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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H04W
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04W
管理番号 1345255
審判番号 不服2017-3784  
総通号数 228 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-12-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-03-15 
確定日 2018-10-10 
事件の表示 特願2015-540090「ワイヤレス・システムの受信機および送信機のための装置、方法、およびコンピュータ・プログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 5月 8日国際公開、WO2014/067799、平成28年 1月14日国内公表、特表2016-500990〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯

本願は、2013年(平成25年)10月18日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2012年(平成24年)11月5日 欧州特許庁)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。

平成28年 3月11日付け 拒絶理由通知書
平成28年 9月20日 意見書、手続補正書の提出
平成28年11月 9日付け 拒絶査定
平成29年 3月15日 拒絶査定不服審判の請求、手続補正書の提


第2 平成29年3月15日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成29年3月15日にされた手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1.補正の概要
本件補正は、平成28年9月20日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された

「 ワイヤレス通信システムの受信機(100)のための装置(10)であって、
無線信号を受信するように動作可能な受信機モジュール(12)であって、前記無線信号は、繰り返しの無線フレームに編成され、無線フレームは、サブフレームにさらに分割される、受信機モジュール(12)と、
前記受信された無線信号の単一のサブフレームを使用して、前記受信された無線信号から第1のペイロード・データ・パケットを抽出するように、また複数の無線フレームの複数のサブフレームを使用して第2のペイロード・データ・パケットを抽出するように動作可能な抽出モジュール(14)と
を備えており、前記抽出モジュール(14)は、前記2つ以上の無線フレームの前記受信された無線信号に対する逆拡散オペレーションを実行して、前記第2のペイロード・データ・パケットについての情報を取得するように動作可能であり、
前記抽出モジュール(14)は、前記第2のペイロード・データ・パケットについての情報を含む受信された無線信号成分をノイズとして取り扱いながら、前記受信された無線信号の前記単一のサブフレームを使用した、前記受信された無線信号からの前記第1のペイロード・データ・パケットを抽出するように動作可能である、装置(10)。」

という発明を、

「 ワイヤレス通信システムの受信機(100)のための装置(10)であって、
無線信号を受信するように動作可能な受信機モジュール(12)であって、前記無線信号は、繰り返しの無線フレームに編成され、無線フレームは、サブフレームにさらに分割される、受信機モジュール(12)と、
前記受信された無線信号の単一のサブフレームを使用して、前記受信された無線信号から第1のペイロード・データ・パケットを抽出するように、また複数の無線フレームの複数のサブフレームを使用して第2のペイロード・データ・パケットを抽出するように動作可能な抽出モジュール(14)と
を備えており、
前記抽出モジュール(14)は、前記第2のペイロード・データ・パケットについての情報を含む受信された無線信号成分をノイズとして取り扱いながら、前記受信された無線信号の前記単一のサブフレームを使用した、前記受信された無線信号からの前記第1のペイロード・データ・パケットを抽出するように動作可能であり、前記抽出モジュール(14)は、次いで、抽出された前記第1のペイロード・データ・パケットに基づいて干渉相殺を前記受信された無線信号に適用し、前記2つ以上の無線フレームの前記受信された無線信号に対する逆拡散オペレーションを実行して、前記第2のペイロード・データ・パケットについての情報を取得するように動作可能である、装置(10)。」

という発明とすることを含むものである。

2.補正の適否
(1)新規事項の有無、シフト補正の有無、目的要件
請求項1についての上記補正は、「抽出モジュール(14)」について、本件補正前の「前記2つ以上の無線フレームの前記受信された無線信号に対する逆拡散オペレーションを実行して、前記第2のペイロード・データ・パケットについての情報を取得するように動作可能」という動作と「前記第2のペイロード・データ・パケットについての情報を含む受信された無線信号成分をノイズとして取り扱いながら、前記受信された無線信号の前記単一のサブフレームを使用した、前記受信された無線信号からの前記第1のペイロード・データ・パケットを抽出するように動作可能」という動作の時間的関係について、「前記抽出モジュール(14)は、前記第2のペイロード・データ・パケットについての情報を含む受信された無線信号成分をノイズとして取り扱いながら、前記受信された無線信号の前記単一のサブフレームを使用した、前記受信された無線信号からの前記第1のペイロード・データ・パケットを抽出するように動作可能」という動作に「次いで」、「前記抽出モジュール(14)は、前記2つ以上の無線フレームの前記受信された無線信号に対する逆拡散オペレーションを実行して、前記第2のペイロード・データ・パケットについての情報を取得するように動作可能」という動作を行うと限定した。
また、請求項1についての上記補正は、「抽出モジュール(14)」について、本件補正前の「前記2つ以上の無線フレームの前記受信された無線信号に対する逆拡散オペレーションを実行して、前記第2のペイロード・データ・パケットについての情報を取得するように動作可能」という動作に「抽出された前記第1のペイロード・データ・パケットに基づいて干渉相殺を前記受信された無線信号に適用し、」との限定を付した。
したがって、請求項1についての上記補正は、特許請求の範囲を減縮するものである。

そして、これらの補正は、特許法第17条の2第3項、第4項に違反するところはない。

(2)独立特許要件
請求項1についての上記補正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、本件補正後の請求項1に係る発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるのか否かについて、以下において検討する。

ア 本願補正発明
本件補正により補正された特許請求の範囲の請求項1は、以下の通りである(再掲)。

「 ワイヤレス通信システムの受信機(100)のための装置(10)であって、
無線信号を受信するように動作可能な受信機モジュール(12)であって、前記無線信号は、繰り返しの無線フレームに編成され、無線フレームは、サブフレームにさらに分割される、受信機モジュール(12)と、
前記受信された無線信号の単一のサブフレームを使用して、前記受信された無線信号から第1のペイロード・データ・パケットを抽出するように、また複数の無線フレームの複数のサブフレームを使用して第2のペイロード・データ・パケットを抽出するように動作可能な抽出モジュール(14)と
を備えており、
前記抽出モジュール(14)は、前記第2のペイロード・データ・パケットについての情報を含む受信された無線信号成分をノイズとして取り扱いながら、前記受信された無線信号の前記単一のサブフレームを使用した、前記受信された無線信号からの前記第1のペイロード・データ・パケットを抽出するように動作可能であり、前記抽出モジュール(14)は、次いで、抽出された前記第1のペイロード・データ・パケットに基づいて干渉相殺を前記受信された無線信号に適用し、前記2つ以上の無線フレームの前記受信された無線信号に対する逆拡散オペレーションを実行して、前記第2のペイロード・データ・パケットについての情報を取得するように動作可能である、装置(10)。」

