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審決分類 審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) D05B
管理番号 1345216
審判番号 不服2016-8776  
総通号数 228 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-12-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-03-22 
確定日 2018-10-09 
事件の表示 特願2015-161370「ボビンレス下糸連続供給装置」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 2月 9日出願公開、特開2017- 29658〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成27年 8月 3日の出願であって、その手続の経緯は、概略、以下のとおりである。
平成27年12月 1日付け 拒絶理由通知
平成27年12月22日 意見書及び手続補正書提出
平成28年 3月 4日付け 拒絶査定
平成28年 3月22日 審判請求書提出。同時に、手続補正書提出
平成29年10月25日付け 拒絶理由通知
平成29年12月 7日 意見書及び手続補正書提出
平成30年 3月 9日付け 拒絶理由通知
平成30年 4月24日 面接
平成30年 5月 8日 意見書及び手続補正書提出

第2 本願発明
本願の請求項1及び2に係る発明(以下「本願発明1及び2」という。)は、平成29年12月7日付け手続補正書によって補正された特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。
「【請求項1】
下糸防護導管5(1)と継手6を挿入する挿入孔を開けた、回転軸1と、
外釜底部2cに継手取付け窪み2gを加工し、外釜側面ガイドレール溝2eの下部の外釜内側面2fを削り取った、外釜2と、
中釜中心軸3aに糸通り孔3eを開け、中釜側面ガイドレール3fの下部に空間3jを開け、中釜側面ガイドレール3fの下部に下糸防護導管5(2)取付け溝3hを掘り、中釜側面ガイドレールの根元部に下糸防護導管取付け口3bを開け、中釜側面ガイドレール切欠部3f(2)に鋼板5d取付け溝3iを切った、中釜3と、
ボビンケース中心軸4aを短く切り、ボビンケース4側面に下糸防護導管取付け金具差し込み口4bを開けた、ボビンケース4と、
鋼板5dを取り付けた下糸防護導管5(2)と、下糸24を外釜2外部より中釜3内部に導入する、下糸防護導管5(1)と5(3)と、
外釜2に取り付け、下糸防護導管5をしっかり支える、継手6と、
下糸防護導管5(1)をミシン底部に取付け固定する、支持金具7と、
下糸防護導管5(2)を中釜3に取り付ける、下糸防護導管取付け金具8と、
を備えた、ボビンレス下糸連続供給装置。
【請求項2】
下糸防護導管5(3)をミシン頭部よりミシン底部に導入し、下糸防護導管5(1)と接続し、下糸防護導管5(1)を回転軸1の挿入孔に挿入し、回転軸1に外釜2と共に装着されている継手6と接続し、支持金具7でミシン底部に取付け固定する、部分と、
下糸防護導管5(2)に取り付けてある鋼板5dを中釜側面ガイドレール切欠部3f(2)に取り付け、下糸防護導管5(2)を中釜側面ガイドレール切欠部3f(1)に取り付け、外釜2に取り付けてある継手6と接続し、下糸防護導管取付け金具8で中釜3に取付け固定する、部分と、
ボビンケース4を中釜3にセットする、部分と、
の三部分で構成されている、ボビンレス下糸連続供給装置。」

第3 平成30年3月9日付けの拒絶理由通知における拒絶理由
当審が通知した平成30年3月9日付けの拒絶理由通知の特許法第36条第4項第1号に係る拒絶理由の概要は、次のとおりである。

