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審決分類 |
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載 C08G 審判 全部申し立て 2項進歩性 C08G 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 C08G |
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管理番号 | 1344836 |
異議申立番号 | 異議2018-700034 |
総通号数 | 227 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2018-11-30 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2018-01-18 |
確定日 | 2018-09-10 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第6164331号発明「ポリイミド前駆体及びポリイミド」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第6164331号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり,訂正後の請求項〔1?9〕,〔10?18〕,〔19?27〕,〔28?32〕,33について訂正することを認める。 特許第6164331号の請求項1?33に係る特許を維持する。 |
理由 |
第1 手続の経緯 特許第6164331号(請求項の数33。以下,「本件特許」という。)は,平成24年3月12日(優先権主張:平成23年3月11日,平成23年3月31日,平成24年1月20日(2件))を国際出願日とする特許出願(特願2013-504724号)の一部を,平成28年4月6日に新たな出願とした特許出願(特願2016-76388号)に係るものであって,平成29年6月30日に設定登録されたものである(特許掲載公報の発行日は,平成29年7月19日である。)。 その後,平成30年1月18日に,本件特許の請求項1?33に係る特許に対して,特許異議申立人である野村恒(以下,「申立人」という。)により,特許異議の申立てがされた。 本件特許異議の申立てにおける手続の経緯は,以下のとおりである。 平成30年 1月18日 特許異議申立書 4月26日 取消理由通知書 7月 5日 意見書,訂正請求書 7月10日 通知書(訂正請求があった旨の通知) 8月10日 意見書(申立人) 第2 訂正の請求について 1 訂正の内容 平成30年7月5日付けの訂正請求書による訂正(以下,「本件訂正」という。)の請求は,本件特許の特許請求の範囲を上記訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり,訂正後の請求項1?33について訂正することを求めるものであり,その内容は,以下のとおりである。下線は,訂正箇所を示す。 (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1中,「ポリイミド前駆体。」とあるのを,「ポリイミド前駆体(但し,下記<除外ポリイミド前駆体>に挙げられたものを除く)。」と訂正するとともに,請求項1の末尾に次の記載を追加する。 「<除外ポリイミド前駆体> (i)ポリイミド前駆体1-1: 1-メチル-ビシクロ[2.2.2]オクト-7-エン-2,3,5,6-テトラカルボン酸二無水物からなるテトラカルボン酸成分と,4,4’-ジアミノベンズアニリドを含有するジアミン成分との反応によって得られるポリイミド前駆体 (ii)ポリイミド前駆体1-2: 3,5,6-トリカルボキシ-2-カルボキシメチルノルボルネン-2:3,5:6-二無水物からなるテトラカルボン酸成分と,4,4’-ジアミノベンズアニリドを含有するジアミン成分との反応によって得られるポリイミド前駆体 (iii)ポリイミド前駆体1-5: 顔料を含有するポリイミド前駆体組成物 (iv)ポリイミド前駆体2: 4,4’-ジアミノベンズアニリド,3,3’-ジアミノジフェニルエーテルおよびビス(3-アミノプロピル)テトラメチルジシロキサンからなるジアミン成分と,1,3,3a,4,5,9b-ヘキサヒドロ-5-(テトラヒドロ-2,5-ジオキソ-3-フラニル)ナフト[1,2-c]フラン-1,3-ジオン(TDA)および1,2,4,5-シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物からなるテトラカルボン酸成分との反応によって得られるポリイミド前駆体」 (2)訂正事項2 特許請求の範囲の請求項10中,「ポリイミド。」とあるのを,「ポリイミド(但し,下記<除外ポリイミド>に挙げられたものを除く)。」と訂正するとともに,請求項10の末尾に次の記載を追加する。 「<除外ポリイミド> (i)ポリイミド1-3 1-メチル-ビシクロ[2.2.2]オクト-7-エン-2,3,5,6-テトラカルボン酸二無水物からなるテトラカルボン酸成分と,4,4’-ジアミノベンズアニリドを含有するジアミン成分との反応によって得られるポリイミド (ii)ポリイミド1-4 3,5,6-トリカルボキシ-2-カルボキシメチルノルボルネン-2:3,5:6-二無水物からなるテトラカルボン酸成分と,4,4’-ジアミノベンズアニリドを含有するジアミン成分との反応によって得られるポリイミド (iii)ポリイミド1-6 顔料を含有するポリイミド組成物」 (3)訂正事項3 特許請求の範囲の請求項19中,「ポリイミド。」とあるのを,「ポリイミド(但し,下記<除外ポリイミド前駆体,ポリイミドおよび混合物>に挙げられたものを除く)。」と訂正するとともに,請求項19の末尾に次の記載を追加する。 「<除外ポリイミド前駆体,ポリイミドおよび混合物> (i)ポリイミド前駆体1-1,ポリイミド1-3および混合物: 1-メチル-ビシクロ[2.2.2]オクト-7-エン-2,3,5,6-テトラカルボン酸二無水物からなるテトラカルボン酸成分と,4,4’-ジアミノベンズアニリドを含有するジアミン成分との反応によって得られるポリイミド前駆体,ポリイミドおよびそれらの混合物 (ii)ポリイミド前駆体1-2,ポリイミド1-4および混合物: 3,5,6-トリカルボキシ-2-カルボキシメチルノルボルネン-2:3,5:6-二無水物からなるテトラカルボン酸成分と,4,4’-ジアミノベンズアニリドを含有するジアミン成分との反応によって得られるポリイミド前駆体,ポリイミドおよびそれらの混合物 (iii)ポリイミド前駆体1-5,ポリイミド1-6および混合物: 顔料を含有する,ポリイミド前駆体組成物,ポリイミド組成物およびそれらの混合物 (iv)ポリイミド前駆体2: 4,4’-ジアミノベンズアニリド,3,3’-ジアミノジフェニルエーテルおよびビス(3-アミノプロピル)テトラメチルジシロキサンからなるジアミン成分と,1,3,3a,4,5,9b-ヘキサヒドロ-5-(テトラヒドロ-2,5-ジオキソ-3-フラニル)ナフト[1,2-c]フラン-1,3-ジオン(TDA)および1,2,4,5-シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物からなるテトラカルボン酸成分との反応によって得られるポリイミド前駆体」 (4)訂正事項4 特許請求の範囲の請求項28中,「Bは,化学構造中に少なくとも一つのアミド結合と芳香族環とを有する2価の基である。)」とあるのを,「Bは,下記化学式(4-1)?(4-3)からなる群から選択される1種以上の2価の基である。 【化31】 (式中,Ar_(1),Ar_(2)及びAr_(3)は,それぞれ独立に,炭素数が6?18の芳香族環を有する2価の基であり,n1は,0?5の整数である。) 【化32】 (式中,Ar_(4),Ar_(5),Ar_(6),Ar_(7)及びAr_(8)は,それぞれ独立に,炭素数が6?18の芳香族環を有する2価の基であり,n2は,0?5の整数である。) 【化33】 (式中,Ar_(9),Ar_(10),Ar_(11),Ar_(12)及びAr_(13)は,それぞれ独立に,炭素数が6?18の芳香族環を有する2価の基であり,n3は,0?5の整数である。)」と訂正する。 (5)訂正事項5 特許請求の範囲の請求項33中,「Bは,化学構造中に少なくとも一つのアミド結合と芳香族環とを有する2価の基である。)」とあるのを,「Bは,下記化学式(4-1)?(4-3)からなる群から選択される1種以上の2価の基である。 【化34】 (式中,Ar_(1),Ar_(2)及びAr_(3)は,それぞれ独立に,炭素数が6?18の芳香族環を有する2価の基であり,n1は,0?5の整数である。) 【化35】 (式中,Ar_(4),Ar_(5),Ar_(6),Ar_(7)及びAr_(8)は,それぞれ独立に,炭素数が6?18の芳香族環を有する2価の基であり,n2は,0?5の整数である。) 【化36】 (式中,Ar_(9),Ar_(10),Ar_(11),Ar_(12)及びAr_(13)は,それぞれ独立に,炭素数が6?18の芳香族環を有する2価の基であり,n3は,0?5の整数である。)」と訂正する。 2 訂正の適否についての当審の判断 (1)訂正事項1?3について 訂正事項1?3に係る訂正は,それぞれ,訂正前の請求項1,10,19におけるポリイミド前駆体又はポリイミドから,特定のものを除くものであるから,特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。また,これらの訂正は,本件特許の願書に添付した明細書又は特許請求の範囲のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において,新たな技術的事項を導入しないものといえるから,同明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてするものであり,また,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものではない。 (2)訂正事項4及び5について 訂正事項4及び5に係る訂正は,訂正前の請求項28,33における化学式(5)中の「B」について,いずれも,「化学構造中に少なくとも一つのアミド結合と芳香族環とを有する2価の基」を「化学式(4-1)?(4-3)からなる群から選択される1種以上の2価の基」(注:式は省略。以下,同様。)とするものである。 これらの訂正は,化学式(5)中の「B」について,いずれも,「化学構造中に少なくとも一つのアミド結合と芳香族環とを有する2価の基」を「化学式(4-1)?(4-3)からなる群から選択される1種以上の2価の基」に限定するものであるから,特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。そして,本件特許の願書に添付した明細書の【0020】?【0023】には,Bが,化学式(4-1)?(4-3)からなる群から選択される1種以上であることが記載されているから,これらの訂正は,同明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてするものであり,また,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものではない。 (3)一群の請求項について 訂正前の請求項1?9について,請求項2?9は,請求項1を直接又は間接的に引用するものであり,上記の訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。したがって,訂正前の請求項1?9に対応する訂正後の請求項1?9は,一群の請求項である。そして,本件訂正は,その一群の請求項ごとに請求がされたものである。 訂正前の請求項10?18について,請求項11?18は,請求項10を直接又は間接的に引用するものであり,上記の訂正事項2によって記載が訂正される請求項10に連動して訂正されるものである。したがって,訂正前の請求項10?18に対応する訂正後の請求項10?18は,一群の請求項である。そして,本件訂正は,その一群の請求項ごとに請求がされたものである。 訂正前の請求項19?27について,請求項20?27は,請求項19を直接又は間接的に引用するものであり,上記の訂正事項3によって記載が訂正される請求項19に連動して訂正されるものである。したがって,訂正前の請求項19?27に対応する訂正後の請求項19?27は,一群の請求項である。そして,本件訂正は,その一群の請求項ごとに請求がされたものである。 訂正前の請求項28?32について,請求項29?32は,請求項28を直接又は間接的に引用するものであり,上記の訂正事項4によって記載が訂正される請求項28に連動して訂正されるものである。したがって,訂正前の請求項28?32に対応する訂正後の請求項28?32は,一群の請求項である。そして,本件訂正は,その一群の請求項ごとに請求がされたものである。 3 まとめ 上記2のとおり,各訂正事項に係る訂正は,特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる事項を目的とするものに該当し,同条4項に適合するとともに,同条9項において準用する同法126条5項及び6項に適合するものであるから,結論のとおり,本件訂正を認める。 第3 本件発明 前記第2で述べたとおり,本件訂正は認められるので,本件特許の請求項1?33に係る発明は,本件訂正後の特許請求の範囲の請求項1?33に記載された事項により特定される以下のとおりのものである(以下,それぞれ項番に従い「本件発明1」等という。本件特許の願書に添付した明細書を「本件明細書」という。)。 【請求項1】 下記化学式(1)で表される繰り返し単位と,下記化学式(1’)で表される繰り返し単位を含むことを特徴とするポリイミド前駆体(但し,下記<除外ポリイミド前駆体>に挙げられたものを除く)。 【化1】 (式中,Aは,化学構造中に少なくとも一つの脂肪族6員環を有し芳香族環を有さない4価の基であり,Bは,下記化学式(4-1)?(4-3)からなる群から選択される1種以上の2価の基であり: 【化2】 (式中,Ar_(1)及びAr_(3)は,それぞれ独立に,炭素数が6?18の芳香族環を有する2価の基であり,Ar_(2)はベンゼン,ビフェニル,ターフェニル,ナフタレンおよびアントラセンからなる群より選ばれる芳香族化合物から2つの水素を除いた2価の基であり(但し,水素原子の一部が炭素数1?3のアルキル基,ハロゲン基,ニトロ基,水酸基およびカルボン酸基からなる群より選ばれる置換基を有していてもよい。),n1は,0?5の整数である。) 【化3】 (式中,Ar_(4),Ar_(6),Ar_(7)及びAr_(8)は,それぞれ独立に,炭素数が6?18の芳香族環を有する2価の基であり,Ar_(5)はベンゼン,ビフェニル,ターフェニル,ナフタレンおよびアントラセンからなる群より選ばれる芳香族化合物から2つの水素を除いた2価の基であり(但し,水素原子の一部が炭素数1?3のアルキル基,ハロゲン基,ニトロ基,水酸基およびカルボン酸基からなる群より選ばれる置換基を有していてもよい。),n2は,0?5の整数である。) 【化4】 (式中,Ar_(9),Ar_(10),Ar_(11)及びAr_(13)は,それぞれ独立に,炭素数が6?18の芳香族環を有する2価の基であり,Ar_(12)はベンゼン,ビフェニル,ターフェニル,ナフタレンおよびアントラセンからなる群より選ばれる芳香族化合物から2つの水素を除いた2価の基であり(但し,水素原子の一部が炭素数1?3のアルキル基,ハロゲン基,ニトロ基,水酸基およびカルボン酸基からなる群より選ばれる置換基を有していてもよい。),n3は,0?5の整数である。但し,n3が0でAr_(13)がベンゼンであるとき,Ar_(12)は, 【化5】 を表さない。) ;X_(1),X_(2)はそれぞれ独立に水素,炭素数1?6のアルキル基,または炭素数3?9のアルキルシリル基である。) 【化6】 (式中,A’およびB’は,それぞれ4価の基および2価の基であって,A’がAと異なるか,B’がBと異なるか,またはA’およびB’がそれぞれがAおよびBと異なり;X_(1)’およびX_(2)’は,化学式(1)においてX_(1)およびX_(2)に対して与えられる意味を有する。