ここで「前記2つ以上の無線フレームの前記受信された無線信号に対する逆拡散オペレーションを実行して、前記第2のペイロード・データ・パケットについての情報を取得するように動作可能である」という記載の「前記2つ以上の無線フレーム」は明らかに「前記複数の無線フレーム」の誤記であるから、本件補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)は、以下のとおりであると認める。(下線は当審が付与。)

「 ワイヤレス通信システムの受信機(100)のための装置(10)であって、
無線信号を受信するように動作可能な受信機モジュール(12)であって、前記無線信号は、繰り返しの無線フレームに編成され、無線フレームは、サブフレームにさらに分割される、受信機モジュール(12)と、
前記受信された無線信号の単一のサブフレームを使用して、前記受信された無線信号から第1のペイロード・データ・パケットを抽出するように、また複数の無線フレームの複数のサブフレームを使用して第2のペイロード・データ・パケットを抽出するように動作可能な抽出モジュール(14)と
を備えており、
前記抽出モジュール(14)は、前記第2のペイロード・データ・パケットについての情報を含む受信された無線信号成分をノイズとして取り扱いながら、前記受信された無線信号の前記単一のサブフレームを使用した、前記受信された無線信号からの前記第1のペイロード・データ・パケットを抽出するように動作可能であり、前記抽出モジュール(14)は、次いで、抽出された前記第1のペイロード・データ・パケットに基づいて干渉相殺を前記受信された無線信号に適用し、前記複数の無線フレームの前記受信された無線信号に対する逆拡散オペレーションを実行して、前記第2のペイロード・データ・パケットについての情報を取得するように動作可能である、装置(10)。」

イ 引用例に記載された事項、引用発明及び周知事項
(ア)引用例に記載された事項及び引用発明
原査定の拒絶の理由で引用された国際公開第2011/018419号(以下、「引用例」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。(下線は当審が付与。)

a 「Another aspect is implemented in a receiving device, in particular a base station for a wireless radio access system, comprising: a receiving unit for reception of an Orthogonal Frequency Division Multiple Access, OFDMA, signal, and an extraction unit adapted to extract a low-rate M2M signal from the OFDMA signal, the low-rate M2M signal having a spread-spectrum waveform being embedded into the OFDMA signal. The receiving device may be implemented in a machine terminal which extracts the required M2M information from the OFDMA signal. Alternatively, the receiving device may be implemented in a base station, the receiving device being e.g. implemented as an antenna or as an antenna array. The base station may be connected to a (core) computer network, such as the internet, and may be adapted to extract the M2M signal from the OFDMA signal for generating two separate data streams to be transmitted over the core network, the first (low-rate) data stream containing the information of the M2M signal, the second (high-rate) data stream containing information in the host OFDMA signal being used for H2M and H2H communications. It will be understood that the receiving device may also be implemented as an in-line card arranged e.g. in a base station, the receiving unit being adapted for receiving the OFDMA signal from an antenna / transceiver which is already deployed in the base station for performing transmission / reception of radio signals.

A final aspect relates to a wireless radio network adapted for performing Orthogonal Frequency Division Multiple Access, OFDMA, in particular according to the IEEE 802.16 (WiMAX), IEEE 802.11a/g (WLAN), or 3GPP eUTRAN (LTE/LTE-Advanced) standard, the wireless radio (access) network comprising at least one of a transmission device as described above and a receiving device as described above. It will be understood that the receiving device and the transmission device may be implemented as one and the same physical entity, in particular as a transceiver (card) which may be located e.g. in a base station of the radio access network. Further features and advantages are stated in the following description of exemplary embodiments, with reference to the figures of the drawing, which shows significant details, and are defined by the claims. The individual features can be implemented individually by themselves, or several of them can be implemented in any desired combination.」(7ページ1?30行)
(当審仮訳:
別の態様は、ワイヤレス無線アクセス・システムのための受信デバイス、特には基地局において実装され、受信デバイスは、直交周波数分割多元接続(OFDMA)信号の受信のための受信ユニットと、低レートのM2M信号をOFDMA信号から抽出するように構成された抽出ユニットとを含み、低レートのM2M信号は、OFDMA信号の中に埋め込まれているスペクトル拡散波形を有する。受信デバイスは、要求されたM2M情報をOFDMA信号から抽出するマシン端末において実装されてもよい。代替的には、受信デバイスは基地局において実装されてもよく、受信デバイスは、たとえば、アンテナとして、又はアンテナ・アレイとして実装される。基地局は、インターネットなどの(コア)コンピュータ・ネットワークに接続されていてよく、コアネットワーク上で送信されることになる2つの別個のデータ・ストリームを生成するために、M2M信号をOFDMA信号から抽出するように構成されていてよく、第1の(低レート)データ・ストリームは、M2M信号の情報を含み、第2の(高レート)データ・ストリームは、H2M通信及びH2H通信のために使用される、ホストOFDMA信号中の情報を含む。受信デバイスはまた、たとえば基地局に配置されるインライン・カードとして実装されてもよく、受信ユニットは、無線信号の送信/受信を実行するために基地局に既に配置されたアンテナ/トランシーバからのOFDMA信号を受信するために構成されていることが理解されるであろう。

最後の態様は、特に、IEEE802.16(WiMAX)、IEEE802.11a/g(WLAN)、又は3GPP eUTRAN(LTE/LTE-Advanced)標準に従って、直交周波数分割多元接続(OFDMA)を実行するために構成されたワイヤレス無線ネットワークに関し、ワイヤレス無線(アクセス)ネットワークは、上記で説明したような送信デバイス、及び上記で説明したような受信デバイスのうちの少なくとも1つを含む。受信デバイス及び送信デバイスは、1つの、同じの物理的エンティティとして、特には、たとえば、無線アクセス・ネットワークの基地局に位置することができるトランシーバ(カード)として実装されてもよいことが理解されるであろう。)

b 「Detailed Description of Preferred Embodiments

Fig. 1 shows a radio access network 1 which is adapted for performing Orthogonal Frequency Division Multiple Access, OFDMA. The radio access network 1 may be compliant with at least one wireless communication standard, e.g. the IEEE 802.16 (WiMAX), IEEE 802.11a/g (WLAN), or 3GPP eUTRAN (LTE/LTE-Advanced) standard. The access network 1 comprises a number of base stations 2 which may be interconnected for coordinated transmission / reception of radio signals.

