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審決分類 審判 訂正 特許請求の範囲の実質的変更 訂正する H04N
審判 訂正 (特120条の4,3項)(平成8年1月1日以降) 訂正する H04N
審判 訂正 ただし書き3号明りょうでない記載の釈明 訂正する H04N
審判 訂正 ただし書き2号誤記又は誤訳の訂正 訂正する H04N
審判 訂正 3項(134条5項)特許請求の範囲の実質的拡張 訂正する H04N
管理番号 1345102
審判番号 訂正2018-390085  
総通号数 228 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-12-28 
種別 訂正の審決 
審判請求日 2018-05-18 
確定日 2018-10-01 
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第5342445号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 特許第5342445号の特許請求の範囲及び明細書を、本件審判請求書に添付の訂正した特許請求の範囲及び明細書のとおりに訂正することを認める。 
理由 第1 経緯
本件訂正審判に係る特許第5342445号(以下、「本件特許」という。)に係る発明は、2007年(平成19年)10月16日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2006年10月16日、米国)を国際出願日として出願されたものであって、平成25年8月16日に特許権の設定登録がなされたものである。
その後、平成30年5月18日に特許権者トムソン ライセンシング(以下、「請求人」という。)より、本件特許に対して本件訂正審判の請求がなされ、その後の手続の経緯は次のとおりである。

平成30年7月24日付け:訂正拒絶理由通知書
同年8月14日 :意見書、手続補正書の提出

第2 手続補正の適否について
1.訂正拒絶理由の概要
当審が平成30年7月24日付けで請求人に通知した訂正拒絶理由の要旨は、次のとおりである。

(1)訂正事項3の訂正は、特許法第126条第1項ただし書第1号乃至第4号に規定されたいずれの事項を目的とするものでもないから、同法同条同項に規定する要件に適合しないものである。

(2)訂正事項3の訂正は、願書に添付した特許請求の範囲、明細書及び図面(以下、「特許明細書等」という。)に記載した事項の範囲内のものではないから、特許法第126条第5項に規定する要件に適合しないものである。

(3)訂正事項3の訂正は、実質上特許請求の範囲を変更するものであるから、特許法第126条第6項に規定する要件に適合しないものである。

2.手続補正の内容
請求人が平成30年8月14日に提出した手続補正書による補正(以下、「本件補正」という。)は、審判請求書を対象とするものであって、その内容は次のとおりである。なお、(1)乃至(5)の補正事項を、「補正事項1」乃至「補正事項5」という。

(1)「(2)訂正事項」のうち、「ウ 訂正事項3」の項を削除する。

(2)「(3)訂正の理由」の「A 一群の請求項についての説明」の「ア」において、「訂正事項1乃至3」を「訂正事項1及び2」に補正する。

(3)「(3)訂正の理由」の「B 訂正事項が全ての訂正要件に適合している事実の説明」のうち、「ウ 訂正事項3」の項を削除する。

(4)「(3)訂正の理由」の「B 訂正事項が全ての訂正要件に適合している事実の説明」のうち、「ケ 訂正事項10」の「a 訂正の目的について」の第2段落及び第3段落の記載を次のとおりに補正する。

「 対応する符号化方法の特許発明である訂正発明1においては、「全ての他の参照画像を削除することなく」と記載されている。この訂正発明1の「全ての他の参照画像を削除することなく」と、訂正発明1と相補関係にある復号化方法の請求項7に係る発明における「前記他の参照画像、を削除することなく」とは、本来対応関係にあるべきところ、現在の表現では関係が必ずしも明瞭ではなく、対応関係に不合理が生じていた。
また、審査段階において、平成24年2月20日付け拒絶理由通知に応答する平成24年8月28日付け手続補正書により、請求項1に「全ての他の参照画像を削除することなく」という技術的特徴が追加され、かつ、請求項7に「他の参照画像を、削除することなく」という技術的特徴が追加された。同日付け意見書において、請求項1に係る発明は、他の技術的特徴とともに『全ての他の参照画像を削除することなく』という技術的特徴が引用文献とは異なるので、進歩性を有する旨が主張された。また、同意見書において、請求項7の補正は請求項1の補正の目的と同様であり、請求項7に係る発明についても同様に進歩性を有する旨が主張された。従って、現在の請求項7にある「前記他の参照画像を、削除することなく」(平成25年6月17日付け手続補正書により「前記他の参照画像を、削除することなく」と補正された。)は、「全ての前記他の参照画像を、削除することなく」を意図している。このような状況、理解の下に、本願が特許されるに至ったという経緯があり、この点でも、請求項7における「前記他の参照画像、を削除することなく」が「全ての前記他の参照画像、を削除することなく」と同じ意味を有するものであるといえる。」

(5)「訂正した特許請求の範囲」を、請求項1の「全ての前記他の参照画像」との記載に対して「全ての他の参照画像」と補正したものに差し替える。

3.本件補正についての当審の判断
補正事項1乃至4は、審判請求書の「(2)訂正事項」及び「(3)訂正の理由」から訂正事項3に関する記載を削除するものである。
補正事項5は、「訂正した特許請求の範囲」における訂正事項3に係る記載を、特許査定時の記載に戻すものである。
以上のとおり補正事項1乃至5は、いずれも訂正事項3の削除に係るものであるから、本件補正は審判請求書の要旨を変更するものではない。よって、本件補正は特許法第131条の2第1項の規定に適合するから、本件補正を認める。

そして、当審による上記訂正拒絶理由(「1.訂正拒絶理由の概要」の(1)乃至(3))は、訂正拒絶理由の対象となっていた訂正事項3に関する記載が本件補正により削除されたから、いずれも解消した。

第3 請求の趣旨、訂正の内容
1.請求の趣旨
本件訂正審判の請求の趣旨は、本件特許の特許請求の範囲及び明細書を、本件審判請求書に添付の訂正した特許請求の範囲及び明細書のとおりに訂正することを認める、との審決を求めるというものである。

2.訂正の内容
訂正の内容は、以下のとおりである。

(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1の第1段落にある「オブジェクト/シーンを示し」との記載を、「オブジェクト/シーンの異なるビューを示し」に訂正する。

(2)訂正事項2
請求項1の第2段落にある「前記1つの参照画像」との記載を、「前記少なくとも1つの参照画像」に訂正する。

(3)訂正事項4
請求項4にある「第2ビュー」との記載を、「前記第2ビュー」に訂正する。

(4)訂正事項5
請求項5にある「第2ビュー」との記載を、「前記第2ビュー」に訂正する。

(5)訂正事項6
請求項7の第1段落にある「オブジェクト/シーンを」との記載を、「オブジェクト/シーンの異なるビューを」に訂正する。

(6)訂正事項7
請求項7の第3段落にある「第2ビューの前記参照画像」との記載を、「第2ビューの前記少なくとも1つの参照画像」に訂正する。

(7)訂正事項8
請求項7の第4段落にある「リフレッシュ情報が前記ビットストリームに存在するか否かを判定する」との記載を、「リフレッシュ情報が前記受信されたビットストリームに存在するか否かを判定する」に訂正する。

