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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  A61K
審判 全部申し立て ただし書き1号特許請求の範囲の減縮  A61K
審判 全部申し立て ただし書き3号明りょうでない記載の釈明  A61K
審判 全部申し立て 1項2号公然実施  A61K
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  A61K
審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  A61K
管理番号 1344827
異議申立番号 異議2017-701074  
総通号数 227 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2018-11-30 
種別 異議の決定 
異議申立日 2017-11-15 
確定日 2018-09-05 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6128722号発明「薬剤の服用補助用ゼリーおよびその製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6128722号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1?9〕について訂正することを認める。 特許第6128722号の請求項1?6、8、9に係る特許を維持する。 特許第6128722号の請求項7に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6128722号は、平成29年4月21日付けでその特許権の設定登録がされ、同年5月17日にその特許公報が発行され、その後、請求項1?9に係る特許に対して、同年11月15日に特許異議申立人 宮坂勝之(以下、「申立人A」という。)から、同年11月15日に特許異議申立人 藤井隆太(以下、「申立人B」という。)から、同年11月16日に特許異議申立人 キユーピー株式会社(以下、「申立人C」という。)から、同年11月16日に特許異議申立人 株式会社龍角散(以下、「申立人D」という。)から、特許異議の申立てがなされたものである。そして、その後の経緯は以下のとおりである。

平成30年 1月25日付け:取消理由の通知
同年 4月 2日 :訂正の請求及び意見書の提出(特許権者)
同年 6月15日 :意見書の提出(申立人A)
同年 6月15日 :意見書の提出(申立人D)
同年 6月18日 :意見書の提出(申立人B)
同年 6月18日 :意見書の提出(申立人C)

第2 訂正の可否
1 訂正の内容
平成30年4月2日付け訂正請求書による訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は次のとおりである。なお、訂正前の請求項1?9は一群の請求項である。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1の
「LMペクチン、寒天およびその他の増粘多糖類を含有するゲル化剤と、ゲル化促進剤とを含み、ゲル化し、薬剤の服用時に薬剤と混ぜて服用される薬剤の服用補助用ゼリーであって、」を、
「LMペクチン、寒天およびその他の増粘多糖類を含有するゲル化剤と、ゲル化促進剤と、甘味料とを含み、ゲル化し、薬剤の服用時に薬剤と混ぜて服用される薬剤の服用補助用ゼリーであって、
その他の増粘多糖類に、少なくともローカストビーンガムが含まれ、」に訂正する。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項4の
「前記その他の増粘多糖類が、ローカストビーンガム、…から選択される少なくとも1種の増粘多糖類である」を、
「前記その他の増粘多糖類が、ローカストビーンガム、…から選択される少なくとも1種の増粘多糖類であって、前記その他の増粘多糖類に少なくともローカストビーンガムが含まれる」に訂正する。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項6の
「LMペクチン、寒天およびその他の増粘多糖類を含有するゲル化剤、ゲル化促進剤、および必要に応じて加えられる任意成分の水溶液に、有機酸および/または有機酸塩を加えて水溶液のpHを3以上4未満に調整して、ゲル化させることによる請求項5に記載の薬剤の服用補助用ゼリーの製造方法」を、
「LMペクチン、寒天およびその他の増粘多糖類を含有するゲル化剤、ゲル化促進剤、甘味料、および必要に応じて加えられる任意成分の水溶液に、有機酸および/または有機酸塩を加えて水溶液のpHを3以上4未満に調整して、ゲル化させることによる請求項5に記載の薬剤の服用補助用ゼリーの製造方法であって、
前記その他の増粘多糖類に少なくともローカストビーンガムが含まれる製造方法」に訂正する。
(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項7を削除する。
(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項8の
「請求項7に記載の」を、
「請求項5に記載の」に訂正する。
(6)訂正事項6
発明の詳細な説明の【0032】の「実施例7?15」を、「実施例7?13、参考例14?15」に、【0032】(2か所)、【0034】(2か所)の「実施例14」を、「参考例14」に、【0032】(2か所)、【0034】(2か所)、【0038】、【0039】の「実施例15」を、「参考例15」に、それぞれ訂正する。

2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1
訂正事項1は、本件特許の請求項1に係る薬剤の服用補助用ゼリーの構成成分において、「甘味料」を追加し、「増粘多糖類」に少なくとも「ローカストビーンガム」が含まれることに限定するものである。
「甘味料」を追加することは、本件訂正前の請求項1を引用する請求項5を更に引用する請求項7の「さらに甘味料を含む請求項5に記載の薬剤の服用補助用ゼリー。」との記載に基づくものであり、「増粘多糖類」に少なくとも「ローカストビーンガム」が含まれることの限定は、本件発明の実施例1?13の各々において、「ローカストビーンガム」が含まれることに基づくものである。
そうすると、訂正事項1は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてしたものといえ、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。
(2)訂正事項2
訂正事項2は、本件特許の請求項4に係る薬剤の服用補助用ゼリーの構成成分において、「増粘多糖類」に少なくとも「ローカストビーンガム」が含まれることに限定するものである。
そうすると、上記(1)で示したことと同様、訂正事項2は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてしたものといえ、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。
(3)訂正事項3
訂正事項3は、本件特許の請求項6に係る薬剤の服用補助用ゼリーの製造方法における当該ゼリーの構成成分において、「甘味料」を追加し、「増粘多糖類」に少なくとも「ローカストビーンガム」が含まれることに限定するものである。
そうすると、上記(1)で示したことと同様、訂正事項3は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてしたものといえ、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。
(4)訂正事項4
この訂正は、請求項の記載を削除する訂正であり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるといえる。また、この訂正が新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないことは明らかである。
(5)訂正事項5
この訂正は、訂正事項4により請求項7が削除されたことに伴い、上記訂正前の請求項7が引用していた請求項5を引用する形式とするものであり、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであるといえる。また、この訂正が新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないことは明らかである。
(6)訂正事項6
この訂正は、訂正事項1?3の訂正に伴い、実施例ではなくなった上記訂正前の「実施例」を「参考例」とするものであり、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであって、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてしたものといえ、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。

3 むすび
以上のとおりであるから、本件訂正は特許法第120条の5第2項ただし書第1号又は第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第4項ないし第6項の規定に適合するので、本件訂正を認める。

第3 本件訂正後の請求項1?6、8、9に係る発明
本件訂正により訂正された訂正請求項1?6、8、9に係る発明(以下、「本件発明1」等という。)は、その特許請求の範囲の請求項1?6、8、9に記載された以下の事項によって特定されるとおりのものである。
【請求項1】
LMペクチン、寒天およびその他の増粘多糖類を含有するゲル化剤と、ゲル化促進剤と、甘味料とを含み、ゲル化し、薬剤の服用時に薬剤と混ぜて服用される薬剤の服用補助用ゼリーであって、
その他の増粘多糖類に、少なくともローカストビーンガムが含まれ、
LMペクチンが薬剤の服用補助用ゼリーに対して1?3重量%含まれ、
当該薬剤の服用補助用ゼリーを細断して生成されたゼリーの20±2℃の物性は、
硬さが、2000?6000N/m^(2)であり、
付着性が、200?500J/m^(3)であり、
凝集性が、0.2?0.6であり、
当該薬剤の服用補助用ゼリーを細断してから10分後のゼリーの離水が、当該薬剤の服用補助用ゼリーに対して3重量%以下である薬剤の服用補助用ゼリー。
【請求項2】
前記LMペクチンが薬剤の服用補助用ゼリーに対して1.2?2.2重量%含まれ、
当該薬剤の服用補助用ゼリーを細断して生成されたゼリーの20±2℃の物性は、
硬さが、2500?6000N/m^(2)であり、
付着性が、200?400J/m^(3)であり、
凝集性が、0.2?0.6であり、
当該薬剤の服用補助用ゼリーを細断してから10分後のゼリーの離水が、当該薬剤の服用補助用ゼリーに対して1重量%以下である請求項1に記載の薬剤の服用補助用ゼリー。
【請求項3】
薬剤の服用補助用ゼリーに対して、寒天が0.1?0.5重量%含まれ、その他の増粘多糖類が0.1?1重量%含まれている請求項1または2に記載の薬剤の服用補助用ゼリー。
【請求項4】
前記その他の増粘多糖類が、ローカストビーンガム、キサンタンガム、アラビアガム、カラギナン、ジェランガム、タラガム、グアーガム、アルギン酸、アルギン酸塩、アカシアガムおよびタマリンドガムから選択される少なくとも1種の増粘多糖類であって、前記その他の増粘多糖類に少なくともローカストビーンガムが含まれる請求項1?3のいずれか1項に記載の薬剤の服用補助用ゼリー。
【請求項5】
さらに有機酸および/または有機酸塩を含み、pHが3以上4未満である請求項1?4のいずれか1項に記載の薬剤の服用補助用ゼリー。
【請求項6】
LMペクチン、寒天およびその他の増粘多糖類を含有するゲル化剤、ゲル化促進剤、甘味料、および必要に応じて加えられる任意成分の水溶液に、有機酸および/または有機酸塩を加えて水溶液のpHを3以上4未満に調整して、ゲル化させることによる請求項5に記載の薬剤の服用補助用ゼリーの製造方法であって、
前記その他の増粘多糖類に少なくともローカストビーンガムが含まれる製造方法。
【請求項7】(削除)
【請求項8】
前記甘味料は、糖質系甘味料のうちの糖アルコール、又は、非糖質系甘味料である請求項5に記載の薬剤の服用補助用ゼリー。
【請求項9】
前記糖アルコールが、マルチトール、キシリトールおよびソルビトールから選択される少なくとも1種の糖アルコールである請求項8に記載の薬剤の服用補助用ゼリー。

第4 取消理由通知について
1 取消理由通知の概要
当審は平成30年1月25日付け取消理由通知において、概要以下のとおりの取消理由を通知した。
「A 本件特許の下記の請求項に係る発明は、本件特許の出願前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。
B 本件特許は、発明の詳細な説明の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、取り消すべきものである。
C 本件特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、取り消すべきものである。
D 本件特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、取り消すべきものである。


第2 理由Aについて
引用例1:特開2004-97114号公報(申立人D提出の甲第1号証)
引用例2:三晶株式会社ウェブページ「ペクチン」
http://sansho.co.jp/find/polthknr/pectin/
(申立人D提出の甲第2号証)
引用例3:特開2004-173678号公報
(申立人D提出の甲第3号証)
引用例4:食安発第0212001号
「特別用途食品の表示許可等について」
厚生労働省医薬食品局食品安全部長、平成21年2月12日、
9-11頁(申立人D提出の甲第4号証)
引用例5:日本薬剤学会第29年会における株式会社モリモト医薬の発表
「服薬補助ゼリーキットの開発」
http://www.morimoto-iyaku.jp/wp-content/img/download/
104_jerry_yakugakkai_201405.pdf
(申立人D提出の甲第5-1号証)
引用例6:株式会社モリモト医薬ウェブページ「商品紹介 服用支援ゼリー
eジュレオレンジ http://www.morimoto-iyaku.jp/ejyure-2
(申立人D提出の甲第5-2号証)
引用例7:国際公開第2010/113325号
(申立人D提出の甲第6号証)

第3 理由Bについて
…本件発明の詳細な説明は、当業者が本件発明1-9を実施することができる程度に明確かつ十分に記載したものとはいえない。

第4 理由Cについて
…本件発明1-9は、発明の詳細な説明に記載したものとはいえない。

第5 理由Dについて
…本件発明1-9は、明確であるとはいえない。」

2 取消理由Aについて
(1)引用例1に記載された事項
ア 「【請求項1】
ゼリー粒状物を凍結乾燥してなり、一定量の水を加えることで速やかに元のゼリーに復元するゼリー乾燥物。

【請求項5】
ゼリー粒状物が、ゲル化剤を凝固液中に注入又は滴下してゲル化してなるゼリーであること、を特徴とする請求項1又は3に記載のゼリー乾燥物。
【請求項6】
ゼリーが、キサンタンガムとローカストビーンガムの混合物、キサンタンガムとタラガムの混合物、キサンタンガムとコンニャクマンナンの混合物、ジェランガム、ネイティブジェランガム、カラギーナン、カラギーナンとローカストビーンガムの混合物、ペクチンから選ばれる少なくとも一つをゲル化したものであること、を特徴とする請求項1?5のいずれか1項に記載のゼリー乾燥物。

【請求項8】
請求項1?7のいずれか1項に記載したゼリー乾燥物に水を加え、復元したゼリーを用いてなり、薬剤とともに服用されてその嚥下を容易にし、且つ薬効を阻害しない嚥下困難者用嚥下補助剤であること、を特徴とする嚥下補助剤。」
イ 「【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、速やかに復元する乾燥ゼリーに関するものであって、嚥下補助剤、ゼリー状医薬品、デザートゼリー、インスタント食品用具材等に各種利用することができる。例えば嚥下補助剤に関しては、薬剤服用時や健康食品等の摂食時に通常の飲料水では薬剤の嚥下が困難な患者や小児、高齢者に対し、困難性や異物感などを与えることなく、薬剤の嚥下を容易にし又は促進することができる。しかも、凍結乾燥したことにより、長期間安定化、分割服用性の改善をはじめて達成したものである。

【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決すべく、薬剤の内服において薬剤を嚥下し易くする剤について種々検討した結果、特定の糊料と水とを混合し、粘度又はゼリー強度を調整することにより、上記課題を解決することとし各種のゼリーを作製して試験を行ったが、未だ充分に満足できるものを得ることはできなかった。
【0006】
そこで、ゼリーの組成や性質に着目した発想を完全に転換して、一旦固化したゼリーに着目し、これを粒状物に砕いたところ、得られたゼリー粒状物は、各種剤形の薬剤を自由に包み込んで所望する大きさ形状とすることができ、しかもこれを嚥下したところ、きわめてスムースに嚥下できるというきわめて有用な新知見を得た。」
ウ 「【0020】
本発明を実施するにおいて、その1態様としてゼリー粒状物を使用する。ゼリー粒状物は、ゼリーを成形してなるものであって、大きさ、形状は使用する薬剤、服用者の年齢や症状等によって適宜定めることができ、広範に対応できる点でもすぐれている。

【0025】
その大きさもゼリーの種類、使用薬剤、服用者の年齢、症状等にしたがって適宜定めることが可能であり、一般的には、目の開きが0.5?15mmの篩を通してゼリーを押し出し、これを0.5?10mmの長さに切断したものが使用可能であるが、この大きさは上記範囲に特に限定されるものではない。
【0026】
ゼリーの製造は常法にしたがって行えばよく、ゲル化剤に水を加えて、必要あれば加温し、攪拌溶解した後、ゲル化させればよい。なお所望すれば、コンニャクの場合のアルカリ、低メトキシペクチンの場合の金属多価イオン、アルギン酸の場合のカルシウム等、凝固剤の存在下でゲル化を行ってもよい。ゲル化剤としては、例えば、キサンタンガム及びローカストビーンガムの混合物、キサンタンガム及びタラガムの混合物、キサンタンガム及びコンニャクマンナンの混合物、ジェランガム、脱アシル化していないネイティブジェランガム、カラギーナン、カラギーナン及びローカストビーンガムの混合物、ペクチン等が非限定的に例示される。

