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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 H04W
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04W
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H04W
管理番号 1345200
審判番号 不服2017-8546  
総通号数 228 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-12-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-06-13 
確定日 2018-10-11 
事件の表示 特願2015-187529「ユーザ端末、無線基地局及び無線通信方法」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 3月30日出願公開、特開2017- 63326〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成27年9月24日の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
平成28年 9月23日 :手続補正書の提出
平成28年11月22日付け:拒絶理由通知書
平成29年 2月 6日 :意見書の提出
平成29年 3月 3日付け:拒絶査定
平成29年 6月13日 :拒絶査定不服審判の請求、手続補正書の提出

第2 平成29年6月13日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成29年6月13日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 本件補正について(補正の内容)
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された。(下線部は、補正箇所である。)
「ライセンスバンドとアンライセンスバンドを用いたキャリアアグリゲーションであるLAA(Licensed-Assisted Access)においてLBT(Listen Before Talk)を適用する無線通信システムにおけるユーザ端末であって、
無線基地局からの特定の周波数キャリアに関する測定タイミング設定情報に基づいて前記特定の周波数キャリアのRSSI(Received Signal Strength Indicator)メジャメントを行う測定部と、
前記RSSIメジャメントの結果を前記無線基地局に送信する送信部と、を具備し、
前記測定タイミング設定情報は、測定対象周波数、測定期間のタイミング、測定期間の周期、測定期間長を含むことを特徴とするユーザ端末。」

(2)本件補正前の特許請求の範囲
本件補正前の、平成28年9月23日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。
「LBT(Listen Before Talk)を適用する無線通信システムにおけるユーザ端末であって、
無線基地局からの特定の周波数キャリアに関する測定タイミング設定情報に基づいて前記特定の周波数キャリアのメジャメントを行う測定部と、
前記メジャメントの結果を前記無線基地局に送信する送信部と、を具備することを特徴とするユーザ端末。」

2 補正の適否
本件補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「LBT(Listen Before Talk)を適用する無線通信システムにおけるユーザ端末」を「ライセンスバンドとアンライセンスバンドを用いたキャリアアグリゲーションであるLAA(Licensed-Assisted Access)においてLBT(Listen Before Talk)を適用する無線通信システムにおけるユーザ端末」に、「無線基地局からの特定の周波数キャリアに関する測定タイミング設定情報に基づいて前記特定の周波数キャリアのメジャメントを行う測定部」を「無線基地局からの特定の周波数キャリアに関する測定タイミング設定情報に基づいて前記特定の周波数キャリアのRSSI(Received Signal Strength Indicator)メジャメントを行う測定部」に、「前記メジャメントの結果を前記無線基地局に送信する送信部」を「前記RSSIメジャメントの結果を前記無線基地局に送信する送信部」にそれぞれ、限定を付加し、さらに「測定タイミング設定情報」を「前記測定タイミング設定情報は、測定対象周波数、測定期間のタイミング、測定期間の周期、測定期間長を含む」と限定的に減縮したものである。また、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法17条の2第5項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。そして、同法第17条の2第3項、第4項に違反するところはない。
そこで、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下「本件補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。

