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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G01S
管理番号 1345267
審判番号 不服2017-18825  
総通号数 228 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-12-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-12-19 
確定日 2018-11-06 
事件の表示 特願2015-197060「ユーザ機器ベース測位のためにネットワークベース測定値を与えるための方法、装置および物品」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 3月17日出願公開、特開2016- 35469、請求項の数(81)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成24年4月10日(パリ条約による優先権主張 2012年4月9日(以下、「優先日」という。)、米国)に出願された特願2014-505215号の一部を、平成27年10月2日に新たな外国語書面出願としたものであって、平成27年11月2日に翻訳文が提出され、平成27年11月2日に手続補正がなされ、平成28年11月15日付けで拒絶理由が通知され、平成29年3月16日に手続補正がなされたが、平成29年8月28日付けで拒絶査定がなされ(送達日:平成29年9月5日)、これに対し、平成29年12月19日に拒絶査定不服審判が請求され、同時に手続補正がなされたものである。

第2 本願発明
本願の請求項1-81に係る発明(以下、「本願発明1」-「本願発明81」ということがある。)は、平成29年12月19日付けの手続補正書で補正された特許請求の範囲の請求項1-81に記載された事項により特定されるとおりのものであって、その請求項1、21、40、54、58、71、75、79に係る発明は、次のとおりのものである。

「【請求項1】
ロケーションサービスを実行するための方法であって、
ロケーションサーバにおいて、ターゲットユーザ機器(UE)をサービスする無線アクセスネットワークに前記ターゲットUEによって送信された信号の1つまたは複数のネットワークベースのタイミングまたは到着角(AOA)信号測定値を獲得することと、ここにおいて、前記1つまたは複数のネットワークベースのタイミングまたはAOA信号測定値は、前記無線アクセスネットワーク内の1つまたは複数のネットワーク要素によって生成された信号測定値を含む、
前記ロケーションサーバから前記ターゲットUEへの第1のメッセージを送信することと、前記第1のメッセージは、前記1つまたは複数のネットワークベースのタイミングまたはAOA信号測定値のうちの少なくとも1つを備える、
を備え、前記ターゲットUEのロケーションが、前記1つまたは複数のネットワークベースのタイミングまたはAOA信号測定値に少なくとも部分的に基づいて前記ターゲットUEによって推定されることが可能である、方法。」

「【請求項21】
1つまたは複数のメッセージを受信するための受信機と、
1つまたは複数のメッセージを送信するための送信機と、
ターゲットユーザ機器(UE)をサービスする無線アクセスネットワークに前記ターゲットUEによって送信された信号から取得された1つまたは複数のネットワークベースのタイミングまたは到着角(AOA)信号測定値を処理することと、ここにおいて、前記1つまたは複数のネットワークベースのタイミングまたはAOA信号測定値は、前記無線アクセスネットワーク内の1つまたは複数のネットワーク要素によって生成された信号測定値を含む、
前記1つまたは複数のネットワークベースのタイミングまたはAOA信号測定値のうちの少なくとも1つを備える、前記ターゲットUEへの第1のメッセージの送信を開始することと
を行うためのプロセッサと
を備える、ロケーションサーバ。」

「【請求項40】
ロケーションサーバにおいて、ターゲットユーザ機器(UE)をサービスする無線アクセスネットワークに前記ターゲットUEによって送信された信号の1つまたは複数のネットワークベースのタイミングまたは到着角(AOA)信号測定値を獲得するための手段と、ここにおいて、前記1つまたは複数のネットワークベースのタイミングまたはAOA信号測定値は、前記無線アクセスネットワーク内の1つまたは複数のネットワーク要素によって生成された信号測定値を含む、
前記1つまたは複数のネットワークベースのタイミングまたはAOA信号測定値のうちの少なくとも1つを備える、前記ターゲットUEへの第1のメッセージを送信するための手段と
を備える、装置。」

「【請求項54】
ロケーションサーバにおいて、ターゲットユーザ機器(UE)をサービスする無線アクセスネットワークに前記ターゲットUEによって送信された信号の1つまたは複数のネットワークベースのタイミングまたは到着角(AOA)信号測定値を処理することと、ここにおいて、前記1つまたは複数のネットワークベースのタイミングまたはAOA信号測定値は、前記無線アクセスネットワーク内の1つまたは複数のネットワーク要素によって生成された信号測定値を含み、前記信号測定値は、少なくとも往復時間測定値を含む、
前記往復時間測定値のうちの少なくとも1つを備える、前記ターゲットUEへの第1のメッセージの送信を開始することと
を行うように専用コンピューティング装置によって実行可能である機械可読命令を記憶した非一時的記憶媒体を備える、物品。」

「【請求項58】
ターゲットユーザ機器(UE)において、
前記ターゲットUEによって送信された信号の1つまたは複数のネットワークベースのタイミングまたは到着角(AOA)信号測定値を備える、ロケーションサーバからの第1のメッセージを受信することと、ここにおいて、前記1つまたは複数のネットワークベースのタイミングまたはAOA信号測定値は、無線アクセスネットワーク内の1つまたは複数のネットワーク要素によって生成された信号測定値を含む、
前記1つまたは複数のネットワークベースのタイミングまたはAOA信号測定値に少なくとも部分的に基づいて前記ターゲットUEのロケーションを判断することと
を備える、方法。」

「【請求項71】
ターゲットユーザ機器(UE)であって、
1つまたは複数のメッセージを送信するための送信機と、
1つまたは複数のメッセージを受信するための受信機と、
ロケーションサーバから受信した第1のメッセージを処理することと、前記第1のメッセージが、前記ターゲットUEによって送信された信号の1つまたは複数のネットワークベースのタイミングまたは到着角(AOA)信号測定値を備え、ここにおいて、前記1つまたは複数のネットワークベースのタイミングまたはAOA信号測定値は、無線アクセスネットワーク内の1つまたは複数のネットワーク要素によって生成された信号測定値を含み、前記信号測定値は、少なくとも往復時間測定値を含む、
前記1つまたは複数のネットワークベースのタイミングまたはAOA信号測定値に少なくとも部分的に基づいて前記ターゲットUEのロケーションを推定することと
を行うためのプロセッサと
を備える、ターゲットUE。」