【0028】
なお、いずれの方法においても、ゲル化促進剤(クエン酸、クエン酸三ナトリウムその他)、糖類(マンニトール、エリスリトール、アスパルテーム、ステビア、グルコース等)、その他の添加剤を使用することができる。
【0029】
ゲル化剤としては、アラビアガム、寒天、カラギナン、ジェランガム、ネイティブジェランガム、ファーセレラン、ゼラチン、ペクチン、カードラン、ローカストビーンガム、タラガム、グアーガム、キサンタンガム、アルギン酸、アルギン酸塩、アゾトバクタービネランジガム、アカシアガム、サイリュームシードガム、タマリンドガム、CMCNa、CMCCa、乳清蛋白、澱粉及び化工澱粉から成る群より選ばれた少なくともひとつが挙げられる。」
エ 「【0047】
【実施例1】
凍結前粉砕法の実施例を以下に述べる。
【0048】
(1)ゼリーの調製-その1
キサンタンガム(キサンタンガムPA、伊那食品工業株式会社製)5.85g、ローカストビーンガム(RL-200-J、三晶株式会社製)585g、アスパルテーム0.325gを混合したものを、637.975gの攪拌している水の中に少量ずつ加えた。85℃まで加温して更に攪拌し、添加物を完全に溶解させた。得られた溶解液をプラスチックカップに充填し、密閉して固化するまで室温で放置した。固化したゼリーを、目の開きが2mmのステンレス製篩(JIS Z8801、東京スクリーン株式会社製)の上に置き、底が平らになった棒でゼリーを押しつぶすようにして篩を通過させ、押し出されてきたゼリーを金属製スパーテルを用いて約1?3mmの長さに切断し、粒状のゼリー組成物を得た。得られた粒状ゼリー組成物は、プラスチックカップに5gずつ充填し、アルミラミネートフィルムで上部を密閉した。

【0053】
(6)ゼリーの調製-その6
カッパタイプのカラギーナン(WR-78、三晶株式会社製)1.95g、ローカストビーンガム(RL-200-J、三晶株式会社製)1.95g、アスパルテーム0.325gを混合したものを、645.775gの攪拌している水の中に少量ずつ加えた。85℃まで加温してさらに攪拌し、添加物を完全に溶解させた。得られた溶解液をプラスチックカップに充填し、密閉して固化するまで室温で放置した。固化したゼリーを、目の開きが2mmのステンレス製篩(JISZ8801、東京スクリーン株式会社製)の上に置き、底が平らになった棒でゼリーを押しつぶすようにして篩を通過させ、押し出されてきたゼリーを金属製スパーテルを用いて約1?3mmの長さに切断し、粒状のゼリー組成物を得た。得られた粒状ゼリー組成物は、プラスチックカップに5gずつ充填し、アルミラミネートフィルムで上部を密閉した。
【0054】
(7)ゼリーの調製-その7
ペクチン(LM-84AS、三晶株式会社製)9.75gを、548.99gの攪拌している水の中に少量ずつ加えた。85℃まで加温し攪拌しながら、15%クエン酸溶液17.29g、アスパルテーム0.325gを少量ずつ加え、さらに85℃まで加温し再び攪拌しながら、15%乳酸カルシウム溶液73.645gを少量ずつ加えた。再度85℃まで加温して攪拌し、添加物を完全に溶解させた。得られた溶解液をプラスチックカップに充填し、密閉して固化するまで室温で放置した。固化したゼリーを、目の開きが2mmのステンレス製篩(JISZ8801、東京スクリーン株式会社製)の上に置き、底が平らになった棒でゼリーを押しつぶすようにして篩を通過させ、押し出されてきたゼリーを金属製スパーテルを用いて約1?3mmの長さに切断し、粒状のゼリー組成物を得た。得られた粒状ゼリー組成物は、プラスチックカップに5gずつ充填し、アルミラミネートフィルムで上部を密閉した。

【0056】
(8)ゼリーの凍結乾燥
ゼリーの充填されたプラスチックカップの上部のフィルムをはがし、カップを凍結乾燥用のトレーに並べた。そのトレーを-80℃の凍結機の中に4時間入れて、ゼリーを十分に凍結させた。次いで、トレーを凍結乾燥機(米国FTS SYSTEMS社製、Dura-Stop MP/Dura-Top MP Tray Dryers)に入れ、-40℃で20時間、減圧下で乾燥を実施した。この時の真空度は15?40mTorrであった。次に、真空度はそのままの状態で、乾燥機の温度を25℃に上昇させ、更にゼリーを十分に乾燥させた。凍結乾燥機からカップを取り出し、すぐにアルミラミネートフィルムで上部を密閉した。
【0057】
(9)復元性の確認
上記実験例で得られたドライゼリーの入ったプラスチックカップに、水4mLを加え、スプーンでよく攪拌したところ、20秒後には完全につぶつぶ状ゼリーの塊に復元した。
【0058】
【実施例2】
凍結後粉砕法の実施例を以下に述べる。
【0059】
(1)ゼリーの調製-その1
キサンタンガム(キサンタンガムPA、伊那食品工業株式会社製)5.85g、ローカストビーンガム(RL-200-J、三晶株式会社製)5.85g、アスパルテーム0.325gを混合したものを、637.975gの攪拌している水の中に少量ずつ加えた。85℃まで加温して更に攪拌し、添加物を完全に溶解させた。得られた溶解液を凍結乾燥用の金属製トレーに、液の厚さが1cm以下になるように流し込んだ。

【0063】
(5)ゼリーの調製-その5
カッパタイプのカラギーナン(WR-78、三晶株式会社製)1.95g、ローカストビーンガム(RL-200-J、三晶株式会社製)1.95g、アスパルテーム0.325gを混合したものを、645.775gの攪拌している水の中に少量ずつ加えた。85℃まで加温してさらに攪拌し、添加物を完全に溶解させた。得られた溶解液を凍結乾燥用の金属製トレーに、液の厚さが1cm以下になるように流し込んだ。
【0064】
(6)ゼリーの調製-その6
ペクチン(LM-84AS、三晶株式会社製)9.75gを、548.99gの攪拌している水の中に少量ずつ加えた。85℃まで加温し攪拌しながら、15%クエン酸水溶液17.29g、アスパルテーム0.325gを少量ずつ加え、さらに85℃まで加温し再び攪拌しながら、15%乳酸カルシウム溶液73.645gを少量ずつ加えた。再度85℃まで加温して攪拌し、添加物を完全に溶解させた。得られた溶解液を凍結乾燥用の金属製トレーに、液の厚さが1cm以下になるように流し込んだ。
【0065】
(7)ゼリーの凍結乾燥
得られたゼリーの入ったトレーを-80℃の凍結機の中に4時間入れて、ゼリーを十分に凍結させた。次いで、トレーを凍結乾燥機(米国FTS SYSTEMS社製、Dura-Stop MP/Dura-Top MP Tray Dryers)に入れ、-40℃で20時間、減圧下で乾燥を実施した。この時の真空度は15?40mTorrであった。次に、真空度はそのままの状態で、乾燥機の温度を25℃に上昇させ、更にゼリーを十分に乾燥させた。
【0066】
(8)乾燥物の粉砕
得られたゼリーのシート状乾燥物をカッターで二方向に切断して、大きさ1mm?3mmの賽子状にした。篩を用いて微粉と大きな塊を取り除き、整粒されたドライゼリーを得た。
【0067】
(9)復元性の確認
上記実験例で得られたドライゼリー0.1gを、プラスチックカップに量りとった。このカップに水4mLを加え、スプーンでよく攪拌したところ、20秒後には完全につぶつぶ状ゼリーの塊に復元した。
【0068】
【発明の効果】
本発明に係るゼリー乾燥物は、通常のゼリーの使用や単にトロミをつけるというものではなく、ゼリー粒状物という固化したゼリーを更に加工処理して成形したものであって、従来の概念と全く相違する新規にして画期的なものである。
【0069】
したがって、これを嚥下補助剤として利用した場合、薬剤や健康食品、その原料、素材との混合、包み込みが容易であって、その大きさ、剤型のいずれにも対応することができ、しかも嚥下し易いようにその大きさ、形状を適宜自由にコントロールすることができ、しかも粒状物としたことにより、同一のゲルであっても粒状物としない場合に比して嚥下し易いし、薬剤等との混合も容易である。
【0070】
そのうえ更に、本発明においてはこのゼリーを凍結乾燥してドライタイプの嚥下補助剤等ドライゼリーとした点に格別の特徴を有するものである。
【0071】
ゼリーは長期保存安定性が劣るが、乾燥し、用時調製型にすることで安定性を向上させるのに成功した。通常の凍結乾燥では、復水性に劣り実用に向いていないが、粒粒に切断した後、凍結乾燥することにより復水性を向上させるのにも成功した。更に、ゼリー状の医薬品は分割服用が困難であるが、乾燥状態にすることにより、秤量が容易になった。
【0072】
この発明によって得られるドライゼリーは、例えば以下のような利用法が可能である。
(1)嚥下補助剤としての利用
(2)ゼリー状医薬品としての利用(=あらかじめ医薬をゼリーに溶解、もしくは分散させておく)
(3)食品素材としての利用(=例えばスープ・インスタント麺類等の具材など)
(4)従来からある嗜好品のゼリーとしての利用」

(2)引用例2に記載された事項
ア 「一般的にペクチンはエステル化度が50%以上のHMペクチンと50%未満のLMペクチンに分類され、それぞれゲル化の条件やゲルの物性が異なります。」(「ペクチンとは」第2パラグラフ1-2行)
イ 「LMペクチンは、カルシウムイオンなどの2価のイオンの存在下でゲル化します。」(「ペクチンの特徴 1.ゲル化性」4行)
ウ 「 代表的
商品名 DE値 添加量 …
(%) (%)
… … … …
LM-84AS 30 1.0?2.0 …
… … … …」
(「GENU(R) LMペクチン」の表)

(3)引用例3に記載された事項
ア 「【請求項1】
(a)寒天、κ-カラギーナン、ι-カラギーナン、アルギン酸塩、ファーセレラン、タマリンド種子ガム、ゼラチン、ジェランガム、ネイティブジェランガム、カードラン、ペクチン及びグルコマンナンの中から選ばれる少なくとも一種の増粘剤を、全増粘剤の濃度が1質量%以下になるように含むと共に、ゲル化開始からゲル化終了に至る冷却速度が3℃/min以下に制御されてなる低離水性ゲル状組成物。

【請求項6】
離水率が1質量%以下である請求項1ないし5のいずれかに記載の低離水性ゲル状組成物。」
イ 「【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、低離水性ゲル状組成物及びその製造方法に関する。さらに詳しくは、本発明は、離水性が効果的に抑制され、良好な風味や食感、外観などを保持することができ、ゼリーなどのデザート用ゲル状食品などとして好適な低離水性ゲル状組成物、及びその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、冷蔵庫や冷凍庫の普及に伴い、ゼリーやプリンなどのデザート用ゲル状食品は一般的なものとなっている。このようなゲル状食品には、ゲル化剤として、寒天、カラギーナン、ゼラチン、ジェランガム、ペクチンなどが用いられている。そして、前記ゲル状食品は、缶やカップなどに充填密封され、さらに殺菌処理されて市場に供給されるが、しばしば水分が流出する、いわゆる離水現象が生じる。その結果、風味や食感、外観が損なわれ、消費者に好ましくない印象を与え嗜好意欲を減退させたり、あるいは嚥下障害者にとっては、水分補給の際、むせる原因となるなどの問題が生じていた。
したがって、これまで、離水を減少させるために種々の方法が開示されている。…
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、このような状況下で、離水性が効果的に抑制され、良好な風味や食感、外観などを保持することができ、ゼリーなどのゲル状飲食品、特に増粘剤濃度の低い、柔らかくてくずし易いゼリー状飲食品などとして好適な低離水性ゲル状組成物を提供することを目的とするものである。」
ウ 「【0010】
【発明の実施の形態】

本発明においては、増粘剤として、(a)寒天、κ-カラギーナン、ι-カラギーナン、アルギン酸塩、ファーセレラン、タマリンド種子ガム、ゼラチン、ジェランガム、ネイティブジェランガム、カードラン、ペクチン及びグルコマンナンの中から選ばれる少なくとも一種が用いられる。また、必要に応じて、上記(a)成分の増粘剤と共に、(b)λ-カラギーナン、グアーガム、ローカストビーンガム、タラガム、キサンタンガム、プルラン及びアラビアガムの中から選ばれる少なくとも一種の増粘剤を併用することができる。」

(4)引用例4に記載された事項
ア 「第6 えん下困難者用食品たる表示の許可基準
1 えん下困難者用食品たる表示の適用範囲
許可を受けるべきえん下困難者用食品(えん下を容易ならしめ、かつ、誤えん及び窒息を防ぐことを目的とするもの)たる表示の適用範囲については、えん下困難者の用に適する旨を医学的、栄養学的表現で記載されたものに適用されるものとする。
2 えん下困難者用食品たる表示の許可基準
えん下困難者用食品たる表示の許可基準は、次の基準に適合したものであること。
(1) 基本的許可基準
ア 医学的、栄養学的見地から見てえん下困難者が摂取するのに適した食品であること。
イ えん下困難者により摂取されている実績があること。
ウ 特別の用途を示す表示が、えん下困難者用の食品としてふさわしいものであること。
エ 使用方法が簡明であること。
オ 品質が通常の食品に劣らないものであること。
カ 適正な試験法によって成分又は特性が確認されるものであること。
(2) 規格基準
表3に示す規格を満たすものとする。
なお、簡易な調理を要するものにあっては、その指示どおりに調理した後の状態で当該規格を満たせばよいものとする。


(9頁下から10行-10頁下から12行)

(5)引用例5に記載された事項





(6)引用例6に記載された事項
ア 「ゼリー関連学会等発表実績…

■2014年

5月 日本薬剤学会第29年会(主催:日本薬剤学会)
(発表内容:服薬補助ゼリーキットの開発)
PDF資料1:服薬補助ゼリーキットの開発…」
(末尾「ゼリー関連学会等発表実績」の項)

(7)引用例7に記載された事項
ア 「[0004]
本発明は、ペクチンを含むゼリー製剤に、取扱いやすさ又は保存性等の観点、及び嚥下のしやすさの観点の両方からみて適度な破断強度を与える技術を提供することを課題とする。また、本発明は、ペクチンを含むゼリー製剤に、高い薬物の溶出性を与える技術を提供することを課題とする。
更に、本発明は、ペクチンを含むゼリー製剤に、適度な破断強度及び高い薬物の溶出性の両者を与える技術を提供することを課題とする。
そして、本発明は、適度な破断強度を有し、かつ高い薬物の溶出性を有する、ペクチンを含むゼリー製剤を提供することを課題とする。」
イ 「[0008]
本発明のゼリー製剤は、薬物、ペクチン及び2価の金属イオンを含み、更にスクロース、マルチトール及び炭素数3?4のアルジトールから選ばれる成分と、炭素数5?6のアルジトールから選ばれる成分とを組み合わせて含む。
薬物は、特に制限されないが、好ましくは、酸性で安定な薬物である。酸性で安定な薬物としては、pH2?5程度で安定な塩酸塩などが挙げられる。…
[0009]
ペクチンとしては、通常ゼリー製剤に用いられるものを、特に制限なく用いることができる。本発明のゼリー製剤においては、任意のエステル化度のペクチンを、単独で又は組み合わせて用いることができる。…本発明のゼリー製剤に用いられるペクチンとしては、特に好ましくは、20?35%のエステル化度を有するペクチンを単独で用いる。
本発明のゼリー製剤におけるペクチンの含有量は、嚥下しやすい(口腔内で容易に咀嚼できる)硬さのゼリーを形成できる範囲であればよい。ペクチンの含有量は、通常は0.5?10質量%、好ましくは1?3質量%である。
[0010]
2価の金属イオンとしては、カルシウムイオン、マグネシウムイオン等が挙げられる。2価の金属イオンは、経口可能な金属塩の形態で製剤に添加することができる。…中でも、好ましくはカルシウム塩、中でも乳酸カルシウムである。…」
ウ 「[0016]
本発明のゼリー製剤のpHは、ゼリーの形成を妨げない範囲であればよい。本発明のゼリー製剤のpHは、好ましくは2?5、更に好ましくは2.5?4.5である。この範囲で、特にゼリーの安定性が良好である。
pHの調整に用いるpH調整剤としては、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、フマル酸、フタル酸、乳酸、アジピン酸、コハク酸、マレイン酸、アスコルビン酸、エリソルビン酸、グルコン酸、グリセロリン酸等の有機酸およびその塩、ならびに塩酸、リン酸などの無機酸およびその塩、グリシン、アラニン、アスパラギン酸などのアミノ酸及びその塩、あるいは水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ剤およびその塩が挙げられる。
[0017]
本発明のゼリー製剤は、前記スクロース、マルチトール及び炭素数3?4のアルジトールから選ばれる成分の作用、及び炭素数5?6のアルジトールから選ばれる成分の作用を損なわない範囲で、更に通常医薬に用いられる添加剤を含有していてもよい。このような任意成分として、防腐剤、甘味剤、香料などが挙げられる。…」
エ 「[請求項1]
薬物、ペクチン及び2価の金属イオンを含むゼリー製剤であって、更にスクロース、マルチトール及び炭素数3?4のアルジトールから選ばれる成分と、炭素数5?6のアルジトールから選ばれる成分とを組み合わせて含む、ゼリー製剤。