(1)本件補正発明
本件補正発明は、上記1(1)に記載したとおりのものと認める。

(2)引用発明
ア 引用例1
(ア)原査定の拒絶の理由で引用された本願の優先日前に頒布された引用文献である、国際公開2013/161135号(以下「引用例1」という。)には、図面とともに、次の記載がある。
「[0021]<第1の実施形態>
図1は、本実施形態に係る無線通信システム100の構成例を示している。無線通信システム100は、セルラシステム(e.g. LTEシステム、Universal Mobile Telecommunications System(UMTS)、CDMA2000システム(EV-DO、1xRTT、HPRD)、又はGlobal System for Mobile Communications (GSM)システム)であってもよい。また、無線通信システム100は、非セルラシステム(e.g. WiMAXシステム、無線Local Area Network(LAN)システム)であってもよい。
[0022] 無線通信システム100は、無線局1、無線端末2、及び周波数制御部3を含む。無線局1は、セル11を運用し、セル11に帰属する無線端末2と通信する。無線局1は、例えば、基地局、中継局(Relay Node(RN))、又はアクセスポイントと呼ばれる。無線端末2は、例えば、移動局、User Equipment(UE)、又はWireless Transmit/Receive Unit(WTRU)と呼ばれる。セル11は、無線局1のカバレッジエリアを意味する。セル11は、セクタ・セルであってもよい。
(中略)
[0024] 共用周波数は、例えばTVWSのように、プライマリシステムにライセンスされた周波数帯域であってもよい。この場合、セカンダリシステムとしての無線通信システム100は、例えば、共用周波数がプライマリシステムによって時間的又は空間的に使用されていない場合に共用周波数を二次利用することができる。言い換えると、無線通信システム100は、無線通信システム100にライセンスされた周波数を利用できるだけでなく、無線通信システム100にライセンスされていない共用周波数(e.g. TVWS)を二次利用することができる。なお、プライマリシステムは存在しなくてもよい。この場合、共用周波数は、複数の無線通信システム、例えば、異なるオペレータによって運用される複数の無線通信システムによって平等に共用されてもよい。複数の無線通信システムは、同じ無線アクセス技術(e.g. LTE)を用いるシステムのみを含んでもよいし、異なる無線アクセス技術(e.g. LTE、CDMA2000、GSM、WiMAX)を用いるシステムを含んでもよい。
[0025] 既に述べたように、無線通信システム100においてTVWSのような共用周波数をするためには、無線端末2がコグニティブ無線に関する周波数センシング機能をサポートしなければならない。このことは、無線端末2のハードウェア又はソフトウェアの規模の増大または複雑化を招くおそれがある。
[0026] この問題に対処するため、本実施形態では、無線端末2は測定部20を有する。測定部20は、無線通信システム100に適用される無線アクセス技術(e.g. LTE、CDMA2000、GSM、WiMAX)により定義される第1の端末測定を実行するために無線端末2に実装された端末測定プロシージャを利用して、共用周波数における第2の端末測定を実行するよう動作する。第2の端末測定の結果は、周波数制御部3に供給され、無線局1による共用周波数の使用を制御するために用いられる。
(中略)
[0031]測定制御部10及び測定部20は、上述した第1の端末測定のための端末測定プロシージャを利用して、共用周波数における第2の端末測定を実行する。例えば、測定制御部10及び測定部20は、ライセンスバンドを測定するための異周波数間測定プロシージャを、非ライセンスバンド(あるいは、専有できる周波数としてはライセンスされてない周波数バンド)である共用周波数の測定に適用してもよい。また、測定制御部10及び測定部20は、キャリアアグリゲーション(又はデュアルセル運用)におけるセカンダリセル測定プロシージャを共用周波数の測定に適用してもよい。
(中略)
[0071] <第5の実施形態>
本実施形態では、上述した第1?第4の実施形態に係る無線通信システム100がLTEシステムである場合について具体的に説明する。無線通信システム100がLTEシステムである場合、無線局1は無線基地局(i.e. eNB)に対応し、無線端末2はUEに対応する。そして、第1?第4の実施形態で説明した端末測定プロシージャは、UE測定プロシージャ(UE measurement procedure)と呼ぶことができる。
(中略)
