• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 特174条1項 特許、登録しない。 B26D
管理番号 1345189
審判番号 不服2017-10490  
総通号数 228 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-12-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-06-27 
確定日 2018-10-12 
事件の表示 特願2015-140010「meltcut?布を切る?方法」拒絶査定不服審判事件〔平成29年1月12日出願公開、特開2017-7078〕につきまして、次のとおり審決します。 
結論 本件審判の請求は、成り立ちません。 
理由 第1 手続の経緯
本件出願(特願2015-140010号。以下「本願」という。)は、平成27年6月25日の出願であって、その主な手続の経緯は以下のとおりです。
平成28年 5月25日付け:拒絶理由通知書
平成28年 6月17日 :電話応対
平成28年 6月29日 :手続補正書の提出
平成28年11月18日付け:拒絶理由(最後の拒絶理由)通知書
平成28年12月 9日 :意見書の提出
平成29年 5月 9日付け:拒絶査定
平成29年 6月27日 :審判請求書の提出

第2 本願の当初明細書及び特許請求の範囲
本願の願書に最初に添付した明細書及び特許請求の範囲(以下「当初明細書等」という。)は、それぞれ次のとおりです。
(1)明細書
「【発明の名称】melt cut ?布を切る?方法
【技術分野】
【0001】
本発明は布を切る方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の布を切る方法はハサミを使う。
【0003】
各種カッターを使う。布の下に保護材として木製板、厚紙等を使う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
商品名 ヒートスライドカッターHS?100 80W
TAIYO ELECTRIC IND .CO,LTD
大洋電機産業株式会社 wwwgoot,co,jp
NOV2007X3620HSOO DNP
【0005】
商品名・ホットナイフ Hot60R
大洋電気産業株式会社wwwgoot,co,jp
APR2004PRIMITED in JAPAN X2160H TOO AO8
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
以上に述べた従来の布を切る方法では切り口がほつれる。
【0007】
布の下に敷く保護材を木製やプラスチック、厚紙では溶けた布が下にくっつく。
【0008】
大きさをそろえて切れない。
【0009】
沢山同時に作れない。
【0010】
布の風合いを損ねる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
ステンレススチールの型抜きを使って高温で溶かして切る。(型抜きそのものをガス等で
熱する)220℃?500℃
型抜きを布に当てる時間 0.3秒? (布によって異なる)
【0012】
切る布の下に敷くのはステンレススチール板(図2)
【0013】
melt cut する時の型抜きの刃先は0.3mm
それ以下だと布が溶けない。
【0014】
布を複数枚重ねると、布と布がくっつくので必ず1枚ずつ切る。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】布を高熱で熱したステンレススチールの型抜きの型見本
【図2】ステンレススチールの型抜き・布・保護材(ステンレススチール)の重ね方、順序等。
【発明を実施する為の形態】
【0016】
図1に示したようにステンレススチールの型抜きを使用する。
【0017】
図2に示したようにステンレススチールの保護材を下に敷き、その上に布、ステンレススチールの型抜きをその上から当てる。
【0018】
布は1枚ずつ型抜きと保護材の間に入れる。
【0019】
ステンレススチールの型抜きの厚さは0.3mm?0.4mmとする。
【0020】
布の厚さや質によって溶け方が異なるため0.3mm以下であると溶けずに切れるだけ。
【0021】
ステンレススチールの型抜きの温度は220℃? (布によって異なる)
【0022】
ステンレススチールの型抜きを高温で熱して布に当てる時間 0.3秒? (布によって異なる)
【0023】
純毛、純綿、純麻、正絹、毛足の長いもの、特殊加工したもの、不燃加工した生地等は切断しにくい。
【0024】
ポリエステル系、アクリル系、ナイロン系等、及びその混紡、ニット地等が切れる。
【発明の効果】
【0025】
以上のように melt cutでは切り口がほつれないので、大きなものから小さなも
のまで、糸と針、ミシン等で切り口を始末する技術を必要としない。
【0026】
年齢に関係なく、高度な技術を必要としないで幅広く利用できる製品が出来上がる。
【産業上の利用可能性】
【0027】
各種布製品、手芸、造花、アパレル等に利用できる。
アクセサリー・インテリアグッズ等々・・・。
【0028】
各分野で利用可能なので、大量生産すれば市場拡大する。
【0029】
学校用教材・贈答品等に使用可。
【0030】
布製の桜の造花は日本国中で需要がある。」