[請求項3]
炭素数5?6のアルジトールが、キシリトール及びD-ソルビトールから選ばれる、請求項1又は請求項2に記載のゼリー製剤。」

(8)引用例1に記載された発明
引用例1には、ゼリー状の「嚥下困難者用嚥下補助剤」(上記(1)ア)に関し、これを「アラビアガム、寒天、カラギナン、ジェランガム、ネイティブジェランガム、ファーセレラン、ゼラチン、ペクチン、カードラン、ローカストビーンガム、タラガム、グアーガム、キサンタンガム、アルギン酸、アルギン酸塩、アゾトバクタービネランジガム、アカシアガム、サイリュームシードガム、タマリンドガム、CMCNa、CMCCa、乳清蛋白、澱粉及び化工澱粉から成る群より選ばれた少なくともひとつ」であるゲル化剤から構成すること(上記(1)ウ)、「薬剤とともに服用されてその嚥下を容易に(する)」こと(上記(1)ア)、すなわち「薬剤の服用時に薬剤と混ぜて服用される」ことが記載されている。
そうすると、引用例1には以下の引用発明1が記載されていると認められる。
「アラビアガム、寒天、カラギナン、ジェランガム、ネイティブジェランガム、ファーセレラン、ゼラチン、ペクチン、カードラン、ローカストビーンガム、タラガム、グアーガム、キサンタンガム、アルギン酸、アルギン酸塩、アゾトバクタービネランジガム、アカシアガム、サイリュームシードガム、タマリンドガム、CMCNa、CMCCa、乳清蛋白、澱粉及び化工澱粉から成る群より選ばれた少なくともひとつであるゲル化剤を含み、ゲル化し、薬剤の服用時に薬剤と混ぜて服用される薬剤の服用補助用ゼリー。」

(9)本件発明1と引用発明1との対比・判断
ア 本件発明1と引用発明1とを対比する。
本件発明1と引用発明1とは、以下の点で相違する。
相違点a:本件発明1は「LMペクチン、寒天およびその他の増粘多糖類を含有するゲル化剤と、ゲル化促進剤と、甘味料とを含み」、「その他の増粘多糖類に、少なくともローカストビーンガムが含まれ(る)」ものであるのに対し、引用発明1は「アラビアガム、寒天、カラギナン、ジェランガム、ネイティブジェランガム、ファーセレラン、ゼラチン、ペクチン、カードラン、ローカストビーンガム、タラガム、グアーガム、キサンタンガム、アルギン酸、アルギン酸塩、アゾトバクタービネランジガム、アカシアガム、サイリュームシードガム、タマリンドガム、CMCNa、CMCCa、乳清蛋白、澱粉及び化工澱粉から成る群より選ばれた少なくともひとつであるゲル化剤」を含み、「ゲル化促進剤と甘味料」とを含むものではない点。
相違点b1:本件発明1は「LMペクチンが薬剤の服用補助用ゼリーに対して1?3重量%含まれ(る)」ものであるのに対し、引用発明1ではこのような特定がない点。
相違点c1:薬剤の服用補助用ゼリーの物性について、本件発明1は
「細断して生成されたゼリーの20±2℃の物性は、
硬さが、2000?6000N/m^(2)であり、
付着性が、200?500J/m^(3)であり、
凝集性が、0.2?0.6であり」、かつ、
「細断してから10分後のゼリーの離水が、当該薬剤の服用補助用ゼリーに対して3重量%以下」であるのに対し、引用発明1ではこれらの物性が明らかでない点。

イ まず、上記相違点aについて検討する。
本件発明1は「LMペクチン、寒天およびその他の増粘多糖類を含有するゲル化剤と、ゲル化促進剤と、甘味料とを含み」、「その他の増粘多糖類に、少なくともローカストビーンガムが含まれ(る)」ものである。
これに対し、引用発明1は、「ペクチン」、「寒天」、あるいは「アラビアガム、…カラギナン、ジェランガム、ネイティブジェランガム、ファーセレラン、…カードラン、ローカストビーンガム、タラガム、グアーガム、キサンタンガム、アルギン酸、アルギン酸塩、アゾトバクタービネランジガム、アカシアガム、サイリュームシードガム、タマリンドガム、CMCNa、CMCCa」のような増粘多糖類の少なくとも一つを用いており(上記(1)ウ)、その実施例においては、本件発明1の「LMペクチン」に相当する「ペクチン(LM-84AS、三晶株式会社製)」と「ゲル化促進剤」に相当する「乳酸カルシウム」の使用や、本件発明1の増粘多糖類に相当する「キサンタンガム」と「ローカストビーンガム」の併用については記載されている(上記(1)エ)ものの、「LMペクチン、寒天およびその他の増粘多糖類を含有」し、「その他の増粘多糖類に、少なくともローカストビーンガムが含まれ(る)」ようなゲル化剤は、引用例1の実施例のみならず、その如何なる箇所にも記載されておらず、また示唆もない。
そして、引用発明1のゲル化剤について、「LMペクチン、寒天およびその他の増粘多糖類を含有するゲル化剤と、ゲル化促進剤と、甘味料とを含み」、「その他の増粘多糖類に、少なくともローカストビーンガムが含まれ(る)」ものとすることが、想到容易であるとはいえない。

ウ してみると、相違点b1及びc1について検討するまでもなく、本件発明1は、引用発明1及び引用例2?7に記載された事項から当業者が容易に想到したものとはいえない。

(10)本件発明2?6、8、9についての判断
本件発明2?6、8、9は、本件発明1を引用し、さらに限定を加えたものである。そして、上述のとおり、本件発明1は引用発明1及び引用例2?7に記載された事項から当業者が容易に想到したものとはいえないことに鑑みると、本件発明2?6、8、9についても、引用発明1及び引用例2?7に記載された事項から当業者が容易に想到したものとはいえない。

(11)まとめ
よって、上記取消理由通知で示した理由Aには理由がない。

3 取消理由Bについて
当審は、上記取消理由通知において、取消理由Bに関し、以下の取消理由を通知した。
「本件発明に係る服用補助用ゼリーにおける『LMペクチン、寒天およびその他の増粘多糖類を含有するゲル化剤』との文言からは、『LMペクチン』、『寒天』、『その他の増粘多糖類』の三成分が必須であるかのように見受けられる。
しかし、実施例10及び11、並びに、比較例3及び4はこれら三成分が含まれるにもかかわらず、前者は本件発明の物性を満たし、後者は満たしていない。このため、本件発明はどのようにすれば実施できるのか、明らかでない。
また、『LMペクチン』、『寒天』、『その他の増粘多糖類』の三成分が含まれている実施例14及び15以外の実施例は、本件発明の物性を満たしているが、比較例6は同じく三成分が含まれているにもかかわらず、本件発明の物性を満たしていない。このため、本件発明はどのようにすれば実施できるのか、明らかでない。
そして、実施例14には『その他の増粘多糖類』が、実施例15には『寒天』が、それぞれ含まれていないにもかかわらず、本件発明の物性を満たし、『実施例』とされていることに鑑みると、本件発明は『LMペクチン』、『寒天』、『その他の増粘多糖類』の三成分を必須としなくとも実施しうるとも解釈でき、どのような態様が本件発明を実施したといえるのか、明らかでない。
更に、実施例14と比較例5は構成成分が共通するにもかかわらず、前者は本件発明の物性を満たし、後者は満たしていない。このため、本件発明はどのようにすれば実施できるのか、明らかでない。
したがって、本件発明の詳細な説明は、当業者が本件発明1?9を実施することができる程度に明確かつ十分に記載したものとはいえない。」

しかし、上記第2で示したとおり、本件訂正は認められ、上記第3で示したとおり、本件発明は、「LMペクチン」、「寒天」、その他の増粘多糖類として「ローカストビーンガム」、「甘味料」の四成分が必須となった。そして、本件発明の詳細な説明に記載された「実施例」は本件発明の物性を満たし、同「比較例」は本件発明の物性を満たさないことが明らかとなった。
したがって、本件発明の詳細な説明は、当業者が本件発明1?6、8、9を実施することができる程度に明確かつ十分に記載したものでないとはいえない。
よって、上記取消理由通知で示した理由Bには理由がない。

4 取消理由Cについて
当審は、上記取消理由通知において、取消理由Cに関し、以下の取消理由を通知した。
「本件発明に係る服用補助用ゼリーにおける『LMペクチン、寒天およびその他の増粘多糖類を含有するゲル化剤』との文言からは、『LMペクチン』、『寒天』、『その他の増粘多糖類」の三成分が必須であるかのように見受けられる。
しかし、『その他の増粘多糖類』として『ローカストビーンガム』を用いた実施例10及び11は本件発明の物性を満たすが、『その他の増粘多糖類』として『キサンタンガム』を用いた比較例3及び4は本件発明の物性を満たさない。このため、本件発明は、請求項1-9に係る発明の範囲まで拡張ないし一般化できるとはいえない。
また、『LMペクチン』、『寒天』、『その他の増粘多糖類』の三成分が含まれ、更に甘味料が含まれている実施例14及び15以外の実施例は、本件発明の物性を満たしているが、甘味料が含まれない比較例6は同じく三成分が含まれているにもかかわらず、本件発明の物性を満たしていない。このため、本件発明は、請求項1?6に係る発明の範囲まで拡張ないし一般化できるとはいえない。
更に、実施例14と比較例5は構成成分が共通するにもかかわらず、前者は本件発明の物性を満たし、後者は満たしていない。このため、本件発明は、請求項1-9に係る発明の範囲まで拡張ないし一般化できるとはいえない。
したがって、本件発明1?9は、発明の詳細な説明に記載したものとはいえない。」

しかし、上記3で示したことと同様の理由により、本件発明1?6、8、9は、発明の詳細な説明に記載したものでないとはいえない。
よって、上記取消理由通知で示した理由Cには理由がない。

5 取消理由Dについて
当審は、上記取消理由通知において、取消理由Dに関し、以下の取消理由を通知した。
「本件発明に係る服用補助用ゼリーにおける『LMペクチン、寒天およびその他の増粘多糖類を含有するゲル化剤』との文言からは、『LMペクチン』、『寒天』、『その他の増粘多糖類』の三成分が必須であるかのように見受けられる。
しかし、実施例14には『その他の増粘多糖類』が、実施例15には『寒天』が、それぞれ含まれていないにもかかわらず、本件発明の物性を満たしていることに鑑みると、『LMペクチン、寒天およびその他の増粘多糖類を含有するゲル化剤』との文言が『LMペクチン』、『寒天』、『その他の増粘多糖類』の三成分を意味するものと解することができず、この文言をどのように解釈すればよいのか、皆目見当が付かない。
したがって、本件発明1-9は、明確であるとはいえない。」

しかし、上記第2に示したとおり本件訂正が認められることにより、訂正前の「実施例14」及び「実施例15」は、それぞれ「参考例14」及び「参考例15」となり、「LMペクチン」、「寒天」、その他の増粘多糖類として「ローカストビーンガム」、「甘味料」の四成分が必須である本件発明の範囲外のものとなった。
したがって、本件発明1?6、8、9は、明確であるといえる。
よって、上記取消理由通知で示した理由Dには理由がない。

6 まとめ
以上、上記取消理由通知で示した理由A?Dからは、本件発明1?6、8、9に係る特許を取り消すことはできない。

第5 異議申立ての理由についての検討
1 申立人Aの異議申立ての理由について
(1)異議申立ての理由の概要
申立人Aの異議申立ての理由は、概要以下のとおりである。
・申立ての理由1
請求項1?9に係る発明は、下記甲第1ないし3号証に記載された発明に基づいて、それぞれ当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1?9に係る特許は特許法第113条第2号の規定により取り消すべきものである。
・申立ての理由2
請求項1?9に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号の規定により取り消すべきものである。

甲第1号証:特開2003-192573号公報
(以下、「甲A1」という。)
甲第2号証:特開2004-173678号公報
(以下、「甲A2」という。)
甲第3号証:食安発第0212001号
「特別用途食品の表示許可等について」
厚生労働省医薬食品局食品安全部長、平成21年2月12日、
9-11頁(以下、「甲A3」という。)

(2)申立ての理由1について
ア 甲A1に記載された事項
(ア)「【請求項1】 水に難溶な薬剤がゲル中に分散していることを特徴とする経口ゲル製剤。
【請求項2】 ゲルが低メトキシル化ペクチンゲルである請求項1に記載の経口ゲル製剤。

【請求項5】 さらに、他の天然物由来の高分子多糖類が低メトキシル化ペクチンに対し質量比で50%以下の割合で配合されている請求項2から4のいずれかに記載の経口ゲル製剤。
【請求項6】 他の天然物由来の高分子多糖類が、寒天および/またはカラギーナンである請求項5に記載の経口ゲル製剤。」
(イ)「【0008】
【発明が解決しようとする課題】上記のような問題点が提起されている現状において、幼児、高齢者、嚥下障害を有する患者、術後寝たきりの患者などへの水難溶性薬剤の経口投与に際して、容易に嚥下することができ、十分な薬剤効果を得ることができるだけの一定量を確実に服用することができ、また介護が必要な患者における薬剤の服用に際して、介護人の手間を軽減させるように改善された、服用し易い易嚥下性経口ゲル製剤を提供することを目的とする。」
(ウ)「【0015】低メトキシル化ペクチンをゲル化する際に用いる2価金属イオンの供給源としては、特に水溶性カルシウム塩がよい。例えば、乳酸カルシウム、塩化カルシウム、グルコン酸カルシウム、酢酸カルシウムなど食用として問題のないカルシウム化合物が挙げられる。これらの使用量は、低メトキシル化ペクチンをゲル化することができる至適量を用いることができる。ゲル化に関する技術は従来充分に確立されているので、本発明においてもそのような公知の技術を採用することができる。」
(エ)「【0016】本発明に係る経口ゲル製剤には、易嚥下性を向上させる目的で、上記したゲル化剤のうち、低メトキシル化ペクチン以外の他の天然物由来の高分子多糖類を添加することができる。例えば、通常食品分野で汎用されている種々のゲル化剤、例えば、高メトキシル化ペクチン、寒天、カラギーナン、グアーガム、ジェランガム、キサンタンガム、ローカストビーンガムなどを一種または二種以上組み合わせて用いることができる。特に、海草由来の高分子多糖類である寒天および/またはカラギーナン(κ型、ι型、λ型)を用いることは安全性や易嚥下性の観点より好ましい。これらの使用割合は、適宜調整することができるが、薬剤の均一化の妨げとならないよう、低メトキシル化ペクチンに対し、重量比(乾燥)で約50%以下、好ましくは約40%以下とするのがよい。」
(オ)「【0017】本発明に係る経口ゲル製剤においては、薬剤、ゲル化剤、2価金属イオンの他に経口医薬品の添加物として許容され得る各種添加剤を必要に応じて適宜添加することができる。上記添加剤としては、例えば、安定化剤、保水剤、pH調整剤、甘味剤、分散剤、防腐剤、香料などが挙げられる。…甘味剤としては、例えば、ショ糖、ソルビトール、トレハロースなどが挙げられる。…」
(カ)「【0021】本発明に係る経口ゲル製剤は、通常の経口ゲル製剤の製法に準じて製造できる。例えば、まず、精製水中にゲル化剤、薬剤原末ならびに各種の添加剤を加え、攪拌、加熱して、均一な懸濁液とする。含有成分の混合順序は特に問わず、全ての含有成分を同時に混合してもよいし、一部の混合成分のみを先に精製水中に溶解し、その後、残りの含有成分を溶解させてもよい。…」
(キ)「【0025】実施例1
〔製剤例〕下記各成分を精製水中に加えて全量を10リットルとし、80℃に加熱して均一に混合した。次に、乳酸カルシウム5gを加えてさらに均一に混合し、10mLずつポリエチレン製小袋(収容部長辺=約7cm)に充填、密封した後、室温まで冷却し、経口ゲル製剤を得た。
シロスタゾール 100g
低メトキシル化ペクチン(三栄源FFI(株)製)152g
寒天(三栄源FFI(株)製) 48g
ブドウ糖 500g
ソルビン酸カリウム 8g
オレンジエッセンス 24g
【0026】実施例2
〔製剤例〕下記各成分を精製水中に加えて全量を10リットルとし、80℃に加熱して均一に混合した。次に、乳酸カルシウム5gを加えてさらに均一に混合し、10mLずつポリエチレン製小袋(収容部長辺=約7cm)に充填、密封した後、室温まで冷却し、経口ゲル製剤を得た。
シロスタゾール 100g
低メトキシル化ペクチン(三栄源FFI(株)製)152g
κ-カラギーナン(三栄源FFI(株)製) 48g
キシリトール 500g
ソルビン酸カリウム 8g
オレンジエッセンス 24g」

