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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 B65H
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 B65H
管理番号 1345170
審判番号 不服2017-13390  
総通号数 228 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-12-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-09-08 
確定日 2018-10-30 
事件の表示 特願2014-526528「スプーリング装置」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 2月28日国際公開、WO2013/026955、平成26年11月27日国内公表、特表2014-531375、請求項の数(6)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2012年(平成24年)8月13日(パリ条約による優先権主張 2011年8月19日、フィンランド)を国際出願日とする特許出願であって、平成27年6月12日、平成28年11月18日に手続補正がされ、平成29年4月24日付けで拒絶査定(謄本送達日同年5月9日、以下「原査定」という。)がされ、これに対して、同年9月8日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正がされ、当審で平成30年3月12日付けで拒絶理由が通知され、同年6月13日に意見書が提出されるとともに手続補正がされたものである。

第2 原査定の概要
原査定に係る拒絶理由の概要は、次のとおりである。

1.原査定時の請求項1?3に係る各発明は、下記の引用文献1、2に記載された発明に基づいて当業者が容易に想到し得るものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

2.原査定時の請求項4に係る各発明は、下記の引用文献1、2、3に記載された発明に基づいて当業者が容易に想到し得るものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない

3.原査定時の請求項5?7に係る各発明は、下記の引用文献1、2、3、4に記載された発明に基づいて当業者が容易に想到し得るものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

<引用文献等一覧>
1.米国特許第4718817号明細書
2.実願昭59-201789号(実開昭61-109904号)のマイクロフィルム
3.特開2004-232372号公報
4.登録実用新案第3008932号公報

第3 本願の発明
本願の請求項1ないし6に係る発明(以下それぞれ「本願発明1」ないし「本願発明6」という。)は、平成30年同年6月13日の手続補正書で補正された特許請求の範囲の請求項1ないし6に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1は次のとおりのものである。

「【請求項1】
入れ子式離隔梁によってある水平距離だけ離隔した2つの側枠体を含み、前記入れ子式離隔梁は、少なくとも1つの外側管および少なくとも1つの内側管を含み、該内外側両管は互いに入れ子式で摺動可能になっていて、さらに、前記外側管および内側管を可調節位置にロックするロック装置を含むスプーリング装置において、該ロック装置は、前記内側管の全長の一部にわたって延伸し該内側管を管区分に分割する前記内側管の分割部と、該内側管の管区分に力を加えて前記管区分を前記外側管の内表面に押圧する力部材とを含み、前記外側管および内側管は角型管であり、前記力部材は拡張可能なバッグ部材または油圧もしくは電動シリンダを含むことを特徴とするスプーリング装置。」

なお、本願発明2ないし6は、本願発明1を引用し、これを更に減縮した発明である。

第4 引用文献、引用発明等

1.引用文献1について
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先日前の1988年(昭和63年)1月12日に頒布された刊行物である引用文献1(米国特許第4718817号明細書)には、図面と共に次の事項が記載されている。(以下の下線は、いずれも審決で付した。引用文献2以下についても同様である。)(なお、原文の後の括弧{}内に記載したものは、当審の訳文である。)

(1)「FIG.1 shows a large-size gantry winding machine 1 comprising two uprights 2 and 3 joined by an upper crosspiece 4. Uprights 2 and 3 slide on parallel rails 5 and 6 so that they can be moved together or apart.」(第2欄第8行?第16頁第3行){第1図は、上部横棒4により接合した2つの直立部材2と3からなる大型のガントリー巻上げ機1を示している。直立部材2と3は、平行レール5と6の上を滑り、一緒に動かしたり別々に動かすことができる。}

図1は次のものである。

(2)図1をみると「上部横棒4」は角形であることがみてとれる。

上記の記載事項を総合すると、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されていると認定できる。

「角形の上部横棒4により接合した2つの直立部材2と3からなり、直立部材2と3は、平行レール5と6の上を滑り、一緒に動かしたり別々に動かすことができる巻上げ機。」

2.引用文献2について
また、原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先日前の1986(昭和61年)年7月11日に頒布された刊行物である引用文献2(実願昭59-201789号(実開昭61-109904号)のマイクロフィルム)には図面と共に次の事項が記載されている。

(1)「本考案は、パイプの接続具、更に詳しくは、パイプの開口端に適用して、該パイプとこれに連結すべき他の部材とを接合するための接続具に関する。」(2頁4?7行)