For transmitting OFDMA signals to end user terminals 4, the base station 2 comprises a radio transmission and reception unit 2a in the form of a radio antenna array (air interface), and a generating unit 2b being adapted to generate the OFDMA baseband signal which is transmitted over the air interface 2a.

At least one of the base stations 2 is connected to a data network 3, such as the internet, for providing broadband access to the plurality of mobile end user terminals 4 which are adapted to receive and transmit high data-rate OFDMA (host) signals 5. Moreover, the end user terminals 4 each comprise an end-user interface (not shown) for allowing the end users to have access to the core network 3 and/or to exchange data with other end user terminals 4.

The wireless communication network 1 of Fig. 1 also has a plurality of machine terminals 6. The machine terminals 6 may for example be sensor devices which allow measurement of certain physical properties such as pressure, temperature, etc. For sharing the measurement data among the machine terminals 6 and/or for transporting the measurement data over the core network 3 to a remote location, an overlay network for the machine-to-machine communication is implemented in the wireless communication network 1. Such an overlay network may be used as data transmitted / received by the end user terminals 4 is typically not relevant for the machine terminals 6 and vice versa. Moreover, M2M signals 7 of the machine terminals 6 typically have a lower data rate (e.g. by a factor of five or ten) as compared to the OFDMA host signals 5.

For implementing the overlay network in the wireless network 1 of Fig. 1 , the low-rate M2M signal 7 is superimposed as a spread-spectrum waveform to the OFDMA host waveform 5 in the generating unit 2b of the base station 2 for downlink transmission of the combined signal to both the machine terminals 6 and the user terminals 4.

In the present example, the M2M signal 7 is directly superimposed to the OFDMA signal 5 (e.g. by adding amplitude or power levels of the two signals 7,5), the M2M signal 7 being spread out over the entire bandwidth range BW_(OFDMA) (cf. Fig. 2) of the OFDMA (baseband) signal 5 in order to keep cross-layer interference low. The machine terminals 6 have a transceiver (not shown) which is adapted to transmit and receive the low-rate M2M signal 7 within the spectral bandwidth of the OFDMA signal 5. It will be understood that in the uplink, coordinated transmission of M2M signals from different machine terminals 6 may be achieved using e.g. time-division multiple access, possibly based on signalling information contained in the OFDMA / M2M downlink signals from the base station 2. Also, for the extraction of the M2M signal 7 from the OFDMA signal 5, the machine terminals 6 need not be capable of processing the OFDMA signal 5 itself, i.e. the machine terminal 6 may only be adapted for processing the low-rate M2M signal 5, e.g. treating the contribution of the high-speed OFDMA signal 5 as noise. In the latter case, signalling information from the base station 2 is typically contained in the M2M downstream signal 5.

The base station 2 typically also comprises an extraction unit 2c adapted to extract the low-rate M2M signal 7 from the composite OFDMA signal 5. For this purpose, the extraction unit 2c may be equipped with a suitable processing device such as a low-pass filter. The data contained in the M2M signal 7 and in the OFDMA host signal 5 may then be transported in the form of separate data streams over the core network 3.

As an alternative to the direct superposition described above, the M2M signal 7 may be embedded into the OFDMA host signal 5 in a way which will be described in the following with reference to Fig 2, representing a time-frequency diagram of the OFDMA signal 5. The OFDMA signal 5 is divided into a plurality of time-frequency tiles 8, each corresponding to a sub-carrier of the OFDMA format in the frequency domain and having a fixed time duration T _(OFDMA), typically corresponding to the time duration of a transmitted symbol. As can also be gathered from Fig. 2, the OFDMA host signal 5 comprises a number of unoccupied time-frequency tiles 7a to 7e (also referred to as spectrum holes) which are distributed over the bandwidth range BW_(OFDMA) of the OFDMA host signal 5 and which are used as a spread-spectrum waveform for transporting the M2M signal 7 in a coordinated way.

The distribution of the time-frequency tiles 7a to 7e which are used for transporting the M2M signal 7 can be self-managed dynamically by the radio access system 1 due to the joint needs of the M2M and H2M/H2H layers. In the example of Fig. 2, a fixed number of OFDMA sub-carriers (occupying four physical resource blocks) which is spread over the spectrum of the OFDMA signal 5 is used. Also, a fixed time duration T_(M2M) of the time-frequency tiles 7a to 7e is used in the example of Fig. 2, the time duration T_(M2M) being an integer multiple, e.g. five times, of the time duration T_(OFDMA) of an OFDMA time- frequency tile 8. Of course, both the time duration and the number of sub-carriers which are occupied by the time-frequency tiles 7a to 7e may also be adjusted dynamically. In any case, the uplink transmissions from the machine terminals 6 and the user terminals 4 should be coordinated in this case, e.g. by providing downlink signaling from the base station 2.