イ 甲A1に記載された発明(甲A1発明)
上記ア(ア)及び(キ)の記載から、甲A1には以下の甲A1発明が記載されているといえる。
「低メトキシル化ペクチン、寒天および/またはカラギーナンと、乳酸カルシウムと、キシリトール又はブドウ糖と、水に難溶な薬剤を含む、経口ゲル製剤。」

ウ 対比・判断
(ア)「低メトキシル化ペクチン」は、本件発明でいう「LMペクチン」である。また、上記ア(ウ)及び(キ)の記載から、係る「低メトキシル化ペクチン」は、「乳酸カルシウム」等の、本件発明でいう「ゲル化促進剤」によってゲル化されている。更に、「キシリトール又はブドウ糖」は甘味料として、「カラギーナン」は増粘多糖類として広く知られているものである。そうすると、本件発明1と甲A1発明とは、以下の点で一致する。
「LMペクチン、寒天及びその他の増粘多糖類と、ゲル化促進剤と、甘味料とを含むもの。」
そして、本件発明1と甲A1発明とは、以下の点で相違する。
相違点a1:本件発明1は「薬剤の服用時に薬剤と混ぜて服用される薬剤の服用補助用ゼリー」であるのに対し、甲A1発明は「水に難溶な薬剤を含む、経口ゲル製剤」である点。
相違点a2:本件発明1は「その他の増粘多糖類に、少なくともローカストビーンガムが含まれ(る)」のに対し、甲A1発明ではこのような特定がない点。
相違点a3:本件発明1は「LMペクチンが薬剤の服用補助用ゼリーに対して1?3重量%含まれ(る)」のに対し、甲A1発明ではこのような特定がない点。
相違点a4:本件発明1は「当該薬剤の服用補助用ゼリーを細断して生成されたゼリーの20±2℃の物性は、硬さが、2000?6000N/m^(2)であり、付着性が、200?500J/m^(3)であり、凝集性が、0.2?0.6であり、当該薬剤の服用補助用ゼリーを細断してから10分後のゼリーの離水が、当該薬剤の服用補助用ゼリーに対して3重量%以下である」のに対し、甲A1発明はこれらの物性が明らかでない点。

(イ)相違点について検討する。
相違点a1に関し、甲A1発明に係る経口ゲル製剤の製造に関し、甲A1には「含有成分の混合順序は特に問わず、全ての含有成分を同時に混合してもよいし、一部の混合成分のみを先に精製水中に溶解し、その後、残りの含有成分を溶解させてもよい。」(上記ア(カ))との記載がある。しかし、係る経口ゲル製剤において、「水に難溶な薬剤」以外の成分、すなわち本件発明1の「薬剤の服用補助用ゼリー」に相当するものを別途ゲル製剤として調製して使用することについての記載ないし示唆は、甲A1からは見いだせない。

相違点a2に関し、甲A1発明に係る経口ゲル製剤において、「ローカストビーンガム」を必須とすることについての記載ないし示唆は、甲A1からは見いだせない。
甲A2には、「低離水性ゲル状組成物」に関し、「さらに、(b)λ-カラギーナン、グアーガム、ローカストビーンガム、タラガム、キサンタンガム、プルラン及びアラビアガムの中から選ばれる少なくとも一種の増粘剤を、全増粘剤の濃度が1質量%以下になるように含む請求項1又は2記載の低離水性ゲル状組成物。」(【請求項3】)との記載や、ローカストビーンガムをその成分の一つとして用いた実施例は記載されているが、殊更ローカストビーンガムに着目して、これを添加することで「離水が十分に少ない」(本件明細書【0012】)ものとすることについての記載ないし示唆は見いだせない。甲A3にも、ローカストビーンガムの使用についての記載ないし示唆は見いだせない。

そうすると、その余の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲A1ないしA3に記載された発明に基づいて当業者が容易に想到したものとはいえない。

エ 本件発明2?6、8、9について
上記のとおり、本件発明1は、甲A1ないしA3に記載された発明に基づいて当業者が容易に想到したものとはいえない。
本件発明2?6、8、9は、いずれも本件発明1を引用し、更に限定を加えたものであるから、本件発明2?6、8、9も、本件発明1と同様、甲A1ないしA3に記載された発明に基づいて当業者が容易に想到したものとはいえない。

オ まとめ
以上のことから、申立人Aの申立ての理由1には理由がない。

(3)申立ての理由2について
申立人Aは、「比較例3、4及び6、並びに実施例14、15の結果からすれば、課題としての発明特定事項[C]及び[D]は、それを達成するための手段である発明特定事項[A-1](決定注:「LMペクチン、寒天およびその他の増粘多糖類を含有するゲル化剤と、ゲル化促進剤とを含(む)」)が満足されてなくても達成されていたり、発明特定事項[A-1]が満足されていても達成されなかったりする。従って、請求項1に記載の発明は、発明の詳細な説明に記載の事項を一般化しているとはいえない。よって、…本件特許の請求項1の記載はサポート要件を満たしていない…。請求項1を引用する請求項2?9についても、…サポート要件を満たしていない。」(申立人Aの特許異議申立書28頁28行?29頁10行)と主張する。
しかし、上記第4の4に示したとおりであるから、上記主張に係る点は解消した。
したがって、申立人Aの申立ての理由2には理由がない。

2 申立人Bの異議申立ての理由について
(1)異議申立ての理由の概要
申立人Bの異議申立ての理由は、概要以下のとおりである。
・申立ての理由1
請求項1?5、7?9に係る発明は、下記甲第1-1号証が添付された製品「服用支援ゼリーeジュレオレンジ」(以下、「甲B1製品」という場合がある。)についての発明と同一であって、特許法第29条第1項第2号に該当し、同項柱書きの規定により特許を受けることができるとはいえないものであるから、請求項1?5、7?9に係る特許は特許法第113条第2号の規定により取り消すべきものである。
・申立ての理由2
請求項1?9に係る発明は、甲B1製品についての発明及び下記甲第5-1号証に記載された発明に基づいて、それぞれ当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1?9に係る特許は特許法第113条第2号の規定により取り消すべきものである。

甲第1-1号証:株式会社モリモト医薬製の製品「服用支援ゼリー
eジュレオレンジ」の添付文書
(以下、「甲B1-1」という。)
甲第1-2号証:甲第1-1号証が添付された製品のAmazonの注文
ページ「服薬補助ゼリーeジュレ(オレンジ)10包入」
https://www.amazon.co.jp/dp/B00QT4R8SI
(以下、「甲B1-2」という。)
甲第2号証 :特開昭53-28087号公報
(以下、「甲B2」という。)
甲第3号証 :特開2004-97114号公報
(以下、「甲B3」という。)
甲第4号証 :三晶株式会社のWebページ「取扱商品」
http://sansho.co.jp/find/polthknr/pectin/
(以下、「甲B4」という。)
甲第5-1号証:日本薬剤学会第29年会における株式会社モリモト医薬の
発表「服薬補助ゼリーキットの開発」
http://www.morimoto-iyaku.jp/wp-content/img/
download/104_jerry_yakugakkai_201405.pdf
(以下、「甲B5-1」という。)
甲第5-2号証:株式会社モリモト医薬のWebページ「商品紹介
服用支援ゼリーeジュレオレンジ」
http://www.morimoto-iyaku.jp/ejyure-2
(以下、「甲B5-2」という。)

(2)申立ての理由1について
ア 甲B1-1に記載された事項
甲B1-1は、株式会社モリモト医薬製の製品「服用支援ゼリーeジュレオレンジ」の添付文書であり、甲B1-1には、以下の事項が記載されている。
(ア)「●原材料名:還元麦芽糖、砂糖、寒天末、甘味料(キシリトール)、増粘剤(ペクチン、ローカストビーンガム、キサンタンガム)、酸味料、香料、乳酸カルシウム、保存料(安息香酸ナトリウム、安息香酸)、着色料(食用黄色5号)」(原材料名欄)
(イ)「(1)(決定注:甲B1-1では、○内に数字が記載されているが、このように標記する。以下同様。)薬を容器(小皿や湯のみ茶碗等)に入れます。

(2)開封前には、よく揉んで、斜め上に切り取り、開封してください。

(3)薬の上からゼリーを入れて、スプーンで混ぜてお飲みください。
…」(添付文書右下欄)

イ 甲B1-1に係る製品
甲B1-1には、株式会社モリモト医薬製の製品「服用支援ゼリーeジュレオレンジ」に関し、「還元麦芽糖、砂糖、寒天末、甘味料(キシリトール)、増粘剤(ペクチン、ローカストビーンガム、キサンタンガム)、酸味料、香料、乳酸カルシウム、保存料(安息香酸ナトリウム、安息香酸)、着色料(食用黄色5号)」を原材料としていること(上記ア(ア))、薬剤の服用時に薬剤と混ぜて服用されるものであること(上記ア(イ))が記載されている。
そうすると、甲B1製品は以下の構成からなるものと認められる。
「ペクチン、寒天末および増粘剤(ペクチン、ローカストビーンガム、キサンタンガム)と、乳酸カルシウムと、甘味料(キシリトール)とを含み、ゲル化し、薬剤の服用時に薬剤と混ぜて服用される薬剤の服用支援ゼリーであって、その他の増粘多糖類に、少なくともローカストビーンガムが含まれる薬剤の服用支援ゼリー。」
そして、甲B1-2の「Amazon.co.jpでの取り扱い開始日 2014/12/10」(登録情報の項)との記載からみて、甲B1製品は、本件出願前(優先日前)において、不特定多数人が認識できる公然に知られうる状態にあったと認められる。

ウ 対比・判断
(ア)「寒天末」及び「増粘剤(ペクチン、ローカストビーンガム、キサンタンガム)」は、それぞれ本件発明1の「寒天」及び「その他の増粘多糖類」に相当する。「服用支援ゼリー」は、本件発明1でいう「服用補助用ゼリー」といえる。
そうすると、本件発明1と甲B1製品とは、以下の点で一致する。
「ペクチン、寒天およびその他の増粘多糖類を含有するゲル化剤と、甘味料とを含み、ゲル化し、薬剤の服用時に薬剤と混ぜて服用される薬剤の服用補助用ゼリーであって、その他の増粘多糖類に、少なくともローカストビーンガムが含まれる薬剤の服用補助用ゼリー。」
そして、本件発明1と甲B1製品とは、以下の点で相違する。
相違点b1:本件発明1はゲル化剤として「LMペクチン」を用い、更に「ゲル化促進剤」を含むものであるのに対し、甲B1製品の「ペクチン」は「LMペクチン」であるのか明らかでなく、「乳酸カルシウム」は「ゲル化促進剤」であるかは明らかでない点。
相違点b2:本件発明1は「LMペクチンが薬剤の服用補助用ゼリーに対して1?3重量%含まれ(る)」のに対し、甲B1製品ではこのような特定がない点。
相違点b3:本件発明1は「当該薬剤の服用補助用ゼリーを細断して生成されたゼリーの20±2℃の物性は、硬さが、2000?6000N/m^(2)であり、付着性が、200?500J/m^(3)であり、凝集性が、0.2?0.6であり、当該薬剤の服用補助用ゼリーを細断してから10分後のゼリーの離水が、当該薬剤の服用補助用ゼリーに対して3重量%以下である」のに対し、甲B1製品はこれらの物性が明らかでない点。

(イ)相違点について検討する。
相違点b1に関し、甲B1製品に「ペクチン」と「乳酸カルシウム」が含まれているからといって、甲B1製品の「ペクチン」が「LMペクチン」を意味すると解する技術常識はない。また、「乳酸カルシウム」についても、これが「ゲル化促進剤」を意味すると解する技術常識はない。
申立人Bは「甲1製品は乳酸カルシウムを含有している。そして、LMペクチンのゲル化にカルシウムイオンなどのゲル化促進剤が必要であることは知られていた…。なお、本件特許でもLMペクチンのゲル化促進剤として乳酸カルシウムが用いられている。したがって、甲1製品の含有する「ペクチン」は「LMペクチン」であると推認される。」と主張する。
しかし、甲B4に記載されるように「LMペクチン」のゲル化には「カルシウムイオンなどの2価のイオンの存在」(ペクチンの特徴の項)を要することを併せて勘案しても、甲B1製品に係る「ペクチン」が「LMペクチン」、「乳酸カルシウム」が「ゲル化促進剤」を意味するとは必ずしもいえない。
このため、本件発明1と甲B1製品とは、相違点b1において、明らかに相違するものといえる。
よって、その余の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲B1製品により特許法第29条第1項第2号に該当するものとはいえない。

エ 本件発明2?5、8、9について
上記のとおり、本件発明1は、甲B1製品により特許法第29条第1項第2号に該当するものとはいえない。
本件発明2?5、8、9は、いずれも本件発明1を引用し、更に限定を加えたものであるから、本件発明2?5、8、9も、本件発明1と同様、甲B1製品により特許法第29条第1項第2号に該当するものとはいえない。

オ まとめ
以上のことから、申立人Bの申立ての理由1には理由がない。

(3)申立ての理由2について
ア 甲B1-1に記載された事項
上記(2)アのとおりである。

イ 甲B1-1に係る製品
上記(2)イのとおりである。

ウ 対比・判断
(ア)本件発明1と甲B1製品との間には、上記(2)ウ(ア)と同様の一致点及び相違点が存在する。

(イ)相違点について検討する。
相違点b1に関し、上記(2)ウ(イ)で検討したことと同様、甲B1製品に係る「ペクチン」が「LMペクチン」であり、「乳酸カルシウム」が「ゲル化促進剤」に相当するものとなっているとは必ずしもいえない。
他方、「医療用ゼリー」(甲B2の2頁右上欄4行)や「ゼリー状医薬品」(甲B3【0072】)の原料において、甲B2には「ローメトキシルペクチン」(本件発明1の「LMペクチン」に相当)と「乳酸カルシウム」を含むもの(2頁左下欄の表)や、甲B3には「ペクチン(LM-84AS、三晶株式会社製)」(甲B4から、本件発明1の「LMペクチン」に相当するものと認める。)と「乳酸カルシウム」を含むもの(【0054】)が記載されている。
しかし、甲B1製品において、「ペクチン」を「LMペクチン」とし、「乳酸カルシウム」を「ゲル化促進剤」とすることの動機づけは存在しない。
また、「ペクチン」を「LMペクチン」とし、「乳酸カルシウム」を「ゲル化促進剤」とすることができたとしても、そうすることで「離水が十分に少ない」(本件明細書【0012】)ものが得られることが予測可能であるとはいえない。
そして、甲B5-1には、係る「服薬補助ゼリーキット」の原材料につき、何ら明らかでなく、甲B5-1からは、甲B1製品において、「ペクチン」を「LMペクチン」とし、「乳酸カルシウム」を「ゲル化促進剤」とすることを想到しえない。