本件出願は、明細書及び図面の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。

(1)本願明細書の段落【0019】及び【0020】によれば、本願発明は、「下糸24」を「外釜2の外部から中釜3の内部に連続供給」することを前提として、その上で「縫製作業を可能」とすることを目的としているものと認められる。
(2)ここで、上記「縫製作業」のうち、下糸24と上糸25により縫い目を形成する過程については、段落【0065】?【0077】(図9?図12)にその説明がなされている。
(3)しかしながら、当該段落【0065】?【0077】の説明は不明確であり、縫製作業が可能であることを十分に説明しているとはいいがたい。
(4)仮に、上記段落【0065】?【0077】の説明が、上糸25のループ内に「中釜3」をくぐらせる動作を説明しているものであった場合、出願当初の図9から明らかなように、上糸25は、「中釜3」と「外釜2」との間を通過する際に「下糸防護導管5」及び「下糸24」に遮られて横切ることができないから、そのような動作は実現できないものと考えられる。
(5)また、そもそも、ループを形成した上糸25を下糸24に絡めて縫い目を形成するためには、ループ内に下糸24を通す必要があるから、下糸24の端部(ボビン)を上糸25のループにくぐらせる必要があると考えられる。しかしながら、図9に示されるように、下糸24の端部は、上糸25のループが形成される外釜2付近の位置から離れた糸立て台21の位置に存在しており、下糸24の端部を上糸25のループにくぐらせることができない。
そうすると、仮に上記(4)の動作が実現したとしても、縫い目は形成されないと考えられる。
(6)したがって、本願の発明の詳細な説明の記載は、上糸25のループを外釜2と中釜3との隙間内に進入、退出させて、下糸24を絡めるための手段が、不明であり、下糸24を外釜2の外部から中釜3の内部に連続供給して縫製作業を可能とする点を、当業者が実施することができる程度に説明されたものとはいえない。
よって、本願の発明の詳細な説明は、依然として、当業者が本願発明1及び2を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものでない。

第4 当審の判断
1.発明の詳細な説明の記載内容
(1)発明の詳細な説明(平成30年5月8日付け手続補正書)には、次の内容が記載されている。
ア.発明が解決しようとする課題
「【0019】
ボビンを備えたミシンからボビンを無くし、継手6を介して下糸防護導管5で、下糸24を、外釜2外部から中釜3内部に連続供給して縫製作業を行うには、外釜2と中釜3の間の隙間内で、上糸25が下糸24「下糸防護導管5(2)」に絡まる課題を解決する。
【0020】
そこで本発明は、中釜3に下糸防護導管5(2)と鋼板5dを取り付け、下糸24を、外釜2の外部から中釜3の内部に連続供給して縫製作業を可能とする、ボビンレス下糸連続供給装置を提供することを目的とする。」
イ.課題を解決するための手段
「【0021】
上記課題と目的を達成するために、図9参照、請求項1のボビンレス下糸連続供給装置は、駆動機構により外釜2を回転させる回転軸1と、中釜3の周りを回転する外釜2と、ボビンケース4に下糸24を供給する中釜3と、中釜3にセットしボビンケース糸出口4cに下糸24を供給するボビンケース4と、下糸24を外釜2外部より中釜3内部に導入する下糸防護導管5と、上糸25が下糸防護導管5(2)に絡まるのを防ぐ鋼板5dを取り付けた下糸防護導管5(2)と、外釜2に取付け下糸防護導管5をしっかり支える継手6と、下糸防護導管5(1)をミシン底部に取付け固定する支持金具7と、鋼板5dを取り付けた下糸防護導管5(2)を中釜3内部に取付け固定する下糸防護導管取付け金具8と、を備えている。」
ウ.発明の効果
「【0078】
労働集約型の生産工程を改善し、ミシンの高速化と自動化により、生産性を高め、人件費の削減によりコスト競争力を強め、安価で高品質の商品を大量に市場に供給することができる。」

(2)発明の詳細な説明における上記記載からみて、本願発明1及び2は、「下糸24」を「外釜2の外部から中釜3の内部に連続供給」することを前提として、その上でボビンから下糸を供給することなしに「縫製作業を可能」とする「ボビンレス下糸連続供給装置」を得ることを目的としているものと認められる。