(8)訂正事項9
請求項7の第5段落にある「前記リフレッシュ情報が存在すると判定された場合」との記載を、「前記リフレッシュ情報が前記受信されたビットストリームに存在すると判定された場合」に訂正する。

(9)訂正事項10
請求項7の第6段落にある「前記他の参照画像」との記載を、「全ての前記他の参照画像」に訂正する。

(10)訂正事項11
請求項7の第6段落にある「前記記憶された参照画像」との記載を、「前記マーキングされた記憶された参照画像」に訂正する。

(11)訂正事項12
明細書の段落【0007】に記載された「フレーム間符号化(フレーム間符号化ではない)」を、「フレーム内符号化(フレーム間符号化ではない)」に訂正する。

(12)訂正事項13
明細書の段落【0017】に記載された「有する。(その場合、メモリがDPBから必要とされる場合に、参照画像は削除される。」を、「有する(その場合、メモリがDPBから必要とされる場合に、参照画像は削除される)。」に訂正する。

(13)訂正事項14
明細書の段落【0024】に記載された「(スライス」を、「(スライス)」に訂正する。

(14)訂正事項15
明細書の段落【0029】に記載された「、Rremove」を、「、remove」に訂正する。

(15)訂正事項16
明細書の段落【0030】に記載された「左側から始まり右側に進む場合」を、「右側から始まり左側に進む場合」に訂正する。

(16)訂正事項17
明細書の段落【0030】に記載された「ビュー1について右側に移動する場合」を、「ビュー1のために左側に移動する場合」に訂正する。

第4 当審の判断
1 訂正の目的(特許法第126条第1項)について
まず、上記訂正事項1及び2並びに4乃至17に係る本件訂正が、特許法第126条第1項ただし書各号に規定されたいずれの事項を目的とするものか、検討する。

(1)訂正事項1について
請求項1には、「前記マルチビューシーケンスの少なくとも第1ビュー」及び「前記マルチビューシーケンスの、前記第1ビューとは異なる第2ビュー」と記載されており、当該記載からマルチビューシーケンスの第1ビューと第2ビューとが異なるビューであることが明らかであるから、訂正事項1の「マルチビューシーケンスの各々のビューは、それぞれのオブジェクト/シーンを示し」との記載を「マルチビューシーケンスの各々のビューは、それぞれのオブジェクト/シーンの異なるビューを示し」に訂正することは、前記「前記マルチビューシーケンスの少なくとも第1ビュー」及び「前記マルチビューシーケンスの、前記第1ビューとは異なる第2ビュー」との記載に対する不整合を解消しようとするものと認められる。
よって、訂正事項1は、特許法第126条第1項ただし書第3号に規定する「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものである。

(2)訂正事項2について
訂正事項2の「前記1つの参照画像」との記載を「前記少なくとも1つの参照画像」に訂正することは、「前記1つの参照画像」より前に存在する「少なくとも1つの参照画像」との記載に対する不整合を解消しようとするものと認められるから、特許法第126条第1項ただし書第3号に規定する「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものである。

(3)訂正事項4について
訂正事項4の、請求項4における「第2ビュー」との記載を「前記第2ビュー」に訂正することは、従属先の請求項1に記載の「第2ビュー」との対応関係を明瞭にしようとするものであるから、特許法第126条第1項ただし書第3号に規定する「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものである。

(4)訂正事項5について
訂正事項5の、請求項5における「第2ビュー」との記載を「前記第2ビュー」に訂正することは、従属先の請求項1に記載の「第2ビュー」との対応関係を明瞭にしようとするものであるから、特許法第126条第1項ただし書第3号に規定する「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものである。

(5)訂正事項6について
請求項7には、「前記マルチビューシーケンスの第1ビュー」及び「前記マルチビューシーケンスの、前記第1ビューとは異なる第2ビュー」と記載されており、当該記載からマルチビューシーケンスの第1ビューと第2ビューとが異なるビューであることが明らかであるから、訂正事項6の「マルチビューシーケンスの各々のビューは、それぞれのオブジェクト/シーンを示し」との記載を「マルチビューシーケンスの各々のビューは、それぞれのオブジェクト/シーンの異なるビューを示し」に訂正することは、前記「前記マルチビューシーケンスの第1ビュー」及び「前記マルチビューシーケンスの、前記第1ビューとは異なる第2ビュー」との記載に対する不整合を解消しようとするものと認められる。
よって、訂正事項6は、特許法第126条第1項ただし書第3号に規定する「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものである。

(6)訂正事項7について
訂正事項7の「前記参照画像」との記載を「前記少なくとも1つの参照画像」に訂正することは、「前記参照画像」より前に存在する「少なくとも1つの参照画像」との記載に対する不整合を解消しようとするものと認められるから、特許法第126条第1項ただし書第3号に規定する「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものである。

(7)訂正事項8について
訂正事項8の「前記ビットストリーム」との記載を「前記受信されたビットストリーム」に訂正することは、「前記ビットストリーム」より前に存在する「受信されたビットストリーム」との記載に対する不整合を解消しようとするものと認められるから、特許法第126条第1項ただし書第3号に規定する「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものである。

(8)訂正事項9について
請求項7における「前記リフレッシュ情報が存在すると判定された場合」との記載は、当該記載より前の「リフレッシュ情報が前記ビットストリームに存在するか否かを判定する」との「判定」に係る記載に対応するものであるから、訂正事項9のうち「前記リフレッシュ情報が存在すると判定された場合」との記載を「前記リフレッシュ情報が前記ビットストリームに存在すると判定された場合」に訂正する部分は、前記「リフレッシュ情報が前記ビットストリームに存在するか否かを判定する」との記載に対する不整合を解消しようとするものと認められる。
さらに、訂正事項9の「前記リフレッシュ情報が前記受信されたビットストリームに存在すると判定された場合」に訂正することは、「前記リフレッシュ情報が存在すると判定された場合」より前に存在する「受信されたビットストリーム」との記載に対する不整合を解消しようとするものと認められる。
よって、訂正事項9は、特許法第126条第1項ただし書第3号に規定する「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものである。