そうすると、その余の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲B1製品及び甲B5-1に記載された発明に基づいて当業者が容易に想到したものとはいえない。

エ 本件発明2?6、8、9について
上記のとおり、本件発明1は、甲B1製品及び甲B5-1に記載された発明に基づいて当業者が容易に想到したものとはいえない。
本件発明2?6、8、9は、いずれも本件発明1を引用し、更に限定を加えたものであるから、本件発明2?6、8、9も、本件発明1と同様、甲B1製品及び甲B5-1に記載された発明に基づいて当業者が容易に想到したものとはいえない。

オ まとめ
以上のことから、申立人Bの申立ての理由2には理由がない。

3 申立人Cの異議申立ての理由について
(1)異議申立ての理由の概要
申立人Cの異議申立ての理由は、概要以下のとおりである。
・申立ての理由
請求項1?9に係る発明は、下記甲第1ないし4号証に記載された発明に基づいて、それぞれ当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1?9に係る特許は特許法第113条第2号の規定により取り消すべきものである。

甲第1号証:特許第3257983号公報(以下、「甲C1」という。)
甲第2号証:特開2000-325041号公報
(以下、「甲C2」という。)
甲第3号証:食安発第0212001号
「特別用途食品の表示許可等について」
厚生労働省医薬食品局食品安全部長、平成21年2月12日、
9-11頁(以下、「甲C3」という。)
甲第4号証:特許第4647493号公報(以下、「甲C4」という。)

(2)申立ての理由1について
ア 甲C1に記載された事項
(ア)「【請求項2】 薬剤(但し、薬効成分を封入したシームレスカプセル、散剤及び細粒剤を除く)とともに服用されてその薬剤の嚥下を容易にし、且つ薬効を阻害しない嚥下困難者用のローカロリー・ノンシュガー嚥下補助飲料であって、
水分80.0?99.9重量%と、寒天、カラギナン、ジェランガム、ファーセレラン、ゼラチン、ペクチン、カードラン、ローカーストビーンガム、タラガム、グアーガム、キサンタンガム、アルギン酸、アルギン酸塩、アゾトバクタービネランジガム、カシアガム、サイリュームシードガム、タマリンドガム、CMCNa、CMCCa、乳清蛋白、澱粉及び化工澱粉から成る群より選ばれた少なくとも1種の糊料0.1?5.0重量%とを含有し、
ゲル状をなし、20℃におけるゼリー強度が10?100g/cm^(2)であることを特徴とする嚥下補助飲料。」
(イ)「【0019】なお、本発明の嚥下補助飲料においては、本発明の意図する嚥下改善効果を奏する限り、必須成分である水分及び糊料以外にも、ゲル化促進剤や栄養源たる糖類その他の添加剤を含有することができる。例えば、ゲル化促進剤としてのクエン酸を0.2?2.0重量%、クエン酸三ナトリウムを0.1?0.2重量%、糖類としてのマンニトール、エリスリトール及びブドウ糖などを8?10重量%を添加することができる。この際、糖類としては、糖尿病患者が飲むことのできるものが好ましい。また、デキストリンをゲル化補助剤として0.2?0.5重量%添加してもよい。
【0020】次に、本発明の嚥下補助飲料の調製法について説明する。本発明の嚥下補助飲料は、適当な糊料を適量の水に加温溶解した後、ゲル化促進剤、ゲル化増進剤、糖類及びその他の添加物を加えて加温攪拌溶解することにより、得ることができる。なお、溶解温度は、適宜変更できるが、加温溶解する場合には代表的に80?100℃である。
【0021】また、上述のようにして得られた嚥下補助飲料は、各種薬剤とともに服用に供することができる。即ち、薬剤を口内に含んだ後、嚥下補助飲料を水の代わりに口内に流し込み、薬剤と一緒に嚥下してもよいし、予め薬剤と嚥下補助飲料とを混合し、得られた混合物(液)を口に流し込み、嚥下してもよい。」
(ウ)「【0027】(実施例1)糊料として多糖類のペクチン、カラギーナン、キサンタンガム及び寒天を所定量の水に加温溶解し、更にその他の添加物を加えて80℃で加温溶解・撹拌して溶解し、本実施例のゲル化した嚥下補助飲料を得た。配合処方の詳細を以下に示す。
【0028】
成分 配合量(重量部)
寒天 0.20
ローカストビーンガム 0.05
ペクチン 0.04
カラギナン 0.02
キサンタンガム 0.01
クエン酸 0.21
クエン酸三ナトリウム 0.14
エリスリトール 8.82
香料 0.10
精製水 90.41
全量 100.00(重量部)

【0031】本実施例では、底面の直径が40mmのサンプル採取器に、嚥下補助飲料を15mmの高さに充填し、プランジャー直径は2cm、圧縮速度は10mm/sec、クリアランスは5mm、測定温度は20℃であった。図1より、最大荷重は146g、プランジャー面積は3.14cm^(2)であるので、本実施例の嚥下補助飲料のゼリー強度は、46.6g/cm^(2)であった。
【0032】(実施例2)以下の配合処方を用いた以外は、実施例1と同様の操作を繰り返し、本実施例の嚥下補助飲料を得た。実施例1と同様にゼリー強度を測定し、得られた結果を図2に示した。また、本実施例の嚥下補助飲料のゼリー強度は、51.9g/cm^(2)であった。
【0033】
成分 配合量(重量部)
寒天 0.20
ローカストビーンガム 0.05
ペクチン 0.04
カラギナン 0.02
キサンタンガム 0.01
クエン酸 0.21
クエン酸三ナトリウム 0.14
マンニトール 8.81
香料 0.10
精製水 90.42
全量 100.00(重量部)」

イ 甲C1に記載された発明(甲C1発明)
上記ア(ア)?(ウ)の記載から、甲C1には以下の甲C1発明が記載されているといえる。
「ペクチン、寒天、ローカストビーンガム、カラギナン、キサンタンガムと、エリスリトール、マンニトールとを含み、薬剤の服用時に薬剤と混合する嚥下困難者用のローカロリー・ノンシュガー嚥下補助飲料である、嚥下補助飲料。」

ウ 対比・判断
(ア)「ローカストビーンガム」、「カラギナン」、「キサンタンガム」は、本件発明でいう「(その他の)増粘多糖類」に相当する。「エリスリトール」、「マンニトール」は、本件発明でいう「甘味料」に相当する。
また、実施例1、2とも、ゼリー強度が測定できているので、甲C1発明に係る「嚥下補助飲料」は、本願発明でいう「服用補助用ゼリー」に相当するものと認められる。そうすると、本件発明1と甲C1発明とは、以下の点で一致する。
「ペクチン、寒天およびその他の増粘多糖類を含有するゲル化剤と、甘味料とを含み、ゲル化し、薬剤の服用時に薬剤と混ぜて服用される薬剤の服用補助用ゼリーであって、その他の増粘多糖類に、少なくともローカストビーンガムが含まれる、薬剤の服用補助用ゼリー。」

そして、本件発明1と甲C1発明とは、以下の点で相違する。
相違点c1:本件発明1は「LMペクチン」と「ゲル化促進剤」を用いているのに対し、甲C1発明は「ペクチン」を用いており、「ゲル化促進剤」を用いるとはされていない点。
相違点c2:本件発明1は「LMペクチンが薬剤の服用補助用ゼリーに対して1?3重量%含まれ(る)」のに対し、甲C1発明ではこのような特定がない点。
相違点c3:本件発明1は「当該薬剤の服用補助用ゼリーを細断して生成されたゼリーの20±2℃の物性は、硬さが、2000?6000N/m^(2)であり、付着性が、200?500J/m^(3)であり、凝集性が、0.2?0.6であり、当該薬剤の服用補助用ゼリーを細断してから10分後のゼリーの離水が、当該薬剤の服用補助用ゼリーに対して3重量%以下である」のに対し、甲C1発明はこれらの物性が明らかでない点。

(イ)相違点について検討する。
甲C2には以下の記載がある。
「【請求項1】 液状食品を嚥下するのにこれを凝固させるためのキットであって、ローメトキシルペクチン、アルギン酸ナトリウムおよびカラギーナンから選択される1種又は2種以上の増粘材を含む溶液と、カルシウム溶液とを対にしてなる嚥下補助食品。
【請求項2】 ローメトキシルペクチンを含む溶液と、固形分換算でローメトキシルペクチン1gに対してカルシウム20?150mgを含むカルシウム溶液とを対にしてなる請求項1記載の嚥下補助食品。」
「【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記市販品は、液状食品に「とろみ」をつけるものであり、液状食品は粘度が上がって(粘性がついて)べたべたしたものになる。そして、このべたべたした液状食品は、上記弱者が摂食はできるものの、嚥下しにくいため喉に留まっているうちにむせて誤嚥してしまうことがある。したがって、この市販品は液状食品の嚥下補助食品としては最良のものではない。そこで、本発明は、液状食品を適度な堅さにゲル凝固させて、この凝固物を弱者が誤嚥することなくつるりと嚥下できるようにすることのできる嚥下補助食品を提供することを目的とする。」
「【0007】本発明の「嚥下補助食品」は、液状食品を嚥下するためにこれを凝固させるためのキットであって、増粘材を含む溶液とカルシウム溶液とを対にしてなるものである。この「増粘材」とはローメトキシルペクチン、アルギン酸ナトリウムおよびカラギーナンから選択される1種又は2種以上からなるものである。本発明において「ローメトキシルペクチン(以下、「LMペクチン」ともいう)」とは、エステル化度が50%以下のペクチンをいう。LMペクチンはカルシウムと反応してゲル化し、液状食品を凝固させて適度な堅さにして嚥下しやすくする役割をする。…」

これらの摘示事項から、甲C2には、「LMペクチン」と本件発明でいう「ゲル化促進剤」に相当する「カルシウム」を含み、「液状食品を適度な堅さにゲル凝固させ」る、「嚥下補助食品」が記載されているといえる。
しかし、甲C2に係る「嚥下補助食品」は、「薬剤の服用時に薬剤と混ぜて服用される」ものではない。仮に、「薬剤の服用時に薬剤と混ぜて服用される」ことに転用しうるとしても、甲C1発明では、「ペクチン、寒天、ローカストビーンガム、カラギナン、キサンタンガム(と、エリスリトール、マンニトール)」によって、既にゲル化剤が構成されており、このゲル化剤において、あえて「ペクチン」を「LMペクチン」とし、甲C2に記載の「カルシウム」を「ゲル化促進剤」として含ませることの動機づけは存在しない。甲C3、甲C4の記載事項に鑑みても、同様である。
また、「ペクチン」を「LMペクチン」として、その「ゲル化促進剤」となる「乳酸カルシウム」を添加することができたとしても、そうすることで「離水が十分に少ない」(本件明細書【0012】)ものが得られることが予測可能であるとはいえない。

そうすると、その余の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲C1ないしC4に記載された発明に基づいて当業者が容易に想到したものとはいえない。

エ 本件発明2?6、8、9について
上記のとおり、本件発明1は、甲C1ないしC4に記載された発明に基づいて当業者が容易に想到したものとはいえない。
本件発明2?6、8、9は、いずれも本件発明1を引用し、更に限定を加えたものであるから、本件発明2?6、8、9も、本件発明1と同様、甲C1ないしC4に記載された発明に基づいて当業者が容易に想到したものとはいえない。

オ まとめ
以上のことから、申立人Cの申立ての理由には理由がない。

4 申立人Dの異議申立ての理由について
(1)異議申立ての理由の概要
申立人Dの異議申立ての理由は、概要以下のとおりである。
・申立ての理由1
請求項1?4に係る発明は、下記甲第1、3、4号証に記載された発明に基づいて、請求項5?8に係る発明は、下記甲第1、3、4、6号証に記載された発明に基づいて、請求項9に係る発明は、下記甲第1、3、4、6号証に記載された発明及び周知技術に基づいて、それぞれ当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1?9に係る特許は特許法第113条第2号の規定により取り消すべきものである。
・申立ての理由2
請求項1?4に係る発明は、下記甲第1、5-1号証に記載された発明に基づいて、請求項5?8に係る発明は、下記甲第1、5-1、6号証に記載された発明に基づいて、請求項9に係る発明は、下記甲第1、5-1、6号証に記載された発明及び周知技術に基づいて、それぞれ当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1?9に係る特許は特許法第113条第2号の規定により取り消すべきものである。
・申立ての理由3
請求項1?9に係る特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号の規定により取り消すべきものである。
・申立ての理由4
請求項1?9に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号の規定により取り消すべきものである。

甲第1号証 :特開2004-97114号公報
(以下、「甲D1」という。)
甲第2号証 :三晶株式会社ウェブページ「ペクチン」
http://sansho.co.jp/find/polthknr/pectin/
(以下、「甲D2」という。)
甲第3号証 :特開2004-173678号公報
(以下、「甲D3」という。)
甲第4号証 :食安発第0212001号
「特別用途食品の表示許可等について」
厚生労働省医薬食品局食品安全部長、
平成21年2月12日、9-11頁
(以下、「甲D4」という。)
甲第5-1号証:日本薬剤学会第29年会における株式会社モリモト医薬
の発表「服薬補助ゼリーキットの開発」
http://www.morimoto-iyaku.jp/wp-content/img/
download/104_jerry_yakugakkai_201405.pdf
(以下、「甲D5-1」という。)
甲第5-2号証:株式会社モリモト医薬ウェブページ
「商品紹介 服用支援ゼリー eジュレオレンジ」
http://www.morimoto-iyaku.jp/ejyure-2
(以下、「甲D5-2」という。)
甲第6号証 :国際公開第2010/113325号
(以下、「甲D6」という。)
甲第7号証 :川端晶子「ペクチンに関する調理科学的研究
-果実ペクチンの化学的性状ならびに物性-」
家政学雑誌, 36(8)1985, p561-576
(以下、「甲D7」という。)
甲第8号証 :百合草明子他「嚥下食に向くペクチン-Caゲルの動的
粘弾性」日本摂食・嚥下リハビリテーション学会雑誌,
3(2)1999, p84の抄録 http://mol.medicalonline.jp/
journal/abstract?GoodsID=cb5dvsph/1999/000302/059
&name=0084-0084j&UserID=5000246154
(以下、「甲D8」という。)
甲第9号証 :DSP五協フード&ケミカル株式会社のWebページ
「多糖類とは ペクチン」
http://www.tatourui.com/about/type/05_pectin.html
(以下、「甲D9」という。)

(2)申立ての理由1ないし2について
上記第4の2において検討したとおりであるから、本件発明1?6、8、9は、甲D1ないしD9に記載された発明に基づいて当業者が容易に想到したものとはいえず、申立人Dの申立ての理由1ないし2には理由がない。