但し,化学式(1)のBが 【化7】 であるとき,B’は,カルボン酸基,スルホン酸基,リン酸基およびホスホン酸基から選ばれる基を有さない。) <除外ポリイミド前駆体> (i)ポリイミド前駆体1-1: 1-メチル-ビシクロ[2.2.2]オクト-7-エン-2,3,5,6-テトラカルボン酸二無水物からなるテトラカルボン酸成分と,4,4’-ジアミノベンズアニリドを含有するジアミン成分との反応によって得られるポリイミド前駆体 (ii)ポリイミド前駆体1-2: 3,5,6-トリカルボキシ-2-カルボキシメチルノルボルネン-2:3,5:6-二無水物からなるテトラカルボン酸成分と,4,4’-ジアミノベンズアニリドを含有するジアミン成分との反応によって得られるポリイミド前駆体 (iii)ポリイミド前駆体1-5: 顔料を含有するポリイミド前駆体組成物 (iv)ポリイミド前駆体2: 4,4’-ジアミノベンズアニリド,3,3’-ジアミノジフェニルエーテルおよびビス(3-アミノプロピル)テトラメチルジシロキサンからなるジアミン成分と,1,3,3a,4,5,9b-ヘキサヒドロ-5-(テトラヒドロ-2,5-ジオキソ-3-フラニル)ナフト[1,2-c]フラン-1,3-ジオン(TDA)および1,2,4,5-シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物からなるテトラカルボン酸成分との反応によって得られるポリイミド前駆体 【請求項2】 前記化学式(1)中,Bが,前記化学式(4-1)で表される2価の基であることを特徴する請求項1に記載のポリイミド前駆体。 【請求項3】 前記化学式(1)中,Bの構造を与えるジアミン成分が,4,4’-ジアミノベンズアニリド,3’-クロロ-4,4’-ジアミノベンズアニリド,2’-クロロ-4,4’-ジアミノベンズアニリド,2’,6’-ジクロロ-4,4’-ジアミノベンズアニリド,3’-メチル-4,4’-ジアミノベンズアニリド,2’-メチル-4,4’-ジアミノベンズアニリド,2’,6’-ジメチル-4,4’-ジアミノベンズアニリド,3’-トリフルオロメチル-4,4’-ジアミノベンズアニリド,2’-トリフルオロメチル-4,4’-ジアミノベンズアニリド,3-クロロ-4,4’-ジアミノベンズアニリド,3-ブロモ-4,4’-ジアミノベンズアニリド,3-メチル-4,4’-ジアミノベンズアニリド,2-クロロ-4,4’-ジアミノベンズアニリド,2-ブロモ-4,4’-ジアミノベンズアニリド,2-メチル-4,4’-ジアミノベンズアニリド,4,3’-ジアミノベンズアニリド,4’-フルオロ-4,3’-ジアミノベンズアニリド,4’-クロロ-4,3’-ジアミノベンズアニリド,4’-ブロモ-4,3’-ジアミノベンズアニリド,3,4’-ジアミノベンズアニリド,および4-クロロ-3,4’-ジアミノベンズアニリドからなる群より選ばれることを特徴する請求項1に記載のポリイミド前駆体。 【請求項4】 前記化学式(1’)中,B’の構造を与えるジアミン成分が,オキシジアニリン,p-フェニレンジアミン,m-フェニレンジアミン,ベンジジン,3,3’-ジメチルベンジジン,2,2’-ジメチルベンジジン,p-メチレンビス(フェニレンジアミン),ビス(アミノフェノキシ)ベンゼン,ビス[(アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロ プロパン,ビス(アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン,ビス(アミノフェニル)スルホン,ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン,シクロヘキサンジアミン,ビス[(アミノフェノキシ)フェニル]プロパン,ビス(アミノヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン,およびビス[(アミノフェノキシ)ジフェニル]スルホンからなる群より選ばれることを特徴する請求項1?3のいずれか1項に記載のポリイミド前駆体。 【請求項5】 前記化学式(1)中,Aが,下記化学式(3-1)?(3-4)からなる群より選択される1種以上であることを特徴とする請求項1?4のいずれか1項に記載のポリイミド前駆体。 【化8】 【化9】 (式中,R1は直接結合,CH_(2)基,C(CH_(3))_(2)基,SO_(2)基,Si(CH_(3))_(2)基,C(CF_(3))_(2)基,酸素原子,または硫黄原子である。) 【化10】 (式中,R2は,CH_(2)基,CH_(2)CH_(2)基,酸素原子,または硫黄原子である。) 【化11】 (式中,R3及びR4は,それぞれ独立に,CH_(2)基,CH_(2)CH_(2)基,酸素原子,または硫黄原子である。) 【請求項6】 前記化学式(1)中,Aが,前記化学式(3-4)で表される4価の基であることを特徴とする請求項5に記載のポリイミド前駆体。 【請求項7】 前記化学式(1)中,Aを与えるテトラカルボン酸成分が,デカヒドロ-1,4:5,8-ジメタノナフタレン-2,3,6,7-テトラカルボン酸の立体異性体,および(4arH,8acH)-デカヒドロ-1t,4t:5c,8c-ジメタノナフタレン-2t ,3t,6c,7c-テトラカルボン酸からなる群より選ばれることを特徴とする請求項1?5のいずれか1項に記載のポリイミド前駆体。 【請求項8】 前記化学式(1’)中,A’の構造を与えるテトラカルボン酸成分が,2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン,4-(2,5-ジオキソテトラヒドロフラン-3-イル)-1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-1,2-ジカルボン酸,ピロメリット酸,ベンゾフェノンテトラカルボン酸,ビフェニルテトラカルボン酸,オキシジフタル酸,ビスカルボキシフェニルジメチルシラン,ビスジカルボキシフェノキシジフェニルスルフィド,スルホニルジフタル酸,シクロブタンテトラカルボン酸,およびイソプロピリデンジフェノキシビスフタル酸からなる群より選ばれることを特徴とする請求項1?7のいずれか1項に記載のポリイミド前駆体。 【請求項9】 ポリイミド前駆体中のテトラカルボン酸に由来する構造を与える全テトラカルボン酸成分100モル%中,前記化学式(1)中のAの構造を与えるテトラカルボン酸成分の割合が70モル%超であり,それと異なるテトラカルボン酸成分の割合が30モル%以下であり, ポリイミド前駆体中のジアミンに由来する構造を与える全ジアミン成分100モル%中,前記化学式(1)中のBの構造を与えるジアミン成分の割合が70モル%超であり,それと異なるジアミン成分の割合が30モル%以下であること を特徴とする請求項1?8のいずれか1項に記載のポリイミド前駆体。 【請求項10】 下記化学式(5)で表される繰り返し単位と,下記化学式(5’)で表される繰り返し単位を含むことを特徴とするポリイミド(但し,下記<除外ポリイミド>に挙げられたものを除く)。 【化12】 (式中,AおよびBは,請求項1において定義されたとおりの意味を示す。) 【化13】 (式中,A’およびB’は,請求項1において定義されたとおりの意味を示す。) <除外ポリイミド> (i)ポリイミド1-3 1-メチル-ビシクロ[2.2.2]オクト-7-エン-2,3,5,6-テトラカルボン酸二無水物からなるテトラカルボン酸成分と,4,4’-ジアミノベンズアニリドを含有するジアミン成分との反応によって得られるポリイミド (ii)ポリイミド1-4 3,5,6-トリカルボキシ-2-カルボキシメチルノルボルネン-2:3,5:6-二無水物からなるテトラカルボン酸成分と,4,4’-ジアミノベンズアニリドを含有するジアミン成分との反応によって得られるポリイミド (iii)ポリイミド1-6 顔料を含有するポリイミド組成物 【請求項11】 前記化学式(5)中,Bが,前記化学式(4-1)で表される2価の基であることを特徴する請求項10に記載のポリイミド。 【請求項12】 前記化学式(5)中,Bの構造を与えるジアミン成分が,4,4’-ジアミノベンズア ニリド,3’-クロロ-4,4’-ジアミノベンズアニリド,2’-クロロ-4,4’-ジアミノベンズアニリド,2’,6’-ジクロロ-4,4’-ジアミノベンズアニリド,3’-メチル-4,4’-ジアミノベンズアニリド,2’-メチル-4,4’-ジアミノベンズアニリド,2’,6’-ジメチル-4,4’-ジアミノベンズアニリド,3’-トリフルオロメチル-4,4’-ジアミノベンズアニリド,2’-トリフルオロメチル-4,4’-ジアミノベンズアニリド,3-クロロ-4,4’-ジアミノベンズアニリド,3-ブロモ-4,4’-ジアミノベンズアニリド,3-メチル-4,4’-ジアミノベンズアニリド,2-クロロ-4,4’-ジアミノベンズアニリド,2-ブロモ-4,4’-ジアミノベンズアニリド,2-メチル-4,4’-ジアミノベンズアニリド,4,3’-ジアミノベンズアニリド,4’-フルオロ-4,3’-ジアミノベンズアニリド,4’-クロロ-4,3’-ジアミノベンズアニリド,4’-ブロモ-4,3’-ジアミノベンズアニリド,3,4’-ジアミノベンズアニリド,および4-クロロ-3,4’-ジアミノベンズアニリドからなる群より選ばれることを特徴する請求項10に記載のポリイミド。 【請求項13】 前記化学式(5’)中,B’の構造を与えるジアミン成分が,オキシジアニリン,p-フェニレンジアミン,m-フェニレンジアミン,ベンジジン,3,3’-ジメチルベンジジン,2,2’-ジメチルベンジジン,p-メチレンビス(フェニレンジアミン),ビス(アミノフェノキシ)ベンゼン,ビス[(アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン,ビス(アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン,ビス(アミノフェニル)スルホン,ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン,シクロヘキサンジアミン,ビス[(アミノフェノキシ)フェニル]プロパン,ビス(アミノヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン,およびビス[(アミノフェノキシ)ジフェニル]スルホンからなる群より選ばれることを特徴する請求項10?12のいずれか1項に記載のポリイミド。 【請求項14】 前記化学式(5)中,Aが,下記化学式(3-1)?(3-4)からなる群より選択される1種以上であることを特徴とする請求項10?13のいずれか1項に記載のポリイミド。 【化14】 【化15】 (式中,R1は直接結合,CH_(2)基,C(CH_(3))_(2)基,SO_(2)基,Si(CH_(3))_(2)基,C(CF_(3))_(2)基,酸素原子,または硫黄原子である。) 【化16】 (式中,R2は,CH_(2)基,CH_(2)CH_(2)基,酸素原子,または硫黄原子である。) 【化17】 (式中,R3及びR4は,それぞれ独立に,CH_(2)基,CH_(2)CH_(2)基,酸素原子,または硫黄原子である。) 【請求項15】 前記化学式(5)中,Aが,前記化学式(3-4)で表される4価の基であることを特徴とする請求項14に記載のポリイミド。 【請求項16】 前記化学式(5)中,Aを与えるテトラカルボン酸成分が,デカヒドロ-1,4:5,8-ジメタノナフタレン-2,3,6,7-テトラカルボン酸の立体異性体,および(4arH,8acH)-デカヒドロ-1t,4t:5c,8c-ジメタノナフタレン-2t,3t,6c,7c-テトラカルボン酸からなる群より選ばれることを特徴とする請求項10?14のいずれか1項に記載のポリイミド。 【請求項17】 前記化学式(5’)中,A’の構造を与えるテトラカルボン酸成分が,2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン,4-(2,5-ジオキソテトラヒドロフラン-3-イル)-1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-1,2-ジカルボン酸,ピロメリット酸,ベンゾフェノンテトラカルボン酸,ビフェニルテトラカルボン酸,オキシジフタル酸,ビスカルボキシフェニルジメチルシラン,ビスジカルボキシフェノキシジフェニルスルフィド,スルホニルジフタル酸,シクロブタンテトラカルボン酸,およびイソプロピリデンジフェノキシビスフタル酸からなる群より選ばれることを特徴とする請求項10?16のいずれか1項に記載のポリイミド。 【請求項18】 ポリイミド中のテトラカルボン酸に由来する構造を与える全テトラカルボン酸成分100モル%中,前記化学式(5)中のAの構造を与えるテトラカルボン酸成分の割合が70モル%超であり,それと異なるテトラカルボン酸成分の割合が30モル%以下であり, ポリイミド前駆体中のジアミンに由来する構造を与える全ジアミン成分100モル%中,前記化学式(5)中のBの構造を与えるジアミン成分の割合が70モル%超であり,それと異なるジアミン成分の割合が30モル%以下であること を特徴とする請求項10?17のいずれか1項に記載のポリイミド。 【請求項19】 化学式(1),化学式(1)中の2つのN原子のうちの一方がイミド化された構造,化学式(5),およびこれらの2種以上の組み合わせから選ばれる繰り返し単位群Iと, 化学式(1’),化学式(1’)中の2つのN原子のうちの一方がイミド化された構造,化学式(5’),およびこれらの2種以上の組み合わせから選ばれる繰り返し単位群I’ を含むことを特徴とするポリイミド前駆体またはポリイミド(但し,下記<除外ポリイミド前駆体,ポリイミドおよび混合物>に挙げられたものを除く)。 【化18】 (式中,A,B,X_(1)およびX_(2)は,請求項1において定義されたとおりの意味を示す。) 【化19】 (式中,A’,B’,X_(1)’およびX_(2)’は,請求項1において定義されたとおりの意味を示す。) 【化20】 (式中,AおよびBは,請求項1において定義されたとおりの意味を示す。) 【化21】 (式中,A’およびB’は,請求項1において定義されたとおりの意味を示す。) <除外ポリイミド前駆体,ポリイミドおよび混合物> (i)ポリイミド前駆体1-1,ポリイミド1-3および混合物: 1-メチル-ビシクロ[2.2.2]オクト-7-エン-2,3,5,6-テトラカルボン酸二無水物からなるテトラカルボン酸成分と,4,4’-ジアミノベンズアニリドを含有するジアミン成分との反応によって得られるポリイミド前駆体,ポリイミドおよびそれらの混合物 (ii)ポリイミド前駆体1-2,ポリイミド1-4および混合物: 3,5,6-トリカルボキシ-2-カルボキシメチルノルボルネン-2:3,5:6-二無水物からなるテトラカルボン酸成分と,4,4’-ジアミノベンズアニリドを含有するジアミン成分との反応によって得られるポリイミド前駆体,ポリイミドおよびそれらの混合物 (iii)ポリイミド前駆体1-5,ポリイミド1-6および混合物: 顔料を含有する,ポリイミド前駆体組成物,ポリイミド組成物およびそれらの混合物 (iv)ポリイミド前駆体2: 4,4’-ジアミノベンズアニリド,3,3’-ジアミノジフェニルエーテルおよびビス(3-アミノプロピル)テトラメチルジシロキサンからなるジアミン成分と,1,3,3a,4,5,9b-ヘキサヒドロ-5-(テトラヒドロ-2,5-ジオキソ-3-フラニル)ナフト[1,2-c]フラン-1,3-ジオン(TDA)および1,2,4,5-シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物からなるテトラカルボン酸成分との反応によって得られるポリイミド前駆体 【請求項20】 前記繰り返し単位群I中,Bが,前記化学式(4-1)で表される2価の基であることを特徴する請求項19に記載のポリイミド前駆体またはポリイミド。 【請求項21】 前記繰り返し単位群I中,Bの構造を与えるジアミン成分が,4,4’-ジアミノベンズアニリド,3’-クロロ-4,4’-ジアミノベンズアニリド,2’-クロロ-4,4 ’-ジアミノベンズアニリド,2’,6’-ジクロロ-4,4’-ジアミノベンズアニリド,3’-メチル-4,4’-ジアミノベンズアニリド,2’-メチル-4,4’-ジアミノベンズアニリド,2’,6’-ジメチル-4,4’-ジアミノベンズアニリド,3’-トリフルオロメチル-4,4’-ジアミノベンズアニリド,2’-トリフルオロメチル-4,4’-ジアミノベンズアニリド,3-クロロ-4,4’-ジアミノベンズアニリド,3-ブロモ-4,4’-ジアミノベンズアニリド,3-メチル-4,4’-ジアミノベンズアニリド,2-クロロ-4,4’-ジアミノベンズアニリド,2-ブロモ-4,4’-ジアミノベンズアニリド,2-メチル-4,4’-ジアミノベンズアニリド,4,3’-ジアミノベンズアニリド,4’-フルオロ-4,3’-ジアミノベンズアニリド,4’-クロロ-4,3’-ジアミノベンズアニリド,4’-ブロモ-4,3’-ジアミノベンズアニリド,3,4’-ジアミノベンズアニリド,および4-クロロ-3,4’-ジアミノベンズアニリドからなる群より選ばれることを特徴する請求項19に記載のポリイミド前駆体またはポリイミド。 