「【請求項75】
ターゲットユーザ機器(UE)であって、
前記ターゲットUEによって送信された信号の1つまたは複数のネットワークベースのタイミングまたは到着角(AOA)信号測定値を備える、ロケーションサーバからの第1のメッセージを受信するための手段と、ここにおいて、前記1つまたは複数のネットワークベースのタイミングまたはAOA信号測定値は、無線アクセスネットワーク内の1つまたは複数のネットワーク要素によって生成された信号測定値を含む、
前記1つまたは複数のネットワークベースのタイミングまたはAOA信号測定値に少なくとも部分的に基づいて前記ターゲットUEのロケーションを推定するための手段と
を備える、ターゲットUE。」

「【請求項79】
ターゲットユーザ機器(UE)においてロケーションサーバから受信した第1のメッセージを処理するように専用コンピューティング装置によって実行可能である機械可読命令を記憶した非一時的記憶媒体と、前記第1のメッセージが、前記ターゲットUEによって送信された信号の1つまたは複数のネットワークベースのタイミングまたは到着角(AOA)信号測定値を備え、ここにおいて、前記ネットワークベースのタイミングまたはAOA信号測定値は、無線アクセスネットワーク内の1つまたは複数のネットワーク要素によって生成された信号測定値を含む、
前記1つまたは複数のネットワークベースのタイミングまたはAOA信号測定値に少なくとも部分的に基づいて前記ターゲットUEのロケーションを推定するための手段と を備える、物品。」

なお、本願発明2-20、22-39、41-53、55-57、59-70、72-74、76-78、80-81の概要は、次のとおりである。
本願発明2-20は、本願発明1を減縮した発明である。
本願発明22-39は、本願発明21を減縮した発明である。
本願発明41-53は、本願発明40を減縮した発明である。
本願発明55-57は、本願発明54を減縮した発明である。
本願発明59-70は、本願発明58を減縮した発明である。
本願発明72-74は、本願発明71を減縮した発明である。
本願発明76-78は、本願発明75を減縮した発明である。
本願発明80-81は、本願発明79を減縮した発明である。

第3 原査定の理由の概要
原査定の理由の概要は、次のとおりである。
「この出願の下記の請求項に係る発明は、その優先日前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

・請求項 1、21、40、54、58、71、75、79
・引用文献等 1-5

<引用文献等一覧>
引用文献1:特開平11-178042号公報
引用文献2:特開2010-230380号公報(周知技術を示す文献)
引用文献3:特開2009-077313号公報(周知技術を示す文献)
引用文献4:国際公開第2011/033504号(周知技術を示す文献)
引用文献5:特表2010-525668号公報(周知技術を示す文献)」

第4 引用文献、引用発明等
1.引用文献1
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1(特開平11-178042号公報)には、図面とともに、次の事項が記載されている(下線は、当審で付与した。)。

「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、屋内、屋外等をサービスエリアとする移動通信システムを利用して、移動局の現在位置を検出するシステムに関する。」

「【0004】本発明は、位置検出システムにおいて、GPSの電波を受信しなくても位置検出を可能にし、移動局の小型化と利便性の向上を図ることを目的とする。」

「【0011】移動局上の第2の表示手段に、それ自身の位置を表示できる。従って、移動局を携帯する人間が現在位置を把握するのに便利である。」

「【0016】まず、図1を参照して位置検出システムの全体の構成を説明する。このシステムは、移動局110,130,150及び170と、基地局210,230,250及び270と、回線制御局300と、電気通信網400と、位置検出局500と表示装置600で構成されている。なお、この例では4つの移動局と4つの基地局を示してあるが、実際のシステムにおいては、移動局の数及び基地局の数は、必要に応じて増減される。
【0017】基地局210,230,250及び270は、回線制御局300を介して、電気通信網400に接続されている。また、回線制御局300には、位置検出局500及び表示装置600が接続されている。無線ゾーンZ1,Z2,Z3及びZ4は、それぞれ、基地局210,230,250及び270に対して無線通信が可能な範囲を意味する。移動局110,130,150及び170は、前記無線ゾーンZ1?Z4の少なくとも1つの内部に位置するので、基地局210,230,250,270の何れかと無線通信(送信及び受信)が可能である。
【0018】基地局210,230,250及び270が回線制御局300を介して電気通信網400に接続されているので、移動局110,130,150及び170は、電気通信網400に接続された図示しない様々な端末装置との間で通信することができる。移動局110,130,150及び170のそれぞれは、基地局210,230,250及び270の何れか1つに登録され、登録された基地局との間で無線通信を行う。
【0019】移動局110,130,150及び170の基地局210,230,250及び270への登録は、回線制御局300の制御によって、図5に示すように処理される。図5を参照して説明する。まず移動局110からの電波を受信可能な複数の基地局210,230,250,270が、それぞれ、移動局110からの電波の受信レベルを検出する。受信レベルを検出した各基地局は、受信レベル,移動局識別符号及び基地局識別符号を回線制御局300に送出する。
【0020】回線制御局300は、入力される各基地局の受信レベルの大きさを比較して、受信レベルが最大の基地局を特定する。この1つの基地局に対して、前記移動局識別符号に対応する移動局110を登録するように指示を与える。登録を指示された基地局は、それ自身に前記移動局識別符号に対応する移動局110を登録するとともに、移動局110に対して、登録の結果を通知する。
【0021】図1に示す位置検出システムにおいて、移動局110の位置検出を行なう場合、基地局210,230,250及び270は、それぞれ、移動局110の送信電波を受信して、その受信レベル及び移動局の識別符号を検出する。そして、各基地局は、受信レベルのデータを、移動局の識別符号及び基地局の識別符号(基地局設置位置の緯度・経度データでもよい)とともに、回線制御局300を経て、位置検出局500に転送する。
【0022】位置検出局500には、図6に示すように、移動局毎に、各基地局の緯度・経度データ、基地局識別符号、受信レベル、基地局一移動局問距離のデータが畜積される。位置検出局500は、これらのデータに基づいて、各移動局の位置検出を実施する。位置検出により得られる移動局の緯度・経度データは、位置検出局500から電気通信網400に接続された表示装置600に転送され、該表示装置600において表示される。また、位置検出して得られた移動局の緯度・経度データは、基地局210,230,250,270のうち最も受信レベルの高い基地局を経て、移動局110に転送され、移動局110においても位置が表示される。」