(9)訂正事項10について
符号化及び復号化は、情報圧縮分野における一体の技術であり、対の関係にある構成を有するものであるから、請求項7の「復号化する方法」における「前記他の参照画像を、削除することなく、前記第2ビューの前記記憶された参照画像の全てを、前記復号化画像バッファから、後に削除する」との構成は、請求項1の「符号化する方法」における「前記第2ビューの全ての記憶されている参照画像が、前記復号化画像バッファに記憶された全ての他の参照画像を削除することなく、前記復号化画像バッファから、後に削除される」との構成に対応するものと認められる。
よって、訂正事項10の「前記他の参照画像」との記載を「全ての前記他の参照画像」に訂正することは、請求項7の「復号化する方法」に対応する請求項1の「符号化する方法」における「全ての他の参照画像を削除することなく」との記載に対する不整合を解消しようとするものと認められるから、特許法第126条第1項ただし書第3号に規定する「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものである。

(10)訂正事項11について
請求項7における「前記第2ビューの前記記憶された参照画像」との記載は、当該記載より前の「前記第2ビューの全ての前記記憶されている参照画像を、参照のために用いられないものとしてマーキングする」との記載に対応し、当該記載によれば、第2ビューの記憶された参照画像はマーキングされているから、訂正事項11の「前記第2ビューの前記記憶された参照画像」との記載を「前記第2ビューの前記マーキングされた記憶された参照画像」に訂正することは、前記「前記第2ビューの全ての前記記憶されている参照画像を、参照のために用いられないものとしてマーキングする」との記載に対する不整合を解消しようとするものと認められる。
よって、訂正事項11は、特許法第126条第1項ただし書第3号に規定する「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものである。

(11)訂正事項12について
訂正事項12は、明細書の段落【0007】において説明されているIDR画像が「フレーム内符号化」に対応したものであることは明らかであり、同段落の「(フレーム間符号化ではない)」との括弧内の記載に正しく対応させるために「フレーム内符号化」と訂正するものであるから、特許法第126条第1項ただし書第2号に規定する「誤記の訂正」を目的とするものである。

(12)訂正事項13について
訂正事項13は、閉じ括弧を補うよう、及び、括弧内の記載と当該括弧の直前における記載との対応付けを明確にするよう、誤記を訂正するものであるから、特許法第126条第1項ただし書第2号に規定する「誤記の訂正」を目的とするものである。

(13)訂正事項14について
訂正事項14は、閉じ括弧を補うよう、誤記を訂正するものであるから、特許法第126条第1項ただし書第2号に規定する「誤記の訂正」を目的とするものである。

(14)訂正事項15について
訂正事項15は、Rとrとが重複した記載を削除するよう、誤記を訂正するものであるから、特許法第126条第1項ただし書第2号に規定する「誤記の訂正」を目的とするものである。

(15)訂正事項16及び17について
明細書の段落【0030】には、ビュー0から始まる8つのビューに係る制御語の値として「(11001101)」が例示され、ビュー0の値が「1」、ビュー1に移動する場合の値が「0」である旨記載されているから、移動方向は右側から左側である。
よって、訂正事項16及び17の「左側から始まり右側に進む場合」及び「ビュー1について右側に移動する場合」を「右側から始まり左側に進む場合」及び「ビュー1のために左側に移動する場合」に訂正することは、特許法第126条第1項ただし書第2号に規定する「誤記の訂正」を目的とするものである。

2 新規事項の追加の有無(特許法第126条第5項)について
(1)訂正事項1及び6について
明細書の段落【0004】に、「マルチビュー符号化システムは、動画像の複数のビューを有する特徴を有し、各々のビューは、それぞれのオブジェクト/シーンの異なるビューを表す。」との記載がなされていることから、訂正事項1及び6は、特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第126条第5項に規定する要件に適合するものである。

(2)訂正事項2及び7について
明細書の段落【0006】に、「図1を再び参照するに、例えば、T1においてビューS1に関連する画像を符号化するとき、符号化される画像は同じビュー(T0におけるS1及びT2におけるS1)からの画像(参照画像)に関連し、符号化されるべき画像は異なるビュー(T1におけるS0及びT1におけるS2)からの画像に関連することが理解できる。それ故、S1、T1に関連する画像を符号化するとき、バッファ、レジスタ、RAM等のようなメモリ装置に参照画像(T0におけるS1、T2におけるS1、T1におけるS0及びT1におけるS2)を維持することは理解できることであり、その場合、そのような復号化画像は、復号化画像バッファ(DPB)と呼ばれる装置に記憶される。」との記載がなされていることから、訂正事項2及び7は、特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第126条第5項に規定する要件に適合するものである。

(3)訂正事項4及び5並びに8乃至11について
明細書の段落【0027】に、「mark_view_onlyがサフィックスNALユニットにおいて1に等しいとき、同じサフィクスNALユニットにおいて存在するview_idに関連するビューに関連するDPBに存在する参照画像の全てが“参照のために用いられないもの”としてマーキングされる。」との記載がなされており、また、段落【0036】に、「ステップ620においては、類似するデータフォーマッタ520が符号化データストリームを受信し、そのデータフォーマッタは、どの受信されたNALがIDRを表すか、及びどの記憶されている参照画像がIDR動作により影響されるかを判定するように、NALを読み出す。ステップ625においては、符号化器505は、受信された関連NALから符号化画像情報を復号化する(好適な実施形態において)とき、サフィックスNALにおいて特定される“参照として用いられないもの”として記憶されている参照画像をマーキングするIDRコマンドを実行する。ステップ630においては、DPB515がそのようなコマンドを実施し、“参照として用いられないもの”としてIDRコマンドにおいて選択される記憶されている参照画像をマーキングし、DPB515は、最終的には、そのような参照画像を削除する。」との記載がなされていることから、訂正事項4及び5並びに8乃至11は、特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第126条第5項に規定する要件に適合するものである。

(4)訂正事項12について
訂正事項12は、明細書の段落【0007】において説明されているIDR画像が「フレーム内符号化」に対応したものであることは明らかであり、同段落の「(フレーム間符号化ではない)」との正しい記載に基づいて同段落の誤記を訂正するものであるから、特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第126条第5項に規定する要件に適合するものである。

(5)訂正事項13について
訂正事項13は、明細書の段落【0017】における閉じ括弧を補うよう、及び、括弧内の記載と当該括弧の直前における記載との対応付けを明確にするよう、誤記を訂正するのみであるから、特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第126条第5項に規定する要件に適合するものである。

(6)訂正事項14について
訂正事項14は、明細書の段落【0024】における閉じ括弧を補うのみであるから、特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第126条第5項に規定する要件に適合するものである。

(7)訂正事項15について
訂正事項15は、明細書の段落【0029】におけるRとrとが重複した記載を削除するのみであるから、特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第126条第5項に規定する要件に適合するものである。

