3号証に記載された技術手段と甲第8号証に記載された技術手段に基いて、又は、甲第7号証に記載された発明と甲第1ないし3号証に記載された技術手段に基いて、又は、甲第7号証に記載された発明と甲第1ないし3号証に記載された技術手段と甲第8号証に記載された技術手段に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、同発明に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであり、取り消されるべきものである。

(2)本件発明2について
本件発明2は、甲第1号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、同発明に係る特許は取り消されるべきものである。
また、本件発明2は、甲第1号証に記載された発明と甲第2、3号証に記載された技術手段に基いて、又は、甲第4号証に記載された発明と甲第1ないし3号証に記載された技術手段と甲第8号証に記載された技術手段に基いて、又は、甲第5号証に記載された発明と甲第1ないし3号証に記載された技術手段と甲第8号証に記載された技術手段に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、同発明に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであり、取り消されるべきものである。

(3)本件発明3について
本件発明3は、甲第1号証に記載された発明と甲第2、3号証に記載された技術手段と甲第8、9号証に記載された技術手段に基いて、又は、甲第5号証に記載された発明と甲第1ないし3号証に記載された技術手段と甲第8、9号証に記載された技術手段に基いて、又は、甲第6号証に記載された発明と甲第1ないし3号証に記載された技術手段と甲第8号証に記載された技術手段に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、同発明に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであり、取り消されるべきものである。

(4)本件発明4について
本件発明4は、甲第6号証に記載された発明と、甲第1ないし3号証に記載された技術手段及び甲第8号証に記載された技術手段に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、同発明に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであり、取り消されるべきものである。

(5)本件発明5について
本件発明5は、甲第1号証に記載された発明と、甲第2、3号証に記載された技術手段と甲第8ないし10号証に記載された技術手段に基づいて、又は、甲第5号証に記載された発明と、甲第1ないし3号証に記載された技術手段と甲第8ないし10号証に記載された技術手段に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、同発明に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであり、取り消されるべきものである。

(6)本件発明6について
本件発明6は、甲第1号証に記載された発明と、甲第2、3号証に記載された技術手段と甲第8、9号証に記載された技術手段に基づいて、又は、甲第5号証に記載された発明と、甲第1ないし3号証に記載された技術手段と甲第8、9号証に記載された技術手段に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、同発明に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであり、取り消されるべきものである。

2.申立理由2(取消理由として採用)
本件明細書の発明の詳細な説明の記載は、当業者が本件発明1ないし6の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものではないから、請求項1ないし6に係る特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、取り消されるべきものである。

3.申立理由3(取消理由として採用)
本件明細書には本件発明1ないし6の具体的な実施例が全くなく、発明の開示が何ら存在しないから、発明の課題を解決できるか否かを当業者が認識できないため、本件発明1ないし6は、発明の詳細な説明に記載したものではない。
したがって、請求項1ないし6に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、取り消されるべきものである。

4 申立理由4(取消理由として不採用)
本件発明1ないし6は不明確であるから、請求項1ないし6に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、取り消されるべきものである。

[証拠方法]
甲第1号証:特開2002-309307号公報
甲第2号証:特開2010-53180号公報
甲第3号証:特公平7-78248号公報
甲第4号証:特開昭58-55512号公報
甲第5号証:特開昭61-48508号公報
甲第6号証:特開平6-93317号公報
甲第7号証:特開平4-184009号公報
甲第8号証:特開昭64-25913号公報
甲第9号証:特開昭59-59813号公報
甲第10号証:実用新案登録第3160453号
甲第11号証:「岩波 国語辞典 第三版」、岩波書店、1979年12月4日、p.458

第5 取消理由の概要
平成30年3月27日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。
1.取消理由1(前記申立理由2を採用。)
発明の詳細な説明の記載は、当業者が本件特許に係る請求項1ないし6に記載された発明の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものではない。
特許異議申立書63頁6行ないし64頁19行の記載から、その理由の要旨は次のようなものである。すなわち、
本件明細書の発明の詳細な説明には、「指数」及び「指数化」について、閾値による撮像画像の二値化およびこの二値化により得られる明部の面積比以外に説明がなく、請求項2ないし6に記載の、個々の炉内状況である「生鉱落ち」「微粉炭吹込み形状」、個々の設備状況である「微粉炭吹込みランスの状況」「羽口からコークスや微粉炭が逆流した状況」「羽口が閉塞した状況」「ノロ湧き」をどのように指数化して個々の炉内状況及び個々の設備状況を区別して判定し得たのか不明であるため、「炉内状況又は設備状況の変化を正確かつ迅速に検知して判定することができる」(【0025】)という効果を、当業者が過度の試行錯誤無しに奏し得るものとはいえない。
したがって、請求項1ないし6に係る特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、取り消されるべきものである。

2.取消理由2(前記申立理由3を採用。)
本件特許の請求項1ないし6に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものではない。 特許異議申立書64頁20行ないし65頁11行の記載から、その理由の要旨は次のようなものである。すなわち、
上記取消理由1で記したように、本件明細書の発明の詳細な説明には、閾値による撮像画像の二値化およびこの二値化により得られる明部の面積比に基づき、個々の炉内状況及び個々の設備状況を区別して判定することが記載されるのみで、それらをどのように区別して判定するかについては記載がなく、判定手法が不明瞭であるにもかかわらず、請求項1ないし6に係る発明は、判定手法が不明瞭なままに、さらに「指数」及び「指数化」として拡張一般化して記載されており、当該発明は発明の詳細な説明に記載されたものとはいえない。
したがって、請求項1ないし6に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、取り消されるべきものである。

第6 甲号証の記載事項
1.甲第1号証
本件特許に係る出願日前に頒布された甲第1号証には、「炉内温度状況の検知方法」(発明の名称)に関して、以下の事項が記載されている(なお、下線は当合議体が付加したものであり、「・・・」は記載の省略を表す。以下、同様である。)。
(1a)「【請求項1】高炉羽口の観察窓を通してレースウエイ内燃焼場の熱画像を異なる2波長で撮像する撮像装置と、
前記撮像装置が出力する画像信号をデジタル画像に変換するデジタル変換装置と、
デジタル変換装置で変換したデジタル画像の画素を二色輝度から温度を求めてヒストグラム化し、ヒストグラムの形状で炉内温度状況を検知することを特徴とする炉内温度の検知方法。
【請求項2】1000ないし3000℃の範囲のヒストグラムを抽出し使用することを特徴とする請求項1記載の炉内温度の検知方法。
【請求項3】請求項2記載のヒストグラムの歪度の大小により温度分布を推定することを特徴とする炉内温度の検知方法。」

(1b)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、溶銑を製造する高炉の羽口レースウエイ部の燃焼状態を監視するため炉内温度状況の検知方法に関するものである。」

(1c)「【0002】
【従来の技術】高炉下部には円周方向に等間隔に配置された羽口があり、ここから高温熱風、酸素、微粉炭燃料が吹き込まれている。羽口には風圧によってレースウエイが形成され、コークスや微粉炭が燃焼している。ここで発生した熱及び還元ガスで焼結鉱が還元されて溶銑が作られるので、レースウエイの状態が高炉の操業状態に大きく影響を及ぼす。高炉内では効率よく安定して溶銑を生産することが大事であるが、近年、生産コストを下げることができる微粉炭熱剤大量吹き込みへの取り組みがなされている。この場合、レースウエイでの微粉炭の燃焼状態が何らかの原因で悪化すると、未燃焼の微粉炭は高炉内で熱源とならず炉内に蓄積し、炉内の通気性を阻害して操業を不安定にしたり、燃料比の増加をもたらすことになり好ましくない。このような理由から、羽口に設けられた観察窓を通してレースウエイ内部燃焼場の温度を放射測温手段で測定してレースウエイ燃焼状態を監視する技術が考案されている。」

(1d)「【0007】
【課題を解決するための手段】本発明は、羽口からレースウエイの温度変化を非接触で、かつ的確に連続測定可能で、羽口近傍での状態変化を推定することが出来る技術を提供することにある。・・・
【0008】即ち、高炉羽口の画像信号の画素を2色輝度から温度を求めてヒストグラム化し、ヒストグラムを形成することで、操業状態を判断することができる。即ち、操業良好時のヒストグラムは、レースウエイの温度分布は平均値を中央値としてほぼ左右対称の正規分布となる。これはレースウエイの健全に形成されている時には、上方から温度の低い未燃焼のコークスが連続的に供給され、更に燃焼も連続的になされるため、レースウエイの内部には燃焼初期の温度の低温のコークスと、燃焼後期の高温のコークスが混在するため、温度分布は正規分布となる。しかしながら、レースウエイが健全に形成されない場合には、燃焼が充分進まない、あるいは逆に過燃焼となるため、ヒストグラムは分散の小さい温度分布となる。また、レースウエイは健全なものの、融着帯が低下した場合、あるいは鉱石の還元率が低下するなどの場合には低温の未還元鉱石がレースウエイに流入するため、低温度部分が広がったいびつな分布のヒストグラムとなる。以上のように理由はいくつか考えられるが、ヒストグラムから正規分布の分散と平均、あるいは正規分布からの偏差を見ることにより、レースウエイの状況や炉内の状況が判断可能となる。」

(1e)「【0009】
【発明の実施の形態】以下には本発明の装置を操業中の高炉に適用した一実施例を説明する。図1には高炉羽口付近の模式図と発明装置の構成例を示す。高炉炉体3の所定位置に設けた羽口4には熱風供給管6から熱風が高圧で吹き込まれており、その風圧で炉内にレースウエイ1が形成されている。羽口4には微粉炭を吹き込む供給管5も備えられている。レースウエイ界面ではコークスや微粉炭が燃焼して一酸化炭素が発生する高温燃焼反応が生じている。羽口の炉外側の後端にはレースウエイを直視できる観察窓7がある。
【0010】二波長撮像装置10は観察窓からレースウエイの画像を異なる2つの波長(x1,x2)で撮像する。これらの画像は同じ光軸で撮像するようにして、同じ視野を見て波長のみが異なるようにする。分光して撮像する方法として、ここではカラーCCDカメラのRGB信号のうちR(赤)成分である中心波長650mmをx1、G(緑)成分の中心波長550mmをx2とした。別の方法として、ハーフミラー等で光路を分け、透過波長がそれぞれx1とx2の分光フィルタを備えた2台のモノクロカメラを使用し、ハーフミラーで光路を分岐させるなどして同軸で撮像する方法も考えられる。二波長撮像装置が出力する波長の異なる2枚の画像信号は画像デジタル変換装置11に入力され、デジタル信号に変換された。その後、パソコン等の小型計算機12に送られる。計算機12は画像から温度分布を計算する演算を実行し、結果をモニタ14表示したり、記憶装置(図示を省略)にデータを保存する。撮像制御装置13は計算機14からの指示に基づきCCDカメラの電子シャタ露光時間あるいはレンズ絞りを設定する信号を撮像装置に発信する機能を担う。本実施例では、CCDカメラが有する高速電子シャッタの露光時間を想定される明るさの範囲で段階的に制御することとした。
【0011】次に、計算機で実行される画像演算処理の詳細を説明する。図2のフローチャートに示すように、測定が開始されると、まず観察波長の異なる2枚の画像が取り込まれる(S1)。ここで波長x1およびx2の画像をそれぞれP1,P2とする。画像P1の各画素の輝度はp1(i、j)(i、j)はそれれ画像の縦方向、横方向の座標)とする。同じく画像P2の各画素の輝度はP2(i,j)とする。S2ではそれぞれの画像に対して最高輝度を検索し抽出する処理を実行する。画像P1およびP2の最高輝度をそれぞれLmx1,Lmx2とする。温度計算を実施する際に、受光素子が飽和あるいはそれに近い状態で画像輝度が上限値になるほど画像が明るかったり、逆に画像が暗すぎてノイズの影響が大きくなると、温度精度が極端に悪化するので、S3で最高輝度の値から画像が適切な明るさで撮像されているかを判断する。Lmx1あるいはLmx2のどちらかが予め定めた許容輝度上限値Lhiより大きい場合は、S4で撮像装置の露光時間を短くする指令を撮像制御装置に出す。逆に、Lmx1あるいはLmx2のいずれかが許容輝度下限値Lloより小さい場合はS4で露光時間を長くする信号を発し、再度画像取り込みを実行する。画像が適正な明るさ範囲にあることが確認されると、それぞれの画像ごとにノイズ除去のフィルタリングを施す(S5)。この実施例では3×3画素の2次元スムージング処理とした。
【0012】S6では画像P1とP2の画面間除算から2波長の2色比(輝度比)を計算する。すなわち、カラー画像の2色輝度(グリーン輝度G / レッド輝度R)から温度Tへの変換式は、
温度T=K3・Ratio3+K2・Ratio^(2)+K1・Ratio+K0 (1)
但しRatio:( G - Bg ) / ( R - Br )
Bg:グリーンバイアス輝度
Br:レッドバイアス輝度
K3:0、K2:-3529.2、K1:6269.8、K0:-527.4
ここで、K0ないしK3はパラメータファイルで変更可能であり、上述の例では、Ratio=xとおくと(1)式下記(2)となる。
T=-3529.2x^(2)×6269.8x-527.44 (2)
この(2)式は図3に示すように温度変換できる。尚、実際には画素感度むら補正や画像輝度ゼロレベル(完全な暗状態での画像信号のオフセット出力)補正などの若干の前処理を実施するが、説明を簡便にするためここでは詳細な記述を省略する。
【0013】次に、S7では、上記S6で求めた画素の温度に基づきヒストグラムを作成する。例えば、40000画素(縦200画素×横200画素)のCCDカメラを使用し、この全画素をTminからTmaxまで、原則的に1℃ごとスキャンして画素数をカウントしヒストグラムを形成する。
【0014】次に、S7で求めたヒストグラムの形状を基に、炉操業状態を判別する(S8)。具体的には、無効画素を除いた有効温度画素(PV)を基に判別する。上記ヒストグラムでは、CCDカメラの全画素が被測定物を測定するわけではなく、被測定物の部分以外ののぞき窓の外側部分等をも含まれ、全ての画素をヒストグラムとして作成すると、図4に示す如くなり、不要な部分が多数存在する他、データ量を少なくするためにも、これらのデータを除去することが好ましい。だたし、不要なデータの部分は、炉内の羽口の温度状態の把握に際し、明確に温度領域が異なることより、不要なデータを残していても、温度状況等の判別にはあまり影響がない。
【0015】ここで、無効画素は、例えば全画素のうち、G及びRの輝度値が240以上の場合には、温度変換した場合、実際の温度とは異なった値となる為、有効に使用することが出来ず、画素数で上限外温度画素数(PNU)として無効画素として取り扱う。また、G-Bg及びR-Brが10以下の場合には、温度変換した場合も、下限温度はずれて有効に使用することが出来ない画素数となり下限外温度画素数(PNL)として、同様に無効画素として除いている。前者は、本CCDカメラのシャッタースピードや絞りの範囲では測定出来なかった領域で、後者は非常に低温の領域であり、微粉炭バーナーなどレースウエイの被測定部以外部分であると推認出来るからである。このようにして形成した、ヒストグラムに基づいて、上下限温度値で挟まれた温度領域の平均温度を平均値1として算出する(式(3))
【数1】

