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審決分類 審判 訂正 ただし書き3号明りょうでない記載の釈明 訂正する A63F
管理番号 1345093
審判番号 訂正2018-390103  
総通号数 228 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-12-28 
種別 訂正の審決 
審判請求日 2018-07-10 
確定日 2018-09-21 
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第5465769号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 特許第5465769号の明細書を本件審判請求書に添付された訂正明細書のとおり訂正することを認める。 
理由 第1 手続の経緯
本件審判の請求に係る特許5465769号(以下、「本件特許」という。)は平成24年12月13日に出願(遡及日:平成23年1月21日)され、平成26年1月31日に特許権の設定登録がなされ、その後、平成30年7月10日に本件訂正審判が請求されたものである。

第2 請求の趣旨

本件審判請求の趣旨は、本件特許の明細書を本件審判請求書に添付した訂正明細書のとおり訂正することを認める、との審決を求めるものである(以下、下線部は訂正箇所を意味する。)。

第3 訂正の内容

請求人が求める訂正の内容は、以下のとおりである。

・訂正事項
本件特許の明細書段落0013の
「本発明にかかる遊技機は、設置状態と異なる所定状態時(検査などをする際における遊技機の状態)において、駆動源の動力を用いずに駆動体を第一位置に移動させる移動調整手段を備える。したがって、遊技機の検査などをする際に、作業者が駆動体を第一位置から第一位置以外の位置(例えば第二位置)に移動させた状態のままにした場合であっても、移動調整手段によって駆動体が第一位置に戻る。つまり、駆動体が第一位置以外の位置に位置した状態のまま放置されることを抑制することができる。
そして、移動調整手段の構成要素として駆動体を第一位置の方向に付勢する付勢部材を採用する場合、設置状態時における駆動体の自重によって付勢部材にかかる力を付勢部材の付勢力よりも大きくすれば、設置状態時において駆動体がその自重により第二位置の方向に移動してしまうことを抑制することができる。」
とあるのを、
「本発明にかかる遊技機は、設置状態と異なる所定状態時(検査などをする際における遊技機の状態)において、駆動源の動力を用いずに駆動体を第一位置に移動させる移動調整手段を備える。したがって、遊技機の検査などをする際に、作業者が駆動体を第一位置から第一位置以外の位置(例えば第二位置)に移動させた状態のままにした場合であっても、移動調整手段によって駆動体が第一位置に戻る。つまり、駆動体が第一位置以外の位置に位置した状態のまま放置されることを抑制することができる。
そして、移動調整手段の構成要素として駆動体を第一位置の方向に付勢する付勢部材を採用する場合、設置状態時における駆動体の自重によって付勢部材にかかる力を付勢部材の付勢力よりも大きくすれば、設置状態時において駆動体が第一位置以外の位置に移動するとき、駆動体が付勢部材の付勢力により第一位置の方向に移動してしまうことを抑制することができる。」に訂正する。

第4 当審の判断
1 訂正の目的について
本件特許の明細書段落0013の記載は、本件特許の各請求項に係る発明(以下、本件発明という)の効果の記載であるところ、訂正前の「設置状態時において駆動体がその自重により第二位置の方向に移動してしまうことを抑制することができる。」は、本件発明が特定する、請求項1に記載される「前記設置状態時においては、前記駆動体の自重によって前記付勢部材にかかる力が前記付勢部材の付勢力よりも大きく」とする事項に対応する効果として不明瞭なものであった。
一方、訂正後の「設置状態時において駆動体が第一位置以外の位置に移動するとき、駆動体が付勢部材の付勢力により第一位置の方向に移動してしまうことを抑制することができる。」は、本件発明が特定する「前記設置状態時においては、前記駆動体の自重によって前記付勢部材にかかる力が前記付勢部材の付勢力よりも大きく」とする事項に対応する効果として明瞭なものであるため、上記訂正は、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。

したがって、上記訂正は、特許法第126条第1項ただし書第3号に掲げる、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。


2 新規事項の追加及び特許請求の範囲の拡張又は変更の存否について
本件特許に係る願書に最初に添付された明細書段落0067には、「移動調整手段40の付勢力は、設置状態時における抗力よりも小さくなるように設定されているため、設置状態時において第一位置以外の位置に位置する駆動体20が、移動調整手段40の付勢力によって第一位置に移動することはない。」と記載されている。
上記訂正によって特定される事項は、「設置状態時において駆動体が第一一以外の位置に位置するとき、駆動体が付勢部材の付勢力により第一位置の方向に移動してしまうことを抑制することができる」ということであり、一方、本件特許に係る願書に最初に添付された明細書段落0067に記載される事項は、「設置状態時において第一以外の位置に位置する駆動体20が、移動調整手段40の付勢力により第一位置に移動することはない」ということであって、両者は実質的に同じであるから、上記訂正は、本件特許に係る願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、当初明細書等という)に記載した事項又は記載した事項から自明な事項であり、当初明細書等に記載した事項の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入しないものであるから、上記訂正は、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。

また、上記訂正により、訂正の前後で明細書中の効果の記載が請求項1において特定する「前記設置状態時においては、前記駆動体の自重によって前記付勢部材にかかる力が前記付勢部材の付勢力よりも大きく」という事項に対する効果として明瞭になり、実質上特許請求の範囲を拡張するものでも変更するものでもない。
