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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G09F 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 G09F |
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管理番号 | 1345238 |
審判番号 | 不服2017-10171 |
総通号数 | 228 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2018-12-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2017-07-07 |
確定日 | 2018-10-30 |
事件の表示 | 特願2016-226757「半導体装置」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 3月16日出願公開、特開2017- 54143、請求項の数(5)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成24年4月27日(優先権主張 平成23年5月5日(以下、「優先日」という。))に出願した特願2012-102545号の一部を平成27年12月21日に新たな特許出願(特願2015-248698号)とし、さらにその一部を平成28年11月22日に新たな特許出願としたものであって、平成29年1月20日付けで拒絶理由通知がされ、同年3月3日付けで手続補正がされ、同年4月13日付けで、同年3月3日付けの手続補正について補正却下の決定がされ、同日付けで拒絶査定(原査定)がされ(送達日:同18日)、これに対し、同年7月7日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正がされたものである。 その後、当審において平成30年6月21日付けで拒絶理由(以下、「当審拒絶理由」という。)が通知され、同年8月20日付けで手続補正(以下、「本件補正」という。)がなされたものである。 第2 本願発明 本願請求項1-5に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明5」という。)は、本件補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-5に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1-5は以下のとおりの発明である。 「【請求項1】 基板と、 トランジスタと、 前記トランジスタ上の有機樹脂層と、 前記有機樹脂層上の、導電層及び画素電極と、を有し、 前記トランジスタは、チャネル形成領域を有する酸化物半導体層を有し、 前記有機樹脂層は、 前記トランジスタ全体と重なる第1の領域と、 前記第1の領域よりも膜厚の厚い第2の領域と、を有し、 前記導電層は、前記第1の領域と重なる領域を有し、 前記画素電極は、前記第2の領域と重なる領域を有し、 前記基板から前記第2の領域の上面までの高さは、前記基板から前記第1の領域の上面までの高さより高いことを特徴とする半導体装置。 【請求項2】 第1の基板と、 前記第1の基板上のトランジスタと、 前記トランジスタ上の有機樹脂層と、 前記有機樹脂層上の、導電層と、画素電極と、スペーサと、 第2の基板と、を有し、 前記トランジスタは、チャネル形成領域を有する酸化物半導体層を有し、 前記有機樹脂層は、 前記トランジスタ全体と重なる第1の領域と、 前記第1の領域よりも膜厚の厚い第2の領域と、を有し、 前記スペーサは、前記第1の基板と前記第2の基板との間隔を制御する機能を有し、 前記導電層は、前記第1の領域と重なる領域を有し、 前記画素電極及び前記スペーサは、前記第2の領域と重なる領域を有し、 前記第1の基板から前記第2の領域の上面までの高さは、前記第1の基板から前記第1の領域の上面までの高さより高いことを特徴とする半導体装置。 