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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H01L
管理番号 1345217
審判番号 不服2017-7426  
総通号数 228 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-12-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-05-23 
確定日 2018-10-09 
事件の表示 特願2015- 5590「イメージセンシングデバイスとその製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 4月 4日出願公開,特開2016- 46510〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,平成27年1月15日(パリ条約による優先権主張2014年8月20日,アメリカ合衆国)に出願された特願2015-5590号であり,その手続の経緯は,概略,以下のとおりである。
平成28年 4月28日:拒絶理由通知(起案日)
平成28年 8月 3日:意見書
平成28年 8月 3日:手続補正書
平成29年 1月27日:拒絶査定(起案日)
平成29年 5月23日:審判請求
平成29年 5月23日:手続補正書(以下,この手続補正書による手続補正を「本件補正」という。)
平成29年12月27日:拒絶理由通知 (起案日)
平成30年 4月 3日:意見書

第2 本願発明
本件補正によって補正された特許請求の範囲の請求項1(以下「本願発明」という。)は,以下のとおりである。
「【請求項1】
イメージセンシングデバイスであって,
複数のフォトセンシング素子を有するアクティブ層と,
前記フォトセンシング素子のうちの一つの上に設置され,且つ,赤色(R),緑色(G)および青色(B)から構成される群から選択される色を有するカラーパターンと,
前記カラーパターン上に設置されるマイクロレンズと,
前記カラーパターンに隣接し,且つ,前記フォトセンシング素子のうちの別の一つの上に位置する透過パターンと,を有し,
前記透過パターンは,カラーフィルター部分とマイクロレンズ部分を有し,前記マイクロレンズと前記カラーパターン間の屈折率の差の絶対値は,0.3未満で,前記透過パターンのマイクロレンズ部分と前記カラーフィルター部分間の屈折率の差がなく,
前記マイクロレンズの上面と前記透過パターンの前記マイクロレンズ部分の上面とでは高さが異なることを特徴とするイメージセンシングデバイス。」

第3 拒絶の理由
平成29年12月27日(起案日)の当審が通知した拒絶理由は,概略,次のとおりのものである。
本願発明は,本願の出願前に日本国内又は外国において,頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった以下の引用文献1に記載された発明及び引用文献2あるいは引用文献3ないし5に記載された事項に基づいて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものである。
あるいは,引用文献2に記載された発明及び引用文献1,6に記載された事項に基づいて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものである。
したがって,本願発明は特許法29条2項の規定により特許を受けることができない,というものである。

1.特開2012-074521号公報
2.特開2009-026808号公報
3.特開平07-038075号公報
4.特開2006-196634号公報
5.特開平09-116127号公報
6.特開2013-115335号公報

第4 引用文献の記載及び引用発明
1 引用文献1の記載
引用文献1には,以下の事項が記載されている。(下線は,当審で付した。以下同じ。)
「【発明の効果】
【0012】
以上説明したように本発明によれば,光フィルタ間に混色防止膜を設けた構成の固体撮像装置において,光フィルタの側壁に自己整合的に混色防止膜を形成する。これによって光フィルタ間での混色を防止しながらも光フィルタの専有面積を拡大して光電変換部での受光量の向上を図ることが可能になる。」

「【0015】
<1.固体撮像装置の概略構成例>
図1に,本発明の各実施形態の製造方法を適用して作製される固体撮像装置の一例として,MOS型の固体撮像装置の概略構成を示す。
【0016】
この図に示す固体撮像装置1は,例えば単結晶シリコンからなる基板11の一表面側に光電変換部を含む複数の画素2が規則的に2次元的に配列された画素領域(いわゆる撮像領域)3と,その周辺回路部とを有して構成される。
【0017】
画素2は,例えばフォトダイオードからなる光電変換部と,複数の画素トランジスタ(いわゆるMOSトランジスタ)を有して成る。
【0018】
各画素2における複数の画素トランジスタは,例えば転送トランジスタ,リセットトランジスタ及び増幅トランジスタの3つのトランジスタで構成することができる。その他,選択トランジスタ追加して4つのトランジスタで構成することもできる。単位画素の等価回路は通常と同様であるので,詳細説明は省略する。
【0019】
画素2は,1つの単位画素として構成することができる。また,画素2は,共有画素構造とすることもできる。この画素共有構造は,複数のフォトダイオードと,複数の転送トランジスタと,共有する1つのフローティングディフージョンと,共有する1つずつの他の画素トランジスタとから構成される。すなわち,共有画素では,複数の単位画素を構成するフォトダイオード及び転送トランジスタが,他の1つずつの画素トランジスタを共有して構成される。
【0020】
また特に本発明においては,各画素2における光電変換部の上方に,後で説明する層内レンズやオンチップレンズが配置され,各光電変換部への集光率の向上が図られている。また層内レンズ-オンチップレンズ間には透明な白色フィルタや各色のカラーフィルタ等の光フィルタが分配配置され,特定の波長の光が選択されて入射される構成となっている。」