In both cases described above, for extracting the embedded M2M signal 7 from the OFDMA signal 5, joint detection and/or successive interference cancellation (SIC) may be preformed in the extraction unit 2c of the base station 2 and/or in the machine terminals 6. Also, advanced signal processing techniques such as signal transmission with known interference can be applied in the generating unit 2b of the base station 2 and possibly also in the machine terminals 6 to minimize cross-layer interference. One skilled in the art will appreciate that other advanced signal processing techniques, such as network MIMO(multipoint transmission/reception) may be applied as well in order to reduce the impact of the low-rate overlay M2M signal 7 to the host signal (OFDM) part 5.」(8ページ18行?11ページ29行)
(当審仮訳:
望ましい具体化の詳細な記述

図1は、直交周波数分割多元接続(OFDMA)を実行するために構成された無線アクセス・ネットワーク1を示す。無線アクセス・ネットワーク1は、少なくとも1つのワイヤレス通信標準、たとえば、IEEE802.16(WiMAX)、IEEE802.11a/g(WLAN)、又は3GPP eUTRAN(LTE/LTE-Advanced)標準に準拠してよい。アクセス・ネットワーク1は、無線信号の協調的な送信/受信のために相互に接続されていてよい、いくつかの基地局2を含む。

OFDMA信号をエンドユーザ端末4に送信するために、基地局2は、無線アンテナ・アレイ(エア・インターフェース)の形態での無線送信及び受信ユニット2aと、エア・インターフェース2a上で送信されるOFDMAベースバンド信号を生成するように構成された生成ユニット2bとを含む。

高いデータレートのOFDMA(ホスト)信号5を受信し、送信するように構成された複数の移動エンドユーザ端末4へのブロードバンド・アクセスを提供するために、基地局2のうちの少なくとも1つは、インターネットなどのデータ・ネットワーク3に接続されている。さらに、エンドユーザ端末4のそれぞれは、エンドユーザがコアネットワーク3にアクセスし、及び/又は他のエンドユーザ端末4とデータを交換するのを可能にするために、エンドユーザ・インターフェース(図示せず)を含む。

図1のワイヤレス通信ネットワーク1はまた、複数のマシン端末6を有する。マシン端末6は、たとえば、圧力、温度、その他などの、特定の物理的特性の測定を可能にするセンサ・デバイスであってもよい。マシン端末6の間で測定データを共有するために、及び/又はコアネットワーク3上で測定データをリモート・ロケーションに伝送するために、マシン・ツー・マシン通信用のオーバーレイ・ネットワークが、ワイヤレス通信ネットワーク1において実装される。そのようなオーバーレイ・ネットワークは、エンドユーザ端末4によって送信/受信されたデータが、通常、マシン端末6に関係しないときに、また逆の場合にも使用することができる。さらに、マシン端末6のM2M信号7は、通常、OFDMAホスト信号5と比較して(たとえば5分の1又は10分の1の)、低いデータレートを有する。

図1のワイヤレス・ネットワーク1においてオーバーレイ・ネットワークを実装するために、低レートのM2M信号7は、スペクトル拡散波形として、基地局2の生成ユニット2bにおいてOFDMAホスト波形5に重畳されて、組み合わされた信号を、マシン端末6及びユーザ端末4の両方にダウンリンク送信する。

本例において、M2M信号7は、OFDMA信号5に(たとえば、2つの信号7,5の振幅又は電力レベルを足すことによって)直接重畳され、M2M信号7は、交差層干渉を低く保つために、OFDMA(ベースバンド)信号5の全帯域幅範囲BWOFDMA(図2を参照)にわたって広がる。マシン端末6は、OFDMA信号5のスペクトル帯域幅内で、低レートのM2M信号7を送信し、受信するように構成されたトランシーバ(図示せず)を有する。アップリンクでは、異なるマシン端末6からのM2M信号の協調的な送信が、たとえば時間分割多元接続を使用して、場合によっては基地局2からのOFDMA/M2Mダウンリンク信号に含まれるシグナリング情報に基づいて、達成され得ることが理解されるであろう。また、OFDMA信号5からM2M信号7を抽出するために、マシン端末6は、OFDMA信号5それ自体を処理することが可能である必要なく、すなわち、マシン端末6は、低レートのM2M信号5を処理する(たとえば、高速のOFDMA信号5の寄与を雑音として扱う)ためにのみ構成されていてもよい。後者のケースでは、基地局2からのシグナリング情報は、通常、M2Mダウンストリーム信号5に含まれる。

基地局2はまた、低レートのM2M信号7を複合OFDMA信号5から抽出するように構成された抽出ユニット2cを典型的に含む。この目的のために、抽出ユニット2cは、ローパス・フィルタなどの好適な処理デバイスを具備することができる。M2M信号7及びOFDMAホスト信号5に含まれるデータは次いで、別個のデータ・ストリームの形で、コアネットワーク3上で伝送されてもよい。

上記で説明した直接重畳の代替として、OFDMA信号5の時間-周波数図を表す図2を参照して以下で説明されるようなやり方で、M2M信号7は、OFDMAホスト信号5の中に埋め込まれてもよい。OFDMA信号5は、複数の時間-周波数タイル8に分割され、そのそれぞれが、周波数ドメインにおいてOFDMA形式のサブキャリアに対応し、典型的には送信シンボルの持続時間に対応した一定の持続時間TOFDMAを有する。図2からもまた推測できるように、OFDMAホスト信号5は、いくつかの占有されていない時間-周波数タイル7aから7e(スペクトル・ホールとも呼ばれる)を含み、これらの時間-周波数タイルは、OFDMAホスト信号5の帯域幅範囲BWOFDMAにわたって分布され、M2M信号7を協調的なやり方で伝送するためのスペクトル拡散波形として使用される。

M2M信号7を伝送するために使用される時間-周波数タイル7aから7eの分布は、M2M層及びH2M/H2H層の結合ニーズのために、無線アクセス・システム1によって動的に自己管理されてもよい。図2の例では、OFDMA信号5のスペクトル上に広がる一定数のOFDMAサブキャリア(4つの物理的リソース・ブロックを占有している)が使用される。また、図2の例では、時間-周波数タイル7aから7eの一定持続時間TM2Mが使用され、持続時間TM2Mは、OFDMA時間-周波数タイル8の持続時間TOFDMAの整数倍であり、たとえば5倍である。当然ながら、時間-周波数タイル7aから7eによって占有される、持続時間及びサブキャリアの数の両方もまた、動的に調整されてもよい。いずれにせよ、マシン端末6及びユーザ端末4からのアップリンク送信は、このケースでは、たとえば基地局2からダウンリンク・シグナリングを提供することによって、協調されるべきである。