【請求項22】 前記繰り返し単位群I’中,B’の構造を与えるジアミン成分が,オキシジアニリン,p-フェニレンジアミン,m-フェニレンジアミン,ベンジジン,3,3’-ジメチルベンジジン,2,2’-ジメチルベンジジン,p-メチレンビス(フェニレンジアミン),ビス(アミノフェノキシ)ベンゼン,ビス[(アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン,ビス(アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン,ビス(アミノフェニル)スルホン,ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン,シクロヘキサンジアミン,ビス[(アミノフェノキシ)フェニル]プロパン,ビス(アミノヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン,およびビス[(アミノフェノキシ)ジフェニル]スルホンからなる群より選ばれることを特徴する請求項19?21のいずれか1項に記載のポリイミド前駆体またはポリイミド。 【請求項23】 前記繰り返し単位群I中,Aが,下記化学式(3-1)?(3-4)からなる群より選択される1種以上であることを特徴とする請求項19?22のいずれか1項に記載のポリイミド前駆体またはポリイミド。 【化22】 【化23】 (式中,R1は直接結合,CH_(2)基,C(CH_(3))_(2)基,SO_(2)基,Si(CH_(3))_(2)基,C(CF_(3))_(2)基,酸素原子,または硫黄原子である。) 【化24】 (式中,R2は,CH_(2)基,CH_(2)CH_(2)基,酸素原子,または硫黄原子である。) 【化25】 (式中,R3及びR4は,それぞれ独立に,CH_(2)基,CH_(2)CH_(2)基,酸素原子,または硫黄原子である。) 【請求項24】 前記繰り返し単位群I中,Aが,前記化学式(3-4)で表される4価の基であることを特徴とする請求項23に記載のポリイミド前駆体またはポリイミド。 【請求項25】 前記繰り返し単位群I中,Aを与えるテトラカルボン酸成分が,デカヒドロ-1,4:5,8-ジメタノナフタレン-2,3,6,7-テトラカルボン酸の立体異性体,および(4arH,8acH)-デカヒドロ-1t,4t:5c,8c-ジメタノナフタレン-2t,3t,6c,7c-テトラカルボン酸からなる群より選ばれることを特徴とする請求項19?23のいずれか1項に記載のポリイミド前駆体またはポリイミド。 【請求項26】 前記繰り返し単位群I’中,A’の構造を与えるテトラカルボン酸成分が,2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン,4-(2,5-ジオキソテトラヒドロフラン-3-イル)-1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-1,2-ジカルボン酸,ピロメリット酸,ベンゾフェノンテトラカルボン酸,ビフェニルテトラカルボン酸,オキシジフタル酸,ビスカルボキシフェニルジメチルシラン,ビスジカルボキシフェノキシジフェニルスルフィド,スルホニルジフタル酸,シクロブタンテトラカルボン酸,およびイソプロピリデンジフェノキシビスフタル酸からなる群より選ばれることを特徴とする請求項19?25のいずれか1項に記載のポリイミド前駆体またはポリイミド。 【請求項27】 ポリイミド前駆体またはポリイミド中のテトラカルボン酸に由来する構造を与える全テトラカルボン酸成分100モル%中,前記繰り返し単位群I中のAの構造を与えるテトラカルボン酸成分の割合が70モル%超であり,それと異なるテトラカルボン酸成分の割合が30モル%以下であり, ポリイミド前駆体中のジアミンに由来する構造を与える全ジアミン成分100モル%中,前記繰り返し単位群I中のBの構造を与えるジアミン成分の割合が70モル%超であり,それと異なるジアミン成分の割合が30モル%以下であること を特徴とする請求項19?26のいずれか1項に記載のポリイミド前駆体またはポリイミド。 【請求項28】 ガラス基材とその上に形成されたポリイミドフィルムとを有するポリイミドフィルム/ガラス積層体であって, 前記ポリイミドフィルムの厚さが1?150μmであり,前記ポリイミドフィルムを構 成するポリイミドが,下記化学式(5)で表される繰り返し単位を含むことを特徴とするポリイミドフィルム/ガラス積層体(但し,カラーフィルターを除く)。 【化26】 (式中,Aは,化学構造中に少なくとも一つの脂肪族6員環を有し芳香族環を有さない4価の基であり,Bは,下記化学式(4-1)?(4-3)からなる群から選択される1種以上の2価の基である。 【化31】 (式中,Ar_(1),Ar_(2)及びAr_(3)は,それぞれ独立に,炭素数が6?18の芳香族環を有する2価の基であり,n1は,0?5の整数である。) 【化32】 (式中,Ar_(4),Ar_(5),Ar_(6),Ar_(7)及びAr_(8)は,それぞれ独立に,炭素数が6?18の芳香族環を有する2価の基であり,n2は,0?5の整数である。) 【化33】 (式中,Ar_(9),Ar_(10),Ar_(11),Ar_(12)及びAr_(13)は,それぞれ独立に,炭素数が6?18の芳香族環を有する2価の基であり,n3は,0?5の整数である。) ) 【請求項29】 前記ポリイミドフィルムの表面に,さらにガスバリア層または無機層を有することを特徴とする請求項28に記載のポリイミドフィルム/ガラス積層体。 【請求項30】 さらに導電層を有することを特徴とする請求項28または29に記載のポリイミドフィルム/ガラス積層体。 【請求項31】 前記導電層が回路であることを特徴とする請求項30に記載のポリイミドフィルム/ガラス積層体。 【請求項32】 さらにトランジスタを有することを特徴とする請求項28?30のいずれか1項に記載のポリイミドフィルム/ガラス積層体。 【請求項33】 ポリイミドフィルム上に,ガスバリア層,無機層,導電層およびトランジスタから選ばれる少なくとも1つが設けられているフレキシブル基板であって, 前記ポリイミドフィルムの厚さが1?150μmであり,前記ポリイミドフィルムを構成するポリイミドが,下記化学式(5)で表される繰り返し単位を含むことを特徴とするフレキシブル基板。 【化27】 (式中,Aは,化学構造中に少なくとも一つの脂肪族6員環を有し芳香族環を有さない4価の基であり,Bは,下記化学式(4-1)?(4-3)からなる群から選択される1種以上の2価の基である。 【化34】 (式中,Ar_(1),Ar_(2)及びAr_(3)は,それぞれ独立に,炭素数が6?18の芳香族環を有する2価の基であり,n1は,0?5の整数である。) 【化35】 (式中,Ar_(4),Ar_(5),Ar_(6),Ar_(7)及びAr_(8)は,それぞれ独立に,炭素数が6?18の芳香族環を有する2価の基であり,n2は,0?5の整数である。) 【化36】 (式中,Ar_(9),Ar_(10),Ar_(11),Ar_(12)及びAr_(13)は,それぞれ独立に,炭素数が6?18の芳香族環を有する2価の基であり,n3は,0?5の整数である。) ) 第4 取消理由の概要 1 特許異議申立書に記載した特許異議の申立ての理由 本件発明1?33(本件訂正前の請求項1?33に係る発明に対応する。)は,下記(1)?(5)のとおりの取消理由があるから,本件特許の請求項1?33に係る特許は,特許法113条2号又は4号に該当し,取り消されるべきものである。証拠方法として,下記(6)の甲第1号証?甲第3号証(以下,単に「甲1」等という。)を提出する。 (1)取消理由1-1(新規性) 本件発明1?5,8,10?14,17,19?23,26及び28は,甲1に記載された発明であるから,特許法29条1項3号に該当し特許を受けることができないものである。 (2)取消理由1-2(新規性) 本件発明1?5,8,10?14,17,19?23,26及び28は,甲2に記載された発明であるから,特許法29条1項3号に該当し特許を受けることができないものである。 (3)取消理由2-1(進歩性) 本件発明1?33は,甲1に記載された発明及び甲1?3に記載された事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものである。 (4)取消理由2-2(進歩性) 本件発明1?33は,甲2に記載された発明及び甲1?3に記載された事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものである。 (5)取消理由3(サポート要件) 本件発明1?33は,特許請求の範囲の記載が特許法36条6項1号に適合するものではない。 (6)証拠方法 ・甲1 特開2002-114907号公報 ・甲2 特開2003-292578号公報 ・甲3 「電子材料・実装技術における熱応力の解析・制御とトラブル対策?低熱膨張・高耐熱性エレクトロニクス関連材料の開発?」,株式会社技術情報協会,2006年6月1日,p.202?203 2 取消理由通知書に記載した取消理由 上記1のうち, ・取消理由1-1(新規性)(ただし,本件発明1?5,10?14及び19?23に対するもの。) ・取消理由1-2(新規性)(ただし,本件発明1?5,8,19?23及び26に対するもの。) ・取消理由2-1(進歩性)(ただし,本件発明1?27に対するもの。) ・取消理由3(サポート要件)(ただし,本件発明28?33に対するもの。) と同旨。 第5 当審の判断 以下に述べるように,取消理由通知書に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議の申立ての理由によっては,本件特許の請求項1?33に係る特許を取り消すことはできない。 1 取消理由通知書に記載した取消理由 (1)取消理由1-1(新規性)(ただし,本件発明1?5,10?14及び19?23に対するもの。) ア 甲1に記載された発明 甲1の記載(調整例5(【0031】,【0032】),調整例11(【0034】,【0035】))によれば,甲1には,以下の発明が記載されていると認められる。 「4,4’-ジアミノベンズアニリド19.43g,3,3’-ジアミノジフェニルエーテル17.12gおよびビス(3-アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン2.24gをγ-ブチロラクトン370gとともに仕込み,これを攪拌しながら,1-メチル-ビシクロ[2.2.2]オクト-7-エン-2,3,5,6-テトラカルボン酸二無水物50.12gを添加し,80℃で3時間反応させた後,無水フタル酸0.17gを加えてさらに80℃で1時間反応させた後,室温(25℃)で1時間攪拌して得られた,濃度19.4重量%,粘度205mPa・sのポリアミック酸溶液。」(以下,「甲1発明1」という。) 「4,4’-ジアミノベンズアニリド118.74g,3,3’-ジアミノジフェニルスルフォン129.73gおよびビス(3-アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン13.67gをγ-ブチロラクトン1264,2gとともに仕込み,これを攪拌しながら,3,5,6-トリカルボキシ-2-カルボキシメチルノルボルネン-2:3,5:6-二無水物274.7gを添加し,80℃で3時間反応させた後,無水フタル酸3.268gを加えてさらに80℃で1時間反応させた後,室温(25℃)で1時間攪拌して得られた,濃度25重量%,粘度543mPa・sのポリアミック酸溶液。」(以下,「甲1発明2」という。) 「甲1発明1のポリアミック酸溶液から無アルカリガラス基板上に形成された,複屈折率Δnが0.0038である,2μmの硬化薄膜。」(以下,「甲1発明3」という。) 「甲1発明2のポリアミック酸溶液から無アルカリガラス基板上に形成された,複屈折率Δnが0.0012である,2μmの硬化薄膜。」(以下,「甲1発明4」という。) イ 本件発明1について (ア)甲1発明1との対比 本件発明1と甲1発明1とを対比する。 甲1発明1における「ポリアミック酸」は,本件発明1における「ポリイミド前駆体」に相当する。 甲1発明1に係るポリアミック酸は,テトラカルボン酸二無水物成分である「1-メチル-ビシクロ[2.2.2]オクト-7-エン-2,3,5,6-テトラカルボン酸二無水物」と,ジアミン成分である「4,4’-ジアミノベンズアニリド」,「3,3’-ジアミノジフェニルエーテル」及び「ビス(3-アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン」を反応させて得られたものである。 そうすると,本件発明1と甲1発明1とは,いずれも,ポリイミド前駆体である点で共通するものの,少なくとも,以下の点で相違する。 ・相違点1 本件発明1は,「(但し,下記<除外ポリイミド前駆体>に挙げられたものを除く)」ものであり,その「<除外ポリイミド前駆体>」として,「ポリイミド前駆体1-1」である「1-メチル-ビシクロ[2.2.2]オクト-7-エン-2,3,5,6-テトラカルボン酸二無水物からなるテトラカルボン酸成分と,4,4’-ジアミノベンズアニリドを含有するジアミン成分との反応によって得られるポリイミド前駆体」が挙げられているのに対して,甲1発明1は,テトラカルボン酸二無水物成分である「1-メチル-ビシクロ[2.2.2]オクト-7-エン-2,3,5,6-テトラカルボン酸二無水物」と,ジアミン成分である「4,4’-ジアミノベンズアニリド」,「3,3’-ジアミノジフェニルエーテル」及び「ビス(3-アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン」を反応させて得られたポリアミック酸である点。 (イ)相違点1の検討 本件発明1に係るポリイミド前駆体は,少なくとも,「ポリイミド前駆体1-1」が除かれたものである。 一方,甲1発明1に係るポリアミック酸は,上記「ポリイミド前駆体1-1」に相当するものと認められる。すなわち,甲1発明1に係るポリアミック酸は,本件発明1に係るポリイミド前駆体から除かれていることになる。 そうすると,相違点1は実質的な相違点である。 したがって,本件発明1は,甲1に記載された発明であるとはいえない。 (ウ)甲1発明2との対比 本件発明1と甲1発明2とを対比すると,甲1発明2に係るポリアミック酸は,テトラカルボン酸二無水物成分である「3,5,6-トリカルボキシ-2-カルボキシメチルノルボルネン-2:3,5:6-二無水物」と,ジアミン成分である「4,4’-ジアミノベンズアニリド」,「3,3’-ジアミノジフェニルスルフォン」及び「ビス(3-アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン」を反応させて得られたものであるから,上記(ア)と同様に,両者は,いずれも,ポリイミド前駆体である点で共通するものの,少なくとも,以下の点で相違する。 ・相違点2 本件発明1は,「(但し,下記<除外ポリイミド前駆体>に挙げられたものを除く)」ものであり,その「<除外ポリイミド前駆体>」として,「ポリイミド前駆体1-2」である「3,5,6-トリカルボキシ-2-カルボキシメチルノルボルネン-2:3,5:6-二無水物からなるテトラカルボン酸成分と,4,4’-ジアミノベンズアニリドを含有するジアミン成分との反応によって得られるポリイミド前駆体」が挙げられているのに対して,甲1発明2は,テトラカルボン酸二無水物成分である「3,5,6-トリカルボキシ-2-カルボキシメチルノルボルネン-2:3,5:6-二無水物」と,ジアミン成分である「4,4’-ジアミノベンズアニリド」,「3,3’-ジアミノジフェニルスルフォン」及び「ビス(3-アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン」を反応させて得られたポリアミック酸である点。 (エ)相違点2の検討 本件発明1に係るポリイミド前駆体は,少なくとも,「ポリイミド前駆体1-2」が除かれたものである。 一方,甲1発明2に係るポリアミック酸は,上記「ポリイミド前駆体1-2」に相当するものと認められる。すなわち,甲1発明2に係るポリアミック酸は,本件発明1に係るポリイミド前駆体から除かれていることになる。 そうすると,相違点2は実質的な相違点である。 したがって,本件発明1は,甲1に記載された発明であるとはいえない。 ウ 本件発明10について (ア)甲1発明3との対比 本件発明10と甲1発明3とを対比する。 甲1発明3における「硬化薄膜」は,甲1発明1のポリアミック酸溶液から形成されたものであるが,この硬化薄膜がポリイミドからなるものであることは明らかであるから,本件発明10における「ポリイミド」に相当する。 そして,甲1発明1に係るポリアミック酸は,上記イ(ア)で述べたとおりのものである。 