【請求項3】 第1の基板と、 前記第1の基板上のトランジスタと、 前記トランジスタ上の有機樹脂層と、 前記有機樹脂層上の、導電層と、画素電極と、スペーサと、 第2の基板と、を有し、 前記トランジスタは、チャネル形成領域を有する酸化物半導体層を有し、 前記有機樹脂層は、 前記トランジスタ全体と重なる第1の領域と、 前記第1の領域よりも膜厚の厚い第2の領域と、を有し、 前記スペーサは、前記第1の基板と前記第2の基板との間隔を制御する機能を有し、 前記導電層は、前記第1の領域と重なる領域を有し、 前記スペーサは、複数の画素毎に前記第2の領域上に設けられ、且つ、前記画素の配線及び前記画素電極と重なるように設けられ、 前記第1の基板から前記第2の領域の上面までの高さは、前記第1の基板から前記第1の領域の上面までの高さより高いことを特徴とする半導体装置。 【請求項4】 請求項1乃至請求項3のいずれか一において、 前記トランジスタは、第1の電極と第2の電極とを有し、 前記第1の電極と前記第2の電極の一方をソース電極とし、他方をドレイン電極とすることを特徴とする半導体装置。 【請求項5】 請求項1乃至請求項4のいずれか一において、 前記画素電極は、前記有機樹脂層に設けられた開口を介して、前記トランジスタと電気的に接続されることを特徴とする半導体装置。」 第3 引用文献、引用発明等 1 引用文献1について 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1(特開2010-212284号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている。(下線は当審による。以下同様。) 「【0001】 本発明は、絶縁性基板に形成された第1ゲート電極、半導体層、第2ゲート電極を備える半導体装置、この半導体装置を製造する半導体装置製造方法、この半導体装置を搭載したTFT基板、およびこのTFT基板を適用した表示装置に関する。」 「【0056】 <実施の形態1> 図1Aおよび図1Bに基づいて、本実施の形態に係る半導体装置(ダブルゲート型TFT)および半導体装置を形成したTFT基板(要部)について説明する。なお、TFT基板については、実施の形態10でさらに詳細を説明するので、ここでは概要を示すに止める。 【0057】 図1Aは、本発明の実施の形態1に係る半導体装置およびTFT基板(要部)の断面状態を模式的に示す断面模式図である。なお、断面の位置は図1Bに示す矢符A-Aである。また、図の見易さを考慮してハッチングは省略してある(以下でも同様とする)。 【0058】 図1Bは、本発明の実施の形態1に係る半導体装置およびTFT基板(要部)の平面状態を模式的に示す平面模式図である。 【0059】 本実施の形態に係る半導体装置1は、絶縁性基板10(TFT基板100での絶縁性基板110)の上に形成された第1ゲート電極11と、第1ゲート電極11の上に形成された第1絶縁層12と、第1絶縁層12の上に形成された半導体層13と、半導体層13の一端に接続されたソース電極15と、ソース電極15に対向して半導体層13の他端に接続されたドレイン電極16と、半導体層13の上に形成された第2絶縁層17と、第2絶縁層17の上に形成された第2ゲート電極19と、ソース電極15とドレイン電極16の間の半導体層13に形成されるチャネル領域13cとを備える。 【0060】 なお、半導体装置1では、第1ゲート電極11および第2ゲート電極19の少なくとも一方は、透明導電性材料で形成され、透明電極を構成している。 【0061】 したがって、第1ゲート電極11および第2ゲート電極19を有するダブルゲート型TFTを形成して半導体層13でのチャネル領域13cを上下両面側で拡大することができるので、取り出せるオン電流を増加させて駆動能力の大きい半導体装置1とすることができる。 【0062】 また、表示用の画素電極130と画素電極130に印加する電圧を制御する画素トランジスタ101としての薄膜トランジスタ(TFT)とを有するTFT基板100に半導体装置1を適用して、第1ゲート電極11および第2ゲート電極19の少なくとも一方を、画素電極130と同じ透明導電性材料を利用して形成することができるので、TFT基板100の製造プロセスに対して追加材料、追加層を加えることなく、ダブルゲート型TFT(本発明に係る半導体装置1)を画素トランジスタ101として容易かつ安価に製作することができる。 【0063】 ドレイン電極16および画素電極130は、第1コンタクトホール21で接続されている。第1ゲート電極11および第2ゲート電極19は、第2コンタクトホール22で接続されている。第1ゲート電極11は、延長されてゲート信号線11wに接続され、ゲート信号線11wを介して外部(ドライバ回路:ゲートドライバ回路)から電圧が印加される。ソース電極15は、延長されてソース信号線15wに接続され、ソース信号線15wを介して外部(ドライバ回路:ソースドライバ回路)に接続される。