[0074] 図13は、本実施形態における端末測定プロシージャの具体例を示すシーケンス図である。図13のステップS902では、eNB1は、RRC Connection ReconfigurationメッセージをUE2に送信する。ステップS903では、UE2は、RRC Connection Reconfigurationによって示される端末測定の設定情報(Measurement Configuration)に従って、共用周波数における測定を実行する。ステップS903では、UE2は、共用周波数での測定結果を示す(UE) Measurement ReportをeNB1に送信する。
[0075] また、本実施形態では、共用周波数における第2の端末測定を行うための端末測定プロシージャは、例えば以下の(2a)?(2e)のうち少なくとも1つを含んでもよい。
(2a)異周波数間測定(Inter-frequency measurement)プロシージャ;
(2b)異無線アクセス技術間測定(Inter-RAT measurement)プロシージャ;
(2c)デュアルレシーバ構成を有するUE2の第2レシーバ(Second Receiver)を用いて、追加キャリアとして設定された共用周波数を測定するプロシージャ;
(2d)キャリアアグリゲーション(Carrier Aggregation(CA))のセカンダリセル(又はセカンダリキャリア)として設定された共用周波数を測定するプロシージャ;及び
(2e)MDT(Minimization of Drive Test)の端末測定プロシージャ。
[0076] 図14は、共用周波数における第2の端末測定のために異周波数間測定(Inter-frequency measurement)を用いるプロシージャ(2a)の概念図である。図14は、共用周波数がTVWSである場合について示している。UE2は、サービングキャリア又はサービングセルであるライセンスバンドの測定を行う。さらに、UE2は、eNB1による異周波数間測定(Inter-frequency measurement)の指示に従ってTVバンドの測定を行う。
[0077] 異周波数間測定(Inter-frequency measurement)は、図13に示したシーケンス図に従って行うことができる。具体的には、ステップS902におけるRRC Connection Reconfigurationメッセージは、Inter-frequency measurementの測定設定情報(Measurement Configuration(MeasConfig))を含む。さらに、この測定設定情報は、例えば、以下の3つのうち少なくとも1つを含む。
・測定項目(e.g. RSRP、RSRQ、RSSI、又はCQI);
・異周波数間測定の為の通信中断期間の設定情報(Measurement Gap Configuration(MeasGapConfig));及び
・報告に関する設定情報(Report Configuration(ReportConfig))。
[0078] 図15は、プロシージャ(2c)の概念図である。図15も、共用周波数がTVWSである場合について示している。UE2は、サービングキャリア又はサービングセルであるライセンスバンドの測定を行う。さらに、UE2は、eNB1による指示に従って、第2レシーバを用いて追加キャリアとしてのTVバンドを受信し、TVバンドの測定を行う。
[0079] プロシージャ(2c)に基づく共用周波数の測定も、図13に示したシーケンス図に従って行うことができる。具体的には、ステップS902におけるRRC Connection Reconfigurationメッセージは、異周波数測定(Inter-frequency measurement)の測定設定情報(Measurement Configuration(MeasConfig))を含む。測定設定情報の具体例は、上述した通りである。ここでは、UE2はデュアルレシーバ構成を有すること(言い換えると第2レシーバを有すること)をeNB1に予め通知している。したがって、eNB1は、UE2が第2レシーバを用いて共用周波数における端末測定を行えることを認識している。ステップS903では、UE2は、 Intra-frequency 又は Inter-frequency measurement として共用周波数の測定を行う。なお、eNB1及びUE2は、Inter-RAT measurementとして共用周波数の測定を行ってもよい。
[0080] 図16は、キャリアアグリゲーション(CA)のセカンダリセル(又はセカンダリキャリア)として設定された共用周波数を測定するプロシージャ(2d)の概念図である。図16も、共用周波数がTVWSである場合について示している。UE2は、キャリアアグリゲーション(CA)のプライマリセル(又はプライマリキャリア)であるライセンスバンドの測定を行う。さらに、UE2は、eNB1による指示に従って、TVバンドのセル(又はキャリア)をキャリアアグリゲーション(CA)のセカンダリセル(又はセカンダリキャリア)として設定し、特定信号を受信し、TVバンドにおける端末測定を行う。なお、共用周波数が複数の候補周波数を含む場合、eNB1は、1つずつ順にセカンダリセルに設定しても良いし、複数の候補周波数を同時に複数のセカンダリセルとして設定してもよい。」