「【0031】制御ユニット217の制御によって、周期的に実行される移動局検出処理の内容を図8に示す。図8に示す処理の内容について、次に説明する。基地局210が、例えば移動局110からの信号を検出すると、制御ユニット217の処理は、図8のステップS10を通ってステップS11の処理に進む。ステップS11では、移動局110からの電波の受信レベルが測定される。それとほぼ同時に、ステップS12が実行される。ステップS12では、受信信号の制御チャネルに含まれる移動局識別符号を検出する。
【0032】ステップS13では、ステップS11で測定した受信レベルに基づいて、基地局210と移動局110との距離rを計算する。基地局と移動局との距離,基地局における受信レベル,伝搬減衰定数,送信出力及び送受信アンテナ利得を、それぞれr,Pr,α,Pt及びAで表す場合、次の第1式が成立する。
【0033】
Pr=Pt+A-10・α・1og(r) ・・・(1)
第1式において、基地局における受信レベルPr,伝搬減衰定数α,送信出力Pt及び送受信アンテナ利得Aは、基地局210において既知であるので、第1式から基地局一移動局間距離rを求めることができる。図8のステップS14では、基地局210に予め割り当てられた基地局識別符号を内部メモリ(ROM)から読み出す。次のステップS15では、ステップS11で検出した受信レベル,ステップS12で検出した移動局識別符号,ステップS13で求めた距離r及びステップS14で入力した基地局識別符号を、1組のデータとして、回線制御局300を介して位置検出局500に送出する。
【0034】位置検出局500の処理によって移動局の位置が確定し、移動局の位置情報が位置検出局500から基地局210に入力されると、制御ユニット217の処理は、ステップS16を通ってステップS17に進む。ステップS17では、入力された移動局の位置を含む地図データを地図データベース220から読み出して表示ユニット219上に表示すると共に、地図上に移動局の位置を所定のマークで表示する。また、次のステップS18では、位置検出の対象となった移動局110に対して、それの位置座標を示す情報を送信する。」


「【0035】位置検出局500は、図4に示すように、インタフェース回路511,制御ユニット512,記憶回路513及び基地局位置情報記憶部514を備えている。インタフェース回路511は、回線制御局300と接続されている。制御ユニット512は、マイクロコンビュータを内蔵した制御装置であり、主として移動局の位置検出処理を実行する。
【0036】基地局位置情報記憶部514は、読み出し専用メモリ(ROM)で構成してあり、複数の基地局210,230,250,270のそれぞれの設置位置の座標データが、それぞれの基地局識別符号に対応付けて予め記憶してある。次に、制御ユニット512の処理によって実行される位置検出処理の内容を、図9を参照して説明する。なお、図9の処理は、周期的に実行される。」


「【0037】各基地局から回線制御局300を介して位置検出局500に移動局の情報が到来すると、制御ユニット512の処理は、ステップS20を通ってステップS21に進む。即ち、図8に示すステップS15の処理によって、基地局から位置検出局500に情報が入力されると、ステップS21に進む。入力される情報に含まれる基地局識別符号を利用して、基地局位置情報記憶部514のデータを参照し、特定の基地局の位置情報を入力する。なお、基地局から位置検出局500に、基地局の位置情報が直接入力される場合には、ステップS21は省略しても良い。
【0038】次のステップS22では、各基地局から入力された情報に基づいて、図6に示すようなテーブルTBLを作成する。テーブルTBLは、移動局毎に作成される。各テーブルTBL上には、移動局識別符号と、基地局番号,基地局位置(緯度と経度),基地局識別符号,受信レベル及び基地局と移動局の間の距離(r)の情報が書き込まれる。
【0039】次のステップS23では、複数の基地局からのデータが存在する場合に、テーブルTBLの内容を、各基地局からのデータが、受信レベルが大きい順に並ぶように、並び順を変更する。例えば、図6の例では、結果として、基地局識別符号が「JSGH0011」の基地局における受信レベル(50dBμV)が最も大きいので、この基地局のデータが1番目に配置されている。同様に、基地局識別符号が「FGYX0038」の基地局における受信レベル(46dBμV)が2番目に大きいので、この基地局のデータが2番目に配置されている。
【0040】この例では、3点測距の原理に基づいて、移動局の位置検出を行う。従って、位置検出を実施するには、少なくとも3つの基地局からのデータが必要である。各々の移動局について、3つの基地局からのデータがテーブル上に揃うと、位置検出が可能なので、ステップS24を通ってステップS25に進む。
【0041】ステップS25では、図7に示すように、3つ以上の基地局の各々の存在位置を中心とする複数の円を求めて、それらの交点位置を移動局の位置として検出する。即ち、基地局1,基地局2及び基地局3の(x,y)座標をそれぞれ、(x1,y1),(x2,y2)及び(x3,y3)とし、基地局1と移動局との距離をr1とし、基地局2と移動局との距離をr2とし、基地局3と移動局との距離をr3とする場合、各円は次の第2式で表される。
【0042】
(x‐x1)^(2)+(y‐y1)^(2)=r1^(2),
(x‐x2)^(2)+(y‐y2)^(2)=r2^(2),
(x‐x3)^(2)+(y‐y3)^(2)=r3^(2) ・・・(2)
上記第2式に、座標(x1,y1),(x2,y2)及び(x3,y3)と距離r1,r2及びr3を代入すれば、3つの円の交点の座標(xa,ya)が求められる。この交点の座標を、移動局の存在位置として検出する。」

「【0043】図9のステップS26では、ステップS25で検出した移動局の位置座標の情報を、表示装置600に送出するとともに、回線制御局300を介して移動局が登録された特定の基地局に送出する。この位置情報は、基地局を介して移動局にも送信される。従って、移動局,基地局及び表示装置600は、いずれも移動局の位置を表示することができる。
【0044】なお、図7は基地局が3局の場合を示しているが、4以上の基地局からの情報が存在する場合にも4以上の円の互いの交点を求めることにより、移動局の存在位置をより高精度に求めることができる。」
【0045】
【発明の効果】本発明では、基地局において受信レベルを測定し、基地局一移動局間の距離を計算式より求め、前記基地局一移動局間距離を半径とする円の交点座標から移動局の位置の確定ができるので、GPS電波を受信するための受信機を移動局に備える必要がない。
【0046】従って、移動局の小型化、経済化が図れる。さらに、GPS電波が受信できない屋内においても、位置検出が可能である。また、基地局のみで距離の算出を行い、位置の表示を移動局で行えば、基地局の位置表示のための地図データのメモリ、表示部の削減が可能となる。」