(8)訂正事項16及び17について
訂正事項16及び17は、明細書の段落【0030】における「(11001101)」との正しい記載に基づいて同段落における誤記を訂正するものであるから、特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第126条第5項に規定する要件に適合するものである。

3 特許請求の範囲の拡張又は変更(特許法第126条第6項)について
(1)訂正事項1及び2並びに4乃至11について
上記「1 訂正の目的(特許法第126条第1項)について」の(1)乃至(10)における検討のとおり、訂正事項1及び2並びに4乃至11は、記載を明瞭化するものであり、発明のカテゴリーや対象、目的を拡張し、又は変更するものではないことは明らかであるから、特許法第126条第6項に規定する要件に適合するものである。

(2)訂正事項12乃至17について
訂正事項12乃至17は、単に明細書の誤記を訂正するためのものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第126条第6項に規定する要件に適合するものである。

4 独立特許要件(特許法第126条第7項)について
(1)訂正事項1及び2並びに4乃至11について
上記「第5 当審の判断」「1 訂正の目的(特許法第126条第1項)について」の(1)乃至(10)において検討したとおり、訂正事項1及び2並びに4乃至11は、特許法第126条第1項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものであるから、特許法第126条第7項に規定する独立特許要件は課されない。

(2)訂正事項12乃至17について
訂正事項12乃至17は、明細書の誤記を正しい記載に訂正したのみであるから、特許法第126条第7項に規定する要件に適合するものである。

5.一群の請求項(特許法第126条第3項及び第4項)について
本件訂正審判の請求の趣旨は、上記第3の1のとおりであり、特許権全体に対して訂正審判を請求する場合に該当するから、特許法第126条第3項及び第4項の規定に適合するか否かについての検討は不要である。

第5 むすび
以上のとおり、本件訂正審判の請求に係る訂正事項1及び2並びに4乃至17は、いずれも特許法第126条第1項ただし書第2号又は第3号に規定された事項を目的とするものであり、かつ、同条第5項乃至第7項の規定に適合するものである。

よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
映像動作中に瞬間復号化リフレッシュを信号で送るようにネットワーク抽象レイヤを用いる方法
【技術分野】
【0001】
本発明は、動画像の分野に関し、特に、動画像を符号化するために用いられる参照画像の記憶の問題に関する。
【背景技術】
【0002】
多くのフレーム間符号化システムは参照画像を使用し、その場合、参照画像の使用は符号化ビットストリームのサイズを減少させる。この種類の結果として、符号化効率は、フレーム間符号化技術自体を用いることに比べてより良好になる。多くの符号化基準は、それ故、動画像のシーケンスからビットストリームを符号化するように、フレーム内符号化技術及びフレーム間符号化技術の両方を組み込んでいる。当該技術分野で知られているように、異なる種類の参照画像が、画像自体(フレーム内)における要素を用いることのみにより符号化される“I”画像、画像自体からの要素及び/又は2つの先行して符号化された参照画像(フレーム間)からの要素を用いることにより符号化される“B”画像、並びに画像自体からの要素及び/又は1つの先行する参照画像(フレーム間)からの要素を用いることにより符号化される“P”画像のような参照を符号化するように用いられる。“B”画像及び“P”画像の両方は複数の参照画像を用いることが可能であるが、それらの種類の画像の両方の間の差は、“B”画像が、ブロック毎に多くても2つの動き補償予測信号を用いるインター予測の使用を可能にする一方、“P”画像は、予測ブロック毎に1つのみの予測の使用を可能にすることである。
【0003】
“B”画像又は“P”画像が符号化される及び/又は復号化されるとき、それらの画像は、それ故、それらの画像が復号化動作中に適切に符号化又は構成されることが可能であるように、他の参照フレームに依存する。符号化/復号化システムは、参照画像が記憶されることが可能である一方、他の画像はそのような参照画像を考慮して符号化又は復号化されるように、ある種類のメモリ場所を備える必要がある。明らかに、しばらくして、将来の符号化動作の間に参照画像を用いる符号化されるべき更なる画像は存在しないために、符号化動作のために参照画像を用いることはできない。
【0004】
記憶装置に永久に参照画像全てを記憶することが可能であるが、そのような解決方法は、メモリ資源を非効率的に使用するものである。それ故、当該技術分野で知られているように、先入れ先出し(FIFO)メモリ動作又は後入れ先出し(LIFO)メモリ動作のようなメモリ技術が、そのような参照画像を必要とする空間を減少させる(不必要な参照画像を捨てることにより)ように支援する参照画像を記憶することによりメモリ装置を動作させる場合に用いられる。そのようなメモリ動作は、しかしながら、符号化及び/又は復号化される画像が時間的関係及びビュー相互関係の両方を有するマルチビュー符号化システムの使用を考慮するとき、不所望の結果をもたらす可能性がある。即ち、マルチビュー符号化システムは、動画像の複数のビューを有する特徴を有し、各々のビューは、それぞれのオブジェクト/シーンの異なるビューを表す。ここで、参照画像は、2つの異なるビューに関連する画像の符号化又は復号化で用いられることが可能である。
【0005】
例えば、図1は、マルチビュー符号化システムで用いられる参照画像構造の例示としての実施例を示している。特に、示されている構造については、文献“Joint Multivew Video Model(JMVM)1.0”,by A.Vetro,Y.Su,H.Kimata,A.Smolic,JVT-T208.doc,Klagenfurt,Austria,July,2006に記載されている。このマルチビュー符号化規格は、Advanced Video Coding(AVC)Standard(“Draft of Version 4 of H.264/AVC(ITU-T Recommendation H.264 and ISO/IEC 14496-10(MPEG-4 part 10)Advanced Video Coding)”,Palma de Mallorca,ES 18-22,October 2004)における符号化に基づいている。両方の規格間の大きい差は、AVCが符号化マルチビュー画像をアドレス指定することができない一方、MVCはそれができることである。
【0006】
図1を再び参照するに、例えば、T1においてビューS1に関連する画像を符号化するとき、符号化される画像は同じビュー(T0におけるS1及びT2におけるS1)からの画像(参照画像)に関連し、符号化されるべき画像は異なるビュー(T1におけるS0及びT1におけるS2)からの画像に関連することが理解できる。それ故、S1、T1に関連する画像を符号化するとき、バッファ、レジスタ、RAM等のようなメモリ装置に参照画像(T0におけるS1、T2におけるS1、T1におけるS0及びT1におけるS2)を維持することは理解できることであり、その場合、そのような復号化画像は、復号化画像バッファ(DPB)と呼ばれる装置に記憶される。
【0007】
DPBにおいて参照画像を管理する一方法は、外部で生成され、DPBの一部をクリアする命令に対して通信されることが可能である構文要素(コマンド)を用いるようになっている。AVC仕様においては、DPBにおいて記憶されている参照画像の全てが“参照のために用いられないもの”であることを示すように用いられる瞬時復号化リフレッシュ(IDR:Instaqntaneous Decoding Refresh)を示すようにコマンドがNALに挿入されるネットワーク抽象化レイヤ(NAL)を用いることが可能である。これは、IDRが受信された後にDPBにおける参照画像の全てが最終的に削除される必要があることを意味する。IDR画像は、フレーム内符号化(フレーム間符号化ではない)に依存する“I”画像(スライス)または“SI”画像(スライス)に関連するために、それを行うことが可能である。それ故、典型的には、符号化画像における第1画像のシーケンスはIDR画像である。
【0008】
しかしながら、現在のIDRの実施は、複数のビューが符号化される必要があるMVC符号化状態の問題に対処するとき、効果的ではない。例えば、ビューS0はAVC対応ビューであることを前提にする。AVC対応ID画像がビューS0において時間T16に存在する場合、ビューS0における参照画像のみが“参照のために用いられないもの”としてマーキングされる必要があるかどうかは明らかでない。即ち、AVC及びMVCについてIDR画像に関連する現在の原理の下では、DPBにおける何れかのビューの全ての記憶されている参照画像が、“参照のために用いられないもの”としてマーキングされ、DPBから削除され、そのことは好ましい結果ではない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】“Joint Multivew Video Model(JMVM)1.0”,by A.Vetro,Y.Su,H.Kimata,A.Smolic,JVT-T208.doc,Klagenfurt,Austria,July,2006
【非特許文献2】Advanced Video Coding(AVC)Standard(“Draft of Version 4 of H.264/AVC(ITU-T Recommendation H.264 and ISO/IEC 14496-10(MPEG-4 part 10)Advanced Video Coding)”,Palma de Mallorca,ES 18-22,October 2004)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の及び他の従来技術の短所及び不利点は、映像符号化についての動き推定予測値として有効な動き情報をもたらす方法及び装置を提供する。
【0011】
本発明の特徴に従って、復号化画像バッファにおいてメモリ管理動作を実行するマルチビュー映像符号化環境で用いる符号が提供され、そのようなメモリ管理動作は、制御情報に基づいて特定のビューに関連する参照画像を除去する。
【0012】
本発明の原理についての上記の及び他の特徴、側面及び有利点は、添付図に関連付けて読むようになっている例示としての実施形態についての以下の詳述から明らかになる。
【0013】
本発明の原理は、以下の例示としての図により更に理解することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】異なる時間の映像画像ビューの例示としての実施形態のマルチビュー符号化であって、そのような映像画像は示している方式で参照画像を用いて符号化される、マルチビュー符号化を示す図である。
【図2】本発明の原理に従ったNALユニットを指定するために用いられる符号の実施形態を示す図である。
【図3】本発明の原理に従って用いられる構文要素ref_pic_list_reordering()についての擬似符号の実施形態を示す図である。
