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審決分類 |
審判 一部申し立て 2項進歩性 B01D 審判 一部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 B01D 審判 一部申し立て 1項3号刊行物記載 B01D 審判 一部申し立て ただし書き1号特許請求の範囲の減縮 B01D 審判 一部申し立て ただし書き3号明りょうでない記載の釈明 B01D 審判 一部申し立て 4項(134条6項)独立特許用件 B01D |
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管理番号 | 1344844 |
異議申立番号 | 異議2017-700218 |
総通号数 | 227 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2018-11-30 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2017-03-03 |
確定日 | 2018-09-06 |
異議申立件数 | 3 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第5991698号発明「除湿装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第5991698号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の〔1-4〕について訂正することを認める。 特許第5991698号の請求項1に係る特許を維持する。 |
理由 |
第1 手続の経緯 特許第5991698号(以下、「本件特許」という。)の請求項1ないし4に係る特許についての出願は、平成23年 6月 1日を出願日として特許出願された特願2011-122994号の一部を、平成26年 6月 3日に新たな特許出願としたものであって、平成28年 8月26日にその特許権の設定登録がされたものであり、その後、その特許のうち、請求項1に係る特許に対して、特許異議申立人 特許業務法人 高田・高橋国際特許事務所(以下、「申立人」という。)により、3件の特許異議の申立て(申立番号01?03(以下、それぞれ「申立1」?「申立3」とする。))がされたものであり、その手続の経緯は以下のとおりである。 平成29年 3月 3日付け 特許異議の申立て(3件) 同年 6月29日付け 取消理由通知(1回目) 同年 8月24日付け 訂正の請求、意見書の提出 同年 12月1日付け 申立人による意見書の提出(1件) 平成30年 2月16日付け 取消理由通知(2回目) 同年 4月 5日付け 訂正の請求、意見書の提出 なお、平成30年4月5日付けの訂正の請求に対して、申立人に期間を指定して意見書を提出する機会を設けたが、意見書は提出されなかった。 第2 訂正の請求について 1 訂正の内容 平成30年 4月 5日付けの訂正の請求(以下、「本件訂正請求」という。)による訂正の内容は、以下のとおりである(下線部は,訂正箇所を示す)。 なお、平成29年 8月24日付けの訂正の請求(以下、「先の訂正請求」という。)は、取り下げられたものとみなす。 (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に「供給ヒータ」とあるのを、「第一のヒータ」に訂正し、「前記第二の除湿ロータの再生ゾーンに通過させ、前記第二の除湿ロータの再生ゾーンを通過した空気を再生ヒータで加熱して前記第一の除湿ロータの再生ゾーンに通し、外気を前記第一の除湿ロータの吸着ゾーンへ」とあるのを、「前記第二の除湿ロータの再生ゾーンに通過させ、前記第二の除湿ロータの再生ゾーンを通過した空気は前記第一のクーラによって冷却除湿された空気と混合され、この空気を第三のヒータによって加熱し前記第一の除湿ロータの再生ゾーンを通し、外気を前記第一の除湿ロータの吸着ゾーンへ」に訂正する。 (2)訂正事項2 特許請求の範囲の請求項2に「前記供給ヒータ」とあるのを、「前記第一のヒータ」に訂正する。 (3)訂正事項3 明細書の段落【0014】、【0015】、【0038】及び【0039】を削除する。 (4)訂正事項4 明細書の段落【0019】、【0024】及び【0030】に「第一の再生ヒータ10」とあるのを、「第一のヒータ10」に訂正する。 (5)訂正事項5 明細書の段落【0021】、【0025】、【0030】及び【0031】に「第二の再生ヒータ13」とあるのを、「第二のヒータ13」に訂正する。 (6)訂正事項6 明細書の段落【0041】に「10 第一の再生ヒータ」とあるのを、「10 第一のヒータ」に、「13 第二の再生ヒータ」とあるのを、「13 第二のヒータ」に、それぞれ訂正する。 (7)訂正事項7 明細書の段落【0001】に「空気の供給が可能で、現場ごとに条件を合わせる事が容易な」とあるのを、「空気の供給が可能な」に訂正する。 (8)訂正事項8 明細書の段落【0017】に「吸入側に入れるようにして、本件除湿機が設置される現場の状況に応じて、除湿条件を一定にすることができるようにした。」とあるのを、「吸入側に入れるようにした。」に訂正する。 2 訂正の目的の適否、一群の請求項、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否 (1)訂正事項4について 事案に鑑み、訂正事項4から検討する。 訂正事項4の「第一の再生ヒータ10」を「第一のヒータ10」とする訂正は、本件明細書の段落【0019】、【0024】及び【0030】に記載された「第一の再生ヒータ10」が、第二の除湿ロータの吸着ゾーンを通過し、ドライルームに供給される供給空気の温度を調整するためのヒータであることは明らかであるところ、当該ヒータが除湿ロータを再生するヒータではないことを明確にするためのものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載されている事項の範囲内の訂正であって、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (2)訂正事項1について 訂正事項1のうち、「供給ヒータ」を「第一のヒータ」とする訂正は、請求項1において、第二の除湿ロータの吸着ゾーンを通過させ供給ヒータを通過させて供給空気として供給先に供給することが特定され、本件明細書の段落【0019】、【0024】及び【0030】に「第一の再生ヒータ10」が記載されているところ、上記「供給ヒータ」は、「第一の再生ヒータ10」に対応することは明らかであって、訂正事項4において「第一の再生ヒータ10」を「第一のヒータ10」に訂正することに併せて、請求項1の「供給ヒータ」を「第一のヒータ」と訂正するものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載されている事項の範囲内の訂正であって、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 さらに、訂正事項1のうち、「前記第二の除湿ロータの再生ゾーンに通過させ、前記第二の除湿ロータの再生ゾーンを通過した空気を再生ヒータで加熱して前記第一の除湿ロータの再生ゾーンに通し、外気を前記第一の除湿ロータの吸着ゾーンへ」を、「前記第二の除湿ロータの再生ゾーンに通過させ、前記第二の除湿ロータの再生ゾーンを通過した空気は前記第一のクーラによって冷却除湿された空気と混合され、この空気を第三のヒータによって加熱し前記第一の除湿ロータの再生ゾーンを通し、外気を前記第一の除湿ロータの吸着ゾーンへ」とする訂正は、訂正前は、第二の除湿ロータの再生ゾーンを通過した空気を単に再生ヒータで加熱して第一の除湿ロータの再生ゾーンに通すことを特定していたが、訂正により、第二の除湿ロータの再生ゾーンを通過した空気を第一のクーラによって冷却除湿された空気と混合してからヒータで加熱することを特定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、当該訂正において、訂正前の「再生ヒータ」を、「第三のヒータ」とする訂正は、第二の除湿ロータの再生ゾーンを通過し、第一の除湿ロータの再生ゾーンに導かれる空気を加熱するヒータは、請求項4、本件明細書の段落【0021】、【0027】などに「第三のヒータ」と記載されていることに併せて訂正するものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。