したがって、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。
「屋内、屋外等をサービスエリアとする移動通信システムを利用して、移動局の現在位置を検出するシステム(段落【0001】より。以下、同様。)であって、
位置検出システムは、移動局110,130,150及び170と、基地局210,230,250及び270と、回線制御局300と、電気通信網400と、位置検出局500と表示装置600で構成され(【0016】)、
基地局210,230,250及び270は、回線制御局300を介して、電気通信網400に接続され、回線制御局300には、位置検出局500及び表示装置600が接続され、無線ゾーンZ1,Z2,Z3及びZ4は、それぞれ、基地局210,230,250及び270に対して無線通信が可能な範囲を意味し、移動局110,130,150及び170は、前記無線ゾーンZ1?Z4の少なくとも1つの内部に位置するので、基地局210,230,250,270の何れかと無線通信(送信及び受信)が可能であり(【0017】)、
移動局110の位置検出を行なう場合、基地局210,230,250及び270は、それぞれ、移動局110の送信電波を受信して、その受信レベル及び移動局の識別符号を検出し、そして、各基地局は、受信レベルのデータを、移動局の識別符号及び基地局の識別符号(基地局設置位置の緯度・経度データでもよい)とともに、回線制御局300を経て、位置検出局500に転送し(【0021】)、
位置検出局500には、移動局毎に、各基地局の緯度・経度データ、基地局識別符号、受信レベル、基地局一移動局問距離のデータが畜積され、位置検出局500は、これらのデータに基づいて、各移動局の位置検出を実施し(【0022】)、
位置検出により得られる移動局の緯度・経度データは、位置検出局500から電気通信網400に接続された表示装置600に転送され、該表示装置600において表示され、また、位置検出して得られた移動局の緯度・経度データは、基地局210,230,250,270のうち最も受信レベルの高い基地局を経て、移動局110に転送され、移動局110においても位置が表示される(【0022】)、
位置検出システム(【0016】)。」

2.引用文献2
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2(特開2010-230380号公報)には、図面とともに、次の事項が記載されている(下線は、当審で付与した。)。

「【0001】
本発明は、移動通信端末の位置を推定する位置推定装置及び位置推定方法に関する。」

「【0020】
移動通信端末20は、ユーザの行動を自動収集して記憶する機能を有している。移動通信端末20は、ユーザの行動の自動収集の一機能として自端末20の位置を測定する機能、即ち、測位機能を有している。移動通信端末20の位置は、ユーザの位置に相当するからである。移動通信端末20による測位は、既存の方法を含む任意の方法が用いられる。具体的には、GPS(Global Positioning System)による測位、ネットワークNの基地局との間で送受信される電波の伝播遅延時間(RTT:RoundTrip Time)に基づく位置推定、自立航法測位(例:ジャイロ+加速度センサ)、及びRFIDや無線LANを用いた位置の推定等の方法が用いられる。位置情報としては、例えば、移動通信端末20の位置を示す緯度、経度及び高度の情報が取得される。」

「【0082】
なお、本実施形態では、移動通信端末20の位置の推定は、移動通信端末20自身で行われているが、測位サーバ10において位置の推定の演算(測位演算)が行われてもよい。即ち、移動通信端末20から測位サーバ10に対して、測位演算を行うための情報(例えば、GPS衛星からの信号の受信に関する情報や基地局との間の通信のRTTを示す情報)が送信されて、測位サーバ10においてその情報に基づいて測位演算が行われてもよい。また、測位指示部14による測位タイミングの指示には、上記の測位演算を行うための情報を取得するタイミングの指示を行うことも含む。」

よって、引用文献2には、次の技術事項が記載されているものと認められる。
「移動通信端末20は、測位機能を有し、具体的には、GPS(Global Positioning System)による測位、ネットワークNの基地局との間で送受信される電波の伝播遅延時間(RTT:RoundTrip Time)に基づく位置推定等の方法が用いられ(段落【0020】より。以下、同様。)、移動通信端末20の位置の推定は、移動通信端末20自身で行われるが、移動通信端末20から測位サーバ10に対して、測位演算を行うための情報(例えば、GPS衛星からの信号の受信に関する情報や基地局との間の通信のRTTを示す情報)が送信されて、測位サーバ10においてその情報に基づいて測位演算が行われてもよい(【0082】)、
移動通信端末の位置推定方法(【0001】)。」

3.引用文献3
原査定において、周知技術を示す文献として引用された引用文献3(特開2009-077313号公報)には、図面とともに、次の事項が記載されている(下線は、当審で付与した。)。
「【0037】
(第2実施形態)
図7は、本発明の第2実施形態に係る携帯電話端末3bの位置情報検出システムの構成を示した図である。第2実施形態に係る位置情報検出システムは、飛翔体1と、飛翔体1にて位置情報検出装置2bと、携帯電話端末3bとを備えている。第2実施形態に係る携帯電話端末3bは、GPS、すなわち自端末位置情報検出部3-3を備えておらず、飛翔体1に備えられる位置情報検出装置2bにおいて、携帯電話端末3bから送信される電波の電波強度、あるいは、電波の到達時間(TOA:Time of Arrival)を用いて、携帯電話端末3bの位置情報を検出する。」
「【0067】
なお、位置情報検出装置2bの時計と携帯電話端末3bの時計の同期が取れている場合には、これらの時計の時間を用いることができるため、3点以上の異なる受信位置で計測した到達時間を用いて、携帯電話端末3bの位置情報を検出することが可能となる。
【0068】
また、上記では、1台の飛翔体1を移動させて、電波強度を利用する場合には異なる3点、到達時間を利用する場合には異なる4点で、電波を計測しているが、本発明は、当該実施形態の構成には限られず、例えば、電波強度を利用する場合には、3台以上の飛翔体により異なる位置で電波の受信を行い、到達時間を利用する場合には、4台以上の飛翔体により異なる位置で電波の受信を行うようにしてもよい。この場合、複数の飛翔体の位置情報検出装置は、互いに送受信できる構成を有しており、いずれか1台の代表となる飛翔体に、他の飛翔体から他の飛翔体で受信された電波に関する情報を送信させて、当該代表となる飛翔体の携帯電話位置情報検出部により携帯電話端末3bの位置を特定する演算が行われることになる。
また、複数台の飛翔体にて電波の受信を行う場合には、同じ時刻に携帯電話端末3bから送信された電波を受信するように構成することも可能であり、この構成では、携帯電話端末3bの所持者の移動によって発生する誤差を軽減することができる。
【0069】
また、本実施形態における、異なる3点、あるいは異なる4点等、複数の位置において電波の受信を行う場合、複数の飛翔体を出動させて、ある飛翔体については異なる2点で電波の受信を行わせ、他の飛翔体については、1点で受信を行わせる等のように、飛翔体により、受信させる位置の箇所数を異なるように構成してもよい。
【0070】
上記の第2実施形態の構成により、GPSを内蔵しない携帯電話端末であっても、携帯電話端末から送信される電波の受信強度を用いる場合には少なくとも異なる3点、電波の到達時間を用いる場合には少なくとも異なる4点で電波を計測することにより携帯電話端末の位置情報を検出することができる。そして、検出した位置情報を携帯電話端末の電話番号などの固有情報とともに、例えば、携帯電話通信網などを経由して、捜索隊に連絡可能な端末等に送信することができる。これにより、遭難等の救助活動において、遭難者の位置特定等を迅速に行うことが可能となる。」

