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審決分類 審判 全部申し立て 1項2号公然実施  A61K
審判 全部申し立て 2項進歩性  A61K
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  A61K
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  A61K
管理番号 1344822
異議申立番号 異議2017-700988  
総通号数 227 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2018-11-30 
種別 異議の決定 
異議申立日 2017-10-13 
確定日 2018-08-31 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6124710号発明「ノコギリヤシエキス配合製剤」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6124710号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項[1?3]、[4?5]について訂正することを認める。 特許第6124710号の請求項1?5に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6124710号の請求項1?5に係る特許についての出願は、平成25年6月28日を出願日とするものであり、平成29年4月14日にその特許権の設定登録がされ、その後、その特許について、平成29年10月13日に特許異議申立人田中眞喜子により特許異議の申立てがされ、当審において平成30年3月6日付けで取消理由が通知され、これに対し、同年5月11日付けで訂正請求書及び意見書が提出されたので、期間を指定して意見書を提出する機会を設けたが、特許異議申立人から意見書の提出がなかったものである。

第2 平成30年5月11日付けの訂正請求について

1 訂正請求の内容
本件訂正請求による訂正の内容は、以下の訂正事項1?4のとおりである。

(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「長命草加工物」と記載されているのを「長命草粉末」に訂正する。

(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2に「長命草加工物」及び「長命草の乾燥加工物」と記載されているのを、いずれも「長命草粉末」に訂正する (請求項2の記載を引用する請求項3も同様に訂正する)。

(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項4に「長命草加工物」と記載されているのを「長命草粉末」に訂正する。

(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項5に「長命草加工物」と記載されているのを「長命草粉末」に訂正する。

2 訂正の可否に対する判断

(1)訂正事項1について
訂正前の請求項1に係る発明では、「長命草加工物」として、加工物がどういったものであるかについて特定していない。これに対して、訂正後の請求項1に係る発明では、これを「長命草粉末」に特定するものであるから、訂正事項1は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。

また、願書に添付した明細書(以下「本件明細書」ともいう。)には、以下の記載がある。
「本発明が対象とする長命草加工物には、長命草の全草またはその一部(葉、茎、根、花等)をそのまま乾燥したもの、乾燥後に破砕若しくは粉砕するか又は破砕若しくは粉砕後に乾燥したもの(乾燥破砕物、乾燥粉砕物)、搾汁またはその乾燥物、及び抽出物またはその乾燥物(エキス、乾燥エキス)が含まれる。好ましくは、長命草の葉、茎、若しくは根(好ましくは葉若しくは根)、またはこれらを含む部位の加工物であり、長命草加工物として、好ましくは乾燥破砕物若しくは乾燥粉砕物、または搾汁若しくはその乾燥物を挙げることができる。」(段落【0021】)
「【実施例】
・・・
なお、下記の試験例および実施例で用いたノコギリヤシエキス、長命草加工物、及びヒハツ加工物は下記の通りである。
・ノコギリヤシエキス(インデナジャパン株式会社製)
・長命草加工物:長命草粉末(日本ランチェスター工業株式会社製)
・ヒハツ加工物:ヒハツエキス粉末(丸善製薬株式会社製)。」(段落【0054】?【0056】)
そうすると、本件明細書には「長命草加工物」として「長命草粉末」を用いることが開示されているといえる。したがって、訂正事項1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「本件明細書等」ともいう。)に記載した事項の範囲内においてするものである。

(2)訂正事項2について
訂正前の請求項2に係る発明では、「長命草加工物」及び「長命草の乾燥加工物」として、加工物がどういったものであるかについて特定していない。これに対して、訂正後の請求項2に係る発明では、これらを「長命草粉末」に特定するものである。
また、訂正後の請求項3は、訂正後の請求項2の記載を引用することにより、訂正後の請求項3に係る発明において、「長命草加工物」を「長命草粉末」に特定するものである。
したがって、訂正事項2は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。