【0016】次に、上限温度値から指定された画素数範囲の平均温度を平均値2として算出する(式(4))。この式(4)は、有効温度画素中一定割合以上の部分の平均温度を示すもので、この平均値2を求めるのは、例えば、生鉱石落ちがあった場合、この部分は大幅に温度が低下する。この為、この生鉱石落ちでない部分の温度を求める必要があるときなどに利用する。
【数2】

ここで、nは、指定した上下限温度値領域内画素数Nに対する割合(%)で、この時の画素数Npとする。また、上限温度値から低温方向に画素数をNpになるまでカウントし,Npとなる画素が存在する温度をTpとしている。
【0017】そして、ヒストグラムを正規分布と仮定し、平均、分散および正規分布とのずれを計算し、併せて、有効ケース数を n,各ケースの測定値を Xi ( i = 1,2,… ,n )としヒストグラムの歪度、尖度を求める。ここで、歪度Skは、下式(5)となり、図5に示す如く、Sk=0で左右対称な正規分布となる。また、Sk>0の時は左に偏った分布となり、温度分布が低温側に移動していることが判る。逆にSk<0の時は、右に偏った分布となり、温度分布が高温側に移動していることが判り、このデータから複数の羽口の情報を併せて、炉内の温度分布を把握し、最適な炉操業をすることが出来る。
【数3】

【0018】また尖度Kwは、図6に示す如く、Kw=0で左右対称な正規分布と同程度を表し。Kw>0の時は、正規部分布より尖った形で、中心への集中度が高い分布となり、温度分布が一点へ集中していることが判る。逆にKw<0の時は、正規部分布より扁平な形で、中心への集中度が低い分布となり、温度分布が分散していることが判る。
【数4】

【0019】操業良好時にはレースウエイの温度分布は平均値を中央値として、ほぼ左右対称の正規分布のヒストグラムとなる。これはレースウエイの健全に形成されている時には、上方から温度の低い未燃焼のコークスが連続的に供給され、更に燃焼も連続的になされるため、レースウエイの内部には燃焼初期の温度の低温のコークスと、燃焼後期の高温のコークスが混在するため、温度分布は正規分布となる。しかしながら、レースウエイが健全に形成されない場合には、燃焼が充分進まない、あるいは、逆に過燃焼となるため、分散の小さい温度分布、即ち尖度Kw>0の表示となる。また、レースウエイは健全なものの、融着帯が低下した場合、あるいは鉱石の還元率が低下するなどの場合には低温の未還元鉱石がレースウエイに流入するため、低温度部分が広がったいびつな分布、即ち尖度Kw<0の表示となる。ただし、操業が好調な時も若干分散が低下するケースもある。以上のように理由はいくつか考えられるが、正規分布の分散と平均、あるいは正規分布からの偏差を見ることにより、レースウエイの状況や炉内の状況が判断可能である。
【0020】このように上述ヒストグラムを作成し、有効温度画素数PV、上限外温度画素数PNU、下限外温度画素数PNL、平均値1、平均値2、標準偏差(分散)、歪度Sk、尖度Kwを求めることにより、羽口の温度分布を正確に把握でき、この結果をモニター等の表示器に表示し(S9)、炉内温度等の炉内状況を検知し作業者に知らせる。
【0021】上記一連の画像処理はキーボード等からの測定終了の指示が、入力されるまで繰り返される(S10)。この際、上記測定は、等間隔の10個程度の羽口の測定を繰り返し測定することが、炉内の温度の円周バランスを正確に把握するうえで好ましい。」

(1f)「【0025】
【発明の効果】本発明は以上のようにして高炉羽口のぞき窓から炉内レースウスイの温度分布を測定するが、前述のごとく2波長で熱放射画像を撮像し、それらの画像データから各画素の温度温度分布をヒストグラムに表すことにより、温度分布状態を把握することが出来、高炉レースウスイ温度分布が常に定量的に監視ができるようになり、作業者は炉状況の変化を迅速かつ正確に把握して操業することが可能になる.その結果、高い生産性と安定した銑鉄品質の確保が実現できる。」

(1g)本発明の装置の実施例を示す構成図である【図1】

2.甲第2号証
本件特許に係る出願日前に頒布された甲第2号証には、「コークス炉の炉壁診断方法および炉壁診断装置」(発明の名称)に関して、以下の事項が記載されている。
(2a)「【請求項1】
炭化室内に撮影装置を挿入し、炉壁を撮影した炉壁映像を画像分析することにより上記炭化室の炉壁診断を行うコークス炉の炉壁診断方法において、
コークス押出し毎に上記炭化室内の炉壁を上記撮影装置によって撮影し、
撮影された上記炉壁映像から、上記炭化室の炉長方向の複数位置に対応する炉壁画像を切り出し、
切り出した上記炉壁画像を、コークス押出しサイクル別に記憶部に記憶し、
上記記憶部に記憶された各炉壁画像を読み出し、上記炭化室内を落下するコークス塊および炭化室内に発生する炎・粉塵の少なくともいずれか一方を外乱として判別し、
外乱と判定された上記炉壁画像中の領域を、上記画像分析の対象領域から外すことを特徴とするコークス炉の炉壁診断方法。
・・・
【請求項3】
切り出した上記炉壁画像をR成分,G成分,B成分の各画像に分解し、G成分画像を用いて上記炎・粉塵を判別する請求項1記載のコークス炉の炉壁診断方法。
・・・
【請求項5】
所定の広さを有する領域が1つのみである場合に、上記炎・粉塵として判別する請求項1又は3に記載のコークス炉の炉壁診断方法。」

(2b)「【技術分野】
【0001】
本発明は、コークス炉内を撮影した画像を解析しコークス炉の炉壁状態を診断する方法に関し、より詳しくは、撮影画像に混入したコークス塊の落下等による外乱を判別除去して診断の精度を高めることができるコークス炉の炉壁診断方法および炉壁診断装置に関するものである。」

(2c)「【0004】
炉内観察は、図15に示すようにコークス押出しが行われている時、具体的には、炉蓋が外され、炭化室50で乾留された赤熱コークス51を、ラムビーム52先端のラムヘッド53により炉外に待機しているガイド車(図示しない)に押し出している間に行われるが、炉内温度が約1100℃と高温であり炉の間近まで近寄れないこと、炉幅は450mm前後と狭いのに対し奥行きは約15mと長く視界が悪いこと、また、操業度にもよるが炉内を観察できる時間が約3分程度と制限されていること等、目視による炉内観察は容易でない。・・・」

(2d)「【0009】
本発明は以上説明したようなコークス炉の炉壁状態を、画像解析によって診断する方法における課題を考慮してなされたものであり、コークス塊の落下等による外乱を判別除去して炉壁診断の精度を高めることができるコークス炉の炉壁診断方法および炉壁診断装置を提供することにある。」

(2e)「【0013】
本発明の炉壁診断方法において、切り出した上記炉壁画像をR成分,G成分,B成分の各画像に分解し、B成分画像を用いて上記コークス塊を判別することが好ましい。
【0014】
また、上記炎・粉塵についてはG成分画像を用いて判別することが好ましい。」

(2f)「【0051】
2.3.1 コークス塊検出処理
・・・
【0052】
まず、上記元画像をR,G,Bのチャンネル毎に分け、コークス塊の検出に最も有効なB画像を選択する(ステップS1)。」

(2g)「【0070】
2.3.2 炎・粉塵検出処理
・・・
【0075】
以下、詳しく説明する。
【0076】
上記元画像をR,G,Bのチャンネル毎に分け、今回は、炎・粉塵の検出に最も有効なG画像を選択する(ステップS12)。炎・粉塵を検出するにはR画像は明るすぎ、また、B画像は暗すぎるためである。」

(2h)従来の炉内観察方法を示す説明図である【図15】

3.甲第3号証
本件特許に係る出願日前に頒布された甲第3号証には、「高炉レースウェイ部観察装置」(発明の名称)に関して、以下の事項が記載されている。
(3a)「【請求項1】高炉炉内のレースウェイ部へ光源を照射する光源照射装置、炉内からの反射光を撮像する撮像装置及び撮像信号を画像処理する画像処理装置とからなる高炉レースウエイ部観察装置において、上記炉内からの反射光の通過位置、上記撮像装置の前方に低波長可視光線域の反射光を通過させるフイルターを配置することを特徴とする高炉レースウェイ部観察装置」(1頁左欄2ないし8行)

(3b)「(産業上の利用分野)
本発明は高炉内のレースウェイ部を観察する装置に関するものである。」(1頁1欄10ないし12行)

(3c)「しかしながら従来の測定法ではレースウェイ内の燃焼火炎から発する輝度の方がコークスやスラグなど固体、液体の表面から発する輝度より大きいので固体や液体分の形状をうまく観察できない欠点があった。しかもレースウェイ内は流速200m/sec前後の高速で小粒塊のコークスが旋回しているため、通常のカメラでは撮影することが不可能であった。たとえ高速度シャッター付きのテレビカメラを使用しても前記の如く気体からの放射光に妨害されて固体、液体の輪郭を鮮明に区別することは不可能であった。
画像解析の二値化処理法などを駆使しても、高温気体からの輻射光の影響をスクリーニングすることは困難であった。」(2頁3欄4ないし16行)

(3d)「(課題を解決するための手段)
本発明は、高炉炉内のレースウェイ部へ光源を照射する光源照射装置、炉内からの反射光を撮像する撮像装置及び撮像信号を画像処理する画像処理装置とからなる高炉レースウェイ部観察装置において、上記炉内から反射光の通過位置、上記撮像装置の前方に低波長可視光線域の反射光を通過させるフイルターを配置することを特徴とする高炉レースウェイ部観察装置である。
即ち、本発明は炉内のレースウエイ一部で発生する光情報から、コークスや溶銑、熔融スラグなどの固体、液体から発する光と燃焼ガスから発する光を分離し、前者の映像をより鮮明にするため、後者の光を特定のフイルターを用いてスクリーニングすることにより観察可能とした装置を見出したものである。
即ち、低波長可視光線域である、例えば、400ないし600nmの波長をよく透過させる光フイルターを介してレースウェイ一部から発生する光映像を撮像装置である高速度カメラに導くと、燃焼ガスからの発色光に影響されずに鮮明な画像が得られることを見出した。
本発明の原理は第2図に示す如く、燃料ガス単味から発生する光(A)に対してコークス溶融スラグなど固体、液体から発生する光(B)の強度が400ないし600nmの波長域では光(A)と(B)とに差がないことを利用している。
レースウェイ部からの受光される光は前記2者の混合であり、2000ないし2400℃という高温ガスから発生する光(A)の強度が相対的に強いため、従来法では光(B)の情報から鮮明な画像を得ることができなかった。
400ないし600nmの波長域を選択的に撮像装置(高速度カメラ)に導入することによってレースウェイ内を浮遊する数ミリ程度のコークス塊までも観察することが可能である。さらに鮮明度を上げる目的とレースウェイの奥行き方向を観察する目的で外部からレースウェイ部へ400ないし600nmの光源を照射することが効果的である。」(2頁3欄17ないし50行)