よって、引用文献3には、次の技術事項が記載されているものと認められる。
「位置情報検出システムは、飛翔体1と、飛翔体1にて位置情報検出装置2bと、携帯電話端末3bとを備え(段落【0037】より。以下、同様。)、到達時間を利用する場合には、4台以上の飛翔体により異なる位置で電波の受信を行うようにしてもよく、複数台の飛翔体にて電波の受信を行う場合には、同じ時刻に携帯電話端末3bから送信された電波を受信するように構成することも可能であり(【0068】)、携帯電話端末から送信される電波の到達時間を用いる場合には少なくとも異なる4点で電波を計測することにより携帯電話端末の位置情報を検出することができ、検出した位置情報を携帯電話通信網などを経由して、捜索隊に連絡可能な端末等に送信することができる(【0070】)、位置情報検出システム。」

4.引用文献4
原査定において、周知技術を示す文献として引用された引用文献4(国際公開第2011/033504号)には、図面とともに、次の事項が記載されている(下線は、当審で付与した。また、翻訳及び段落番号は、パテントファミリーである、特表2013-505458号公報による。)。
「 [0017] More specifically, this invention applies to real time location systems (RTLS) applications, in which mobile wireless devices are located in. a certain area covered by the RTLS system. In one type of RTLS, the mobile units (e.g. RFID tags, cellular phones, or other type of mobile units) broadcast multiple wireless signals which are used to locate the mobile devices, which are located by a location server. Another type of RTLS includes passive devices which are located by responding to passive gates or readers within the passive tag proximity. The gates or readers position is used to estimate the location of the passive devices. 」(当審訳:【0016】
より具体的には、本発明は、RTLSシステムの対象となる所定の区域内で携帯無線機器が測位されるリアルタイム測位システム(RTLS)アプリケーションに適用される。RTLSの一種類において、携帯装置(RFIDタグ、セルラー方式携帯電話、または他の種類の携帯装置等)は、携帯機器を測位するために使用される多数の無線信号を送信し、当該携帯機器は測位サーバーによって測位される。別の種類のRTLSは、パッシブタグに近接したパッシブゲートまたはリーダに応答することによって測位されるパッシブデバイスを備える。ゲートまたはリーダ位置はパッシブデバイスの位置を推定するために使用される。)

「[0021] The mobile wireless device is operative to transmit multiple wireless signals which are received by one or more network devices (the network includes wireless communication network devices intended to allow the location of mobile units in a certain area) in the vicinity (in communication range) of said mobile wireless device.

[0022] After said wireless signal is received at said one or more wireless network devices, they transmit to the location server (typically using a wired network like Ethernet or a wireless link) a message, which at least includes the unique identifier of the received mobile wireless device and the identifier of the network device which received the wireless signal.

[0023] The message to the location server may also include different types of additional information as Time- of-Arrival (ΤΟA) of the wireless signal at measured by the network device, the received signal strength indicator (RSSI) of the wireless signal as measured by the network device, angle of arrival, telemetry data transmitted by the mobile wireless device and included in the wireless signal, etc. In accordance with one embodiment, the mobile wireless device includes a GPS (Ground Positioning System) receiver and the wireless signal also includes GPS data.」(当審訳:【0020】
携帯無線機器は、前記携帯無線機器の近傍(通信範囲内)の1台以上のネットワーク装置によって受信される多数の無線信号を送信するよう動作可能である。なお、ネットワークは、所定の区域内における携帯装置の測位を許容することを目的とした無線通信ネットワーク装置を含む。
【0021】
前記無線信号が前記1台以上の無線ネットワーク装置において受信された後、無線ネットワーク装置は、メッセージを、一般的にはイーサネット(登録商標、以下同じ)等有線ネットワークまたは無線リンクを使用して、測位サーバーに送信する。当該メッセージは、受信した携帯無線機器固有の識別子および無線信号を受信したネットワーク装置の識別子を少なくとも含む。
【0022】
また、測位サーバーへのメッセージは、ネットワーク装置によって測定された無線信号の到着時間(ΤΟA)、ネットワーク装置によって測定された無線信号の受信信号強度インジケーター(RSSI)、到来角、携帯無線機器によって送信され、無線信号等に含められたテレメトリデータ等、異なる種類の追加情報を含んでもよい。一つの実施形態によると、携帯無線機器はGPS(グローバルポジショニングシステム)受信機を備え、無線信号もまたGPSデータを含んでいる。)

「 [0082] According to an embodiment, the location server 1 may use the measured RSSI to estimate the tag 15 position. Other embodiments may include other location methods based on Time Difference of Arrival (TDOA) , distance measurement, Angle of Arrival (AOA) or a combination of several techniques. In this case, the location report 2 may also include other parameters like location technology used to locate the tag 15, tag type, etc.」(当審訳:【0069】
ある実施形態によると、測位サーバー1はタグ15の位置を推定するために測定されたRSSIを使用してもよい。他の実施形態は、到着時間差(TDOA)、距離測定、到来角(AOA)またはいくつかの技法の組み合わせに基づく他の測位方法を含んでもよい。この場合には、測位レポート2は、タグ15を測位するために使用される測位技術、タグの種類等、他のパラメータを含んでもよい。)