また、本件明細書には、以下の記載がある。
「本発明が対象とする長命草加工物には、長命草の全草またはその一部(葉、茎、根、花等)をそのまま乾燥したもの、乾燥後に破砕若しくは粉砕するか又は破砕若しくは粉砕後に乾燥したもの(乾燥破砕物、乾燥粉砕物)、搾汁またはその乾燥物、及び抽出物またはその乾燥物(エキス、乾燥エキス)が含まれる。好ましくは、長命草の葉、茎、若しくは根(好ましくは葉若しくは根)、またはこれらを含む部位の加工物であり、長命草加工物として、好ましくは乾燥破砕物若しくは乾燥粉砕物、または搾汁若しくはその乾燥物を挙げることができる。」(段落【0021】)
「【実施例】
・・・
なお、下記の試験例および実施例で用いたノコギリヤシエキス、長命草加工物、及びヒハツ加工物は下記の通りである。
・ノコギリヤシエキス(インデナジャパン株式会社製)
・長命草加工物:長命草粉末(日本ランチェスター工業株式会社製)
・ヒハツ加工物:ヒハツエキス粉末(丸善製薬株式会社製)。」(段落【0054】?【0056】)

そうすると、本件明細書には「長命草加工物」及び「長命草の乾燥加工物」として、「長命草粉末」を用いることが開示されているといえるから、訂正事項2は、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。

(3)訂正事項3、4について
訂正事項3は、訂正前の特許請求の範囲の請求項4に「長命草加工物」と記載されているものを「長命草粉末」に訂正するものであり、訂正事項4は、訂正前の特許請求の範囲の請求項5に「長命草加工物」と記載されているものを「長命草粉末」に訂正するものである。
そうすると、訂正事項3、4は、訂正事項1と同一の訂正に係るものであり、上記「(1)訂正事項1について」に説示したとおり、訂正事項1は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではなく、かつ、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。
したがって、訂正事項3、4も、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではなく、かつ、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。

(4)一群の請求項について
訂正事項1、2は、一群の請求項1?3に係るものであるから、一群の請求項ごとになされたものである。
また、訂正事項3、4は、一群の請求項4?5に係るものであるから、一群の請求項ごとになされたものである。

(5)まとめ
したがって、訂正事項1?4は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項の規定並びに同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、平成30年5月11日付けの訂正請求書による訂正を認める。

第3 本件訂正発明
本件特許の請求項1?5に係る発明は、平成30年5月11日付けの訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1?5に記載された、以下のとおりのもの(以下、それぞれ、「本件訂正発明1」、「本件訂正発明2」・・・「本件訂正発明5」といい、これらをまとめて「本件訂正発明」ともいう。)と認める。

「【請求項1】
ノコギリヤシエキスと長命草粉末を含有することを特徴とする、ノコギリヤシエキス配合製剤。
【請求項2】
長命草粉末の配合割合が、ノコギリヤシエキス100重量部に対して、長命草粉末の割合に換算して10?100重量部であることを特徴とする、請求項1記載のノコギリヤシエキス配合製剤。
【請求項3】
さらにヒハツ加工物を含有する、請求項2に記載するノコギリヤシエキス配合製剤。
【請求項4】
ノコギリヤシエキス及び長命草粉末を併用することを特徴とする、ノコギリヤシエキスの変色抑制方法。
【請求項5】
ノコギリヤシエキスと長命草粉末の両方の変色を抑制する方法である、請求項4記載の方法。」

第4 判断
1 取消理由通知書に記載した取消理由について

(1) 取消理由の概要
本件訂正前の請求項1?5に係る特許に対して平成30年3月6日付けで特許権者に通知した取消理由の概要は、以下のとおりである。

ア) 取消理由ア
本件特許の特許請求の範囲の請求項1?2に係る発明は、刊行物1(「健康野菜のエキス配合」と題する新聞記事 京都新聞 2010年10月23日 地元経済面 朝刊 11ページ。以下、「甲第1号証」という。)に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができないものであるから、これらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。」というものである。