上記で説明した両方のケースにおいて、埋め込まれたM2M信号7をOFDMA信号5から抽出するために、結合検出及び/又は逐次干渉除去(SIC)が、基地局2の抽出ユニット2cにおいて、及び/又はマシン端末6において、実行されてもよい。また、既知の干渉を用いる信号送信などの高度な信号処理技術が、基地局2の生成ユニット2bに、及び場合によってはやはりマシン端末6に適用されて、交差層干渉を最小限にすることができる。当業者は、ネットワークMIMO(マルチポイント送信/受信)などの他の高度な信号処理技術が、ホスト信号(OFDM)部分5への低レート・オーバーレイM2M信号7の影響を削減するために、同様に適用されてもよいことを理解するであろう。)

c 「Patent Claims
1. Method for transporting a machine-to-machine, M2M, signal (7) over a wireless radio network (1) using an Orthogonal Frequency Division Multiple Access, OFDMA, signal (5), the method comprising:
embedding the M2M signal (7) as a spread-spectrum waveform into the bandwidth range (BW O FDM A ) of the OFDMA signal (5), and transporting the OFDMA signal (5) containing the M2M signal (7) which has a lower data rate than the OFDMA signal (5) over the wireless radio access network (1).
(中略)
14. Receiving device, in particular base station (2), for a wireless radio access system (1), comprising:
a receiving unit (2a) for reception of an Orthogonal Frequency Division Multiple Access, OFDMA, signal (5), and
an extraction unit (2c) adapted to extract an M2M signal (7) which has a lower data rate than the OFDMA signal (5) from the OFDMA signal (5), the M2M signal (7) having a spread-spectrum waveform being embedded into the OFDMA signal (5).
15. Wireless radio network (1), in particular according to the IEEE 802.16 (WiMAX), IEEE 802.11a/g (WLAN), or 3GPP eUTRAN (LTE/LTE- Advanced) standard, adapted for performing Orthogonal Frequency Division Multiple Access, OFDMA, and comprising at least one of a transmission device (2) according to claim 10 and a receiving device (2) according to claim 14.」(13ページ?15ページ)
(当審仮訳:
特許請求の範囲
1 直交周波数分割多元接続(OFDMA)信号(5)を使用するワイヤレス無線ネットワーク(1)上で、マシン・ツー・マシン(M2M)信号(7)を伝送する方法であって、
前記M2M信号(7)を、スペクトル拡散波形として前記OFDMA信号(5)の帯域幅範囲(BWOFDMA)の中に埋め込むステップと、
前記OFDMA信号(5)よりも低いデータレートを有する前記M2M信号(7)を含む前記OFDMA信号(5)を、前記ワイヤレス無線アクセス・ネットワーク(1)上で伝送するステップとを含む、方法。
(中略)
14 ワイヤレス無線アクセス・システム(1)のための受信デバイス、特に基地局(2)であって、
直交周波数分割多元接続(OFDMA)信号(5)の受信のための受信ユニット(2a)と、
前記OFDMA信号(5)よりも低いデータレートを有するM2M信号(7)を、前記OFDMA信号(5)から抽出するように構成された抽出ユニット(2c)とを備え、前記M2M信号(7)が、前記OFDMA信号(5)の中に埋め込まれているスペクトル拡散波形を有する、受信デバイス。
15 特に、IEEE802.16(WiMAX)、IEEE802.11a/g(WLAN)、又は3GPP eUTRAN(LTE/LTE-Advanced)標準に従って、直交周波数分割多元接続(OFDMA)を実行するために構成され、請求項10に記載の送信デバイス(2)及び請求項14に記載の受信デバイス(2)のうちの少なくとも1つを含む、ワイヤレス無線ネットワーク(1)。)

上記の摘記した引用例の各記載からみて、

(a)上記a、cの記載によれば、受信デバイスはワイヤレス無線ネットワークの基地局の受信デバイスであり、ワイヤレス無線ネットワークの一例としてLTEが含まれることは明らかである。また、上記aの記載によれば受信デバイスには「アンテナ」と「トランシーバ」が含まれていることは明らかである。そして、上記a、cの記載によれば、受信デバイスは直交周波数分割多元接続(OFDMA)信号(5)の受信のための受信ユニット(2a)と前記OFDMA信号(5)よりも低いデータレートを有するM2M信号(7)を、前記OFDMA信号(5)から抽出するように構成された抽出ユニット(2c)とを備えている。
したがって、受信デバイスは「LTEであるワイヤレス無線ネットワークの受信デバイスであって、アンテナと、トランシーバと、直交周波数分割多元接続(OFDMA)信号(5)の受信のための受信ユニット(2a)とM2M信号(7)を前記OFDMA信号(5)から抽出するように構成された抽出ユニット(2c)とを備え」ていることは明らかである。

(b)「受信ユニット」は「直交周波数分割多元接続(OFDMA)信号の受信」するものであるところ、上記aの「基地局は、インターネットなどの(コア)コンピュータ・ネットワークに接続されていてよく、コアネットワーク上で送信されることになる2つの別個のデータ・ストリームを生成するために、M2M信号をOFDMA信号から抽出するように構成されていてよく、第1の(低レート)データ・ストリームは、M2M信号の情報を含み、第2の(高レート)データ・ストリームは、H2M通信及びH2H通信のために使用される、ホストOFDMA信号中の情報を含む。」という記載及び上記bの「M2M信号7及びOFDMAホスト信号5に含まれるデータは次いで、別個のデータ・ストリームの形で、コアネットワーク3上で伝送されてもよい。」という記載によれば、基地局からコアネットワーク3上にOFDMAホスト信号5を伝送するためには、受信した無線信号からOFDMA信号の抽出を行っていることは明らかである。