よって、引用文献4には、次の技術事項が記載されていると認められる。
「リアルタイム測位システム(RTLS)において、携帯装置は、携帯機器を測位するために使用される多数の無線信号を送信し、当該携帯機器は測位サーバーによって測位され(段落[0017]より。以下、同様。)、測位サーバー1はタグ15の位置を推定するために、到着時間差(TDOA)、到来角(AOA)に基づく測位方法を含んでもよく([0082])、
携帯無線機器は、前記携帯無線機器の近傍(通信範囲内)の1台以上のネットワーク装置によって受信される多数の無線信号を送信するよう動作可能であり([0021])、前記無線信号が前記1台以上の無線ネットワーク装置において受信された後、無線ネットワーク装置は、メッセージを、測位サーバーに送信し([0022])、測位サーバーへのメッセージは、ネットワーク装置によって測定された無線信号の到着時間(ΤΟA)、到来角を含んでもよい([0023])、リアルタイム測位システム(RTLS)([0017])。」

5.引用文献5
原査定において、周知技術を示す文献として引用された、特表2010-525668号公報(以下、「引用文献5」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている(下線は、当審で付与した。)。
「【0003】
本発明の課題は、OFDMA方式のシステムのような無線ネットワークにおいて、位置推定技術を改善することである。」

「【0015】
本発明の一実施例は三角測量(triangularization)の概念を使用し、この方法は、移動局(MS)の場所に近い3つの基地局(BS)からの距離を推定する。位置の計算は、下りリンク測定値(DLメジャーメント)に基づいて移動局で実行されてもよい。或いは、直接測定したアップリンク測定値(ULメジャーメント)又はMSから報告されたDL測定値に基づいて、位置がネットワークにおいて決定されてもよい。MSが位置を計算する場合、在圏セル(サービングセル)の基地局及び隣接基地局(三角測量に含まれる基地局群)の地理的な位置情報をMSに与える必要がある。」

「【0018】
より正確な位置判定を行うため、到着時間(ToA:Time of Arrival)、受信信号強度インジケータ(RSSI:Received Signal Strength Indicator)及び到来角(AoA:Angle of Arrival)等の組み合わせが使用されてもよい。さらに、複数のアンテナを使用して、ToA及びAoAの双方の計算、そして位置情報ビーコンのビームフォーミングを行ってもよい。」

よって、引用文献5には、次の技術事項が記載されていると認められる。
「移動局(MS)の場所に近い3つの基地局(BS)からの距離を推定し、位置の計算は、直接測定したアップリンク測定値(ULメジャーメント)に基づいて、位置がネットワークにおいて決定されてもよく(段落【0015】より。以下、同様。)、より正確な位置判定を行うため、到着時間(ToA:Time of Arrival)、及び到来角(AoA:Angle of Arrival)等の組み合わせが使用されてもよい(【0018】)、
無線ネットワークにおける、位置推定技術(【0003】)。」

第5 対比・判断
1.本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。
ア 引用発明における「位置検出システム」は、「移動局110において」「位置が表示され」るサービスを提供するための方法を提供しているから、本願発明1における「ロケーションサービスを実行するための方法」を提供するシステムであるといえる。

イ 引用発明における「位置検出局500」は、引用文献1の段落【0035】に「位置検出局500は、図4に示すように、インタフェース回路511,制御ユニット512,記憶回路513及び基地局位置情報記憶部514を備えている。インタフェース回路511は、回線制御局300と接続されている。制御ユニット512は、マイクロコンビュータを内蔵した制御装置であり、主として移動局の位置検出処理を実行する。」と記載されているとおり、回線に接続されたコンピュータであって、「移動局110において」「位置が表示され」るサービスを提供しているから、本願発明1における「ロケーションサーバ」に相当するといえる。

ウ 引用発明における「移動局」は、引用文献1の段落【0011】に「移動局を携帯する人間が現在位置を把握するのにするのに便利である。」と記載されているとおり、「人間」が「携帯」する機器であって、「現在位置を把握する」対象となる機器であるから、本願発明1における「ターゲットユーザ機器(UE)」に相当するといえる。

エ 引用発明において、「基地局210,230,250及び270は、回線制御局300を介して、電気通信網400に接続され」、「無線ゾーンZ1,Z2,Z3及びZ4は、それぞれ、基地局210,230,250及び270に対して無線通信が可能な範囲を意味し、移動局110,130,150及び170は、前記無線ゾーンZ1?Z4の少なくとも1つの内部に位置するので、基地局210,230,250,270の何れかと無線通信(送信及び受信)が可能であ」る。
よって、引用発明における「屋内、屋外等をサービスエリアとする移動通信システム」は、「移動局110,130,150及び170」を、「基地局210,230,250,270の何れか」との「無線通信」により「電気通信網400に接続」するシステムであるから、本願発明1における「ターゲットユーザ機器(UE)をサービスする無線アクセスネットワーク」に相当する。
また、引用発明における「基地局210,230,250及び270」は、「回線制御局300を介して、電気通信網400に接続され」ていることから、「移動局110」に「サービスエリア」(無線ゾーンZ1?Z4)を提供する「移動通信システム」の構成要素であることは明らかであって、本願発明1における「無線アクセスネットワーク内の1つまたは複数のネットワーク要素」に相当する。

オ 上記「エ」を踏まえると、引用発明における「移動局110の位置検出を行なう場合、基地局210,230,250及び270は、それぞれ、移動局110の送信電波を受信して、その受信レベル及び移動局の識別符号を検出し、そして、各基地局は、受信レベルのデータを、移動局の識別符号及び基地局の識別符号(基地局設置位置の緯度・経度データでもよい)とともに、回線制御局300を経て、位置検出局500に転送」することと(つまり、「位置検出局500」において、「移動局110」に「サービスエリア」を提供する「移動通信システム」に「移動局110」によって「送信」された「送信電波」の、「基地局210,230,250及び270」「それぞれ」の「受信レベルのデータ」の「転送」を受けること)と、本願発明1における「ロケーションサーバにおいて、ターゲットユーザ機器(UE)をサービスする無線アクセスネットワークに前記ターゲットUEによって送信された信号の1つまたは複数のネットワークベースのタイミングまたは到着角(AOA)信号測定値を獲得すること」とは、「ロケーションサーバにおいて、ターゲットユーザ機器(UE)をサービスする無線アクセスネットワークに前記ターゲットUEによって送信された信号の1つまたは複数のネットワークベースの信号測定値を獲得すること」の点で共通する。