(2)特許請求の範囲
「【請求項1】
布を切る?方法 melt cut」

第3 補正後の請求項1
平成28年6月29日提出の手続補正書による補正後の請求項1に係る発明(以下「補正後の請求項1」という。)は次のとおりです。
「【請求項1】
熱を利用して布を切断する織物加工機械用ステンレススチール製抜き型を使う。抜き型を220℃?約1000℃まで熱することが出来る。刃をカッターとして使用すると布が溶けないし刃そのものが切れなくなるので不向きである。6000枚/1min.を切断可能なもの。布巾・シングル90cm,ダブル巾150cm,その他を直接機械に設置して切断出来る規模のもの。ステンレススチールの抜型の形や大きさが異る物に取替え出来るもの。melt cutで切り端がほつれたり変形した布片が出来ない性能を持つもの。同形で同じ大きさのものが短時間に沢山作れる。質の異る各種の布を切断するため熱や時間を微調整出来る加工機械であること。」

第4 原査定の拒絶の理由
(1)拒絶理由通知の概要
平成28年11月18日付け拒絶理由(最後の拒絶理由)の概要は「上記補正書によって補正された請求項1の『織物加工機械用』『?約1000℃まで熱する』『6000枚/1min.を切断可能』『布巾・シングル90cm,ダブル巾150cm,その他を直接機械に設置して切断出来る規模』『変形した布片が出来ない性能』という発明特定事項は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載されていない。」という点で、平成28年6月29日提出の手続補正書による補正は「願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものでないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。」というものです。
(2)拒絶査定の概要
平成29年5月9日付け拒絶査定の概要は上記「補正書により補正された、請求項1の『?約1000℃まで熱する』、『6000枚/1min.を切断可能』、『布巾・シングル90cm,ダブル巾150cm,その他を直接機械に設置して切断出来る規模』」「という発明特定事項は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載されてい」ないという点で、「平成28年6月29日」「付け手続補正書によりした補正は、『当初明細書等に記載した事項』との関係において、新たな技術的事項を導入しないものであるということができません」というものです。

第5 当審の判断
(1)新規事項の判断基準
特許法第17条の2第3項には以下のとおり規定されています。
「第1項の規定により明細書、特許請求の範囲又は図面について補正をするときは、…(中略)…願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面…(中略)…に記載した事項の範囲内においてしなければならない。」
つまり、特許法第17条の2第3項は、明細書等の補正について、出願当初の明細書等に記載した事項の範囲内においてしなければならないこと、すなわち、新規事項を追加する補正は許されないことを規定しています。
これを受けて、特許・実用新案 審査基準における
第IV(ローマ数字の4)部 明細書、特許請求の範囲又は図面の補正
第2章 新規事項を追加する補正(特許法第17条の2第3項)
2.新規事項の判断に係る基本的な考え方
3.新規事項の具体的な判断
には以下のとおり記載されています。

「2.新規事項の判断に係る基本的な考え方
審査官は、補正が『当初明細書等に記載した事項』との関係において、新たな技術的事項を導入するものであるか否かにより、その補正が新規事項を追加する補正であるか否かを判断する。『当初明細書等に記載した事項』とは、当業者によって、当初明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項である。
補正が『当初明細書等に記載した事項』との関係において、新たな技術的事項を導入しないものである場合は、その補正は、新規事項を追加する補正でない。他方、補正が新たな技術的事項を導入するものである場合は、その補正は、新規事項を追加する補正である。」