「【0028】
<2.第1実施形態>
[W市松配列の固体撮像装置の製造方法(1)]
第1実施形態の製造方法を説明するに先立ち,本第1実施形態の製造方法を適用して作製されるW市松配列の固体撮像装置における光フィルタの配列を説明する。図2は,光フィルタのW市松配列の配列状態を示す平面図である。
【0029】
以下の第1?第4実施形態の製造方法を適用して作製されるW市松配列の固体撮像装置は,光電変換部上の光フィルタとして,赤色領域から青色領域までの光を透過する光フィルタ,つまり無色透明な光フィルタ(白色フィルタWと記す)を用いている。これらの白色フィルタWは,基板の表面側に配列された複数の光電変換部のうち,行方向および列方向のそれぞれに1つ置きに配置された光電変換部上に市松配列され,それぞれが独立した島状のパターンとして設けられている。
【0030】
市松配列された白色フィルタW-白色フィルタW間には,一行置きに緑色領域の光を透過する光フィルタ(緑色フィルタGと記す)が配置されている。さらに残りの白色フィルタW-白色フィルタW間には,赤色領域の光を透過する光フィルタ(赤色フィルタRと記す)と,青色領域の光を透過する光フィルタ(青色フィルタBと記す)とが,行方向に交互に配置されている。これらの緑色フィルタG,赤色フィルタR,および青色フィルタBは,それぞれが独立した島状のパターンとして白色フィルタW間に市松配列されている。
【0031】
このような光フィルタ配列を有する固体撮像装置において,特に本第1実施形態の製造方法は,各光フィルタW,G,R,B間に,ここでの図示を省略した混色防止膜を設けた構成を製造する第1例であり,以下基板側から順に製造方法を説明する。
【0032】
先ず,図3に示すように,例えば単結晶シリコンのような半導体材料からなる基板11の表面側に行列方向に画素2を設定して配列させ,例えばフォトダイオードからなる光電変換部21を各画素2に形成する。また,ここでの図示を省略した素子分離や電荷蓄積部等の不純物領域を形成する。次に,基板11上の光電変換部21を囲む位置に,電荷の読出電極,画素駆動配線,垂直信号線等の配線23を形成する。これらの配線23は,例えば多層の配線23を層間絶縁膜で分離してなる多層配線構造の配線層25として形成する。その後,配線層25上に,各光電変換部21に対応して層内レンズ27を形成し,これを覆う状態で平坦化絶縁膜29を形成する。尚,光電変換部21の上方に位置する平坦化絶縁膜29までの各層は,例えば必要波長領域(可視光領域)の全域に対しての光透過性が良好な材料で構成されていることとする。
【0033】
以上までの工程は,特に製造手順が限定されることはなく,通常の固体撮像装置の製造方法と同様の手順で行うことができる。次の工程からが本第1製造方法に特徴的な工程となる。
【0034】
先ず図4(1)に示すように,平坦化絶縁膜29上に赤色フィルタRをパターン形成する。赤色フィルタRは,例えば赤色顔料または赤色染料を含有するフォトレジスト材料を用い,フォトリソグラフィプロセスを適用して形成される。各赤色フィルタRは,図2の平面図を用いて説明した位置において,目的とする画素2の上部を広く覆う独立した島状にパターン形成される。
【0035】
次に図4(2)に示すように,平坦化絶縁膜29上に青色フィルタBをパターン形成する。青色フィルタBは,例えば青色顔料または青色染料を含有するフォトレジスト材料を用い,フォトリソグラフィプロセスを適用して形成される。各青色フィルタBは,図2の平面図を用いて説明した位置において,目的とする画素2の上部を広く覆う独立した島状にパターン形成される。
【0036】
さらにここでは図示を省略したが,引き続き平坦化絶縁膜29上に緑色フィルタGをパターン形成する。緑色フィルタGは,例えば緑色顔料または緑色染料を含有するフォトレジスト材料を用い,フォトリソグラフィプロセスを適用して形成される。各緑色フィルタGは,図2の平面図を用いて説明した位置において,目的とする画素2の上部を広く覆う独立した島状にパターン形成される。
【0037】
以上のようにして,平坦化絶縁膜29上に,それぞれ独立した島状の赤色フィルタR,青色フィルタB,および緑色フィルタGを,第1パターンとして目的とする画素2上に市松配列させた状態で形成する。ただし,図2を参照し,平面視した状態での緑色フィルタGの四隅と,赤色フィルタRおよび青色フィルタBの四隅とは,これらの各色フィルタR,B,Gを形成する際のフォトリソグラフィプロセスの合わせ精度の範囲内であれば,互いに接合されていても良い。
【0038】
以上のような各色フィルタR,B,Gの形成順は,特に限定されることはなく,各色フィルタR,B,Gの形成に用いる光フィルタ材料の特性等によって適宜の順序で形成されることとする。
【0039】
次に,図4(3)に示すように,第1パターンとしての各色フィルタR,B,G(緑色フィルタGは図示省略)が形成された平坦化絶縁膜29上に,これらを覆う状態で第1パターンよりも薄い膜厚で混色防止膜31を成膜する。ここで成膜する混色防止膜31は,各色フィルタR,B,Gよりも屈折率の低い材料からなることとする。混色防止膜31の材質は,各色フィルタR,B,Gよりも屈折率が低ければ,酸化シリコン,窒化シリコン,酸窒化シリコン,炭化酸化シリコンなどの無機の絶縁性材料が用いられる。この他にも有機の絶縁性材料,さらには導電性材料を用いることができ,各色フィルタR,B,G側からの光照射に対して高い反射率が確保される材料であれば良い。例えば,各色フィルタR,B,Gの屈折率が約1.65である場合,混色防止膜31として酸化シリコン(SiO_(2):屈折率1.45)を用いる。
【0040】
このような混色防止膜31の成膜は,既に形成されている各色フィルタR,B,Gの耐熱温度未満で成膜が可能な低温CVD(Chemical Vapor Deposition:化学気相成長)等により,等方的に成膜することが重要である。これにより,各色フィルタR,B,Gのパターン形状を維持した状態で,各色フィルタR,B,Gの側壁に混色防止膜31を薄膜状態で成膜する。
【0041】
次に,図4(4)に示すように,混色防止膜31を異方性エッチングすることにより,各色フィルタR,B,Gの側壁のみに混色防止膜31を残し,各色フィルタR,B,G上および平坦化絶縁膜29上の混色防止膜31を除去する。
【0042】
その後,図5(1)に示すように,平坦化絶縁膜29上に,各色フィルタR,B,Gおよび側壁の混色防止膜31を埋め込む程度に十分な膜厚で,レンズ材33を成膜する。レンズ材33は,赤色領域から青色領域までの光を透過する無色透明な材料で構成され,例えば塗布成膜によって行う。特にここでは,後に説明するようにこのレンズ材33を光フィルタ材料として用いて白色フィルタ(W)が構成されるため,混色防止膜31よりも屈折率の高い材料をレンズ材33として用いることとする。一例として,混色防止膜31を酸化シリコン(SiO_(2):屈折率1.45)で形成した場合であれば,レンズ材33として屈折率1.6程度の有機材料が用いられる。
【0043】
次いで,図5(2)に示すように,レンズ材33上において,全ての画素2上に対応させた位置に,リフロー性を有する材料からなるマスク35をパターン形成する。
【0044】
その後,図5(3)に示すように,加熱によってマスク35をリフローさせてレンズ形状に成型する。
【0045】
しかる後,図5(4)に示すように,レンズ形状にリフローさせたマスク35上から,マスク35およびレンズ材33の表面層をエッチングし,リフローさせたマスク35のレンズ形状をレンズ材33の表面側に転写する。これにより,各色フィルタR,B,Gの上方にレンズ材を成形して成るオンチップレンズ33aが形成される。これと共に,各色フィルタR,B,G間には,レンズ材33が各色フィルタR,B,Gの膜厚分だけ残された白色フィルタWと,この上部のレンズ材からなるオンチップレンズ33aとが一体に形成される。
【0046】
これらの白色フィルタWは,市松配列された各色フィルタR,B,G間に,それぞれ独立した島状の第2パターンとして目的とする画素2上に市松配列される。また各白色フィルタWと,隣接する各色フィルタR,B,Gとの間には,混色防止膜31が挟持される。ただし,図2を参照し,平面視した状態での各白色フィルタWの四隅は,各色フィルタR,B,Gを形成する際のフォトリソグラフィプロセスの合わせ精度の範囲内であれば,互いに接合されていても良い。
【0047】
以上により,第1実施形態の固体撮像装置1-1が得られる。ここで得られた固体撮像装置1-1は,基板11の表面側に配列された光電変換部21上に対応して,独立した島状の第1パターンとして色フィルタR,B,Gが市松配列されている。さらにこれらの色フィルタR,B,G間に,独立した島状の第2パターンとして白色フィルタWが配置されたものとなる。また白色フィルタWと各色フィルタR,B,Gとの間には,これらのフィルタよりも屈折率の低い材料からなる混色防止膜31が挟持された構成となる。
【0048】
図6には,本第1実施形態で得られた固体撮像装置1-1の要部を拡大した断面構成図を示す。この図に示すように,固体撮像装置1-1に入射した光hは,オンチップレンズ33aで集光され,各オンチップレンズ33aの下方に配置された各光フィルタW,R,B,Gに入射される。このうち,オンチップレンズ33aで集光されて斜め方向から光フィルタW,R,B,Gに入射した光hは,光フィルタW,R,B,G間に挟持された低屈折率の混色防止膜31で反射される。これにより,例えば白色フィルタWに対して斜め方向から入射した光hが,隣接して配置された青色フィルタBの下方の光電変換部21に入射することが防止される。
【0049】
ここで例えば青色フィルタBが屈折率1.65,白色フィルタWの屈折率1.6の場合を考えると,その臨界角は76°となる。この場合,混色防止膜31が設けられていなければ,白色フィルタWに斜め方向から入射した光は,屈折率の高い青色フィルタBに取り込まれ,青色領域を外れた波長領域の受光出力が青色フィルタBの画素から検出される,いわゆる「混色」が発生する。これに対して,第1実施形態の固体撮像装置1-1では,白色フィルタWと青色フィルタBとの間に,これらよりも屈折率の低い混色防止膜31を挟持した構成となっている。このため,白色フィルタWに斜め方向から入射して光は混色防止膜31で反射され,青色フィルタB側に取り込まれることはない。したがって,青色フィルタBが配置された画素から,青色領域を外れた波長領域の受光出力が青色フィルタBの画素から検出されることを防止できる。以上により,本第1実施形態で得られた構成の固体撮像装置1-1は,混色が防止され画質の向上を図ることが可能になる。
【0050】
また特に本第1実施形態の製造方法では,先ず島状の第1パターンとして形成した各色フィルタR,B,Gの側壁に混色防止膜31を自己整合的に形成する。その後,各色フィルタR,B,Gとの間に混色防止膜31を挟持する状態で第2パターンとして白色フィルタWを形成する。このため,混色防止膜31の形成においては,パターン形成される各光フィルタW,R,B,Gとの位置合わせのマージンを考慮する必要がなく,各色フィルタR,B,Gの側壁においての混色防止膜31の膜厚dを必要最低限の膜厚に設定することができる。したがって本第1実施形態の製造方法によれば,混色防止膜を配置したことで画質の向上が図られた構成でありながらも,光フィルタW,R,B,Gの専有面積を最大限に拡大でき,さらに画質の向上が図られた固体撮像装置を得ることが可能になる。」