(3)申立ての理由3について
ア 申立人Dは、以下のとおり主張する。
「本件特許明細書の実施例ではどのようなLMペクチンを使用したかが不明であり、幾種かの市販のLMペクチンを用いても本件特許明細書の実施例で特定された特性が得られない。少なくとも本件特許明細書の実施例ではどのようなLMペクチン(商品名やエステル化度)を用いることで特許発明1を実施できるかが不明であるために、当業者は本件特許発明1を実施できないことが明らかである。
また、上記異議申立人の行った実験より、LMペクチンとしてはどのようなLMペクチンでも本件特許発明1を実施できる訳ではないことも分かる。すなわち、本件特許明細書の実施例で使用されたLMペクチン(エステル化度などの物性値や種類が特定できないLMペクチン)でのみ本件特許発明1が実施可能に記載されていて、他のLMペクチンでは本件特許発明1を実施できないことが異議申立人の実験より明らかである。したがって、…発明の詳細な説明は実施可能要件を満たさないと言える。」(申立人Dの特許異議申立書51頁9?23行)
本件発明の詳細な説明【0016】には、以下の記載がある。
「『LMペクチン』としては、カルシウムイオン等のゲル化促進剤の存在下でゲル化するものであれば、いかなるものでも使用することができる。例えば、脱エステル方法における酸処理タイプおよびアルカリ処理タイプのいずれも使用できるが、好ましくは酸処理タイプのものが挙げられる。好ましいLMペクチンとしては、例えばエステル化度が26?34%でアミド化度が15?22%のものが挙げられ、エステル化度が28?34%でアミド化度が15?20%のものがより好ましく、エステル化度が28?33%でアミド化度が15?22%のものがさらに好ましい。」
本件発明の実施例において使用されたLMペクチンは、具体的に何であるか、本件発明の詳細な説明には明示されていないが、
「当該薬剤の服用補助用ゼリーを細断して生成されたゼリーの20±2℃の物性は、
硬さが、2000?6000N/m^(2)であり、
付着性が、200?500J/m^(3)であり、
凝集性が、0.2?0.6であり、
当該薬剤の服用補助用ゼリーを細断してから10分後のゼリーの離水が、当該薬剤の服用補助用ゼリーに対して3重量%以下」との物性を有する薬剤の服用補助用ゼリーは、実施例1?13、16?25によって、得られることが示されており、また、上記記載を基に、「LMペクチン」、更には「寒天および少なくともローカストビーンガムを含むその他の増粘多糖類を含有するゲル化剤」と、「ゲル化促進剤」と、「甘味料」を適宜選択して本件特許発明を実施してみることは、当業者において適宜可能なものと認められる。
このため、上記主張に基づく異議申立ての理由には、理由がない。

イ また、申立人Dは、以下のとおり主張する。
「本件特許明細書の発明の詳細な説明…を見ると、…。ローカストビーンガムを用いた実施例1?15では、硬さ、付着性及び凝集性並びに10分後の離水はいずれも発明特定事項C及びDを満たしている…。一方、増粘多糖類であるキサンタンガムを単独で含む比較例3及び4のゼリーでは、硬さ及び凝集性がいずれも発明特定事項Cを満たしていない。すなわち、比較例3及び4は、発明特定事項A1の「その他の増粘多糖類」の下位概念を示すキサンタンガムを単独で用いると発明を実施することができないことを示している。また、キサンタンガムを単独で使用しても発明を実施できないということは、キサンタンガム以外の増粘多糖類(ローカストビーンガムを除く)を単独で使用しても発明を実施することができない可能性が高いと言える。したがって、本件特許発明1は、…発明の詳細な説明は実施可能要件を満たさない。」(申立人Dの特許異議申立書52頁11?26行)
しかし、上記第2で示したとおり、本件訂正は認められ、上記第3で示したとおり、本件発明は、「LMペクチン」、「寒天」、その他の増粘多糖類として「ローカストビーンガム」、「甘味料」の四成分が必須となった。そして、本件発明の詳細な説明に記載された「実施例」は本件発明の物性を満たし、同「比較例」は本件発明の物性を満たさないことが明らかとなった。
このため、上記第4の3と同旨により、上記主張に基づく異議申立ての理由には、理由がない。

ウ 以上のことから、本件発明の詳細な説明は、当業者が本件発明1?6、8、9を実施することができる程度に明確かつ十分に記載したものでないとはいえず、申立人Dの申立ての理由3には理由がない。

(4)申立ての理由4について
申立人Dは、以下のとおり主張する。
「比較例3、4及び6、並びに実施例14、15の結果からすれば、本件特許発明1のゼリーの特性を満たすために必要な成分が本件特許の請求項1に記載されていなかったり、本件特許発明1のゼリーの特性を満たすために必要でない成分が本件特許の請求項1に記載されていたりするので、請求項1の発明は十分に特定されていない。よって、出願時の技術常識を考慮すると、機能、特性等によって記載された発明特定事項が技術的に十分に特定されていないことが明らかであり、…特許法36条第6項2号に違反している。」(申立人Dの特許異議申立書54頁19行?55頁2行)
しかし、上記第2に示したとおり本件訂正が認められることにより、訂正前の「実施例14」及び「実施例15」は、それぞれ「参考例14」及び「参考例15」となり、「LMペクチン」、「寒天」、その他の増粘多糖類として「ローカストビーンガム」、「甘味料」の四成分が必須である本件発明の範囲外のものとなった。
このため、上記第4の5と同旨により、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないとの理由で本件発明1?6、8、9に係る特許を取り消すことはできず、申立人Dの申立ての理由4には理由がない。

5 申立人からの意見書について
申立人A?Dは、それぞれ本件訂正後に意見書を提出したが、それらの主張を参酌しても、申立人A?Dが示したいずれの異議申立ての理由にも理由がない。

6 まとめ
以上、申立人A?Dが示したいずれの異議申立ての理由にも理由がなく、係る異議申立ての理由からは、本件発明1?6、8、9に係る特許を取り消すことはできない。

第6 むすび
以上のとおりであるから、異議申立ての理由及び当審からの取消理由によっては、請求項1?6、8、9に係る発明の特許を取り消すことはできない。また、他に当該特許を取り消すべき理由を発見しない。
請求項7に係る発明の特許については、上述のとおり、この請求項を削除する訂正を含む本件訂正が認容されるため、特許異議申立ての対象となる特許が存在しないものとなったことから、同請求項に係る特許についての特許異議の申立ては、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により、却下すべきである。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
薬剤の服用補助用ゼリーおよびその製造方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬剤の服用補助用ゼリーおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の高齢化社会の到来と共に、高齢者、脳血管障害患者および小児等で嚥下が困難な患者が増加している。これらの嚥下困難者は、薬剤の服用が容易ではなく、十分に嚥下できずに口の中に残ったり、あるいは喉に詰まったりして、予定している治療効果を得ることができないことがある。かかる嚥下困難者のために、嚥下補助剤等が種々研究され、商品化がされている。
嚥下困難者は、一般に、誤嚥を起こすことも大きな問題となっている。食物または水分を誤嚥すれば、気管支・肺に入ったものによって誤嚥性肺炎等が発症しうる。薬剤を服用する際に利用される嚥下補助剤等は、口腔内で水分が浸み出して、喉を伝って誤嚥されることもある。
【0003】
薬剤の服用補助のための組成物が、特許文献1及び2に記載されている。
特許文献1には、薬剤の嚥下補助飲料が記載されている。実施例1では、全量100重量部に対して、寒天、ローカストビーンガム、ペクチン、カラギナン、キサンタンガムをそれぞれ0.01?0.2重量部、含有する配合処方が調製され、そのゼリー強度が46.6g/cm^(2)と記載されている。しかし、離水、付着性、凝集性等については一切記載されていない。
特許文献2には、ゼリー粒状物を用いてなることを特徴とする嚥下補助剤が、各種剤形の薬剤を自由に包み込んで所望する大きさ形状とすることができ、きわめてスムースに嚥下できると記載されている。実施例には、キサンタンガムとローカストビーンガム(1:1)を用いるもの、アルギン酸ナトリウムとコンニャクゼリーを用いるもの、アルギン酸ナトリウムとCMCNaを用いるものが記載されている。実施例1のゼリーは篩にかけて粒状化させる前のゼリーの強度が80,000N/m^(2)と非常に硬く、また、顆粒剤を内部に入れたゼリー粒状物が、ほぼ球状の塊となって、外部に顆粒剤が流出しなかったと記載されている。以上の通り、特許文献2のゼリー粒状物は、極めて硬く、塊であるために、嚥下困難者には依然として、嚥下が容易になるものではない。
【0004】
嚥下困難者用食品について、厚生労働省から「特別用途食品の表示許可等について」との通達(食安発第0212001号:平成21年2月12日)が出されている。本通達では、特別の用途として、従来の高齢者用が嚥下困難者用との表現に改められ、「嚥下困難者用食品たる表示の許可基準」について、許可基準I、IIおよびIIIの規格が、以下の通り記載されている。
【表1】