したがって、上記訂正は、特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。

第5 むすび

以上のとおりであるから、本件訂正審判請求に係る訂正は、特許法第126条第1項ただし書第3号に掲げる事項を目的とし、かつ同法同条第5項及び第6項の規定に適合する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
遊技機
【技術分野】
【0001】
本発明は、パチンコ遊技機などの遊技機に関し、さらに詳しくは、遊技の進行状況などに応じて遊技を演出する駆動体が設けられた遊技機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、表示板が、その全体が視認可能な位置から完全に覆われる位置まで移動可能に設けられた遊技機が記載されている。このように、モータなどの駆動源によって、ある位置(第一位置)とそのある位置とは異なる位置(第二位置)の間を移動する駆動体(役物)を備える遊技機が公知である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002-177480号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の構成の駆動体は、所定の作業、出荷等状況において第一位置に位置していることが好ましい状況であるにも拘わらず、第二位置のまま放置されて不都合が生じるおそれがあった。
【0005】
上記問題に鑑みて、本発明が解決しようとする課題は、第一位置と第二位置の間を移動可能に設けられた駆動体を備える遊技機において、駆動体が所定位置(第一位置)以外の位置に位置させた状態のまま放置されることを抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために本発明は、第一位置と第二位置の間を移動可能な駆動体が設けられた遊技機であって、遊技が行われる設置状態時において、前記駆動体を前記第一位置と前記第二位置の間を移動させる駆動源と、前記設置状態と異なる所定状態時において、前記駆動源の動力を用いずに前記駆動体を前記第一位置に移動させる移動調整手段と、を備え、前記第一位置は前記第二位置よりも上方に位置し、前記移動調整手段は、前記第一位置に位置しない前記駆動体を第一位置の方向に付勢する付勢部材を有し、前記設置状態時においては、前記駆動体の自重によって前記付勢部材にかかる力が前記付勢部材の付勢力よりも大きく、前記所定状態時においては、前記駆動体の自重によって前記付勢部材にかかる力が前記付勢部材の付勢力よりも小さいことを要旨とする。
【0007】
この場合、前記設置状態時において、前記移動調整手段による前記駆動体の前記第一位置への移動を抑制する抑制手段を備えていればよい。
【0008】
また、前記設置状態は、前記駆動体の移動方向が水平方向に対して垂直方向となる状態であり、前記所定状態は、前記駆動体の移動方向が水平方向、あるいは水平方向に対して所定の角度に傾斜して、前記設置状態よりも水平に近い状態であればよい。
【0009】
またこの場合、遊技機本体側には前記駆動体の幅方向両側に設けられた被ガイド部が係合するガイド部を有する固定体が設けられ、前記駆動体は前記ガイド部に案内されて前記第一位置と前記第二位置の間を移動可能に構成されており、前記移動調整手段は、前記駆動体の幅方向右側に接続された第一付勢部材と、前記駆動体の幅方向左側に接続された第二付勢部材と、を有していればよい。
【0010】
またこの場合、前記第一付勢部材および前記第二付勢部材は、ともに伸縮方向が幅方向となるように、かつ、互いに幅方向で重なるように配置されていればよい。
【0011】
またこの場合、前記第一付勢部材および前記第二付勢部材は、前記第一位置に位置する前記駆動体と遊技盤の平面方向で重なるように配置されていればよい。
【0012】
また、前記駆動源は前記駆動体に固定されており、前記駆動源の動力は、前記駆動源に設けられたピニオンおよびこのピニオンに噛合する遊技機本体側に設けられたラックを介して前記駆動体に伝達される構成であればよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明にかかる遊技機は、設置状態と異なる所定状態時(検査などをする際における遊技機の状態)において、駆動源の動力を用いずに駆動体を第一位置に移動させる移動調整手段を備える。したがって、遊技機の検査などをする際に、作業者が駆動体を第一位置から第一位置以外の位置(例えば第二位置)に移動させた状態のままにした場合であっても、移動調整手段によって駆動体が第一位置に戻る。つまり、駆動体が第一位置以外の位置に位置した状態のまま放置されることを抑制することができる。
そして、移動調整手段の構成要素として駆動体を第一位置の方向に付勢する付勢部材を採用する場合、設置状態時における駆動体の自重によって付勢部材にかかる力を付勢部材の付勢力よりも大きくすれば、設置状態時において駆動体が第一位置以外の位置に位置するとき、駆動体が付勢部材の付勢力により第一位置の方向に移動してしまうことを抑制することができる。
【0014】
また、設置状態時において、移動調整手段による駆動体の第一位置への移動を抑制する抑制手段が設けられていれば、振動等などにより設置状態時(遊技中)に移動調整手段によって駆動体が第一位置に戻ってしまうことを抑制することができる。
【0015】
また、前記所定状態を、駆動体の移動方向が水平方向、あるいは水平方向に対して所定の角度に傾斜して、前記設置状態よりも水平に近い状態とすれば、遊技機の検査などを行う(検査が行いやすい)水平状態あるいは水平に近い状態において、駆動体が第一位置以外の位置に位置した状態のまま放置されることを抑制することができる。
【0016】
また、駆動体がその幅方向両側をガイド部に支持されて第一位置と第二位置の間を移動可能に構成されている場合に、幅方向右側に接続された第一付勢部材と、駆動体の幅方向左側に接続された第二付勢部材とによって駆動体が第一位置の方向に付勢された構成とすれば、駆動体の幅方向両側が付勢部材に付勢された状態となるから、前記所定状態において前記駆動体はスムーズに第一位置に戻る。