(2)「すなわち、本考案は、円筒状カラー、該カラー内に挿入される螺桿を備えた連結材及び該螺桿のボルト状ねじ山部に螺合させる截頭円錐状ナツトを組合わせて成り、上記円筒状カラーは、一端が開口した有底円筒体の底板の中央に、上記連結材の螺桿を挿入しうる貫通孔が形成され、円筒部には、開口端から他の有底端部近傍に達する軸に平行な対向する一対の切れ込みが形成され、上記連結材は、鍔の両側に上記螺桿と連結機能を備えた頭部とが一体に形成され、また上記ナツトは、その円錐状下部が螺合締めにより上記円筒状カラーの切れ込まれた開口端部を若干押し開くことのできる大きさに構成されて成るパイプの接続具を提供する。」(4頁13行?5頁9行)

(3)「図において、円筒状カラーは、一端が開口した有底円筒体1の該開口端から他の有底端部近傍に達する軸に平行な対向する一対の切れ込み2、2が形成されており、他の有底端部は切れ込みのない円筒部が僅かに形成され、端部の底板の中央に螺桿挿入用貫通孔3が形成されて成るものである。この孔3は、連結材の螺桿6が自由に挿入しうるならば、できるだけ小さい方が好ましく、従つてその孔3があけられた底板は軸に垂直な内向フランジ4を形成している。このフランジ4によつて、従来必要とした座金が全く不要となり、その不都合が全面的に解消される。また、円筒体1に形成された貫通孔5は、特に本考案の接続具においては不可欠なものではないが、長方形の金属板体をプレスにより1シヨツト成形する際に望ましい作用をするものであり、切れ込み2′に対応する金属板体への切り込みと共に、工業的に有利なプレス成形に好適な処置の結果によるものである。
連結材は、螺桿6と他の部材を連結するための機能を備えた頭部7とが鍔8を挾んで一体に構成されている。螺桿6は、本具をパイプ内に固定するのに必要な位置まで端部側にボルト状ねじ山9が形成され、また頭部7は、軸位にねじ山が形成された円錐台状ナツトをネジ山9に螺合させる際の操作部であつて、厚板状頭部7のほゞ中央に貫通孔10が形成されている。この貫通孔10には、他の部材を締付け保持する、例えば締付けバンド(図示せず)がボルト・ナツトにより固定され、その連結機能により他の部材をパイプPの端部に強固に連結接合することができる。
本考案の接続具をパイプに取付けるには、連結材の螺桿6を円筒状カラーの孔3よりカラー内に挿入し、そのねじ山9の先端部に円錐台状ナツトを螺合して、これをパイプP内に差し込んだのち、連結材をカラーに対して引き離し状にしてねじるとき、ナツトはカラーで拘束されて回転しないまゝ、パイプP内を頭部7側に引き寄せられる。やがてナツトの円錐状外面11によつてカラーの開口端部が押し広げられ、その端部外面はパイプPの内周面を強く押圧して強固に固定される。」(6頁14行?8頁16行)

(4)前記「截頭円錐状ナツト」前記「(2)」と、前記「円錐台状ナツト」前記「(3)」は同じ部材のことであると解されるので、用語の統一のために「円錐台状ナツト」とする。

上記の記載事項を総合すると、引用文献2には、次の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されていると認定できる。

「接続具は、円筒状カラー、螺桿を備えた連結材、円錐台状ナツトを組合わせて成り、円筒状カラーは、開口端から他の有底端部近傍に達する軸に平行な対向する一対の切れ込み2、2が形成されており、連結材は、螺桿6と他の部材を連結するための機能を備えた頭部7とが鍔8を挾んで一体に構成され、螺桿6は、ボルト状ねじ山9が形成され、接続具をパイプに取付けるには、連結材の螺桿6を円筒状カラーの孔3よりカラー内に挿入し、そのねじ山9の先端部に円錐台状ナツトを螺合して、これをパイプP内に差し込んだのち、連結材をカラーに対して引き離し状にしてねじるとき、ナットの円錐状外面11によってカラーの開口端部が押し広げられ、その端部外面はパイプPの内周面を強く押圧して強固に固定される、該パイプとこれに連結すべき他の部材とを接合するための接続具。」

3.引用文献3について
また、原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先日前の平成16年8月19日に頒布された刊行物である引用文献3(特開2004-232372号公報)は、図面と共に次の事項が記載されている。