イ) 取消理由イ
本件特許の特許請求の範囲の請求項1に係る発明は、刊行物2(「屋久島産植物「ボタンボウフウ」 排尿改善成分を確認」と題する新聞記事 京都新聞 2012年8月30日 地元経済面 朝刊 13ページ。以下、「甲第2号証」という。)に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができないものであるから、この発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。」というものである。

ウ) 取消理由ウ
取消理由ウは、「請求項1?5に係る発明は、発明の詳細な説明に記載されたものではないので、請求項1?5に係る特許は、特許法第36第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。」というものである。

(2) 判断
ア) 取消理由アについて
甲第1号証には、以下の事項が記載されている。

「タカラバイオは、健康野菜ボタンボウフウのエキスを配合したサプリメント「ノコギリヤシ+イソサミジン」=写真=を11月16日に発売する。健康に良いとされる成分「イソサミジン」を豊富に含むボタンボウフウのエキスを1粒当たり21ミリグラム、ノコギリヤシの果実のエキスも同約107ミリグラム配合した。摂取の目安は1日3粒で、90粒入り。5040円。」

この記載によれば、甲第1号証には以下の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。

「a.ノコギリヤシの果実のエキスと
b.ボタンボウフウのエキスを含む、
c.サプリメントであって、
d.ボタンボウフウエキスを1粒当たり21ミリグラム、ノコギリヤシの果実のエキスも同約107ミリグラム含む、
サプリメント。」

本件訂正発明1と甲1発明とを対比する。
特許明細書の発明の詳細な説明に「長命草は、セリ科カワラボウフウ属に属し、ボタンボウフウとも呼ばれる多年草植物である」(段落【0004】)と記載されていることから、甲1発明の「ボタンボウフウ」は、本件訂正発明1の「長命草」に相当する。
本件訂正発明1の「長命草粉末」について、特許明細書の発明の詳細な説明に「本発明が対象とする長命草加工物には、長命草の全草またはその一部(葉、茎、根、花等)をそのまま乾燥したもの、乾燥後に破砕若しくは粉砕するか又は破砕若しくは粉砕後に乾燥したもの(乾燥破砕物、乾燥粉砕物)、搾汁またはその乾燥物、及び抽出物またはその乾燥物(エキス、乾燥エキス)が含まれる。好ましくは、長命草の葉、茎、若しくは根(好ましくは葉若しくは根)、またはこれらを含む部位の加工物であり、長命草加工物として、好ましくは乾燥破砕物若しくは乾燥粉砕物、または搾汁若しくはその乾燥物を挙げることができる。」(段落【0021】)と記載されていることから、本件訂正発明1の「長命草粉末」は、「長命草の全草またはその一部(葉、茎、根、花等)をそのまま乾燥したもの、乾燥後に破砕若しくは粉砕するか又は破砕若しくは粉砕後に乾燥したもの(乾燥破砕物、乾燥粉砕物)」であるとされ、「長命草の全草またはその一部(葉、茎、根、花等)の抽出物またはその乾燥物(エキス、乾燥エキス)」とは別異のものであることが明記されている。
そうすると、甲1発明の「ボタンボウフウのエキス」は、本件訂正発明1の「長命草粉末」ではないから、本件訂正発明1と甲1発明を対比すると、少なくとも下記の相違点1で相違している。

<相違点1>
本件訂正発明1は、「長命草粉末」を含有するものであるのに対し、甲1発明は、「ボタンボウフウのエキス」を含有するものである点。

そうすると、本件訂正発明1は、甲第1号証に記載された発明ではない。

本件訂正発明2と甲1発明とを対比する。
本件訂正発明2は、本件訂正発明1を特定するための事項を全て備え、されらに「長命草粉末の配合割合が、ノコギリヤシエキス100重量部に対して、長命草粉末の割合に換算して10?100重量部であること」を特定したものであるところ、上述のとおり、本件訂正発明1は、甲第1号証に記載された発明ではない。
そうすると、本件訂正発明2も、甲第1号証に記載された発明ではない。