(イ)上記記載から、引用例1には、次の技術的事項が記載されているものと認められる。
a [0080]の記載より、「無線通信システム」はライセンスバンドと共有周波数のセルをキャリアアグリゲーションするものである。ここで、[0071]の「<第5の実施形態> 本実施形態では、上述した第1?第4の実施形態に係る無線通信システム100がLTEシステムである場合について具体的に説明する。」との記載から、引用例1の第5の実施形態に記載された技術は、第1の実施形態の内容を含むものと認められる。さらに、[0024]の「無線通信システム100にライセンスされていない共用周波数」との記載、及び、[0031]の「非ライセンスバンド(あるいは、専有できる周波数としてはライセンスされてない周波数バンド)である共用周波数」より、前記「共有周波数」は、非ライセンスバンドも含むものと認められる。また、[0074]、図13より、非ライセンスバンドの利用の前に当該バンドの測定を行うものと認められる。
よって、引用例1には、「ライセンスバンドと非ライセンスバンドを用いたキャリアアグリゲーションにおいて、非ライセンスバンドの利用の前に当該バンドの測定を行う無線通信システムにおける無線端末」が記載されている。

b 「無線端末」は、共用周波数における測定を実行する([0074])ことから測定部([0026])を有し、共用周波数における端末測定を実行するよう動作するものと認められる。また、「RRC Connection Reconfiguration」メッセージに含まれる「Inter-frequency measurementの測定設定情報」は、「RSSI」を測定項目として含むこと、「異周波数間測定の為の通信中断期間の設定情報」を含むこと([0077])が記載されている。ここで通信中断期間にRSSIを含む異周波数間測定が行われるのであるから、「異周波数間測定のための通信中断期間の設定情報」は、測定のタイミングを設定する情報といえる。さらに、[0080]には、共用周波数が複数の候補周波数を含む場合、1つずつ順にセカンダリキャリアを設定してもよいことが記載されている。これより、前記通信中断期間の設定情報は、特定の周波数キャリアの測定タイミングを与えるものと言える。してみれば、引用例1には、「無線基地局からの特定の周波数キャリアに関する測定の為の測定タイミングを与える設定情報に基づいて前記特定の周波数キャリアのRSSI測定を行う測定部」が記載されている。

c 引用例1には明示はないものの、引用例1の「ステップS903(S904の誤記と認められる)ではUE2は、共用周波数での測定結果を示す(UE) Measurement ReportをeNB1に送信する」([0074])との記載より、「無線端末」は、無線基地局に測定結果のデータを送信する「送信部」を有することは明らかである。

(ウ)上記(ア)、(イ)から、引用例1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「ライセンスバンドと非ライセンスバンドを用いたキャリアアグリゲーションにおいて、非ライセンスバンドの利用の前に当該バンドの測定を行う無線通信システムにおける無線端末であって、
無線基地局からの特定の周波数キャリアに関する測定の為の測定タイミングを与える設定情報に基づいて前記特定の周波数キャリアのRSSI測定を行う測定部と、
前記RSSI測定の結果を前記無線基地局に送信する送信部と、を具備する
無線端末。」