(3e)本発明の実施例を示す装置構成図である【図1】

(3f)レースウエイ部から発生する光を分光解析した図である【図2】

4.甲第4号証
本件特許に係る出願日前に頒布された甲第4号証には、「高炉の炉況判定方法」(発明の名称)に関して、以下の事項が記載されている。
(4a)「2.特許請求の範囲
(1)炉内へ羽口より高圧熱風を送風する環状管に前記炉内のレ-スウエイを監視する羽口覗窓が設けられた高炉の炉況判定方法において、前記レ-スウエイの撮影画像を電気的に生成し、該生成した画像の所要区域毎の輝度が予め設定した基準値より下回るとき当該区域の暗部の大きさ及び明度に基づいて未溶解鉱石量を算出し、該算出値に基づいて炉況を判定することを特徴とする高炉の炉況判定方法。」(1頁左下欄4ないし13行)

(4b)「本発明は高炉操業のための有益な情報を得るに最適な高炉の炉況判定方法に関する。」(1頁左下欄15ないし16行)

(4c)「本発明の目的は、羽口部への未溶解鉱石の落下を連続的に定量化し、上記した従来の欠点を解消した高炉の炉況判定方法を提供するにある。
本発明は、目視による羽口観察で、いわゆる生降りがある場合、旋回コ-クスとは異なる大きさ、黒さのものが落下していることに着目し、羽口の状況を直接撮影した画像を解析することにより、羽口への生降りを連続的に定量化しうるようにしたものである。すなわち、高炉羽口のレ-スウエイ内の状況をシヤツタ-付の羽口カメラで撮影し、これにり得られるビデオ画像の輝度を部分ごとに調べ、各部分の輝度が基準値より小さい部分について、暗部の大きさ、明度より未溶解鉱石量を計算し、全画像について積算することによつて羽口への未溶解鉱石量を求め、この結果に基づき炉況を判定するものである。
レ-スウエイ状況の撮影画像に対する解析方法について、以下図を示し説明する。第2図は全く生降りが認められない場合の画像であり、第3図は生降りが認められる場合(図中の斜線像)の画像である。第2図および第3図に示す画面内の大円は先端部の羽口形状を示すものであり、その中の小さな粒子はコ-クスを示すものである。ところで、コ-クスの粒径の大きさ輝度の低さ(暗度の大きさ)には極端なものはなく一定値以下であるが、生降り鉱石については粒径の大きさ、輝度の低さ(暗度)は相当大きく、明確にコ-クスと異なることは経験的に目視観察からわかつている。
生降りか否かを判別するため第3図の如く走査線上の輝度に対する基準値C_(1)を設けて測定を行う。輝度C_(1)の値は人間による目視観察結果と良く合うようにして調整し適宜変更することもありうる。なおレ-スウエイ中の鉱石の移動は高速であるため本発明ではメカニカルシヤツタ-付羽口カメラを用いている。
生降り量の単位時間当りの評価の方法は第4図および第5図の如くに輝度変化をもつて行われる。第4図は第2図に対応し、第5図は第3図に対応するものである。基準値をC_(1)とするとき、該基準値C_(1)以下の輝度のもの(暗度の大きいもの)についての大きさ、輝度、輝度の低い部分の長さ、寸法とを考慮して、生降り量Yは,
Y=Σi(li×wi)・・・(1)
として求められる。Yの値は、例えば30分毎、8時間毎に合計し、生降り量の30分値、8時間値とする。なお、(1)式において、liは輝度の低下幅であり、wiは輝度の低下している部分の長さである。
生降り量の増加(すなわちYの値の増加)は、炉床での直接還元(FeO+C→Fe+CO)を増加させる。直接還元は吸熱反応であるため、生降りを極度に増加させると著しい溶銑温度の低下すなわち炉冷えを招くことになる。このように生降り量と炉況は密接に関連しているので前述のようにして求めたYの値に、大小の判別値、推移に関する判別値を設けて、炉況を判定する。判別値の数はいくつでもよい、大小2点、すなわち判別値Y_(1),Y_(2)とした場合について具体的に例示する。
第1表

第1表の如くに判別の基準を定めるとき、測定したYと判別値Y_(1),Y_(2)とから第2表の如くに炉況を判定することができる。実際の判定としては、輝度を電流値に変換して考え、暗度が大きい
第2表

(輝度が小さい)のに対応して電流値が大きくなる信号に処理して判定する。例えば、ビデオ画像の走査線上の輝度に対する基準値C_(1)を目視結果より30mAとし、1回1秒の速度で走査線L_(H)を走らせる。従つて、カメラ撮影のインタ-バルは1秒毎となる。Yのデイメンシヨンとしては(mA,mm)であり、30分毎に集積するものとする。このY値の推移を示したのが第6図であり、溶銑温度の推移を示したのが第7図である。第6図および第7図よシ明らかな如く、溶銑温度の低下は生降りが大きいときに生じることがわかる。
以上の解析は説明の便宜上、画像中に設定した1走査線についてのみ行つた例を示したが、これを画像の全域において未溶解鉱石量を算出し、その積算値に基づいて炉況を判定する必要がある。
次に、以上の解析処理を実行する装置の一例を第8図に示す。
高炉1には環状管2より高圧熱風が吹込まれている。これにより高炉1の羽口部にレ-スウエイ3が生じる。一方、羽口の対向部に羽口覗窓4が設けられ、さらにこの羽口覗窓4に対向してメカニカルシヤツタ-5が配設される。メカニカルシヤツタ-5は、第9図に示す如くにスリットが設けられ、モ-タ6によシ所定回転速度で回転している。レ-スウエイ3、羽口覗窓4、メカニカルシヤツタ-5のスリット部の各々と一直線に配置される位置にピンホ-ル板7が設けられる。さらにピンホ-ル板7と対向してフィルタ-8が設けられ、このフィルタ-8と対向してズ-ムレンズ9およびテレビカメラ10が設けられている。また、テレビカメラ10およびモ-タ6にはシヤツタ-制御装置11が設けられ、カメラの電子ビ-ム走置とメカニカルシヤツタ-5のタイミング合せを行ない画面流れや途中表示を防止する。テレビカメラ10にはモニタ12および信号処理装置14が夫々接続され、テレビカメラ10で撮像された内容が映し出されると共にタイプライタ-15で信号がタイプされるようになつている。」(2頁左上欄12行ないし3頁右上欄18行)

(4d)「なお、前述の構成において、複数の羽口部の1基にのみシヤツタ-付カメラを配置した例を示したが、羽口部の各々にカメラを配置するのが望ましい。」(4頁右上欄6ないし9行)

(4e)本発明に係る生降り無発生時の画像図である第2図
(4f)本発明に係る生降り発生時の画像図である第3図

(4g)生降り無発生時の本発明による評価説明図である第4図
(4h)生降り発生時の本発明による評価説明図である第5図

(4i)本発明に係る生降り量特性図である第6図

(4j)本発明に係る溶銑温度特性図である第7図

(4k)本発明の実施例を示す構成図である第8図

5.第5号証
本件特許に係る出願日前に頒布された甲第5号証には、「高炉炉況のレ-スウエイ情報定量化による判定方法」(発明の名称)に関して、以下の事項が記載されている。
(5a)「2.特許請求の範囲
1.高炉送風羽口の覗き窓に高速シヤツタ-付きのテレビカメラを設置し、このテレビカメラによりレ-スウエイを静止画像としてとらえ、その画像信号の映像信号を画像処理装置に入力し、得られた明度を炉況判定に利用するに当り、
上記静止画像を等面積に分割して最小区分毎に明度を定量化することにより、この明度毎の累積頻度分布を求め、
次にこの累積頻度分布の曲線から明度に関する第2次の微係数分布を求めて明度が増加するにつれこの微係数がプラスからマイナスを経てさらにプラスに変化する点の境界明度を決定し、
境界明度以下の割合による画像情報によつてレ-スウエイ内情報を定量化することを特徴とする高炉炉況のレ-スウエイ情報定量化による判定方法。」(1頁左下欄4行ないし右下欄2行)

(5b)「(産業上の利用分野)
高炉の羽口計測に関してこの明細書で述べる技術内容は、高炉炉況の適切な把握によつて高炉操業の安定化に資する有効な手段についての開発成果を提案するところにある。」(1頁右下欄4ないし8行)

(5c)「(発明が解決しようとする問題点)
テレビカメラによるレ-スウエイ情報の把握に関し、とくに高速度シヤツタ-を利用し、レ-スウエイでのコ-クスの燃焼状況や生鉱落下を正確な情報として捕え、しかも連続的な測定も行うことを可能にしてレ-スウエイ情報の精度を飛躍的に向上させることがこの発明の目的である。」(2頁右上欄3ないし9行)

(5d)「この発明の方法は、第1図に示すように高炉送風羽口1の覗き窓2に高速シヤツタ-付きのテレビカメラ(以下羽口TVと略す)3を設置する。
図において4は画像処理装置、5はコンピユ-タ、6は印字装置そして7はVTRであり、また8は高炉の炉体、9はレ-スウエイである。羽口TV3は高速シヤツタ-を内蔵し、この羽口TV3を覗き窓2に臨んで設置し、高炉送風羽口1の先で生じているレ-スウエイ9内のコ-クスの旋回や生鉱下りなどの現象を、例えば1/2000秒の高速シヤツタ-で1秒間に30フレ一ム程度の静止画像としてとらえ、この画像を画像処理装置4に連続的に入力する。」(2頁左下欄7ないし19行)

(5e)「(作用および実施例)
以下この発明の構成に従う作用を実施例にあわせ第2図ないし第6図によつて説明する。
すでにのべた第1図のブロツク図に示すように、炉体8に取付けた送風支管1′の覗き窓2から炉内のレ-スウエイ9を羽口TV3の視野に納めその画像情報を画像処理装置4により画素毎に明度情報に、デジタル化してコンピユ-タ5に送る。
上記レ-スウエイ情報についての定量化は次のように行う。すなわち羽口TV3によつてとらえられたレ-スウエイ画像Pの一例は、第2図に示すとおりである。
この画像Pを第3図に示した様に小さな画素単位uに分割する。この小区画素単位ごとの平均明度をコンピユ-タ5にて計算し、各明度毎(輝度段階0ないし255)に累積し、明度分布曲線lとした一例が第4図である。
この明度分布曲線lは、常に変曲点がみられ、これらについて吟味したところ変曲点の位置が画像全体の明度に関係していることを知見した。
この知見に基いて先ず明度分布曲線lを明度について1回、2回微分を行い第5図(a)(b)の結果が得られた。
図からも明らかなように、2回微分の値の符号がプラスからマイナスそしてプラスへと変化した輝度によつて前記の変曲点は容易に見つけられる。
この明度を境界明度と呼ぶことにして、この境界明度以下(図の斜線域)の割合をコンピユ-タ5で計算し、印字装置6に打ち出すことによつて炉況状態を知ることができるわけである。
これらの解析は、オンラインでも、VTR7を用いたバッチ解析でも行うことができる。
以上述べたところに従う30分平均値を第6図にプロットして示した。図に示すこの境界明度以下の割合の時間推移は、溶銑の〔Si〕を約2時間の時間遅れをもつて表示する相関を呈し、この発明で得られたレ-スウエイ情報は、高炉操業管理上極めて大なる効果を奏するものである。
すなわちSiは高炉にSiO_(2)又は種々のシリケ-トの形態で装入されるが、Siの還元の増減は炉熱レベルと相関があるので操業上Siの管理が炉熱制御の1つの目安とされているからである。つまりコ-クス粒度や生鉱落下の状況を反映する境界明度以下の割合推移から約2時間後の溶銑〔Si〕の推移が予測できるので操業管理に有効な情報が得られるわけである。」(2頁右下欄10行ないし3頁右上欄15行)

(5f)「(発明の効果)
この発明によれば高炉炉況を羽口先レ-スウエイにおける明度についての適切な計測により正確に把握し、それによつて安定な高炉操業を実現できる。」(3頁左下欄5ないし9行)