そうすると,本件発明10と甲1発明3とは,いずれも,ポリイミドである点で共通するものの,少なくとも,以下の点で相違する。 ・相違点3 本件発明10は,「(但し,下記<除外ポリイミド>に挙げられたものを除く)」ものであり,その「<除外ポリイミド>」として,「ポリイミド1-3」である「1-メチル-ビシクロ[2.2.2]オクト-7-エン-2,3,5,6-テトラカルボン酸二無水物からなるテトラカルボン酸成分と,4,4’-ジアミノベンズアニリドを含有するジアミン成分との反応によって得られるポリイミド」が挙げられているのに対して,甲1発明3は,テトラカルボン酸二無水物成分である「1-メチル-ビシクロ[2.2.2]オクト-7-エン-2,3,5,6-テトラカルボン酸二無水物」と,ジアミン成分である「4,4’-ジアミノベンズアニリド」,「3,3’-ジアミノジフェニルエーテル」及び「ビス(3-アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン」を反応させて得られた甲1発明1に係るポリアミック酸溶液から形成されたポリイミドである点。 (イ)相違点3の検討 本件発明10に係るポリイミドは,少なくとも,「ポリイミド1-3」が除かれたものである。 一方,甲1発明3に係るポリイミドは,上記「ポリイミド1-3」に相当するものと認められる。すなわち,甲1発明3に係るポリイミドは,本件発明10に係るポリイミドから除かれていることになる。 そうすると,相違点3は実質的な相違点である。 したがって,本件発明10は,甲1に記載された発明であるとはいえない。 (ウ)甲1発明4との対比 本件発明10と甲1発明4とを対比する。 甲1発明4における「硬化薄膜」は,甲1発明2のポリアミック酸溶液から形成されたものであるが,この硬化薄膜がポリイミドからなるものであることは明らかであるから,本件発明10における「ポリイミド」に相当する。 そして,甲1発明2に係るポリアミック酸は,上記イ(ウ)で述べたとおりのものである。 そうすると,本件発明10と甲1発明4とは,いずれも,ポリイミドである点で共通するものの,少なくとも,以下の点で相違する。 ・相違点4 本件発明10は,「(但し,下記<除外ポリイミド>に挙げられたものを除く)」ものであり,その「<除外ポリイミド>」として,「ポリイミド1-4」である「3,5,6-トリカルボキシ-2-カルボキシメチルノルボルネン-2:3,5:6-二無水物からなるテトラカルボン酸成分と,4,4’-ジアミノベンズアニリドを含有するジアミン成分との反応によって得られるポリイミド」が挙げられているのに対して,甲1発明4は,テトラカルボン酸二無水物成分である「3,5,6-トリカルボキシ-2-カルボキシメチルノルボルネン-2:3,5:6-二無水物」と,ジアミン成分である「4,4’-ジアミノベンズアニリド」,「3,3’-ジアミノジフェニルスルフォン」及び「ビス(3-アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン」を反応させて得られた甲1発明2に係るポリアミック酸溶液から形成されたポリイミドである点。 (エ)相違点4の検討 本件発明10に係るポリイミドは,少なくとも,「ポリイミド1-4」が除かれたものである。 一方,甲1発明4に係るポリイミドは,上記「ポリイミド1-4」に相当するものと認められる。すなわち,甲1発明4に係るポリイミドは,本件発明10に係るポリイミドから除かれていることになる。 そうすると,相違点4は実質的な相違点である。 したがって,本件発明10は,甲1に記載された発明であるとはいえない。 エ 本件発明19について 本件発明19に係るポリイミド前駆体又はポリイミドは,「(但し,下記<除外ポリイミド前駆体,ポリイミドおよび混合物>に挙げられたものを除く)」ものである。 そして,その「<除外ポリイミド前駆体,ポリイミドおよび混合物>」として,「ポリイミド前駆体1-1,ポリイミド1-3および混合物」である「1-メチル-ビシクロ[2.2.2]オクト-7-エン-2,3,5,6-テトラカルボン酸二無水物からなるテトラカルボン酸成分と,4,4’-ジアミノベンズアニリドを含有するジアミン成分との反応によって得られるポリイミド前駆体,ポリイミドおよびそれらの混合物」と,「ポリイミド前駆体1-2,ポリイミド1-4および混合物」である「3,5,6-トリカルボキシ-2-カルボキシメチルノルボルネン-2:3,5:6-二無水物からなるテトラカルボン酸成分と,4,4’-ジアミノベンズアニリドを含有するジアミン成分との反応によって得られるポリイミド前駆体,ポリイミドおよびそれらの混合物」が挙げられている。 一方,甲1発明1に係るポリアミック酸,甲1発明2に係るポリアミック酸,甲1発明3に係るポリイミド,甲1発明4に係るポリイミドが,それぞれ,本件発明19において,「<除外ポリイミド前駆体,ポリイミドおよび混合物>」として挙げられている「ポリイミド前駆体1-1」,「ポリイミド前駆体1-2」,「ポリイミド1-3」,「ポリイミド1-4」に相当するものであることは,上記イ,ウのとおりである。すなわち,甲1発明1に係るポリアミック酸,甲1発明2に係るポリアミック酸,甲1発明3に係るポリイミド,甲1発明4に係るポリイミドは,本件発明19に係るポリイミド前駆体又はポリイミドから除かれていることになる。 以上によれば,本件発明19は,上記イ,ウで本件発明1及び10について述べたのと同様に,甲1に記載された発明であるとはいえない。 オ 本件発明2?5,11?14及び20?23について 本件発明2?5は,本件発明1を直接又は間接的に引用するものであり,本件発明11?14は,本件発明10を直接又は間接的に引用するものであり,本件発明20?23は,本件発明19を直接又は間接的に引用するものであるが,上記イ?エで述べたとおり,本件発明1,10及び19が,いずれも,甲1に記載された発明であるとはいえない以上,本件発明2?5,11?14及び20?23についても同様に,甲1に記載された発明であるとはいえない。 カ まとめ 以上のとおり,本件発明1?5,10?14及び19?23は,いずれも,甲1に記載された発明であるとはいえない。 したがって,取消理由1-1(新規性)(ただし,本件発明1?5,10?14及び19?23に対するもの。)によっては,本件特許の請求項1?5,10?14及び19?23に係る特許を取り消すことはできない。 (2)取消理由1-2(新規性)(ただし,本件発明1?5,8,19?23及び26に対するもの。) ア 甲2に記載された発明 甲2の記載(比較調整例2(【0037】))によれば,甲2には,以下の発明が記載されていると認められる。 「4,4’-ジアミノベンズアニリド19.43g,3,3’-ジアミノジフェニルエーテル17.12gおよびビス(3-アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン2.24gをγ-ブチロラクトン377gとともに仕込み,これを攪拌しながら,1,3,3a,4,5,9b-ヘキサヒドロ-5-(テトラヒドロ-2,5-ジオキソ-3-フラニル)ナフト[1,2-c]フラン-1,3-ジオン(TDA)53.54gと1,2,4,5-シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物4.03gを添加し,80℃で3時間反応させた後,室温(25℃)で1時間攪拌して得られた,濃度20重量%,粘度31mPa・sのポリアミック酸溶液。」(以下,「甲2発明」という。) イ 本件発明1について (ア)対比 本件発明1と甲2発明とを対比する。 甲2発明における「ポリアミック酸」は,本件発明1における「ポリイミド前駆体」に相当する。 甲2発明に係るポリアミック酸は,ジアミン成分である「4,4’-ジアミノベンズアニリド」,「3,3’-ジアミノジフェニルエーテル」及び「ビス(3-アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン」と,テトラカルボン酸二無水物成分である「1,3,3a,4,5,9b-ヘキサヒドロ-5-(テトラヒドロ-2,5-ジオキソ-3-フラニル)ナフト[1,2-c]フラン-1,3-ジオン(TDA)」及び「1,2,4,5-シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物」を反応させて得られたものである。 そうすると,本件発明1と甲2発明とは,いずれも,ポリイミド前駆体である点で共通するものの,少なくとも,以下の点で相違する。 ・相違点5 本件発明1は,「(但し,下記<除外ポリイミド前駆体>に挙げられたものを除く)」ものであり,その「<除外ポリイミド前駆体>」として,「ポリイミド前駆体2」である「4,4’-ジアミノベンズアニリド,3,3’-ジアミノジフェニルエーテルおよびビス(3-アミノプロピル)テトラメチルジシロキサンからなるジアミン成分と,1,3,3a,4,5,9b-ヘキサヒドロ-5-(テトラヒドロ-2,5-ジオキソ-3-フラニル)ナフト[1,2-c]フラン-1,3-ジオン(TDA)および1,2,4,5-シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物からなるテトラカルボン酸成分との反応によって得られるポリイミド前駆体」が挙げられているのに対して,甲2発明は,ジアミン成分である「4,4’-ジアミノベンズアニリド」,「3,3’-ジアミノジフェニルエーテル」及び「ビス(3-アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン」と,テトラカルボン酸二無水物成分である「1,3,3a,4,5,9b-ヘキサヒドロ-5-(テトラヒドロ-2,5-ジオキソ-3-フラニル)ナフト[1,2-c]フラン-1,3-ジオン(TDA)」及び「1,2,4,5-シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物」を反応させて得られたポリアミック酸である点。 (イ)相違点5の検討 本件発明1に係るポリイミド前駆体は,少なくとも,「ポリイミド前駆体2」が除かれたものである。 一方,甲2発明に係るポリアミック酸は,上記「ポリイミド前駆体2」に相当するものと認められる。すなわち,甲2発明に係るポリアミック酸は,本件発明1に係るポリイミド前駆体から除かれていることになる。 そうすると,相違点5は実質的な相違点である。 したがって,本件発明1は,甲2に記載された発明であるとはいえない。 ウ 本件発明19について 本件発明19に係るポリイミド前駆体又はポリイミドは,「(但し,下記<除外ポリイミド前駆体,ポリイミドおよび混合物>に挙げられたものを除く)」ものである。 そして,その「<除外ポリイミド前駆体,ポリイミドおよび混合物>」として,「ポリイミド前駆体2」である「4,4’-ジアミノベンズアニリド,3,3’-ジアミノジフェニルエーテルおよびビス(3-アミノプロピル)テトラメチルジシロキサンからなるジアミン成分と,1,3,3a,4,5,9b-ヘキサヒドロ-5-(テトラヒドロ-2,5-ジオキソ-3-フラニル)ナフト[1,2-c]フラン-1,3-ジオン(TDA)および1,2,4,5-シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物からなるテトラカルボン酸成分との反応によって得られるポリイミド前駆体」が挙げられている。 一方,甲2発明に係るポリアミック酸が,本件発明19において,「<除外ポリイミド前駆体,ポリイミドおよび混合物>」として挙げられている「ポリイミド前駆体2」に相当するものであることは,上記イのとおりである。すなわち,甲2発明に係るポリアミック酸は,本件発明19に係るポリイミド前駆体又はポリイミドから除かれていることになる。 以上によれば,本件発明19は,上記イで本件発明1について述べたのと同様に,甲2に記載された発明であるとはいえない。 エ 本件発明2?5,8,20?23及び26について 本件発明2?5及び8は,本件発明1を直接又は間接的に引用するものであり,本件発明20?23及び26は,本件発明19を直接又は間接的に引用するものであるが,上記イ,ウで述べたとおり,本件発明1及び19が,いずれも,甲2に記載された発明であるとはいえない以上,本件発明2?5,8,20?23及び26についても同様に,甲2に記載された発明であるとはいえない。 オ まとめ 以上のとおり,本件発明1?5,8,19?23及び26は,いずれも,甲2に記載された発明であるとはいえない。 したがって,取消理由1-2(新規性)(ただし,本件発明1?5,8,19?23及び26に対するもの。)によっては,本件特許の請求項1?5,8,19?23及び26に係る特許を取り消すことはできない。 (3)取消理由2-1(進歩性)(ただし,本件発明1?27に対するもの。) ア 甲1に記載された発明 甲1の記載(請求項1,3,10)によれば,甲1には,上記(1)アで認定した甲1発明1?4のほか,以下の発明が記載されていると認められる。 「テトラカルボン酸二無水物成分とジアミン成分を極性溶剤中で反応せしめてなるポリアミック酸と顔料を含有してなる熱硬化性樹脂溶液組成物であって,該テトラカルボン酸二無水物成分の少なくとも50モル%以上が脂環式テトラカルボン酸二無水物であり,該ジアミン成分が,4,4’-ジアミノベンズアニリドおよび4,4’-ジアミノジフェニルスルフォンから選ばれた少なくとも1種を含む,熱硬化性樹脂溶液組成物。」(以下,「甲1発明5」という。) 「甲1発明5の熱硬化性樹脂溶液組成物からなる硬化膜を,透明基板上に有する,カラーフィルター。」(以下,「甲1発明6」という。) イ 本件発明1について (ア)甲1発明1との対比 本件発明1と甲1発明1とを対比すると,両者は,上記(1)イ(ア)のとおり,ポリイミド前駆体である点で共通するものの,少なくとも,相違点1で相違する。 (イ)相違点1の検討 a 本件発明1と甲1発明1との関係について 甲1発明1に係るポリアミック酸は,テトラカルボン酸二無水物成分である「1-メチル-ビシクロ[2.2.2]オクト-7-エン-2,3,5,6-テトラカルボン酸二無水物」と,ジアミン成分である「4,4’-ジアミノベンズアニリド」,「3,3’-ジアミノジフェニルエーテル」及び「ビス(3-アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン」を反応させて得られたものである。 そして,上記(1)イ(イ)で述べたとおり,甲1発明1に係るポリアミック酸は,本件発明1に係るポリイミド前駆体から除かれている。 ここで,甲1発明1における「1-メチルービシクロ[2.2.2]オクト-7-エン-2,3,5,6-テトラカルボン酸二無水物」は,本件発明1における「化学式(1)」(注:式は省略。以下,同様。)中の「A」の構造を与えるものに相当し,同「4,4’-ジアミノベンズアニリド」は,同「化学式(1)」中の「B」の構造を与えるものに相当し,同「3,3’-ジアミノジフェニルエーテル」及び「ビス(3-アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン」は,いずれも,同「化学式(1’)」中の「B’」の構造を与えるものに相当する。 b 相違点1の容易想到性について 甲1には,テトラカルボン酸二無水物成分及びジアミン成分として,甲1発明1で実際に使用されるもののほかに,本件発明1における「化学式(1)」中の「A」及び「B」の構造を与えるものに相当するものや,同「化学式(1’)」中の「A’」及び「B’」の構造を与えるものに相当するものが,多数記載されている(請求項2,5,【0011】,【0013】,【0014】)。 しかしながら,本件明細書の記載(【0003】,【0007】,【0008】,【0010】,【0011】,【0032】?【0034】,【0038】,【0052】,実施例1?21,比較例1?7,表4-1,表4-2,表5)によれば,本件発明1は,ポリイミド前駆体において,「化学式(1)」中の「A」及び「B」がそれぞれ特定の構造を有する「化学式(1)で表される繰り返し単位」を含むものとすることによって,透明性,折り曲げ耐性,高耐熱性などの優れた特性を有し,さらに極めて低い線膨張係数や優れた耐溶剤性を併せ有するポリイミドの前駆体を提供することができるというものである。 一方,甲1?3のいずれにも,このような事項については何ら記載されておらず,また,技術常識であるともいえない。 そうすると,甲1発明1において,甲1発明1で実際に使用されるテトラカルボン酸二無水物成分及びジアミン成分に代えて,甲1に多数記載されているテトラカルボン酸二無水物成分及びジアミン成分の中から,本件発明1における「化学式(1)」中の「A」及び「B」の構造を与えるものに相当するものを組み合わせて使用することが,当業者が容易に想到することができたということはできない。