【0017】
またこの場合に、第一付勢部材および第二付勢部材が、ともに伸縮方向が幅方向となるように、かつ、互いに幅方向で重なるように配置されていれば、移動調整手段(第一付勢部材および第二付勢部材)の配置スペースを小さくすることができる。
【0018】
さらにこの場合に、第一付勢部材および前記第二付勢部材が、第一位置に位置する駆動体と遊技盤の平面方向で重なるように配置されていれば、駆動体および移動調整手段(第一付勢部材および第二付勢部材)の配置スペースを小さくすることができる。
【0019】
また、駆動源の動力がいわゆるラック&ピニオンにより駆動体に伝達される構成とすれば、前記所定状態において移動調整手段によって駆動体が勢いよく第一位置の方向に移動してしまうことを抑制することができる。すなわち、検査などにおいて駆動体が第一位置以外の位置に位置した状態のまま放置された場合、ラックとピニオンの係合による抵抗によって駆動体はゆっくりと第一位置に戻るから、遊技機を構成する部材の破損等を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施形態にかかる遊技機の正面図である。
【図2】図1に示した遊技機が備える遊技盤の正面図であり、駆動体が第一位置に位置している状態を示したものである。
【図3】図1に示した遊技機が備える遊技盤の正面図であり、駆動体が第二位置に位置している状態を示したものである。
【図4】図1に示した遊技機が備えるセンター役物装置を分解して前方から見た斜視図である。
【図5】図1に示した遊技機が備えるセンター役物装置を分解して後方から見た斜視図である。
【図6】図1に示した遊技機が備えるセンター役物装置の正面図であり、駆動体が第一位置に位置している状態を示したものである。
【図7】図1に示した遊技機が備えるセンター役物装置の正面図であり、駆動体が第二位置に位置している状態を示したものである。
【図8】図1に示した遊技機が備えるセンター役物装置の背面図であり、駆動体が第一位置に位置している状態を示したものである。
【図9】図1に示した遊技機が備えるセンター役物装置の背面図であり、駆動体が第二位置に位置している状態を示したものである。
【図10】所定状態(水平状態)にあるセンター役物装置を前方から見た斜視図であり、駆動体が第二位置に位置している状態を示したものである。
【図11】所定状態(水平状態)にあるセンター役物装置を後方から見た斜視図であり、駆動体が第二位置に位置している状態を示したものである。
【図12】所定状態(水平状態)にあるセンター役物装置を前方から見た斜視図であり、駆動体が第一位置に位置している状態を示したものである。
【図13】所定状態(水平状態)にあるセンター役物装置を後方から見た斜視図であり、駆動体が第一位置に位置している状態を示したものである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明にかかる実施形態について図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の説明において単に前側(前方)とは遊技機1正面側のことであり、単に後側(後方)とは遊技機1の背面側のことである。また、単に左側、右側、上側、下側とは、遊技機1を正面から見た場合の左側、右側、上側、下側のことであり、図1における左側、右側、上側、下側を指す。また、単に幅方向とは、遊技機1の幅方向のことであり、図1における左右方向を指し、単に平面方向とは遊技盤90の平面方向を指す。
【0022】
(遊技機の全体構成)
まず、遊技機1の全体構成について簡単に説明する。図1に示されるように、遊技機1は、所定の奥行きを有する額縁形状の機枠80を備える。この機枠80には前面枠81が取り付けられている。前面枠81は、その左側縁が機枠80に回動自在に支持され、前側に開閉可能である。また、前面枠81には、ガラス枠82が取り付けられている。ガラス枠82は、その左側縁が前面枠81に回動自在に支持され、前側に開閉可能である。
【0023】
ガラス枠82の中央の開口部にはガラス板またはプラスチック板等の透明な板が設けられており、遊技者はこの透明な板を通して前側から遊技盤90を視認できる。また、ガラス枠82の下部には、払い出された遊技球を発射装置に送るまで貯めておく上皿ユニット83が設けられている。上皿ユニット83には、貯留されている遊技球を下皿ユニット85に流下させる上皿スイッチや、貸し出し可能な貸し球を払い出す球貸しスイッチ等が設けられている。また、ガラス枠82の上部左右両側には、スピーカ84が設けられている。
【0024】
前面枠81の下部には、払い出された遊技球が上皿ユニット83に入りきらない場合等に遊技球を貯めることができる下皿ユニット85や、遊技球を発射操作するためのタッチスイッチを備える発射ハンドル86等が設けられている。下皿ユニット85の左側には、表示装置92に表示される演出に応じて遊技者が操作を行う遊技スイッチ87が設けられている。
【0025】
図2および図3に示す遊技盤90は、ほぼ正方形の合板により成形されており、前面枠81に着脱可能に取り付けられている。この遊技盤90には、発射装置から発射された遊技球をガイドする金属製の薄板からなる帯状のガイドレール92が略円弧形状に設けられており、このガイドレール92によって遊技領域の外郭の一部が形成されている。
【0026】
遊技盤90の遊技領域には、表示装置92、始動入賞口931、大入賞口932、アウト口933などが設けられている。表示装置92は、液晶表示装置92が用いられており、表示装置92の表示画面において特別図柄や普通図柄等が表示される。かかる表示装置92の表示画面は、遊技盤90に形成された開口を通じて視認可能である。
【0027】
また、遊技盤90の遊技領域には、流下する遊技球が衝突することにより遊技球の流下態様に変化を与える障害物としての図示しない遊技釘が複数設けられている。遊技領域を流下する遊技球は、遊技釘に衝突したときの条件に応じて様々な態様に変化する。
【0028】
さらに、表示装置92の表示部の前側の周囲には、遊技の装飾効果(演出効果)を高めるためのセンター役物装置2が設けられている。センター役物装置2は、遊技機1本体に固定される固定体10と、この固定体10に係合された上下方向に移動可能な駆動体20とを備える。本実施形態では、かかる駆動体20をその移動可能な範囲内において上下動させることにより、遊技の演出効果が高められている。かかるセンター役物装置2の構成の詳細については後述する。