ドライバ回路については、実施の形態10で詳細を説明する。 【0064】 なお、第2絶縁層穴17h、第1コンタクトホール21、第2コンタクトホール22以外の領域には平坦化膜18が形成され、半導体装置1およびTFT基板100の表面全体の平坦化を図っている。 【0065】 半導体層13の表面側(ソース電極15およびドレイン電極16が接続される側)には、高濃度コンタクト層13dが形成され半導体層13に対するソース電極15およびドレイン電極16のオーミックコンタクトを図っている。半導体装置1(ダブルゲート型TFT)は、nチャンネル型としてあることから、高濃度コンタクト層13dは、高濃度のn型不純物を導入して形成され、n+型となっている。 【0066】 半導体装置1は、第1ゲート電極11と第2ゲート電極19で半導体層13を挟持した構造であることから、ゲート電圧を印加したときに、チャネル領域13cは、半導体層13の上側(第2ゲート電極19側)と下側(第1ゲート電極11側)の両側で形成される。したがって、従来の逆スタガ型TFTに比較して、チャネル領域13cが拡大され、拡大された領域の大きさに応じて、ドレイン電極16(ソース電極15)から取り出せるオン電流を増加させることができる。 【0067】 すなわち、半導体装置1は、従来の逆スタガ型TFTのような半導体層13の下側だけにゲート電極(第1ゲート電極11)を配置した構造に対して、半導体層13の上側にもゲート電極(第2ゲート電極19)を配置(追加)した構造とされている。」 「【0085】 (半導体層形成工程) 第1絶縁層形成工程で使用した同一成膜装置内の別成膜チャンバーを用いて、アモルファスシリコンを主成分とする半導体膜を成膜した。ここで、半導体膜の膜厚は230nmとした。 【0086】 続いて、形成した半導体膜を、フォトリソグラフィ工程とエッチング工程によりパターニングし、半導体層13を形成した。エッチング後に残ったレジストパターン膜は剥離液を用いて剥離、除去した。 【0087】 半導体膜の成膜方法には、PECVDの他、スパッタ、蒸着法、誘導結合型プラズマCVD装置や、マイクロ波CVD装置、電子サイクロトン共鳴CVD装置を用いることも可能である。 【0088】 また、半導体膜の材料は特に実施例に限定される必要はなく、微結晶シリコン、多結晶シリコン、インジウム(In)-ガリウム(Ga)-亜鉛(Zn)-酸素(O)からなる四元系アモルファス酸化物や、酸化亜鉛(ZnO)等でもよい。また、膜厚も実施例に限定されることはない。【0088】 また、半導体膜の材料は特に実施例に限定される必要はなく、微結晶シリコン、多結晶シリコン、インジウム(In)-ガリウム(Ga)-亜鉛(Zn)-酸素(O)からなる四元系アモルファス酸化物や、酸化亜鉛(ZnO)等でもよい。また、膜厚も実施例に限定されることはない。」 「【0110】 (平坦化膜形成工程) 第2絶縁層形成工程を経た絶縁性基板10に、スリットコートにより、感光性のアクリル樹脂で形成された平坦化膜18を全面に塗布した。平坦化膜18の膜厚は4μmとした。なお、平坦化膜18の塗布方法は、実施例に限定されることなく、スピンコート、印刷、インクジェット等を用いることもできる。 【0111】 また、平坦化膜18を構成する材料は実施例に限定されることなく、SOG(Spin On Glass)やポリイミド等であってもよい。また、平坦化膜18の膜厚も特に実施例に限定されることはない。 【0112】 (ホール形成工程) 平坦化膜形成工程を経た絶縁性基板10に、ハーフトーン露光を用いたフォトリソグラフィ工程とエッチング工程により、コンタクトホール(第1コンタクトホール21、第2コンタクトホール22、第2ゲート電極用ホール23)を形成した。 【0113】 ハーフトーン露光とは、露光光に対する遮光部と、露光光に対する透過部と、露光光に対する半透過部を有する露光マスク(ハーフトーン露光マスク)を用いた露光法である。ハーフトーン露光マスクを用いて露光することで、現像後の平坦化膜18(感光性アクリル樹脂)は、塗布後の状態をそのまま維持した領域(遮光部)と、感光性アクリル樹脂が完全に除去された領域(透過部)と、感光性アクリル樹脂が完全には除去されず多少残る部分(半透過部)とに分けてパターニングされた状態となる。 【0114】 第1コンタクトホール21、第2コンタクトホール22、第2ゲート電極用ホール23の3種類のホールを形成するときにパターニングする膜はそれぞれ次の通りである。 【0115】 第1コンタクトホール21は、画素電極130がドレイン電極16にコンタクトする領域であり、平坦化膜18のフォトリソグラフィ工程によるパターニングと、第1コンタクトホール21をマスクにした第2絶縁層17のエッチングが必要である。 