当該訂正は、請求項4、本件明細書の段落【0026】及び【0027】などに基づくものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載されている事項の範囲内の訂正であって、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (3)訂正事項2について 訂正事項2は、訂正事項1の「供給ヒータ」を「第一のヒータ」とする訂正に併せて、請求項1を引用する請求項2の「前記供給ヒータ」を「前記第一のヒータ」と訂正するものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載されている事項の範囲内の訂正であって、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (4)訂正事項3について 訂正事項3は、明細書の段落【0014】、【0015】、【0038】及び【0039】は、プラントの構成である配管が現場ごとに異なる場合であっても、除湿機は全て同一の条件で動作させるという、それ自体が不明瞭である記載が含まれているところ、当該事項に関連する記載を削除することにより、明細書の記載内容を明確にするものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であって、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 (5)訂正事項5について 訂正事項5の「第二の再生ヒータ13」を「第二のヒータ13」とする訂正は、請求項2の「・・・第二の除湿ロータの再生ゾーンに加熱空気を導く第二のヒータ」の記載と整合させるための訂正であるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載されている事項の範囲内の訂正であって、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (6)訂正事項6について 訂正事項6の「10 第一の再生ヒータ」を「10 第一のヒータ」とする訂正、及び「13 第二の再生ヒータ」を「13 第二のヒータ」とする訂正は、特許請求の範囲の記載と明細書の記載との整合を図るための訂正であるから、明瞭でない記載の釈明を目的とする訂正であり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載されている事項の範囲内の訂正であって、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (7)訂正事項7について 訂正事項7の本件明細書段落【0001】の「空気の供給が可能で、現場ごとに条件を合わせる事が容易な」を、「空気の供給が可能な」とする訂正は、「現場ごとに条件を合わせる事が容易な」という不明瞭な事項が記載されているところ、当該記載を削除することにより、明細書の記載内容を明確にするものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であって、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 (8)訂正事項8について 訂正事項8の本件明細書段落【0017】の「吸入側に入れるようにして、本件除湿機が設置される現場の状況に応じて、除湿条件を一定にすることができるようにした。」を、「吸入側に入れるようにした。」とする訂正は、「本件除湿機が設置される現場の状況に応じて、除湿条件を一定にすることができるようにした。」という不明瞭な事項が記載されているところ、当該記載を削除することにより、明細書の記載内容を明確にするものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であって、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 (9)一群の請求項について 訂正前の請求項1?4は、請求項2?4が直接的又は間接的に請求項1を引用する関係にあるから、一群の請求項であり、上記訂正事項1、2は、一群の請求項1?4について請求されたものである。また、訂正事項3?8は、この一群の請求項の全てについて明細書を訂正するものと認められる。 (10) 独立特許要件について 訂正事項1は、上記のとおり、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正を含むが、特許異議の申立ては、訂正前の請求項1にされているので、訂正後の請求項1に係る発明については、独立特許要件の規定は適用されない。 また、訂正事項1により、訂正前の請求項1を直接又は間接的に引用する訂正前の請求項2?4も同様に訂正されるところ、訂正前の請求項2?4は、特許異議の申立てがされていないから、独立特許要件について検討する必要がある。 しかし、下記第5のとおりであるから、訂正後の請求項1に係る発明は特許異議申立ての理由によって特許を受けることができないものではない。 そうすると、訂正後の請求項2?4は、訂正後の請求項1を引用するから、特許異議申立ての理由によって特許を受けることができないものではない。また、独立特許要件を満たさないとする新たな理由はない。 したがって、訂正後の請求項2?4に係る発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができるものである。 3 むすび 以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項及び同条第9項において準用する同法第126条第4項から第7項までの規定に適合するので、訂正後の請求項〔1?4〕 について訂正を認める。 第3 本件発明 本件訂正請求により訂正された請求項1?4に係る発明は、次の事項により特定されるとおりのものである(そのうち、請求項1に係る発明を、「本件発明1」という)。 【請求項1】 少なくとも再生ゾーンと吸着ゾーンとの2つのゾーンに分割された第一の除湿ロータと、少なくとも再生ゾーンと吸着ゾーンの2つに分割された第二の除湿ロータとを有し、外気を第一のクーラで冷却除湿して前記第一の除湿ロータの吸着ゾーンに通過させ、前記第一の除湿ロータの吸着ゾーンを通過した空気を前記第二の除湿ロータの吸着ゾーンを通過させ第一のヒータを通過させて供給空気として供給先に供給し、前記供給先からの還気を前記第一の除湿ロータの吸着ゾーンを通過した空気と混合して前記第二の除湿ロータを通過させて除湿した後、前記第二の除湿ロータの再生ゾーンに通過させ、前記第二の除湿ロータの再生ゾーンを通過した空気は前記第一のクーラによって冷却除湿された空気と混合され、この空気を第三のヒータによって加熱し前記第一の除湿ロータの再生ゾーンを通し、外気を前記第一の除湿ロータの吸着ゾーンへ送る第一のブロアと、前記第一の除湿ロータの再生ゾーンを通過した空気を外部に放出する第三のブロアと、前記第一の除湿ロータの吸着ゾーンを通過した空気を前記第二の除湿ロータの吸着ゾーンに送る第二のブロアを設け前記供給先からの還気をこのブロアの吸入側に入れるようにしたことを特徴とする除湿装置。 【請求項2】 前記第一のクーラは冷凍機のエバポレータを用い、前記第一のヒータ及び第二の除湿ロータの再生ゾーンに加熱空気を導く第二のヒータは前記冷凍機のコンデンサを用いるようにしたことを特徴とする請求項1記載の除湿装置。 【請求項3】 冷凍機としてガスヒートポンプを用いたことを特徴とする請求項2記載の除湿装置。 【請求項4】 少なくとも前記第二のヒータ或いは第一の除湿ロータの再生ゾーンに加熱空気を導く第三のヒータは、冷凍機のコンデンサとガスエンジンを冷却するラジエタの組合せであることを特徴とする請求項3記載の除湿装置。 第4 取消理由について 当審において通知した取消理由の概要は、以下のとおりである。 1 平成30年 2月16日付け取消理由通知(2回目)の概要 先の訂正請求により訂正された請求項1は、下記の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。 記 請求項1の「前記第二の除湿ロータの再生ゾーンを通過した空気を再生ヒータで加熱して前記第一の除湿ロータの再生ゾーンに通し、」における「再生ヒータ」と、「前記第二の除湿ロータの再生ゾーンを通過した空気は前記第一のクーラによって冷却除湿された空気と混合され、この空気を第三のヒータによって加熱し前記第一の除湿ロータの再生ゾーンを通し、」における「第三のヒータ」とは、両者とも第二の除湿ロータの再生ゾーンを通過した空気を加熱して第一の除湿ロータの再生ゾーンに当該空気を通すものであるが、各ヒータの名称が異なっているから、「再生ヒータ」と「第三のヒータ」とは、同一の加熱手段を示しているのかどうか明確でない。 2 平成29年 6月29日付け取消理由通知(1回目)の概要 申立1?申立3において、申立人が主張する申立理由は、全て採用した。 (1)申立1による取消理由 本件特許の出願は、分割要件を満たしていないため、その出願日は現実の出願日であるから、訂正前の請求項1に係る発明は、引用文献1に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し、または、引用文献1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものであるから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。 (引用文献) 引用文献1:特開2012-250150号公報(申立1の甲第1号証 (本件出願の原出願の公開公報)) (2)申立2による取消理由 訂正前の請求項1に係る発明は、引用文献2、3に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものであるから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。 (引用文献) 引用文献2:特開2010-91130号公報(申立2の甲第1号証) 引用文献3:特開2004-8914号公報(申立2の甲第2号証 (申立3の甲第1号証)) (3)申立3による取消理由 訂正前の請求項1に係る発明は、引用文献3に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し、または、引用文献3、4に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものであるから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。 (引用文献) 引用文献3:特開2004-8914号公報(申立3の甲第1号証 (申立2の甲第2号証)) 引用文献4:ムンタース株式会社,「乾式除湿機ハニカム LDタイプ (超低露点除湿システム)」,1998年11月、表紙、 裏表紙及び1?5ページ(申立3の甲第2号証) 第5 当審の判断 1 平成30年 2月16日付け取消理由(2回目)について 先の訂正請求により訂正された請求項1において、第二の除湿ロータの再生ゾーンを通過し第一の除湿ロータの再生ゾーンに送られる空気を加熱するヒータについて、「再生ヒータ」と「第三のヒータ」の2つの用語により特定されていたが、本件訂正請求により、「再生ヒータ」の記載は削除され、上記ヒータは「第三のヒータ」であることが明らかにされたから、訂正後の請求項1は明確になった。 よって、本件発明1は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たすものである。 2 平成29年 6月29日付け取消理由(1回目)について (1)申立1による取消理由について 取消理由通知において、本件明細書の段落【0001】の「現場ごとに条件を合わせる事が容易」、段落【0014】、【0015】、【0038】及び【0039】の記載は、原出願の明細書等に記載された事項の範囲内のものではないから、本件特許による出願は、分割要件を満たしていないと通知したところ、本件訂正請求により、当該記載は削除された。 そうすると、本件明細書の記載は、原出願の当初明細書等に記載された事項の範囲内のものであるから、本件特許の出願は、分割要件を満たす適法な分割出願であって、出願日の遡及が認められるものである。 したがって、引用文献1は、本件特許に係る出願の遡及した出願日の後に頒布された刊行物であるから、本件発明1は、引用文献1に記載された発明に対して、特許法第29条第1項第3号に該当するものではなく、また、同法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものでもない。 (2)申立2による取消理由について ア 各引用文献の記載事項及び引用文献2に記載された発明 (ア)引用文献2の記載事項 2a「【請求項1】 処理ラインとして前段に第1冷却器を配置した第1デシカントロータの処理ゾーンと、前段に第2冷却器を配置した第2デシカントロータの処理ゾーンと、前段に第3冷却器を配置した第3デシカントロータの処理ゾーンとを直列に連通し、第1冷却器側から外気を吸い込み順次第2デシカントロータ及び第3デシカントロータの処理ゾーンで処理して超低露点の給気を室内側に供給し、前記第2デシカントロータの処理ゾーンの下流の処理空気の一部を第2冷却器の上流側に返還するとともに室内側からの還気も第3冷却器の上流側に返還し、 再生ラインとして前段に第3冷却器を配置した第3デシカントロータの再生ゾーンと、前段に第2再生器を配置した第2デシカントロータの再生ゾーンと、前段に第1再生器を配置した第1デシカントロータの処理ゾーンとを直列に連通し、各再生器は80℃以下で加熱するとともに、前記給気の一部を前記第3再生器及び第3デシカントロータの再生ゾーンに供給し、該再生空気に外気を混合して第2デシカントロータに供給し、該第2デシカントロータからの再生空気を第1デシカントロータの再生ゾーンを順次通過して外部に排気することを特徴とする超低露点温度の乾燥空気を供給するデシカント空調機。」 2b「【0002】 ・・・従来の超低露点の乾燥空気SAを供給する空調機には・・・外気OAをフィルターaを介してファンbにより取込み、冷却器cで外気OAを冷却し、回転式のデシカントロータdを用いた乾式除湿器が使用されている。 この乾式除湿装置は、・・・吸着材で構成したロータを備え、このロータの端面に位置する空気の通過域、すなわち例えばロータの端面に配置するチャンバ等の仕切りによる空気の通過区域を除湿ゾーン(処理ゾーン)eと再生ゾーンfとに仕切り、ロータを回転させながら除湿ゾーンeに処理空気を通過させて乾燥空気を作り出すと共に、再生ゾーンfに140℃程度の高温の再生空気を通過させることによって、前記吸着材中の水分を再生空気中に蒸発させて、連続的に除湿処理を行うように構成され、より低露点を得る場合には、多段式、すなわち複数の乾式除湿装置を直列系統接続して運転する方法が知られている・・・。」 2c「【0008】 ・・・ [実施例] 図1は、実施例の超低露点温度の乾燥空気を供給するデシカント空調機1の系統図であって、主に直列に配置される第1デシカントロータ21、第2デシカントロータ22、第3デシカントロータ23から構成される。そして、各デシカントロータの除湿する処理ゾーンの上流側には冷却器が配置され、第1デシカントロータ21の前段には第1冷却器31、第2デシカントロータ22の前段には第2冷却器32、第3デシカントロータ23の前段には第3冷却器33がそれぞれ配置される。また、各デシカントロータを加熱する再生ゾーンの上流側には再生器が配置され、空気の流れ順に第3デシカントロータ23の前段には第3再生器43、第2デシカントロータ22の前段には第2再生器42、第1デシカントロータ21の前段には第1再生器41がそれぞれ配置される。・・・」 2d「【0009】 先ず、図1で外気OAから室内に乾燥空気の給気SAを供給する処理ライン(図面下側)の構成から説明する。 外気OAはファン51により吸い込まれるが、ダンパ61により吸入量を規制されフィルター71により第1冷却器(冷却コイル)31で冷やされ、第1デシカントロータ21の処理ゾーン211を通過してある程度除湿される。この除湿された中間空気は、ファン51により次の第2デシカントロータ22の前段の第2冷却器32で冷やされ、第2デシカントロータ22の処理ゾーン221を通過して更に除湿される。・・・ 【0010】 この中間到達露点が-20℃P程度に達した空気を、ダンパ64及びファン52により最終の第3デシカントロータ23に送風し更に除湿する。この第3デシカントロータ23の処理ゾーン231の上流には第3冷却器33が配置され、乾燥空気は冷却されて到達露点は-50℃DP程度まで除湿された後に、ドライルーム等の室内Rに給気通路83より給気され、一部は返還通路84から再生ラインに戻される。・・・」 2e「【0011】 先ず、図1で給気SAの一部が再生ゾーンを通過して外部に排気EAとなって排出される再生ライン(図面上側)の構成を説明する。 第3デシカントロータ23の到達露点は-50℃DP程度までであり、その除湿空気の一部・・・は室内(R)へ給気され、また、その除湿空気の一部・・・は再生ラインに戻される。その戻された除湿空気は、まず、第3デシカントロータ23の再生ゾーン232の前段の第3再生器(再生コイル)43で加熱され、その後再生ゾーン232を通過して、デシカントロータの再生ゾーン232で湿気を飛ばし、ダンパ66で風量規制・・・して、次段の第2デシカントロータ22の再生ゾーン222に送風される。 この第2デシカントロータ22では、その再生ゾーン222の前段に第2再生器42が配置され、この第2再生器42の上流側の前記ダンパ66で風量規制・・・された空気が供給されるとともに、外気OAをダンパ67、フィルター72、及び、第4冷却器34を介して取り込んだ空気・・・を混合して、第2再生器42で加熱し第2デシカントロータ22の再生ゾーン222に送風する。更に、上記の再生ゾーン222から排出された空気は、第1再生器及び第1デシカントロータ21の再生ゾーン212を通過して、ファン53により戸外に排気される。 なお、この再生ラインにおいて、第2デシカントロータ22の再生側にのみ、外気OAを導入して、再生ゾーン222,212での必要な通過空気量を確保する。これは、処理風量に対して再生風量が極端に少ないと再生(蒸発)が不十分となり、その結果処理空気の除湿性能が低下するからである・・・。すなわち、再生空気の湿度は低い方がデシカントロータの除湿性能が上がるのであるが、図1のデータでダンパ67を通る外気1510CMHがなければ再生ゾーン222を通過する再生風量は550CMHで、処理風量2187CMHの約1/4と極端に少なくなってしまので、総合すれば除湿性能が上がらない。