本通達に基づいて、嚥下困難者用食品としては、上記の許可基準Iに当てはまるものが最も好ましいと一般に考えられている。しかし、「嚥下困難者用食品たる表示の許可基準」には、薬剤の服用補助、および嚥下困難者用食品を細断して用いる態様については一切記載されていない。また、上記許可基準には、離水についての基準は含まれていない。
【0005】
非特許文献1には、「Q11.ゼリーやクラッシュゼリーを食べさせるときの注意点はなに?」との質問に対する回答が以下の通り記載されている。
固形物を食べるときに咀嚼し、ひと塊の食べものは一度ばらばらにかみ砕かれ、その後、食塊に再形成されて、喉に送り込まれる。ゼリーも同様にひと塊をスプーンに乗せて口に入れた後、咀嚼が起こる。食塊を形成できず、口腔内でばらばらのままでは、誤嚥しやすいため、「丸飲み法」が推奨される。また、ゼリーをクラッシュさせないために、ゼリーをスプーンで平たにすくって丸飲みさせる「スライス法」も用いられる。ゼリーをクラッシュさせる場合、凝集性が低いと口腔内でばらばらのままとなって誤嚥の原因となり、また一般に離水が生じるために分離した水分による誤嚥の原因になる。
また、非特許文献1には、薬剤の服用補助、および嚥下困難者用食品を細断して用いる態様については一切記載されていない。
【0006】
特許文献3には、適度な硬さでまとまりを持っており、離水が少なく、付着性が低減した嚥下用ゼリー等が記載されている。しかし、ゼリーの硬さが600?2000N/m^(2)と低いため「嚥下困難者用食品たる表示の許可基準I」を満足しておらず、十分とはいえない。また、離水については、実施例において定量的な数値ではなく感覚的に評価されているに過ぎず、どの程度であったかが不明である。さらに、特許文献3には、薬剤の服用補助、及び嚥下困難者用食品を細断して用いる態様については一切記載されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許3257983
【特許文献2】特開2004-43333
【特許文献3】特開2010-88422
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Nutrition Care 2014 春季増刊,第66頁,メディカ出版刊
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
前記の通り、薬剤の服用補助のための組成物として、離水性も考慮した上で、嚥下困難者に適切な組成物は得られていない。
薬剤の服用補助のための組成物の離水が高ければ、分離する水分によって誤嚥が生じ得る。通常口腔内で無意識に咀嚼してしまうため、同組成物が咀嚼されればさらに水分が分離して、より誤嚥が発生し得ることになる。同組成物が口腔内で凝集せずにばらばらのままであれば、ばらばらになった同組成物の誤嚥が生じ得る。また、同組成物を薬剤と一緒に咀嚼せずに丸飲みする丸飲み法は、嚥下困難者にはそれほど容易なことではない。
そこで、本発明の課題は、以上の問題を解決するためのものであり、薬剤の服用時に薬剤と混ぜて服用される服用補助用ゼリーであって、薬剤服用者に負担をかけずに薬剤を容易に効率よく消化器へ移送することができ、離水またはばらばらの組成物による誤嚥の可能性を低く抑えた薬剤の服用補助用ゼリー、およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、薬剤を喉に残存させることなく効率よく消化管に移送するためには、細断されたゼリーによって薬剤を包み込むのが最適の方法であると考えた。
現在、日本国内で嚥下補助用ゼリーとして市販されている3つの市販品(市販品A?C)について、細断した状態での硬さ、付着性、凝集性および離水を測定した(後述の試験例1参照)。その結果、3つの市販品とも、硬さは1000N/m^(2)以下であり、付着性が80J/m^(3)以下であり、凝集性が0.6以上であった。従って、市販品A?Cは細断された状態で「嚥下困難者用食品たる表示の許可基準」の許可基準Iには適合せず、辛うじて許可基準IIIに適合する程度であって、薬剤の嚥下補助には効果が高くはないと思われた。また、市販品A?Cの離水は、それぞれ5重量%、1.3重量%および0重量%であった。市販品Aは、細断された状態のゼリー離水率が十分低いとはいえず、誤嚥の可能性が残るものと思われる。
【0011】
そこで、細断されたゼリーの物性について、上記課題を解決するためには、誤嚥の可能性を低く抑えるように離水を極めて小さくすること、細断されたゼリーがばらばらにならないように凝集性を高めること、ゼリーが喉および食道に付着しないが他方薬剤を安定して包み込むように付着性を適度な範囲に調整すること、および喉および食道でゼリーが詰まらずに移動するように適度な硬さに調整することが必要であると考えた。
上記目的に従って、薬剤の服用補助用ゼリーについて、試行錯誤を繰り返して鋭意検討を行った結果、本発明者らは、低メトキシルペクチン(LMペクチン)を主成分として他のゲル化剤を組み合わせることで、意外にも上記課題を解決することができ、離水がほとんどなく、凝集性が高く、適度な付着性と硬さを有し、薬剤を喉または食道に残すことなく効率的に消化器まで移送することができることを見出して、本発明を完成した。即ち、本発明は以下の通りである。
【0012】
[1] LMペクチン、寒天およびその他の増粘多糖類を含有するゲル化剤と、ゲル化促進剤とを含み、ゲル化し、薬剤の服用時に薬剤と混ぜて服用される薬剤の服用補助用ゼリーであって、
LMペクチンが薬剤の服用補助用ゼリーに対して、1?3重量%含まれ、
当該薬剤の服用補助用ゼリーを細断して生成されたゼリーの20±2℃の物性は、硬さが、2000?6000N/m^(2)であり、付着性が、200?500J/m^(3)であり、凝集性が、0.2?0.6であり、
当該薬剤の服用補助用ゼリーを細断してから10分後のゼリーの離水が、当該薬剤の服用補助用ゼリーに対して3重量%以下である薬剤の服用補助用ゼリー。
([1]に記載の薬剤の服用補助用ゼリーは、嚥下困難者用食品たる表示の許可基準IIを余裕をもって満足し、かつ離水が十分に少ない。)
【0013】
[2] 前記LMペクチンが薬剤の服用補助用ゼリーに対して1.2?2.2重量%含まれ、
当該薬剤の服用補助用ゼリーを細断して生成されたゼリーの20±2℃の物性は、硬さが、2500?6000N/m^(2)であり、付着性が、200?400J/m^(3)であり、凝集性が、0.2?0.6であり、
当該薬剤の服用補助用ゼリーを細断してから10分後のゼリーの離水が、当該薬剤の服用補助用ゼリーに対して1重量%以下である、[1]に記載の薬剤の服用補助用ゼリー。
([2]に記載の薬剤の服用補助用ゼリーは、嚥下困難者用食品たる表示の許可基準Iを満足し、かつ離水が極めて少ない。嚥下困難者でも誤飲の恐れがなく、薬剤を服用することができる。)
[3] 薬剤の服用補助用ゼリーに対して、寒天が0.1?0.5重量%含まれ、その他の増粘多糖類が0.1?1重量%含まれている、[1]または[2]に記載の薬剤の服用補助用ゼリー。
【0014】
[4] 前記その他の増粘多糖類が、ローカストビーンガム、キサンタンガム、アラビアガム、カラギナン、ジェランガム、タラガム、グアーガム、アルギン酸、アルギン酸塩、アカシアガムおよびタマリンドガムから選択される少なくとも1種の増粘多糖類である、[1]?[3]のいずれか1項に記載の薬剤の服用補助用ゼリー。
[5] さらに有機酸および/または有機酸塩を含み、pHが3以上4未満である[1]?[4]のいずれか1項に記載の薬剤の服用補助用ゼリー。
[6] LMペクチン、寒天およびその他の増粘多糖類を含有するゲル化剤、ゲル化促進剤、および必要に応じて加えられる任意成分の水溶液に、有機酸および/または有機酸塩を加えて水溶液のpHを3以上4未満に調整して、ゲル化させることによる、[5]に記載の薬剤の服用補助用ゼリーの製造方法。
[7] さらに甘味料を含む[5]に記載の薬剤の服用補助用ゼリー。
[8] 前記甘味料は、糖質系甘味料のうちの糖アルコール、又は、非糖質系甘味料である[7]に記載の薬剤の服用補助用ゼリー。
[9] 前記糖アルコールが、マルチトール、キシリトールおよびソルビトールから選択される少なくとも1種の糖アルコールである[8]に記載の薬剤の服用補助用ゼリー。
【発明の効果】
【0015】
本発明の薬剤の服用補助用ゼリーは、ゲル化したものを細断した後、薬剤を服用する時に薬剤と混ぜて薬剤の服用に用いられるので、薬剤の服用に適した離水、硬さ、付着性および凝集性は、本発明の薬剤の服用補助用ゼリーをゲル化させ、細断して生成されたゼリーにおいて測定される。本発明の薬剤の服用補助用ゼリーは、細断しても離水が極めて少ない。内視鏡検査で測定したところ、本発明の薬剤の服用補助用ゼリーを口腔内で咀嚼しても水分がほとんど喉に流出してくることが無かった。このように、離水による水分、および口腔内で無意識に咀嚼することで生じる水分がほとんど無いため、水分による誤嚥のリスクが極めて少ない。また、本発明の薬剤の服用補助用ゼリーは、細断しても凝集性が高い。そこで、薬剤の服用補助用ゼリーが口腔内でばらばらにはならず、ゼリーを誤嚥する危険性が少ない。さらに、本発明の薬剤の服用補助用ゼリーは、細断しても適度な付着性を有するため、薬剤に対してはその付着性によって薬剤の服用補助用ゼリーに包み込まれ、他方、喉および食道に対しては付着することがなく、加えて、本発明の薬剤の服用補助用ゼリーは、細断しても適度な硬さを有するため、喉および食道で詰まらず喉および食道を通過して消化器に移送される。
以上より、本発明の薬剤の服用補助用ゼリーによれば、薬剤の服用時に薬剤と混ぜて薬剤の服用に用いられるゼリーを細断した状態で、離水が少なく、また高い凝集性と適度な付着性と適度な硬さとを有して嚥下困難者用食品たる表示の許可基準I又はIIを満足するので、丸飲み法のような心身に苦痛を与える方法を用いる必要がなく、誤嚥の可能性が低く、薬剤を喉に残存させずに効率よく消化器へ移送することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
1.薬剤の服用補助用ゼリー
本発明の「薬剤の服用補助用ゼリー」には、LMペクチン、寒天およびその他の増粘多糖類を含有するゲル化剤と、ゲル化促進剤とが含まれる。
「LMペクチン」としては、カルシウムイオン等のゲル化促進剤の存在下でゲル化するものであれば、いかなるものでも使用することができる。例えば、脱エステル方法における酸処理タイプおよびアルカリ処理タイプのいずれも使用できるが、好ましくは酸処理タイプのものが挙げられる。好ましいLMペクチンとしては、例えばエステル化度が26?34%でアミド化度が15?22%のものが挙げられ、エステル化度が28?34%でアミド化度が15?20%のものがより好ましく、エステル化度が28?33%でアミド化度が15?22%のものがさらに好ましい。
LMペクチンは、本発明の薬剤の服用補助用ゼリーを目的の硬さとするための主成分として用いられる。また、LMペクチンを用いることで、付着性を向上させ、離水を抑えることができる。LMペクチンの含有量としては、本発明の薬剤の服用補助用ゼリーに対して、1?3重量%とする。1重量%未満であれば十分な硬さが得られないとともに離水を抑えることができない。一方、3重量%を超えると付着性が大きくなりすぎ、薬剤の服用補助用ゼリーとして適さなくなる。好ましくは1.1?2.5重量%が挙げられ、より好ましくは1.2?2.2重量%が挙げられ、さらに好ましくは1.3?2.1重量%が挙げられる。
【0017】
「寒天」としては、通常の市販されている寒天等が好適に用いられる。寒天は、薬剤の服用補助用ゼリーの硬さを高めると共に、同ゼリーが細断されやすくなるように加えられる。寒天の含有量としては、本発明の薬剤の服用補助用ゼリーに対して、0.1?0.5重量%が好ましい。0.1重量%以上で前述の効果が十分に得られ、0.5重量%を超えて含有させると離水率が大きくなる場合があるからである。より好ましくは0.2?0.4重量%が挙げられ、さらに好ましくは0.25?0.35重量%が挙げられる。
【0018】
「その他の増粘多糖類」としては、例えば、ローカストビーンガム、キサンタンガム、アラビアガム、カラギナン、ジェランガム、タラガム、グアーガム、アルギン酸、アルギン酸塩、アカシアガム、タマリンドガムおよびこれらの混合物等が挙げられる。好ましい例としてローカストビーンガムおよびキサンタンガムの混合物が挙げられる。2成分の混合物を用いる場合は、適した重量比で混合することができ、例えば1:9?9:1が挙げられ、好ましくは3:7?7:3が挙げられる。
その他の増粘多糖類は、離水を減少させ、硬さおよび付着性を向上させるために用いられる。その他の増粘多糖類の含有量としては、本発明の薬剤の服用補助用ゼリーに対して、0.1?1重量%が好ましい。0.1重量%以上で上述の効果が十分に得られ、1重量%を超えて含有させると硬さおよび付着性が高くなりすぎる場合があるからである。より好ましくは0.2?0.7重量%が挙げられ、さらに好ましくは0.3?0.5重量%が挙げられる。
【0019】
「ゲル化促進剤」としては、カルシウムイオンを提供するものであればいかなるものも用いることができる。例えば、乳酸カルシウム、リン酸三カルシウム、塩化カルシウム、グルコン酸カルシウム、リン酸水素カルシウム、リン酸二水素カルシウム、リン酸三水素カルシウム、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム等が挙げられ、これらの混合物を用いることもできる。好ましいゲル化促進剤として、乳酸カルシウムが挙げられる。
ゲル化促進剤は、LMペクチンをゲル化させるために用いられる。そこで、目的とする状態にゲル化させるために適した量が用いられる。ゲル化促進剤の含有量としては、乳酸カルシウムを用いた場合で表せば、LMペクチンに対して、0.05?0.5重量%が好ましい。0.05重量%以上でゲル化が適正な速さで進むためであり、0.5重量%を超えて含有させてもゲル化促進効果が飽和するからである。より好ましくは0.1?0.3重量%が挙げられ、さらに好ましくは0.15?0.25重量%が挙げられる。
【0020】
本発明の薬剤の服用補助用ゼリーには、その他の成分として、例えば、着色料、甘味料、香料、安定剤、保存剤、アルコール類、天然果汁、有機酸および有機酸塩等を添加することができる。甘味料としては、砂糖、オリゴ糖、マルチトール、エリスリトール、ソルビトール、キシリトール、アスパルテーム(登録商標)、アセスルファムカリウム、スクラロース、ステビア等が挙げられる。有機酸および/または有機酸塩としては、薬剤の服用補助用ゼリーのpHを3以上4未満、好ましくは3.3?3.9、さらに好ましくは3.5?3.8に調整できるものであり、食用が可能であるものであれば、いかなるものであってもよい。好ましい有機酸としては、例えば、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、コハク酸、アスコルビン酸、グルクロン酸、安息香酸等が挙げられ、より好ましくはクエン酸が挙げられる。有機酸塩としては、例えばこれらの有機酸のアルカリ塩(例えば、ナトリウム塩、カリウム塩等)が挙げられる。
【0021】
本発明の薬剤の服用補助用ゼリーは、細断した後、薬剤の服用に用いられる。そこで、薬剤の服用に適した「硬さ」、「付着性」および「凝集性」は、本発明の薬剤の服用補助用ゼリーを細断して生成されたゼリーにおいて、20±2℃で測定することで、確認することができる。「硬さ」、「付着性」および「凝集性」は、後述の実施例に記載されている通り、「特別用途食品の表示許可等について」との通達(食安発第0212001号:平成21年2月12日)に記載された測定方法に準じて測定することができる。
本発明の薬剤の服用補助用ゼリーを細断して生成されたゼリーの20±2℃での「硬さ」は、2000?6000N/m^(2)であり、好ましくは2500?6000N/m^(2)であり、さらに好ましくは2700?5000N/m^(2)である。
本発明の薬剤の服用補助用ゼリーを細断して生成されたゼリーの20±2℃での「付着性」は、200?500J/m^(3)であり、好ましくは200?400J/m^(3)であり、さらに好ましくは230?350J/m^(3)である。
本発明の薬剤の服用補助用ゼリーを細断して生成されたゼリーの20±2℃での「凝集性」は、0.2?0.6であり、好ましくは0.3?0.5である。
本発明の薬剤の服用補助用ゼリーを細断して生成されたゼリーの20±2℃での「硬さ」、「付着性」および「凝集性」は、LMペクチン、寒天およびその他の増粘多糖類の含有量を、それらの前記範囲の中で、適宜増減させることで、容易に調整することができる。
【0022】
本発明の薬剤の服用補助用ゼリーを細断して生成したゼリーの「離水」は、細断してから10分後に、当該薬剤の服用補助用ゼリーに対して3重量%以下である。離水は、好ましくは2重量%以下であり、より好ましくは1重量%以下であり、さらに好ましくは0.5重量%以下であり、特に好ましくは0.2重量%以下である。細断は、例えば、後述の試験例に用いられた方法でなされる。細断してから10分後の離水を基準としているのは、服用者が、例えば薬剤の服用補助用ゼリーを内部に含むパック容器から押し出すことで細断してから、薬剤と混合して服用するまでには、通常は10分間程度以内であるからである。
【0023】
2.薬剤の服用補助用ゼリーの製造方法
本発明の薬剤の服用補助用ゼリーは、例えば、LMペクチン、寒天およびその他の増粘多糖類を含有するゲル化剤、ゲル化促進剤、および必要に応じて加えられる任意成分の水溶液に、有機酸および/または有機酸塩を加えて水溶液のpHを3以上4未満に調整して、ゲル化させることによって製造することができる。
LMペクチン、寒天およびその他の増粘多糖類を含有するゲル化剤、ゲル化促進剤、および必要に応じて加えられる任意成分の水溶液を調製するには、例えば、溶解温度が高い物質から順次溶解させることが、物質の分解を抑えるためには好ましい。例えば、LMペクチン、寒天、ローカストビーンガムおよびキサンタンガムを加熱した水に溶解させる場合であれば、寒天、ローカストビーンガム、キサンタンガム、LMペクチンの順序で加熱した水に溶解させることができる。また、溶解を促進させるために、前もってLMペクチン、ゲル化剤および増粘剤を糖類とよく混合して混合物として水に溶解させることも好ましい。加熱した水に溶解させた後、脱泡を十分に行うことが好ましい。その後、得られた水溶液に、有機酸および/または有機酸塩の水溶液を加えてpHを3以上4未満、好ましくは3.3?3.9、より好ましくは3.5?3.8に調整する。その後、例えば、得られたゼリー液を容器に加えて、冷所で静置するか、室温まで放冷してその後冷蔵庫内に静置することで、本発明の薬剤の服用補助用ゼリーを製造することができる。
【0024】
3.薬剤の服用補助用ゼリーの使用
本発明の薬剤の服用補助用ゼリーは、細断した後、薬剤の服用に用いる。細断する方法としては、例えば、一定の直径の穴開き細断器に薬剤の服用補助用ゼリーを入れて、圧板で押し出すことで細断することができる。また、薬剤の服用補助用ゼリーを内部に含むパック容器の一部を、適当なスリット幅となるようにはさみで切断して穴をあけて、パック容器に圧力をかけて、内部の薬剤の服用補助用ゼリーを外部に押し出すことで、細断することもできる。細断する際の穴の直径またはスリット幅としては、例えば、4?15mm程度が挙げられ、好ましくは7?13mm程度である。
その細断された薬剤の服用補助用ゼリーを1または複数の薬剤と混ぜて、服用する。また、分包体を用いて、1または複数の薬剤を服用することもできる。
【実施例】
【0025】
以下、本発明の実施例、試験例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに何ら限定されるものではない。
本試験例は、以下の方法を用いて測定した。
A.細断されたゼリーの作製方法
容器の中のゼリーをスパーテルで200g掻き取って、2mmφ穴開き細断器に充填する。圧板で押出してステンレスカップに受ける。ステンレスカップからスパーテルで掻き取って保存容器に入れて20±2℃の保温庫に30分間程度保存する。
【0026】
B.細断されたゼリーの物性(硬さ、付着性、凝集性)の測定方法
厚生労働省の通達「特別用途食品の表示許可等について」(食安発第0212001号)の「嚥下困難者用食品の試験方法」に準拠して、細断されたゼリーの物性(硬さ、付着性、凝集性)を測定する。具体的な測定方法は、以下の通りである。
上記A.で作成された細断されたゼリーをスパーテルですくって、直径40mm、高さ15mmの2つの容器に高さ15mmに多めに詰める。容器の底を机の天板等に10回叩いて細断されたゼリー中の空気を抜く。容器の上縁からはみ出したものはカッター等でこそぎ取り、容器を密閉容器に入れて、20℃の保温庫に30分程度保存する。2つの容器のうち1つは、温度測定専用とし、他方の容器のゼリーの測定を行う際にゼリーの温度を測定して、20℃であることを確認する。
他方の容器の中の細断されたゼリーは、直線運動により物質の圧縮応力を測定することが可能な装置を用いて、直径20mm、高さ8mm樹脂性のプランジャーを用い、圧縮速度10mm/sec、クリアランス5mmで2回圧縮測定する。測定項目は、硬さ、付着性、凝集性、ゼリーの重量であり、上記測定後にゼリーの温度が20℃であることを確認する。
【0027】
<測定装置>
山電製 Rheoner II Creep Meter RE2-33005C
(卓上記録計:RE-3305-3N, アナログ出力改造:RE2-OP20C)
プランジャー:L50+L17+No.56
<測定値>
クリープメーターを以下のように設定する。
ゼリー試料の厚みは15mm固定とし、ゼリー試料に測定まで非接触とし、厚み自動測定は実施しない。また、歪率は66.7%で一定とする。測定開始感度設定は、0.02N/3回とする。A2測定開始感度は0.02N/2回とする。
【0028】
C.離水の測定方法
漏斗台に直径60mmのガラスロートを乗せる。ガラスロートに合わせてポリエチレンメッシュ(20メッシュ規格品)をカットして溶着したものを乗せる。ロートの滴下口の下に電子天秤の上に乗せた計量器を置く。
上記A.で作成された細断されたゼリー25gを上記ポリエチレンメッシュの上に乗せて、30分間、2分?10分ごとに滴下した水重量を記録する。細断してから10分後の離水を当該薬剤の服用補助用ゼリーに対する重量%で計算する。
【0029】
実験1.薬剤の服用補助用ゼリーの調製(1)
表2に記載の成分を表2に記載の量混合することでゼリー溶液1kgを調製し、ゲル化させることで、実施例1?6、比較例1および2の薬剤の服用補助用ゼリーを調製した。
【表2】

具体的な調製方法としては、反応容器に水を加え、60?90℃に加熱して、表2に記載の成分を順次添加して溶解させた。その際、LMペクチン、ローカストビーンガムおよびキサンタンガムは、上記甘味料の一部と混合してから、水溶液に加えた。その後、クエン酸を添加して水溶液のpHを3.7程度に調整し、脱泡して、ゼリー溶液1kgを調製した。得られたゼリー溶液を60℃程度で所定の容器に充填して、約5℃で貯蔵することで、薬剤の服用補助用ゼリーを得た。
【0030】
試験例1.市販の嚥下補助用ゼリーの細断された状態の物性
現在、日本国内で嚥下補助用ゼリーとして市販されている3つの市販品(市販品A?C)について、細断した状態での硬さ、付着性、凝集性および離水を測定した。その結果を表3に記す。
【表3】