【0116】 第2コンタクトホール22は、第2ゲート電極19が第1ゲート電極11(ゲート信号線11w)とコンタクトする領域であり、平坦化膜18のフォトリソグラフィ工程によるパターニングと、第2コンタクトホール22をマスクにした第2絶縁層17と第1絶縁層12のエッチングが必要である。 【0117】 第2ゲート電極用ホール23は、第2ゲート電極19が第2絶縁層17に積層する領域であり、第2絶縁層17はエッチングによって除去してはならない。つまり、平坦化膜18に形成する第2ゲート電極用ホール23は、第1コンタクトホール21および第2コンタクトホール22の形成と同様にして形成することはできない。 【0118】 したがって、第2ゲート電極用ホール23を形成する領域に対しては、ハーフトーン露光マスクのハーフトーン部(半透過部)を適用して露光し、現像後に、感光性アクリル樹脂が透過部に比較して薄く残るようにする。つまり、第1コンタクトホール21および第2コンタクトホール22を形成するとき、第2ゲート電極用ホール23に対しては、半透過部を適用して第2絶縁層17が露出することを防止する。」 「【0128】 図2Cは、本発明の実施の形態2に係る半導体装置の製造方法での現像後の平坦化膜をエッチバックして第2ゲート電極用ホールに対応する第2絶縁層を露出させた状態を説明する説明図であり、(A)は図1Bに示す矢符A-Aでの断面状態を示す断面模式図であり、(B)は図1Bに示す矢符B-Bでの断面状態を示す断面模式図である。 【0129】 2ヶ所(第1コンタクトホール21および第2コンタクトホール22)の絶縁層をエッチングした後、平坦化膜18をさらに全面エッチバックする(平坦化膜18全体の膜厚を薄くする)ことにより、第2ゲート電極用ホール23を形成し、第2絶縁層17を露出させる。第2絶縁層17は、チャネル領域13cに対応する領域で第2絶縁層穴17hを有する状態となっている。 【0130】 以上の工程(図2Aないし図2C)により、第1コンタクトホール21、第2コンタクトホール22、第2ゲート電極用ホール23が形成されたこととなる。」 【図1A】 上記記載によれば、以下のことが認められる。 ア 引用文献1には、「半導体装置1」が記載されている。(【0056】、【0059】) イ 引用文献1の「半導体装置1」は、「絶縁性基板10の上に形成された第1ゲート電極11と、第1ゲート電極11の上に形成された第1絶縁層12と、第1絶縁層12の上に形成された半導体層13と、半導体層13の一端に接続されたソース電極15と、ソース電極15に対向して半導体層13の他端に接続されたドレイン電極16と、半導体層13の上に形成された第2絶縁層17と、第2絶縁層17の上に形成された第2ゲート電極19と、ソース電極15とドレイン電極16の間の半導体層13に形成されるチャネル領域13cとを備える。」(【0059】) ウ 引用文献1の「半導体層13」の材料の例は、インジウム(In)-ガリウム(Ga)-亜鉛(Zn)-酸素(O)からなる四元系アモルファス酸化物や、酸化亜鉛(ZnO)である。(【0088】) エ 引用文献1の「ソース電極15」及び「ドレイン電極16」は、「半導体層13」に接して積層されている部分と、「第1絶縁層12」に接して積層されている部分を有する。(図1A) オ 引用文献1の「半導体装置1」は、さらに「半導体装置1およびTFT基板100の表面全体」を「平坦化」させるための「平坦化膜18」を備え、「平坦化膜18」は、「第2絶縁層穴17h、第1コンタクトホール21、第2コンタクトホール22以外の領域」において、第2絶縁層17の上に形成されている。(【0064】、図1A) カ 引用文献1の「平坦化膜18」は、絶縁性基板10に全面に塗布された後、「第1コンタクトホール21、第2コンタクトホール22、第2ゲート電極用ホール23」が形成される。(【0110】、【0112】) キ 引用文献1の「第2ゲート電極用ホール23」は、「第2絶縁層17を露出させる」まで「平坦化膜18」を「全面エッチバック」することにより形成されるものであり、「第2絶縁層17」の露出した部分は「第2絶縁層穴17h」を有する。(【0129】、図1A) ク 上記オないしキから、引用文献1の「平坦化膜18」は、絶縁性基板10に全面に塗布された後、(第2絶縁層穴17hの領域を含む)「第2ゲート電極用ホール23」、「第1コンタクトホール21」、「第2コンタクトホール22」が形成されることで、それ以外の領域において、第2絶縁層17の上に形成される。 