(c)上記bの記載によれば、「埋め込まれたM2M信号7をOFDMA信号5から抽出するために、結合検出及び/又は逐次干渉除去(SIC)が、基地局2の抽出ユニット2cにおいて、及び/又はマシン端末6において、実行されてもよい。」と記載されていることから、「抽出ユニット2cは、埋め込まれたM2M信号7をOFDMA信号5から抽出するために、逐次干渉除去(SIC)を実行」することが明らかである。
また、上記a、cの記載によれば、「前記M2M信号(7)が、前記OFDMA信号(5)の中に埋め込まれているスペクトル拡散波形を有する」ことから、M2M信号を抽出するためには逆拡散オペレーションを実行する必要があることは自明である。すなわち、M2M信号をOFDMA信号から抽出する「抽出ユニット2cは、逆拡散オペレーションを実行」することは明らかである。

以上を総合すると、引用例には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認める。

「 LTEであるワイヤレス無線ネットワークの基地局の受信デバイスであって、
アンテナと、
トランシーバと、
受信した無線信号からOFDMA信号の抽出を行う、直交周波数分割多元接続(OFDMA)信号の受信のための受信ユニットと、
M2M信号を前記OFDMA信号から抽出するように構成された抽出ユニットと、
を備えており、
抽出ユニットは、埋め込まれたM2M信号をOFDMA信号から抽出するために、逐次干渉除去(SIC)を実行し、逆拡散オペレーションを実行する、受信デバイス。」

(イ)周知事項
原査定の拒絶の理由で引用された国際公開第2011/085403号(以下、「周知例」という。)には、以下の事項が記載されている。(下線は当審が付与。)

a 「[0044] UMTS LTE may support scalable carrier bandwidths from 20 MHz down to 1.4 MHZ. In LTE, an RB is defined as 12 sub-carriers when the sub-carrier bandwidth is 15 kHz, or 24 sub-carriers when the sub-carrier bandwidth is 7.5 kHz. In an exemplary implementation, in the time domain a radio frame may be defined to be 10 ms long and include 10 subframes of 1 millisecond (ms) each. Every sub frame consists of 2 slots, where each slot is 0.5 ms. The subcarrier spacing in the frequency domain in this case is 15 kHz. Twelve of these subcarriers together (per slot) constitute an RB, so in this implementation one resource block is 180 kHz. 6 Resource blocks fit in a carrier of 1.4 MHz and 100 resource blocks fit in a carrier of 20 MHz. 」(8ページ26行?9ページ2行)
(当審訳:
[0044]UMTS LTEは、20MHzから1.4MHzまでのスケーラブルなキャリア帯域幅をサポートし得る。LTEでは、RBは、サブキャリア帯域幅が15kHzであるときは12個のサブキャリアとして定義され、又はサブキャリア帯域幅が7.5kHzであるときは24個サブキャリアとして定義される。例示的な実装形態では、時間領域において、無線フレームが10ms長であるように定義され得、それぞれ1ミリ秒(ms)の10個のサブフレームを含む。あらゆるサブフレームは、各スロットが0.5msである2つのスロットからなる。この場合、周波数領域におけるサブキャリア間隔は15kHzである。(スロットごとに)これらのサブキャリアのうち12個を互いに加えると、RBが構成され、したがって、この実装形態では、1つのリソースブロックは180kHzである。6つのリソースブロックは1.4MHzのキャリアに適合し、100個のリソースブロックは20MHzのキャリアに適合する。)

周知例の上記記載にもあるように、「LTEにおける無線信号は、無線フレームで編成され、無線フレームはサブフレームにさらに分割される。」ことはLTEで規格化されているように技術常識ともいえる周知事項である。

ウ 対比及び判断
本願補正発明と引用発明を対比すると、

a 引用発明の「LTEであるワイヤレス無線ネットワーク」は、本願補正発明の「ワイヤレス通信システム」に含まれる。
そして、本願明細書段落10に「ワイヤレス通信システムの受信機は、さらに、モバイル・トランシーバや基地局トランシーバなど、ワイヤレス通信システムのトランシーバの中に含まれ、又は包含される。」、「本装置は、ワイヤレス通信システムの受信機の中に含まれ、又は包含される。」と記載されていることから、本願補正発明の「受信機(100)」は基地局トランシーバの中に含まれる受信機といえ、本願補正発明の「受信機(100)のための装置(10)」は当該受信機の中の構成である。
一方、引用例には明記されていないが、引用発明の「基地局」もDL送信機とUL受信機を備えることは技術常識であり、引用例の「ワイヤレス無線アクセス・システムのための受信デバイス、特には基地局において実装され」との記載(上記イ(ア)a参照。)からも明らかなように、引用例の「受信デバイス」は、基地局のUL受信機の中にあり、基地局のUL受信機のための装置であるといえる。
したがって、本願発明の「装置(10)」と引用発明の「受信デバイス」は、「ワイヤレス通信システムの受信機のための装置」といえる点で一致している。

b 本願補正発明の「無線信号を受信するように動作可能な受信機モジュール(12)」は、本願明細書段落14の「受信するための手段は、1つ又は複数のアンテナ、低ノイズ増幅器(LNA:Low Noise Amplifier)、1つ又は複数のフィルタ、1つ又は複数のミキサ、1つ又は複数の変換器など受信機の典型的なコンポーネントを備えることができる。いくつかの実施形態においては、受信するための手段は、デジタル信号プロセッサ(DSP:Digital Signal Processor)、中央演算処理装置(CPU:Central Processing Unit)、汎用プロセッサなど、それに応じて適合されたハードウェアの上で実行されているソフトウェアを使用して実施されることもある。さらに受信するための手段は、受信するように動作可能な1つ又は複数のデバイス、1つ又は複数のモジュール、あるいは1つ又は複数のユニットを使用して実施されることもある。」と記載を考慮すれば、当該「受信するための手段」を含むものと認められる。
一方、引用発明の「アンテナと、トランシーバと、直交周波数分割多元接続(OFDMA)信号の受信のための受信ユニット」は、当該「受信するための手段」と同様の働きをしていることは明らかである。
したがって、引用発明の「アンテナと、トランシーバと、直交周波数分割多元接続(OFDMA)信号の受信のための受信ユニット」は、本願補正発明の「無線信号を受信するように動作可能な受信機モジュール(12)」に相当する。