そして,本件発明1は,上記のとおり,透明性,折り曲げ耐性,高耐熱性などの優れた特性を有し,さらに極めて低い線膨張係数や優れた耐溶剤性を併せ有するポリイミドの前駆体を提供することができるという,当業者が予測することができない格別顕著な効果を奏するものである。 したがって,本件発明1は,甲1に記載された発明及び甲1?3に記載された事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (ウ)甲1発明2との対比 本件発明1と甲1発明2とを対比すると,両者は,上記(1)イ(ウ)のとおり,ポリイミド前駆体である点で共通するものの,少なくとも,相違点2で相違する。 (エ)相違点2の検討 a 本件発明1と甲1発明2との関係について 甲1発明2に係るポリアミック酸は,テトラカルボン酸二無水物成分である「3,5,6-トリカルボキシ-2-カルボキシメチルノルボルネン-2:3,5:6-二無水物」と,ジアミン成分である「4,4’-ジアミノベンズアニリド」,「3,3’-ジアミノジフェニルスルフォン」及び「ビス(3-アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン」を反応させて得られたものである そして,上記(1)イ(エ)で述べたとおり,甲1発明2に係るポリアミック酸は,本件発明1に係るポリイミド前駆体から除かれている。 ここで,甲1発明2における「3,5,6-トリカルボキシ-2-カルボキシメチルノルボルネン-2:3,5:6-二無水物」は,本件発明1における「化学式(1)」中の「A」の構造を与えるものに相当し,同「4,4’-ジアミノベンズアニリド」は,同「化学式(1)」中の「B」の構造を与えるものに相当し,同「3,3’-ジアミノジフェニルスルフォン」及び「ビス(3-アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン」は,いずれも,同「化学式(1’)」中の「B’」の構造を与えるものに相当する。 b 相違点2の容易想到性について 上記(イ)bで述べたとおり,甲1には,テトラカルボン酸二無水物成分及びジアミン成分として,甲1発明2で実際に使用されるもののほかに,本件発明1における「化学式(1)」中の「A」及び「B」の構造を与えるものに相当するものや,同「化学式(1’)」中の「A’」及び「B’」の構造を与えるものに相当するものが,多数記載されている。 しかしながら,上記(イ)bで相違点1について述べたのと同様の理由により,甲1発明2において,甲1発明2で実際に使用されるテトラカルボン酸二無水物成分及びジアミン成分に代えて,甲1に多数記載されているテトラカルボン酸二無水物成分及びジアミン成分の中から,本件発明1における「化学式(1)」中の「A」及び「B」の構造を与えるものに相当するものを組み合わせて使用することが,当業者が容易に想到することができたということはできない。そして,本件発明1は,上記(イ)bで述べたとおり,当業者が予測することができない格別顕著な効果を奏するものである。 したがって,本件発明1は,甲1に記載された発明及び甲1?3に記載された事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (オ)甲1発明5との対比 本件発明1と甲1発明5とを対比すると,甲1発明5における「ポリアミック酸」は,本件発明1における「ポリイミド前駆体」に相当するから,両者は,いずれも,ポリイミド前駆体に関するものである点で共通するものの,少なくとも,以下の点で相違する。 ・相違点6 本件発明1は,ポリイミド前駆体が,「化学式(1)で表される繰り返し単位」を含むものであり,「式中,Aは,化学構造中に少なくとも一つの脂肪族6員環を有し芳香族環を有さない4価の基であり,Bは,下記化学式(4-1)?(4-3)からなる群から選択される1種以上の2価の基であ」るのに対して,甲1発明5は,「テトラカルボン酸二無水物成分とジアミン成分を極性溶剤中で反応せしめてなるポリアミック酸」であって,「該テトラカルボン酸二無水物成分の少なくとも50モル%以上が脂環式テトラカルボン酸二無水物であり,該ジアミン成分が,4,4’-ジアミノベンズアニリドおよび4,4’-ジアミノジフェニルスルフォンから選ばれた少なくとも1種を含む」ものである点。 (カ)相違点6の検討 上記(イ)bで述べたとおり,甲1には,テトラカルボン酸二無水物成分及びジアミン成分として,本件発明1における「化学式(1)」中の「A」及び「B」の構造を与えるものに相当するものや,同「化学式(1’)」中の「A’」及び「B’」の構造を与えるものに相当するものが,多数記載されている。 しかしながら,上記(イ)bで相違点1について述べたのと同様の理由により,甲1発明5において,テトラカルボン酸二無水物成分及びジアミン成分として,甲1に多数記載されているテトラカルボン酸二無水物成分及びジアミン成分の中から,本件発明1における「化学式(1)」中の「A」及び「B」の構造を与えるものに相当するものを組み合わせて使用することが,当業者が容易に想到することができたということはできない。そして,本件発明1は,上記(イ)bで述べたとおり,当業者が予測することができない格別顕著な効果を奏するものである。 したがって,本件発明1は,甲1に記載された発明及び甲1?3に記載された事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 ウ 本件発明10について (ア)甲1発明3との対比 本件発明10と甲1発明3とを対比すると,両者は,上記(1)ウ(ア)のとおり,ポリイミドである点で共通するものの,少なくとも,相違点3で相違する。 (イ)相違点3の検討 本件発明1と甲1発明1との関係については,上記イ(イ)aで述べたとおりである。また,上記(1)ウ(イ)で述べたとおり,甲1発明3に係るポリイミドは,本件発明10に係るポリイミドから除かれている。 そして,上記イ(イ)bで述べたとおり,甲1には,テトラカルボン酸二無水物成分及びジアミン成分として,甲1発明3(甲1発明1)で実際に使用されるもののほかに,本件発明10における「化学式(5)」(本件発明1における「化学式(1)」)中の「A」及び「B」の構造を与えるものに相当するものや,同「化学式(5’)」(同「化学式(1’)」)中の「A’」及び「B’」の構造を与えるものに相当するものが,多数記載されている。 しかしながら,本件明細書の記載(【0003】,【0007】,【0008】,【0010】,【0011】,【0032】?【0034】,【0038】,【0052】,【0106】,実施例1?21,比較例1?7,表4-1,表4-2,表5)によれば,本件発明10は,ポリイミドにおいて,「化学式(5)」中の「A」及び「B」がそれぞれ特定の構造を有する「化学式(5)で表される繰り返し単位」を含むものとすることによって,透明性,折り曲げ耐性,高耐熱性などの優れた特性を有し,さらに極めて低い線膨張係数や優れた耐溶剤性を併せ有するポリイミドを提供することができるというものである。 一方,甲1?3のいずれにも,このような事項については何ら記載されておらず,また,技術常識であるともいえない。 そうすると,甲1発明3において,甲1発明3(甲1発明1)で実際に使用されるテトラカルボン酸二無水物成分及びジアミン成分に代えて,甲1に多数記載されているテトラカルボン酸二無水物成分及びジアミン成分の中から,本件発明10における「化学式(5)」(本件発明1における「化学式(1)」)中の「A」及び「B」の構造を与えるものに相当するものを組み合わせて使用することが,当業者が容易に想到することができたということはできない。そして,本件発明10は,上記のとおり,透明性,折り曲げ耐性,高耐熱性などの優れた特性を有し,さらに極めて低い線膨張係数や優れた耐溶剤性を併せ有するポリイミドを提供することができるという,当業者が予測することができない格別顕著な効果を奏するものである。 したがって,本件発明10は,甲1に記載された発明及び甲1?3に記載された事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (ウ)甲1発明4との対比 本件発明10と甲1発明4とを対比すると,両者は,上記(1)ウ(ウ)のとおり,ポリイミドである点で共通するものの,少なくとも,相違点4で相違する。 (エ)相違点4の検討 本件発明1と甲1発明2との関係については,上記イ(エ)aで述べたとおりである。また,上記(1)ウ(エ)で述べたとおり,甲1発明4に係るポリイミドは,本件発明10に係るポリイミドから除かれている。 そして,上記イ(エ)bで述べたとおり,甲1には,テトラカルボン酸二無水物成分及びジアミン成分として,甲1発明4(甲1発明2)で実際に使用されるもののほかに,本件発明10における「化学式(5)」(本件発明1における「化学式(1)」)中の「A」及び「B」の構造を与えるものに相当するものや,同「化学式(5’)」(同「化学式(1’)」)中の「A’」及び「B’」の構造を与えるものに相当するものが,多数記載されている。 しかしながら,上記(イ)で相違点3について述べたのと同様の理由により,甲1発明4において,甲1発明4(甲1発明2)で実際に使用されるテトラカルボン酸二無水物成分及びジアミン成分に代えて,甲1に多数記載されているテトラカルボン酸二無水物成分及びジアミン成分の中から,本件発明10における「化学式(5)」(本件発明1における「化学式(1)」)中の「A」及び「B」の構造を与えるものに相当するものを組み合わせて使用することが,当業者が容易に想到することができたということはできない。そして,本件発明10は,上記(イ)で述べたとおり,当業者が予測することができない格別顕著な効果を奏するものである。 したがって,本件発明10は,甲1に記載された発明及び甲1?3に記載された事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (オ)甲1発明6との対比 本件発明10と甲1発明6とを対比する。 甲1発明6に係るカラーフィルターを構成する硬化膜は,甲1発明5の熱硬化性樹脂溶液組成物からなるものであるが,甲1の記載(【0023】,【0024】)も考慮すれば,上記硬化膜がポリイミドからなるものであることは,明らかである。したがって,甲1発明6における「硬化膜」は,本件発明10における「ポリイミド」に相当する。 そうすると,本件発明10と甲1発明6とは,いずれも,ポリイミドである点で共通するものの,少なくとも,以下の点で相違する。 ・相違点7 本件発明10は,ポリイミドが,「化学式(5)で表される繰り返し単位」を含むものであり,「式中,AおよびBは,請求項1において定義されたとおりの意味を示す。」,すなわち,「式中,Aは,化学構造中に少なくとも一つの脂肪族6員環を有し芳香族環を有さない4価の基であり,Bは,下記化学式(4-1)?(4-3)からなる群から選択される1種以上の2価の基であ」るのに対して,甲1発明6は,「テトラカルボン酸二無水物成分とジアミン成分を極性溶剤中で反応せしめてなるポリアミック酸」であって,「該テトラカルボン酸二無水物成分の少なくとも50モル%以上が脂環式テトラカルボン酸二無水物であり,該ジアミン成分が,4,4’-ジアミノベンズアニリドおよび4,4’-ジアミノジフェニルスルフォンから選ばれた少なくとも1種を含む」ものである甲1発明5の熱硬化性樹脂溶液組成物からなる硬化膜である点。 (カ)相違点7の検討 上記(イ)で述べたとおり,甲1には,テトラカルボン酸二無水物成分及びジアミン成分として,本件発明10における「化学式(5)」(本件発明1における「化学式(1)」)中の「A」及び「B」の構造を与えるものに相当するものや,同「化学式(5’)」(同「化学式(1’)」)中の「A’」及び「B’」の構造を与えるものに相当するものが,多数記載されている。 しかしながら,上記(イ)で相違点3について述べたのと同様の理由により,甲1発明6において,テトラカルボン酸二無水物成分及びジアミン成分として,甲1に多数記載されているテトラカルボン酸二無水物成分及びジアミン成分の中から,本件発明10における「化学式(5)」(本件発明1における「化学式(1)」)中の「A」及び「B」の構造を与えるものに相当するものを組み合わせて使用することが,当業者が容易に想到することができたということはできない。そして,本件発明10は,上記(イ)で述べたとおり,当業者が予測することができない格別顕著な効果を奏するものである。 したがって,本件発明10は,甲1に記載された発明及び甲1?3に記載された事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 エ 本件発明19について (ア)甲1発明1?4に基づくもの 本件発明19に係るポリイミド前駆体又はポリイミドは,「化学式(1),化学式(1)中の2つのN原子のうちの一方がイミド化された構造,化学式(5),およびこれらの2種以上の組み合わせから選ばれる繰り返し単位群I」を含むものである。 本件発明19と甲1発明1?4との関係については,上記(1)エで述べたとおりであり,甲1発明1?4に係るポリアミック酸及びポリイミドは,本件発明19に係るポリイミド前駆体又はポリイミドから除かれている。 そして,上記イ,ウで述べたとおり,甲1には,テトラカルボン酸二無水物成分及びジアミン成分として,甲1発明1?4で実際に使用されるもののほかに,本件発明19における「化学式(1)」及び「化学式(5)」中の「A」及び「B」の構造を与えるものに相当するものや,同「化学式(1’)」及び「化学式(5’)」中の「A’」及び「B’」の構造を与えるものに相当するものが,多数記載されている。 しかしながら,上記イ,ウで相違点1?4について述べたのと同様の理由により,甲1発明1?4において,甲1発明1?4で実際に使用されるテトラカルボン酸二無水物成分及びジアミン成分に代えて,甲1に多数記載されているテトラカルボン酸二無水物成分及びジアミン成分の中から,本件発明19における「化学式(1)」及び「化学式(5)」中の「A」及び「B」の構造を与えるものに相当するものを組み合わせて使用することが,当業者が容易に想到することができたということはできない。そして,本件発明19は,透明性,折り曲げ耐性,高耐熱性などの優れた特性を有し,さらに極めて低い線膨張係数や優れた耐溶剤性を併せ有するポリイミド又はその前駆体を提供することができるという,当業者が予測することができない格別顕著な効果を奏するものである。 したがって,本件発明19は,甲1に記載された発明及び甲1?3に記載された事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (イ)甲1発明5及び6に基づくもの 本件発明19に係るポリイミド前駆体又はポリイミドは,上記(ア)で述べたとおりのものである。 上記(ア)のとおり,甲1には,テトラカルボン酸二無水物成分及びジアミン成分として,本件発明19における「化学式(1)」及び「化学式(5)」中の「A」及び「B」の構造を与えるものに相当するものや,同「化学式(1’)」及び「化学式(5’)」中の「A’」及び「B’」の構造を与えるものに相当するものが,多数記載されている。 しかしながら,上記イ,ウで相違点6及び7について述べたのと同様の理由により,甲1発明5及び6において,テトラカルボン酸二無水物成分及びジアミン成分として,甲1に多数記載されているテトラカルボン酸二無水物成分及びジアミン成分の中から,本件発明19における「化学式(1)」及び「化学式(5)」中の「A」及び「B」の構造を与えるものに相当するものを組み合わせて使用することが,当業者が容易に想到することができたということはできない。そして,本件発明19は,上記(ア)で述べたとおり,当業者が予測することができない格別顕著な効果を奏するものである。 したがって,本件発明19は,甲1に記載された発明及び甲1?3に記載された事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 オ 本件発明2?9,11?18及び20?27について 本件発明2?9は,本件発明1を直接又は間接的に引用するものであり,本件発明11?18は,本件発明10を直接又は間接的に引用するものであり,本件発明20?27は,本件発明19を直接又は間接的に引用するものであるが,上記イ?エで述べたとおり,本件発明1,10及び19が,いずれも,甲1に記載された発明及び甲1?3に記載された事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない以上,本件発明2?9,11?18及び20?27についても同様に,甲1に記載された発明及び甲1?3に記載された事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 カ まとめ 以上のとおり,本件発明1?27は,いずれも,甲1に記載された発明及び甲1?3に記載された事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 したがって,取消理由2-1(進歩性)(ただし,本件発明1?27に対するもの。)