このように、湿度の高い外気の再生側への導入による除湿性能低下と、再生風量の増加による除湿性能上昇は相殺し合うが、本実施例の場合、再生風量増加の効果がより大きいと判断できるので外気を導入している。 ・・・第1デシカントロータ21の再生側に外気OAを導入しないのは、第2デシカントロータ22の再生ゾーン222を通過した再生用空気の湿度が十分低いので、これを利用するためである。」 2f「【図1】 」 (イ)引用文献3の記載事項 3a「【特許請求の範囲】 【請求項1】 端面が除湿部と再生部に仕切られたロータを回転させながら前記除湿部に処理エアを通過させて該エアを除湿し、低露点のドライエアをドライルームに供給するとともに、前記再生部に加熱エアを通過させて、前記ロータを再生する乾式除湿装置において、前記除湿部の入口と出口を連通するバイパスと、前記バイパスを通過するエア流量を調節する制御手段と、前記ドライルームの露点温度を検出する測定手段を設け、露点温度に応じて制御手段によりバイパスを通過するエア流量を調節し、前記ドライルームに供給するドライエアの露点温度を制御することを特徴とする乾式除湿装置。 【請求項2】 ロータは、外気処理用の1段目ロータと、これに連通する低露点処理用の2段目ロータを有し、2段目ロータで除湿されたドライエアを1段目ローラの除湿部の入口と出口を連通するバイパスを通過するエアにより所定温度に調整し、ドライルームに供給することを特徴とする請求項1記載の乾式除湿装置。 【請求項3】 1段目ロータの除湿部で除湿された外気処理エアをドライルームから供給される環気エアと混合し、2段目ロータに供給することを特徴とする請求項2記載の乾式除湿装置。 【請求項4】 1段目ロータの除湿部入口と出口を連通するバイパスダクトを有し、バイパスダクトをドライルーム露点温度により制御される露点制御ファンを介して、2段目ロータの除湿部の出口に接続された供給ダクトに連通したことを特徴とする請求項2に記載の乾式除湿装置。 【請求項5】 2段目ロータの再生部には、1段目ロータからパージエアが供給され、再生部から排出されたパージエアは、再生ダクトを通じて再生エアと混合し、2段目再生ヒータで加熱され、再生部に導入されて2段目ロータを再生することを特徴とする請求項1または2記載の乾式除湿装置。 【請求項6】 2段目ロータから排出される再生エアの一部は、1段目再生ヒータで加熱され、再生部に導入されて1段目ロータを再生することを特徴とする請求項1または2記載の乾式除湿装置。」 3b「【0018】 【実施の形態】 以下、図面に基づいて本発明の実施の形態について説明する。図1は本実施に係わる2段のロータを有する乾式除湿装置1とドライルーム2に低露点のドライエアを供給する概略の構成を示している。 【0019】 乾式除湿装置1は外気処理用の1段目ロータ7と低露点処理用の2段目ロータ12を有しており、前記1段目ロータ7、2段目ロータ12は塩化リチュウムや塩化カルシウムなどの吸収液を含浸させたハニカム状やシリカゲル、ゼオライトなどの吸着剤で構成され、そのロー夕端面側が除湿部と再生部に仕切られており、図示しない回転駆動手段によって回転駆動される。 【0020】 まず、導入外気OAは外気導入ダクト3から導入され、中性能フィルタ4を通過後、外気処理ファン5によって外気処理プレクーラ6に送られ、冷却除湿された後、外気処理用の1段目ロータ7の除湿部7aに入口8から導入される。そして、除湿部7aを通過することによって、例えば、露点温度-15℃まで除湿される。 【0021】 前記除湿部7aの出口9から出た外気処理エアは、ドライルーム2から環気ダクト18を通って戻ってきた環気エアと混合され、除湿処理ファン10によって、プレクーラ11に送られる。前記プレクーラ11によって処理エアは冷却された後、2段目ロータ12の除湿部12aに入口13から導入される。 【0022】 そして、除湿部12aを通過して除湿され、低露点となったドライエアは出口14から出た後、HEPAフィルタ15を通過し、ヒータ16によって所定の温度に調節され、供給ダクト17を通じて、吸気SAとしてドライルーム2に供給される。 【0023】 一方、2段目ロータ12の再生部12bには、パージダクト19の入口20と出口21及び2段目再生ダクト22の入口23と出口24が形成されており、外気処理後のエアの一部が前記パージダクト19を通じて、入口20から再生部12bの除湿部12aに近い側を通過して、2段目ロータ12を冷却し、温度が高いまま、除湿部12aに入ってしまうことを防止している。そして、出口21から出たバージエアは、再生ダクト22通じて、再生ファン25によって送られてきた再生エアと混合し、再生ヒータ26を通過することによって加熱された後、入口23から再生部12aに導入され、2段目ロータ12を再生する。 【0024】 再生部の出口24から出た再生エアは、パージエアの導入量だけエアを排出するが、その一部は1段目の再生ファン30によって、1段目の再生ヒータ27を通過して加熱され、1段目ロータ7の再生部7bの入口28から再生部7bに導入され、1段目ロータ7を再生する。そして、出口29から出た再生エアは排気EAとして排気ダクト31から、乾式除湿装置1の外部に排出される。 【0025】 また、1段目ロータの除湿部7aの入口8及び出口9の前後には、入口8及び出口9から分岐したバイパスダクト32、33が形成され、該ダクトは、バイパスされるエア流量を調節するバイパスダンパD8及びD9を介して、露点制御ファン34に連通し、さらに、露点制御用の比例制御ダンパD10を介して、2段目ロータ12の除湿部12aの出口14後の供給ダクト17に連通されている。ドライルーム2内には室内露点温度を検出する手段である露点計35が設置されており、前記露点計35、バイパスダンパD8、D9,比例制御ダンパD10及び露点制御ファン34が制御手段である制御装置36に接続されている。」 3c「【0028】 乾式除湿装置1の1段目ロータ7及び2段目口ータ12を回転させ、外気処理ファン5、除湿処理ファン10、再生ファン25、30が駆動されると、導入外気OAが外気導入ダクト3を介して外気処理プレクーラ6に導かれ、例えば、露点温度0℃程度に冷却除湿後、1段目ロータ7の除湿部7aに導入される。除湿部7aに導入された外気処理エアは、除湿部7aを通過することによって、例えば、露点温度-15℃程度まで除湿される。 【0029】 1段目ロータ7の除湿部7aの出口9から出た外気処理エアは、ドライルーム2から環気ダクト18を通って戻ってきた環気エアと混合され、除湿処理ファン10によって、プレクーラ11に送られる。ここで、外気処理エアと混合される環気エアは、元々ドライルーム2からの環気であったことから、既にかなりの低露点、例えば露点温度-40℃となっており、処理エアの一部として再使用される。前記プレクーラ11によって処理エアは冷却された後、2段目ロータ12の除湿部12aに導入されるとともに、処理エアの一部はパージダクト19を通じて、入口20から再生部12bの除湿部12aに近い側を通過して、2段目ロータ12を冷却し、温度が高いまま、除湿部12aに入ってしまうことを防止している。除湿部12aに導入された処理エアは除湿部12aを通過することによって、例えば、露点温度-60℃の低露点まで除湿される。そして、低露点となったドライエアは、ヒータ16によって所定の温度に調節され、供給ダクト17を通って、吸気SAとしてドライルーム2内に供給される。 【0030】 一方、2段目ロータ12の再生部12bには、再生ダクト22を通って、再生ファン25によって送られてきた再生エアと前記パージエアが混合され、再生ヒータ26を通過することによって加熱された後、再生部12bに導入され、2段目ロータ12を再生する。その後、再生エアはその一部が1段目の再生ファン30によって、1段目の再生ヒータ27を通過して加熱され、1段目ロータ7の再生部7bに導入され、1段目ロータ7を再生する。そして、再生エアは排気EAとして排気ダクト31から、パージエアの導入量だけ乾式除湿装置1の外部に排出される。」 3d「【0032】 ところで、ドライルーム2内に供給されたドライエアはドライルーム2内の作業者や装置、ワークに吸湿されている水分の放出によって露点温度-40℃程度まで露点温度が上昇する。このドライルーム2の内部負荷は、作業者の人数に概略比例し、ドライルーム2内の露点温度は内部負荷によって変動し、ワークに対して水分量の変動が悪影響を及ぼすことになる。この露点温度変動をなくすためには、ドライルーム2内に供給されるドライエアの露点温度を調節する必要がある。 【0033】 そこで、ドライルーム2内に設置された露点計35によってドライルーム2内の露点温度を検出し、その検出値を制御装置36に伝達する。制御装置36は検出され露点温度に応じて、バイパスダンパD8、D9,比例制御ダンパD10及び露点制御ファン34を制御し、1段目ロータ7の除湿部7a前後の露点温度が高い処理エアを2段目ロータ12の除湿部12aで低露点に除湿されたドライエアと混合して、ドライルーム2内に供給されるドライエアの露点温度を調節する。 【0034】 例えば、ドライルーム2内の作業者が最大人数で内部負荷が最大のときは、バイパスダンパD8、D9が閉じており、バイパスダクト32及び33ヘバイパスされるエア流量はなく、乾式除湿装置1は最大能力で運転される。