【0029】
なお、図示しないが、遊技機1の背面側には、枠用外部端子基板、表示制御基板、主制御基板、音声制御基板、ランプ制御基板、払出制御基板、発射制御基板、電源基板等の各種基板、カードインターフェース接続部、球寄せ、球タンク、タンクレール、払出装置、発射装置等の各種の遊技機構成部材が設けられている。なお、以下の説明では、主制御基板等の遊技機1の制御を行う構成を一括りに制御手段と称する。
【0030】
このような遊技機1では、発射ハンドル86の操作により、発射装置から遊技領域に遊技球を発射し、遊技領域を流下する遊技球が、始動入賞口931や大入賞口932等の入賞口に入賞すると、所定の数の賞球が払出装置により払い出される。その他、大当たりの抽選方法等は、公知である種々の遊技機の制御方法が適用できるため、説明は省略する。
【0031】
(センター役物装置の構成)
以下、遊技機1が備えるセンター役物装置2の構成について図3?図13を参照して詳細に説明する。センター役物装置2は、遊技機1本体側に固定された固定体10と、この固定体10に係合されて上下方向に移動可能である駆動体20と、駆動体20を移動させる駆動源30と、駆動体20に作用する移動調整手段40(付勢部材)と、移動調整手段40による駆動体20への作用を抑制する抑制手段と、を備える。
【0032】
固定体10は、遊技機1本体側に固定された動くことのない部材である。固定体10は、ベース部材11および駆動体誘導部材12を備える。固定体10のベース部材11は、平面視略「コ」の字型(略「U」字型)に形成された部材である。具体的には、幅方向に延びる付勢部材収容部111と、この付勢部材収容部111の両端から下方に延びるレール部112とを有する。かかるレール部112は、付勢部材収容部111(表示装置92)を幅方向に二分する中央線X(以下単に中央線Xと称する)を対称軸として対称となるように設けられている。
【0033】
また、ベース部材11の付勢部材収容部111には、幅方向に沿うスライド溝が二つ形成されている。図7?図9等から分かるように、一方のスライド溝(第一スライド溝1111)は、他方のスライド溝(第二スライド溝1112)よりも上方に形成されている。一方のスライド溝の幅方向位置と他方のスライド溝の幅方向位置は、中央線Xを対称軸として対称である。各スライド溝1111、1112には、付勢部材誘導体(第一付勢部材誘導体113および第二付勢部材誘導体115)が幅方向にスライド自在に係合されている。各付勢部材誘導体113、115には、移動滑車(第一移動滑車114および第二移動滑車116)が固定されている。すなわち、各付勢部材誘導体113、115とそれぞれに固定された移動滑車114、116は一体となって幅方向にスライドする。かかる付勢部材誘導体113、115の構成ならびに機能については後述する。
【0034】
固定体10の駆動体誘導部材12は、所定の幅をもつ板状の部材である。駆動体誘導部材12は、ベース部材11のレール部112の前側に固定されている。すなわち、ベース部材11と駆動体誘導部材12は一体となっている。駆動体誘導部材12の前側には、上下方向に延びるラック121が形成されている。また、ラック121が形成された面の反対側には、後方および幅方向外側に向かって開口した凹部122が形成されている。
【0035】
ベース部材11の付勢部材収容部111の背面側には、背面方向に向かって開口した空間1110が形成されており、かかる空間1110内に移動調整手段40を構成する付勢部材(第一付勢部材41および第二付勢部材42)が幅方向に沿って設けられている。かかる付勢部材の取り付け構造の詳細については後述する。
【0036】
ベース部材11のレール部112の前側には、前方向および幅方向外側に向かって開口した凹部1121が形成されている。この凹部1121の前方側の開口を覆うように、レール部112に駆動体誘導部材12が固定されている。これにより、レール部112の凹部1121と駆動体誘導部材12の凹部122とが一体化されてなる、幅方向外側のみが開口した上下方向に延びる空間が形成される。かかる空間を含む部分が、駆動体20を上下方向に案内するガイド部13となる。
【0037】
駆動体20は、係合部材21および係合部材21の前側に固定された装飾部材22を有する。係合部材21および装飾部材22は平面形状がほぼ同一であり、両者は前後方向に重なる(前方から見ると係合部材21は装飾部材22に覆われている)。係合部材21の背面における幅方向両側には、ローラ231を有する被ガイド部材23(被ガイド部)が取り付けられている。かかるローラ231は、固定体10のガイド部13(空間)に係合されている。具体的には、被ガイド部材23(ローラ231)は、ベース部材11のレール部112を幅方向外側から挟み込むようにガイド部13(空間)に係合されている。ローラ231が係合したガイド部13を構成する空間は、上述したように幅方向外側のみが開口しているから、一旦空間に係合したローラ231が外れてしまうことはない。かかる構成により、駆動源30および移動調整手段40の作用を受ける駆動体20は、固定体10のガイド部13に案内されて上下方向に移動する。
【0038】
装飾部材22は、遊技の演出効果を高めるための部材である。本実施形態では、図示されないソレノイドを駆動源30として五つの扉221が開操作される仕組みになっている。具体的には、ソレノイドを駆動する(励磁状態とする)と全ての扉221が開状態となり、ソレノイドをオフ状態とする(非励磁状態とする)と図示されないばねにより全ての扉221が閉状態となる仕組みである。ソレノイドは、係合部材21と装飾部材22の間に形成された右側の空間内に収容されている。装飾部材22(扉221)は、駆動体20が後述する第二位置に位置している状態において、遊技機1の制御手段により表示装置92の表示画面とリンクして動作させられる。例えば、扉221を開放すると同時に表示画面における扉221が開放した領域に馬を表示させることにより、競馬において競走馬がスターティングゲートからスタートした瞬間を演出することができる。
【0039】