(1)「【0016】
まず、本発明のテレスコープ式伸縮支柱1の全体形状を説明する。テレスコープ式伸縮支柱は、外側筒体3と、中間筒体4と、内側筒体5とを入れ子状に嵌め合わせたものであり、昇降ワイヤー6と滑車を用いた伸縮機構によって各筒体が上下に摺動して伸縮するように構成されている。なお、テレスコープ式伸縮支柱1の最下段を構成する外側筒体3は地中に埋設配置され、外側筒体3の外周面には、上下方向に延長する4枚の回転抑止リブ7が90度間隔で接合されている。
【0017】
本実施形態では、最も大径の外側筒体3と、第1中間筒体4aおよび第2中間筒体4bと、最小径の内側筒体5との合計4本の筒体から構成される。外側筒体3には、外側から順に、第1中間筒体4a、第2中間筒体4b、最小径の内側筒体5が入れ子状に収納されるように構成されている。なお、各筒体相互間には昇降ワイヤー6が通過できる程度の遊びが設けられている。
【0018】
また、外側筒体3の断面形状は円形に形成され、外側筒体3の内側に遊嵌される第1中間筒体4aおよび第1中間筒体4aの内側に遊嵌される第2中間筒体4bは、正八角形の多角形断面に形成されている。さらに、第2中間筒体4bの内側に遊嵌される内側筒体5は、中間筒体4より角部が少ない正方形の断面形状に形成されている。本発明のテレスコープ式伸縮支柱1では、筒体内周および筒体外周の角部がストッパーとして機能して、荷重による周方向回転が抑制される構成となっている。
【0019】
また図6に示すように、第1中間筒体4a、第2中間筒体4bおよび内側筒体5の下端部には、昇降ワイヤー6を巻き掛ける支持滑車8と、外側に位置する筒体の内周面に当接して回転するガイドローラ9とが配置されている。一方、外側筒体、第1中間筒体および第2中間筒体の上端部には、吊り滑車10および誘導滑車11を備えた固定バンド12が取り付けられている。なお、図1および図2に示すように、固定バンド12にはそれぞれ円筒形状のカバー13を被せてもよい。
【0020】
ここで第1中間筒体4a、第2中間筒体4bおよび内側筒体5の下端部の構造をさらに説明する。図7はB-B線矢視断面図であり、図8はC-C線矢視断面図であり、図9はD-D線矢視断面図である。
【0021】
第1中間筒体4a、第2中間筒体4bおよび内側筒体5の下端部には底フランジ14が形成され、この底フランジ14には外側に位置する筒体の断面形状に合わせた取り付け板15が接合されている。そして取り付け板15には、L形状をなす2個のブラケット16で軸支されたガイドローラ9が中心軸から90度の間隔ごとに4箇所設置されている。ガイドローラ9は、外側に位置する筒体の内周面に当接して回転することで筒体相互間のガタつきを解消し、かつ筒体の伸縮移動を可及的に小さい転がり摩擦の状態で安定させる役割を果たす。」

上記の記載事項を総合すると、引用文献3には、次の発明(以下、「引用発明3」という。)が記載されていると認定できる。

「テレスコープ式伸縮支柱は、最も大径の外側筒体3と、第1中間筒体4aおよび第2中間筒体4bと、最小径の内側筒体5との合計4本の筒体からなり、外側筒体3には、外側から順に、第1中間筒体4a、第2中間筒体4b、最小径の内側筒体5が入れ子状に収納されるように構成され、第1中間筒体4a、第2中間筒体4bおよび内側筒体5の下端部には、外側に位置する筒体の内周面に当接して回転するガイドローラ9とが配置され、ガイドローラ9は、外側に位置する筒体の内周面に当接して回転することで筒体相互間のガタつきを解消し、かつ筒体の伸縮移動を可及的に小さい転がり摩擦の状態で安定させる役割を果たすテレスコープ式伸縮支柱。」

4.引用文献4について
また、原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先日前の平成16年8月19日に頒布された刊行物である引用文献4(登録実用新案第3008932号公報)は、図面と共に次の事項が記載されている。

「 【0001】
【産業上の利用分野】
本考案は、伸縮自在な支柱、特に投影レンズを支えるオーバーヘッドプロジェクタ用支柱や、CCDカメラを支持する資料画像入力装置用支柱に適した摩擦止め機構に関する。」

「 【0009】
先ず、図1乃至図3により実施例の構成を説明する。断面が四角形をした太い支柱5は筒状をしており、内側に四つの内壁面5aを形成している。外形が四角形をしている細い支柱6は太い支柱5の筒状内部に嵌合する。細い支柱6の一側面にはガイド部材7と調整部材8が取付けられている。これらのガイド部材7と調整部材8は反対側の面にも取付けられている。
【0010】
ガイド部材7は合成樹脂製であって、突起7aが細い支柱6に形成された明示されていない孔に嵌入している。従って、図1の状態において、ガイド部材7は細い支柱6から自由に取外すことが可能であるが、それらを圧入するようにしても構わない。このガイド部材7は細い支柱6の隣接する二つの角部を被覆しており、内壁面5aと摺接するようになされている。ガイド部材7には突起7aを挟んで支柱6の長手方向の一方に摩擦部7Bb形成され、他方に足部7cが形成されている。」