したがって、本件訂正発明1、2についての特許は、取消理由アによって取り消すべきものであるとすることはできない。

イ) 取消理由イについて
甲第2号証には、以下の事項が記載されている。

「タカラバイオは、鹿児島県屋久島産の植物「ボタンボウフウ」に排尿機能の改善作用があることを動物実験で突き止めたとして、30日に名古屋市内で開かれる日本排尿機能学会学術大会で発表する。
ボタンボウフウはセリ科の植物で、食用されている。屋久島産に多く含む成分「イソサミジン」がぼうこうや前立腺の筋肉を弛緩させる働きが動物細胞の研究で分かったことから、静岡県立大薬学部の山田静雄教授(薬物動態学)との共同研究でラットの排尿機能の変化を調べた。
実験はラットにボタンボウフウエキスを体重1キロ当たり100ミリグラム経口投与し、1時間後に水を飲ませてから2時間後の排尿状況を測定。その結果、1時間当たりの排尿回数は投与なしの3回から2回に減り、1回当たりの量は25%増えることを確認した、という。
また、男性の排尿機能改善に利用されるノコギリヤシ果実エキスと同時摂取すると、さらに排尿量の増加が見られたという。
同社は2010年から両エキスを機能性素材とした健康食品を販売している。」

この記載によれば、甲第2号証には以下の発明(以下、「甲2発明」という。)が記載されていると認められる。

「ボタンボウフウエキス及びノコギリヤシ果実エキスを機能性素材とした健康食品」

本件訂正発明1の「長命草粉末」について、特許明細書の発明の詳細な説明に「本発明が対象とする長命草加工物には、長命草の全草またはその一部(葉、茎、根、花等)をそのまま乾燥したもの、乾燥後に破砕若しくは粉砕するか又は破砕若しくは粉砕後に乾燥したもの(乾燥破砕物、乾燥粉砕物)、搾汁またはその乾燥物、及び抽出物またはその乾燥物(エキス、乾燥エキス)が含まれる。好ましくは、長命草の葉、茎、若しくは根(好ましくは葉若しくは根)、またはこれらを含む部位の加工物であり、長命草加工物として、好ましくは乾燥破砕物若しくは乾燥粉砕物、または搾汁若しくはその乾燥物を挙げることができる。」(段落【0021】)と記載されていることから、本件訂正発明1の「長命草粉末」は、「長命草の全草またはその一部(葉、茎、根、花等)をそのまま乾燥したもの、乾燥後に破砕若しくは粉砕するか又は破砕若しくは粉砕後に乾燥したもの(乾燥破砕物、乾燥粉砕物)」であるとされ、「長命草の全草またはその一部(葉、茎、根、花等)の抽出物またはその乾燥物(エキス、乾燥エキス)」とは別異のものであることが明記されている。
そうすると、甲2発明の「ボタンボウフウエキス」は、本件訂正発明1の「長命草粉末」ではないから、本件訂正発明1と甲2発明を対比すると、少なくとも下記の相違点2で相違している。

<相違点2>
本件訂正発明1は、「長命草粉末」を含有するものであるのに対し、甲2発明は、「ボタンボウフウエキス」を含有するものである点。

そうすると、本件訂正発明1は、甲第2号証に記載された発明ではないから、本件訂正発明1についての特許は、取消理由イによって取り消すべきものであるとすることはできない。


ウ) 取消理由ウについて
特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第1号に規定する要件(いわゆるサポート要件)に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らして当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。

本件訂正発明は、ノコギリヤシエキスの色調の変化、つまり変色が抑制されてなる耐変色性のノコギリヤシエキス配合製剤を提供することを発明が解決しようとする課題とするものである(段落【0008】)と認められる。
また、本件訂正発明は、「長命草粉末」を発明を特定するための事項として含むものである。

発明の詳細な説明には、「ノコギリヤシエキス(インデナジャパン株式会社製)」に「長命草粉末(日本ランチェスター工業株式会社製)」を配合した製剤を調製し、その耐変色性を評価したことが記載されており(段落【0055】?【0062】)、この記載によれば、当業者は、「長命草粉末」を発明を特定するための事項として含む本件訂正発明が上記課題(変色の抑制)を解決することができるものであると理解する。