2 引用発明1
上記1からみて,引用文献1には,以下の発明が記載されている(以下「引用発明1」という。)。
「(1)単結晶シリコンのような半導体材料からなる基板11の表面側に行列方向に画素2を設定して配列させ,例えばフォトダイオードからなる光電変換部21を各画素2に形成する工程と,
(2)基板11上の光電変換部21を囲む位置に,多層配線構造の配線層25を形成し,その後,層内レンズ27,平坦化絶縁膜29を形成する工程と,
(3)平坦化絶縁膜29上に,目的とする画素2の上部を広く覆う独立した島状に,それぞれ独立した島状の赤色フィルタR,青色フィルタB,および緑色フィルタGを,第1パターンとして形成する工程と,
(4)第1パターンとしての各色フィルタR,B,Gが形成された平坦化絶縁膜29上に,これらを覆う状態で第1パターンよりも薄い膜厚で混色防止膜31を成膜する工程であって,
各色フィルタR,B,Gの屈折率が約1.65であり,混色防止膜31として酸化シリコン(SiO_(2):屈折率1.45)を用いる工程と,
(5)混色防止膜31を異方性エッチングすることにより,各色フィルタR,B,Gの側壁のみに混色防止膜31を残し,各色フィルタR,B,G上および平坦化絶縁膜29上の混色防止膜31を除去する工程と,
(6)平坦化絶縁膜29上に,各色フィルタR,B,Gおよび側壁の混色防止膜31を埋め込む程度に十分な膜厚で,レンズ材33を成膜する工程であって,
レンズ材33は,赤色領域から青色領域までの光を透過する無色透明な材料で構成され,このレンズ材33を光フィルタ材料として用いて白色フィルタ(W)を構成するため,混色防止膜31よりも屈折率の高い,屈折率1.6程度の有機材料をレンズ材33として用いる工程と,
(7)レンズ材33上において,全ての画素2上に対応させた位置に,リフロー性を有する材料からなるマスク35をパターン形成する工程と,
(8)加熱によってマスク35をリフローさせてレンズ形状に成型する工程と,
(9)レンズ形状にリフローさせたマスク35上から,マスク35およびレンズ材33の表面層をエッチングし,リフローさせたマスク35のレンズ形状をレンズ材33の表面側に転写する工程であって,
これにより,各色フィルタR,B,Gの上方にレンズ材を成形して成るオンチップレンズ33aが形成すると共に,各色フィルタR,B,G間に,レンズ材33が各色フィルタR,B,Gの膜厚分だけ残された白色フィルタWと,この上部のレンズ材からなるオンチップレンズ33aとが一体に形成される工程と,
を含む方法によって製造されたW市松配列の固体撮像装置。」

3 引用文献2の記載
引用文献2には,以下の事項が記載されている。
「【請求項1】
入射光を光電変換して信号電荷を生成する複数個の受光素子が半導体基板内に2次元マトリクス状に配列されてなる固体撮像装置において,
所定の位置に配列された各受光素子の入射側に,複数種類のカラーフィルタのうちいずれかが配置され,各カラーフィルタの入射側に第1のマイクロレンズが配置されてなる複数の色画素と,
少なくとも1つの前記色画素に隣接する位置に配列された各受光素子の入射側に,カラーフィルタを介さず,前記第1のマイクロレンズより頂点位置が低い第2のマイクロレンズが配置されてなる複数の白画素と,
を備えたことを特徴とする固体撮像装置。」

「【背景技術】
【0002】
デジタルカメラ等の電子式カメラには,CCD(Charge Coupled Device)型やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)型の固体撮像装置が用いられている。この固体撮像装置としては,受光素子とカラーフィルタとを一対として画素(ピクセル)を構成し,この画素を2次元配置した単板カラー撮像方式のものが一般的である。受光素子は,光の色に依らず明るさのみを検出するものであるため,特定の色を抽出するカラーフィルタを受光素子の入射側に配置することにより,画素ごとに特定の色の光を検出している。
<途中省略>
【0005】
そこで,正方格子配列において,市松状の位置に色画素(R画素,G画素,B画素)を配置し,残りの市松状の位置に白(W)画素を配置することで,色情報と輝度情報とを区別して検出し,輝度解像度の色依存性をなくす技術が提案されている(特許文献1参照)。W画素は,カラーフィルタに代えて,光透過率の高い透明フィルタや白フィルタ等の輝度フィルタを配した,輝度と相関関係のある分光特性を有する画素であり,被写体の輝度情報を検出する。また,この技術は,輝度解像度の色依存性の回避と同時に,感度の高い固体撮像装置を実現することができ,近年の高画素化・高密度化に伴う,画素の微細化に供するものである。
【0006】
特許文献1に記載の技術では,各画素を同じ構造とした場合,色画素とW画素との感度差が非常に大きく,同一の露出条件では,W画素からの輝度信号が色画素からの色信号に比べて約4倍程度になるため,色信号と輝度信号とのバランスが悪く,高品位なカラー画像を得ることができないとの指摘がなされている(特許文献2参照)。そこで,特許文献2では,白画素の受光面積を色画素の受光面積より小さくすることにより,色信号と輝度信号とのバランスを向上させ,高品位なカラー画像の取得を図る技術が提案されている。
<途中省略>
【0008】
本発明は,上記課題を鑑みてなされたものであり,色画素と白画素とのサイズを同一としたまま色信号と輝度信号とのバランスを図ることができ,画素配置に制約が生じることのない固体撮像装置を提供することを目的とする。さらには,色信号と輝度信号とのバランス,及び,輝度解像度の列方向と行方向とに関するバランスを同時に向上させ,より高品位なカラー画像を撮像することができる固体撮像装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために,本発明の固体撮像装置は,入射光を光電変換して信号電荷を生成する複数個の受光素子が半導体基板内に2次元マトリクス状に配列されてなる固体撮像装置において,所定の位置に配列された各受光素子の入射側に,複数種類のカラーフィルタのうちいずれかが配置され,各カラーフィルタの入射側に第1のマイクロレンズが配置されてなる複数の色画素と,少なくとも1つの前記色画素に隣接する位置に配列された各受光素子の入射側に,カラーフィルタを介さず,前記第1のマイクロレンズより頂点位置が低い第2のマイクロレンズが配置されてなる複数の白画素と,を備えたことを特徴とする。これにより,第1のマイクロレンズは,第2のマイクロレンズに比して入射角度範囲が広がり,斜め入射光の集光効率が向上する。
<途中省略>
【発明の効果】
【0014】
本発明の固体撮像装置は,所定の位置に配列された各受光素子の入射側に,複数種類のカラーフィルタのうちいずれかが配置され,各カラーフィルタの入射側に第1のマイクロレンズが配置されてなる複数の色画素と,少なくとも1つの前記色画素に隣接する位置に配列された各受光素子の入射側に,カラーフィルタを介さず,第1のマイクロレンズより頂点位置が低い第2のマイクロレンズが配置されてなる複数の白画素とを備えるので,第1のマイクロレンズは,第2のマイクロレンズに比して入射角度範囲が広がり,斜め入射光の集光効率が向上する。これにより,色画素から得られる色信号の強度が白画素から得られる輝度信号の強度に比して相対的に高まり,色信号と輝度信号とのバランスが改善される。また,色画素と白画素とのサイズを同一としたまま色信号と輝度信号とのバランスを図ることができるため,画素配置に関する制約は生じない。」

「【0026】
次に,固体撮像装置2の製造方法について,図5?図7を用いて説明する。なお,図5?図7は,図1のI-I線に沿う断面における製造工程を示す。まず,半導体基板3中に不純物イオンを注入することにより,前述の受光素子PDや転送チャネル13を形成した後,図5(A)に示すように,半導体基板3上に,転送電極15や遮光膜17をパターニング形成し,さらに全面を覆うように平坦化層18を形成する。平坦化層18は,前述した方法にて形成する。
【0027】
次いで,平坦化層18の表面上に,特定の顔料が含有した感光性樹脂材の塗布とフォトリソグラフィ技術によるパターニングとを繰り返すことにより,図5(B)に示すように,各色画素の形成領域に対応するように,カラーフィルタ19a?19cを形成する。なお,このとき,W画素4eの形成領域上からは,カラーフィルタ19a?19cの形成のために塗布した感光性樹脂材の残渣等を完全に除去しておく。
【0028】
次いで,図5(C)に示すように,平坦化層18及びカラーフィルタ19a?19cの表面を覆うように,透明樹脂等のマイクロレンズ形成材を堆積し,この表面を平坦化することによりレンズ層30を形成する。さらに,レンズ層30の上に感光性樹脂材を塗布し,感光性樹脂層31を形成する。なお,レンズ層30と感光性樹脂層31とは,ドライエッチングに対するエッチング比がほぼ同一の材料を用いる。
【0029】
次いで,感光性樹脂層31をフォトリソグラフィ技術によってパターニングすることにより,図6(A)に示すように,色画素の形成領域上に第1の矩形パターン31aを形成し,W画素4eの形成領域上に第2の矩形パターン31bを形成する。ここで,第2の矩形パターン31bの1辺の長さL2を,第1の矩形パターン31aの1辺の長さL1より短くする。
【0030】
次いで,熱フローを行うことより,第1及び第2の矩形パターン31a,32bを溶融させ,図6(B)に示すように,上凸状のレンズ母型31a,32bへと変形させる。上記の長さL1,L2の差異により,第2のレンズ母型31bは,第1のレンズ母型31aより小さく,高低差Hが生じる。
【0031】
次いで,第1及び第2のレンズ母型31a,32bをマスクとして,レンズ層30をエッチング(異方性のドライエッチング)することにより,レンズ母型31a,32bの形状を転写し,前述の第1及び第2のマイクロレンズ20a,21bを形成する。図7(A)は,エッチング途中の状態であり,レンズ母型31a,32bとレンズ層30とはほぼ同一のエッチング比でエッチングが進行している。図7(B)は,エッチング終了時の状態であり,第1のマイクロレンズ20aと第2のマイクロレンズ20bとの間に,高低差Hが生じている。以上説明した方法により,固体撮像装置2を製造することができる。
【0032】
なお,上記実施形態では,第1のマイクロレンズと第2のマイクロレンズとの高低差Hを,カラーフィルタの厚みとほぼ等しくするとしているが,本発明はこれに限定されるものでなく,この高低差Hは,適宜変更してよい。
【0033】
また,上記実施形態では,W画素の形成領域にて平坦化層上に直接に第2のマイクロレンズを形成しているが,本発明はこれに限定されるものでなく,平坦化層上に透明フィルタや白フィルタ等の輝度と相関関係のある分光特性を有する輝度フィルタを介して第2のマイクロレンズを形成してもよい。この場合には,輝度フィルタを色画素に設けられたカラーフィルタより薄く形成するか,または,第1のマイクロレンズと第2のマイクロレンズとの間でレンズ面の形状や曲率を異ならせることで高低差Hを生成すればよい。
【0034】
また,上記実施形態では,色画素を赤(R),緑(G),青(B)の3原色の光を検知する画素として構成しているが,本発明はこれに限定されるものでなく,色画素をシアン(C),マゼンタ(M),黄(Y)の補色光を検知する画素として構成してもよい。
【0035】
また,上記実施形態では,画素をXY方向に沿って正方格子状に配列する例を示しているが,本発明はこれに限定されるものでなく,図8に示すように,正方格子配列をXY方向に関して45°回転させた画素配列(いわゆるハニカム配列)としてもよい。
【0036】
また,上記実施形態では,色画素及び白画素を市松状に配列することにより,各白画素は4つの色画素に隣接しているが,本発明はこれに限定されるものでなく,各白画素は少なくとも1つの色画素に隣接していればよい。図9は,色画素及び白画素をストライプ状に配列した一例である。この場合,各白画素は2つの色画素に隣接している。
【0037】
また,上記実施形態では,固体撮像装置をインターライン転送方式のCCD型イメージセンサとして構成しているが,本発明はこれに限定されるものでなく,フレーム転送方式のCCD型イメージセンサやCMOS型イメージセンサ等の単板カラー撮像方式のあらゆる固体撮像装置に適用可能である。」