【図4】本発明の原理に従って用いられる構文要素Mmark_view_only()についての擬似符号の実施形態を示す図である。
【図5】本発明の原理に従って用いられる符号化システムの例示としての実施形態を示す図である。
【図6】本発明の原理に従ってIDR画像を用いる符号化の例示としての実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の原理は、フレーム内ベースの符号化規格及びフレーム間ベースの符号化規格に適用されることが可能である。本明細書を通して用いている用語“画像”は、当該技術分野において“フレーム”、“フィールド”及び“スライス”並びに用語“画像”自体として知られている映像画像情報の種々の形式を表現する総称として用いられる。用語“画像”は種々の要素の映像情報を表すように用いられているが、AVCとは、“参照画像”と同じ画像からのスライスを用いることが可能であるスライスの使用のことをいい、画像がどのように副分割されているかに拘わらず、本発明の原理を適用することが可能である。
【0016】
本発明の原理については、典型的には、AVCにおいて規定されるネットワーク抽象レイヤとして知られている要素に関連して説明される。本発明の原理はまた、ヘッダ及びペイロード、データ及び制御パケットをインターリーブするビットストリーム等を有するデータパケットのようなデータを送信するように用いられる複数のフォーマットに適用されることが理解できる。
【0017】
本発明の説明においては、参照画像は、画像を符号化するように用いられる符号化映像画像情報として定義されている。多くの映像符号化システムにおいては、参照画像は、DPBのようなメモリに記憶される。どの参照画像が維持されるべきか又は削除されるべきかを十分に管理するように、DPBは、メモリ管理コマンド動作(MMCO)として知られているコマンドを用い、そのMMCOは、記憶されている参照画像にメモリ状態(典型的には、符号化器により)を割り当てるように用いられる。例えば、AVC/MVC符号化器のために用いられるメモリ状態は、期間であって、短い期間の参照画像、長い期間の参照画像、又は参照画像として用いられないときにマーキングされない画像の期間を有する(その場合、メモリがDPBから必要とされる場合に、参照画像は削除される)。記憶されている参照画像の状態は、より多くの画像が符号化されるときに、変えられることが可能であり、例えば、一画像が符号画像であるとき、短い期間であるように指定される参照画像は、第2画像が符号化されるときに、長い期間の参照画像であるように指定されることが可能である。
【0018】
また、本発明の説明においては、フォーマット化の種類のC言語を用いる種々のコマンド(構文要素)は、そのようなコマンドについて次の名称を用いる図において詳述されている。
u(n):nビットを用いる符号のない整数。nが構文テーブルにおいて“v”であるとき、ビット数は、他の構文要素の値に依存する方式で変化する。この記述子についての解析処理は、最初に書き込まれた最も重要なビットを有する符号のない整数の2進数表現として解釈される関数read-bits(n)の戻り値により特定される。
ue(v):最初に左ビットを有する符号のない整数Exp-Golomb符号化構文要素。
se(v):最初に左ビットを有する符号のある整数Exp-Golomb符号化構文要素。
C:構文要素を適用する、即ち、どのレベルに特定フィールドが適用される必要があるカテゴリを表す。
【0019】
本明細書において、本発明の原理を示している。それ故、当業者は、ここでは明示的に記載及び図示していないが、本発明の原理を実施し、本発明の範囲及び主旨の範囲内に包含される種々の構成を案出することができることが可能であることを理解することができる。
【0020】
ここで列挙する全ての実施例及び条件言語は、当該技術の促進に対して本発明者が寄与している本発明の原理及び概念を理解する上で読者を支援する教育的目的のために意図され、そのように具体的に列挙された実施例及び条件に対する制限の範囲内にあるとして解釈することができる。
【0021】
更に、本明細書において本発明の原理、特徴及び実施形態並びに本発明の特定の実施例を挙げている全ての記載が、本発明と同等の構造及び機能の両方を包含するように意図されている。更に、そのような同等なものは、現在の同等なもの及び将来開発される同等なものを、即ち、構造に関係なく、同様の機能を実行するように開発される何れかの要素を包含するように意図されている。
【0022】
図2は、AVCで用いられるNALのために用いられる構文を開示していて、ここでは、AVC対応ビットストリームは、示しているように、NALユニットの種類1又は5を用いる符号化画像を有する。MVC符号化画像は、符号化画像についてNALユニットの種類20及び21を用いる。両方のNALユニットの種類1及び20は、参照映像符号化規格について非IDR画像(スライス)を表す一方、NALユニットの種類5及び21はIDR画像を表す。符号化器がNALにおける5又は21のユニットの種類を受信する(例えば、ビットストリームにおいて)とき、符号化器は、“参照のために用いられないもの”に変化されたDBPに記憶される参照画像の状態を有する。
【0023】
本発明の実施形態においては、サフィックスNALユニットと呼ばれるNALユニットをNALと共に用いることを提供している。サフィックスNALユニットは、復号化順序にある他のNALユニットに後続するNALユニットとして規定され、関連NALユニットと呼ばれる先行NALユニットについての記述情報を有する。好適には、サフィックスNALユニットの後続するものは、関連NALユニットにすぐに後続する。
【0024】
更に規定されるように、サフィックスNALユニットは、20又は21に等しいnal_ref_idcを有する。svc_mvc_flagが0に等しいとき、サフィックスNALは0に等しいdependency_id及びquality_levelの両方を有するが、符号化スライスを有さない。svc_mvc_flagが1に等しいとき、サフィックスNALは0に等しいview_levelを有し、符号化画像情報(スライス)を有さないが、制御情報を含むことが可能である。サフィックスNALユニットは、関連NALユニットと同じ符号化画像に属す。
【0025】
サフィックスNALユニットについての構文は、図3に示すように、slice_layer_in_svc_mvc_extension_rbsp()functionの構造を規定する。このサフィックスNALユニットは、関連NALユニットに関する情報を得て、適切なアクションをとるように、NALユニットに存在する情報を抽出するようにMVC対応符号化器により用いられることが可能である。
【0026】
それ故、サフィックスNALユニットにおいて、どのビューがIDRコールにより影響される必要があるかを示す情報が存在する新しい構文が提供される。即ち、その新しい構文は、関連ビューについてのものである記憶されている参照画像(DPBにおける)が“参照のために用いられないもの”としてマーキングされる一方、他のビューについて記憶されている参照画像はそれらのメモリ状態のまま保たれるようにする。
【0027】
構文要素mark_view_onlyは本発明の実施形態において提案され、図4に示されていて、そのことは、IDR画像がDPBにおいて有する挙動を特定する。mark_view_onlyがサフィックスNALユニットにおいて1に等しいとき、同じサフィクスNALユニットにおいて存在するview_idに関連するビューに関連するDPBに存在する参照画像の全てが“参照のために用いられないもの”としてマーキングされる。mark_view_onlyが0に等しいとき、DPBに存在する参照画像の全てが“参照のために用いられないもの”としてマーキングされる。
【0028】
本発明の任意の実施形態においては、IDR画像がMVC NALユニット(種類21)に存在するとき、このIDR画像は参照として用いられないものとしてそれ自体のビューにおける画像のみをマーキングする制限を改善することを提案している。
【0029】
更なる任意の実施形態においては、プレフィックスNALユニットが作成されることが可能であり、ここでは、そのようなユニットは、関連NALユニットの前に送信される。更なる任意の実施形態においては、関連IDRに対して特定のビューを選択する上記のコマンドの種類は、本発明の原理に従ったコマンドを付けるように、ユーザデータが規定されることが可能であるNALユニットによりどこかでカプセル化されることが可能である。本発明の代替の実施形態において、制御パケットがそれ自体でビット内に配置され、そのようなパケットは、どの参照画像が“参照のための用いられないもの”としてマーキングされる必要があるかを示すように用いられることを提案していることをまた、理解することができる。特に、制御パケットは、remove_reference_viewのような構文(又は、この提案されたコマンドに類似するコマンド)を有し、そのコマンドに関連する値は、どの記憶されている参照画像が(関連ビューを介して)DPBから削除されるべきかを示す。