そうすると、本件訂正発明は、発明の詳細な説明の記載により当業者がその課題を解決することができると認識することができる範囲のものであると認められる。

したがって、本件請求項1?5についての特許は、取消理由ウによって取り消すべきものであるとすることはできない。


2 取消理由通知書に記載しなかった取消理由について

(1) 取消理由通知書に記載しなかった取消理由の概要
取消理由通知書に記載しなかった取消理由の概要は、以下のとおりである。

エ) 取消理由エ
本件特許の特許請求の範囲の請求項4?5に係る発明は、甲第1号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができないものであるから、これらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。

オ) 取消理由オ
本件特許の特許請求の範囲の請求項1、2、4、5に係る発明は、甲第1、2号証及び刊行物3(「屋久島産植物「ボタンボウフウ」 排尿改善成分を確認」と題する新聞記事 京都新聞 2012年8月30日 地元経済面 朝刊 13ページ。以下、「甲第3号証」という。)によれば、公然実施された発明であり、特許法第29条第1項第2号の規定により特許を受けることができないものであるから、これらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。

カ) 取消理由カ
本件特許の特許請求の範囲の請求項1?5に係る発明は、甲第1?3号証及び刊行物4(タカラバイオ株式会社ウエブサイト 健康食品事業紹介ページ「ボタンボウフウ由来イソサミジンとノコギリヤシとの併用効果」と題する記事 http://agribio.takara-bio.co.jp/botanbouhu/botanbouhu05.html 2017年8月21日確認。以下、「甲第4号証」という。)、刊行物5(特開2011-037829号公報。以下、「甲第5号証」という。)に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、これらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。

キ) 取消理由キ
本件特許の特許請求の範囲の請求項4?5に係る発明は、「併用する」を発明を特定するための事項として含むところ、「併用する」とは、具体的にどのような態様で併用するかが本件明細書には記載されておらず、明確ではないので、本件特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満足しない出願に対してなされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。

(2) 判断
エ) 取消理由エについて
本件訂正発明4と甲1発明を対比すると、少なくとも下記の相違点3、4で相違している。

<相違点3>
本件訂正発明4は、「変色抑制方法」の発明であるのに対し、甲1発明は、「サプリメント」の発明である点。

<相違点4>
本件訂正発明4は、「長命草粉末」を発明を特定するための事項(以下、「発明特定事項」という。)とするものであるのに対し、甲1発明は、「ボタンボウフウのエキス」を発明特定事項とするものである点。

そうすると、本件訂正発明4は、甲第1号証に記載された発明ではない。

また、本件訂正発明5は、本件訂正発明4を特定するための事項を全て備え、さらに「ノコギリヤシエキスと長命草粉末の両方の変色を抑制する方法である」点を特定したものであるから、本件訂正発明5と甲1発明を対比すると、少なくとも上記の相違点3、4で相違している。
そうすると、本件訂正発明5も、甲第1号証に記載された発明ではない。

したがって、本件訂正発明4?5についての特許は、取消理由エによって取り消すべきものであるとすることはできない。

オ) 取消理由オについて
取消理由オは、甲1発明が本件訂正発明1と同一であることを前提とするものであるところ、上記「1 (2) ア) 取消理由アについて」に説示したとおり、本件訂正発明1と甲1発明を対比すると、少なくとも相違点1で相違しており、甲1発明は、本件訂正発明1であるとはいえないものである。
そうすると、さらに検討するまでもなく、取消理由オは、その前提において誤っており、本件訂正発明1、2、4、5は、公然実施された発明であるとはいえない。

したがって、本件訂正発明1、2、4、5についての特許は、取消理由オによって取り消すべきものであるとすることはできない。

カ) 取消理由カについて
上記「(1) 2. 取消理由アについて」に説示したとおり、本件訂正発明1と甲1発明は、少なくとも、相違点1で相違するので、まず、相違点1について検討する。
相違点1は、「本件訂正発明1は、「長命草粉末」を含有するものであるのに対し、甲1発明は、「ボタンボウフウのエキス」を含有するものである点。」である。