次に、ドライルーム2内の作業者が少なく、ドライルーム2内の露点温度が低くなると、露点計35の露点温度検出値が低下して制御装置36が制御し、バイパスダンパD9が開き、露点制御ファン34によって1段目ロータ7の除湿部7a後の露点温度-15℃程度の処理エアがバイパスダクト33から比例制御ダンパD10を介して、2段目ロータ12の除湿部12aで低露点に除湿されたドライエアと混合して、ドライエアの露点温度が時間を要することなく制御される。さらに、ドライルーム2内の内部負荷が少なくなると、バイパスダンパD8が開き、1段目ロータ7の除湿部7a前の露点温度0℃程度の処理エアがバイパスダクト32から流入して、ドライエアの露点温度がドライルーム2内の内部負荷に応じて制御される。 【0035】 これによって、ドライルーム2内に供給されるドライ土アはドライルーム2内の内部負荷に応じた露点温度に短時間のうちに制御され、過剰な低露点のドライエアを供給することなく、ドライルーム2内を所定の露点温度に維持することができる。また、1段目ロータ7の除湿部7a及び2段目ロータ12の除湿部12aに導入される処理エアは、バイパスダクト32及び33へバイパスされるエア流量に応じて減少し、除湿部7a及び除湿部12aに吸着される水分量が減少して、1段目ロータ7の再生部7b及び2段目ロータ12の再生部12bに供給される再生エアの加熱エネルギを減少させることができ、乾式除湿装置1全体として消費エネルギが少なく、ランニングコストを低減できる。」 3e「【図1】 」 (ウ)引用文献2に記載された発明 記載事項2a?2fによると、引用文献2には、 「再生ゾーンと処理ゾーンに仕切られた第1デシカントロータと、再生ゾーンと処理ゾーンに仕切られた第2デシカントロータと、再生ゾーンと処理ゾーンに仕切られた第3デシカントロータとを有し、外気を第1冷却器で冷して前記第1デシカントロータの処理ゾーンを通過させ、前記1デシカントロータの処理ゾーンを通過した空気を前記第2デシカントロータの処理ゾーンを通過させ、前記第2デシカントロータの処理ゾーンを通過した空気を前記第3デシカントロータの処理ゾーンを通過させて超低露点の給気として室内側に供給し、前記室内側からの還気を前記第3デシカントロータの上流側に返還して前記第3デシカントロータの処理ゾーンを通過させて除湿した後、吸気の一部を前記第3デシカントロータの再生ゾーンを通過させ、外気を第4冷却器を介して取り込んだ空気を混合して、第2再生器で加熱して前記第2デシカントロータの再生ゾーンを通過させ、前記第2デシカントロータの再生ゾーンを通過させた空気を第1再生器で加熱して前記第1デシカントロータの再生ゾーンを通過させ、外気を第1のデシカントロータの処理ゾーンに送るファンと、前記第1のデシカントロータの再生ゾーンを通過した空気を外部に排気するファンと、前記第2のデシカントロータの処理ゾーンを通過した空気を前記第3デシカントロータの処理ゾーンに送風するファンを設け前記室内側からの換気をこのファンの上流側に戻すようにした、デシカント空調機。」 の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されているといえる。 イ 対比と判断 (ア)発明の対比 本件発明1と引用発明2とを対比する。 引用発明2の「再生ゾーン」、「処理ゾーン」、「仕切られた」は、それぞれ本件発明1の「再生ゾーン」、「吸着ゾーン」、「分割された」に相当する。 引用発明2の「第1デシカントロータ」は、外気が処理ゾーンを通過し、再生空気が再生ゾーンを通過して外部に排気されるように配置されているから、本件発明1の「第一の除湿ロータ」に相当する。 引用発明2の「第3デシカントロータ」は、処理ゾーンを通過した超低露点の給気を室内側に供給し、一部を再生ゾーンに供給するように配置されているから、本件発明1の「第二の除湿ロータ」に相当する。 引用発明2の「第1冷却器」は、本件発明1の「第一のクーラ」に相当する。 引用発明2の「超低露点の給気」、「室内側」は、それぞれ本件発明1の「供給空気」、「供給先」に相当する。 引用発明2の「室内側からの還気」を「返還」することは、本件発明1の「供給先からの還気」を「空気と混合」することに相当する。 引用発明2の「第1再生器」は、本件発明1の「第三のヒータ」に相当する。 引用発明2の「ファン」は、それぞれ本件発明1の「ブロア」に相当するところ、引用発明2の「外気を第1のデシカントロータの処理ゾーンに送るファン」、「第1のデシカントロータの再生ゾーンを通過した空気を外部に排気するファン」は、それぞれ本件発明1の「外気を前記第一の除湿ロータの吸着ゾーンへ送る第一のブロア」、「前記第一の除湿ロータの再生ゾーンを通過した空気を外部に放出する第三のブロア」に相当する。また、引用発明2の「デシカントロータの処理ゾーンを通過した空気を前記第3デシカントロータの処理ゾーンに送風するファンを設け前記室内側からの換気をこのファンの上流側に戻す」ことは、本件発明1の「除湿ロータの吸着ゾーンを通過した空気を前記第二の除湿ロータの吸着ゾーンに送る第二のブロアを設け前記供給先からの還気をこのブロアの吸入側に入れる」ことに相当する。 以上のことから、本件発明1と引用発明2とは、 「少なくとも再生ゾーンと吸着ゾーンとの2つのゾーンに分割された第一の除湿ロータと、少なくとも再生ゾーンと吸着ゾーンの2つに分割された第二の除湿ロータとを有し、外気を第一のクーラで冷却除湿して前記第一の除湿ロータの吸着ゾーンに通過させ、除湿ロータの吸着ゾーンを通過した空気を前記第二の除湿ロータの吸着ゾーンを通過させ、供給空気として供給先に供給し、前記供給先からの還気を、除湿ロータの吸着ゾーンを通過した空気と混合して前記第二の除湿ロータを通過させて除湿した後、前記第二の除湿ロータの再生ゾーンに通過させ、除湿ロータの再生ゾーンを通過した空気を第三のヒータによって加熱し前記第一の除湿ロータの再生ゾーンを通し、外気を前記第一の除湿ロータの吸着ゾーンへ送る第一のブロアと、前記第一の除湿ロータの再生ゾーンを通過した空気を外部に放出する第三のブロアと、除湿ロータの吸着ゾーンを通過した空気を前記第二の除湿ロータの吸着ゾーンに送る第二のブロアを設け前記供給先からの還気をこのブロアの吸入側に入れるようにした、除湿装置。」 の点で一致し、以下の点で両者は相違する。 相違点2-1:本件発明1は、第一の除湿ロータの吸着ゾーンを通過した空気を、第二の除湿ロータの吸着ゾーンを通過させるものであるのに対して、引用発明2は、第1デシカントロータの処理ゾーンを通過した空気を、第2デシカントロータの処理ゾーンを通過させ、前記第2デシカントロータの処理ゾーンを通過した空気を、第3デシカントロータの処理ゾーンを通過させるものである点。 相違点2-2:本件発明1は、 第二の除湿ロータの再生ゾーンを通過した空気は、第一のクーラによって冷却除湿された空気と混合され、この空気を第三のヒータによって加熱して前記第一の除湿ロータの再生ゾーンに通すようにしたものであるのに対して、 引用発明2は、第3デシカントロータの再生ゾーンを通過させた空気に、外気を第4冷却器を介して取り込んだ空気を混合して、第2再生器で加熱して第2デシカントロータの再生ゾーンを通過させ、前記第2デシカントロータの再生ゾーンを通過した空気を、第1再生器で加熱して第1デシカントロータの再生ゾーンを通過させるようにしたものである点。 相違点2-3:本件発明1は、除湿ロータの吸着ゾーンを通過させ第一のヒータを通過させて供給空気として供給先に供給するのに対して、引用発明2は、デシカントロータの処理ゾーンを通過させて加熱手段を通過させることなしに超低露点の給気として室内側に供給する点。 (イ)相違点についての判断 ここで、上記相違点2-2について検討する。 引用文献2の記載事項2eによると、デシカントロータの処理風量に対して再生風量が少ないと再生(蒸発)が不十分となり、その結果、処理空気の除湿性能が低下することを防止するため、引用発明2は、第3デシカントロータの再生ゾーンから送風された空気に、外気を第4冷却器を介して取り込んだ空気を混合して、第2デシカントロータ及び第1デシカントロータの再生ゾーンでの必要な通過空気量を確保するものである。 そして、第2デシカントロータの再生ゾーンを通過した再生用空気の湿度が十分低いので、これを利用するため、第1デシカントロータの再生側に外気は導入しないとされているから、引用発明2は、第2デシカントロータの再生ゾーンを通過した空気に第1冷却器で冷やした外気を混合することを全く想定していないといえる。 そうすると、引用発明2において、第2デシカントロータの再生ゾーンを通過した第1のデシカントロータの再生側の空気に、第1冷却器で冷やした外気を混合することには、阻害要因があるといえるから、引用文献3の記載事項を検討したとしても、相違点2-2を解消することはできない。 