(5g)この発明の方法に用いる設備のブロック図である第1図

(5h)テレビカメラによるレースウエイ画像の一例を示すスケッチ図である第2図

(5i)画像の分割区画要領の説明図である第3図

(5j)各分割の累積輝度分布図である第4図

(5k)レースウエイ画像の2値化の具体例を示すグラフである第5図

(5l)羽口輝度の経時変化の一例を示すグラフである第6図

6.甲第6号証
本件特許に係る出願日前に頒布された甲第6号証には、「高炉羽口内微粉炭吹き込み管理方法」(発明の名称)に関して、以下の事項が記載されている。
(6a)「【請求項1】高炉羽口に放射温度カメラを設置し、前記放射温度カメラから得られた高炉羽口内の温度分布により微粉炭の燃焼性を評価する方法において、前記放射温度カメラの画像における微粉炭の未燃焼領域の大きさ又は位置から、ランス詰まり又はランス傾きによる羽口壁侵食の少なくとも一方を自動的に判断し警告することを特徴とする高炉羽口内微粉炭吹き込み管理方法。」

(6b)「【0004】
【課題を解決するための手段】本発明は前記の従来技術の問題点を解決するものである。すなわち、高炉羽口に放射温度カメラを設置し、前記放射温度カメラから得られた高炉羽口内の温度分布により微粉炭の燃焼性を評価する方法において、前記放射温度カメラの画像における微粉炭の未燃焼領域の大きさ又は位置から、ランス詰まり又はランス傾きによる羽口壁侵食の少なくとも一方を自動的に判断し警告することを特徴とする高炉羽口内微粉炭吹き込み管理方法である。以下、図面にもとづいて、本発明を説明する。」

(6c)「【0005】
【作用】図1は、高炉羽口の覗き孔ガラスから羽口内部の温度分布を観察するシステムを示す。1は羽口内での微粉炭の燃焼温度分布を計測する放射温度カメラである。2は放射温度カメラ1からの信号を温度に変換する画像処理装置である。3は画像処理装置2により変換された羽口内での各点の温度を幾つかの温度領域に分割し、各温度領域毎の面積を計算することにより、微粉炭の燃焼性を指標化する画像解析装置である。4は画像処理装置2、画像解析装置3からの出力を表示する表示器である。5は高炉本体、6は微粉炭を吹き込むランス、7は高炉羽口である。
【0006】図2は放射温度計により計測された羽口内温度分布画像である。6のランスから吹き出された微粉炭が燃焼している様子がわかる。8は微粉炭の未燃焼領域を、9は等温線を表わしている。なお8は送風温度以下の領域とする。なお、微粉炭の未燃焼領域はある温度範囲の領域とした。(たとえば1000ないし1400℃の領域)
【0007】図3はランスが詰まって、微粉炭吹き込み量が変化したときの温度分布画像である。このとき微粉炭吹き込み量の減少により、8の微粉炭の未燃焼領域面積は減少する。そこでこの状態が一定時間以上継続した場合に、「ランス詰まり」と結論し警告を発する。
【0008】図4はランスが傾き、吹き出された微粉炭が燃焼する前に羽口壁に当たっている状態の温度分布画像を示す。このとき羽口壁は微粉炭により削られてしまう。そこで10の様な予め設定された領域内に、未燃焼微粉炭領域面積が一定量、一定時間以上存在した場合、「ランス傾きによる羽口壁侵食」と判断し、警告を出す。
【0009】図5は「ランス詰まり」及び「ランス傾きによる羽口壁侵食」を判断するフローチャートである。101で羽口内温度分布画像を取り込み、102では微粉炭の未燃焼領域面積S_( b 1)と「ランス詰まりが無い通常の場合の未燃焼領域面積」S _(X)とを比較し、「ランス詰まり」が無いか否かを判断している。なおS _(X)は、微粉炭吹き込み量とS _(X)との関係をあらかじめテーブル化しておく。なおα(0ないし1)は設定定数である。103は予め設定された領域内10(図4)に未燃焼微粉炭領域面積S _(b 2)が一定量(S _(0))以上、一定時間以上存在しているか否かを計算し、「ランス傾きによる羽口壁侵食」の有無を判断している。」

(6d)高炉羽口内温度分布観察システムの略図である【図1】

(6e)温度分布画像を示す図である【図2】

(6f)ランス詰まり時の温度分布画像を示す図である【図3】

(6g)ランス傾き時の温度分布画像を示す図である【図4】

(6h)ランス詰まりおよびランス傾きを判断するフローチャートである【図5】

7.甲第7号証
本件特許に係る出願日前に頒布された甲第7号証には、「高炉羽口の燃焼制御方法」(発明の名称)に関して、以下の事項が記載されている。
(7a)「2.特許請求の範囲
1.微粉炭と鉱石とを混合してなる複合燃料を熱風と共に高炉の羽口に吹き込み、レ-スウェイ内に吹き出させて燃焼せしめるに際し、燃焼火炎を撮像し、この撮像結果から燃焼状態の良否を判定して、最適な燃焼状態を得るべく吹き込み側の状態を示す吹き込み状態量を調節する高炉羽口の燃焼制御方法において、
前記レ-スウェイへの吹き出し側の状態を示す吹き出し状態量及び前記吹き込み状態量を燃焼火炎の輝度分布から推定演算するモデル式と、前記吹き出し状態量を前記吹き込み状態量から推定演算するモデル式とを用い、前記撮像により得られた輝度分布の実測結果を前者に適用し、また前記吹き込み状態量の実測結果を後者に適用して夫々の推定演算を行う過程を、吹き込み状態量の実測結果と演算結果との比較に基づいて前者を、また両者の演算結果の比較に基づいて後者を夫々適応修正しつつ行って、後者による演算結果と予め定めた吹き出し状態量の最適値との偏差を解消すべく前記吹き込み状態量の適正値を求め、これを目標値として前記調節を実施することを特徴とする高炉羽口の燃焼制御方法。」(1頁左下欄3行ないし右下欄7行)

(7b)「〔産業上の利用分野〕
本発明は、高炉羽口における燃焼状態を常時適正な状態に保つべく行われる燃焼制御方法に関する。」(1頁右下欄8ないし11行)

(7c)「〔従来の技術〕
高炉の羽口には、微粉炭及び種々の鉱石を混合してなる複合燃料が熱風共に吹き込まれ、これらは、高炉内部において羽口前方に広がるレ-スウェイに吹き出されて燃焼せしめられるが、この際の燃料原単位の向上のためには、常に最適な燃焼状態を保つことが重要な課題となっている。このことは、微粉炭の量及び粒度、鉱石の量7粒度及び組成、並びに熱風の量、温度及び熱風中の酸素量等、燃焼に関連する状態量を夫々実測し、これらを所定の目標値に一致せしめるべく調節することより実現されるかの如くであるが、レ-スウェイでの実際の燃焼過程は、熱分解、還元等の熱化学反応を伴い、また揮発分及び固形分の燃焼を夫々生じる複雑なものであり、この燃焼状態は、羽口への吹き込み側における前述した状態量(吹き込み状態量)のみならず、レ-スウェイへの吹き出し流れの主流速度及び旋回速度、並びに、熱分解域、還元域、揮発分燃焼域及び固形分燃焼滅失々の大きさ及び温度等、吹き出し側の状態を示す種々の状態量(吹き出し状態量)によっても支配され、高炉の操業に伴って経時的に変化するこれらの吹き出し状態量は、実測及び外部からの直接的な調節が不可能であることから、燃焼状態の最適化は、実質上極めて困難な課題となっている。」(1頁右下欄12行ないし2頁左上欄16行)

(7d)「本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、高炉羽口の燃焼状態の判定と、これを最適化するのに必要な吹き込み側の条件設定とを簡易なモデルを用いて可能とし、最適な燃焼状態を高精度にて連続的に得ることができ、燃料原単位の向上と省力化とに寄与し得る高炉羽口の燃焼制御方法を提供することを目的とする。」(2頁右下欄4ないし10行)

(7e)「〔実施例〕
以下本発明をその実施例を示す図面に基づいて詳述する。第1図は本発明に係る高炉羽口の燃焼制御方法(以下本発明方法という)の実施態様を示す模式図である。
図中1は、高炉の炉壁2に貫設された羽口である。羽口1の先端は、炉壁2を貫通して高炉の内部に開口させてあり、炉壁2の外側に位置する羽口1の基端部には、熱風吹き込み用の送風支管3と、微粉炭と鉱石とを混合してなる複合燃料供給用の燃料ノズル4とが開設しである。また羽口の軸心部には水冷ランス5が挿通され、これに内蔵されたイメ-ジファイバ6は、羽口1の基端部がら外部に延設されて、TV左カメラを用いてなる撮像装置7に接続されている。以上の如き構成の羽口1においては、燃料ノズル4から供給される鉱石を含む微粉炭が、送風支管3からの熱風と共に吹き込まれて、該羽口1の先端に臨ませて炉壁2の内部に形成されたレ-スウェイ8に吹き出されて燃焼せしめられる。この際の燃焼火炎9は、羽口1の先端を拡大して示す第2図に示す如く、羽口1からの吹き出し直後における熱分解域90、これよりも下流側の還元域91及び更に下流側の固形分燃焼域92とを有し、更に、揮発分が空気過剰の状態にて燃焼する一揮発分燃焼域93を熱分解域90の周囲に有してなり、この燃焼火炎9の像は、イメ-ジファイバ6を介して撮像装置7に導がれて撮像される。
図中10は、以上の如き羽口1での燃焼状態を適正に維持すべく本発明方法に従って動作する燃焼制御部である。燃焼制御部10には、前記撮像装置7による燃焼火炎9の撮像結果が輝度分布計測器11を経て与えられており、更に、送風支管3への熱風の供給を制御する給気制御部12から、前記熱風の風量、温度及び熱風中の酸素含有量等、熱風に関連する状態量の実測結果が、また燃料ノズル4への複合燃料の供給を制御する燃料制御部13から、複合燃料中の微粉炭の量及び粒度、鉱石の量、粒度及び組成等、燃料に関連する状態量の実測結果が夫々与えられている。
さて、レ-スウェイ8での燃焼は、給気制御部12から与えられる熱風に関連する状態量、及び燃料制御部13から与えられる燃料に関連する状態量、即ち、羽口1の吹き込み側の状態を示す各種の状態量(吹き込み状態量)のみによって支配されるのではなく、レ-スウェイ8への突出流れの主流速度及び旋回速度、並びに、燃焼火炎9における前記熱分解域90、還元域91、固形分燃焼域92及び揮発分燃焼域93夫々の大きさ及び温度等、吹き出し側の状態を示す各種の状態量(吹き出し状態量)によっても支配される。燃焼制御部10は、吹き込み状態量の実測結果及び輝度分布計測器11から与えられる燃焼火炎9の輝度分布の実測結果を用い、前記吹き出し状態量を後述の如く推定して、この推定結果を反映して吹き込み状態量の目標値を設定し、この結果を前記給気制御部12及び燃料制御部13に与えてこれらの動作により、送風支管3からの熱風の吹き込み状態、及び燃料ノズル4からの燃料供給状態を調節して前記目標値を実現せしめ、レ-スウェイ8における燃焼状態を最適化する動作をなす。」(3頁右上欄19行ないし4頁左上欄19行)

(7e)「〔効果〕
以上詳述した如(本発明方法においては、レ-スウェイでの燃焼火炎の輝度分布の実測結果によりプロセス全体の状態量を推定演算し、また実測が可能な吹き込み側の状態量により吹き出し側の状態量を推定演算する過程を、前者の演算に用いるモデル式を吹き込み状態量の実測結果により、また後者の演算を行うモデル式を燃焼状態を反映している前者の演算結果により夫々適応修正しつつ行うことにより、吹き込み状態量と吹き出し状態量との関連を定める後者のモデル式の演算精度を高め、この演算の結果により得られた吹き出し状態量を得るべく吹き込み状態量の目標値を定めており、従来火炎の撮像結果を監視するオペレ-タによりなされていた燃焼状態の適否の判定、及びこれの最適化のための吹き込み状態量の調節が完全に自動化され、速やかに確実になされることとなって、高炉羽口における燃焼状態が常時適正化されて、燃料原単位の向上及び省力化が実現される等、本発明は優れた効果を奏する。」(6頁右下欄12行ないし7頁左上欄11行)

(7f)本発明方法の実施状態を示す模式的ブロック図である第1図

8.甲第8号証
本件特許に係る出願日前に頒布された甲第8号証には、「高炉レ-スウエイ部観測装置」(発明の名称)に関して、以下の事項が記載されている。
(8a)「2. 特許請求の範囲
炉内レ-スウエイ部へ紫外線或波長の光源を照射・撮像する送受信装置と、撮像信号の画像処理装置から構成してなる高炉のレ-スウエイ部観測装置。」(1頁左下欄3ないし7行)

(8b)「(産業上の利用分野)
本発明は高炉内のレ-スウエイ部を観測する装置に関するものである。」(1頁左下欄9ないし11行)