ケ 引用文献1の「平坦化膜18」は、「感光性のアクリル樹脂で形成され」ている。(【0110】) コ 引用文献1の「半導体装置1」は、さらに「画素電極130」を備え、「画素電極130」は、第1コンタクトホール21においてドレイン電極16の上に、第1コンタクトホール21以外の領域において「平坦化膜18」の上に形成されている。(【0062】、【0063】、図1A) サ 引用文献1の「第2ゲート電極用ホール23」は、「第2ゲート電極19が第2絶縁層17に積層する領域」である。(【0117】) シ 引用文献1の「第2ゲート電極19」は、「第2ゲート電極用ホール23」以外の領域においては、「平坦化膜18」の上に形成されている。(図1A) 以上のことをまとめると、引用文献1には以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。 「絶縁性基板10の上に形成された第1ゲート電極11と、第1ゲート電極11の上に形成された第1絶縁層12と、第1絶縁層12の上に形成された半導体層13と、半導体層13の一端に接続されたソース電極15と、ソース電極15に対向して半導体層13の他端に接続されたドレイン電極16と、半導体層13の上に形成された第2絶縁層17と、第2絶縁層17の上に形成された第2ゲート電極19と、ソース電極15とドレイン電極16の間の半導体層13に形成されるチャネル領域13cとを備え、 半導体層13の材料は、インジウム(In)-ガリウム(Ga)-亜鉛(Zn)-酸素(O)からなる四元系アモルファス酸化物や、酸化亜鉛(ZnO)であり、 ソース電極15及びドレイン電極16は、半導体層13に接して積層されている部分と、第1絶縁層12に接して積層されている部分を有し、 さらに、絶縁性基板10に全面に塗布された後、第2ゲート電極用ホール23、第1コンタクトホール21、第2コンタクトホール22が形成されることで、それ以外の領域において第2絶縁層17の上に形成される、感光性のアクリル樹脂で形成されている平坦化膜18と、 第1コンタクトホール21においてドレイン電極16の上に、第1コンタクトホール21以外の領域において平坦化膜18の上に形成されている画素電極130と、を備え、 第2ゲート電極用ホール23は、第2ゲート電極19が第2絶縁層17に積層する領域であり、 第2ゲート電極19は、第2ゲート電極用ホール23以外の領域においては、平坦化膜18の上に形成されている、 半導体装置1。」 2 引用文献2について 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2(特開2009-47967号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている。 「【0001】 本発明は、例えば液晶装置等の電気光学装置、及び該電気光学装置を備えた、例えば液晶プロジェクタ等の電子機器の技術分野に関する。 【背景技術】 【0002】 この種の電気光学装置の一例である液晶装置は、例えば薄膜トランジスタ(TFT:Thin Film Transistor)等を含んでおり、これに加えて薄膜からなるデータ線や走査線等の種々の配線や電極が積層されて構成されている。」 「【0066】 図4及び図5において、TFT30は、半導体層1aと、走査線11の一部として形成されたゲート電極3aとを含んで構成されている。 【0067】 半導体層1aは、例えばポリシリコンからなり、X方向に沿って設けられたチャネル領域1a’、データ線側LDD領域1b及び画素電極側LDD領域1c並びにデータ線側ソースドレイン領域1d及び画素電極側ソースドレイン領域1eからなる。即ち、TFT30はLDD構造を有している。データ線側ソースドレイン領域1dは、コンタクトホール81によって、データ線6aと電気的に接続されている。画素電極側ソースドレイン領域1eは、コンタクトホール83によって、画素電極9aと電気的に接続されている。 【0068】 このように、コンタクトホール81は、一層の層間絶縁膜(即ち、下地絶縁膜12)のみを貫通するので、その深さは、相対的に淡くて済み、その開孔は、エッチング等により容易である。また、穴のアスペクト比も小さいので底部にても良好なコンタクトを取り易い。同様に、コンタクトホール83は、二層の層間絶縁膜(即ち、第1層間絶縁膜41及び第2層間絶縁膜42)のみを貫通するので、その開孔は容易であり、底部にても良好なコンタクトを取り易い。 【0069】 データ線側ソースドレイン領域1d及び画素電極側ソースドレイン領域1eは、チャネル領域1a’を基準として、X方向に沿ってほぼミラー対称に形成されている。