イ 引用例2
(ア)同じく原査定に引用され、本願の優先日前に頒布された国際公開第2013-141194号(以下「引用例2」という。)には、次の記載がある。
「[0235] ところで、近年、フェムト基地局およびピコ基地局などの小型基地局の設置数が増加傾向にある。また、無線基地局装置の近くでは受信電力の変化が急であり、さらに、無線基地局により形成されるセルのセルエッジにおける受信電力の変化は、マクロ基地局よりもフェムト基地局またはピコ基地局などの小型基地局の方が大きい。このため、小型基地局の設置数の増加に伴い、無線端末装置のハンドオーバ動作が起こりやすくなっている。
[0236] また、サービング基地局と当該無線端末装置との間で使用される無線信号の周波数と、サービング基地局以外の無線基地局装置である周辺基地局から送信される無線信号の周波数とが異なる場合がある。
[0237] このような移動通信システムでは、たとえば、無線端末装置は、通信接続先として適切な無線基地局装置が選択されるために、自己とサービング基地局との間で使用される無線信号の周波数と異なる周波数の無線信号の測定を間欠的に行い、サービング基地局に測定結果を送信する(非特許文献2(3GPP TS 36.133 V10.4.0))。このような測定動作を行う無線端末装置では、近年の小型基地局の設置数の増加に伴い、上記測定の対象が増加する。
(中略)
[0240] これに対して、本発明の第1の実施の形態に係る無線基地局装置では、異周波測定制御部16が、異周波測定動作が行われる異周波測定期間において異なる周波数の無線信号が測定されるタイミングである測定タイミング、異周波測定動作が行われる間隔、または異周波測定期間における異なる周波数の無線信号の測定結果がサービング基地局101Aに報告されるタイミングである報告タイミングを設定する。また、設定通知部17が、異周波測定制御部16による設定の内容を無線端末装置202に通知する。さらに、異周波測定制御部16は、周辺基地局101Bごとまたは無線信号の周波数ごとに上記設定を行う。
[0241] このような構成により、周辺基地局101Bごとまたは周辺基地局101Bから送信される無線信号の周波数ごとにタイミングをずらして異周波測定動作を行うことができるため、並行して測定することのできる測定対象の数に限りがあっても、所定期間内に測定することのできる測定対象の数を従来よりも増やすことができる。このため、周辺基地局101Bが多数存在する場合であっても測定に時間がかかることを防ぎ、無線端末装置202による異周波測定動作を適切に行うことができ、通信の安定化を図ることができる。
[0242] また、本発明の第1の実施の形態に係る無線基地局装置では、異周波測定制御部16は、測定タイミングの間隔を周辺基地局101Bごとまたは無線信号の周波数ごとに設定する。」

(イ)上記記載から、引用例2には、次の技術(以下、「公知技術1」という。)が記載されていると認められる。
「ハンドオーバ動作に関して、無線基地局装置から通知される、異なる周波数の無線信号が測定されるタイミングである測定タイミング、異周波測定動作が行われる間隔、の設定に基づいて無線端末装置が異周波測定動作を行う。」

ウ 引用例3
(ア)同じく原査定に引用され、本願の優先日前に頒布された国際公開第2009-072521号公報(以下「引用例3」という。)には、次の記載がある。

「[0001] 本発明は移動通信の技術分野に関連し、特に異周波システム間のハンドオーバをサポートするための移動通信システム、基地局装置、ユーザ装置及び方法に関連する。
[0002] 一般にユーザ装置(UE: User Equipment)はハンドオーバ(HO: Handover)に先だって、ハンドオーバ先の候補となる隣接セルの品質を測定し、測定結果を基地局に報告する。品質は例えばリファレンス信号の受信レベルや受信SINR等で表現される。基地局(eNB)への報告はメジャーメントレポート(Measurement Report)により行われる。基地局はメジャーメントレポートに基づいて、ユーザ装置UEがハンドオーバすべきことを決定し、ハンドオーバを指示するメッセージが、ユーザ装置UEにハンドオーバコマンド(Handover Command)として通知される。
[0003] ハンドオーバ先は同一システムの同一周波数のセルだけでなく、同一システムの異なる周波数のセルであるかもしれないし、異なる無線アクセス技術(RAT: Radio Access Technology)を使用しているセルかもしれない。異なる無線アクセス技術を使用しているセルの周波数は、一般的に、ハンドオーバ元と異なる周波数であるため、必然的に、ハンドオーバ先のセルの周波数は、ハンドオーバ元のセルの周波数と異なる。
[0004] 図1は異周波セル間のハンドオーバが行われる様子を模式的に示す。図1では、第1周波数f 1 の移動通信システム及び第2周波数f 2 の移動通信システムを含むロングタームエボリューション(LTE: Long Term Evolution)方式のシステムと、それらとは異なる周波数f 3 を使用するWiMAX方式のシステムとが示されている。異周波又は異RATのシステム間でハンドオーバを行うことについては、例えば非特許文献1(本願出願時における3GPPTS25.331)で説明されている。
[0005] ところで、一般に、ユーザ装置UEは無線信号処理部を1つしか備えていないので、異なる周波数の各々について同時に信号の送受信を行うことはできない。このため、在圏セル(サービングセル)の周波数と異なる周波数のセル(異周波セル)を測定する場合、周波数を同調し直す必要がある。具体的には、例えばRRCメジャーメントコントロールにより、ギャップ期間の長さ、ギャップ期間の訪れる周期、異周波セルの周波数等が基地局eNBからユーザ装置UEに通知され、ユーザ装置UEは、指定されたギャップ期間の間に、異周波測定(周波数の変更、同期チャネルの捕捉、品質測定、周波数の変更等の処理を含む)を行う。本願における「異周波測定」は、異周波のセルをサーチし、その品質を測定するだけでなく、異RATのセルをサーチし、その品質を測定することも含む概念である。」