【0030】
この構文は、同時に、どのビューがDPBから削除されるべきかを示す制御語を与えるようにされることが可能である。例えば、映像シーケンスがそれに関連する8つのビュー(ビュー0から始まる)を有する場合、ビュー1、4及び5(0から始まる)に関連する参照画像を削除するように用いられる値は、(11001101)のような8ビットの値に従って規定される。そのような値は、右側から始まり左側に進む場合に、即ち、ビュー0には値“1”が与えられ、ビュー0に関連する参照画像はそのまま保たれるようになっている場合に、もたらされる。ビュー1のために左側に移動する場合、そのようなビューには値“0”が与えられる。それ故、本発明の実施形態においては、DPBは、ビュー1に関連するDPBにおける参照画像の全てを削除する。他のコマンド及び値は、本実施形態の原理に従って、当業者が実施することが可能であることが理解できる。
【0031】
図5は、本発明の原理に従って用いられる符号化システムの例示としての実施形態を開示している。図5における簡略化されたバージョンのブロック図500においては、符号化器505、符号化バッファ510及び復号化画像バッファ515、並びにデータフォーマッタ520間の動作について示している。符号化動作(符号化か又は復号化のどちらか)中、符号化器505により現在符号化されている画像は符号化バッファ510に存在している一方、先行して符号化された参照画像は復号化画像バッファ515に記憶されている。上記のように、AVCは、復号化画像バッファ515における参照画像がどのように維持される必要があるかを符号化器が特定するようにするメモリ管理制御動作(MMCO)として知られているコマンドを用いることが開示されている。即ち、画像が符号化されているとき、MMCOは、その画像の前にくる参照画像により何が実行される必要があるかを特定するように、現在符号化されている画像のヘッダに入力されるこの動作は“マーキング”として知られている。それらのコマンドは、その場合、復号化画像バッファ515に存在する参照画像により何が行われる必要があるかを判定するように、将来、符号化器505により用いられることが可能である。用語“画像”は種々の要素の映像情報を表すように用いられているが、AVCは、そのような参照画像が“参照画像”と同じ画像からのスライスを用いることができるスライスの使用を参照し、画像がどのように副分割されるかに拘わらず、本発明の原理が適用されることに留意する必要がある。
【0032】
一旦、画像が符号化されると、それらの画像はビットストリームの一部として送信されることが可能であり、そのようなデータは、データフォーマッタ520を用いてデータネットワークにおける送信のためのビットストリームにおいてフォーマットされる。好適には、データは、トランスポートストリーム(IPパケット、MPEG-2トランスポートストリーム等)において更に送信されるNALユニットの形式で送信され、データフォーマッタ520は、送信パケットにおいてNALユニットを送信する。データフォーマッタ520は、それ故、符号化画像情報及びNALユニットと上記されているコマンドの両方を送信することが可能であり、そのようなNALユニットは、プレフィックス及び/又はサフィックスNALユニットであることが可能である。更に、データフォーマッタ520は、NALユニットの何れかのユーザ定義可能部分にIDR情報コマンドを付加することが可能である。データフォーマッタ520はまた、データパケットのヘッダ、データパケットのペイロード又はトランスポートパケットのそれらの組み合わせにおいて上記のデータコマンドを入れることが可能である。
【0033】
本発明の例示としての実施形態においては、データフォーマッタ520は、トランスポートパケットの符号化ビットストリームを受信する、及び(動画のシーケンスを構成するように)復号化映像画像データの形式に符号化器505により復号化されることができるNALユニットにその受信されたデータをフォーマットすることができる。即ち、データフォーマッタ520は、どの画像がIDR画像を表し、どの符号化器が“参照のために用いられないもの”として特定のビューに関連して参照画像をマーキングするようにNALデータを読み出すように用いられるユニットであるかを判定するように、NALユニットを読み出すことが可能である。符号化器505は、その場合、この任意の実施形態において動作し、符号化器505は受信されたビットストリームを復号化するように用いられ、符号化画像バッファ510及び復号化画像バッファ515は、AVC及びMVC映像符号
化規格に関して規定される方式に従って用いられるようになっている。
【0034】
図6は、IDR画像を用いる方法であるフローチャート600に開示されている本発明の例示としての実施形態である。ステップ605においては、符号化されるようになっている画像についての画像データが符号化器505により処理される。画像データが符号化されるとき、ステップ610における符号化器505は、符号化される画像が瞬間復号化リフレッシュ画像を表すかどうかを指定するコマンドを付加する。このコマンドの一部は、その画像が(IDRである場合に)記憶されている(又は、DPB515に記憶されるようになっている)参照画像の全てに影響するか又は、特定のビューに関連する記憶されている参照画像が“参照として用いられないもの”としてマーキングされるようになっているかを示す。
【0035】
データフォーマッタ520は、ステップ610において符号化器により構築されたコマンドを用い、ステップ615のNALにおいてIDRコマンド(好適には、上記のようにサフィックスNALとして(本発明の原理に従って、他の送信フォーマットを用いることが可能であるが))を送信する。
【0036】
ステップ620においては、類似するデータフォーマッタ520が符号化データストリームを受信し、そのデータフォーマッタは、どの受信されたNALがIDRを表すか、及びどの記憶されている参照画像がIDR動作により影響されるかを判定するように、NALを読み出す。ステップ625においては、符号化器505は、受信された関連NALから符号化画像情報を復号化する(好適な実施形態において)とき、サフィックスNALにおいて特定される“参照として用いられないもの”として記憶されている参照画像をマーキングするIDRコマンドを実行する。ステップ630においては、DPB515がそのようなコマンドを実施し、“参照として用いられないもの”としてIDRコマンドにおいて選択される記憶されている参照画像をマーキングし、DPB515は、最終的には、そのような参照画像を削除する。
【0037】
それ故、例えば、ここで示しているブロック図が本発明の原理を実施する例示としての回路の概念的様子を表していることを当業者は理解することができる。同様に、何れのフローチャート、フロー図、状態遷移図、擬似コード等は、コンピュータ読み出し可能媒体において実質的に表されることが可能であり、それ故、種々の処理がコンピュータ又はプロセッサにより実行されることが可能であり、そのことは、コンピュータ又はプロセッサが明示的に示されているか否かには関係ない。
【0038】
上記図に示している種々の要素の機能は、専用のハードウェア及び適切なソフトウェアと関連してソフトウェアを実行することができるハードウェアを用いることにより与えられることが可能である。プロセッサにより提供されるとき、それらの機能は、単独の専用プロセッサ、単独の共有プロセッサ、又は複数の別個のプロセッサであって、それらの一部は共有されることが可能である、別個のプロセッサにより提供されることが可能である。更に、用語“プロセッサ”又は“制御器”の明示的使用は、ソフトウェアを実行することができるハードウェアに対して明示的に表される必要はなく、ディジタル信号プロセッサ(DSP)ハードウェア、ソフトウェアを記憶する読み出し専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)及び不揮発性記憶装置を暗示的に含むことが可能であるが、それらに限定されるものではない。
【0039】
従来の及び/又は特別の他のハードウェアも含むことが可能である。同様に、図に示す何れかのスイッチのみが概念化されることが可能である。それらの機能は、プログラム論理の実行、専用論理、プログラム制御及び専用論理の相互作用により、又は手動操作によってさえ、実行可能であり、それらの特定の技術は、前後の関連からより具体的に理解できるように、実施者によって選択可能である。
【0040】
請求項においては、特定の機能を実行する手段として表現される要素は、例えば、a)その機能を実行する複数の回路要素の組み合わせ、又はb)その機能を実行するようにソフトウェアを実行する適切な回路と組み合わされたファームウェア、マイクロコード等を含む何れかの形式にあるソフトウェアを含むその機能を実行する何れかの方法を包含するとして意図されている。そのような請求項に記載している本発明の原理は、種々の記載している手段により提供される機能がそれらの請求項が請求する方式で組み合わされ、一緒にされるということにある。それ故、それらの機能を提供することができる何れかの手段はここに示されているものと同等であるとみなれる。