データ線側LDD領域1bは、チャネル領域1a’及びデータ線側ソースドレイン領域1d間に形成されている。画素電極側LDD領域1cは、チャネル領域1a’及び画素電極側ソースドレイン領域1e間に形成されている。データ線側LDD領域1b、画素電極側LDD領域1c、データ線側ソースドレイン領域1d及び画素電極側ソースドレイン領域1eは、例えばイオンインプランテーション法等の不純物打ち込みによって半導体層1aに不純物を打ち込んでなる不純物領域である。データ線側LDD領域1b及び画素電極側LDD領域1cはそれぞれ、データ線側ソースドレイン領域1d及び画素電極側ソースドレイン領域1eよりも不純物の少ない低濃度な不純物領域として形成されている。このような不純物領域によれば、TFT30の非動作時において、ソース領域及びドレイン領域間に流れるオフ電流を低減し、且つTFT30の動作時に流れるオン電流の低下を抑制できる。尚、TFT30は、LDD構造を有することが好ましいが、データ線側LDD領域1b、画素電極側LDD領域1cに不純物打ち込みを行わないオフセット構造であってもよいし、ゲート電極をマスクとして不純物を高濃度に打ち込んでデータ線側ソースドレイン領域及び画素電極側ソースドレイン領域を形成する自己整合型であってもよい。 【0070】 図5において、ゲート電極3aは、走査線11の一部として形成されており、例えば導電性ポリシリコンから形成されている。走査線11は、X方向に沿って延びるように形成されている。走査線11のうちチャネル領域1a’と重なる部分がゲート電極3aとして機能する。ゲート電極3aは、図に示すように、局所的にチャネル領域1a’に近接するように設けられている。また、ゲート電極3aとチャネル領域1a’とは、第1層間絶縁膜41によって絶縁されている。」 【図5】 上記記載をまとめると、引用文献2には以下の技術事項が記載されている。 「半導体層1aとゲート電極3aとを含んで構成されているTFT30であって(【0066】)、 半導体層1aは、チャネル領域1a’、データ線側ソースドレイン領域1d及び画素電極側ソースドレイン領域1eからなり(【0067】)、 ゲート電極3aは、局所的にチャネル領域1a’に近接するように設けられ、ゲート電極3aとチャネル領域1a’とは、第1層間絶縁膜41によって絶縁されている(【0070】)、TFT30。」 3 引用文献3 原査定の拒絶の理由に周知技術として引用された引用文献3(特開2000-193974公報)には、図面とともに次の事項が記載されている。 「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、液晶表示装置及びその製造方法に係り、特に、基板表面に設けた土手状突起物を利用して電圧印加時における液晶分子の傾斜方向を制御する垂直配向型の液晶表示装置に関する。」 「【0016】図1及び図2に示すように、ガラス基板10上には、補助容量を形成するためのCS電極12と、TFTのゲート電極を含むゲートバスライン14が形成されている。CS電極12及びゲートバスライン14が形成されたガラス基板10上には、ゲート絶縁膜16が形成されている。ゲート絶縁膜16上には、TFTのチャネル領域を構成する活性層18が形成されている。活性層18が形成されたゲート絶縁膜16上には、活性層18の一方の側に接続されたソース電極20と、活性層18の他方の側に接続されたドレイン電極を含むドレインバスライン22とが形成されている。ソース電極20及びドレインバスライン22が形成されたゲート絶縁膜16上には、絶縁膜24が形成されている。絶縁膜24上には、ソース電極20に接続された画素電極26が形成されている。絶縁膜24上及び画素電極26上には、ジグザグ状に屈曲して設けられた光透過性の材料よりなる土手状突起物28が形成されている。画素電極26、土手状突起物28が形成された絶縁膜24上には、液晶分子を垂直方向に配向する配向膜30が形成されている。」 上記記載をまとめると、引用文献3には以下の技術事項が記載されている。 「電圧印加時における液晶分子の傾斜方向を制御するために、画素電極26上に土手状突起物28を形成した垂直配向型の液晶表示装置。」 第4 対比・判断 1 本願発明1について (1)対比 本願発明1と引用発明を対比する。 ア 引用発明の「絶縁性基板10」は、本願発明1の「基板」に相当する。 