(イ)上記記載から、引用例3には、次の技術(以下、「公知技術2」という。)が記載されていると認められる。
「ハンドオーバに先だって、基地局から通知される、異周波セルの周波数、ギャップ期間の訪れる周期、ギャップ期間の長さの設定に基づいてユーザ装置が異周波測定を行う。」

(3)引用発明との対比
本件補正発明と引用発明とを対比する。
本件補正発明の「アンライセンスバンド」と引用発明の「非ライセンスバンド」とは、表現上の差違に過ぎず、実質的な差違はない。
引用発明にはLAA(Licensed-Assisted Access)である旨の明示はないが、引用発明もライセンスバンドの基地局の補助によるアンライセンスバンドへのキャリアアグリゲーションに係るものであるから、引用発明も「ライセンスバンドとアンライセンスバンドを用いたキャリアアグリゲーションであるLAA(Licensed-Assisted Access)」と言える点で、本件補正発明と一致している。
引用発明にはLBT(Listen Before Talk)を適用する旨の明示はないが、非ライセンスバンドへの利用の前に当該バンドの測定を行うものであるからLBTを適用していると言える。よって本件補正発明と引用発明とでは、LBTを適用した点で一致している。
引用発明の「無線基地局からの特定の周波数キャリアに関する測定の為の測定タイミングを与える設定情報に基づいて前記特定の周波数キャリアのRSSI測定を行う測定部」は、本件補正発明の「無線基地局からの特定の周波数キャリアに関する測定タイミング設定情報に基づいて前記特定の周波数キャリアのRSSI(Received Signal Strength Indicator)メジャメントを行う測定部」に一応対応する。
引用発明の「前記RSSI測定の結果を前記無線基地局に送信する送信部」は、本件補正発明の「前記RSSIメジャメントの結果を前記無線基地局に送信する送信部」に相当する。

以上のことから、本件補正発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。
[一致点]
「ライセンスバンドとアンライセンスバンドを用いたキャリアアグリゲーションであるLAA(Licensed-Assisted Access)においてLBT(Listen Before Talk)を適用する無線通信システムにおけるユーザ端末であって、
無線基地局からの特定の周波数キャリアに関する測定タイミング設定情報に基づいて前記特定の周波数キャリアのRSSI(Received Signal Strength Indicator)メジャメントを行う測定部と、
前記RSSIメジャメントの結果を前記無線基地局に送信する送信部と、を具備し、前記測定タイミング設定情報は、測定対象周波数を含むことを特徴とする、
ユーザ端末。」

[相違点]
「測定タイミング設定情報」について、本件補正発明は、更に「測定期間のタイミング、測定期間の周期、測定期間長」を含むのに対し、引用発明は、これらを含むことは特定されていない点。