上記の記載事項を総合すると、引用文献4には、次の発明(以下、「引用発明4」という。)が記載されていると認定できる。

「断面が四角形をした太い支柱5は筒状をしており、内側に四つの内壁面5aを形成し、外形が四角形をしている細い支柱6は太い支柱5の筒状内部に嵌合し、細い支柱6の一側面にはガイド部材7と調整部材8が取付けられ、これらのガイド部材7と調整部材8は反対側の面にも取付けられ、ガイド部材7は細い支柱6の隣接する二つの角部を被覆しており、内壁面5aと摺接する支柱。」

第5 対比・判断

1.本願発明1について

(1)対比

ア 本願発明1と引用発明1とを対比すると、引用発明1の「2つの直立部材2と3」は、本願発明1の「2つの側枠体」に相当する。

イ 引用発明1の「直立部材2と3」は、「別々に動かすことができる」から、「直立部材2と3」は、ある水平距離だけ離隔しており、引用発明1の「上部横棒4」は「2つの直立部材2と3」を結合するものであるから、2つの直立部材2と3を離隔させている「離隔梁」であるといえる。

ウ 本願発明1の「スプーリング装置」のスプーリング(spooling)とは、糸巻きの意味[研究社 新英和大辞典 第5版34刷]であるから、本願発明1の「スプーリング装置」と引用発明1の「巻上げ機」は同じ装置であるといえる。

よって、本願発明1と引用発明1は、「離隔梁によってある水平距離だけ離隔した2つの側枠体を含むスプーリング装置。」である点で一致し、以下の点で相違している。

相違点:本願発明1の「離隔梁」が、「入れ子式」であり、「少なくとも1つの外側管および少なくとも1つの内側管を含み、該内外側両管は互いに入れ子式で摺動可能になって」おり、「前記外側管および内側管は角型管」であり、「前記外側管および内側管を可調節位置にロックするロック装置を含むスプーリング装置において、該ロック装置は、前記内側管の全長の一部にわたって延伸し該内側管を管区分に分割する前記内側管の分割部と、該内側管の管区分に力を加えて前記管区分を前記外側管の内表面に押圧する力部材とを含」み「前記力部材は拡張可能なバッグ部材または油圧もしくは電動シリンダを含む」のに対して、引用発明1の「上部横棒4(離隔梁)」は、角形であり、直立部材2と3」は「別々に動かすことができる」から、直立部材2と3が別々に動いた結果、直立部材2と3との距離が変動することに応じて、両者を接合する「上部横棒4(離隔梁)」は伸縮することができるといえるが、入れ子式であるのか否か明らかでなく、「ロック装置」が備えられていない点。

(2)判断
上記相違点について以下検討する。

引用例1の図1(「第4 1(1)」)をみると、「上部横棒4」は段差のある形状となっているが、この形状をもって「上部横棒4」が「入れ子式」であるとはいえず、また、引用例1の記載からは、「直立部材2と3」をロックする手段も備えられているとはいえない。さらにいえば、引用発明1において、ロック装置を設ける箇所を「上部横棒4」にしなければならない理由も見受けられない。
仮に引用発明1において、「上部横棒4」が入れ子式であると認定できるとともに、「直立部材2と3」をロックするロック装置を設ける箇所を「上部横棒4」にしたとしても、本願発明1は、「入れ子式離隔梁」の一部である「内側管」は「全長の一部にわたって延伸し該内側管を管区分に分割する前記内側管の分割部」を有するから、「分割部」が「入れ子式離隔梁」の一部(内側管)に形成される構造であるのに対して、引用発明2は、パイプとこれに連結すべき他の部材とを接合するための接続具であるから、引用発明1の「上部横棒4」に引用発明2を適用しても、該接続具の一部である「切れ込み2、2が形成され」る「円筒状カラー」は、「上部横棒4」とは別体であるから、該「切れ込み2、2」が形成されるのは、前記「上部横棒4」ではない。
よって、引用発明1の「上部横棒4」に引用発明2を適用しても、「切れ込み2、2」が形成されるのは、前記「上部横棒4」ではないので、本願発明1の「分割部」が「入れ子式離隔梁」の一部(内側管)に形成される構造とはならない。