によっては,本件特許の請求項1?27に係る特許を取り消すことはできない。 (4)取消理由3(サポート要件)(ただし,本件発明28?33に対するもの。) ア 本件発明28?32について 本件明細書の記載(【0003】,【0007】,【0008】,【0010】,【0011】,【0032】,【0113】?【0115】)によれば,本件発明28の課題は,透明性,折り曲げ耐性,高耐熱性などの優れた特性を有し,さらに極めて低い線膨張係数や優れた耐溶剤性を併せ有するポリイミドを用いた,ポリイミドフィルム/ガラス積層体を提供することであると認められる。 本件明細書の記載(【0034】,【0038】,【0052】,【0106】)によれば,本件発明28の課題は,ポリイミドフィルムを構成するポリイミドとして,「化学式(5)で表される繰り返し単位を含む」ものを用いることによって解決できるとされている。 そして,本件明細書には,本件発明28を具体的に実施した実施例及び比較例が記載されており(実施例1?21,比較例1?7,表4-1,表4-2,表5),これらの実施例及び比較例によれば,実施例において,ポリイミドフィルムを構成するポリイミドが,実際に透明性,折り曲げ耐性,高耐熱性などの優れた特性を有し,さらに極めて低い線膨張係数や優れた耐溶剤性を併せ有することが示されているといえる。 そうすると,当業者であれば,上記実施例以外の場合であっても,ポリイミドフィルムを構成するポリイミドが,「化学式(5)で表される繰り返し単位を含む」との本件発明28の構成を備えるポリイミドフィルム/ガラス積層体であれば,同実施例と同様に,ポリイミドフィルムを構成するポリイミドが,実際に透明性,折り曲げ耐性,高耐熱性などの優れた特性を有し,さらに極めて低い線膨張係数や優れた耐溶剤性を併せ有することが理解できるといえる。 以上のとおり,本件明細書の記載を総合すれば,本件発明28は,本件明細書の発明の詳細な説明に記載されたものであって,当業者が出願時の技術常識に照らして発明の詳細な説明の記載により本件発明28の課題を解決できると認識できる範囲のものということができる。 したがって,本件発明28は,特許請求の範囲の記載がサポート要件に適合するものである。 また,本件発明28を直接又は間接的に引用する本件発明29?32についても同様であり,本件発明29?32は,特許請求の範囲の記載がサポート要件に適合するものである。 イ 本件発明33について 本件明細書の記載(【0003】,【0007】,【0008】,【0010】,【0011】,【0032】,【0116】?【0122】)によれば,本件発明33の課題は,透明性,折り曲げ耐性,高耐熱性などの優れた特性を有し,さらに極めて低い線膨張係数や優れた耐溶剤性を併せ有するポリイミドを用いた,フレキシブル基板を提供することであると認められる。 本件明細書の記載(【0034】,【0038】,【0052】,【0106】)によれば,本件発明33の課題は,ポリイミドフィルムを構成するポリイミドとして,「化学式(5)で表される繰り返し単位を含む」ものを用いることによって解決できるとされている。 そして,上記アで述べたのと同様の理由により,本件明細書の記載を総合すれば,本件発明33は,本件明細書の発明の詳細な説明に記載されたものであって,当業者が出願時の技術常識に照らして発明の詳細な説明の記載により本件発明33の課題を解決できると認識できる範囲のものということができる。 したがって,本件発明33は,特許請求の範囲の記載がサポート要件に適合するものである。 ウ まとめ 以上のとおりであるから,取消理由3(サポート要件)(ただし,本件発明28?33に対するもの。)によっては,本件特許の請求項28?33に係る特許を取り消すことはできない。 2 取消理由通知において採用しなかった特許異議の申立ての理由 (1)取消理由1-1(新規性)(ただし,本件発明8,17,26及び28に対するもの。) ア 本件発明8,17及び26について 本件発明8は,本件発明1を直接又は間接的に引用するものであり,本件発明17は,本件発明10を直接又は間接的に引用するものであり,本件発明26は,本件発明19を直接又は間接的に引用するものであるが,上記1(1)イで述べたとおり,本件発明1,10及び19が,いずれも,甲1に記載された発明であるとはいえない以上,本件発明8,17及び26についても同様に,甲1に記載された発明であるとはいえない。 イ 本件発明28について 本件発明28は,ポリイミドフィルム/ガラス積層体に関するものであるが,「(但し,カラーフィルターを除く)」ものである。 一方,甲1発明6は,前記1(3)アで認定したとおり,甲1発明5の熱硬化性樹脂溶液組成物からなる硬化膜を透明基板上に有するもの(本件発明28における「ポリイミドフィルム/ガラス積層体」に相当する。)ではあるものの,カラーフィルターであるから,甲1発明6は,本件発明28から除かれていることになる。そもそも,甲1に具体的に記載されている硬化膜を有する透明基板は,カラーフィルターを形成することを前提としたものと解される。 したがって,本件発明28は,甲1に記載された発明であるとはいえない。 ウ まとめ 以上のとおり,本件発明8,17,26及び28は,いずれも,甲1に記載された発明であるとはいえないから,申立人が主張する取消理由1-1(新規性)(ただし,本件発明8,17,26及び28に対するもの。)は理由がない。 したがって,取消理由1-1(新規性)(ただし,本件発明8,17,26及び28に対するもの。)によっては,本件特許の請求項8,17,26及び28に係る特許を取り消すことはできない。 (2)取消理由1-2(新規性)(ただし,本件発明10?14,17及び28に対するもの。) ア 本件発明10について 本件発明10は,ポリイミドに関するものであり,化学式(5)で表される繰り返し単位を含むものである。 一方,甲2発明は,前記1(2)アで認定したとおり,ポリアミック酸(ポリイミド前駆体)に関するものであり,特定のジアミン成分と特定のテトラカルボン酸二無水物成分を反応させて得られたものである。 甲2発明の認定の基礎とした甲2の比較調整例2(【0037】)においては,上記のとおり,特定のジアミン成分と特定のテトラカルボン酸二無水物成分を反応させて,ポリアミック酸溶液を得ているが,甲2には,このポリアミック酸溶液を加熱処理する等して,ポリイミドに転換したことは記載されていない。甲2の比較例5(【0056】)では,比較調整例2で得られたポリアミック酸溶液を用いて,ポリイミド前駆体着色塗膜を形成しているが,「塗膜にクラックが入り,一部は剥離し,所望の緑色パターンが得られなかった。」と記載されるにすぎない(これに対して,甲2の実施例2(【0043】)では,「ポリイミド前駆体着色塗膜を220℃で30分間熱処理して,ポリイミドに転換した。」と記載されている。)。 以上によれば,甲2には,甲2発明に係るポリアミック酸由来のポリイミドが記載されているとはいえない。 したがって,本件発明10は,甲2に記載された発明であるとはいえない。 イ 本件発明11?14及び17について 本件発明11?14及び17は,本件発明10を直接又は間接的に引用するものであるが,上記アで述べたとおり,本件発明10が甲2に記載された発明であるとはいえない以上,本件発明11?14及び17についても同様に,甲2に記載された発明であるとはいえない。 ウ 本件発明28について 本件発明28は,ポリイミドフィルム/ガラス積層体に関するものであるが,「(但し,カラーフィルターを除く)」ものである。 上記アで述べたとおり,甲2には,甲2発明に係るポリアミック酸由来のポリイミドが記載されているとはいえないから,甲2に,このようなポリイミドのフィルムとガラスの積層体が記載されていないことは,明らかである。 したがって,本件発明28は,甲2に記載された発明であるとはいえない。 エ まとめ 以上のとおり,本件発明10?14,17及び28は,いずれも,甲2に記載された発明であるとはいえないから,申立人が主張する取消理由1-2(新規性)(ただし,本件発明10?14,17及び28に対するもの。)は理由がない。 したがって,取消理由1-2(新規性)(ただし,本件発明10?14,17及び28に対するもの。)によっては,本件特許の請求項10?14,17及び28に係る特許を取り消すことはできない。 (3)取消理由2-1(進歩性)(ただし,本件発明28?33に対するもの。) ア 本件発明28について 本件発明28は,ポリイミドフィルム/ガラス積層体に関するものであるが,「(但し,カラーフィルターを除く)」ものである。 一方,上記(1)イで述べたとおり,カラーフィルターに関する甲1発明6は,本件発明28から除かれている。 甲1発明6は,甲1発明5の熱硬化性樹脂溶液組成物からなる硬化膜を透明基板上に有するものではあるものの,カラーフィルターを形成することを前提としたものであるから,甲2や甲3の記載を考慮したとしても,これをあえてカラーフィルター以外の用途に転用する動機付けがあるとはいえない。そして,このことは,甲1の実施例7において,調整例11で得られたポリアミック酸(甲1発明2に係るポリアミック酸)を用いて得られた,緑色パターンを有するガラス基板についても同様である。 以上のとおりであるから,本件発明28は,甲1に記載された発明及び甲1?3に記載された事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 イ 本件発明29?32について 本件発明29?32は,本件発明28を直接又は間接的に引用するものであるが,上記アで述べたとおり,本件発明28が,甲1に記載された発明及び甲1?3に記載された事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない以上,本件発明29?32についても同様に,甲1に記載された発明及び甲1?3に記載された事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 ウ 本件発明33について 本件発明33は,ポリイミドフィルム上に,ガスバリア層,無機層,導電層およびトランジスタから選ばれる少なくとも1つが設けられているフレキシブル基板に関するものである。 一方,甲1には,ポリイミドフィルムを用いたフレキシブル基板については,何ら記載されておらず,甲2や甲3の記載を考慮しても,カラーフィルターを形成することを前提とした甲1に記載されたポリイミドについて,ポリイミドフィルムを用いたフレキシブル基板とすることが動機付けられるとはいえない。 以上のとおりであるから,本件発明33は,甲1に記載された発明及び甲1?3に記載された事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 エ まとめ 以上のとおり,本件発明28?33は,いずれも,甲1に記載された発明及び甲1?3に記載された事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないから,申立人が主張する取消理由2-1(進歩性)(ただし,本件発明28?33に対するもの。)は理由がない。 したがって,取消理由2-1(進歩性)(ただし,本件発明28?33に対するもの。)によっては,本件特許の請求項28?33に係る特許を取り消すことはできない。 (4)取消理由2-2(進歩性) ア 本件発明1について (ア)対比 本件発明1と甲2発明とを対比すると,両者は,前記1(2)イ(ア)のとおり,ポリイミド前駆体である点で共通するものの,少なくとも,相違点5で相違する。 (イ)相違点5の検討 a 本件発明1と甲2発明との関係について 甲2発明に係るポリアミック酸は,ジアミン成分である「4,4’-ジアミノベンズアニリド」,「3,3’-ジアミノジフェニルエーテル」及び「ビス(3-アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン」と,テトラカルボン酸二無水物成分である「1,3,3a,4,5,9b-ヘキサヒドロ-5-(テトラヒドロ-2,5-ジオキソ-3-フラニル)ナフト[1,2-c]フラン-1,3-ジオン(TDA)」及び「1,2,4,5-シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物」を反応させて得られたものである。 そして,前記1(2)イ(イ)で述べたとおり,甲2発明に係るポリアミック酸は,本件発明1に係るポリイミド前駆体から除かれている。 ここで,甲2発明における「1,2,4,5-シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物」は,本件発明1における「化学式(1)」中の「A」の構造を与えるものに相当し,同「1,3,3a,4,5,9b-ヘキサヒドロ-5-(テトラヒドロ-2,5-ジオキソ-3-フラニル)ナフト[1,2-c]フラン-1,3-ジオン(TDA)」は,同「化学式(1’)」中の「A’」の構造を与えるものに相当し,同「4,4’-ジアミノベンズアニリド」は,同「化学式(1)」中の「B」の構造を与えるものに相当し,同「3,3’-ジアミノジフェニルエーテル」及び「ビス(3-アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン」は,いずれも,同「化学式(1’)」中の「B’」の構造を与えるものに相当する。 b 相違点5の容易想到性について 甲2には,テトラカルボン酸二無水物成分及びジアミン成分として,甲2発明で実際に使用されるもののほかに,本件発明1における「化学式(1)」中の「A」及び「B」の構造を与えるものに相当するものや,同「化学式(1’)」中の「A’」及び「B’」の構造を与えるものに相当するものが,多数記載されている(請求項3,5,【0012】,【0014】,【0015】)。 しかしながら,前記1(3)イ(イ)bで本件発明1と甲1発明1との相違点1について述べたのと同様の理由により,甲2発明において,甲2発明で実際に使用されるテトラカルボン酸二無水物成分及びジアミン成分に代えて,甲2に多数記載されているテトラカルボン酸二無水物成分及びジアミン成分の中から,本件発明1における「化学式(1)」中の「A」及び「B」の構造を与えるものに相当するものを組み合わせて使用することが,当業者が容易に想到することができたということはできない。そして,本件発明1は,前記1(3)イ(イ)bで述べたとおり,当業者が予測することができない格別顕著な効果を奏するものである。 したがって,本件発明1は,甲2に記載された発明及び甲1?3に記載された事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 イ 本件発明10について 本件発明10は,ポリイミドに関するものであり,化学式(5)で表される繰り返し単位を含むものである。 上記(2)アで述べたとおり,甲2には,甲2発明に係るポリアミック酸由来のポリイミドが記載されているとはいえない以上,本件発明10は,甲2に記載された発明及び甲1?3に記載された事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 ウ 本件発明19について 本件発明19に係るポリイミド前駆体又はポリイミドは,「化学式(1),化学式(1)中の2つのN原子のうちの一方がイミド化された構造,化学式(5),およびこれらの2種以上の組み合わせから選ばれる繰り返し単位群I」を含むものである。 本件発明19と甲2発明との関係については,前記1(2)ウで述べたとおりであり,甲2発明に係るポリアミック酸は,本件発明19に係るポリイミド前駆体又はポリイミドから除かれている。 そして,上記アで述べたとおり,甲2には,テトラカルボン酸二無水物成分及びジアミン成分として,甲2発明で実際に使用されるもののほかに,本件発明19における「化学式(1)」及び「化学式(5)」中の「A」及び「B」の構造を与えるものに相当するものや,同「化学式(1’)」及び「化学式(5’)」中の「A’」及び「B’」の構造を与えるものに相当するものが,多数記載されている。 しかしながら,上記アで相違点5について述べたのと同様の理由により,甲2発明において,甲2発明で実際に使用されるテトラカルボン酸二無水物成分及びジアミン成分に代えて,甲2に多数記載されているテトラカルボン酸二無水物成分及びジアミン成分の中から,本件発明19における「化学式(1)」及び「化学式(5)」中の「A」及び「B」の構造を与えるものに相当するものを組み合わせて使用することが,当業者が容易に想到することができたということはできない。