・図3は,引用文献2に記載された発明に係る固体撮像装置の概略縦断面図であって,上記摘記を参酌すれば,
Bフィルタ(19c)と,Rフィルタ(19a)との間の,W画素(4e)の形成領域の平坦化層(18)の上面に設けられた,
前記各フィルタと略同一の厚さを有する板状部分と,両端部が前記各フィルタから離隔し,前記板状部分からの高さが第1のマイクロレンズ(20a)の上面よりも高低差Hだけ低いマイクロレンズ状部分とからなる,第2のマイクロレンズ(20b)
の構造を見て取ることができる。

4 引用発明2
引用文献2の【0029】には,「次いで,感光性樹脂層31をフォトリソグラフィ技術によってパターニングすることにより,図6(A)に示すように,色画素の形成領域上に第1の矩形パターン31aを形成し,W画素4eの形成領域上に第2の矩形パターン31bを形成する。ここで,第2の矩形パターン31bの1辺の長さL2を,第1の矩形パターン31aの1辺の長さL1より短くする。」と記載されている。
当該記載を前提とすれば,上記3の摘記における【0030】及び【0031】に記載された「第1及び第2の矩形パターン31a,32bを溶融させ,図6(B)に示すように,上凸状のレンズ母型31a,32bへと変形させる。」,「第1及び第2のレンズ母型31a,32bをマスクとして,レンズ層30をエッチング(異方性のドライエッチング)することにより,レンズ母型31a,32bの形状を転写し,前述の第1及び第2のマイクロレンズ20a,21bを形成する。図7(A)は,エッチング途中の状態であり,レンズ母型31a,32bとレンズ層30とはほぼ同一のエッチング比でエッチングが進行している。」は,いずれも「第1及び第2の矩形パターン31a,31bを溶融させ,図6(B)に示すように,上凸状のレンズ母型31a,31bへと変形させる。」,「第1及び第2のレンズ母型31a,31bをマスクとして,レンズ層30をエッチング(異方性のドライエッチング)することにより,レンズ母型31a,31bの形状を転写し,前述の第1及び第2のマイクロレンズ20a,20bを形成する。図7(A)は,エッチング途中の状態であり,レンズ母型31a,31bとレンズ層30とはほぼ同一のエッチング比でエッチングが進行している。」の誤記と認められる。
そうすると,引用文献2には,以下の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されている。
「(a)半導体基板3中に不純物イオンを注入することにより,受光素子PD等を形成する工程と,
(b)半導体基板3上に,転送電極15や遮光膜17をパターニング形成し,さらに全面を覆うように平坦化層18を形成する工程と,
(c)平坦化層18の表面上に,特定の顔料が含有した感光性樹脂材の塗布とフォトリソグラフィ技術によるパターニングとを繰り返すことにより,各色画素の形成領域に対応するように,カラーフィルタ19a?19cを形成する工程であって,
W画素4eの形成領域上からは,カラーフィルタ19a?19cの形成のために塗布した感光性樹脂材の残渣等を完全に除去しておく工程と,
(d)平坦化層18及びカラーフィルタ19a?19cの表面を覆うように,透明樹脂等のマイクロレンズ形成材を堆積し,この表面を平坦化することによりレンズ層30を形成し,さらに,レンズ層30の上に感光性樹脂材を塗布し,感光性樹脂層31を形成する工程であって,
レンズ層30と感光性樹脂層31とは,ドライエッチングに対するエッチング比がほぼ同一の材料を用いる工程と,
(e)感光性樹脂層31をフォトリソグラフィ技術によってパターニングすることにより,色画素の形成領域上に第1の矩形パターン31aを形成し,W画素4eの形成領域上に第2の矩形パターン31bを形成する工程であって,
第2の矩形パターン31bの1辺の長さL2を,第1の矩形パターン31aの1辺の長さL1より短くする工程と,
(f)熱フローを行うことより,第1及び第2の矩形パターン31a,31bを溶融させ,上凸状のレンズ母型31a,31bへと変形させる工程であって,
上記の長さL1,L2の差異により,第2のレンズ母型31bは,第1のレンズ母型31aより小さく,高低差Hが生じる工程と,
(g)第1及び第2のレンズ母型31a,31bをマスクとして,レンズ層30をエッチング(異方性のドライエッチング)することにより,レンズ母型31a,31bの形状を転写する工程であって,
(i)第1のマイクロレンズ20a,及び,
(ii)カラーフィルタ19cとカラーフィルタ19aとの間のW画素4eの形成領域の平坦化層18の上面に設けられた,前記各カラーフィルタと略同一の厚さを有する板状部分と,両端部が前記各フィルタから離隔し前記板状部分からの高さが第1のマイクロレンズ20aよりも低いマイクロレンズ状部分とからなる,第2のマイクロレンズ20bを形成する工程と,
を含む方法により製造された,第1のマイクロレンズ20aの上面と第2のマイクロレンズ20bの上面との間に,高低差Hが生じている固体撮像装置2。」

5 引用文献3の記載
「【請求項3】 半導体基板に光電変換部を設け,この光電変換部を樹脂膜で被覆し,かつこの樹脂膜の表面に前記光電変換部に光を集光させるマイクロレンズを設けた固体撮像装置において,同一半導体基板に設けた光電変換部を赤色光用,緑色光用,青色光用の各光電変換部として構成するとともに,各色光用の光電変換部に対応して設けた各マイクロレンズの焦点距離を相違させ,各色光がそれぞれの光電変換部に適切に集光されるように構成したことを特徴とする固体撮像装置。」

「【0007】そして,マイクロレンズ9と樹脂膜8を,視感度の高い緑色の波長の光に対して設計した場合,波長の短い青色光では光線10bに示すように焦点距離がフォトダイオード2の表面の上方に位置され,絞りを開いて斜め方向から光が入射する場合には焦点位置はさらに上方に移動するため,遮光膜7で制限される光線は緑色光に比べ多くなる。逆に赤色光の場合には焦点位置はフォトダイオード2の内部下方に位置するが,遮光膜7で制限される光線が多くなることは青色光の場合と同様である。したがって,カメラレンズの絞りを開いたときの信号出力の低下量は緑色光に比べ青色光と赤色光で多く発生する。
【0008】なお,このような問題はマイクロレンズの径が大きい程顕著であるため,カメラの感度を高めるにマイクロレンズの径を大きくしたときには前記した問題は一層大きくなり,カメラの高感度化が制約されるという問題になる。本発明の目的は,カメラの絞りを開いたときの色バランスの崩れを防止して高感度なカメラを得ることを可能にした固体撮像装置を提供することにある。」