c LTEでは送信時間間隔(Transmission Time Interval:TTI)はサブフレーム単位であり、LTEではパケット通信を行っていることは技術常識であるから、引用発明のLTEにおける「直交周波数分割多元接続(OFDMA)信号」は本願補正発明の「無線信号の単一のサブフレームを使用した第1のペイロード・データ・パケット」といえる。
したがって、引用発明の「受信した無線信号からOFDMA信号の抽出を行う、受信ユニット」は、本願補正発明の「受信された無線信号の単一のサブフレームを使用して、前記受信された無線信号から第1のペイロード・データ・パケットを抽出する」ことを行っているといえる。
また、引用発明の「M2M信号」と本願補正発明の「第2のペイロード・データ・パケット」は、どちらも拡散された無線信号であるから、「拡散された無線信号」の点で一致する。そして、引用発明の「抽出ユニット」の「M2M信号を前記OFDMA信号から抽出する」ことと本願補正発明の「複数の無線フレームの複数のサブフレームを使用して第2のペイロード・データ・パケットを抽出するように動作可能」とは「拡散された無線信号を抽出するように動作可能」の点で一致する。
そして、引用発明の「受信ユニット」のOFDMA信号を抽出する構成及び「抽出ユニット」を「抽出モジュール」と称することは任意であり、これらは、本願補正発明の「抽出モジュール(14)」に相当する。
したがって、引用発明の「受信ユニット」のOFDMA信号を抽出する構成及び「抽出ユニット」と本願補正発明の「抽出モジュール(14)」は「受信された無線信号の単一のサブフレームを使用して、前記受信された無線信号から第1のペイロード・データ・パケットを抽出するように、また拡散された無線信号を抽出するように動作可能な抽出モジュール」である点で一致する。

d cで認めたように、引用発明の「受信した無線信号からOFDMA信号の抽出を行う、受信ユニット」は、本願補正発明の「受信された無線信号の単一のサブフレームを使用して、前記受信された無線信号から第1のペイロード・データ・パケットを抽出する」ことを行っているといえ、引用発明の「受信ユニット」のOFDMA信号を抽出する構成は、本願補正発明の「抽出モジュール(14)」の一部に相当する。
したがって、引用発明の「受信ユニット」のOFDMA信号を抽出する構成と本願補正発明の「抽出モジュール(14)」は「抽出モジュールは、受信された無線信号の単一のサブフレームを使用した、前記受信された無線信号からの第1のペイロード・データ・パケットを抽出するように動作可能」である点で一致している。

e 逐次干渉除去(SIC)では受信信号から干渉信号のレプリカを作成し、受信信号から除去することで所望の受信信号の検出を確実にする手法であるから、引用発明の「埋め込まれたM2M信号をOFDMA信号から抽出するために、逐次干渉除去(SIC)を実行」は、受信した無線信号からOFDMA信号の抽出をした後に、受信された無線信号にOFDMA信号の干渉相殺を適用するものであることは明らかである。
したがって、引用発明の「抽出ユニットは、埋め込まれたM2M信号をOFDMA信号から抽出するために、逐次干渉除去(SIC)を実行し、M2M信号を受信するためには逆拡散オペレーションを実行する」は、本願補正発明と「抽出モジュールは、」受信された無線信号からの第1のペイロード・データ・パケットを抽出するように動作し、「次いで、干渉相殺を受信された無線信号に適用し、受信された無線信号に対する逆拡散オペレーションを実行して、拡散された無線信号についての情報を取得するように動作可能である」の点で一致する。

以上を総合すると、本願補正発明と引用発明とは、以下の点で一致し、また、相違している。

(一致点)
「 ワイヤレス通信システムの受信機のための装置であって、
無線信号を受信するように動作可能な受信機モジュールと、
前記受信された無線信号の単一のサブフレームを使用して、前記受信された無線信号から第1のペイロード・データ・パケットを抽出するように、また拡散された無線信号を抽出するように動作可能な抽出モジュールと
を備えており、
前記抽出モジュールは、受信された無線信号の単一のサブフレームを使用した、前記受信された無線信号からの第1のペイロード・データ・パケットを抽出するように動作可能であり、前記抽出モジュールは、次いで、干渉相殺を受信された無線信号に適用し、受信された無線信号に対する逆拡散オペレーションを実行して、拡散された無線信号についての情報を取得するように動作可能である、装置。」

(相違点1)
一致点である「無線信号を受信するように動作可能な受信機モジュール」の「無線信号」に関し、本願補正発明では「無線信号は、繰り返しの無線フレームに編成され、無線フレームは、サブフレームにさらに分割される」のに対し、引用発明では「LTEである」ことが規定されているだけであり、当該事項が明示されていない点。

(相違点2)
一致点である「拡散された無線信号」に関し、本願補正発明では「複数の無線フレームの複数のサブフレームを使用し」た「第2のペイロード・データ・パケット」であるのに対し、引用発明では「M2M信号」と規定されているだけである点。

(相違点3)
一致点である「受信された無線信号からの第1のペイロード・データ・パケットを抽出」する際に、本願補正発明では「第2のペイロード・データ・パケットについての情報を含む受信された無線信号成分をノイズとして取り扱いながら」行っているのに対し、引用発明は当該発明特定事項を有していない点。

(相違点4)
一致点である「干渉相殺を受信された無線信号に適用」する際に、本願補正発明では「抽出された前記第1のペイロード・データ・パケットに基づいて」いるのに対し、引用発明は当該発明特定事項を有していない点。

以下、各相違点について検討する。
(相違点1について)
上記「イ 引用例に記載された事項、引用発明及び周知事項」の「(イ)周知事項」として示したように、「LTEにおける無線信号は、無線フレームで編成され、無線フレームはサブフレームにさらに分割される。」ことはLTEで規格化されているように技術常識ともいえる周知事項であるから、引用発明のLTEの無線信号は「繰り返しの無線フレームに編成され、無線フレームは、サブフレームにさらに分割される」といえる。したがって、相違点1は実質的差異ではない。