(8c)「(問題点を解決するための手段)
本発明は、炉内レ-スウエイ部へ紫外線或波長の光源を照射・撮像する送受信装置と、撮像信号の画像処理装置から構成してある高炉のレ-スウエイ部観測装置である。」(1頁右下欄17行ないし2頁左上欄1行)

(8d)「(実施例)
第1図は、本発明を高炉羽口の覗き窓に具体的に適用したときの実施例を示すものである。
第1図において、1は高炉内のレ-スウエイであり、2の羽口、3のブロ-パイプの後端に覗き窓4が設けられており、この覗き窓4からレ-スウエイ1を肉眼で観察できる構造になつている。図中16は高炉である。
レ-スウエイ1内を観察するために、紫外線ランプ5は500 Wの強力な光源を用いたこの替わりに高出力のアルゴンレ-ザ-を光源として用いることも可能であり、1KWのレ-ザ-光をエキスパンダ-で広げて紫外線ランプ5の替わりに使用した。
光源から発した特定の波長の光線は集光レンズ6、ハ-フミラ-7を経て覗き窓4からレ-スウエイ1内を照射する。コ-クスに反射した光線は逆方向に進んでハ-フミラ-7で直角に曲げられ特定波長のみを通過させるフィルタ-8を経てカメラ9に導入される光源として紫外線ランプを用いた場合又はアルゴンレ-ザ-を用いた場合それぞれ350±5mmのフィルタ-8を用いてカメラ9にその波長以外の光線が入るのを防止した。カメラ9は紫外線用の高感度CCDカメラを用い、350mmの波長の輝度を明瞭に測定できるものを採用した。
カメラ9の映像信号は画像処理装置10に導入され、信号処理されてモニタ-テレビ11に出力される。画像処理装置10において紫外線域の映像信号は輝度を数値化し、2値化処理によつてコ-クスの輪郭を明瞭にする。1画面毎にスキヤニングによつてコ-クス粒子の面積を計算して平均粒度と粒度分布を統計処理できるように画像処理装置10の回路を設計した。第3図に測定例を示す。又は-フミラ-7の角度を微小に変化させたときの画像変化から三角測量の原理でレ-スウエイ1の深度を画像処理装置10で計算できるようにした。さらに紫外線ランプ5にストロボを内蔵させることによつて千分の1秒間隔の高速度撮影を実施することによつて、レ-スウエイ1内を落下する鉱石をコ-クス同様に観察できるばかりか、ランス12から吹き込んだ微粉石炭の燃焼状況およびレ-スウエイ1内で旋回するコ-クス微粒子も同時に観察することができた。
本発明の測定装置は移動台車13に設置することによつて、測定したい羽口の覗き窓4の前まで移動することが可能であるようにした。もちろん測定する羽口を固定して長期間同じ所に配置することも可能である。さらに複数個の測定装置を円周方向にそれぞれ等間隔に配置して、円周バランスを同時に観察することも可能である。この場合複数個の測定装置が必要となるので第2図に示す如く、光フアイバ-ケ-ブル14で各レ-スウエイ1の光情報を切換え装置15に集合させ、1つの測定装置で順番に測定していく方法を採つた。」(2頁右上欄2行ないし右下欄16行)

(8e)「(発明効果)
以上説明したように、本発明によれば、羽口先のレ-スウエイ内のコ-クス状態(平均粒度、粒度分布)や深度および微粉炭の燃焼状況を円周方向のどこでもリアルタイムで測定することができるので、この情報を炉内装入物分布、送風条件等にフィ-ドバツクさせることによつて高炉管理上極めて大なる効果を奏するものである。」(2頁右下欄17行ないし3頁左上欄4行)

(8f)この発明の実施例を示す装置構成図である第1図

(8g)円周方向に複数個のレースウエイを連続して測定する場合の実施例を示す図である第2図

(8h)レースウエイ内を観察したときのコークス粒径のヒストグラムを示す図である第3図

9.甲第9号証
本件特許に係る出願日前に頒布された甲第9号証には、「炉況検出方法」(発明の名称)に関して、以下の事項が記載されている。
(9a)「2.特許請求の範囲
複数の検出端を有する輝度計により、羽口断面複数箇所の局部的な輝度を測定し、測定された複数箇所の輝度分布から羽口先の炉況を検出するようにしたことを特徴とする炉況検出方法。」(1頁左下欄3ないし8行)

(9b)「本発明は、高炉の炉況検出方法、より詳細には羽口先輝度からの炉況の検出方法に関する。
高炉の安定した操業を維持するためには、炉下部における炉熱を常に適切な状態に維持コントロ-ルすることが必要なことは言うまでもない。このような炉下部における炉熱管理法として、羽口輝度計から得られる羽口輝度を利用した炉熱制御法が提案されでいる。しかしながら、このような従来の羽口輝度を利用した方法では、利用する輝度が羽口ベンストツクの覗き穴から覗いた視野全体の輝度の平均値であるため、一つの送風羽口の前面における細い挙動を検出することがほとんど不可能であるという問題があつた。即ち、例えば輝度変化があつても生鉱落ちによるものか、或いは銑滓湧きによるものか、さらには吹込燃料の吹込みや燃焼状況の変化によるものかの区別が全くつかないという問題である。このようなことから、羽口輝度だけからでは炉下部の炉況を把えることはほとんどできないというのが実情である。
本発明はこのような事情に鑑み創案されたもので、羽口輝度を利用して、炉下部の炉況を適確に検知することができる方法を提供せんとするものである。このため本発明は、複数の検出端を有する輝度計により、羽口断面複数箇所の局部的な輝度を測定し、測定された複数箇所の輝度分布から羽口先の炉況を検出するようにしたものである。
以下、本発明を図面を参照して説明する。
本発明は複数の検出端を有する輝度計を用い、羽口断面の複数箇所の局部的輝度を測定する。この輝度計としては、例えば検出端となる複数のフアイパ-スコ-プを備えたものが使用される。第1図において、(2)はフアイパ-スコ-プ、(1)は輝度計本体であり、測定箇所数に応じた複数のフアイバ-スコ-プ(2)をブロ-パイプ(3)後端のペンストツプ部(4)内に装入し、各フアイバ-スコ-プ(2)の焦点を羽口断面(A)の所定の箇所に設定するものである。第2図はこのようにして羽口断面(A)に集点設定された各検出端による輝度観測部(a_(1))ないし(a_(7))を示している。本発明では、この局部的な複数の輝度観測部(a)(本実施例では視野周方向7箇所)の各輝度を測定し、各輝度の分布から炉況を検出する。
第2図に示す輝度観測部(a)を例にとつて輝度分布から検出される炉況を例示すると以下の通りである。
(丸1)生鉱落ちの検出
a_(1),a_(2),a_(3)部分の輝度変化に最初に現われる。
(丸2)銑滓湧きの検出
a_(5),a_(6),a_(7)の輝度変化に最初に現われる。
(丸3)吹込燃料、羽口先コ-クスの燃焼状態及び羽口先温度
各観測部共通の輝度変化として現われる。」(1頁左下欄10行ないし2頁右上欄9行)(当審注:丸数字は、(丸1)等と表記した。以下同様である。)

(9c)「第3図は、第2図に示されるような観測部を設定した場合における各炉内現象と対応する輝度分布変化の一例を示したものであるが、(丸1)ないし(丸3)で述べたように輝度分布により各炉内現象を的確に検知できることが判る。そしてこのような炉況の検知に基づき送風条件、燃料の吹込条件、出銑滓条件等の全体的若しくは各羽口別のアクシヨンが採られ、他に水蒸気添加、酸素富化等の条件変更等が行われる。例えば、生鉱落ちの場合には、数時間オ-ダ-の生鉱落ち頻度により風熱上昇等のアクシヨンを取り、長時間単位では、炉況により分布アクシヨンを取り、炉周辺部の鉱石量を減する。また銑滓湧きの場合には、出銑滓管理を強化し、炉床に貯つている銑滓を十分に取り出すようなアクシヨンの指示をする。さらに、羽口先温度の変化については、風熱、送風湿分等のアクシヨンさらには燃料比アクシヨン等のきめ細い制御アクシヨンが取られる。
以上述べた本発明法によれば、羽口断面における複数箇所の測定輝度の分布から炉内現象を的確に検知し、操業アクシヨンの適切な指針となる炉下部の炉況を正確に把えることができるという優れた利点がある。」(2頁左下欄12行ないし右下欄15行)

(9d)本発明の実施状況の一例を示す説明図である第1図

(9e)本発明における羽口断面の観測部設定例を示す説明図である第2図

(9f)本発明で検出された輝度分布の一例を示すものである第3図

10.甲第10号証
本件特許に係る出願日前に頒布された甲第10号証には、「高炉用羽口の監視装置」(発明の名称)に関して、以下の事項が記載されている。
(10a)「【技術分野】
【0001】
本考案は、炉床の側壁部に放射状に設けられた複数の羽口内部の各燃焼状態を、カメラの映像により効率的に比較監視することができる高炉用羽口の監視装置に関する。」

(10b)「【0002】
一般的に高炉操業とは、原料工程で秤量された鉄鉱石又はコークスを高炉内部に投入した後、溶融還元するための熱風を羽口から供給し、溶銑を生産することをいう。このような操業過程で、高炉の下部炉床には放射状に羽口が設置されて高炉内部に均一に熱風を供給している。
【0003】
従来の一般的な高炉の羽口の監視装置を図1に示す。高炉の下部周囲には送風口ユニット20が複数設置されている。この送風口ユニット20は、大型高炉の場合、円周方向で34ないし40個ほど設置されており、送風管21を通じて高炉の内部に均一に熱風を供給している。しかし、様々な原因によって微粉炭の燃焼状態が悪くなると微粉炭が羽口を塞ぐなどの異常が発生するので、羽口の観察窓22を通じて高炉内部の微粉炭の燃焼状態及び燃焼時の光の状態を定期的に監視して異常の有無を判断している。」

(10c)従来の高炉の羽口の監視装置を示す概略図である【図1】

11.甲第11号証
本件特許に係る出願日前に頒布された甲第11号証には以下の事項が記載されている。
(11a)「【指数】(丸1)〔数学〕その数字が数aのn乗(a^(n))で表される時の、nのこと。・・・(丸2)規準になる物、又は時期での値を一〇〇と定め、それに比べて他のもの、又は他の時期ではどうかを表した数値。『物価-』」

第7 取消理由として採用した特許異議申立理由についての当審の判断
1.取消理由1について
(1)取消理由1の要旨
上記「第5 1.取消理由1」でみたように、取消理由1の要旨は次のとおりである。
本件明細書の発明の詳細な説明には、「指数」及び「指数化」について、閾値による撮像画像の二値化およびこの二値化により得られる明部の面積比以外に説明がなく、請求項2ないし6に記載の、個々の炉内状況である「生鉱落ち」「微粉炭吹込み形状」、個々の設備状況である「微粉炭吹込みランスの状況」「羽口からコークスや微粉炭が逆流した状況」「羽口が閉塞した状況」「ノロ湧き」をどのように指数化して個々の炉内状況及び個々の設備状況を区別して判定し得たのか不明であるため、「炉内状況又は設備状況の変化を正確かつ迅速に検知して判定することができる」(【0025】)という効果を、当業者が過度の試行錯誤無しに奏し得るものとはいえない。
したがって、請求項1ないし6に係る特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、取り消されるべきものである。
(2)当審の判断
本件訂正請求により、訂正前の「(i)撮像画像からR(赤)成分を抽出して作成したR成分画像の輝度、又は、撮像画像からG(緑)成分を抽出して作成したG成分画像の輝度に基づいて炉内状況又は設備状況を指数化して、その指数又はその指数の経時変化に基づいて炉内状況又は設備状況を判定する」は、訂正後の「 (i)撮像画像からR(赤)成分を抽出して作成したR成分画像の輝度、又は、撮像画像からG(緑)成分を抽出して作成したG成分画像の輝度を二値化し、二値化によって得られる画像明部の面積比の経時変化に基いて炉内状況又は設備状況を判定する」に訂正され、
「R成分」又は「G成分」の「画像」の「輝度」に基づいて「炉内状況又は設備状況を指数化」し、その「指数の経の時変化に基づいて炉内状況又は設備状況を判定する」という手法が、
「R成分」又は「G成分」の「画像」の「輝度」を「二値化し、二値化によって得られる画像明部の面積比の経時変化に基いて炉内状況又は設備状況を判定する」という、本件明細書に記載されていた手法で行われることに減縮されたものであり、「炉内状況又は設備状況を判定」する手法がより具体的にされたものといえる。
そして、特許権者の平成30年5月28日付け意見書を参酌すれば、本件発明では、「R成分」又は「G成分」の「画像」の「輝度」を、「操業実績」に基いて設定した画像輝度の閾値で二値化し、画像明部の面積比を「通常の演算手法」に従って演算して指数化し、その経時変化を観察して、個々の炉内状況である「生鉱落ち」「微粉炭吹込み形状」、個々の設備状況である「微粉炭吹込みランスの状況」「羽口からコークスや微粉炭が逆流した状況」「羽口が閉塞した状況」「ノロ湧き」において「操業実績」に基く特定の値となるときに、当該状況の発生を判定することができるものであり、「炉内状況又は設備状況の変化を正確かつ迅速に検知して判定することができる」ものと認められるから、本件発明がその実施に際して当業者に過度の試行錯誤を強いるものであるとはいえない。
(3)異議申立人の主張について
異議申立人は、平成30年7月5日付け意見書で、「操業実績」「通常の演算手法」とはいかなるものか不明であり、撮像した画像からどのようにして二値化閾値演算を行い、次いで画像明部の面積比を求めるのか、依然として不明である旨を主張する。
当該主張を検討するに、まず、「操業実績」については、各高炉において、個々の炉内状況である「生鉱落ち」「微粉炭吹込み形状」、個々の設備状況である「微粉炭吹込みランスの状況」「羽口からコークスや微粉炭が逆流した状況」「羽口が閉塞した状況」「ノロ湧き」は当然に実際に起きている事象であり、当該事象の発生時に於けるレースウエイの撮像データ(本件出願以前にも撮像する技術は存在する)、操業条件データ等は各高炉で高度に蓄積されていると考えられ、それこそが「操業実績」といえるものである。 したがって、それらのデータを元に画像輝度の閾値を決定し、各事象に固有の面積比、経時変化等を推定し、本件発明に適用することは、当業者の当然に指向し得るところといえ、本件発明がその実施をすることができない程に「操業実績」とは何か不明であるというものではない。
また、「通常の演算手法」は「二値化閾値演算」「画像明部の面積比」の求め方に関するものであるが、前者については例えば特開2013-185234号公報(本件明細書【0012】【0013】【0017】等)の【0058】に詳細に記載されるように本件出願前にすでによく知られている技術であり、また、後者について同文献の【0059】に、輝度値を二値化閾値で画素値が1(明部)か0(暗部)かで二値化して二値化画像を得ることが記載されており、この点も本件出願前にすでによく知られている技術といえるものであり、当業者であれば、「画像明部の面積比」は(明部)の面積を(暗部)の面積で除算したものであることは明白であるといえるので、撮像した画像からどのようにして二値化閾値演算を行い、次いで画像明部の面積比を求めるのか不明であるとはいえない。
以上から、特許異議申立人の主張は採用できない。