「【0009】
【課題を解決するための手段】本発明の固体撮像装置は,赤色光用,緑色光用,青色光用としてそれぞれ固体撮像装置を独立に形成し,かつ各固体撮像装置に設けられる樹脂膜の厚さを相違させ,各色光がそれぞれの光電変換部に適切に集光されるように構成する。また,赤色光用,緑色光用,青色光用としてそれぞれ固体撮像装置を独立に形成し,かつ各固体撮像装置の各マイクロレンズの焦点距離を相違させ,各色光がそれぞれの光電変換部に適切に集光されるように構成する。また,本発明を単板カラー固体撮像装置として構成する場合には,同一半導体基板に設けた光電変換部を赤色光用,緑色光用,青色光用の各光電変換部として構成するとともに,各色光用の光電変換部に対応して設けた各マイクロレンズの焦点距離を相違させ,各色光がそれぞれの光電変換部に適切に集光されるように構成する。この場合,各色光用の光電変換部に対応する位置には,対応する色光のみを透過させるフィルタを樹脂膜中に形成する。或いは,各色光用の光電変換部に対応して設けたマイクロレンズを,各色光のみを透過させるフィルタ材で形成する。」

「【0013】次に,図2(b)のように,マイクロレンズを形成するべく樹脂膜8の上面にフォトレジストを塗布し,かつレンズ形成箇所にのみこれを残すようにパターン形成してレンズパターン90を形成する。次に,図2(c)のように,160?180℃でベーキングすることでレンズパターン90を流動化させ,この時生ずる表面張力を利用して表面形状に曲率を持たせ,マイクロレンズ9を形成する。ここで,マイクロレンズの曲率はベーキング温度によっても異なるが,ほとんどはレンズパターン90の厚さと径の寸法とで決定される。したがって,フォトダイオード2の表面に焦点を結ばせるには,レンズパターン90の厚さと径寸法と樹脂膜8の厚さを選ぶことで実現される。」

「【0017】以上の実施例における本発明の説明では,赤色用・緑色用・青色用の3個のCCD素子を用いてカラーカメラを構成する場合について説明した。しかし,1個のCCD素子でカラー画像を得ることは周知の技術であり,通常かかる方式を単板カラーCCD素子と称する。以下,本発明を単板カラーCCD素子に適用した例を説明する。
【0018】図5はその一例であり,光電変換領域の断面構造を示す。図において,前記各実施例と同一部分には同一符号を付してある。そして,ここでは隣接するフォトダイオードが赤・緑・青の各光電変換部として構成されることになる。このため,樹脂膜8には,前記各色のフォトダイオードに対応する位置にそれぞれ赤色・緑色・青色の各光学色フィルタ層20R,20G,20Bを対応配置している。また,これと共に各色に対応して曲率を相違させ,焦点距離を最適化したマイクロレンズ9R,9G,9Bを設けている。
【0019】この構成のCCD素子によれば,CCD素子には白色光の光学像が投影されるが,この時,例えば赤色光で最適化したマイクロレンズ9Rを通った緑色光と青色光は色フィルタ20Rで阻止されるため,赤色光のみがフォトダイオード2の表面に焦点を結ぶことになる。緑色用や青色用マイクロレンズ9G,9Bの設けられた画素の場合も,同様に各色の光のみがフォトダイオード2の表面に焦点を結ぶことになる。したがって,焦点距離が各色ごとに最適値となっているため,カメラレンズの絞り値を開いても赤や青色の感度の大幅な低下は阻止でき,かつ各色による感度差も発生しない。」

・図5は,引用文献3に記載された発明を単板カラーCCD素子に適用した一実施例の断面図であって,上記摘記を参酌すれば,同図から,マイクロレンズ9R,9G,9Bの高さが異なることを見て取ることができる。

6 引用文献4の記載
「【請求項1】
少なくともフォトダイオードと転送電極が形成された半導体基板上部に,少なくとも3色以上を有し,かつ所定の規則で配列したカラーフィルタを形成する工程と,
前記カラーフィルタの上部に透明膜を形成する工程と,
前記透明膜の上面にポジ型レジストを用いてレジストパターンを形成する工程と,
前記レジストパターンに光照射を行なう工程と,
前記レジストパターンを熱処理により,複数の凸状レンズ曲面を有するマイクロレンズに形成する工程と,を少なくとも備え,
前記光照射は前記カラーフィルタの色配列に応じてドーズ量を変化させ,
前記マイクロレンズの高さと曲率が,前記カラーフィルタの色配列に応じて異なることを特徴とするカラー固体撮像装置の製造方法。」

「【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下,本発明の実施形態に係るカラー固体撮像装置の製造方法について,図面を参照しながら説明する。
【0022】
図1は本発明の実施形態に係るカラー固体撮像装置を説明する図であり,赤,緑,青の光電変換領域の断面構造を示す。
【0023】
同図において,1はN型半導体基板,1AはP型ウェル,2はN型不純物領域で構成されるフォトダイオード,3はN型不純物領域で構成されるCCDチャネル,4はP+分離領域,5は絶縁膜,6は転送電極,7は遮光膜である。ここでは隣接するフォトダイオード2が赤,緑,青の各光電変換部として構成されることになる。
【0024】
また,絶縁膜5および遮光膜7の上部に形成した透明膜8中には,各色のフォトダイオード2に対峙しながら,赤色,緑色,青色のカラーフィルタ20R,20G,20Bを形成する。さらに,各色に対応して曲率を相違させ,焦点距離を最適化したマイクロレンズ9R,9G,9Bを設けている。
【0025】
この構成によれば,例えば赤色光で最適化したマイクロレンズ9Rを通った緑色光と青色光は色フィルタ20Rで阻止されるため,赤色光のみがフォトダイオード2の表面に焦点を結ぶことになる。
【0026】
また,緑色用や青色用マイクロレンズ9G,9Bの設けられた画素の場合も,同様に各色の光のみがフォトダイオード2の表面に焦点を結ぶことになる。
【0027】
この焦点距離は,各色ごとに最適値となっているため,カメラレンズの絞り値を開いても赤や青色の感度の大幅な低下は阻止でき,かつ各色による感度差も発生しない。
【0028】
次に,図2から図10を参照しながら,本発明の実施形態に係るカラー固体撮像装置の製造方法について説明する。
【0029】
まず,図2に示すように,各色のフォトダイオード2に対応する位置に,それぞれ赤色,緑色,青色のカラーフィルタ20R,20G,20Bを形成する。
【0030】
次に,図3に示すように,カラーフィルタ20R,20G,20Gの上部に,後工程によりマイクロレンズとなる透明膜8を,平坦化を行いながら形成する。
【0031】
なお,平坦化をする透明膜と,マイクロレンズを形成するための透明膜は,個別に形成してもよい。
【0032】
次に,図4に示すように,ポジ型フォトレジストをスピンコーティング法によりレジスト膜11を形成する。レジスト膜11の膜厚は約1μm,塗布後の熱処理は100℃/90秒である。
【0033】
次に,図5に示すように,第1のマスク12を介して,マイクロレンズ間に相当する領域に露光を行う。このとき,露光装置はi線ステッパーであり,露光量は300mJ/cm^(2)である。
【0034】
次に,図6に示すように,露光が行われたレジスト膜11を現像液に浸水させて,未露光部からなるレジストパターン30R,30G,30Bを形成する。現像液にはTMAH(水酸化テトラメチルアンモニウム)水溶液を用いた。
【0035】
本実施形態ではレジストパターン30R,30G,30Bが,同一サイズになるようにした。但し,赤色が最も形状が大きく,青色が最も形状が小さくなるように形成してもよい。
【0036】
次に,図7に示すように,第2のマスク13を介して,青色用のレジストパターン30Bのみに光照射を行う。光源にはi線を用い,露光量は200mJ/cm^(2)である。光照射装置はマスクアライナーを用いたが,ステッパーでも良い。また,レジストが感度を有していれば,その他の光源を用いても良い。
【0037】
次に,図8に示すように,第3のマスク14を介して,緑色用のレジストパターン30Gのみに光照射を行う。光源にはi線を用い,露光量は100mJ/cm^(2)である。光照射はマスクアライナーを用いたが,ステッパーでも良い。また,レジストが感度を有していれば,その他の光源を用いても良い。
【0038】
次に,図9に示すように,160度から200度の温度で熱処理を行い,マイクロレンズパターン40R,40G,40Bを形成する。
【0039】
この場合,ベーク前後の寸法変動量が0.2umを定義とする耐熱性は,赤色用のレジストパターン30Rは200℃,緑色用のレジストパターン30Gは180℃,青色用のレジストパターン30Bは160℃である。
【0040】
すなわち,青色用のレジストパターン30Bは,赤色用および緑色用のレジストパターン30R,30Gよりも熱変化が大きいため,レンズ高さが低く,曲率の小さいマイクロレンズ形状になる。
【0041】
最後に,図10に示すように,マイクロレンズパターン40R,40G,40Bと樹脂膜8とを全面エッチバックし,マイクロレンズパターン40R,40G,40Bをエッチオフするとともに,マイクロレンズパターン40R,40G,40Bの形状を透明膜8に転写して,マイクロレンズ9R,9G,9Bを形成する。
【0042】
このとき,エッチング条件は,マイクロレンズパターン40R,40G,40Bと透明膜8との選択比が,ほぼ1となる条件で行うのが好ましく,具体的には,平行平板RIEにより,反応ガスとしてN_(2)/O_(2)(=40/40ccm)を用い,圧力35Pa,RFパワー450Wで行う。
【0043】
このように選択比がほぼ1となる条件で透明膜8のエッチングを行うと,図10に示すようにマイクロレンズパターン40R,40G,40Bとほぼ同一形状のマイクロレンズ9R,9G,9Bを形成することができる。
【0044】
以上の工程から,本発明の実施形態に係るカラー固体撮像装置を製造する。
【0045】
本実施形態ではレジストとしてポジ型レジストを用いたことを特徴とする。
【0046】
通常ポジ型レジストにより形成したレジストパターンは,ネガ型レジストとは異なり,光反応は生じていない。
【0047】
そこで,レジストパターン30G,30Bに,新たに光照射を行うとすることにより,レジストパターン30G,30Bを形成する材料が光反応を起こす。この光反応は,感光剤の光分解や,ベース樹脂の光架橋反応であるため,レジストパターン30G,30Bの耐熱性を光照射量に比例して,耐熱性の向上を行うことが出来る。
【0048】
したがって,本発明の実施形態ではレジストパターン30R,30G,30Bを,赤色用,緑色用,青色用の順序で耐熱特性に差を生じることが出来る。
【0049】
また,このようなレジストパターン30R,30G,30Bに熱処理を行うと,青色用は熱処理により形状変化が大きいため,形状曲率が緩やかになりながら,レンズのトップ高さが低くなり,図10のようなレンズ形状9Bになる。
【0050】
同様に,緑色用40Gは赤色用40Rよりも形状変化が大きく,赤色用40Rは最も形状変化が小さい。
【0051】
したがって,マイクロレンズ9R,9G,9Bの曲率は青色用,緑色用,青色用の順序で緩やかになり,またマイクロレンズ9R,9G,9Bの高さは,青色用,緑色用,赤色用の順序で低くすることが出来る。」