カ 上記「エ」を踏まえると、引用発明における「基地局210,230,250及び270」が「それぞれ、移動局110の送信電波を受信し」た「受信レベル」と、本願発明1における「ここにおいて、前記1つまたは複数のネットワークベースのタイミングまたはAOA信号測定値は、前記無線アクセスネットワーク内の1つまたは複数のネットワーク要素によって生成された信号測定値を含む」こととは、「ここにおいて、前記1つまたは複数のネットワークベースの測定値は、前記無線アクセスネットワーク内の1つまたは複数のネットワーク要素によって生成された信号測定値を含む」点で共通する。

キ 引用発明における「位置検出局500は」、「各移動局の位置検出を実施し」、「位置検出して得られた移動局の緯度・経度データは」、「移動局110に転送され」ることと、本願発明1における「前記ロケーションサーバから前記ターゲットUEへの第1のメッセージを送信することと、前記第1のメッセージは、前記1つまたは複数のネットワークベースのタイミングまたはAOA信号測定値のうちの少なくとも1つを備える」こととは、「前記ロケーションサーバから前記ターゲットUEへの第1のメッセージを送信することと」の点で共通する。

ク 引用発明における「位置検出局500には、移動局毎に、各基地局の緯度・経度データ、基地局識別符号、受信レベル、基地局一移動局問距離のデータが畜積され、位置検出局500は、これらのデータに基づいて、各移動局の位置検出を実施」することと、本願発明1における「前記ターゲットUEのロケーションが、前記1つまたは複数のネットワークベースのタイミングまたはAOA信号測定値に少なくとも部分的に基づいて前記ターゲットUEによって推定されることが可能である」こととは、「前記ターゲットUEのロケーションが、前記1つまたは複数のネットワークベースの信号測定値に少なくとも部分的に基づいて推定されることが可能である」点で共通する。

したがって、本願発明1と引用発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。
(一致点)
「ロケーションサービスを実行するための方法であって、
ロケーションサーバにおいて、ターゲットユーザ機器(UE)をサービスする無線アクセスネットワークに前記ターゲットUEによって送信された信号の1つまたは複数のネットワークベースの信号測定値を獲得することと、ここにおいて、前記1つまたは複数のネットワークベースの信号測定値は、前記無線アクセスネットワーク内の1つまたは複数のネットワーク要素によって生成された信号測定値を含む、
前記ロケーションサーバから前記ターゲットUEへの第1のメッセージを送信することと、
を備え、前記ターゲットUEのロケーションが、前記1つまたは複数のネットワークベースの信号測定値に少なくとも部分的に基づいて推定されることが可能である、方法。」

(相違点1)
本願発明1では、1つまたは複数のネットワークベースの信号測定値が、「タイミングまたは到着角(AOA)信号測定値」であるのに対し、引用発明では、「受信レベル」である点。

(相違点2)
本願発明1では、ロケーションサーバからターゲットUEへ送信する第1のメッセージが、「前記第1のメッセージは、前記1つまたは複数のネットワークベースのタイミングまたはAOA信号測定値のうちの少なくとも1つを備え」、ターゲットUEのロケーションが、「前記ターゲットUEによって」推定されることが可能であるのに対し、引用発明では、位置検出局500において移動局の「位置検出」が実施されており、位置検出局500から移動局に転送されるのは、「受信レベル」ではなく、「位置検出して得られた移動局の緯度・経度データ」である点。

(2)相違点についての判断
事案に鑑みて、先ず、上記相違点2について検討する。
ア 引用文献2には、「移動通信端末20」の位置推定について、「移動通信端末20自身」で行なわれるようにしても、「移動通信端末20から測位サーバ10に対して、測位演算を行うための情報(例えば、GPS衛星からの信号の受信に関する情報や基地局との間の通信のRTTを示す情報)が送信されて、測位サーバ10においてその情報に基づいて測位演算が行われ」るようにしても良いことが教示されている。

イ しかし、引用発明は、「GPSの電波を受信しなくても位置検出を可能にし、移動局の小型化と利便性の向上を図ることを目的とする」(引用文献1の段落【0001】)のであるから、移動局がGPS(Global Positioning System)による測位等の測位機能を有するようにすることは、引用発明の前提と相容れないことである。

ウ また、引用発明において、引用文献2に記載された上記教示に基づいて、移動局の「位置検出」を、「位置検出局500」ではなく、移動局「自身」で行なうようにしたとしても、移動局自身で「位置推定」を行なう場合には、移動局自身が「測位機能を有し」、「位置の推定は、GPS(Global Positioning System)による測位、ネットワークNの基地局との間で送受信される電波の伝播遅延時間(RTT:RoundTrip Time)に基づく位置推定等の方法が用いられ」(なお、念のため附言するが、この場合における「伝播遅延時間(RTT)に基づく位置推定」とは、移動局自身が「測位機能を有し」ていることから、GPSによる測位と同様に、移動局自身が伝播遅延時間(RTT)を測定して位置推定することを意味する。)ことになるから、引用発明における「位置検出局500」が、「基地局210,230,250及び270」が「移動局110の送信電波を受信し」た「タイミングまたはAOA信号測定値」を、「移動局」に送信する構成とはならない。

エ よって、引用発明に引用文献2に記載された技術を適用することは、引用発明の前提と相容れないことであり、また、引用文献2に記載された技術を引用発明に適用したとしても、上記相違点2に係る本願発明1の構成とはならない。

オ また、上記相違点2に係る本願発明1の構成は、引用文献3-5の何れの文献にも、記載も示唆もされていない。

カ したがって、相違点2は、当業者であっても、引用発明及び引用文献2-5に記載された技術に基づいて容易になし得たことであるとはいえない。

(3)まとめ
以上のとおり、相違点1について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者が、引用発明及び引用文献2-5に記載された技術に基づいて容易に発明をすることができたものではない。

2.本願発明2-20について
本願発明2-20は、本願発明1を減縮した発明であるから、本願発明1と同様の理由により、当業者が、引用発明及び引用文献2-5に記載された技術に基づいて容易に発明をすることができたものではない。