「3.新規事項の具体的な判断
審査官は、補正が新規事項を追加する補正であるか否かを、以下の3.1から3.3までに示された補正の類型ごとの判断手法に基づいて判断する。
3.1 当初明細書等に明示的に記載された事項にする補正
補正された事項が『当初明細書等に明示的に記載された事項』である場合には、その補正は、新たな技術的事項を導入するものではないから許される。したがって、審査官は、この場合には、補正が新規事項を追加するものでないと判断する。
3.2 当初明細書等の記載から自明な事項にする補正
補正された事項が『当初明細書等の記載から自明な事項』である場合には、当初明細書等に明示的な記載がなくても、その補正は、新たな技術的事項を導入するものではないから許される。したがって、審査官は、この場合には、補正が新規事項を追加するものでないと判断する。
補正された事項が『当初明細書等の記載から自明な事項』といえるためには、当初明細書等の記載に接した当業者であれば、出願時の技術常識に照らして、補正された事項が当初明細書等に記載されているのと同然であると理解する事項でなければならない。審査官は、補正された事項が『当初明細書等の記載から自明な事項』であるか否かを判断するに当たっては、以下の(i)及び(ii)に留意する。
(i)補正された事項に係る技術自体が周知技術又は慣用技術であるということだけでは、『当初明細書等の記載から自明な事項』とはいえない。
(ii)当業者であれば、出願時の技術常識に照らして、補正された事項が当初明細書等の複数の記載から自明な事項と理解する場合もある。当初明細書等の複数の記載とは、例えば、発明が解決しようとする課題についての記載と発明の具体例の記載、明細書の記載と図面の記載等である。
3.3 各種の補正
補正された事項が3.1及び3.2のいずれにも該当しない場合であっても、『当初明細書等に記載した事項』との関係において新たな技術的事項を導入するものでなければ、その補正は許される。審査官は、以下の各種の補正ごとに示された、補正が許される場合及び許されない場合も考慮して、補正が新規事項を追加するものであるか否かを判断する。
…(中略)…
(3) 数値限定を追加又は変更する補正の場合
…(中略)…
b 請求項に記載された数値範囲の上限、下限等の境界値を変更して新たな数値範囲とする補正は、以下の(i)及び(ii)の両方を満たす場合は、新たな技術的事項を導入するものではないので許される。
(i)新たな数値範囲の境界値が当初明細書等に記載されていること。
(ii)新たな数値範囲が当初明細書等に記載された数値範囲に含まれていること。」