(相違点2について)
無線信号をパケット化して送信することは常套手段であるから、引用発明のM2M信号を「第2のペイロード・データ・パケット」とすることは格別困難なことではなく、またM2M信号に適用する拡散率や使用する帯域や伝送レートに応じて、M2M信号の送信に使用する時間のサイズは変化することから、M2M信号の送信に使用する時間のサイズは当業者にとって設計的事項にすぎない。
したがって、引用発明のM2M信号として複数の無線フレームの複数のサブフレームを使用した第2のペイロード・データ・パケットを採用することは当業者が容易に想起しうる事項にすぎない。

(相違点3について)
一般的に、拡散された信号は雑音レベルになるように拡散されているのであるから、引用発明においても第1のペイロード・データ・パケットである直交周波数分割多元接続(OFDMA)信号を抽出する際には拡散されたM2M信号はノイズとして取り扱われることは明らかである。したがって、相違点3は実質的差異ではないし、差異があるとしても容易になし得ることにすぎない。

(相違点4について)
引用発明において、埋め込まれたM2M信号をOFDMA信号から抽出するために、逐次干渉除去(SIC)が実行されているのであるから、M2M信号を抽出するためには第1のペイロード・データ・パケットであるOFDMA信号に基づいてOFDMA信号の干渉を除去していることは明らかである。したがって、相違点4は実質的差異ではないし、差異があるとしても容易になし得ることにすぎない。

また、本願補正発明の作用効果も、引用発明の奏する作用効果から当業者が予測し得る範囲内のものである。

そうすると、本願補正発明は、引用発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

以上を総合すると、本願補正発明は、引用発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。

3.まとめ
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する特許法第126条第7項の規定に違反するものであるから、特許法第159条第1項において読み替えて準用する特許法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明について
1.本願発明
本件補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1?13に係る発明は、平成29月9月20日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?13に記載された事項により特定されるところ、その請求項1は、上記「第2 平成29年3月15日にされた手続補正についての補正の却下の決定」の「1.補正の概要」の項目で示したとおりである(再掲)。

「 ワイヤレス通信システムの受信機(100)のための装置(10)であって、
無線信号を受信するように動作可能な受信機モジュール(12)であって、前記無線信号は、繰り返しの無線フレームに編成され、無線フレームは、サブフレームにさらに分割される、受信機モジュール(12)と、
前記受信された無線信号の単一のサブフレームを使用して、前記受信された無線信号から第1のペイロード・データ・パケットを抽出するように、また複数の無線フレームの複数のサブフレームを使用して第2のペイロード・データ・パケットを抽出するように動作可能な抽出モジュール(14)と
を備えており、前記抽出モジュール(14)は、前記2つ以上の無線フレームの前記受信された無線信号に対する逆拡散オペレーションを実行して、前記第2のペイロード・データ・パケットについての情報を取得するように動作可能であり、
前記抽出モジュール(14)は、前記第2のペイロード・データ・パケットについての情報を含む受信された無線信号成分をノイズとして取り扱いながら、前記受信された無線信号の前記単一のサブフレームを使用した、前記受信された無線信号からの前記第1のペイロード・データ・パケットを抽出するように動作可能である、装置(10)。」

ここで「前記2つ以上の無線フレームの前記受信された無線信号に対する逆拡散オペレーションを実行して、前記第2のペイロード・データ・パケットについての情報を取得するように動作可能である」という記載の「前記2つ以上の無線フレーム」は明らかで「前記複数の無線フレーム」の誤記であるから、特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりであると認める。(下線は当審が付与。)

「 ワイヤレス通信システムの受信機(100)のための装置(10)であって、
無線信号を受信するように動作可能な受信機モジュール(12)であって、前記無線信号は、繰り返しの無線フレームに編成され、無線フレームは、サブフレームにさらに分割される、受信機モジュール(12)と、
前記受信された無線信号の単一のサブフレームを使用して、前記受信された無線信号から第1のペイロード・データ・パケットを抽出するように、また複数の無線フレームの複数のサブフレームを使用して第2のペイロード・データ・パケットを抽出するように動作可能な抽出モジュール(14)と
を備えており、前記抽出モジュール(14)は、前記複数の無線フレームの前記受信された無線信号に対する逆拡散オペレーションを実行して、前記第2のペイロード・データ・パケットについての情報を取得するように動作可能であり、
前記抽出モジュール(14)は、前記第2のペイロード・データ・パケットについての情報を含む受信された無線信号成分をノイズとして取り扱いながら、前記受信された無線信号の前記単一のサブフレームを使用した、前記受信された無線信号からの前記第1のペイロード・データ・パケットを抽出するように動作可能である、装置(10)。」

2.原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由の概要は次のとおりである。

この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

・請求項1
・引用文献等 1-2
1.国際公開第2011/018419号
2.国際公開第2011/085403号(周知技術を示す文献)

3.引用発明
引用発明は、上記「第2 平成29月3月15日にされた手続補正についての補正の却下の決定」の項中の「2.補正の適否」の「(2)独立特許要件について」の「イ 引用例に記載された事項及び引用発明」の項で認定したとおりである。

4.対比・判断
本願発明は上記「第2 平成29月3月15日にされた手続補正についての補正の却下の決定」の項中の「2.補正の適否」の「(2)独立特許要件について」の「ア 本願補正発明」で検討した上記本願補正発明から限定事項を削除したものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本願補正発明が、上記「第2 平成29月3月15日にされた手続補正についての補正の却下の決定」の項中の「2.補正の適否」の「(2)独立特許要件について」の「ウ 対比及び判断」に記載したとおり、引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2018-05-15 
結審通知日 2018-05-17 
審決日 2018-05-29 
出願番号 特願2015-540090(P2015-540090)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (H04W)
P 1 8・ 121- Z (H04W)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 岡 裕之  
特許庁審判長 菅原 道晴
特許庁審判官 中木 努
羽岡 さやか
発明の名称 ワイヤレス・システムの受信機および送信機のための装置、方法、およびコンピュータ・プログラム  
代理人 吉澤 弘司  
代理人 岡部 讓  

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