7 引用文献5の記載
「【請求項1】 複数の光センサ部上に選択的に形成された開口部を有する遮光層と,
前記複数の光センサ部上および前記遮光層上の全面に形成された保護層と,
前記保護層上に形成された平坦化層上に,前記複数の光センサ部に臨んで周期的に形成された複数色のオンチップカラーフィルタ層と,
前記オンチップカラーフィルタ層上に形成されたオンチップマイクロレンズと,
を具備する固体撮像装置であって,
前記遮光層,前記保護層および前記オンチップマイクロレンズのうちの少なくともいずれか1種は,
前記オンチップカラーフィルタ層の各色に対応して,前記光センサ部への入射光量を異にする構造であることを特徴とする固体撮像装置。
【請求項2】 オンチップマイクロレンズの平面形状は,オンチップカラーフィルタ層の各色に対応してその面積を異ならしめることにより,前記入射光量を異にすることを特徴とする,請求項1記載の固体撮像装置。
【請求項3】 オンチップマイクロレンズの断面形状は,オンチップカラーフィルタ層の各色に対応してその高さを異ならしめることにより,前記入射光量を異にすることを特徴とする,請求項1記載の固体撮像装置。」

「【0009】
【発明が解決しようとする課題】かかるオンチップカラーフィルタ層を有する固体撮像装置においては,良好なホワイトバランスをとるためには,例えばBのカラーフィルタ層を透過して光センサに入射する光量,Gのカラーフィルタ層を透過して光センサに入射する光量およびRのカラーフィルタ層を透過して光センサに入射する光量の割合を,ある一定の範囲内におさめる必要がある。これを図5(a)?(c)を参照して説明する。
【0010】まず,Si光電変換素子による光センサの感度の分光感度特性は,図5(a)に示される。なお,図5(a)に示した分光感度特性は,スミア防止等のための赤外線カットフィルタ込みの特性である。
【0011】一方カラーテレビジョンのカラー画像は,図5(c)に示すようにB:G:Rの各色のオンチップカラーフィルタ層搭載後の光センサ感度が,0.11:0.59:0.30の割合となるときに正確なホワイトバランスが得られるように設計されている。そこで固体撮像装置のオンチップカラーフィルタ層の各色のフィルタ特性に例えば図5(b)に示される光透過率特性を持たせ,Si光電変換素子による光センサの分光感度特性と併せて,各色の光センサからの出力電圧が丁度0.11:0.59:0.30の割合となるように設計するのである。各色の光センサからの出力電圧の割合がこの値からある範囲以上外れた場合にはホワイトバランスが崩れ,被写体の忠実な色再現は電気回路的な補正のみでは困難となる。
【0012】各色の光センサへの入射光量のバランスをある一定の範囲内におさめ,各色の光センサからの出力電圧の割合を先述したような一定の値とする方法としては,従来より例えばオンチップカラーフィルタ層の染色条件により染色濃度を選択する方法が採られている。すなわち,ゼラチン等を主体とする塗布膜へ各色染料を定着する際の染料濃度や染色温度,染色時間等を制御して図4(b)に示すようにカラーフィルタ光透過率を制御し,各色の透過光量バランスを確保するのである。しかしながら,オンチップカラーフィルタ層の染色条件のみでは,固体撮像装置の設計自由度が小さく,満足な結果が得られない場合も発生する。
【0013】本発明は上述した従来技術の問題点に鑑みて提案するものであり,各色の光センサ部に入射する光量のバランスを所望の一定範囲内に確実におさめ,色再現性に優れた固体撮像装置を提供することをその課題とする。」

「【0025】実施の形態例2
本実施の形態例は,オンチップマイクロレンズの断面形状をオンチップカラーフィルタ層の各色に対応してその高さを異ならしめた例であり,これを図2(a)?(b)を参照して説明する。
【0026】本実施の形態例による固体撮像装置の垂直レジスタ方向の概略断面図を図2(a)に,そして被写体側からみた固体撮像装置の概略平面図を図2(b)に示す。図2(b)のA-A断面が図2(a)に相当する。同図に見られるように,オンチップマイクロレンズ9の断面形状における高さは,例えばGのオンチップカラーフィルタ層8に対応するものが最も大きく,RおよびBのオンチップカラーフィルタ層8に対応するものの順に小さくなる。このようなオンチップマイクロレンズ9の形状は,先述したオンチップマイクロレンズ形成用の有機高分子材料層上に形成するレジストパターンの厚さに大小を持たせることにより容易に形成できる。
【0027】その製造方法の1つとしては,レジストパターン形成後にさらに上層レジスト膜を塗布し,厚さを必要とするレジストパターン上にのみに上層レジストパターンを残し,これらをともにリフローしてリフローレジストパターンとし,これをエッチバックして有機高分子材料層に転写すればよい。この際には上層のレジスト膜塗布時に下層のレジストパターンとミキシングしないような配慮は当然必要であり,上層レジスト膜塗布液の溶剤選択や,下層のレジスト膜のプリベーク条件の設定等を適宜おこなう。また他の製造方法としては,均一な厚さのリフローレジストパターンを形成後,さらに上層レジスト膜を塗布し,厚さを必要とするリフローレジストパターン上にのみに上層レジストパターンを残し,この上層レジストパターンをリフローする2段階リフロー法によってもよい。この後全面エッチバックしてオンチップマイクロレンズ材料層である有機高分子材料層にリフローレジストパターン形状を転写する。
【0028】かかるオンチップマイクロレンズ9の断面形状の採用により,各オンチップカラーフィルタ層8に対応してオンチップマイクロレンズ9の透過光量を異ならしめて入射光量を制御することが容易に可能となり,ホワイトバランスに優れた固体撮像装置を得ることができる。」

8 引用文献6の記載
「【0041】
換言すれば,Gのカラーフィルタ15Gの屈折率は,波長500nmにおいて1.54ないし2.00の範囲内となっており,Rのカラーフィルタ15RやBのカラーフィルタ15Bの屈折率も同様に1.54ないし2.00の範囲内である。そこで,ホワイトフィルタ61の材料には,R,G,Bの各カラーフィルタ15と同様の屈折率となるように,金属化合物の粒子が添加・分散されている。」

「【0058】
マイクロレンズ16の波長500nmにおける屈折率は,平坦化膜14の屈折率より大きく,かつ,ホワイトフィルタ61およびR,G,Bのカラーフィルタ15の各フィルタの屈折率以下の,1.54ないし1.65の範囲内とされる。」