2.ミシンの原理に関する技術常識
一般に、ミシンにより、布地を糸により縫う原理は、以下のようなものである。なお、技術常識を示すものとして、実公平5-8952号公報(「従来の技術」及び第4図)や、「増補改訂最新裁縫ミシン教科書全書」(吉田元著、家庭教育社発行 昭和29年2月1日 25-49頁ミシンの機構参照)の記載を参照。
動作1:上糸を伴った針を布地を貫いて下に動かす。
動作2:針が布地の下にさがっている間に上糸を緩め、上糸をループ状にし、このループ部分に回転釜の回転運動によって回転釜の剣先を挿入して、ループ部分を回転釜の回転に伴って連れて回転するようにする。
動作3:回転釜を更に回転させ、回転釜内部に保持するボビンの周囲に上糸のループ部分を通す(上糸のループ部分がボビンをくぐる)ことにより、ボビンが保持する下糸を上糸に交差させる。
動作4:針を上昇させ、上糸を上に強く引っ張って、交差させた下糸を持ち上げて縫い目を形成する。
動作5:一個の縫い目が完成し、針が上昇している間に布目を一目づつ前方に送る。

「 実公平5-8952号公報 1:回転釜 2:ボビン


「 増補改訂最新裁縫ミシン教科書全書」ミシンの機構 ミシンの原理 37頁



3.本願の発明の詳細な説明記載の「ボビンレス下糸連続供給装置」により、ミシンの縫い目を形成することが可能か否かについて
(1)上記2.で述べたミシンの原理に基づけば、ミシンが縫うためには、下糸と上糸が交差する際、下糸のうち、布に縫われていない部分の全体を、上糸のループがくぐることが必要である。
従来のミシンは、その下糸の縫われていない部分を全てボビンに巻かれたものとし、そのボビンを上糸のループにくぐらせることで実現していた。
本願発明は、「ボビンレス」であり、下糸は従来のボビンに巻かれた状態でなく、下糸防護導管5から中釜3に供給するものとされる。
この下糸防護導管5に供給される下糸と上糸のループとの関係について本願明細書の記載を以下に参照する。
(2)ア.下糸24と上糸25により縫い目を形成する過程については、段落【0065】?【0077】(図9?図12)にその説明がなされている。
まず、下糸24は巻かれた状態で糸立て台21に立てられている。そして、そのような下糸24が、上糸25と縫い目をつくるまでについてみてみると次のとおりである。(下線部は、当審で付与したもので、下線部の記載は下糸24に関する記載である。)
(ア)「図11参照、中釜3にボビンケース4をセットする。中釜中心軸3aの糸通り孔3eは、ボビンの役目をはたし、良好な下糸24をボビンケース糸出口4cに連続供給する。」(段落【0067】)
(イ)「下糸24通しは、図9と図11参照、多巻きした下糸24を、糸立て台21に乗せて、糸調節糸掛け18を通り、糸通し器で、下糸防護導管5(3)糸入り口5aより下糸防護導管5(1)内に入り、継手6を介して下糸防護導管5(2)糸出口5bより中釜3内部に導入し、中釜中心軸糸通り孔3eに通す。中釜中心軸糸通り孔3eに供給された下糸24は、ボビンケース4に切られている溝4eより、糸調子ばね4dの中心部の下部にある糸孔に引き入れる、そしてボビンケース糸出口4cに連続供給される。
縫い始めに、ボビンケース糸出口4cとノド板針孔15の間の空間に下糸24を張る。図9参照、左手で針11から出ている上糸25の端を糸の緩む程度に軽く持ち、ハズミ車19を静かに回す。針11は一度下降した後天秤16が上昇して最高点に達したらハズミ車19を止めて上糸25を引き出す、ボビンケース糸出口4cより約5cm出ている下糸24が上糸25に絡まって出てくる、この時下糸24はボビンケース糸出口4cとノド板針孔15の間の空間に張られる、図12の(1)参照。上糸25は下糸24と共に押えの下を通して向こう側に出し、布を押さえの下に入れてから押えを降し縫い始める。」(段落【0068】)
(ウ)「外釜2の回転に伴う上糸25の遷移状態を図12で説明する。