駆動源30は、遊技中に駆動体20を上下方向に移動させるための構成である。本実施形態では、駆動源30としてモータが用いられている。駆動源30は、係合部材21と装飾部材22の間に形成された左側の空間内に収容されている。駆動源30の出力軸にはピニオン31(平歯車)が固定されている。このピニオン31は、上記固定体10(駆動体誘導部材12)に設けられたラック121に噛合している。駆動源30の動力は、このピニオン31およびラック121を介して駆動体20に伝達される。すなわち、駆動源30の出力軸(ピニオン31)を回転させると、被ガイド部材23が係合したガイド部13に案内されて、駆動体20は上下方向に移動する(出力軸を一方に回転させれば駆動体20は上方向に移動し、他方に回転させれば駆動体20は下方向に移動する)。
【0040】
なお、本実施形態では、駆動源30であるモータは駆動体20に固定されているため、駆動体20とともに移動する。また、ソレノイドもともに移動する。すなわち、以下の説明における駆動体20には、駆動源30であるモータやソレノイドが含まれる。つまり、駆動体20の重量には、係合部材21や装飾部材22の重さだけでなく、駆動源30やソレノイド等、駆動体20に固定された部材のの重量も含まれる。
【0041】
このような駆動源30によって移動する駆動体20の移動範囲は、駆動体20を上方に移動させる方向にピニオン31がそれ以上回転することができない位置(以下、第一位置と称する)から、駆動体20を下方に移動させる方向にピニオン31がそれ以上回転することができないない位置(以下、第二位置と称する)までとなる。すなわち、第一位置が駆動体20の移動可能範囲における上方端位置となり、第二位置が駆動体20の移動可能範囲における下方端位置となる。本実施形態では、図2に示すように、第一位置は、駆動体20が遊技盤90に覆われて遊技者には駆動体20が視認できない位置となっており、図3に示すように、第二位置は、遊技盤90の開口を通じて駆動体20が遊技者に視認できる位置となっている。つまり、第一位置は通常状態において駆動体20が位置する原位置であり、第二位置は駆動体20(装飾部材22)が上述した所定の演出を行う演出位置である。
【0042】
移動調整手段40は、第一付勢部材41および第二付勢部材42(引っ張りコイルばね)を備える。各付勢部材41、42は、滑車に引っ掛けられたワイヤ(第一ワイヤ43および第二ワイヤ44)を介して駆動体20に接続されている。
【0043】
第一付勢部材41は、次のように駆動体20の右側に接続されている。第一付勢部材41の一端(基端;左側端部)にはリング状の基端引掛部411が形成されている。かかる基端引掛部411は、固定体10の付勢部材収容部111の空間1110における左側端部に設けられた基端引掛爪部1113に引っ掛けられている。第一付勢部材41の他端(移動端;右側端部)にもリング状の移動端引掛部411が形成されている。かかる移動端引掛部411は、第一付勢部材誘導体113の移動端引掛爪部1131に引っ掛けられている。
【0044】
上述したように、第一付勢部材誘導体113は第一移動滑車114とともに移動(第一スライド溝1111に沿ってスライド)する。第一移動滑車114には第一ワイヤ43が係合されている。第一ワイヤ43は、その基端(一端)が固定体10の付勢部材収容部111の空間1110における右側に形成されたワイヤ基端引掛爪部1115に引っ掛けられている。基端がワイヤ基端引掛爪部1115に引っ掛けられた第一ワイヤ43は、Uターンさせるように第一移動滑車114に係合されるとともに、付勢部材収容部111の右側に固定された第一固定滑車117に係合されている。第一ワイヤ43は略90度屈曲するように第一固定滑車117に係合され、移動端(他端)が駆動体20の係合部材21の右側に設けられたワイヤ移動端引掛爪部211に引っ掛けられている。
【0045】
一方、第二付勢部材42は、次のように駆動体20の左側に接続されている。第二付勢部材42の一端(基端;右側端部)にはリング状の基端引掛部421が形成されている。かかる基端引掛部421は、固定体10の付勢部材収容部111の空間1110における右側端部に設けられた基端引掛爪部1114に引っ掛けられている。第二付勢部材42の他端(移動端;左側端部)にもリング状の移動端引掛部422が形成されている。かかる移動端引掛部422は、第二付勢部材誘導体115の移動端引掛爪部1151に引っ掛けられている。
【0046】
上述したように、第二付勢部材誘導体115は第二移動滑車116とともに移動(第二スライド溝1112に沿ってスライド)する。第二移動滑車116には第二ワイヤ44が係合されている。第二ワイヤ44は、その基端(一端)が固定体10の付勢部材収容部111の空間1110における左側に形成されたワイヤ基端引掛爪部1116に引っ掛けられている。基端がワイヤ基端引掛爪部1116に引っ掛けられた第二ワイヤ44は、Uターンさせるように第二移動滑車116に係合されるとともに、付勢部材収容部111の左側に固定された第二固定滑車118に係合されている。第二ワイヤ44は略90度屈曲するように第二固定滑車118に係合され、移動端(他端)が駆動体20の係合部材21の左側に設けられたワイヤ移動端引掛爪部212に引っ掛けられている。
【0047】
このようにして第一付勢部材41および第二付勢部材42は、ワイヤを介して駆動体20に接続されている。駆動体20が第二位置に近づく方向(下方)に移動すると、ワイヤを介して第一付勢部材41および第二付勢部材42が伸張し、その収縮力により駆動体20を第一位置に近づく方向(上方)に付勢する。駆動体20が第二位置に近づけば近づくほどその付勢力は大きくなる。
【0048】
本実施形態では、第一付勢部材41および第二付勢部材42は全く同一の構成の引っ張りばねである。また、上記のように所定位置に取り付けられた状態において、幅方向で見れば、第一付勢部材41および第二付勢部材42は中央線Xを対称軸として対称に位置する。また、付勢部材を取り付けるための部材(引掛爪部、滑車、ワイヤ等)も、第一付勢部材41を取り付けるために用いた部材と第二付勢部材42を取り付けるために用いた部材は全く同一の構成であり、幅方向で見れば、中央線Xを対称軸として対称に位置する。また、駆動体20が第二位置に近づく方に移動した場合、第一付勢部材41および第二付勢部材42はほぼ同じだけ伸張するように設定されている。すなわち、駆動体20の左側と右側には常にほぼ同じ付勢力が作用するように設定されている。
【0049】