そして,本件発明19は,前記1(3)エ(ア)で述べたとおり,当業者が予測することができない格別顕著な効果を奏するものである。 したがって,本件発明19は,甲2に記載された発明及び甲1?3に記載された事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 エ 本件発明28について 本件発明28は,ポリイミドフィルム/ガラス積層体に関するものである。 上記(2)アで述べたとおり,甲2には,甲2発明に係るポリアミック酸由来のポリイミドが記載されているとはいえない以上,本件発明28は,甲2に記載された発明及び甲1?3に記載された事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 オ 本件発明2?9,11?18,20?27及び29?32について 本件発明2?9は,本件発明1を直接又は間接的に引用するものであり,本件発明11?18は,本件発明10を直接又は間接的に引用するものであり,本件発明20?27は,本件発明19を直接又は間接的に引用するものであり,本件発明29?32は,本件発明28を直接又は間接的に引用するものであるが,上記ア?エで述べたとおり,本件発明1,10,19及び28が,いずれも,甲2に記載された発明及び甲1?3に記載された事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない以上,本件発明2?9,11?18,20?27及び29?32についても同様に,甲2に記載された発明及び甲1?3に記載された事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 カ 本件発明33について 本件発明33は,ポリイミドフィルム上に,ガスバリア層,無機層,導電層およびトランジスタから選ばれる少なくとも1つが設けられているフレキシブル基板に関するものである。 上記(2)アで述べたとおり,甲2には,甲2発明に係るポリアミック酸由来のポリイミドが記載されているとはいえない以上,本件発明33は,甲2に記載された発明及び甲1?3に記載された事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 キ まとめ 以上のとおり,本件発明1?33は,いずれも,甲2に記載された発明及び甲1?3に記載された事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないから,申立人が主張する取消理由2-2(進歩性)は理由がない。 したがって,取消理由2-2(進歩性)によっては,本件特許の請求項1?33に係る特許を取り消すことはできない。 (5)取消理由3(サポート要件)(ただし,本件発明1?27に対するもの。) 本件明細書の記載(【0003】,【0007】,【0008】,【0010】,【0011】,【0032】)によれば,本件発明1,10及び19の課題は,透明性,折り曲げ耐性,高耐熱性などの優れた特性を有し,さらに極めて低い線膨張係数や優れた耐溶剤性を併せ有するポリイミド及びその前駆体を提供することであると認められる。 本件明細書の記載(【0034】,【0038】,【0052】,【0106】)によれば,本件発明1,10及び19の課題は,ポリイミド及びその前駆体として,本件発明1では,「化学式(1)で表される繰り返し単位」を含むものを用いることによって,本件発明10では,「化学式(5)で表される繰り返し単位」を含むものを用いることによって,本件発明19では,「化学式(1),化学式(1)中の2つのN原子のうちの一方がイミド化された構造,化学式(5),およびこれらの2種以上の組み合わせから選ばれる繰り返し単位群I」を含むものを用いることによって,それぞれ,解決できるとされている。 そして,前記1(4)アで述べたのと同様の理由により,本件明細書の記載を総合すれば,本件発明1,10及び19は,本件明細書の発明の詳細な説明に記載されたものであって,当業者が出願時の技術常識に照らして発明の詳細な説明の記載により本件発明1,10及び19の課題を解決できると認識できる範囲のものということができる。 したがって,本件発明1,10及び19は,特許請求の範囲の記載がサポート要件に適合するものである。 また,本件発明1,10及び19を直接又は間接的に引用する本件発明2?9,11?18及び20?27についても同様であり,本件発明2?9,11?18及び20?27は,特許請求の範囲の記載がサポート要件に適合するものである。 以上のとおりであるから,取消理由3(サポート要件)(ただし,本件発明1?27に対するもの。)によっては,本件特許の請求項1?27に係る特許を取り消すことはできない。 第6 むすび 以上のとおり,取消理由通知書に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議の申立ての理由によっては,本件特許の請求項1?33に係る特許を取り消すことはできない。 また,他に本件特許の請求項1?33に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって,結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 下記化学式(1)で表される繰り返し単位と、下記化学式(1’)で表される繰り返し単位を含むことを特徴とするポリイミド前駆体(但し、下記<除外ポリイミド前駆体>に挙げられたものを除く)。 【化1】 (式中、Aは、化学構造中に少なくとも一つの脂肪族6員環を有し芳香族環を有さない4価の基であり、Bは、下記化学式(4-1)?(4-3)からなる群から選択される1種以上の2価の基であり: 【化2】 (式中、Ar_(1)及びAr_(3)は、それぞれ独立に、炭素数が6?18の芳香族環を有する2価の基であり、Ar_(2)はベンゼン、ビフェニル、ターフェニル、ナフタレンおよびアントラセンからなる群より選ばれる芳香族化合物から2つの水素を除いた2価の基であり(但し、水素原子の一部が炭素数1?3のアルキル基、ハロゲン基、ニトロ基、水酸基およびカルボン酸基からなる群より選ばれる置換基を有していてもよい。)、n1は、0?5の整数である。) 【化3】 (式中、Ar_(4)、Ar_(6)、Ar_(7)及びAr_(8)は、それぞれ独立に、炭素数が6?18の芳香族環を有する2価の基であり、Ar_(5)はベンゼン、ビフェニル、ターフェニル、ナフタレンおよびアントラセンからなる群より選ばれる芳香族化合物から2つの水素を除いた2価の基であり(但し、水素原子の一部が炭素数1?3のアルキル基、ハロゲン基、ニトロ基、水酸基およびカルボン酸基からなる群より選ばれる置換基を有していてもよい。)、n2は、0?5の整数である。) 【化4】 (式中、Ar_(9)、Ar_(10)、Ar_(11)及びAr_(13)は、それぞれ独立に、炭素数が6?18の芳香族環を有する2価の基であり、Ar_(12)はベンゼン、ビフェニル、ターフェニル、ナフタレンおよびアントラセンからなる群より選ばれる芳香族化合物から2つの水素を除いた2価の基であり(但し、水素原子の一部が炭素数1?3のアルキル基、ハロゲン基、ニトロ基、水酸基およびカルボン酸基からなる群より選ばれる置換基を有していてもよい。)、n3は、0?5の整数である。但し、n3が0でAr_(13)がベンゼンであるとき、Ar_(12)は、 【化5】 を表さない。) ;X_(1)、X_(2)はそれぞれ独立に水素、炭素数1?6のアルキル基、または炭素数3?9のアルキルシリル基である。) 【化6】 (式中、A’およびB’は、それぞれ4価の基および2価の基であって、A’がAと異なるか、B’がBと異なるか、またはA’およびB’がそれぞれがAおよびBと異なり;X_(1)’およびX_(2)’は、化学式(1)においてX_(1)およびX_(2)に対して与えられる意味を有する。但し、化学式(1)のBが 【化7】 であるとき、B’は、カルボン酸基、スルホン酸基、リン酸基およびホスホン酸基から選ばれる基を有さない。) <除外ポリイミド前駆体> (i)ポリイミド前駆体1-1: 1-メチル-ビシクロ[2.2.2]オクト-7-エン-2,3,5,6-テトラカルボン酸二無水物からなるテトラカルボン酸成分と、4,4’-ジアミノベンズアニリドを含有するジアミン成分との反応によって得られるポリイミド前駆体 (ii)ポリイミド前駆体1-2: 3,5,6-トリカルボキシ-2-カルボキシメチルノルボルネン-2:3,5:6-二無水物からなるテトラカルボン酸成分と、4,4’-ジアミノベンズアニリドを含有するジアミン成分との反応によって得られるポリイミド前駆体 (iii)ポリイミド前駆体1-5: 顔料を含有するポリイミド前駆体組成物 (iv)ポリイミド前駆体2: 4,4’-ジアミノベンズアニリド、3,3’-ジアミノジフェニルエーテルおよびビス(3-アミノプロピル)テトラメチルジシロキサンからなるジアミン成分と、1,3,3a,4,5,9b-ヘキサヒドロ-5-(テトラヒドロ-2,5-ジオキソ-3-フラニル)ナフト[1,2-c]フラン-1,3-ジオン(TDA)および1,2,4,5-シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物からなるテトラカルボン酸成分との反応によって得られるポリイミド前駆体 【請求項2】 前記化学式(1)中、Bが、前記化学式(4-1)で表される2価の基であることを特徴する請求項1に記載のポリイミド前駆体。 【請求項3】 前記化学式(1)中、Bの構造を与えるジアミン成分が、4,4’-ジアミノベンズアニリド、3’-クロロ-4,4’-ジアミノベンズアニリド、2’-クロロ-4,4’-ジアミノベンズアニリド、2’,6’-ジクロロ-4,4’-ジアミノベンズアニリド、3’-メチル-4,4’-ジアミノベンズアニリド、2’-メチル-4,4’-ジアミノベンズアニリド、2’,6’-ジメチル-4,4’-ジアミノベンズアニリド、3’-トリフルオロメチル-4,4’-ジアミノベンズアニリド、2’-トリフルオロメチル-4,4’-ジアミノベンズアニリド、3-クロロ-4,4’-ジアミノベンズアニリド、3-ブロモ-4,4’-ジアミノベンズアニリド、3-メチル-4,4’-ジアミノベンズアニリド、2-クロロ-4,4’-ジアミノベンズアニリド、2-ブロモ-4,4’-ジアミノベンズアニリド、2-メチル-4,4’-ジアミノベンズアニリド、4,3’-ジアミノベンズアニリド、4’-フルオロ-4,3’-ジアミノベンズアニリド、4’-クロロ-4,3’-ジアミノベンズアニリド、4’-ブロモ-4,3’-ジアミノベンズアニリド、3,4’-ジアミノベンズアニリド、および4-クロロ-3,4’-ジアミノベンズアニリドからなる群より選ばれることを特徴する請求項1に記載のポリイミド前駆体。 【請求項4】 前記化学式(1’)中、B’の構造を与えるジアミン成分が、オキシジアニリン、p-フェニレンジアミン、m-フェニレンジアミン、ベンジジン、3,3’-ジメチルベンジジン、2,2’-ジメチルベンジジン、p-メチレンビス(フェニレンジアミン)、ビス(アミノフェノキシ)ベンゼン、ビス[(アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、ビス(アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(アミノフェニル)スルホン、ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン、シクロヘキサンジアミン、ビス[(アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、ビス(アミノヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、およびビス[(アミノフェノキシ)ジフェニル]スルホンからなる群より選ばれることを特徴する請求項1?3のいずれか1項に記載のポリイミド前駆体。 【請求項5】 前記化学式(1)中、Aが、下記化学式(3-1)?(3-4)からなる群より選択される1種以上であることを特徴とする請求項1?4のいずれか1項に記載のポリイミド前駆体。 【化8】 【化9】 (式中、R1は直接結合、CH_(2)基、C(CH_(3))_(2)基、SO_(2)基、Si(CH_(3))_(2)基、C(CF_(3))_(2)基、酸素原子、または硫黄原子である。) 【化10】 (式中、R2は、CH_(2)基、CH_(2)CH_(2)基、酸素原子、または硫黄原子である。) 【化11】 (式中、R3及びR4は、それぞれ独立に、CH_(2)基、CH_(2)CH_(2)基、酸素原子、または硫黄原子である。) 【請求項6】 前記化学式(1)中、Aが、前記化学式(3-4)で表される4価の基であることを特徴とする請求項5に記載のポリイミド前駆体。 【請求項7】 前記化学式(1)中、Aを与えるテトラカルボン酸成分が、デカヒドロ-1,4:5,8-ジメタノナフタレン-2,3,6,7-テトラカルボン酸の立体異性体、および(4arH,8acH)-デカヒドロ-1t,4t:5c,8c-ジメタノナフタレン-2t,3t,6c,7c-テトラカルボン酸からなる群より選ばれることを特徴とする請求項1?5のいずれか1項に記載のポリイミド前駆体。 【請求項8】 前記化学式(1’)中、A’の構造を与えるテトラカルボン酸成分が、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、4-(2,5-ジオキソテトラヒドロフラン-3-イル)-1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-1,2-ジカルボン酸、ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸、ビフェニルテトラカルボン酸、オキシジフタル酸、ビスカルボキシフェニルジメチルシラン、ビスジカルボキシフェノキシジフェニルスルフィド、スルホニルジフタル酸、シクロブタンテトラカルボン酸、およびイソプロピリデンジフェノキシビスフタル酸からなる群より選ばれることを特徴とする請求項1?7のいずれか1項に記載のポリイミド前駆体。 【請求項9】 ポリイミド前駆体中のテトラカルボン酸に由来する構造を与える全テトラカルボン酸成分100モル%中、前記化学式(1)中のAの構造を与えるテトラカルボン酸成分の割合が70モル%超であり、それと異なるテトラカルボン酸成分の割合が30モル%以下であり、 ポリイミド前駆体中のジアミンに由来する構造を与える全ジアミン成分100モル%中、前記化学式(1)中のBの構造を与えるジアミン成分の割合が70モル%超であり、それと異なるジアミン成分の割合が30モル%以下であること を特徴とする請求項1?8のいずれか1項に記載のポリイミド前駆体。 【請求項10】 下記化学式(5)で表される繰り返し単位と、下記化学式(5’)で表される繰り返し単位を含むことを特徴とするポリイミド(但し、下記<除外ポリイミド>に挙げられたものを除く)。 【化12】 (式中、AおよびBは、請求項1において定義されたとおりの意味を示す。) 【化13】 (式中、A’およびB’は、請求項1において定義されたとおりの意味を示す。) <除外ポリイミド> (i)ポリイミド1-3 1-メチル-ビシクロ[2.2.2]オクト-7-エン-2,3,5,6-テトラカルボン酸二無水物からなるテトラカルボン酸成分と、4,4’-ジアミノベンズアニリドを含有するジアミン成分との反応によって得られるポリイミド (ii)ポリイミド1-4 3,5,6-トリカルボキシ-2-カルボキシメチルノルボルネン-2:3,5:6-二無水物からなるテトラカルボン酸成分と、4.4’-ジアミノベンズアニリドを含有するジアミン成分との反応によって得られるポリイミド (iii)ポリイミド1-6 顔料を含有するポリイミド組成物 【請求項11】 前記化学式(5)中、Bが、前記化学式(4-1)で表される2価の基であることを特徴する請求項10に記載のポリイミド。 【請求項12】 前記化学式(5)中、Bの構造を与えるジアミン成分が、4,4’-ジアミノベンズアニリド、3’-クロロ-4,4’-ジアミノベンズアニリド、2’-クロロ-4,4’-ジアミノベンズアニリド、2’,6’-ジクロロ-4,4’-ジアミノベンズアニリド、3’-メチル-4,4’-ジアミノベンズアニリド、2’-メチル-4,4’-ジアミノベンズアニリド、2’,6’-ジメチル-4,4’-ジアミノベンズアニリド、3’-トリフルオロメチル-4,4’-ジアミノベンズアニリド、2’-トリフルオロメチル-4,4’-ジアミノベンズアニリド、3-クロロ-4,4’-ジアミノベンズアニリド、3-ブロモ-4,4’-ジアミノベンズアニリド、3-メチル-4,4’-ジアミノベンズアニリド、2-クロロ-4,4’-ジアミノベンズアニリド、2-ブロモ-4,4’-ジアミノベンズアニリド、2-メチル-4,4’-ジアミノベンズアニリド、4,3’-ジアミノベンズアニリド、4’-フルオロ-4,3’-ジアミノベンズアニリド、4’-クロロ-4,3’-ジアミノベンズアニリド、4’-ブロモ-4,3’-ジアミノベンズアニリド、3,4’-ジアミノベンズアニリド、および4-クロロ-3,4’-ジアミノベンズアニリドからなる群より選ばれることを特徴する請求項10に記載のポリイミド。 