これに対し、甲1発明の「サプリメント」は、タカラバイオが11月16日に発売する予定の製品であるから、商品化のための様々な検討を行った結果、「ボタンボウフウのエキス」を含む「サプリメント」として完成し、販売することとなったものであると当業者は、理解する。また、甲第1号証には、甲1発明の「サプリメント」について、「ボタンボウフウのエキス」を「長命草粉末」に変更することについて記載も示唆もない。
また、甲第2?5号証にも、甲1発明において、「ボタンボウフウのエキス」を「長命草粉末」に変更することを動機づける記載や示唆はないし、甲1発明において、「ボタンボウフウのエキス」を「長命草粉末」に変更することができるといえる技術常識もない。
したがって、当業者が、甲1発明の「サプリメント」において、「ボタンボウフウのエキス」を「長命草粉末」に変更することを容易に着想し得たとはいえない。

また、本件訂正発明1は、ノコギリヤシエキスの色調の変化を抑制することができるという効果を奏するものであるところ、この効果は、色調の変化について記載のない甲第1?5号証に記載された事項から予測することができたものであるとはいえない。

したがって、本件訂正発明1は、甲1発明と甲第1?5号証に記載された事項に基いて当業者が、容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

本件訂正発明2は、本件訂正発明1を特定するための事項を全て備え、されらに「長命草粉末の配合割合が、ノコギリヤシエキス100重量部に対して、長命草粉末の割合に換算して10?100重量部であること」を特定したものであり、本件訂正発明3は、本件訂正発明2を特定するための事項を全て備え、されらに「ヒハツ加工物を含有する」点を特定したものであるところ、上述のとおり、本件訂正発明1は、甲1発明と甲第1?5号証に記載された事項に基いて当業者が、容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
そうすると、本件訂正発明2及び本件訂正発明3も、甲1発明と甲第1?5号証に記載された事項に基いて当業者が、容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

本件訂正発明4について検討する。
上記「取消理由エについて」に説示したとおり、本件訂正発明4と甲1発明は、少なくとも、相違点3、4で相違するので、まず、相違点3について検討する。
相違点3は、「本件訂正発明4は、「変色抑制方法」の発明であるのに対し、甲1発明は、「サプリメント」の発明である点。」というものである。
これに対し、甲1発明と甲第1?5号証のいずれにも、ノコギリヤシエキスの色調の変化を抑制することについて記載がない。
また、本件訂正発明4は、ノコギリヤシエキスの色調の変化を抑制することができるという効果を奏するものであるところ、この効果は、色調の変化について記載のない甲第1?5号証に記載された事項から予測することができたものであるとはいえない。
したがって、本件訂正発明4も、甲1発明と甲第1?5号証に記載された事項に基いて当業者が、容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

本件訂正発明5は、本件訂正発明4を特定するための事項を全て備え、さらに「ノコギリヤシエキスと長命草粉末の両方の変色を抑制する方法である」点を特定したものであるところ、上述のとおり、本件訂正発明4は、甲1発明と甲第1?5号証に記載された事項に基いて当業者が、容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
そうすると、本件訂正発明5も、甲1発明と甲第1?5号証に記載された事項に基いて当業者が、容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