また、各図から明らかなように、第一付勢部材41と第二付勢部材42は、伸縮方向が幅方向であり、互いに平行かつ幅方向で重なる(第一付勢部材41と第二付勢部材42の両方が中央線Xと交差する)ように配置されている。つまり、本実施形態では、駆動体20の移動方向が上下方向であるにも拘わらず、第一付勢部材41と第二付勢部材42を幅方向に重なるように配置した上で、上記滑車やワイヤ等を用いて付勢部材の付勢方向を上下方向に変換している。したがって、第一付勢部材41と第二付勢部材42を単純に上下方向に沿って配置した場合などと比較して、第一付勢部材41と第二付勢部材42の配置スペースが平面方向に小さくなる。
【0050】
さらに本実施形態では、駆動体20が第二位置まで移動し、第一付勢部材41と第二付勢部材42が最大の伸張状態にあるときには、付勢部材のほぼ全体が幅方向で重なるように構成されている。つまり、駆動体20が第一位置に位置するときにおける各付勢部材41、42が他方の付勢部材42、41に幅方向で重なっていない部分の幅方向長さは、各付勢部材41、42の伸び代(伸縮長さ)とほぼ一致する。
【0051】
また、駆動体20が第一位置に位置するとき、駆動体20は上記のように幅方向で重なるように配置された第一付勢部材41と第二付勢部材42に平面方向で重なる。つまり、遊技機1の前側から見れば、第一付勢部材41と第二付勢部材42は第一位置に位置する駆動体20で覆われた状態となる。つまり、本実施形態では、第一付勢部材41と第二付勢部材42を幅方向に沿って配置した上で、これら付勢部材41、42に原位置に位置する駆動体20が重なるように設定することで、遊技機1の前後方向(厚み方向)におけるスペースを有効に活用している。
【0052】
抑制手段は、設置状態(詳細は後述)時における移動調整手段40による駆動体20の第一位置への移動を抑制する構成である。本実施形態では、駆動体20が抑制手段としての機能も備えた構成となっている。つまり、設置状態における駆動体20を第一位置の方向に付勢する移動調整手段40の付勢力は、駆動体20の自重に逆らって作用する力であるため、駆動体20が、設置状態時における移動調整手段40による駆動体20の第一位置への移動を抑制する構成として機能する。
【0053】
(センター役物装置の動作)
以下、上記構成を備える遊技機1におけるセンター役物装置2の動きについて説明する。まず、遊技機1が遊技が行われる設置状態にあるときにおけるセンター役物装置2の動きについて説明する。ここで「設置状態」とは、遊技機1が水平方向Lに対して垂直方向に起立した状態、すなわち遊技店などに設置された状態にあることをいい、駆動体20の移動方向が当該垂直方向となる状態のことをいう。なお、ここでいう「垂直」には、水平方向Lに対して丁度90度に傾斜した角度だけでなく、90度に近い傾斜角度も含む。具体的には、少なくとも後述する「所定状態」よりも90度に近い傾斜角度も含む。
【0054】
通常状態において、駆動体20は図2に示す原位置である第一位置に位置する。例えば大当たりの抽選結果等に基づき、特定の演出を発生させる命令(センター役物装置2を駆動させる命令)が生ずると、遊技機1の制御手段は、駆動源30を駆動し第一位置にある状態の駆動体20を移動させる。具体的には、出力軸に固定されたピニオン31がラック121上を回転しつつ下方に移動するように駆動源30の出力軸を一方に回転させる。これにより、駆動源30とともに駆動体20が第二位置の方向(下方)に移動する。
【0055】
このとき、駆動体20には、駆動体20を第一位置の方向(上方)に移動させようとする移動調整手段40(第一付勢部材41および第二付勢部材42)の付勢力が常に作用しているため、駆動源30はこの付勢力に抗して駆動体20を第二位置の方向に移動させる。つまり、駆動源30の動力(モータのトルク)から移動調整手段40の付勢力を差し引いた動力で駆動体20は第二位置の方向に移動する。本実施形態では、この移動調整手段40の付勢力を考慮して、駆動体20の移動速度が任意の速度(遊技の演出に適した移動速度)となるように、駆動源30の動力および移動調整手段40の付勢力が設定されている。
【0056】
そのまま下方に移動した駆動体20は、図3に示す演出位置である第二位置に到達する。制御手段は、センサ(図示せず)等によって駆動体20が第二位置に到達したことを検出する。その後、制御手段はソレノイドを駆動させ、装飾部材22の扉221を開状態とし、これに併せて表示装置92の表示画面に所定の映像を表示させる。所定時間経過後、制御手段はソレノイドをオフ状態とし、装飾部材22の扉221を閉状態とする。これにより、装飾部材22による演出動作が終了する。扉221を閉状態とした後、制御手段は駆動源30の出力軸を他方に回転させる。これにより、駆動体20が第一位置の方向(上方)に移動する。
【0057】
このとき、駆動体20には、駆動体20を第一位置の方向(上方)に移動させようとする移動調整手段40(第一付勢部材41および第二付勢部材42)の付勢力が常に作用しているため、駆動源30の動力だけでなく移動調整手段40の付勢力の作用を受けて駆動体20が移動する。つまり、駆動体20は、駆動源30の動力と移動調整手段40の付勢力を併せた動力によって移動するため、素早く原位置である第一位置に戻る。
【0058】
駆動体20が第一位置まで戻ったことをセンサ(図示せず)等により検出したこともって、センター役物装置2の動作は完了する。センター役物装置2は、次の動作指令が発生するまで第一位置(原位置)で待機する。
【0059】
このように、遊技機1が設置状態にあるときには、駆動体20は駆動源30によって第一位置から第二位置、あるいは、第一位置から第二位置まで移動する。
【0060】
次に、遊技機1が所定状態にあるときにおけるセンター役物装置2の動きについて説明する。ここで「所定状態」とは、遊技機1が水平方向Lに横たえられた状態、すなわち例えば遊技機1の検査などにおいて検査台に寝かせられた状態のことをいい、図10?図13に示すように、駆動体20の移動方向が当該水平方向Lとなる状態のことをいう。なお、ここでいう「水平」には、水平方向Lと完全に平行である(傾斜角度が0度である)角度だけでなく、水平に近い傾斜角度も含む。具体的には、少なくとも上記「設置状態」よりも水平に近い傾斜角度を含む。
【0061】