よって、相違点2-1、2-3について検討するまでもなく、本件発明1は、引用発明2及び引用文献2、3に記載された技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (3)申立3による取消理由について ア 各引用文献の記載事項及び引用文献3に記載された発明 (ア)引用文献3の記載事項 上記「2 ア(イ)引用文献3の記載事項」参照 (イ)引用文献4の記載事項 引用文献4は、乾式除湿機について記載され、5ページには、代表的な低露点フローである循環方式の除湿装置において、外気をプレクーラで冷却除湿して得られた空気を、除湿ロータの「パージ部」に通し、該「パージ」部を通過した空気を、再生空気の一部として再生ヒータに通し、除湿ロータの「再生部」に通すことが記載されていると認められる。 (ウ)引用文献3に記載された発明 記載事項3a?3eによると、引用文献3には、 「再生部と除湿部に仕切られた1段目ロータと、再生部と除湿部に仕切られた2段目ロータとを有し、導入外気を外気処理プレクーラで冷却除湿して前記1段目ロータの除湿部を通過させ、前記1段目ロータの除湿部を通過した外気処理エアを前記2段目ロータの除湿部を通過させヒータを通過させて吸気としてドライルームに供給し、前記ドライルームからの環気エアを前記1段目ロータの除湿部を通過した外気処理エアと混合して前記2段目ロータを通過させて2段目ロータを冷却した後、前記2段目ロータの再生部を通過させ、前記2段目ロータの再生部を通過した再生エアを再生ヒータで加熱して前記1段目ロータの再生部を通過させ、前記2段目ロータの除湿部を通過して除湿されたドライエアは、前記外気処理プレクーラで冷却除湿された外気処理エアと混合できるようにされ、導入外気を前記1段目ロータの除湿部に導入する外気処理ファンと、前記1段目ロータの再生部を通過した再生エアを外部に排出する再生ファンと、前記1段目ロータの除湿部を通過した外気処理エアを前記2段目ロータの除湿部に送る除湿処理ファンを設け前記ドライルームからの環気をこの除湿処理ファンの上流側に戻すようにした、乾式除湿装置。」 の発明(以下、「引用発明3」という。)が記載されているといえる。 イ 対比と判断 (ア)発明の対比 本件発明1と引用発明3とを対比する。 引用発明3の「再生部」、「除湿部」、「仕切られた」は、それぞれ本件発明1の「再生ゾーン」、「吸着ゾーン」、「分割された」に相当し、引用発明3の「1段目ロータ」、「2段目ロータ」は、それぞれ本件発明1の「第一の除湿ロータ」、「第二の除湿ロータ」に相当する。 引用発明3の「導入外気」、「外気処理プレクーラ」は、それぞれ本件発明1の「外気」、「第一のクーラ」に相当する。 引用発明3の「外気処理エア」、「ヒータ」、「給気」、「ドライルーム」、「環気エア」は、それぞれ本件発明1の「空気」、「第一のヒータ」、「供給空気」、「供給先」、「還気」に相当する。 引用発明3の「前記ドライルームからの環気エアを前記1段目ロータの除湿部を通過した外気処理エアと混合」することは、本件発明1の「前記供給先からの還気を前記第一の除湿ロータの吸着ゾーンを通過した空気と混合」することに相当する。 引用発明3の「2段目ロータの再生部を通過した再生エア」、「導入外気」は、それぞれ本件発明1の「第二の除湿ロータの再生ゾーンを通過した空気」、「外気」に相当する。 そして、引用発明3の「導入外気を前記1段目ロータの除湿部に導入する外気処理ファン」、「前記1段目ロータの再生部を通過した再生エアを外部に排出する再生ファン」は、それぞれ本件発明1の「外気を前記第一の除湿ロータの吸着ゾーンへ送る第一のブロア」、「前記第一の除湿ロータの再生ゾーンを通過した空気を外部に放出する第三のブロア」に相当し、引用発明3の「前記1段目ロータの除湿部を通過した外気処理エアを前記2段目ロータの除湿部に送る除湿処理ファンを設け前記ドライルームからの環気をこの除湿処理ファンの上流側に戻す」ことは、本件発明1の「前記第一の除湿ロータの吸着ゾーンを通過した空気を前記第二の除湿ロータの吸着ゾーンに送る第二のブロアを設け前記供給先からの還気をこのブロアの吸入側に入れる」ことに相当する。 以上のことから、本件発明1と引用発明3とは、 「少なくとも再生ゾーンと吸着ゾーンとの2つのゾーンに分割された第一の除湿ロータと、少なくとも再生ゾーンと吸着ゾーンの2つに分割された第二の除湿ロータとを有し、外気を第一のクーラで冷却除湿して前記第一の除湿ロータの吸着ゾーンに通過させ、前記第一の除湿ロータの吸着ゾーンを通過した空気を前記第二の除湿ロータの吸着ゾーンを通過させ第一のヒータを通過させて供給空気として供給先に供給し、前記供給先からの還気を前記第一の除湿ロータの吸着ゾーンを通過した空気と混合して前記第二の除湿ロータを通過させた後、前記第二の除湿ロータの再生ゾーンに通過させ、前記第二の除湿ロータの再生ゾーンを通過した空気を第三のヒータによって加熱し前記第一の除湿ロータの再生ゾーンを通し、外気を前記第一の除湿ロータの吸着ゾーンへ送る第一のブロアと、前記第一の除湿ロータの再生ゾーンを通過した空気を外部に放出する第三のブロアと、前記第一の除湿ロータの吸着ゾーンを通過した空気を前記第二の除湿ロータの吸着ゾーンに送る第二のブロアを設け前記供給先からの還気をこのブロアの吸入側に入れるようにした、除湿装置。」 の点で一致し、以下の点で両者は相違する。 相違点3-1:本件発明1は、供給先からの還気を第一の除湿ロータの吸着ゾーンを通過した空気と混合して第二の除湿ロータを通過させて除湿することが特定されているのに対して、引用発明3は、ドライルームからの環気エアを1段目ロータの除湿部を通過した外気処理エアと混合して2段目ロータを通過させて2段目ロータを冷却することが規定されている点。 相違点3-2:本件発明1は、第二の除湿ロータの再生ゾーンを通過した空気は第一のクーラによって冷却除湿された空気と混合され、この空気を第三のヒータによって加熱することが特定されているのに対して、引用発明3は、2段目ロータの再生部を通過した再生エアを再生ヒータで加熱することは規定されているが、前記再生エアは、外気処理プレクーラで冷却除湿された外気処理エアと混合するものではなく、2段目ロータの除湿部を通過して除湿されたドライエアが、前記外気処理エアと混合できるようにしたことが規定されている点。 (イ)相違点についての判断 ここで、相違点3-2について検討する。 引用文献3の記載事項3dによれば、ドライルームに供給されるドライエアを、ドライルームの内部負荷に応じた露点温度に制御可能とするために、引用発明3は、2段目ロータの除湿部を通過して得られたドライエアを、外気処理プレクーラで冷却除湿した外気処理エアとを混合できるようにしたものであるから、引用発明3は、上記外気処理エアをドライエア以外のロータの再生部を通過した再生エアなどと混合することを全く想定していないといえる。 したがって、引用発明3において、2段目ロータの再生部を通過した再生エアに上記外気処理エアを混合することには、阻害要因があるといえるから、引用文献4の記載事項を検討したとしても、相違点3-2を解消することはできない。 よって、相違点3-1について検討するまでもなく、本件発明1は、引用発明3及び引用文献3、4に記載された技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 第6 申立人の意見について 1 申立人の主張 申立人は、平成29年12月1日付けの意見書において、先の訂正請求により訂正された請求項1に対して以下の主張をしている。 (1)訂正要件違反 請求項1で「再生ヒータ」と「第三のヒータ」が同時に特定されているから、訂正要件違反である。 (2)分割要件違反 訂正後の明細書の【0001】等に原出願の明細書にない記載があるから、分割要件を満たしておらず、原出願の公開公報に記載された発明に対して、新規性、進歩性がない。 (3)記載要件違反 ア 「再生ヒータ」と「第三のヒータ」を備える発明は、発明の詳細な説明に記載されていないから、サポート要件及び実施可能要件違反である。 イ 請求項1の「再生ヒータ」と「第三のヒータ」の関係が不明確である。 ウ 請求項1に「第一のヒータ」と「第三のヒータ」の記載があるが、「第二のヒータ」の記載がないから不明確である。 エ 請求項4に「第三のヒータ」の特定があるが、請求項1の「第三のヒータ」との関係が不明確である。 オ 訂正により追加された記載により、請求項1の記載が冗長である。 (4)進歩性違反 ア 訂正により追加された「(前略)前記第二の除湿ロータの再生ゾーンを通過した空気は、前記第一のクーラによって冷却除湿された空気と混合され、この空気を第三のヒータによって加熱し前記第一の除湿ロータの再生ゾーンを通し、(以下略)」との限定事項は、参考資料1?4に記載されているように周知の技術であるから、訂正後の請求項1に係る発明は、依然として進歩性がない。 (参考資料) 参考資料1:特開2010-148997号公報 参考資料2:特開平11-188224号公報 参考資料3:特開2006-125670号公報 参考資料4:特開2002-320817号公報 イ 平成29年8月24日付けの特許権者の意見書における請求項1に係る発明の効果の主張は採用できるものではないから、請求項1に係る発明は依然として進歩性がない。 