引用発明3、4にも、上記相違点に係る本願発明1の発明特定事項は開示されていないし、これを示唆するものもないから、引用発明3、4を考慮したとしても、前記の判断が左右されるものではない。

また、上記相違点に係る本願発明1の発明特定事項が、当業者にとって設計事項であるとする根拠もない。

したがって、本願発明1は、引用発明1、2、3、4に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものともいえない。

2.本願発明2ないし6について

本願発明2ないし6も、本願発明1の上記相違点に係る発明特定事項を備えるものであるから、本願発明1についてと同様の理由で、引用発明1、2、3、4に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものともいえない。

第7 当審拒絶理由通知について

1 請求項1の発明特定事項である「各枠体は、ケーブル管またはホース用の巻胴を支持する支持体上に軸棒を有し」の、「支持体」、「軸棒」が、どのような構造で「枠体」を構成し、「巻胴」を支持するのか不明であるとの拒絶理由に対して、平成30年6月13日の手続補正により、前記発明特定事項が削除されたので、前記拒絶理由は解消された。

2 請求項1の発明特定事項である「前記外側管と前記内側管の間に位置して・・・ロックするロック装置」とあるが、「該ロック装置は、・・・内側管の分割部と、・・・力部材とを含」むものであり、「分割部」と「力部材」は、外側管と前記内側管の間に位置していないから、前記「前記外側管と前記内側管の間に位置して」の記載は明りょうでないとの拒絶理由に対して、平成30年6月13日の手続補正により、前記発明特定事項は「前記外側管および内側管を可調節位置にロックするロック装置」と補正されたので、前記拒絶理由は解消された。

3 請求項1の発明特定事項である「該内側管の分割部に拡張力を生成」の「拡張力を生成」とはどのような意味なのか不明であるとの拒絶理由に対して、平成30年6月13日の手続補正により、前記発明特定事項は「該内側管の管区分に力を加えて」と補正されたので、前記拒絶理由は解消された。

4 請求項1の発明特定事項である「内側管の分割部」とは、本願明細書段落【0018】にある「ロック装置はさらに、内側管4の分割部6に拡張力を生成して管区分7、8を外側管3の内表面に押圧する力部材9を含んでいる。」の記載と、図3からみて、内側管4の一部を管区分7、8に分割する溝のことであると解される。
通常溝は、空間であり、力を受け止めることはできないと解され、なぜ「内側管の分割部に拡張力を生成」することができるのか不明であるとの拒絶理由に対して、平成30年6月13日の手続補正により、「該内側管の管区分」と補正されたので、前記拒絶理由は解消された。

5 請求項1の発明特定事項である「該内側管の分割部に拡張力を生成して前記管区分を前記外側管の内表面に押圧する力部材とを含み、前記外側管および内側管は角型管であり、前記力部材は拡張可能なバッグ部材または油圧もしくは電動シリンダを含むこと」の「油圧もしくは電動シリンダ」がどのような構造で、「管区分を前記外側管の内表面に押圧する」のか不明であるとの拒絶理由に対して、平成30年6月13日の意見書の添付資料の参考図1、2により、「油圧もしくは電動シリンダ」の構造が釈明されたので、前記拒絶理由は解消された。

6 請求項6の発明特定事項である「半角型」とはどのような形なのか不明であるとの拒絶理由に対して、平成30年6月13日の手続補正により、前記発明特定事項は「直角二等辺三角形」と補正されたので、前記拒絶理由は解消された。

7 請求項6の発明特定事項である「前記バー」について、本請求項が引用する請求項4、5にはそれぞれ「平たいバー」、「延伸するバー」の2種のバーが記載されており、「前記バー」がどちらのバーを示すのか不明であるとの拒絶理由に対して、平成30年6月13日の手続補正により、前記発明特定事項は「前記延伸バー」と補正されたので、前記拒絶理由は解消された。

小括 よって当審で通知した拒絶理由は全て解消した。

第8 むすび

以上のとおりであるから、原査定の理由及び当審で通知した拒絶理由によっては、本願を拒絶することはできない。

また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
 
審決日 2018-10-15 
出願番号 特願2014-526528(P2014-526528)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (B65H)
P 1 8・ 537- WY (B65H)
最終処分 成立  
前審関与審査官 佐藤 秀之笹木 俊男  
特許庁審判長 尾崎 淳史
特許庁審判官 吉村 尚
畑井 順一
発明の名称 スプーリング装置  
復代理人 あいわ特許業務法人  
代理人 香取 孝雄  

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