上糸25は外釜二枚剣先2aに捕捉されループ状になり、外釜二枚剣先2aの下側と上側に分けられ、時計と反対回りに、中釜3と下糸防護導管5(2)及び鋼板5dの周りを回っている。」(段落【0069】)
(エ)「図12の(1)は、図10参照、外釜二枚剣先2aが上糸25を捕捉する直前に、外釜内側面2fと鋼板外側面5hが接触し、鋼板5dが外釜二枚剣先根元部2iと中釜押さえ根元部2jとの間の対向空間2m(1)を塞ぎ、中釜外側面3gと鋼板内側面5g及び下糸防護導管5(2)の間に隙間23を形成する。ボビンケース糸出口4cとノド板針孔15の間の空間に下糸24が張られている、・・・」(段落【0070】)
(オ)「図12の(2)は、外釜2が回転するに従い、外釜側面ガイドレール溝2eと中釜側面ガイドレール切欠部3f(1)が篏合する。外釜二枚剣先2aの下側に回り込んだ上糸ループの一端は、外釜二枚剣先2aの後部の剣先2kに引き掛かり、中釜側面ガイドレール3fの上部を通過し、中釜側面ガイドレール切欠部3f(1)に当接し、その当接位置に残り、中釜外側面3gと鋼板内側面5g及び下糸防護導管5(2)の間の隙間23内に進入する。
外側二枚剣先2aの上側に回り込んだ上糸ループの一端は釜の外部を遷移している。外釜2が回転するに従い約11時の時点でボビンケース糸出口4cとノド板針孔15の間の空間に張られている下糸24の下側を通過する。」(段落【0071】)
(カ)「図12の(3)は、更に外釜2は回転するに従い、釜の内部お遷移している上糸ループの一端は、中釜側面ガイドレール切欠部3f(1)に当接し、その当接位置に残り、空間3j内で下糸防護導管5(2)の上部を横切り通過し、外釜内側面2fと中釜外側面3gの間の隙間内に進入する。
釜の外部お遷移している上糸ループの一端は、ボビンケース糸出口4cとノド板針孔15の間の空間に張られている下糸24の下側を通過し、釜の外部を遷移する。」(段落【0072】)
(キ)「図12の(4)は、更に外釜2は回転するに従い、釜の内部を遷移している上糸ループの一端は、外釜二枚剣先2aの後部剣先2kより外れ、下降し、中釜側面ガイドレール切欠部3f(1)より離れ、中釜外側面3gと下糸防護導管5(2)及び鋼板5dの間の隙間23内を中釜側面ガイドレール切欠部3f(2)に向かって移動し、中釜底部3dをくぐり、下糸防護導管5(2)の上部を横切り、通過し、外釜底部2cと中釜底部3dの間の隙間内に進入する。
釜の外部を遷移している上糸ループの一端は、約8時の時点で、ボビンケース糸出口4cとノド板針孔15の間の空間に張られている下糸24の下側を通過し、釜の外部を遷移している。」(段落【0073】)
(ク)「図12の(5)は、更に外釜2は回転し釜の内部を遷移している上糸ループの一端は、最下点、6時で下糸防護導管5(2)の上部を横切り、継手軸6aの頭部を跨ぎ、上昇に転じる。
ボビンケース糸出口4cとノド板針孔15の間の空間に張られている下糸24の先端部は、布押さえ金にてノド板針孔15に押さえつけられ止められているため、上糸25は下糸24の先端部を跨ぐことができず、下糸24の下側を通過した後に、下糸24の上側を通過するため、上糸25は、下糸24を絡めて、中釜中心軸3aの頭部を跨ぎ上昇に転じる。図9参照。」(段落【0074】)
(ケ)「図12の(6)は、外釜2は更に回転し、外釜底部2cの表面と中釜底部3dの間の隙間内を上昇した上糸ループの一端は、中釜底部3dをくぐり、中釜外側面3gと下糸防護導管5(2)及び鋼板5dの間の隙間23内に戻り、中釜側面ガイドレール切欠部3f(2)に当接し、その当接位置に残り、外釜二枚剣先2aの剣先部に引き掛かっている。」(段落【0075】)