上述したように、駆動体20には、移動調整手段40(第一付勢部材41および第二付勢部材42)の付勢力が常に作用している。本実施形態では、遊技機1が所定状態にある際、遊技機1の検査などにおいて駆動体20を第一位置以外の位置に移動させてそのまま放置した場合であっても、移動調整手段40の付勢力によって駆動体20が第一位置に戻る。その理由は次の通りである。
【0062】
駆動体20が第一位置以外の位置(例えば図10および図11に示すような第二位置)に位置するときには、第一付勢部材41および第二付勢部材42は、それぞれ第一ワイヤ43および第二ワイヤ44を介して駆動体20に接続されているため自然長よりも伸張した状態となる。したがって、これら第一付勢部材41および第二付勢部材42の収縮しようとする付勢力、すなわち第一位置に移動させようとする付勢力が駆動体20に作用する。
【0063】
かかる第一位置に駆動体20を移動させようとする移動調整手段40の付勢力に抗する力は、遊技機1が上記設置状態にあるときよりも小さくなる。遊技機1が水平あるいは水平に近い状態にあるため、移動調整手段40による付勢方向の反対方向に作用する力(すなわち、移動調整手段40によって移動する(移動しようとする)駆動体20に対する抗力。以下この力を単に抗力と称する)が小さくなるからである。例えば、駆動体20の移動方向が完全に水平方向Lである場合には、駆動体20と固定体10の間の抵抗力(被ガイド部材23(ローラ231)とガイド部13の摩擦力、ラック121とピニオン31の摩擦力等)等のみが抗力となる。一方、駆動体20の移動方向が水平方向Lに対して傾斜している場合には、上記摩擦力等の抵抗力に併せて、駆動体20の自重を遊技機1の傾斜方向に分解した分力も抗力となる。
【0064】
移動調整手段40の付勢力は、かかる所定状態時における抗力よりも大きくなるように設定されている。したがって、遊技機1の検査などにおいて、駆動体20を第二位置に移動させた場合など、駆動体20を第一位置ではない位置に移動させた場合であっても、駆動体20が当該第一位置ではない位置に留まった状態となることはなく、必ず駆動体20が図12および図13に示す第一位置に移動する。
【0065】
このように、遊技機1が所定状態にあるときには、駆動体20は移動調整手段40の付勢力のみによって第一位置ではない位置から第一位置まで移動する。
【0066】
なお、遊技機1の検査は、遊技機1の電源がオン状態で行われることもあるし、オフ状態で行われることもある。遊技機1の電源がオン状態にある場合には、駆動源30であるモータのディテントトルクも抗力となるため、この分を考慮に入れて移動調整手段40の付勢力を設定することが好ましい。すなわち、遊技機1の電源がオン状態およびオフ状態のいずれにある場合であっても、遊技機1が所定状態にあるときには、駆動体20が第一位置に移動するように設定するとよい。
【0067】
一方、上述したように、駆動体20は、設置状態時において移動調整手段40による駆動体20の第一位置への移動を抑制する抑制手段としても機能している。具体的には、移動調整手段40の付勢力は、設置状態時における抗力よりも小さくなるように設定されているため、設置状態時において第一位置以外の位置に位置する駆動体20が、移動調整手段40の付勢力によって第一位置に移動することはない。つまり、設置状態では、抗力として作用する駆動体20の自重を遊技機1の傾斜方向に分解した分力(傾斜角度が90度であれば駆動体20の自重の全てが抗力として作用する)が、所定状態にある場合よりも大きくなるため、当該駆動体20の自重による抗力よりも移動調整手段40の付勢力を小さく設定することで、駆動体20自体を抑制手段として機能させている。
【0068】
このように、本実施形態における移動調整手段40の付勢力は、設置状態時における駆動体20の自重による抗力よりも小さく、かつ、所定状態時における駆動体20の自重による抗力よりも大きく設定されている。したがって、設置状態時においては移動調整手段40の付勢力にみによって駆動体20が移動することはない(駆動源30の動力によって駆動体20が移動する)が、所定状態時においては移動調整手段40の付勢力のみによって駆動体20が第一位置に移動する。
【0069】
(本実施形態の主な作用効果)
以上説明した本発明にかかる遊技機1によれば、次のような作用効果が奏される。本実施形態にかかる遊技機1は、所定状態時において、駆動源30の動力を用いずに駆動体20を第一位置に移動させる移動調整手段40を備える。したがって、遊技機1の検査などをする際に、作業者が駆動体20を第一位置から第一位置以外の位置(例えば第二位置)に移動させた状態のままにした場合であっても、移動調整手段40によって駆動体20が第一位置に戻る。つまり、駆動体20が第一位置以外の位置に位置した状態のまま放置されることを抑制することができる。
【0070】
また、移動調整手段40は、第一位置以外の位置に位置する駆動体20を常に第一位置に移動する方向に付勢している。したがって、設置状態時において、振動等などにより駆動体20が不意に第一位置に戻ってしまうおそれがある。これに対して本実施形態では、設置状態時において、駆動体20が移動調整手段40による駆動体20の第一位置への移動を抑制する抑制手段としても機能している。つまり、駆動体20の自重が抗力として機能している。そのため、設置状態時(遊技中)において、駆動体20が不意に第一位置に戻ってしまうおそれを低減することができる。
【0071】
なお、所定状態時における抗力よりも、設置状態時における抗力を大きくする構成であれば、抑制手段としてその他の構成を採用することもできる。例えば、駆動体20が軽量であり、駆動体20単体では抑制手段として十分な機能を果たし得ない場合には、駆動体20に重錘を固定したものを抑制手段としてもよい。
【0072】
また、本実施形態では、完全な水平状態、および、少なくとも設置状態よりも水平に近い状態を「所定状態」として設定している。つまり、遊技機1の検査などを行う(検査が行いやすい)水平状態あるいは水平に近い状態において、駆動体20が第一位置以外の位置に留まってしまうことが抑制される。
【0073】