【0041】
本明細書において本発明の原理の“一実施形態”又は“実施形態”を参照することは、その実施形態に関連して説明している特定の特徴、構造、特性等が本発明の原理の少なくとも一実施形態に含まれることを意味している。それ故、本明細書と通して種々の場所に記載されている“一実施形態においては”又は“実施形態においては”の表現の出現は、必ずしも全てが同様の実施形態を表していない。
【0042】
本発明の原理の上記の及び他の特徴及び有利点は、本明細書の教示に基づいて当該適切な技術における熟達者により容易に確かめることが可能である。本発明の原理の教示は、ハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア、特定用途プロセッサ、又はそれらの組み合わせの種々の方式で実行されることが可能である。
【0043】
好適には、本発明の原理の教示は、ハードウェア及びソフトウェアの組み合わせとして実行される。更に、ソフトウェアは、プログラム記憶装置において具体的に実施されるアプリケーションプログラムとして実行されることが可能である。アプリケーションプログラムは、何れかの適切なアーキテクチャを有する機械に対して更新され、その機械により実行されることが可能である。好適には、その機械は、1つ又はそれ以上の中央演算処理装置(CPU)、ランダムアクセスメモリ(RAM)及び入力/出力(I/O)インタフェースのようなハードウェアを有するコンピュータプラットフォームにおいて実施される。そのコンピュータプラットフォームはまた、オペレーションシステム及びマイクロ命令コードを有することが可能である。本明細書で述べている種々の処理及び機能は、CPUで実行されることが可能であるマイクロ命令コードの一部、アプリケーションプログラムの一部、又は何れかのそれらの組み合わせであることが可能である。更に、種々の他の周辺装置が、付加的データ記憶装置及び印刷装置等のコンピュータプラットフォームに接続されることが可能である。
【0044】
添付図に示している構成システムの構成要素及び方法の一部はソフトウェアにおいて好適に実行することができるため、システムの構成要素間又は処理機能ブロック間の実際の接続は、本発明の原理がプログラムされる方式に依存して異なる可能性がある。本明細書の教示において、当業者は、それらの教示及び本発明の原理の同様の実施又は構成について検討することができる。
【0045】
例示としての実施形態については、添付図を参照しながら説明しているが、本発明の原理はそれらの的確な実施形態に限定されるものではなく、種々の変形及び秀才が、本発明の原理の範囲又は主旨から逸脱することなく、当業者により達成されることが可能である。全てのそれらの変形及び修正は、同時提出の特許請求の範囲に記載している本発明の原理の範囲内に包含されるように意図されている。
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
動画のマルチビューシーケンスに対応する映像データを符号化する方法であって、符号化されるべき画像は、時間的相互関係及びビュー相互関係の両方を有し、かつ、マルチビューシーケンスの各々のビューは、それぞれのオブジェクト/シーンの異なるビューを示し、当該方法は:
映像画像に対応する映像情報を符号化するステップであって、前記映像画像は前記マルチビューシーケンスの少なくとも第1ビューに対応し、前記マルチビューシーケンスの、前記第1ビューとは異なる第2ビューの少なくとも1つの参照画像に依存して符号化され得るものであり、前記少なくとも1つの参照画像は、復号化画像バッファに他の参照画像と共に記憶される、ステップと;
前記マルチビューシーケンスの前記第2ビューの前記少なくとも1つの参照画像を含む前記第2ビューの全ての記憶されている参照画像が、前記復号化画像バッファに記憶された全ての他の参照画像を削除することなく、前記復号化画像バッファから、後に削除されるようになっているか否かを示す前記第1ビューと関連する情報を生成しかつ送信するステップと;
を有する方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、前記生成しかつ送信するステップは、第1ネットワーク抽象レイヤユニット(第1NALユニット)内で前記符号化された映像情報及び第2NALユニット内で前記生成された情報を送信する、方法。
【請求項3】
請求項2に記載の方法であって、前記第1NALユニットは関連NALユニットであり、前記第2NALユニットはサフィックスNALユニットである、方法。
【請求項4】
請求項2に記載の方法であって、前記生成しかつ送信するステップは、トランスポートパケットのペイロード内で前記符号化された映像情報を送信し、前記生成された情報は、前記第2ビューの前記記憶されている参照画像の全てが削除されるようになっているかを示す、方法。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れか一項に記載の方法であって、生成された情報は、前記第2ビューの記憶されている参照画像が、“参照のために用いられないもの”としてマーキングされ削除されるようになっているか否かを示す、方法。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れか一項に記載の方法であって、前記第1ビュー及び前記第2ビューと異なる第3ビューの、少なくとも1つの記憶されている参照画像が削除される必要があるか否かを示す更なる情報が生成され、送信され、前記第3ビューの参照画像のみが前記更なる情報により削除される、方法。
【請求項7】
複数のビューのマルチビューシーケンスの符号化された映像画像を表す受信されたビットストリームを復号化する方法であって、復号化されるべき画像は、時間的相互関係及びビュー相互関係の両方を有し、かつ、マルチビューシーケンスの各々のビューは、それぞれのオブジェクト/シーンの異なるビューを示し、当該方法は、:
前記マルチビューシーケンスの第1ビューに関連し、前記マルチビューシーケンスの、前記第1ビューとは異なる第2ビューの少なくとも1つの参照画像に依存して符号化され得る符号化画像の情報を復号化するように前記ビットストリームを処理するステップと;
復号化画像バッファに前記第2ビューの前記少なくとも1つの参照画像を他の参照画像と共に、記憶するステップと;
前記マルチビューシーケンスの前記第2ビューの前記少なくとも1つの参照画像を含む前記第2ビューの全ての記憶されている参照画像の削除を必要とするリフレッシュ情報が前記受信されたビットストリームに存在するか否かを判定するステップと;
前記判定するステップで、前記リフレッシュ情報が前記受信されたビットストリームに存在すると判定された場合、前記第2ビューの全ての前記記憶されている参照画像を、参照のために用いられないものとしてマーキングするステップと;
全ての前記他の参照画像を、削除することなく、前記第2ビューの前記マーキングされた記憶された参照画像の全てを、前記復号化画像バッファから、後に削除するステップと;
を有する方法。
【請求項8】
請求項7に記載の方法であって:
メモリからの第3ビューに関連する少なくとも1つの参照画像を前記復号化画像バッファに維持するステップであって、前記第1ビュー、前記第2ビュー及び前記第3ビューは異なるビューを表す、ステップ;
を追加的に有する、方法。
【請求項9】
請求項1乃至6の何れか一項に記載の方法であって、前記符号化されるべき画像が瞬間復号化リフレッシュ画像である、方法。
【請求項10】
請求項7又は8に記載の方法であって、前記符号化画像が瞬間復号化リフレッシュ画像である、方法。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2018-09-03 
結審通知日 2018-09-05 
審決日 2018-09-21 
出願番号 特願2009-533348(P2009-533348)
審決分類 P 1 41・ 854- Y (H04N)
P 1 41・ 841- Y (H04N)
P 1 41・ 852- Y (H04N)
P 1 41・ 855- Y (H04N)
P 1 41・ 853- Y (H04N)
最終処分 成立  
前審関与審査官 坂東 大五郎  
特許庁審判長 清水 正一
特許庁審判官 渡辺 努
樫本 剛
登録日 2013-08-16 
登録番号 特許第5342445号(P5342445)
発明の名称 映像動作中に瞬間復号化リフレッシュを信号で送るようにネットワーク抽象レイヤを用いる方法  
代理人 伊東 忠彦  
代理人 伊東 忠彦  
代理人 伊東 忠重  
代理人 大貫 進介  
代理人 伊東 忠重  
代理人 大貫 進介  

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