3つの市販品とも、硬さは1000N/m^(2)以下であり、付着性が80J/m^(3)以下であり、凝集性が0.6以上であった。これらの測定値に基づけば、3つの市販品は「嚥下困難者用食品たる表示の許可基準」の許可基準Iには適合せず、辛うじて許可基準IIIに適合する程度であり、嚥下補助には効果が高くはないと思われる。さらに、3つの市販品の離水については、市販品A?Cはそれぞれ5重量%、1.3重量%および0重量%であり、市販品Aは細断された状態での離水が低いとはいえない。
以上より、3つの市販品は、薬剤の服用補助には十分ではないことが分かる。
【0031】
試験例2.実験1で調製されたゼリーの物性
実験1で得られたゼリーについて、細断した状態での硬さ、付着性、凝集性および離水を測定した。その結果を表4に記す。
【表4】

実施例1?6のゼリーは、硬さが2000?6000N/m^(2)であり、付着性が200?500J/m^(3)であり、凝集性が0.2?0.6であり、また10分後の離水が少なかった。なかでも実施例2?5のゼリーは、硬さが2500?6000N/m^(2)であり、付着性が200?400J/m^(3)であり、凝集性が0.2?0.6であり、また10分後の離水がほぼ無かった。従って、実施例1?6のゼリーは薬剤の服用補助に適しており、実施例2?5のゼリーはさらに薬剤の服用補助に適している。
他方、比較例1および2のゼリーは、硬さが2000N/m^(2)未満であり、付着性が200J/m^(3)未満であり、かなりの離水があった。
【0032】
実験2.薬剤の服用補助用ゼリーの調製(2)
表5に記載の成分を表5に記載の量混合することでゼリー溶液1kgを調製し、ゲル化させることで、実施例7?13、参考例14?15、比較例3?5の薬剤の服用補助用ゼリーを調製した。具体的な調製方法は実験1の場合と同じである。実施例7?9,12,13は、ローカストビーンガムとキサンタンガムの合計量を0.4重量%に維持しながら、キサンタンガムに対するローカストビーンガムの重量比を1,1.5,3,1/1.5,1/3と変化させたものである。実施例10,11は、キサンタンガムを添加せず、ローカストビーンガムの添加量を0.4重量%と0.2重量%とに変化させたもの、逆に、比較例3,4は、ローカストビーンガムを添加せず、キサンタンガムの添加量を0.4重量%と0.2重量%とに変化させたもの、比較例5はローカストビーンガムとキサンタンガムを共に添加しない場合である。ローカストビーンガムとキサンタンガム以外の成分の添加量は、実験1の実施例2に対応する。参考例14は、ローカストビーンガムとキサンタンガムを共に添加しない代わりに、ペクチンの量を0.4重量%増やして1.7重量%としたものである。参考例15は寒天を添加しない場合である。甘味料は、グラニュー糖(2.5重量%)、マルチトール(4.5重量%)およびキシリトール(5.2重量%)の混合物に固定している。なおマルチトールは、還元麦芽糖水飴と同一物質である。
【表5】

【0033】
試験例3.実験2で調製されたゼリーの物性
実験2で得られたゼリーについて、細断した状態での硬さ、付着性、凝集性、離水およびPHを測定した。その結果を表6及び表7に記す。離水については、10分後の離水と30分後の離水の両方を測定した。
キサンタンガムに対するローカストビーンガムの重量比を3?1/3の範囲で変化させたゼリー(実施例7?9,12,13)は、硬さが2519?2878N/m^(2)、付着性が246?287J/m^(3)、凝集性が0.44?0.47、PHが3.57?3.68の各範囲にあった。離水は、10分後の離水が0.1%重量以下、30分後の離水が2.2重量%以下であり、非常に少ない。従って、実施例7?9,12,13のゼリーは薬剤の服用補助に適している。
キサンタンガムを添加せずローカストビーンガムを0.4重量%添加したゼリー(実施例10)は、硬さが2742N/m^(2)、凝集性が0.48、PHは3.67、10分後の離水が0.0重量%、30分後の離水が0.8重量%と良好であるが、付着性が368J/m^(3)でやや高く、口腔内や歯にくっつき易くなる。キサンタンガムを添加せずローカストビーンガムの添加量を0.2重量%と減らしたゼリー(実施例11)は、硬さが2237N/m^(2)で不足し、10分後の離水が0.8重量%、30分後の離水が3.9重量%と大きく、離水し易くなる。
ローカストビーンガムを添加せずキサンタンガムを0.4重量%添加したゼリー(比較例3)は、離水は少ないが、硬さが1360N/m^(2)で大きく不足し、凝集性が0.79と高く弾力性が強いので喉越しの抵抗が大きく、付着性が472J/m^(3)で高いので口腔内や歯にくっつき易くなる。キサンタンガムの添加量を0.2重量%と減らしたゼリー(比較例4)は、さらに硬さが低下し、凝集性が0.74と高いため喉越しの抵抗が大きく、付着性が357J/m^(3)で高いので口腔内や歯にくっつき易くい傾向は維持される。
【表6】

【0034】
ローカストビーンガムとキサンタンガムを共に添加しないゼリー(比較例5)は、硬さが1623N/m^(2)で大きく不足し、10分後の離水が2.8重量%、30分後の離水が7.4重量%と大きい。ローカストビーンガムとキサンタンガムを共に添加しない代わりにペクチンの量を1.7重量%に増やしたゼリー(参考例14)は、硬さ、付着性、凝集性、離水に関して良好な結果であった。但し、食味の評価で甘みと酸味の両方が強い結果である。寒天を添加しないゼリー(参考例15)は、硬さ、付着性、離水に関しては良好であるが、凝集性が0.54とやや高いので喉越しの抵抗が大きくなる。
【表7】

【0035】
実験3.薬剤の服用補助用ゼリーの調製(3)
実験1及び2では添加する甘味料を、グラニュー糖、還元麦芽糖水飴(マルチトール)およびキシリトールの混合物に固定したが、実験3では甘味料の種類を変更した。表8に記載の成分を表8に記載の量混合することでゼリー溶液を調製し、ゲル化させることで、甘味料が未添加の比較例6と、各種の甘味料を添加した実施例16?25の薬剤の服用補助用ゼリーを調製した。具体的な調製方法は実験1、2の場合と同じである。実施例17?21で使用したマルチトール、ソルビトール、エリスリトール、キシリトールは、糖質系甘味料のうちの糖アルコールに属し、実施例22?25で使用したステビア、アスパルテーム(登録商標)、アセスルファムカリウム、スクラロースは非糖質系甘味料である。ゼリー(ペクチン)の保存性を高めるためにPH調整剤としてクエン酸を0.3重量%添加してPH4未満に維持しているが、酸味料であるクエン酸の酸味を抑えるために甘味料を使用している。グラニュー糖は11重量%の添加で酸味と甘みのバランスが良好であった。その他の甘味料については甘味度に応じてグラニュー糖の場合と同等の甘さになるように添加量を調整した。
【表8】

【0036】
試験例4.実験3で調製されたゼリーの物性
実験3で得られた各ゼリーについて、細断した状態での硬さ、付着性、凝集性、離水およびPHを測定した。その結果を表9に記す。離水については、10分後の離水と30分後の離水の両方を測定した。
【表9】

【0037】
比較例6(甘味料未添加)のゼリーは、10分後の離水が3.1重量%と大きく、薬剤の服用補助に適していない。実施例16(グラニュー糖)のゼリーは、比較例6のゼリーに比べて、硬く、付着性も大きいが、凝集性とPHは同程度である。離水については、10分後の離水が1.8重量%とやや少なく、薬剤の服用補助に使用可能である。
実施例17?21(糖アルコール)のゼリーは、硬さが2778?3547N/m^(2)、付着性が274?346J/m^(3)、凝集性が0.44?0.46、PHが3.57?3.74の各範囲にあった。硬さは、比較例6のゼリーに比べて硬くなっている。離水について、実施例17(甘味料:マルチトール),18(甘味料:ソルビトール),20(甘味料:キシリトール),21(甘味料:グラニュー糖とマルチトールとキシリトールの混合物)のゼリーは、10分後の離水が1重量%以下で少なかった。なかでも実施例18,20,21のゼリーは、10分後の離水が無く、実施例18、20のゼリーは、30分後の離水も1重量%以下で極めて少なかった。従って、マルチトール、キシリトール、ソルビトールの添加により、LMペクチン配合ゼリーの硬さが増し、離水減少の大きな効果が確認された。実施例17?21のゼリーは薬剤の服用補助に適しており、実施例18,20のゼリーはさらに薬剤の服用補助に適している。
実施例22?25のゼリーは、硬さが2255?2628N/m^(2)でゼリーを硬くする効果は大きくなく、付着性が242?263J/m^(3)であり、凝集性が0.44?0.47であり、PHは3.65?3.75の範囲にあった。離水については、10分後の離水が1重量%を超えており、離水減少の効果はあるが、実施例17?21のゼリーに比べて小さい。
【0038】
実験4.ゼリーの食塊形成性と水中分散性
薬剤の服用補助用ゼリーは、口腔内や喉から食道内では薬剤を包んだカプセルとして適度な柔軟性を持った食塊のまま移動し、胃中の水分によって速やかに分散して薬剤を放出することが望ましい。そこで、実験2及び3で得られた数種のゼリーと、ゼリーの市販品Dについて、食塊形成性と水中分散性を測定した。その結果を表10に記す。尚、ゼリーの市販品Dの物性の測定値は、硬さ700N/m^(2)、付着性119.1J/m^(3)、凝集性0.54、10分後の離水率3.8重量%、PH3.7であった。
食塊形成性については、ゼリー試料10gを高さ50cmから落下させ、変形拡散した試料の半径(拡散半径)で食塊形成の強弱を評価した。拡散半径が小さいほど食塊形成性が強く、拡散半径(mm)が大きいほど食塊形成性が弱いと判断される。
【表10】

比較例3については、5分間攪拌したが、小豆程度の大きさのゼリー塊が残ったため、分散時間を5分以上とした。
【0039】
嚥下困難者用食品表示の許可基準Iに相当する物性値が確認できた実施例7と参考例15は、食塊形成力が比較的強く、水中分散時間も比較的短かった。
比較例5、実施例19及び市販品Dのように離水が大きいものは食塊形成力が比較的弱かった。また比較例5のように硬さが2000N/m^(2)未満になると、水中分散時間も長くなった。さらに、比較例3のように硬さが2000N/m^(2)未満で凝集性が0.6を超え、付着性が400J/m^(3)を超えると、水中分散時間も極端に長くなった。
嚥下困難者用食品表示の許可基準Iに近い物性値の範囲にあり、且つ離水が少ないゼリーが、食塊形成性に優れ、かつ水中分散速度の速いゼリーであることが確認された。
【0040】
実験5.ゼリーの長期安定性
実験2で説明した実施例7の配合処方のゼリーをバリア性の高いフィルムに封止したサンプルについて、室内での長期保存性の評価試験を行い、以下の結果を得た。尚、フィルムは、バリア性の高いPET層を外側に、防湿性の高いナイロン層を中間層に、内側にシーラント層としてポリエチレン層を配した3層構造を有し、ポリエチレン層を向かい合わせた2枚のフィルムの間にゼリーを挟み、周囲をヒートシールしてサンプルを作製した。
硬さ、凝集性、付着性は、23ヶ月経過後のサンプルの値が初期値に対して、10から7%程度の変化に収まっていた。
離水に関しては、23ヶ月経過後のサンプルの離水は初期値と同等であった。
【0041】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなく請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味、および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明によって、誤嚥の可能性が低く、薬剤が喉に残存せずに効率よく消化器へ移送することができる薬剤の服用補助用ゼリーおよびその製造方法が提供される。
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
LMペクチン、寒天およびその他の増粘多糖類を含有するゲル化剤と、ゲル化促進剤と、甘味料とを含み、ゲル化し、薬剤の服用時に薬剤と混ぜて服用される薬剤の服用補助用ゼリーであって、
その他の増粘多糖類に、少なくともローカストビーンガムが含まれ、
LMペクチンが薬剤の服用補助用ゼリーに対して1?3重量%含まれ、
当該薬剤の服用補助用ゼリーを細断して生成されたゼリーの20±2℃の物性は、
硬さが、2000?6000N/m^(2)であり、
付着性が、200?500J/m^(3)であり、
凝集性が、0.2?0.6であり、
当該薬剤の服用補助用ゼリーを細断してから10分後のゼリーの離水が、当該薬剤の服用補助用ゼリーに対して3重量%以下である薬剤の服用補助用ゼリー。
【請求項2】
前記LMペクチンが薬剤の服用補助用ゼリーに対して1.2?2.2重量%含まれ、
当該薬剤の服用補助用ゼリーを細断して生成されたゼリーの20±2℃の物性は、
硬さが、2500?6000N/m^(2)であり、
付着性が、200?400J/m^(3)であり、
凝集性が、0.2?0.6であり、
当該薬剤の服用補助用ゼリーを細断してから10分後のゼリーの離水が、当該薬剤の服用補助用ゼリーに対して1重量%以下である請求項1に記載の薬剤の服用補助用ゼリー。
【請求項3】
薬剤の服用補助用ゼリーに対して、寒天が0.1?0.5重量%含まれ、その他の増粘多糖類が0.1?1重量%含まれている請求項1または2に記載の薬剤の服用補助用ゼリー。
【請求項4】
前記その他の増粘多糖類が、ローカストビーンガム、キサンタンガム、アラビアガム、カラギナン、ジェランガム、タラガム、グアーガム、アルギン酸、アルギン酸塩、アカシアガムおよびタマリンドガムから選択される少なくとも1種の増粘多糖類であって、前記その他の増粘多糖類に少なくともローカストビーンガムが含まれる請求項1?3のいずれか1項に記載の薬剤の服用補助用ゼリー。
【請求項5】
さらに有機酸および/または有機酸塩を含み、pHが3以上4未満である請求項1?4のいずれか1項に記載の薬剤の服用補助用ゼリー。
【請求項6】
LMペクチン、寒天およびその他の増粘多糖類を含有するゲル化剤、ゲル化促進剤、甘味料、および必要に応じて加えられる任意成分の水溶液に、有機酸および/または有機酸塩を加えて水溶液のpHを3以上4未満に調整して、ゲル化させることによる請求項5に記載の薬剤の服用補助用ゼリーの製造方法であって、
前記その他の増粘多糖類に少なくともローカストビーンガムが含まれる製造方法。
【請求項7】(削除)
【請求項8】
前記甘味料は、糖質系甘味料のうちの糖アルコール、又は、非糖質系甘味料である請求項5に記載の薬剤の服用補助用ゼリー。
【請求項9】
前記糖アルコールが、マルチトール、キシリトールおよびソルビトールから選択される少なくとも1種の糖アルコールである請求項8に記載の薬剤の服用補助用ゼリー。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2018-08-20 
出願番号 特願2016-574679(P2016-574679)
審決分類 P 1 651・ 536- YAA (A61K)
P 1 651・ 851- YAA (A61K)
P 1 651・ 853- YAA (A61K)
P 1 651・ 537- YAA (A61K)
P 1 651・ 121- YAA (A61K)
P 1 651・ 112- YAA (A61K)
最終処分 維持  
前審関与審査官 横山 敏志  
特許庁審判長 須藤 康洋
特許庁審判官 関 美祝
大熊 幸治
登録日 2017-04-21 
登録番号 特許第6128722号(P6128722)
権利者 株式会社モリモト医薬
発明の名称 薬剤の服用補助用ゼリーおよびその製造方法  
代理人 川北 喜十郎  
代理人 佐藤 玲太郎  
代理人 佐藤 玲太郎  
代理人 志波 邦男  
代理人 中村 由樹絵  

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