したがって、本件訂正発明1?5についての特許は、取消理由カによって取り消すべきものであるとすることはできない。

キ) 取消理由キについて
本件訂正発明4を特定するための事項である「併用する」について、発明の詳細な説明には以下の記載がある。
「本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねていたところ、長命草、具体的には長命草乾燥粉砕物等の長命草加工物にノコギリヤシエキスの変色を抑制する作用があることを見出し、ノコギリヤシエキスに当該長命草加工物に併用することで、従来の問題であったノコギリヤシエキスの変色が抑制でき、変色によるノコギリヤシエキス配合製剤の品質及び外観の低下が予防できることを確認した。さらに思いがけずに、長命草加工物にも認められる経時的変色が、ノコギリヤシエキスを併用することで抑制できることを見出し、本発明の効果である変色抑制効果は、ノコギリヤシエキスと長命草加工物とが相俟って得られる総合的な効果であることを確認した。また、本発明者は、ノコギリヤシエキスと長命草加工物とを併用することによって得られる変色抑制効果は、さらにこれらにヒハツ加工物を併用することで、より一層増強することを確認した。」(段落【0009】)
「 (II)ノコギリヤシエキスの変色抑制方法
本発明のノコギリヤシエキスの変色抑制方法は、ノコギリヤシエキスに長命草加工物を併用することで実施することができる。
使用するノコギリヤシエキス及び長命草加工物の形態や調製方法等は(I)に記載した通りであり、当該記載はここに援用することができる。
ノコギリヤシエキスに対する長命草加工物の配合割合は、ノコギリヤシエキスの経時的変色が抑制される割合であればよく、その限りにおいて特に制限されるものではない。なお、ノコギリヤシエキスに長命草加工物を配合することでノコギリヤシエキスの変色が抑制できるか否かは、(I)に記載するように、加速試験法を実施し、試験前後の色調変化から長命草加工物併用の効果を評価することで決定することができる。当該記載もここに援用することができる。
ノコギリヤシエキスに対する長命草加工物の配合割合は、制限されないものの、通常、ノコギリヤシエキス100重量部に対して、長命草の乾燥加工物の割合に換算して10?100重量部を挙げることが出来る。好ましくは30?70重量部である。
上記の割合及び範囲でノコギリヤシエキスに長命草加工物を併用することで、ノコギリヤシエキスの経時的変色が抑制できるという効果を得ることができ、また同時に長命草加工物の経時的変色をも抑制することができる。
さらにノコギリヤシエキスの経時的変色の抑制効果は、ノコギリヤシエキス及び長命草加工物に加えて、ヒハツ加工物を併用することで一層増強させることができる。ここでヒハツ加工物の配合割合は、ノコギリヤシエキス100重量部に対して、ヒハツの乾燥エキスの割合に換算して5重量部以上を挙げることができる。」(段落【0049】?【0054】)

そうすると、請求項4の「併用する」の意味は、ノコギリヤシエキスに長命草粉末を配合することであると理解することができるから、本件訂正発明4?5は明確である。

したがって、本件請求項4?5についての特許は、取消理由キによって取り消すべきものであるとすることはできない。


4.むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知書に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項1?5に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1?5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノコギリヤシエキスと長命草粉末を含有することを特徴とする、ノコギリヤシエキス配合製剤。
【請求項2】
長命草粉末の配合割合が、ノコギリヤシエキス100重量部に対して、長命草粉末の割合に換算して10?100重量部であることを特徴とする、請求項1記載のノコギリヤシエキス配合製剤。
【請求項3】
さらにヒハツ加工物を含有する、請求項2に記載するノコギリヤシエキス配合製剤。
【請求項4】
ノコギリヤシエキス及び長命草粉末を併用することを特徴とする、ノコギリヤシエキスの変色抑制方法。
【請求項5】
ノコギリヤシエキスと長命草粉末の両方の変色を抑制する方法である、請求項4記載の方法。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2018-08-20 
出願番号 特願2013-137299(P2013-137299)
審決分類 P 1 651・ 113- YAA (A61K)
P 1 651・ 537- YAA (A61K)
P 1 651・ 121- YAA (A61K)
P 1 651・ 112- YAA (A61K)
最終処分 維持  
前審関与審査官 佐々木 大輔  
特許庁審判長 滝口 尚良
特許庁審判官 蔵野 雅昭
穴吹 智子
登録日 2017-04-14 
登録番号 特許第6124710号(P6124710)
権利者 小林製薬株式会社
発明の名称 ノコギリヤシエキス配合製剤  
代理人 特許業務法人三枝国際特許事務所  
代理人 特許業務法人三枝国際特許事務所  
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