2.取消理由2について
(1)取消理由2の要旨
上記「第5 2.取消理由2」でみたように、取消理由2の要旨は、次のとおりである。
本件明細書の発明の詳細な説明には、閾値による撮像画像の二値化およびこの二値化により得られる明部の面積比に基づき、個々の炉内状況及び個々の設備状況を区別して判定することが記載されるのみで、それらをどのように区別して判定するかについては記載がなく、判定手法が不明瞭であるにもかかわらず、請求項1ないし6に係る発明は、判定手法が不明瞭なままに、さらに「指数」及び「指数化」として拡張一般化して記載されており、当該発明は発明の詳細な説明に記載されたものとはいえない。
したがって、請求項1ないし6に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、取り消されるべきものである。
(2)当審の判断
上記「1.(2)」でみたように、本件訂正請求により、「R成分」又は「G成分」の「画像」の「輝度」に基づいて「炉内状況又は設備状況を指数化」し、その「指数の経の時変化に基づいて炉内状況又は設備状況を判定する」という手法が、「R成分」又は「G成分」の「画像」の「輝度」を「二値化し、二値化によって得られる画像明部の面積比の経時変化に基いて炉内状況又は設備状況を判定する」という、本件明細書に記載されていた手法で行われることに減縮され、個々の炉内状況及び個々の設備状況を区別して判定することも操業実績等を加味すれば実施できるものであることから、本件発明は発明の詳細な説明に記載されたものといえる。
(3)異議申立人の主張について
上記「1.(3)」で見たことと同様であり、特許異議申立人の主張は採用できない。

3.取消理由1,2についての結言
以上から、本件明細書の発明の詳細な説明には、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に発明が記載されたものとはいえるから、請求項1ないし6に係る特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものでなく、取り消されるべきものでない。
また、請求項1ないし6に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものでなく、取り消されるべきものでない。

第8 取消理由として採用しなかった特許異議申立理由についての当審の判断
1.申立理由1(特許法第29条第1項第3号及び第2項)について
(1)甲各号証に記載された発明及び甲各号証の記載事項
ア 甲第1号証の前記(1a)及び(1e)の【0010】の記載によれば、甲第1号証には「高炉羽口の観察窓を通してレースウエイ内燃焼場の熱画像を異なる2波長で撮像する撮像装置と、
前記撮像装置が出力する画像信号をデジタル画像に変換するデジタル変換装置と、
デジタル変換装置で変換したデジタル画像の画素を、R(赤)成分画像及びG(緑)成分画像の二色輝度から温度を求めてヒストグラム化し、ヒストグラムの形状で炉内温度状況を検知することを特徴とする炉内温度の検知方法。」の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されている。

イ 甲第2号証の前記(2b)、(2f)、(2g)には、コークス炉内を撮影した画像を解析しコークス炉の炉壁状態を診断する方法に関する発明において、コークス塊の検出には、B画像が最も有効であること、及び、炎・粉塵の検出には、R画像は明るすぎ、また、B画像は暗すぎるため、最も有効なG画像を選択することが記載されている。

ウ 甲第3号証の前記(3d)には、高炉炉内のレースウェイ部へ光源を照射する光源照射装置、炉内からの反射光を撮像する撮像装置及び撮像信号を画像処理する画像処理装置とからなる高炉レースウェイ部観察装置に関する発明において、上記炉内から反射光の通過位置、上記撮像装置の前方に低波長可視光線域の反射光を通過させるフイルターを配置することを特徴とする高炉レースウェイ部観察装置は、コークスや溶銑、熔融スラグなどの固体、液体から発する光と、燃焼ガスから発する光を分離して、前者の映像をより鮮明にするために、400ないし600nmの波長をよく透過させる光フィルターを介してレースウェイ一部から発生する光画像を撮像装置である高速度カメラに導いているので、燃焼ガスからの発色光に影響されずに鮮明な画像を得られることが記載されている。

エ 甲第4号証の前記(4a)の記載によれば、甲第4号証には、「炉内へ羽口より高圧熱風を送風する環状管に前記炉内のレ-スウエイを監視する羽口覗窓が設けられた高炉の炉況判定方法において、前記レ-スウエイの撮影画像を電気的に生成し、該生成した画像の所要区域毎の輝度が予め設定した基準値より下回るとき当該区域の暗部の大きさ及び明度に基づいて未溶解鉱石量を算出し、該算出値に基づいて炉況を判定することを特徴とする高炉の炉況判定方法。」の発明(以下、「甲4発明」という。)が記載されている。

オ 甲第5号証の前記(5a)の記載によれば、甲第5号証には、「高炉送風羽口の覗き窓に高速シヤツタ-付きのテレビカメラを設置し、このテレビカメラによりレ-スウエイを静止画像としてとらえ、その画像信号の映像信号を画像処理装置に入力し、得られた明度を炉況判定に利用するに当り、
上記静止画像を等面積に分割して最小区分毎に明度を定量化することにより、この明度毎の累積頻度分布を求め、
次にこの累積頻度分布の曲線から明度に関する第2次の微係数分布を求めて明度が増加するにつれこの微係数がプラスからマイナスを経てさらにプラスに変化する点の境界明度を決定し、
境界明度以下の割合による画像情報によつてレ-スウエイ内情報を定量化することを特徴とする高炉炉況のレ-スウエイ情報定量化による判定方法。」の発明(以下、「甲5発明」という。)が記載されている。

カ 甲第6号証の前記(6a)の記載によれば、甲第6号証には、「高炉羽口に放射温度カメラを設置し、前記放射温度カメラから得られた高炉羽口内の温度分布により微粉炭の燃焼性を評価する方法において、前記放射温度カメラの画像における微粉炭の未燃焼領域の大きさ又は位置から、ランス詰まり又はランス傾きによる羽口壁侵食の少なくとも一方を自動的に判断し警告することを特徴とする高炉羽口内微粉炭吹き込み管理方法。」の発明(以下、「甲6発明」という。)が記載されている。

キ 甲第7号証の前記(7a)の記載によれば、甲第7号証には、「微粉炭と鉱石とを混合してなる複合燃料を熱風と共に高炉の羽口に吹き込み、レ-スウェイ内に吹き出させて燃焼せしめるに際し、燃焼火炎を撮像し、この撮像結果から燃焼状態の良否を判定して、最適な燃焼状態を得るべく吹き込み側の状態を示す吹き込み状態量を調節する高炉羽口の燃焼制御方法において、
前記レ-スウェイへの吹き出し側の状態を示す吹き出し状態量及び前記吹き込み状態量を燃焼火炎の輝度分布から推定演算するモデル式と、前記吹き出し状態量を前記吹き込み状態量から推定演算するモデル式とを用い、前記撮像により得られた輝度分布の実測結果を前者に適用し、また前記吹き込み状態量の実測結果を後者に適用して夫々の推定演算を行う過程を、吹き込み状態量の実測結果と演算結果との比較に基づいて前者を、また両者の演算結果の比較に基づいて後者を夫々適応修正しつつ行って、後者による演算結果と予め定めた吹き出し状態量の最適値との偏差を解消すべく前記吹き込み状態量の適正値を求め、これを目標値として前記調節を実施することを特徴とする高炉羽口の燃焼制御方法。」の発明(以下、「甲7発明」という。)が記載されている。

ク 甲第8号証の前記(8b)、(8d)には、紫外線用の高感度CCDカメラの映像信号から得られた輝度を数値化して高炉内のレースウェイ部を観測する装置に関する発明において、複数個の測定装置を円周方向にそれぞれ等間隔に配置して、円周バランスを同時に観察するか、1つの測定装置で順番に円周方向の羽口を測定することにより、羽口先のレースウェイ内のコークス状態(平均粒度、粒度分布)や深度および微粉炭の燃焼状況を円周方向のどこでもリアルタイムで測定して得られる情報を炉内装入物分布、送風条件等にフィードバックさせることが記載されている。

ケ 甲第9号証の前記(9b)には、輝度分布から検出される炉況として、銑滓湧き、吹込燃料、羽口先コークスの燃焼状態が記載されている。

コ 甲第10号証の前記(10b)には、高炉の操業において、微粉炭の燃焼状態が悪くなると微粉炭が羽口を塞ぐなどの異常が発生するので、羽口の観察窓を通じて高炉内部の微粉炭の燃焼状態及び燃焼時の光の状態を定期的に監視して、異常の有無を判断することが記載されている。

(2)当審の判断
ア 本件発明1について
(ア)特許異議申立人は、上記「第4 1.申立理由1(1)本件発明1について」でみた甲各号証の組み合わせにより、本件発明1は、甲第1号証に記載された発明であるか、甲1発明、甲4発明、甲5発明、甲6発明又は甲7発明のいずれかを主引用発明として、他の甲各号証に記載された技術手段を適用して当業者が容易に発明をすることができたものである旨主張(特許異議申立書の47頁2行ないし59頁13行)している。
本件発明1と、甲1発明、甲4発明、甲5発明、甲6発明又は甲7発明のいずれかとを対比すると、甲第1号証、甲第4号証、甲第5号証、甲第6号証又は甲第7号証のいずれにも、「高炉の操業状況判定方法」において、「撮像装置」が「カラー画像撮像装置」であって、「撮像画像からR(赤)成分を抽出して作成したR成分画像の輝度、又は、撮像画像からG(緑)成分を抽出して作成したG成分画像の輝度を二値化し、二値化によって得られる画像明部の面積比の経時変化に基いて炉内状況又は設備状況を判定する」点(以下、「相違点」という。)が記載されていない。
また、甲第2号証、甲第3号証、甲8号証ないし甲第10号証にも、上記相違点については記載も示唆もされていない。また、甲第11号証は単に用語を説明するにすぎない。
したがって、上記相違点は、実質的な相違点であるし、また、甲第1号証ないし甲第10号証に記載された発明をどのように組み合わせても、上記相違点に係る本件発明1の発明特定事項を導き出すことはできない。
よって、本件発明1は、甲第1号証に記載された発明であるとはいえないし、甲第1号証ないし甲第10号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