イ 引用発明が備える、「絶縁性基板10の上に形成された第1ゲート電極11」、「第1ゲート電極11の上に形成された第1絶縁層12」、「第1絶縁層12の上に形成され」「チャネル領域13c」が「形成される」「半導体層13」、及び「半導体層13の一端に接続されたソース電極15と、ソース電極15に対向して半導体層13の他端に接続されたドレイン電極16」は、本願発明1の「トランジスタ」に相当する。 ウ 引用発明の「平坦化膜18」は、「第2ゲート電極用ホール23」「以外の領域において」、「半導体層13の上に形成された」「第2絶縁層17の上に形成され」るものであり、また図1Aを参酌しても、上記イで述べた引用発明の本願発明1の「トランジスタ」に相当する部分の一部の上に形成されていることは明らかである。 よって、引用発明の「平坦化膜18」は、本願発明1の「前記トランジスタ上の有機樹脂層」に相当する。 エ 上記ウを踏まえると、引用発明の「第2ゲート電極用ホール23以外の領域においては、平坦化膜18の上に形成されている」「第2ゲート電極19」は、本願発明1の「前記有機樹脂層上の、導電層」に相当する。 オ 上記ウを踏まえると、引用発明の「平坦化膜18の上に形成されている画素電極130」は、本願発明1の「前記有機樹脂層上の、」「画素電極」に相当する。 カ 上記イを踏まえると、引用発明の「半導体装置1」が、「チャネル領域13c」を備え、「材料は、インジウム(In)-ガリウム(Ga)-亜鉛(Zn)-酸素(O)からなる四元系アモルファス酸化物や、酸化亜鉛(ZnO)であ」る「半導体層13」を有することは、本願発明1の「トランジスタ」が「チャネル形成領域を有する酸化物半導体層を有」することに相当する。 キ 引用発明の「半導体装置1」は、本願発明1の「半導体装置」に相当する。 したがって、本願発明1と引用発明との間には、次の一致点、相違点がある。 (一致点) 「基板と、 トランジスタと、 前記トランジスタ上の有機樹脂層と、 前記有機樹脂層上の、導電層及び画素電極と、を有し、 前記トランジスタは、チャネル形成領域を有する酸化物半導体層を有する、 半導体装置。」 (相違点) (相違点1) 本願発明1の「有機樹脂層」は、「前記トランジスタ全体と重なる第1の領域」を有し、「前記導電層は、前記第1の領域と重なる領域を有し」ているのに対し、引用発明の「平坦化膜18」は、引用発明の本願発明1の「トランジスタ」に相当する部分の一部と重なるにとどまり、全体と重なるものでない点。 (相違点2) 本願発明1の「有機樹脂層」は、「前記第1の領域よりも膜厚の厚い第2の領域」を有し、「前記画素電極は、前記第2の領域と重なる領域を有」するのに対し、引用発明の「平坦化膜18」は、本願発明1の「第1の領域」に相当する領域を有していないため、本願発明1の「前記第1の領域よりも膜厚の厚い第2の領域」に相当する領域を特定できない点。 (相違点3) 本願発明1の「有機樹脂層」は「前記第1の基板から前記第2の領域の上面までの高さは、前記第1の基板から前記第1の領域の上面までの高さより高い」のに対し、引用発明の「平坦化膜18」は、「絶縁性基板10に全面に塗布され」るものであるから、どの領域においても基板から上面までの高さが同一である点。 (2)相違点についての判断 事案に鑑み、相違点1について検討する。 ア 引用文献2には、「半導体層1aとゲート電極3aとを含んで構成されているTFT30」において、「ゲート電極3aは」、「局所的に」「半導体層1a」が有する「チャネル領域1a’に近接するように設けられ」るという技術事項が記載されており、図5から、「ゲート電極3a」と「チャネル領域1a’」が対向する領域において、「ゲート電極3a」と「チャネル領域1a’」を絶縁する「第1層間絶縁膜41」は、「ゲート電極3a」と「チャネル領域1a’」を近接させるために厚さが薄くなっていると認められる。 イ 引用発明は、上記(1)ウで述べたように「第2ゲート電極用ホール23」において「平坦膜18」は形成されておらず、また、「第2ゲート電極用ホール23は、第2ゲート電極19が第2絶縁層17に積層する領域であ」るから、引用発明の「第2ゲート電極19」と「チャネル領域13c」の間には、「第2絶縁層17」がある。 よって、引用発明及び引用文献2に記載の技術事項に触れた当業者が検討する事項は、引用発明の「第2絶縁層17」の厚さを薄くすることであり、引用発明の「平坦化膜18」に「第2ゲート電極用ホール23」を形成する際に、「第2絶縁層17」を露出させずに、「第2ゲート電極19」と「第2絶縁層17」の間に「平坦化膜18」の層を残すことではない。さらに、引用発明の「第2ゲート電極19」と「第2絶縁層17」の間に「平坦化膜18」の層を残すことは、「第2ゲート電極19」と「チャネル領域13c」を遠ざけることになるから、両者を近接させる引用文献2の記載の技術事項(上記ア参照)から動機付けられるものではない。 