3.本願発明21-39について
本願発明21は、「前記1つまたは複数のネットワークベースのタイミングまたはAOA信号測定値のうちの少なくとも1つを備える、前記ターゲットUEへの第1のメッセージの送信を開始することを行うためのプロセッサとを備える、ロケーションサーバ」を構成として備えている。また、該構成より、ターゲットUEのロケーションが、ターゲットUEによって推定可能であることは明らかである。
よって、本願発明21は、本願発明1について述べたのと同様の理由により、当業者が、引用発明及び引用文献2-5に記載された技術に基づいて容易に発明をすることができたものではない。
また、本願発明22-39は、本願発明21を減縮した発明であるから、本願発明21と同様に、当業者が、引用発明及び引用文献2-5に記載された技術に基づいて容易に発明をすることができたものではない。

4.本願発明40-53について
本願発明40は、「ロケーションサーバにおいて」、「前記1つまたは複数のネットワークベースのタイミングまたはAOA信号測定値のうちの少なくとも1つを備える、前記ターゲットUEへの第1のメッセージを送信するための手段」を備えている。また、該「ロケーションサーバ」が備えている手段により、ターゲットUEのロケーションが、ターゲットUEによって推定可能であることは明らかである。
よって、本願発明40は、本願発明1について述べたのと同様の理由により、当業者が、引用発明及び引用文献2-5に記載された技術に基づいて容易に発明をすることができたものではない。
また、本願発明41-53は、本願発明40を減縮した発明であるから、本願発明40と同様に、当業者が、引用発明及び引用文献2-5に記載された技術に基づいて容易に発明をすることができたものではない。

5.本願発明54-57について
本願発明54は、「ロケーションサーバにおいて」、「前記往復時間測定値のうちの少なくとも1つを備える、前記ターゲットUEへの第1のメッセージの送信を開始すること」、及び、「前記往復時間測定値」は、「前記1つまたは複数のネットワークベースのタイミングまたはAOA信号測定値」に含まれる点を構成として備えている。また、該構成より、ターゲットUEのロケーションが、ターゲットUEによって推定可能であることは明らかである。
よって、本願発明54は、本願発明1について述べたのと同様の理由により、当業者が、引用発明及び引用文献2-5に記載された技術に基づいて容易に発明をすることができたものではない。
また、本願発明55-57は、本願発明54を減縮した発明であるから、本願発明54と同様に、当業者が、引用発明及び引用文献2-5に記載された技術に基づいて容易に発明をすることができたものではない。

6.本願発明58-70について
本願発明58は、「ターゲットユーザ機器(UE)において、前記ターゲットUEによって送信された信号の1つまたは複数のネットワークベースのタイミングまたは到着角(AOA)信号測定値を備える、ロケーションサーバからの第1のメッセージを受信すること」を含み、「前記1つまたは複数のネットワークベースのタイミングまたはAOA信号測定値に少なくとも部分的に基づいて前記ターゲットUEのロケーションを判断すること」を構成として備えているから、本願発明1について述べたのと同様の理由により、当業者が、引用発明及び引用文献2-5に記載された技術に基づいて容易に発明をすることができたものではない。
また、本願発明59-70は、本願発明58を減縮した発明であるから、本願発明58と同様に、当業者が、引用発明及び引用文献2-5に記載された技術に基づいて容易に発明をすることができたものではない。

7.本願発明71-74について
本願発明71は、「ターゲットユーザ機器(UE)であって」、「ロケーションサーバから受信した第1のメッセージを処理することと、前記第1のメッセージが、前記ターゲットUEによって送信された信号の1つまたは複数のネットワークベースのタイミングまたは到着角(AOA)信号測定値を備え」ること、及び「前記1つまたは複数のネットワークベースのタイミングまたはAOA信号測定値に少なくとも部分的に基づいて前記ターゲットUEのロケーションを推定すること」を構成として備えているから、本願発明1について述べたのと同様の理由により、当業者が、引用発明及び引用文献2-5に記載された技術に基づいて容易に発明をすることができたものではない。
また、本願発明72-74は、本願発明71を減縮した発明であるから、本願発明71と同様に、当業者が、引用発明及び引用文献2-5に記載された技術に基づいて容易に発明をすることができたものではない。

8.本願発明75-78について
本願発明75は、「ターゲットユーザ機器(UE)であって、前記ターゲットUEによって送信された信号の1つまたは複数のネットワークベースのタイミングまたは到着角(AOA)信号測定値を備える、ロケーションサーバからの第1のメッセージを受信するための手段」を含み、「前記1つまたは複数のネットワークベースのタイミングまたはAOA信号測定値に少なくとも部分的に基づいて前記ターゲットUEのロケーションを推定するための手段」を備えているから、本願発明1について述べたのと同様の理由により、当業者が、引用発明及び引用文献2-5に記載された技術に基づいて容易に発明をすることができたものではない。
また、本願発明76-78は、本願発明75を減縮した発明であるから、本願発明75と同様に、当業者が、引用発明及び引用文献2-5に記載された技術に基づいて容易に発明をすることができたものではない。

9.本願発明79-81について
本願発明79は、「ターゲットユーザ機器(UE)においてロケーションサーバから受信した第1のメッセージを処理」し、「前記第1のメッセージが、前記ターゲットUEによって送信された信号の1つまたは複数のネットワークベースのタイミングまたは到着角(AOA)信号測定値を備え」、「前記1つまたは複数のネットワークベースのタイミングまたはAOA信号測定値に少なくとも部分的に基づいて前記ターゲットUEのロケーションを推定するための手段」を備えているから、本願発明1について述べたのと同様の理由により、当業者が、引用発明及び引用文献2-5に記載された技術に基づいて容易に発明をすることができたものではない。
また、本願発明80-81は、本願発明79を減縮した発明であるから、本願発明79と同様に、当業者が、引用発明及び引用文献2-5に記載された技術に基づいて容易に発明をすることができたものではない。

第6 原査定について
原査定の対象とされた、請求項1、21、40、54、58、71、75、79に係る発明が、当業者であっても、引用発明及び引用文献2-5に記載された技術に基づいて容易に発明をすることができたものでないことは、上記「第5」「1.」-「9.」で述べたとおりである。
したがって、原査定の理由を維持することはできない。

第7 まとめ
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2018-10-24 
出願番号 特願2015-197060(P2015-197060)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G01S)
最終処分 成立  
前審関与審査官 三田村 陽平  
特許庁審判長 小林 紀史
特許庁審判官 清水 稔
須原 宏光
発明の名称 ユーザ機器ベース測位のためにネットワークベース測定値を与えるための方法、装置および物品  
代理人 岡田 貴志  
代理人 井関 守三  
代理人 福原 淑弘  
代理人 蔵田 昌俊  

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