第5 引用文献1を主引例,引用文献2を副引例とした検討
(1)対比
本願発明と引用発明1を対比すると,以下のとおりとなる。
ア 引用発明1の「フォトダイオードからなる光電変換部21」は,本願発明の「フォトセンシング素子」に相当する。したがって,引用発明1の前記「フォトダイオードからなる光電変換部21」が形成されている「単結晶シリコンのような半導体材料からなる基板11の表面側」は,本願発明の「フォトセンシング素子」を有する「アクティブ層」に相当する。

イ 引用発明1の「赤色フィルタR」,「青色フィルタB」,および「緑色フィルタG」は,いずれも,本願発明の「赤色(R),緑色(G)および青色(B)から構成される群から選択される色を有するカラーパターン」に相当する。

ウ 引用発明1の「各色フィルタR,B,Gの上方にレンズ材を成形して成るオンチップレンズ33a」は,本願発明の「カラーパターン上に設置されるマイクロレンズ」に相当する。

エ 引用発明1の「各色フィルタR,B,G間に,レンズ材33が各色フィルタR,B,Gの膜厚分だけ残された白色フィルタWと,この上部のレンズ材からなるオンチップレンズ33aとが一体に形成され」た部材は,本願発明の「カラーパターンに隣接し,且つ,前記フォトセンシング素子のうちの別の一つの上に位置する透過パターン」に相当し,引用発明1の前記「レンズ材33が各色フィルタR,B,Gの膜厚分だけ残された白色フィルタW」及び「『レンズ材33が各色フィルタR,B,Gの膜厚分だけ残された白色フィルタW』の上部のレンズ材からなる『オンチップレンズ33a』」は,それぞれ,本願発明の「カラーフィルター部分」及び「マイクロレンズ部分」に相当する。

オ 引用発明1の「レンズ材33」が,屈折率1.6程度であり,「各色フィルタR,B,G」の屈折率が約1.65であるから,両者の間の屈折率の差の絶対値は0.05となる。したがって,引用発明1は,本願発明の「前記マイクロレンズと前記カラーパターン間の屈折率の差の絶対値は,0.3未満」を満たす。

カ 引用発明1の「レンズ材33が各色フィルタR,B,Gの膜厚分だけ残された白色フィルタW」及び「『レンズ材33が各色フィルタR,B,Gの膜厚分だけ残された白色フィルタW』の上部のレンズ材からなる『オンチップレンズ33a』」は,いずれもレンズ材33で構成されるから,両者の間に屈折率の差はない。したがって,引用発明1は,本願発明の「前記透過パターンのマイクロレンズ部分と前記カラーフィルター部分間の屈折率の差がなく」を満たす。

キ 引用発明1の「固体撮像装置」は,以下の相違点を除いて,本願発明1の「イメージセンシングデバイス」に相当する。

したがって,本願発明と引用発明1とは,以下の点で一致し,相違する。
<一致点>
「イメージセンシングデバイスであって,
複数のフォトセンシング素子を有するアクティブ層と,
前記フォトセンシング素子のうちの一つの上に設置され,且つ,赤色(R),緑色(G)および青色(B)から構成される群から選択される色を有するカラーパターンと,
前記カラーパターン上に設置されるマイクロレンズと,
前記カラーパターンに隣接し,且つ,前記フォトセンシング素子のうちの別の一つの上に位置する透過パターンと,を有し,
前記透過パターンは,カラーフィルター部分とマイクロレンズ部分を有し,前記マイクロレンズと前記カラーパターン間の屈折率の差の絶対値は,0.3未満で,前記透過パターンのマイクロレンズ部分と前記カラーフィルター部分間の屈折率の差がない,
イメージセンシングデバイス。」

<相違点>
・相違点1:本願発明は,「前記マイクロレンズの上面と前記透過パターンの前記マイクロレンズ部分の上面とでは高さが異なる」のに対して,引用発明1では,当該構成が特定されていない点。

(2)判断
上記相違点について,判断する。
・相違点1について
ア 引用文献2には以下の記載がある。
「【0005】
そこで,正方格子配列において,市松状の位置に色画素(R画素,G画素,B画素)を配置し,残りの市松状の位置に白(W)画素を配置することで,色情報と輝度情報とを区別して検出し,輝度解像度の色依存性をなくす技術が提案されている(特許文献1参照)。W画素は,カラーフィルタに代えて,光透過率の高い透明フィルタや白フィルタ等の輝度フィルタを配した,輝度と相関関係のある分光特性を有する画素であり,被写体の輝度情報を検出する。また,この技術は,輝度解像度の色依存性の回避と同時に,感度の高い固体撮像装置を実現することができ,近年の高画素化・高密度化に伴う,画素の微細化に供するものである。
【0006】
特許文献1に記載の技術では,各画素を同じ構造とした場合,色画素とW画素との感度差が非常に大きく,同一の露出条件では,W画素からの輝度信号が色画素からの色信号に比べて約4倍程度になるため,色信号と輝度信号とのバランスが悪く,高品位なカラー画像を得ることができないとの指摘がなされている」

イ そうすると,引用文献2の上記記載に接した当業者であれば,引用発明1に係る「各色フィルタR,B,Gの上方にレンズ材を成形して成るオンチップレンズ33aが形成すると共に,各色フィルタR,B,G間に,レンズ材33が各色フィルタR,B,Gの膜厚分だけ残された白色フィルタWと,この上部のレンズ材からなるオンチップレンズ33aとが一体に形成される工程と,を含む方法によって製造されたW市松配列の固体撮像装置」が,引用文献2に記載された「白(W)画素を配置することで,色情報と輝度情報とを区別して検出し,輝度解像度の色依存性をなくす技術」を採用した固体撮像装置に相当するものであり,したがって,引用発明1には,前記「技術」を採用したことに伴う,前記「色画素とW画素との感度差が非常に大きく,同一の露出条件では,W画素からの輝度信号が色画素からの色信号に比べて約4倍程度になるため,色信号と輝度信号とのバランスが悪く,高品位なカラー画像を得ることができない」という課題が内在しているものと理解するといえる。

ウ さらに,引用発明1の固体撮像装置と,引用文献2に記載された固体撮像装置2は,いずれも,
各色フィルタ(引用文献2の「カラーフィルタ」に相当する。以下同じ)R,B,Gを埋め込む程度に十分な膜厚で,レンズ材(「マイクロレンズ形成材」)を成膜し,
前記レンズ材上にリフロー性を有する材料(「感光性樹脂層31」)からなるマスクを,所定の寸法でパターン形成し,
前記マスクをリフローさせてレンズ形状に成型し,
前記リフローさせたマスクのレンズ形状をレンズ材の表面側に転写することで,各色フィルタR,B,Gの上方にレンズ材を成形して成るオンチップレンズ(「第1のマイクロレンズ20a」)を形成すると共に,各色フィルタR,B,G間に,レンズ材が各色フィルタR,B,Gの膜厚分だけ残された白色フィルタ(「カラーフィルタ19cと,カラーフィルタ19aとの間の,W画素4eの形成領域の平坦化層18の上面に設けられた,前記各カラーフィルタと略同一の厚さを有する板状部分」)と,この上部のレンズ材からなるオンチップレンズ(「前記板状部分からの高さが第1のマイクロレンズ20aよりも低いマイクロレンズ状部分」)とを一体に形成する工程を含む方法によって製造されるものである点で共通する。

エ そして,引用発明2に記載された発明では,前記「色画素とW画素との感度差が非常に大きく,同一の露出条件では,W画素からの輝度信号が色画素からの色信号に比べて約4倍程度になるため,色信号と輝度信号とのバランスが悪く,高品位なカラー画像を得ることができない」という課題を,「感光性樹脂層31をフォトリソグラフィ技術によってパターニングすることにより,色画素の形成領域上に第1の矩形パターン31aを形成し,W画素4eの形成領域上に第2の矩形パターン31bを形成する工程」において,「第2の矩形パターン31bの1辺の長さL2を,第1の矩形パターン31aの1辺の長さL1より短くする」ことによって,第1のマイクロレンズ20aと第2のマイクロレンズ20bとの間に,高低差Hを生じさせるという課題解決手段を採用することによって解決している。

オ そうすると,上記ウのとおり,引用発明1と引用文献2に記載された発明とでは,マイクロレンズを形成する方法が共通することから,上記イにおいて理解した引用発明1に内在する課題を解決するために,引用発明1において,引用文献2に記載された上記エの課題解決手段を適用して,マイクロレンズの上面と透過パターンのマイクロレンズ部分の上面とで高さを異ならせること,すなわち,相違点1について本願発明の構成を採用することは当業者が容易になし得たことである。

第6 引用文献1を主引例,引用文献3ないし5を副引例とした検討
(1)対比
本願発明と引用発明1との一致点及び相違点は第5(1)のとおりである。

(2)判断
上記相違点について,判断する。
・相違点1について
ア 引用文献1の【0020】には,「また特に本発明においては,各画素2における光電変換部の上方に,後で説明する層内レンズやオンチップレンズが配置され,各光電変換部への集光率の向上が図られている。」と記載されている。
すなわち,前記記載に照らして,引用発明1の,各色フィルタR,B,Gの上方に配置される「オンチップレンズ33a」は,各色フィルタR,B,Gの下方に配置される各光電変換部への集光率が向上するような特性を備えた構造を有していることが望ましいことが理解される。