【請求項13】 前記化学式(5’)中、B’の構造を与えるジアミン成分が、オキシジアニリン、p-フェニレンジアミン、m-フェニレンジアミン、ベンジジン、3,3’-ジメチルベンジジン、2,2’-ジメチルベンジジン、p-メチレンビス(フェニレンジアミン)、ビス(アミノフェノキシ)ベンゼン、ビス[(アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、ビス(アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(アミノフェニル)スルホン、ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン、シクロヘキサンジアミン、ビス[(アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、ビス(アミノヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、およびビス[(アミノフェノキシ)ジフェニル]スルホンからなる群より選ばれることを特徴する請求項10?12のいずれか1項に記載のポリイミド。 【請求項14】 前記化学式(5)中、Aが、下記化学式(3-1)?(3-4)からなる群より選択される1種以上であることを特徴とする請求項10?13のいずれか1項に記載のポリイミド。 【化14】 【化15】 (式中、R1は直接結合、CH_(2)基、C(CH_(3))_(2)基、SO_(2)基、Si(CH_(3))_(2)基、C(CF_(3))_(2)基、酸素原子、または硫黄原子である。) 【化16】 (式中、R2は、CH_(2)基、CH_(2)CH_(2)基、酸素原子、または硫黄原子である。) 【化17】 (式中、R3及びR4は、それぞれ独立に、CH_(2)基、CH_(2)CH_(2)基、酸素原子、または硫黄原子である。) 【請求項15】 前記化学式(5)中、Aが、前記化学式(3-4)で表される4価の基であることを特徴とする請求項14に記載のポリイミド。 【請求項16】 前記化学式(5)中、Aを与えるテトラカルボン酸成分が、デカヒドロ-1,4:5,8-ジメタノナフタレン-2,3,6,7-テトラカルボン酸の立体異性体、および(4arH,8acH)-デカヒドロ-1t,4t:5c,8c-ジメタノナフタレン-2t,3t,6c,7c-テトラカルボン酸からなる群より選ばれることを特徴とする請求項10?14のいずれか1項に記載のポリイミド。 【請求項17】 前記化学式(5’)中、A’の構造を与えるテトラカルボン酸成分が、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、4-(2,5-ジオキソテトラヒドロフラン-3-イル)-1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-1,2-ジカルボン酸、ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸、ビフェニルテトラカルボン酸、オキシジフタル酸、ビスカルボキシフェニルジメチルシラン、ビスジカルボキシフェノキシジフェニルスルフィド、スルホニルジフタル酸、シクロブタンテトラカルボン酸、およびイソプロピリデンジフェノキシビスフタル酸からなる群より選ばれることを特徴とする請求項10?16のいずれか1項に記載のポリイミド。 【請求項18】 ポリイミド中のテトラカルボン酸に由来する構造を与える全テトラカルボン酸成分100モル%中、前記化学式(5)中のAの構造を与えるテトラカルボン酸成分の割合が70モル%超であり、それと異なるテトラカルボン酸成分の割合が30モル%以下であり、 ポリイミド前駆体中のジアミンに由来する構造を与える全ジアミン成分100モル%中、前記化学式(5)中のBの構造を与えるジアミン成分の割合が70モル%超であり、それと異なるジアミン成分の割合が30モル%以下であること を特徴とする請求項10?17のいずれか1項に記載のポリイミド。 【請求項19】 化学式(1)、化学式(1)中の2つのN原子のうちの一方がイミド化された構造、化学式(5)、およびこれらの2種以上の組み合わせから選ばれる繰り返し単位群Iと、 化学式(1’)、化学式(1’)中の2つのN原子のうちの一方がイミド化された構造、化学式(5’)、およびこれらの2種以上の組み合わせから選ばれる繰り返し単位群I’を含むことを特徴とするポリイミド前駆体またはポリイミド(但し、下記<除外ポリイミド前駆体、ポリイミドおよび混合物>に挙げられたものを除く)。 【化18】 (式中、A、B、X_(1)およびX_(2)は、請求項1において定義されたとおりの意味を示す。) 【化19】 (式中、A’、B’、X_(1)’およびX_(2)’は、請求項1において定義されたとおりの意味を示す。) 【化20】 (式中、AおよびBは、請求項1において定義されたとおりの意味を示す。) 【化21】 (式中、A’およびB’は、請求項1において定義されたとおりの意味を示す。) <除外ポリイミド前駆体、ポリイミドおよび混合物> (i)ポリイミド前駆体1-1、ポリイミド1-3および混合物: 1-メチル-ビシクロ[2.2.2]オクト-7-エン-2,3,5,6-テトラカルボン酸二無水物からなるテトラカルボン酸成分と、4,4’-ジアミノベンズアニリドを含有するジアミン成分との反応によって得られるポリイミド前駆体、ポリイミドおよびそれらの混合物 (ii)ポリイミド前駆体1-2、ポリイミド1-4および混合物: 3,5,6-トリカルボキシ-2-カルボキシメチルノルボルネン-2:3,5:6-二無水物からなるテトラカルボン酸成分と、4,4’-ジアミノベンズアニリドを含有するジアミン成分との反応によって得られるポリイミド前駆体、ポリイミドおよびそれらの混合物 (iii)ポリイミド前駆体1-5 ポリイミド1-6および混合物: 顔料を含有する、ポリイミド前駆体組成物、ポリイミド組成物およびそれらの混合物 (iv)ポリイミド前駆体2: 4,4’-ジアミノベンズアニリド、3,3’-ジアミノジフェニルエーテルおよびビス(3-アミノプロピル)テトラメチルジシロキサンからなるジアミン成分と、1,3,3a,4,5,9b-ヘキサヒドロ-5-(テトラヒドロ-2,5-ジオキソ-3-フラニル)ナフト[1,2-c]フラン-1,3-ジオン(TDA)および1,2,4,5-シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物からなるテトラカルボン酸成分との反応によって得られるポリイミド前駆体 【請求項20】 前記繰り返し単位群I中、Bが、前記化学式(4-1)で表される2価の基であることを特徴する請求項19に記載のポリイミド前駆体またはポリイミド。 【請求項21】 前記繰り返し単位群I中、Bの構造を与えるジアミン成分が、4,4’-ジアミノベンズアニリド、3’-クロロ-4,4’-ジアミノベンズアニリド、2’-クロロ-4,4’-ジアミノベンズアニリド、2’,6’-ジクロロ-4,4’-ジアミノベンズアニリド、3’-メチル-4,4’-ジアミノベンズアニリド、2’-メチル-4,4’-ジアミノベンズアニリド、2’,6’-ジメチル-4,4’-ジアミノベンズアニリド、3’-トリフルオロメチル-4,4’-ジアミノベンズアニリド、2’-トリフルオロメチル-4,4’-ジアミノベンズアニリド、3-クロロ-4,4’-ジアミノベンズアニリド、3-ブロモ-4,4’-ジアミノベンズアニリド、3-メチル-4,4’-ジアミノベンズアニリド、2-クロロ-4,4’-ジアミノベンズアニリド、2-ブロモ-4,4’-ジアミノベンズアニリド、2-メチル-4,4’-ジアミノベンズアニリド、4,3’-ジアミノベンズアニリド、4’-フルオロ-4,3’-ジアミノベンズアニリド、4’-クロロ-4,3’-ジアミノベンズアニリド、4’-ブロモ-4,3’-ジアミノベンズアニリド、3,4’-ジアミノベンズアニリド、および4-クロロ-3,4’-ジアミノベンズアニリドからなる群より選ばれることを特徴する請求項19に記載のポリイミド前駆体またはポリイミド。 【請求項22】 前記繰り返し単位群I’中、B’の構造を与えるジアミン成分が、オキシジアニリン、p-フェニレンジアミン、m-フェニレンジアミン、ベンジジン、3,3’-ジメチルベンジジン、2,2’-ジメチルベンジジン、p-メチレンビス(フェニレンジアミン)、ビス(アミノフェノキシ)ベンゼン、ビス[(アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、ビス(アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(アミノフェニル)スルホン、ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン、シクロヘキサンジアミン、ビス[(アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、ビス(アミノヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、およびビス[(アミノフェノキシ)ジフェニル]スルホンからなる群より選ばれることを特徴する請求項19?21のいずれか1項に記載のポリイミド前駆体またはポリイミド。 【請求項23】 前記繰り返し単位群I中、Aが、下記化学式(3-1)?(3-4)からなる群より選択される1種以上であることを特徴とする請求項19?22のいずれか1項に記載のポリイミド前駆体またはポリイミド。 【化22】 【化23】 (式中、R1は直接結合、CH_(2)基、C(CH_(3))_(2)基、SO_(2)基、Si(CH_(3))_(2)基、C(CF_(3))_(2)基、酸素原子、または硫黄原子である。) 【化24】 (式中、R2は、CH_(2)基、CH_(2)CH_(2)基、酸素原子、または硫黄原子である。) 【化25】 (式中、R3及びR4は、それぞれ独立に、CH_(2)基、CH_(2)CH_(2)基、酸素原子、または硫黄原子である。) 【請求項24】 前記繰り返し単位群I中、Aが、前記化学式(3-4)で表される4価の基であることを特徴とする請求項23に記載のポリイミド前駆体またはポリイミド。 【請求項25】 前記繰り返し単位群I中、Aを与えるテトラカルボン酸成分が、デカヒドロ-1,4:5,8-ジメタノナフタレン-2,3,6,7-テトラカルボン酸の立体異性体、および(4arH,8acH)-デカヒドロ-1t,4t:5c,8c-ジメタノナフタレン-2t,3t,6c,7c-テトラカルボン酸からなる群より選ばれることを特徴とする請求項19?23のいずれか1項に記載のポリイミド前駆体またはポリイミド。 【請求項26】 前記繰り返し単位群I’中、A’の構造を与えるテトラカルボン酸成分が、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、4-(2,5-ジオキソテトラヒドロフラン-3-イル)-1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-1,2-ジカルボン酸、ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸、ビフェニルテトラカルボン酸、オキシジフタル酸、ビスカルボキシフェニルジメチルシラン、ビスジカルボキシフェノキシジフェニルスルフィド、スルホニルジフタル酸、シクロブタンテトラカルボン酸、およびイソプロピリデンジフェノキシビスフタル酸からなる群より選ばれることを特徴とする請求項19?25のいずれか1項に記載のポリイミド前駆体またはポリイミド。 【請求項27】 ポリイミド前駆体またはポリイミド中のテトラカルボン酸に由来する構造を与える全テトラカルボン酸成分100モル%中、前記繰り返し単位群I中のAの構造を与えるテトラカルボン酸成分の割合が70モル%超であり、それと異なるテトラカルボン酸成分の割合が30モル%以下であり、 ポリイミド前駆体中のジアミンに由来する構造を与える全ジアミン成分100モル%中、前記繰り返し単位群I中のBの構造を与えるジアミン成分の割合が70モル%超であり、それと異なるジアミン成分の割合が30モル%以下であること を特徴とする請求項19?26のいずれか1項に記載のポリイミド前駆体またはポリイミド。 【請求項28】 ガラス基材とその上に形成されたポリイミドフィルムとを有するポリイミドフィルム/ガラス積層体であって、 前記ポリイミドフィルムの厚さが1?150μmであり、前記ポリイミドフィルムを構成するポリイミドが、下記化学式(5)で表される繰り返し単位を含むことを特徴とするポリイミドフィルム/ガラス積層体(但し、カラーフィルターを除く)。 【化26】 (式中、Aは、化学構造中に少なくとも一つの脂肪族6員環を有し芳香族環を有さない4価の基であり、Bは、下記化学式(4-1)?(4-3)からなる群から選択される1種以上の2価の基である。 【化31】 (式中、Ar_(1)、Ar_(2)及びAr_(3)は、それぞれ独立に、炭素数が6?18の芳香族環を有する2価の基であり、n1は、0?5の整数である。) 【化32】 (式中、Ar_(4)、Ar_(5)、Ar_(6)、Ar_(7)及びAr_(8)は、それぞれ独立に、炭素数が6?18の芳香族環を有する2価の基であり、n2は、0?5の整数である。) 【化33】 (式中、Ar_(9)、Ar_(10)、Ar_(11)、Ar_(12)及びAr_(13)は、それぞれ独立に、炭素数が6?18の芳香族環を有する2価の基であり、n3は、0?5の整数である。) ) 【請求項29】 前記ポリイミドフィルムの表面に、さらにガスバリア層または無機層を有することを特徴とする請求項28に記載のポリイミドフィルム/ガラス積層体。 【請求項30】 さらに導電層を有することを特徴とする請求項28または29に記載のポリイミドフィルム/ガラス積層体。 【請求項31】 前記導電層が回路であることを特徴とする請求項30に記載のポリイミドフィルム/ガラス積層体。 【請求項32】 さらにトランジスタを有することを特徴とする請求項28?30のいずれか1項に記載のポリイミドフィルム/ガラス積層体。 【請求項33】 ポリイミドフィルム上に、ガスバリア層、無機層、導電層およびトランジスタから選ばれる少なくとも1つが設けられているフレキシブル基板であって、 前記ポリイミドフィルムの厚さが1?150μmであり、前記ポリイミドフィルムを構成するポリイミドが、下記化学式(5)で表される繰り返し単位を含むことを特徴とするフレキシブル基板。 【化27】 (式中、Aは、化学構造中に少なくとも一つの脂肪族6員環を有し芳香族環を有さない4価の基であり、Bは、下記化学式(4-1)?(4-3)からなる群から選択される1種以上の2価の基である。 【化34】 (式中、Ar_(1)、Ar_(2)及びAr_(3)は、それぞれ独立に、炭素数が6?18の芳香族環を有する2価の基であり、n1は、0?5の整数である。) 【化35】 (式中、Ar_(4)、Ar_(5)、Ar_(6)、Ar_(7)及びAr_(8)は、それぞれ独立に、炭素数が6?18の芳香族環を有する2価の基であり、n2は、0?5の整数である。) 【化36】 (式中、Ar_(9)、Ar_(10)、Ar_(11)、Ar_(12)及びAr_(13)は、それぞれ独立に、炭素数が6?18の芳香族環を有する2価の基であり、n3は、0?5の整数である。) ) |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
異議決定日 | 2018-08-31 |
出願番号 | 特願2016-76388(P2016-76388) |
審決分類 |
P
1
651・
121-
YAA
(C08G)
P 1 651・ 113- YAA (C08G) P 1 651・ 537- YAA (C08G) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 楠 祐一郎、海老原 えい子 |
特許庁審判長 |
岡崎 美穂 |
特許庁審判官 |
橋本 栄和 井上 猛 |
登録日 | 2017-06-30 |
登録番号 | 特許第6164331号(P6164331) |
権利者 | 宇部興産株式会社 |
発明の名称 | ポリイミド前駆体及びポリイミド |
代理人 | 伊藤 克博 |
代理人 | 伊藤 克博 |
代理人 | 小野 暁子 |
代理人 | 小野 暁子 |