2 当審の判断 (1)「1(1)、(2)、(3)ア、イ、オ」について 本件訂正請求により、本件発明1において「再生ヒータ」の記載は削除され「第三のヒータ」のみが特定され記載が明確となり、また、明細書において分割時に追加された記載は削除されたから、申立人の主張した不備等は解消した。 (2)「1(3)ウ」について 本件発明1は、加熱手段として「第一のヒータ」と「第三のヒータ」を特定する発明であると認められるから、「第二のヒータ」の記載がないことをもって不明確であるとはいえない。 (3)「1(3)エ」について 請求項4は、本件発明1(請求項1)を間接的に引用するものであり、それらの記載から請求項4で特定する「第三のヒータ」は、本件発明1で特定する「第三のヒータ」であることは明らかであるから、これらの記載は明確である。 (4)「1(4)ア」について 参考資料1?4には、冷却装置により冷却除湿された空気の一部を、除湿ロータのパージ部を通過させた後、再生空気と混合し、加熱装置により加熱した後、当該除湿ロータの再生部に通すことが記載されているが、冷却除湿された空気はパージ部を通過させて除湿ロータの再生に利用するものであるから、本件発明1の「第二の除湿ロータの再生ゾーンを通過した空気は前記第一のクーラによって冷却除湿された空気と混合され、この空気を第三のヒータによって加熱し・・・」という特定事項が周知技術であることを示すものではない。 よって、本件発明1は、引用発明2、3、並びに引用文献2、3及び参考資料1?4に記載された技術事項を考慮しても、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (5)「1(4)イ」について 第5で検討したとおり、本件発明1には、構成困難性があるのだから、特許権者の意見書における効果の主張が採用できないとしても、進歩性がないということはできない。 第7 むすび 以上のとおりであるから、取消理由及び特許異議申立ての理由によっては、本件請求項1に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件請求項1に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(54)【発明の名称】 除湿装置 【発明の詳細な説明】 【技術分野】 【0001】 本発明は、除湿ロータを用いるものであって、再生温度が低くても露点の低い空気の供給が可能な除湿装置に関するものである。 【背景技術】 【0002】 近年、リチウム電池の需要が増大し、それに伴いその生産も増大している。リチウム電池は、その原料であるリチウムが空気中の湿気と反応し、その反応によって生産されたリチウム電池の性能が悪くなる。このため、リチウム電池の生産ラインは、乾燥した状態に保つ必要がある。この乾燥した状態に保つ手段として、生産工場内をチッソによってパージする手段と、シリカゲルなどの湿気吸着剤を有する除湿ロータを利用した除湿装置を用いる手段などがある。 【0003】 リチウム電池の用途が、電気自動車やハイブリッド自動車などの自動車用に広がるにつれて、生産工場の規模が大きくなり、上記のチッソパージによる手段よりも除湿装置を用いる手段の方が次第に現実的になりつつある。 【0004】 除湿装置の場合、除湿ロータの再生に高温の空気を使うのであるが、その高温の空気を作るためのエネルギーをできるだけ少なくすることが図られている。 【0005】 例えば特許文献1に開示されたものは、乾燥空気の送られるドライルームからの還気を除湿ロータのパージゾーンに送るようにし、そのパージゾーンを出た空気を加熱して再生ゾーンに送るようにしているため、パージゾーンで熱エネルギーの回収を行う事ができ、省エネルギー効果の高いものである。 【先行技術文献】 【特許文献】 【0006】 【特許文献1】特開平10-76131号公報 【発明の概要】 【発明が解決しようとする課題】 【0007】 解決しようとする問題点は、省エネルギー効果を得るだけでなく、再生温度を低くして、種々のエネルギー源に対応可能にするようにする点である。つまり再生温度が低いと、電気ヒータだけでなく、重油やガスを燃料として用いるボイラーからの温水や、工場の廃熱など、多くのエネルギー源を用いることができる。 【課題を解決するための手段】 【0008】 本発明は、少なくとも再生ゾーンと吸着ゾーンとの2つのゾーンに分割された第一の除湿ロータと、少なくとも再生ゾーンと吸着ゾーンの2つに分割された第二の除湿ロータとを有し、外気を第一のクーラで冷却除湿して前記第一の除湿ロータの吸着ゾーンに通過させ、第一の除湿ロータの吸着ゾーンを通過した空気を第二の除湿ロータの吸着ゾーンを通過させ供給ヒータを通過させて供給空気として供給先に供給し、供給先からの還気を前記第一の除湿ロータの吸着ゾーンを通過した空気と混合し、第二の除湿ロータの再生ゾーンを通過した空気を再生ヒータで加熱して第一の除湿ロータの再生ゾーンに通し、外気を第一の除湿ロータの吸着ゾーンへ送るブロアと、第二の除湿ロータの再生ゾーンを通過した空気を外部に放出するブロアと、第一の除湿ロータの吸着ゾーンを通過した空気を第二の除湿ロータの吸着ゾーンに送るブロアを設け供給側からの還気をこのブロアの吸入側に入れるようにしたことを最も主要な特徴とする。 【発明の効果】 【0009】 本発明の除湿装置は、再生空気の温度が低いため、多くのエネルギー源が利用でき、停電などエネルギーインフラに問題が生じた場合に柔軟に対応が可能である。 【0010】 つまり工場で使うエネルギー源としては、電気でなければならない部分は電気とし、電気に限らずその他のエネルギーでもよい場合は、電気だけでなく多種のエネルギー源を使えるようにしておくと、緊急事態に柔軟に対応が可能となる。 【0011】 このためには、除湿ロータの再生空気の温度が低く出来るようにする事によって、吸着式の除湿装置で最も多くのエネルギーを必要とする再生空気の加熱に、多様なエネルギーを用いることができるようになる。 【0012】 また、再生に必要な温度が低いと、工場などに廃熱がある場合、それを利用することができ、このような場合にはエネルギーコストが不要になるとともに、二酸化炭素排出量の削減も可能である。 【0013】 工場で使う機器のエネルギー源は、電気、ガスなどできるだけ多様である方が、緊急時の対応が柔軟で好ましい。そして、再生に必要な高温空気の温度ができるだけ低い方が、工場の余熱を用いたり、太陽熱を用いたり、エネルギー源も多様になるだけでなく、省エネルギーを図ることも可能である。 【0014】(削除) 【0015】(削除) 【図面の簡単な説明】 【0016】 【図1】図1は除湿装置の実施例を示した図である。 【発明を実施するための形態】 【0017】 除湿ロータの再生空気の温度を下げ、多くのエネルギー源を利用できるようにするという目的を、再生ゾーンと吸着ゾーンとに分割された第一の除湿ロータと、再生ゾーンと吸着ゾーンに分割された第二の除湿ロータとを有し、外気を第一のクーラで冷却除湿して第一の除湿ロータの吸着ゾーンに通過させるようにすることによって、供給空気の露点を上げることがなく、外気を第一の除湿ロータの吸着ゾーンへ送るブロアと、第一の除湿ロータの再生ゾーンを通過した空気を外部に放出するブロアと、第一の除湿ロータの吸着ゾーンを通過した空気を第二の除湿ロータの吸着ゾーンに送るブロアを設け供給側からの還気をこのブロアの吸入側に入れるようにした。 【実施例1】 【0018】 1は第一の除湿ロータであり、吸着ゾーン2及び再生ゾーン3に分割されている。4は第二の除湿ロータであり、これも吸着ゾーン5及び再生ゾーン6に分割されている。 【0019】 7は第一のクーラであり、この第一のクーラは外気OAを冷却除湿するものである。つまり外気の露点以下に空気を冷却するものである。第一のクーラ7を通過した空気は、第一のブロア8によって第一の除湿ロータ1の吸着ゾーン2を通過した後、第二の除湿ロータの吸着ゾーンを通過させ、更に第一のヒータ10によって温度を調整されて、乾燥空気の供給先であるドライルーム11に供給される。 【0020】 ドライルーム11からの還気RAは、第二のクーラ12によって冷却され、第二のブロア9の吸い込み側に導かれる。つまり第二のブロア9の吸い込み側には第一の除湿ロータ1の吸着ゾーン2を通過した空気と、ドライルーム11からの還気RAとが導かれる。 【0021】 第二の除湿ロータ4の吸着ゾーン5を出た空気の一部は分岐され、第二のヒータ13によって加熱され、第二の除湿ロータ4の再生ゾーン6に導かれる。第二の除湿ロータ4の再生ゾーン6を出た空気は、第一のクーラ7を通過した空気の一部と混合されて第三のヒータ14で加熱されて、第一の除湿ロータ1の再生ゾーン3に導かれる。再生ゾーン3を出た空気は第三のブロア15によって大気に放出される。 【0022】 以上の構成の本発明の除湿装置の動作を以下、説明する。以下の説明で、温度は全て摂氏である。また各データは、試作を行った装置を用いて測定したものである。外気OAは、第一のクーラ7によって冷却除湿される。例えば外気OAの空気条件が日本の夏条件を想定して、温度35度、絶対湿度20g/kgであった場合、実験の結果、第一のクーラ7によって温度10度まで冷却され、結露によって絶対湿度が7.25g/kgまで下げられる。 