イ 一方,引用文献3の「マイクロレンズを設けた固体撮像装置において,同一半導体基板に設けた光電変換部を赤色光用,緑色光用,青色光用の各光電変換部として構成するとともに,各色光用の光電変換部に対応して設けた各マイクロレンズの焦点距離を相違させ,各色光がそれぞれの光電変換部に適切に集光されるように構成した」(【請求項3】),「樹脂膜8には,前記各色のフォトダイオードに対応する位置にそれぞれ赤色・緑色・青色の各光学色フィルタ層20R,20G,20Bを対応配置している。また,これと共に各色に対応して曲率を相違させ,焦点距離を最適化したマイクロレンズ9R,9G,9Bを設けている」(【0018】)との記載,及び,図5のマイクロレンズ9R,9G,9Bの高さが異なる構造に照らして,赤色光,緑色光,青色光の各色光がそれぞれの光電変換部に適切に集光されるためには,各色光用の光電変換部に対応して設けた各マイクロレンズの焦点距離を相違させること,すなわち,マイクロレンズ9R,9G,9Bの高さを異ならせることが必要であることが理解される。

ウ 同様に,引用文献4の「各色に対応して曲率を相違させ,焦点距離を最適化したマイクロレンズ9R,9G,9Bを設けている」(【0024】),及び,「マイクロレンズ9R,9G,9Bの曲率は青色用,緑色用,青色用の順序で緩やかになり,またマイクロレンズ9R,9G,9Bの高さは,青色用,緑色用,赤色用の順序で低くすることが出来る」(【0051】)との記載から,焦点距離を最適化したマイクロレンズ9R,9G,9Bは,高さが異なることが理解される。

エ したがって,上記イ及びウから,引用発明1において,「オンチップレンズ33a」による,各色フィルタR,B,Gの下方に配置される各光電変換部への集光率を向上させるために,各色フィルタR,B,Gの上方に配置される各「オンチップレンズ33a」の高さを異ならせることは,当業者が容易になし得たことである。

オ さらに,引用文献5の「オンチップマイクロレンズの断面形状は,オンチップカラーフィルタ層の各色に対応してその高さを異ならしめることにより,前記入射光量を異にする」(【請求項3】),及び,「本発明は上述した従来技術の問題点に鑑みて提案するものであり,各色の光センサ部に入射する光量のバランスを所望の一定範囲内に確実におさめ,色再現性に優れた固体撮像装置を提供することをその課題とする」(【0013】)との記載から,色再現性に優れた固体撮像装置を提供するために,オンチップカラーフィルタ層の各色に対応してその高さを異ならしめることが望ましいことも理解される。
そして,色再現性に優れることは,固体撮像装置の一般的な課題である。
そうすると,引用文献5の前記記載に基づいて,引用発明1において,各色フィルタR,B,Gの上方に配置される各「オンチップレンズ33a」の高さを異ならせることは,当業者が容易になし得たことである。

カ そして,上記エ及びオのとおり,引用文献3ないし5に記載された事項に基づいて,引用発明1において,各色フィルタR,B,Gの上方に配置される各「オンチップレンズ33a」の高さを異ならせた場合に,前記各色フィルタR,B,Gの上方に配置される各「オンチップレンズ33a」のいずれかの上面の高さと,白色フィルタWの上部のレンズ材からなるオンチップレンズ33aの上面の高さとが異なるものとなることは自明な事項といえる。
したがって,引用発明1において,相違点1について本願発明の構成を採用することは当業者が容易になし得たことである。

第7 引用文献2を主引例とした検討
(1)対比
ア 引用発明2の「受光素子PD」は,本願発明の「フォトセンシング素子」に相当する。したがって,引用発明2の前記「受光素子PD」が形成されている「半導体基板3」は,本願発明の「フォトセンシング素子」を有する「アクティブ層」に相当する。

イ 引用発明2の「カラーフィルタ19a」,「カラーフィルタ19b」,および「カラーフィルタ19c」は,いずれも,本願発明の「赤色(R),緑色(G)および青色(B)から構成される群から選択される色を有するカラーパターン」に相当する。

ウ 引用発明2の「第1のマイクロレンズ20a」は,本願発明の「カラーパターン上に設置されるマイクロレンズ」に相当する。

エ 引用発明2の「第2のマイクロレンズ20b」は,本願発明の「カラーパターンに隣接し,且つ,前記フォトセンシング素子のうちの別の一つの上に位置する透過パターン」に相当し,引用発明2の前記「カラーフィルタ19cとカラーフィルタ19aとの間のW画素4eの形成領域の平坦化層18の上面に設けられた,前記各カラーフィルタと略同一の厚さを有する板状部分」及び「両端部が前記各フィルタから離隔し前記板状部分からの高さが第1のマイクロレンズ20aよりも低いマイクロレンズ状部分」は,それぞれ,本願発明の「カラーフィルター部分」及び「マイクロレンズ部分」に相当する。

オ 引用発明2の「カラーフィルタ19cとカラーフィルタ19aとの間のW画素4eの形成領域の平坦化層18の上面に設けられた,前記各カラーフィルタと略同一の厚さを有する板状部分」及び「両端部が前記各フィルタから離隔し前記板状部分からの高さが第1のマイクロレンズ20aよりも低いマイクロレンズ状部分」は,いずれもマイクロレンズ形成材で構成されるから,両者の間に屈折率の差はない。したがって,引用発明2は,本願発明の「前記透過パターンのマイクロレンズ部分と前記カラーフィルター部分間の屈折率の差がなく」を満たす。

カ 引用発明2の「固体撮像装置2」は,以下の相違点を除いて,本願発明1の「イメージセンシングデバイス」に相当する。

したがって,本願発明と引用発明2とは,以下の点で一致し,相違する。
<一致点>
「イメージセンシングデバイスであって,
複数のフォトセンシング素子を有するアクティブ層と,
前記フォトセンシング素子のうちの一つの上に設置され,且つ,赤色(R),緑色(G)および青色(B)から構成される群から選択される色を有するカラーパターンと,
前記カラーパターン上に設置されるマイクロレンズと,
前記カラーパターンに隣接し,且つ,前記フォトセンシング素子のうちの別の一つの上に位置する透過パターンと,を有し,
前記透過パターンは,カラーフィルター部分とマイクロレンズ部分を有し,前記透過パターンのマイクロレンズ部分と前記カラーフィルター部分間の屈折率の差がなく,
前記マイクロレンズの上面と前記透過パターンの前記マイクロレンズ部分の上面とでは高さが異なる
イメージセンシングデバイス。」

<相違点>
・相違点2:本願発明は,「前記マイクロレンズと前記カラーパターン間の屈折率の差の絶対値は,0.3未満」であるのに対して,引用発明2では,当該構成が特定されていない点。

(2)判断
上記相違点について,判断する。
・相違点2について
マイクロレンズとカラーパターンの屈折率が具体的に記載されていない引用文献2に記載された発明である引用発明2を実施するにあたって,各部材の屈折率が具体的に記載されている引用文献1の記載を参考にして,マイクロレンズの材料として,屈折率1.6程度であるものを用い,カラーパターンの材料として屈折率が約1.65であるものを用いること,すなわち,「前記マイクロレンズと前記カラーパターン間の屈折率の差の絶対値は,0.3未満」とすることは当業者が適宜なし得たことである。
また,引用文献6の記載からも,マイクロレンズとカラーパターン間の屈折率の差の絶対値が0.3未満であることは格別のものとは認められない。
さらに,本願の明細書及び図面の記載からは,マイクロレンズとカラーパターン間の屈折率の差の絶対値における「0.3」という値に臨界的な意義も認めることはできない。
したがって,引用発明2において,相違点2について本願発明の構成を採用することは当業者が容易になし得たことである。

第8 むすび
以上のとおり,本願発明は,その出願前に日本国内又は外国において,頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献1に記載された発明及び引用文献2あるいは引用文献3ないし5に記載された事項に基づいて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものである。
あるいは,本願発明は,その出願前に日本国内又は外国において,頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献2に記載された発明及び引用文献1,6に記載された事項に基づいて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものである。
したがって,本願発明は,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。

よって,結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2018-05-10 
結審通知日 2018-05-14 
審決日 2018-05-25 
出願番号 特願2015-5590(P2015-5590)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 田邊 顕人今井 聖和  
特許庁審判長 飯田 清司
特許庁審判官 小田 浩
加藤 浩一
発明の名称 イメージセンシングデバイスとその製造方法  
代理人 磯野 富彦  

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