(2)新規事項についての当審の判断
次に「(1)新規事項の判断基準」で示した考え方に従って、新規事項について検討します。
ア.「?約1000℃まで熱する」
補正後の請求項1において、「抜き型を220℃?約1000℃まで熱することが出来る」とする事項の内、抜き型の加熱温度の上限値を約1000℃とする点については、当初明細書等には、明示的には記載されていません。
むしろ、当初明細書等の段落0011の記載「ステンレススチールの型抜きを使って高温で溶かして切る。(型抜きそのものをガス等で熱する)220℃?500℃」によれば、抜き型の加熱温度の上限値は1000℃ではなく500℃であることが認められます。
ここで、請求人は、平成28年12月9日提出の意見書において、「melt cutに使用する温度220℃?は0004、0005(特許文献)にある通りハンダゴテを作っている会社がすでに特許を出しているものでハンダゴテを応用したものである。布をmelt cut出来る温度としては、ポリエステル100%のうすい布がやっととける温度で数万種類に及ぶ布に十分対応出来る温度ではない。布によっては不燃加工してあるものは500℃でもmelt cut出来ない。純毛、純麻、純綿 正絹、純麻等は特にmelt cutがしにくい。(明細書0023参照)」と主張しています。
しかし、当初明細書等の段落0004及び0005の記載からは、いわゆるヒートカッター又はホットナイフが本願の出願前に市販されていた(公知・公用であった)とはいえても、抜き型を約1000℃まで熱することが自明であったとはいえません。
また、当初明細書等の段落0023の記載からは、本願に係る発明が「純毛、純綿、純麻、正絹、毛足の長いもの、特殊加工したもの、不燃加工した生地等」の切断・カットには適していないとはいえても、抜き型を約1000℃まで熱することが自明であったとはいえません。
したがって、抜き型を約1000℃まで熱する点については、当初明細書等には記載されていない上、当初明細書等に接した当業者にとって、自明でもありません。
イ.「6000枚/1min.を切断可能」
補正後の請求項1において、切断速度を「6000枚/1min.を切断可能」とする点は、当初明細書等には明示的には記載されていません。
むしろ、当初の明細書等の段落0011の記載「型抜きを布に当てる時間 0.3秒? (布によって異なる)」、同段落0014の記載「布を複数枚重ねると、布と布がくっつくので必ず1枚ずつ切る。」及び同段落0022の記載「ステンレススチールの型抜きを高温で熱して布に当てる時間 0.3秒? (布によって異なる)」からは、布1枚の切断時間は最低0.3であり、布は1枚ずつ切断するものであることが読み取れます。
ですので、仮に布を別のものに入れ替える時間を無視したとしても、切断可能な枚数は、60秒÷0.3秒/枚=200枚/1min.程度と思われます。
また、当初明細書等には、200枚/1min.を遙かに超える6000枚/1min.の切断速度で布を切断するための具体的な装置構成については記載も示唆もされていません。
したがって、6000枚/1min.を切断可能とする点については、当初明細書等には記載されていない上、当初明細書等に接した当業者にとって、自明でもありません。
ウ.「布巾・シングル90cm,ダブル巾150cm,その他を直接機械に設置して切断出来る規模」
補正後の請求項1において「布巾・シングル90cm,ダブル巾150cm,その他を直接機械に設置して切断出来る規模」とする点は、当初明細書等には明示的には記載されていません。
ここで、請求人は、平成28年12月9日提出の意見書において、「布巾90cm、150cm等規格品であれば全国一律、特にことわる理由はない。」と主張しておられます。
確かに、布生地としてシングル幅90cm又はダブル幅150cmのものは、本願出願前より日本国内において広く用いられていたかも知れません。しかし、当初明細書等には、切断対象の布生地としてシングル幅90cm又はダブル幅150cmのものを用いる点や、そのような布を切断するための具体的な装置構成については記載も示唆もされていません。
したがって、布巾・シングル90cm,ダブル巾150cm,その他を直接機械に設置して切断出来る規模とする点については、当初明細書等には記載されていない上、当初明細書等に接した当業者にとって、自明でもありません。

よって、平成28年6月29日提出の手続補正書による補正は、補正後の請求項1に対して、抜き型の加熱温度の上限値を約1000℃とする事項、6000枚/1min.を切断可能とする事項、及び、布巾・シングル90cm,ダブル巾150cm,その他を直接機械に設置して切断出来る規模とする事項を導入する点において、当業者によって、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項(いわゆる新規事項)を導入するものといわざるを得ません。
また、平成29年6月27日提出の審判請求書においても、平成28年6月29日提出の手続補正書による補正が、新たな技術的事項を導入するものではないという説明はなされていません。

第6 むすび
以上のとおりですので、平成28年6月29日提出の手続補正書による補正は、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものではなく、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていません。
よって、結論のとおり審決します。
 
審理終結日 2018-07-26 
結審通知日 2018-07-31 
審決日 2018-08-22 
出願番号 特願2015-140010(P2015-140010)
審決分類 P 1 8・ 55- Z (B26D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 豊島 唯福島 和幸  
特許庁審判長 刈間 宏信
特許庁審判官 篠原 将之
平岩 正一
発明の名称 meltcut?布を切る?方法  
  • この表をプリントする

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