ウ 上記イより、引用発明に引用文献2に記載の技術事項を適用しても、引用発明の「平坦化膜18」は、引用発明が備える本願発明1の「トランジスタ」に相当する構成の全体と重なるものとはならないから、相違点1に係る本願発明1の構成は、当業者であっても、引用発明及び引用文献2に記載された技術事項に基づいて当業者が容易に発明できたものとはいえない。 したがって、相違点2及び3について検討するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても、引用発明及び引用文献2に記載された技術事項に基づいて当業者が容易に発明できたものとはいえない。 エ また、引用文献3には、「電圧印加時における液晶分子の傾斜方向を制御するために、画素電極26上に土手状突起物28を形成した垂直配向型の液晶表示装置。」が記載されているが、相違点1に係る本願発明1の構成については、記載も示唆もされていない。 オ 以上により、本願発明1は、当業者であっても、引用発明、引用文献2及び3に記載された技術事項に基づいて当業者が容易に発明できたものとはいえない。 2 本願発明2について 本願発明2は、本願発明1と同様に半導体装置の発明であり、上記相違点1に係る本願発明1の構成、具体的には「前記有機樹脂層は、前記トランジスタ全体と重なる第1の領域と、」「を有し、」という構成を備えるから、 本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明、引用文献2及び3に記載された技術事項に基づいて当業者が容易に発明できたものとはいえない。 3 本願発明3について 本願発明3は、本願発明1と同様に半導体装置の発明であり、上記相違点1に係る本願発明1の構成、具体的には「前記有機樹脂層は、前記トランジスタ全体と重なる第1の領域と、」「を有し、」という構成を備えるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明、引用文献2及び3に記載された技術事項に基づいて当業者が容易に発明できたものとはいえない。 4 本願発明4及び5について 本願発明4及び5は、本願発明1-3のいずれか一つの発明を減縮した発明であり、本願発明1-3のいずれか一つの特定事項を全て含む発明であるから、本願発明1-3と同じ理由により、当業者であっても、引用発明、引用文献2及び3に記載された技術事項に基づいて当業者が容易に発明できたものとはいえない。 第5 原査定の概要及び原査定についての判断 1 原査定の概要 原査定の概要は次のとおりである。 この出願の下記の請求項に係る発明は、その優先日前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 ・請求項1、4-6 ・引用文献:1、2 ・請求項2、3 ・引用文献1-3 <引用文献等一覧> 1.特開2010-212284号公報 2.特開2009-047967号公報 3.特開2000-193974号公報(周知技術を示す文献) 2 原査定の拒絶の理由についての判断 上記第4に記載した理由により、本願発明1-5は、当業者であっても引用発明、引用文献2、3に記載された技術事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。したがって、原査定を維持することができない。 第6 当審拒絶理由について 当審では、請求項1-5の記載が、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていないとの拒絶の理由を通知しているが、本件補正による補正の結果、この拒絶の理由は解消した。 第7 むすび 以上のとおり、本願発明1-5は、当業者が引用文献1-3に基づいて容易に発明できたものではない。したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2018-10-15 |
出願番号 | 特願2016-226757(P2016-226757) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(G09F)
P 1 8・ 537- WY (G09F) |
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 南川 泰裕 |
特許庁審判長 |
中塚 直樹 |
特許庁審判官 |
▲うし▼田 真悟 清水 稔 |
発明の名称 | 半導体装置 |