(コ)「図12の(7)は、図9参照、外釜二枚剣先2aの上側に回り込み、外釜2の外部を遷移している上糸ループの一端は、最下点6時で中釜中心軸3aの頭部を跨ぎ、外釜二枚剣先2aの根元部2iから徐々に剣先部に移動し、中釜止め金具13と中釜止め窪み14との間の隙間をくぐり抜け、外釜二枚剣先2aより外れ、ループ状になり、中釜側面ガイドレール切欠部3f(2)より離れ、中釜押さえ2bの剣先部に引き掛かる。」(段落【0076】)
(サ)「図12の(8)は、図9参照、更に外釜2は回転し、上糸25は、もう少しで一回転しようとする手前で、中釜外側面3gと下糸防護導管5(2)及び鋼板5dの間の隙間23内より出て、中釜押さえ2bの剣先部から外れ、ボビンケース糸出口4cとノド板針孔15の間の空間に張られている下糸24を上糸25のループ内に抱え込んで、天秤16でノド板針孔15に引き上げられ、布は送り歯で送られ縫い目を形成する。」(段落【0077】)
イ.上記(ア)及び(イ)の記載より、下糸24は、糸立て台21に立てられた巻かれた状態からほどかれ下糸防護導管5内を通過してボビンケース糸出口4Cまで供給され、上記(エ)の記載より、その供給された下糸24は、ボビンケース糸出口4Cとノド板針孔15の間の空間に張られて、上糸25のループに交差し、抱え込まれるものとされる。すなわち、下糸24のうち縫われていない部分は、糸立て台21とボビンケース糸出口4Cと、その両者の間に延在することになる。
上記3.(1)で述べたように、縫い目ができるためには、下糸と上糸が交差する際、下糸の縫われていない部分全体を、上糸のループがくぐることが必要である。すなわち、本願発明では、糸立て台21とボビンケース糸出口4Cとの間に下糸が連続して存在するから、糸立て台21とボビンケース糸出口4Cを上糸のループにくぐらせることが必要である。
しかしながら、上記(ア)?(サ)にボビンケース糸出口4cとノド板針孔15の間の空間に張られている下糸24と上糸25を交差させることは記載されているものの、糸立て台21からボビンケース糸出口4Cとの間に連続して存在する下糸を上糸のループがくぐるための機構についての記載はない。また、他の記載をみても、上糸のループが下糸の縫われていない部分全体をくぐることを可能とさせるための機構について何ら示されていない。
仮に、くぐることができないとすると、上糸25は、ボビンケース糸出口4Cとノド板針孔15の間に張られた下糸と交差するだけでなく、糸立て台21からの下糸とも交差することになり、縫い目は形成できず、ミシンとして用をなすものとはいえない。

ウ.したがって、本願の発明の詳細な説明の記載は、上糸25のループが下糸24の縫われていない部分全体をくぐるための手段が不明であり、下糸24を外釜2の外部から中釜3の内部に連続供給して縫製作業を可能とする点を、当業者が実施することができる程度に説明されたものとはいえない。

(3)よって、本件出願の発明の詳細な説明は、依然として、当業者が本願発明1及び2を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものでない。

第5 むすび
以上のとおり、本願は、発明の詳細な説明の記載が特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていないから、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2018-07-23 
結審通知日 2018-07-31 
審決日 2018-08-20 
出願番号 特願2015-161370(P2015-161370)
審決分類 P 1 8・ 536- WZ (D05B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 笹木 俊男  
特許庁審判長 久保 克彦
特許庁審判官 井上 茂夫
蓮井 雅之
発明の名称 ボビンレス下糸連続供給装置  

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