【0023】 この空気は第一のブロア8によって、第一の除湿ロータ1の吸着ゾーン2を通過し、湿気が吸着されて絶対湿度0.635g/kgの乾燥空気となる。この乾燥空気は第二のクーラ12によって冷却されたドライルーム11からの還気RAと混合される。ドライルーム11からの還気RAの絶対湿度は実測値で0.079g/kgであり、これが第二のクーラ12によって0度まで冷却され、上記のとおり吸着ゾーン2を出た空気と混合される。そして、混合後第二のブロア9を出た空気の温度は13.0度であり、絶対湿度は0.22g/kgであった。 【0024】 第二のブロア9を出た空気は、第二の除湿ロータ4の吸着ゾーン5を通過して湿気が吸着され、乾燥した低露点空気となる。この低露点空気の実測値は、温度16度、絶対湿度0.0029g/kgであり、露点は-66度であった。この低露点空気は第一のヒータ10によって温度調節され、温度23度となってドライルーム11に供給空気SAとして供給される。 【0025】 第二の除湿ロータ4の吸着ゾーン5を通過した空気の一部は分岐され、第二のヒータ13によって温度80度まで加熱されて第二の除湿ロータ4の再生ゾーン6に入る。この加熱空気によって第二の除湿ロータ4に吸着された湿気が脱着される。再生ゾーン6を通過した空気は、脱着熱によって温度が50度まで下がり、絶対湿度1.31g/kgまで湿度が上昇する。 【0026】 第二の除湿ロータ4の再生ゾーン6を通過し湿度の上昇した空気は、第一のクーラ7によって冷却除湿された空気と混合され、温度36度、絶対湿度3.39g/kgの空気となる。 【0027】 この空気は第三のヒータ14によって温度が80度になるまで加熱される。この温度の上昇した空気が第一の除湿ロータ1の再生ゾーン3を通過し、通過に伴って第一の除湿ロータ1に吸着された湿気を脱着する。この脱着後の多湿空気は第三のブロア15によって大気放出される。 【0028】 上記の一連の動作説明で明確なとおり、第一の除湿ロータ1及び第二の除湿ロータ4とも、再生空気の温度は80度である。この80度の再生空気で、最終的な供給空気SAの露点は-66であった。この露点は、例えばリチウム電池の生産工場の空気として十分な露点である。 【0029】 本発明の除湿装置は、上記のような動作となるが、試作した装置の動作中の熱負荷は、次のようなデータとなる。先ず、外気を冷却するとともに冷却除湿する第一のクーラ7の冷凍負荷Qc1は、Qc1=1660×1.2×(86.5-28.3)/3600=32.2Kwとなる。 【0030】 一方で、第一のヒータ10の熱負荷QhtはQht=4000×1.2×1×(23-16)/3600=9.3Kwである。また第二のヒータ13の熱負荷Qht2はQht2=800×1.2×(80.42-18)/3600=16.6Kwである。ここで第一のクーラ7の熱負荷よりも、第一のヒータ10と第二のヒータ13の熱負荷の合計の方が小さく、効率を考慮しても第一のクーラ7を動作させる冷凍機の排熱、即ちコンデンサの熱によって第一のヒータ10及び第二のヒータ13熱源とすることができる。 【0031】 ここで、コンデンサによって加熱される空気の温度が、第二のヒータ13に要求される温度に達しない場合、コンデンサを通過した空気をガスヒータ、電気ヒータ、蒸気ヒータなどで少し加温することによって、要求温度の80度まで上げることができる。 【0032】 また第二のクーラ12の冷凍機の熱負荷Qc2はQc2=3570×1.2×(23.3-0.2)/3600=27.5Kwである。これと第三のヒータ14の熱負荷Qht3を比較すると、第三のヒータ14の熱負荷の方が小さい。 Qht3=1230×1.2×1×(80-45)/3600=18.3Kw 【0033】 このため、第2のヒータ13と同様、第二のクーラ12の冷凍機の排熱、即ちコンデンサの熱によって第三のヒータ14の熱源とすることができる。この場合に、第2のヒータ13と同様要求温度に達しない場合は、ガスヒータ、電気ヒータ、蒸気ヒータによって加温することができる。 【0034】 上記のクーラは、冷凍機を使う例を示したが、液化天然ガスや液化石油ガスの気化熱で冷却する事もできる。つまり液化ガスは蒸発器で液体からガスに状態を変更して利用されることが多く、この場合に気化熱で蒸発器(ベーパライザー)の温度が下がる。この冷熱を利用することができる。この場合には、冷凍機の排熱の利用ができないが、ヒータに要求される温度は80度であるので、その他の廃熱や、ガスヒータ或いはボイラーで沸かした温水など多様な熱源を利用することができる。 【0035】 上記のようにヒータとクーラとの組合せを冷凍機のコンデンサとエバポレータとすることで、消費エネルギーを少なくする事ができるが、ここで、冷凍機としてガスヒートポンプ(GHP:ガスを燃料とする内燃機関によってコンプレッサを駆動するヒートポンプ)を用いると、GHPのガスエンジンの廃熱も利用する事ができる。つまり、ヒータ13やヒータ14として、コンデンサとラジエタとの組合せとし、ラジエタにはガスエンジンを冷却した冷却水を循環させる。このようにして、先ずコンデンサで空気を加熱し、次にラジエタで所望の温度まで空気を加熱するようにする。こうする事によって、他の熱源を使うことなく、本発明の除湿装置を駆動する事ができる。 【0036】 このようにエネルギー源として多様なエネルギー・ソースを利用できるため、震災などで社会インフラが破壊された場合などにも、使用可能なエネルギー・ソースを活用してリチウム電池工場などの生産工場を止めずに生産を維持できるというメリットがある。 【0037】 さらに熱源の温度が低いために、本発明の除湿装置を構成する材料として耐熱性の高い物は必要でなく、材料の入手が容易で安価なものを用いることができるという効果がある。 【0038】(削除) 【0039】(削除) 【産業上の利用可能性】 【0040】 低露点の空気を供給することができ、リチウム電池の工場や、製薬の工程にも適用できる。 【符号の説明】 【0041】 1 第一の除湿ロータ 2 吸着ゾーン 3 再生ゾーン 4 第二の除湿ロータ 5 吸着ゾーン 6 再生ゾーン 7 第一のクーラ 8 第一のブロア 9 第二のブロア 10 第一のヒータ 11 ドライルーム 12 第二のクーラ 13 第二のヒータ 14 第三のヒータ 15 第三のブロア (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 少なくとも再生ゾーンと吸着ゾーンとの2つのゾーンに分割された第一の除湿ロータと、少なくとも再生ゾーンと吸着ゾーンの2つに分割された第二の除湿ロータとを有し、外気を第一のクーラで冷却除湿して前記第一の除湿ロータの吸着ゾーンに通過させ、前記第一の除湿ロータの吸着ゾーンを通過した空気を前記第二の除湿ロータの吸着ゾーンを通過させ第一のヒータを通過させて供給空気として供給先に供給し、前記供給先からの還気を前記第一の除湿ロータの吸着ゾーンを通過した空気と混合して前記第二の除湿ロータを通過させて除湿した後、前記第二の除湿ロータの再生ゾーンに通過させ、前記第二の除湿ロータの再生ゾーンを通過した空気は前記第一のクーラによって冷却除湿された空気と混合され、この空気を第三のヒータによって加熱し前記第一の除湿ロータの再生ゾーンを通し、外気を前記第一の除湿ロータの吸着ゾーンへ送る第一のブロアと、前記第一の除湿ロータの再生ゾーンを通過した空気を外部に放出する第三のブロアと、前記第一の除湿ロータの吸着ゾーンを通過した空気を前記第二の除湿ロータの吸着ゾーンに送る第二のブロアを設け前記供給先からの還気をこのブロアの吸入側に入れるようにしたことを特徴とする除湿装置。 【請求項2】 前記第一のクーラは冷凍機のエバポレータを用い、前記第一のヒータ及び第二の除湿ロータの再生ゾーンに加熱空気を導く第二のヒータは前記冷凍機のコンデンサを用いるようにしたことを特徴とする請求項1記載の除湿装置。 【請求項3】 冷凍機としてガスヒートポンプを用いたことを特徴とする請求項2記載の除湿装置。 【請求項4】 少なくとも前記第二のヒータ或いは第一の除湿ロータの再生ゾーンに加熱空気を導く第三のヒータは、冷凍機のコンデンサとガスエンジンを冷却するラジエタの組合せであることを特徴とする請求項3記載の除湿装置。 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
異議決定日 | 2018-08-29 |
出願番号 | 特願2014-114856(P2014-114856) |
審決分類 |
P
1
652・
113-
YAA
(B01D)
P 1 652・ 851- YAA (B01D) P 1 652・ 853- YAA (B01D) P 1 652・ 537- YAA (B01D) P 1 652・ 121- YAA (B01D) P 1 652・ 856- YAA (B01D) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 岡谷 祐哉 |
特許庁審判長 |
豊永 茂弘 |
特許庁審判官 |
後藤 政博 宮澤 尚之 |
登録日 | 2016-08-26 |
登録番号 | 特許第5991698号(P5991698) |
権利者 | 株式会社西部技研 |
発明の名称 | 除湿装置 |