(イ)特許異議申立人の主張
a 特許異議申立人は、甲第1号証の【0007】、【0008】の記載によれば、甲1発明では、撮像して得られるR(赤)成分及びG(緑)成分の二色輝度に基づいて得られる温度分布から形成されるヒストグラムの形状を操業良好時のヒストグラムと比較することにより、レースウェイの状況や炉内の状況が判定されているから、「(i)撮像画像からR(赤)成分を抽出して作成したR成分画像の輝度、又は、撮像画像からG(緑)成分を抽出して作成したG成分画像の輝度に基づいて炉内状況又は設備状況を指数化して、その指数又はその指数の経時変化に基づいて炉内状況又は設備状況を判定」しているといえる旨主張(特許異議申立書の48頁2ないし8行)している。
しかし、本件訂正請求により、特許異議申立人の主張する本件発明1の上記箇所は「(i)撮像画像からR(赤)成分を抽出して作成したR成分画像の輝度、又は、撮像画像からG(緑)成分を抽出して作成したG成分画像の輝度を二値化し、二値化によって得られる画像明部の面積比の経時変化に基づいて炉内状況又は設備状況を判定」することに訂正され、この点は上記(ア)でみたように甲各号証に記載されていない。
また、撮影画像の輝度について、本件発明1は、「撮像画像からR(赤)成分を抽出して作成したR成分画像の輝度、又は、撮像画像からG(緑)成分を抽出して作成したG成分画像の輝度」と特定されているから、R成分画像の輝度又はG成分画像の輝度のいずれか一方であるのに対し、甲1発明は、「R(赤)成分画像及びG(緑)成分画像の二色輝度」と特定されているから、R成分画像の輝度及びG成分画像の輝度の両方が必要である。
そうすると、両者の撮影画像の輝度は明らかに相違しているともいえる。
したがって、特許異議申立人の上記主張は採用できない。

b 特許異議申立人は、甲第2号証及び甲第3号証の記載を踏まえると、カラー画像撮像装置で得られるRGB信号(赤、緑、青の3原色信号)のうち、撮像対象物に応じて、最も有効な成分画像を用いて撮像画像を解析することは、何ら格別のものではない旨主張(特許異議申立書の49頁12ないし14行)している。
ここで、本件発明1は、「高炉の羽口の観察孔に配置したカラー画像撮像装置で、レースウエイ内の燃焼状態を経時的に撮像し、撮像画像に基づいて炉内状況又は設備状況を判定する操業判定方法」において、「撮像画像からR(赤)成分を抽出して作成したR成分画像の輝度、又は、撮像画像からG(緑)成分を抽出して作成したG成分画像の輝度を二値化し、二値化によって得られる画像明部の面積比の経時変化に基づいて炉内状況又は設備状況を判定する」するものである。
これに対して、前記(1)イによれば、甲第2号証には、コークス炉内を撮影した画像を解析しコークス炉の炉壁状態を診断する方法において、コークス塊の検出には、B画像が最も有効であること、及び、炎・粉塵の検出には、R画像は明るすぎ、また、B画像は暗すぎるため、最も有効なG画像を選択することが記載されているものの、当該記載事項は、上記「第6 2.甲第2号証(2d)」の摘示事項から、そもそも「コークス炉の炉壁状態」を検出するための技術手段であり、「高炉の羽口の観察孔に配置したカラー画像撮像装置で、レースウエイ内の燃焼状態を経時的に撮像し、撮像画像に基づいて炉内状況又は設備状況を判定する操業判定方法」に関するものではない。
また、前記1(ウ)によれば、甲第3号証には、高炉炉内のレースウェイ部へ光源を照射する光源照射装置、炉内からの反射光を撮像する撮像装置及び撮像信号を画像処理する画像処理装置とからなる高炉レースウェイ部観察装置において、上記炉内から反射光の通過位置、上記撮像装置の前方に低波長可視光線域の反射光を通過させるフイルターを配置することを特徴とする高炉レースウェイ部観察装置は、コークスや溶銑、熔融スラグなどの固体、液体から発する光と、燃焼ガスから発する光を分離して、前者の映像をより鮮明にするために、400ないし600nmの波長をよく透過させる光フィルターを介してレースウェイ一部から発生する光画像を撮像装置である高速度カメラに導いているので、燃焼ガスからの発色光に影響されずに鮮明な画像を得られることが記載されているものの、当該記載事項における撮像装置は、カラー画像撮像装置ではないし、当該記載事項は、「撮像画像からR(赤)成分を抽出して作成したR成分画像の輝度、又は、撮像画像からG(緑)成分を抽出して作成したG成分画像の輝度を二値化し、二値化によって得られる画像明部の面積比の経時変化に基づいて炉内状況又は設備状況を判定」することに関するものでもない。
したがって、甲第2号証及び甲第3号証には、「高炉の操業状況判定方法」において、「撮像装置」が「カラー画像撮像装置」であって、「撮像画像からR(赤)成分を抽出して作成したR成分画像の輝度、又は、撮像画像からG(緑)成分を抽出して作成したG成分画像の輝度を二値化し、二値化によって得られる画像明部の面積比の経時変化に基づいて炉内状況又は設備状況を判定」する点が記載されているとはいえない。
よって、特許異議申立人の上記主張は採用できない。

イ 本件発明2ないし6
本件発明2ないし6は、請求項1の発明特定事項を全て有するものであるから、前記アで検討したのと同様の理由により、本件発明2は、甲第1号証に記載された発明であるとはいえないし、また、本件発明2ないし6は、甲第1号証ないし甲第10号証に記載された発明に基づいて当業者が容易になし得るものとはいえない。

2.申立理由4(特許法第36条第6項第2号)について
特許異議申立人は、本件発明1ないし6における「指数」とは、「規準になる物、又は時期での値を100と定め、それに比べて他のもの、他の時期ではどうかを表した数値」(甲第11号証)と考えられるが、このことを考慮しても、本件発明1ないし6における「指数」及び「指数化」は、漠然とした概念を示しており明確なものとはいえないし、また、本件発明1ないし6における「指数」及び「指数化」については、本件明細書の発明の詳細な説明には、閾値による撮像画像の二値化及びこの二値化によって得られる明部の面積比以外に説明がなく、この点でも、本件発明1ないし6における「指数」及び「指数化」が、この面積比にかかわる物を示しているのか、あるいはこれ以外のものを示しているのか判然としないから、本件発明1ないし6は不明確である旨主張(特許異議申立書の65頁12行ないし最下行)している。
しかし、本件訂正請求による訂正よって、請求項1における訂正前の「G成分画像の輝度に基づいて炉内状況又は設備状況を指数化して、その指数又はその指数の経時変化に基づいて」、「G成分画像の輝度に基づいて炉内状況又は設備状況を指数化して、炉周方向の指数分布を求め、その分布又はその分布の経時変化に基づいて」との事項は、それぞれ、「G成分画像の輝度を二値化し、二値化によって得られる画像明部の面積比の経時変化に基づいて」、「G成分画像の輝度を二値化し、二値化によって得られる画像明部の面積比の炉周方向の分布又はその分布の経時変化に基づいて」に訂正され、、訂正前の「指数」及び「指数化」は、「二値化」及び「二値化によって得られる画像明部の面積比」となったから、特許異議申立人の上記主張は、特許請求の範囲の記載に基づく主張ではなくなったため採用できない。