(4)判断
以下、相違点について検討する。
相違点について
引用文献2には、LAAに関するものではないものの、本件補正発明と同様に無線端末における異なる特定の周波数キャリアの測定に関するものであって、その無線基地局から設定される測定に関する情報として「無線基地局装置からの異なる周波数の無線信号が測定されるタイミングである測定タイミング、異周波測定動作が行われる間隔」が記載されている。ここで、引用文献2に記載の技術の「測定タイミング」、「異周波測定動作が行われる間隔」は、本件補正発明の「測定期間のタイミング」、「測定期間の周期」にそれぞれ対応するものである。
引用文献3には、LAAに関するものではないものの、本件補正発明と同様に無線端末での特定の周波数キャリアに関する測定に関するものであって、その無線基地局から設定される測定に関する情報として「異周波セルの周波数、ギャップ期間の訪れる周期、ギャップ期間の長さ」記載されている。ここで、引用文献3に記載の技術の「ギャップ期間の訪れる周期」「ギャップ期間の長さ」は、本件補正発明の「測定期間の周期」、「測定期間長」にそれぞれ対応するものである。
すなわち、測定タイミング設定情報として、測定期間のタイミング、測定期間の周期、測定期間長は、公知のものに過ぎない。
これより、ユーザ端末が特定の周波数キャリアに関する測定が必要となった場合に、無線基地局からユーザ端末へ設定する「測定タイミング設定情報」の具体的な情報として、公知の「測定対象周波数、測定期間のタイミング、測定期間の周期、測定期間長」を採用することは、当業者が適宜なし得たものである。

そして、これらの相違点を総合的に勘案しても、本件補正発明の奏する作用効果は、引用発明及び引用文献2,3に記載された技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。

したがって、本件補正発明は、引用発明及び公知技術1,2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法29条2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

3 本件補正についてのむすび
上記2より、本件補正は、特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するので、同法159条1項の規定において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明について
1 本願発明
平成29年6月13日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、平成28年9月23日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし10に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、前記第2[理由]1(2)に記載のとおりのものと認める。

2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができない、さらに、この出願の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。そして、請求項1に対して、国際公開第2013/161135号(引用例1)が引用されている。

3 引用発明
引用発明は、前記第2(2)に記載したとおりである。

4 対比・判断
本願発明は前記第2の[理由]2で検討した本件補正発明から、「ユーザ端末」に係る「ライセンスバンドとアンライセンスバンドを用いたキャリアアグリゲーションであるLAA(Licensed-Assisted Access)において」との限定事項、「メジャメント」に係る「RSSI(Received Signal Strength Indicator)」メジャメントである旨の限定事項、「前記測定タイミング設定情報」に係る「測定対象周波数、測定期間のタイミング、測定期間の周期、測定期間長を含む」旨の限定事項を削除したものである。
そうすると、前記第2(3)の[相違点]は存在しないから、本願発明と引用発明とでは差違はない。また、本願発明は引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

なお、本願出願人は平成29年2月6日付け意見書において、
「したがって、引用文献1における周波数センシングは、ライセンスバンドを二次利用するために通知されたライセンスバンドの候補周波数についての測定であり、本願発明における、アンライセンスバンドについて所定レベルを超える信号が存在するかどうかを調べるLBTとは全く異なります。
このように、本願発明にかかるLBTを適用する無線通信システムと、引用文献1のコグニティブ無線システムとは全く異なります。このため、本願発明は、引用文献1に記載された発明とは同一ではなく、引用文献1から容易に想到できたものではないと思料致します。」
と主張している。
しかしながら、本願発明にはLBTが「アンライセンスバンドについて所定レベルを超える信号が存在するかどうかを調べる」ものであるとの特定はなく、単にLBTを適用する旨が特定されるのみである。よって、出願人の上記主張は特許請求の範囲の記載に基づかないものであり、採用できない。

第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第1項第3号に該当し、さらに、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2018-08-08 
結審通知日 2018-08-14 
審決日 2018-08-28 
出願番号 特願2015-187529(P2015-187529)
審決分類 P 1 8・ 113- Z (H04W)
P 1 8・ 121- Z (H04W)
P 1 8・ 575- Z (H04W)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 伊東 和重  
特許庁審判長 菅原 道晴
特許庁審判官 倉本 敦史
岩間 直純
発明の名称 ユーザ端末、無線基地局及び無線通信方法  
代理人 天田 昌行  
代理人 守屋 芳隆  
代理人 青木 宏義  

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