また、一般的な遊技機では、駆動体20(装飾部材22)の演出動作が完了した後には、続けざまに次の映像が表示画面に表示されることとなるから、駆動体20(装飾部材22)を素早く原位置に戻すことが望ましい。つまり、本実施形態のように、第一位置が駆動体20の原位置でであり、第二位置が駆動体20(装飾部材22)が遊技者に視認可能な場所で所定の演出を行う演出位置である場合には、第二位置から第一位置へ素早く駆動体20(装飾部材22)を移動させることが求められる。本実施形態における移動調整手段40は、駆動体20を常に第一位置の方向に付勢しているため、設置状態(遊技中)において、駆動体20を第二位置から第一位置に移動させる際には駆動源30の動力を補う構成として機能する。したがって、第二位置において演出動作が完了した後、駆動体20(装飾部材22)を素早く原位置である第一位置に戻すことができ、テンポのよい演出を提供できる。
【0074】
一方、駆動体20(装飾部材22)を原位置から演出位置に移動させる場合は、駆動体20(装飾部材22)を素早く移動させると興趣に欠ける演出となってしまう(遊技者が気付かないうちに第二位置に駆動体20(装飾部材22)が移動してしまうなどの)おそれがある。これに対し、本実施形態では、駆動体20(装飾部材22)を常に第一位置の方向に付勢している移動調整手段40を、原位置である第一位置から演出位置である第二位置に移動する駆動体20(装飾部材22)が任意の速度になるように駆動体20(装飾部材22)の移動速度を調整する構成としても機能させている。したがって、興趣ある駆動体20(装飾部材22)による演出を提供できる。
【0075】
このように本実施形態における移動調整手段40は、駆動体20が第一位置以外の位置に位置した状態のまま放置されることを抑制する構成として働くだけでなく、遊技機1の演出効果を高める構成としても働く。
【0076】
また、本実施形態では、移動調整手段40の構成要素として駆動体20を第一位置の方向に付勢する第一付勢部材41および第二付勢部材42を用いている。そして、設置状態時における駆動体20の自重によって第一付勢部材41および第二付勢部材42にかかる力が、第一付勢部材41および第二付勢部材42の付勢力よりも大きく設定されているため、設置状態時において駆動体20がその自重により第二位置の方向に移動してしまうことを抑制することができる。
【0077】
また、例えば一の付勢部材によって駆動体20を第一位置の方向に付勢する構成とすれば、駆動体20の重心に付勢部材を接続しない限り、駆動体20が傾いて移動したりするおそれがある。これに対し本実施形態では、駆動体20は、その幅方向両側が固定体10のガイド部13に支持されるとともに、幅方向の右側が第一付勢部材41によって付勢され、幅方向の左側が第二付勢部材42によって付勢されている。つまり、駆動体20は、その幅方向両側がガイドされ、かつ、両側が付勢部材41、42によって付勢された状態にあるから、所定状態においてスムーズに(傾いたり、がたついたりすることなく)第一位置に戻る。
【0078】
また、移動調整手段40を構成する第一付勢部材41および第二付勢部材42は、ともに伸縮方向が幅方向となるように、かつ、互いに幅方向で重なるように配置され、ワイヤや滑車(移動滑車114、116や固定滑車117、118)などを用いて付勢方向が上下方向に変換されている。そのため、第一付勢部材41および第二付勢部材42を上下方向に沿って配置した場合などと比較して、第一付勢部材41および第二付勢部材42の配置スペースが平面方向に小さくなる。
【0079】
さらに、第一付勢部材41および前記第二付勢部材42は、第一位置に位置する駆動体20と平面方向で重なるように配置されているため、駆動体20および移動調整手段40(第一付勢部材41および第二付勢部材42)の配置スペースが小さくなる(遊技機1の前後方向におけるスペースを有効に活用することができる)。
【0080】
また、駆動源30の動力がいわゆるラック&ピニオンにより駆動体20に伝達される構成であるため、所定状態において移動調整手段40によって駆動体20が勢いよく第一位置の方向に移動してしまうことが抑制される。すなわち、検査などにおいて駆動体20が第一位置以外の位置に位置した状態のまま放置された場合、ラック122とピニオン31の係合による抵抗によって駆動体20はゆっくりと第一位置に戻るから、遊技機1を構成する部材の破損等を抑制することができる。
【0081】
以上、本実施形態によれば、従来の構成では、作業によっては、例えば第二位置で作業を行った後、第一位置に位置させることが好ましい場合があるが、第二位置で作業を行った後、そのまま放置され、作業上不都合(手間が掛かったりミスが生じやすいなど)が生じるおそれがあったが、かかる問題の発生を抑制することが可能である。第一位置に位置することが好ましい作業として、組立作業や検査作業の後の出荷作業などが挙げられるが、これに限られるものではない。また、第一位置に位置することが好ましい場合とは、遊技状態時(例えば、設置状態時など)において収納位置などのあるべき位置にある場合や出荷時などにおいて駆動体などの遊技機の少なくとも一部が破損し難い位置、作業終了後にあるべき位置などが挙げられるが、これに限られるものではない。
【0082】
以上、本発明の実施の形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。
【符号の説明】
【0083】
1 遊技機
2 センター役物装置
10 固定体
11 ベース部座
12 駆動体誘導部材
121 ラック
13 ガイド部
20 駆動体(抑制手段)
23 被ガイド部材
30 駆動源
31 ピニオン
40 移動調整手段
41 第一付勢部材
42 第二付勢部材
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2018-08-28 
結審通知日 2018-08-30 
審決日 2018-09-11 
出願番号 特願2012-272659(P2012-272659)
審決分類 P 1 41・ 853- Y (A63F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 西田 光宏  
特許庁審判長 鉄 豊郎
特許庁審判官 川崎 優
倉持 俊輔
登録日 2014-01-31 
登録番号 特許第5465769号(P5465769)
発明の名称 遊技機  
代理人 特許業務法人上野特許事務所  
代理人 特許業務法人上野特許事務所  

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