第8 むすび
したがって、以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議の申立理由によっては、請求項1ないし6に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1ないし6に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
高炉の操業状況判定方法
【技術分野】
【0001】
本発明は、羽口の観察孔に設置した撮像装置で撮像した画像の輝度に基づいて、炉内状況又は設備状況を指数化し、該指数に基づいて該羽口や炉周方向の操業状況を判定する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高炉操業においては、炉下部に炉周方向に等間隔で配置した羽口から、熱風、酸素、微粉炭(燃料)等を吹き込んで溶銑を製造する。羽口の奥部には、送風圧によってレースウエイが形成され、ここで、高炉原料(主に、焼結鉱)が還元される。
【0003】
高炉の生産性を上げるため、通常、羽口から微粉炭を吹き込むが、レースウエイ奥部での微粉炭の燃焼状態が炉内状況(炉況)に大きく影響する。微粉炭の燃焼状態が悪化すると、高炉原料の還元に必要な熱量が充分に得られず、炉況が悪化する。
【0004】
そこで、炉内炉況を判定するため、羽口の観察孔に撮像装置を設け、レースウエイ奥部における微粉炭の燃焼状態を監視する技術、及び、レースウエイ内の温度を測定する技術が種々提案されている。
【0005】
特許文献1には、羽口に放射温度カメラを設置し、放射温度カメラで得た羽口内の温度分布を画像処理で連続的に記憶し、羽口内の温度分布を評価する方法が提案されている。
【0006】
特許文献2には、羽口覗孔部に放射温度カメラを設置し、羽口内視野の設定点の輝度を非接触で測定し、輝度を画像解析装置により温度に変換し、温度の設定期間の平均値の時系列データのスペクトル解析に基づいて、レースウェイの崩壊周期を算定してレースウェイの状態を評価する方法が提案されている。
【0007】
特許文献3には、レースウエイ内のコークス温度を、羽口後方に設けた観察孔を介して光学的に測定する際、観察孔から得られる放射光を、高速シャッタを有するテレビカメラと放射温度計に導き、テレビカメラの画像信号と放射温度計の温度信号に基づいてコークス温度を算出するレースウエイ内のコークス温度を測定する方法が提案されている。
【0008】
しかし、いずれの方法においても、画像又は画像の精度が不十分で、1つの画像で、炉内状況、例えば、微粉炭の膨張や生鉱落ちを区別して判別することは困難である。炉内状況を正確に検知するためには、連続した画像の処理が必要である。
【0009】
このことを踏まえ、特許文献4で、羽口の観察孔を通して、レースウエイ内の燃焼場の熱画像を、異なる2波長で撮像する撮像装置と、撮像装置が出力する各々の波長の画像信号をデジタル画像に変換するデジタル変換装置と、各々の波長のデジタル画像の輝度比に基づき温度分布を演算する小型計算機を備える高炉羽口レースウエイ温度分布測定装置を提案した。
【0010】
特許文献4に開示の装置によれば、画像輝度が適切な明るさになるように撮像装置の電子シャッタ露光時間を自動制御するため、ガラスの汚れや曇りなどによる観察孔の透過率の低下の影響を受け難いので、正確な温度分布を算出でき、炉況の変化を迅速かつ正確に検知できるが、撮像装置ごとに電子シャッタ露光時間を自動制御することは撮像装置の設定が異なるため、画像処理する場合、円周方向の画像処理結果の定量的な評価が困難になる。
【0011】
そこで、本出願人は、特許文献5で、高炉羽口に設けた撮像装置で、撮像装置の電子シャッタ露光時間を適切な設定に固定して撮像した熱放射輝度画像に、熱放射輝度画像おける羽口の輪郭形状が正規化円となるように幾何学変換を実施して正規化画像を生成し、正規化画像を極座標変換した後、二値化して二値化画像を生成し、二値化画像に存在する明部の正規化円の径方向での分布を利用して、炉内状態を観察する方法と装置を提案した。
【0012】
特許文献5で提案の観察方法と装置は、未溶融の鉱石が落下する生鉱落ちと、未燃焼微粉炭の像が急拡大する微粉炭膨張に着目したもので、生鉱落ちと微粉炭膨張の観察に有効に機能するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開平05-256705号公報
【特許文献2】特開平07-305105号公報
【特許文献3】特開平09-256010号公報
【特許文献4】特開2001-318002号公報
【特許文献5】特開2013-185234号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
特許文献5で提案の観察方法と装置は、生鉱落ちと微粉炭膨張の観察に有効に機能するが、高炉操業を阻害する状態は、生鉱落ちと微粉炭膨張(微粉炭吹込み形状)に限られない。
【0015】
この他、微粉炭吹込みランスの状態(ランスの詰まりや振動、ランス先端への異物付着の状態)や羽口からコークスや微粉炭が逆流した状態(羽口逆流)、この逆流状態が高じて羽口が閉塞した状態(羽口閉塞)、及び、炉内に溜まった銑鉄やスラグが羽口レベルまで上昇して、羽口を溶損する可能性がある状態(ノロ湧き)等がある。
【0016】
本発明は、上記状態の発生に伴う操業条件の変更を正確かつ迅速に行うため、上記状態の発生を正確かつ迅速に検知して、高炉の羽口個別及び炉周方向における炉内状況又は設備状況を正確かつ迅速に判定することを課題とし、該課題を解決する判定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明者らは、上記課題を解決する手法について鋭意検討した。生鉱落ちと微粉炭膨張については、本出願人が特許文献5で提案した観察方法で正確に検知することができる。本発明者らは、微粉炭吹込みランスの状態、羽口逆流、羽口閉塞、ノロ湧きの発生を正確かつ迅速に検知する方法について検討した。この方法については後述する。
【0018】
本発明は、上記知見に基づいてなされたもので、その要旨は以下のとおりである。
【0019】
(1)高炉の羽口の観察孔に配置したカラー画像撮像装置で、レースウエイ内の燃焼状態を経時的に撮像し、撮像画像に基づいて炉内状況又は設備状況を判定する操業判定方法において、
(i)撮像画像からR(赤)成分を抽出して作成したR成分画像の輝度、又は、撮像画像からG(緑)成分を抽出して作成したG成分画像の輝度を二値化し、二値化によって得られる画像明部の面積比の経時変化に基づいて炉内状況又は設備状況を判定する、又は、
(ii)撮像映像からR(赤)成分を抽出して作成したR成分画像の輝度、又は、撮像画像からG(緑)成分を抽出して作成したG成分画像の輝度を二値化し、二値化によって得られる画像明部の面積比の炉周方向の分布又はその分布の経時変化に基づいて炉内状況又は設備状況を判定する
ことを特徴とする高炉の操業状況判定方法。
【0020】
(2)前記炉内状況が、生鉱落ちであることを特徴とする前記(1)に記載の高炉の操業状況判定方法。
【0021】
(3)前記炉内状況が、微粉炭吹込み形状であることを特徴とする前記(1)に記載の高炉の操業状況判定方法。
【0022】
(4)前記設備状況が、微粉炭吹込みランスの状況であることを特徴とする前記(1)に記載の高炉の操業状況判定方法。
【0023】
(5)前記設備状況が、羽口からコークスや微粉炭が逆流した状況、又は、羽口が閉塞した状況であることを特徴とする前記(1)に記載の高炉の操業状況判定方法。
【0024】
(6)前記設備状況が、ノロ湧きであることを特徴とする前記(1)に記載の高炉の操業状況判定方法。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、高炉の炉周方向における炉内状況又は設備状況の変化を正確かつ迅速に検知して判定することができるので、上記変化に伴う操業条件の変更を正確かつ迅速に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】高炉操業における炉内状況の変化とそれに対する操業条件の変更を示す図である。
【図2】本発明の一実施態様を示す図である。
【図3】撮像した静止画像(RGB画像)から輝度のR成分を抽出して作成したR成分画像を示す図である。
【図4】R成分画像の輝度を指数化し、羽口逆流又は羽口閉塞を検知する画像処理手順を示す図である。
【図5】レースウェイ内の燃焼状態を0.5秒間隔で撮像した静止画像(RGB画像)からR成分を抽出して作成したR成分画像を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面に基づいて本発明について説明する。
【0028】
図1に、高炉操業における炉内状況の変化とそれに対する操業条件の変更を示す。例えば、生鉱落ちが発生し、羽口の観察孔を通して撮像したレースウエイの画像の輝度が低下した場合、炉熱が低下したのであり、その影響は、当然に、融着帯の形状の変化に顕れる(図1、参照)。一方、羽口の観察孔を通して撮像したレースウエイの画像の輝度が上昇した場合、炉熱が上昇したのであり、その影響は、当然に、融着帯の形状の変化に顕れる(図1、参照)。
【0029】
融着帯の形状の変化は、ガス流れの乱れ、通気性の変動、及び、炉内の熱負荷の変動を誘引し、さらに、これらの乱れ・変動は、融着帯の形状の変化を誘引するので、高炉操業は安定しない。
【0030】
従来は、図1のXに示すように、例えば、出銑時の溶銑温度など従来より取得可能な還元指標の変化を確認してから、操業条件(微粉炭吹込み量、熱風送風量等)を変更していた。しかし、溶銑温度などの還元指標が確認できるのは操業条件を変更してから数時間後であり、操業条件を変更してから確認までに時間を要した。
【0031】
この間に、融着帯の形状は、ガス流れの乱れ、通気性の変動、及び、炉内の熱負荷の変動を受けて変化するので、上記確認後の操業条件の変更が、融着帯の形状の安定化に有効に機能しない場合がある。時には、炉内のガスの流れや通気性、融着帯の形状の安定化を図るための操業条件の変更が遅れたために、融着帯の形状の不安定化を誘引し、高炉の炉内状況が悪循環に陥ることがある。
【0032】
そこで、本発明の高炉の操業状況判定方法(以下「本発明判定方法」ということがある。)においては、炉況の変化に基づく操業条件の変更を、従来、図1のXのタイミングで実施していたものから、図1のYに示すタイミングで、正確かつ迅速に行うため、レースウエイの燃焼状態を撮像した画像に基づいて、炉周方向の炉内状況又は設備状況を正確かつ迅速に判定することを基本思想とする。
【0033】
具体的には、本発明判定方法は、高炉の羽口の観察孔に配置したカラー画像撮像装置で、レースウエイ内の燃焼状態を経時的に撮像し、撮像画像に基づいて炉内状況又は設備状況を判定する操業判定方法において、
(i)撮像画像からR(赤)成分を抽出して作成したR成分画像の輝度、又は、撮像画像からG(緑)成分を抽出して作成したG成分画像の輝度を二値化し、二値化によって得られる画像明部の面積比の経時変化に基づいて炉内状況又は設備状況を判定する、又は、
(ii)撮像映像からR(赤)成分を抽出して作成したR成分画像の輝度、又は、撮像画像からG(緑)成分を抽出して作成したG成分画像の輝度を二値化し、二値化によって得られる画像明部の面積比の炉周方向の分布又はその分布の経時変化に基づいて炉内状況又は設備状況を判定する
ことを特徴とする。
【0034】
図2に、本発明判定方法の一実施態様を示す。
【0035】
高炉炉体3に設けた羽口4に挿入した熱風供給管6から熱風9が炉内に高圧で吹き込まれ、レースウエイ1が形成されている。熱風供給管6には、レースウエイ1に微粉炭8を吹き込む微粉炭吹込み管5が配置されている。図2では、二本の微粉炭吹込み管が配置されているが、一本の配置でもよい。
【0036】
レースウエイ1ではコークスや微粉炭が燃焼して、一酸化炭素が発生する高温燃焼反応が生じている。熱風供給管6の観察孔7には、レースウエイ1内の燃焼状態を撮像する撮像装置10が配置されている。
【0037】
撮像装置10は、撮像制御装置11で制御されて、直径約20mmの観察孔を通し、撮像装置から3?4m先のレースウエイ1内の燃焼状態を撮像する。撮像画像は、画像表示装置12で表示されるとともに、画像処理装置13で、所要の指数化処理が施され、炉内状況を判定するための基礎情報となる。
【0038】
ここで、図3に、カラーCCDカメラで、レースウェイ内の燃焼状態を撮像した静止画像(RGB画像)から、画像処理装置で輝度のR(赤)成分を抽出して作成したR成分画像を示す。カラーCCDカメラのRGB信号のうち、R成分の輝度やG(緑)成分の輝度は、温度との相関があることを予め確認しており、ここではR成分画像を示す。なお、2本の微粉炭吹込みランスが熱風供給管に挿入されている場合の画像である。
【0039】
次に、操業条件の変更を正確かつ迅速に行うために、R成分画像の輝度を指数化して炉内状況又は設備状況の変化を正確かつ迅速に検知する画像処理手順について説明する。
【0040】
生鉱落ちと微粉炭膨張(微粉炭吹込み形状)については、本出願人が特許文献5で提案した観察方法で正確に検知することができる。
【0041】
例えば、微粉炭膨張(微粉炭吹込み形状)の場合、炉況が良いと、微粉炭が炉内に吸い込まれていくような形状となるが、通気性が低下し炉況が悪化している場合、微粉炭が撮像画像を埋め尽くすような膨張した形状となる。
【0042】
そして、経時的に撮像した画像(R成分画像又はG成分画像)の輝度に基づいて、生鉱落ち、又は、微粉炭吹込み形状を指数化して、炉周方向の指数分布を求め、該指数分布の経時変化に基づいて、炉周方向の炉内状況を3次元的に判定することができる。
【0043】
図4に、R成分画像の輝度を指数化し、羽口逆流又は羽口閉塞を検知する画像処理手順を示す。
【0044】
R成分画像において、処理領域の最高輝度と最低輝度を取得し、次に、画像の輝度を判定する。撮像画像の輝度がある一定以上ない場合(図中「NO(1)」の場合)、操業条件の迅速な変更のために警報を出力する。
【0045】
一方、撮像画像の輝度がある一定以上ある場合(図中の「YES(1)」)、その画像を二値化するための閾値を演算し、この閾値に基づいて二値化を行い、画像における明部の面積比を演算する。
【0046】
この面積比が基準値未満であれば(図中「NO(2)」の場合)、基準値未満が継続する時間を判定し、継続時間が基準値未満であれば(図中「NO(3)」の場合)、その後の処理をせず、継続時間が基準値以上であれば(図中「YES(3)」の場合)、操業条件の迅速な変更のために警報を出力する。
【0047】
図4に示す画像処理手順を所定の時間間隔を置いて行えば、羽口逆流及び羽口閉塞の経時変化を3次元的に判定することができる。
【0048】
また、微粉炭吹込みランスの状態やノロ湧きとの炉内状況及び設備状態については、図4に示す画像処理手順と同様に撮像画像の輝度を用いた画像処理手順で経時的に検知することができる。
【実施例】
【0049】
次に、本発明の実施例について説明するが、実施例での条件は、本発明の実施可能性及び効果を確認するために採用した一条件例であり、本発明は、この一条件例に限定されるものではない。本発明は、本発明の要旨を逸脱せず、本発明の目的を達成する限りにおいて、種々の条件を採用し得るものである。
【0050】
(実施例1)
図2に示す撮像装置で、レースウエイ内の燃焼状態を0.5秒間隔で撮像したRGB画像を得た。RGB画像からR成分を抽出してR成分画像を作成した。図5に、作成したR成分画像の一例を示す。R成分画像の輝度を指数化し、炉周方向の指数分布を経時的に観察した。その結果、3.0秒後の画像から、生鉱落ちが発生していることが判明したので、直ちに、操業オペレータへの警告ガイダンスを行い、図1のYに示すように、操業条件の変更(増熱アクション)を実施した。
【産業上の利用可能性】
【0051】
前述したように、本発明によれば、高炉の炉周方向における炉内状況又は設備状況の変化を正確かつ迅速に検知して判定することができるので、上記変化に伴う操業条件の変更を正確かつ迅速に行うことができる。よって、本発明は、鉄鋼産業において利用可能性が高いものである。
【符号の説明】
【0052】
1 レースウエイ
2 炉内充填物
3 高炉炉体
4 羽口
5 微粉炭吹込み管
6 熱風供給管
7 観察孔
8 微粉炭
10 撮像装置
11 撮像制御装置
12 画像表示装置
13 画像処理装置
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高炉の羽口の観察孔に配置したカラー画像撮像装置で、レースウエイ内の燃焼状態を経時的に撮像し、撮像画像に基づいて炉内状況又は設備状況を判定する操業判定方法において、
(i)撮像画像からR(赤)成分を抽出して作成したR成分画像の輝度、又は、撮像画像からG(緑)成分を抽出して作成したG成分画像の輝度を二値化し、二値化によって得られる画像明部の面積比の経時変化に基づいて炉内状況又は設備状況を判定する、又は、
(ii)撮像映像からR(赤)成分を抽出して作成したR成分画像の輝度、又は、撮像画像からG(緑)成分を抽出して作成したG成分画像の輝度を二値化し、二値化によって得られる画像明部の面積比の炉周方向の分布又はその分布の経時変化に基づいて炉内状況又は設備状況を判定する
ことを特徴とする高炉の操業状況判定方法。
【請求項2】
前記炉内状況が、生鉱落ちであることを特徴とする請求項1に記載の高炉の操業状況判定方法。
【請求項3】
前記炉内状況が、微粉炭吹込み形状であることを特徴とする請求項1に記載の高炉の操業状況判定方法。
【請求項4】
前記設備状況が、微粉炭吹込みランスの状況であることを特徴とする請求項1に記載の高炉の操業状況判定方法。
【請求項5】
前記設備状況が、羽口からコークスや微粉炭が逆流した状況、又は、羽口が閉塞した状況であることを特徴とする請求項1に記載の高炉の操業状況判定方法。
【請求項6】
前記設備状況が、ノロ湧きであることを特徴とする請求項1に記載の高炉の操業状況判定方法。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2018-08-03 
出願番号 特願2013-185720(P2013-185720)
審決分類 P 1 651・ 121- YAA (C21B)
P 1 651・ 537- YAA (C21B)
P 1 651・ 536- YAA (C21B)
P 1 651・ 113- YAA (C21B)
最終処分 維持  
前審関与審査官 坂本 薫昭  
特許庁審判長 千葉 輝久
特許庁審判官 結城 佐織
中澤 登
登録日 2017-07-28 
登録番号 特許第6179286号(P6179286)
権利者 新日鐵住金株式会社
発明の名称 高炉の操業状況判定方法  
代理人 三橋 真二  
代理人 亀松 宏  
代理人 古賀 哲次  
代理人 中村 朝幸  
代理人 石田 敬  
代理人 石田 敬  
代理人 亀松 宏  
代理人 青木 篤  
代理人 三橋 真二  
代理人 福地 律生  
代理人 齋藤 学  
代理人 古賀 哲次  
代理人 福地 律生  
代理人 青木 篤  
代理人 中村 朝幸  
代理人 齋藤 学  

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