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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H04M
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04M
管理番号 1345287
審判番号 不服2017-7392  
総通号数 228 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-12-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-05-23 
確定日 2018-10-16 
事件の表示 特願2015- 53209「ハンドセット上で実行されるマルチメディアアプリケーションと、独立した被接続コンピューティングデバイスとのインターフェース」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 7月23日出願公開、特開2015-133746〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2011年(平成23年)2月9日(優先権主張 平成22年2月17日)を国際出願日とする2012-552963号の一部を平成27年3月17日に新たに特許出願したものであって、その手続の経緯は以下のとおりである。
平成27年 4月16日:手続補正書の提出
平成27年 8月19日:手続補正書の提出
平成28年 5月30日:拒絶理由通知
平成28年 8月 3日:意見書、手続補正書の提出
平成29年 1月23日:拒絶査定
平成29年 5月23日:審判請求書、手続補正書の提出

第2 平成29年5月23日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成29年5月23日にされた手続補正を却下する。

[理由]
1.本件補正について
(1) 本件補正後の特許請求の範囲
平成29年5月23日にされた手続補正(以下、「本件補正」という。)による特許請求の範囲は同日付け手続補正書に記載されたとおりのものであるところ、その請求項1に記載された発明(以下、「補正発明1」という。)は、次のとおりである(下線部は補正箇所を示す。)。
「【請求項1】
独立したコンピューティングデバイスを介して、ハンドセット上での実行用に構成された、呼アプリケーションを含む、1つまたは複数のマルチメディアアプリケーションとインターフェースをとる方法であって、
前記コンピューティングデバイスにおいて、前記コンピューティングデバイスと前記ハンドセットとの間の接続が確立されていることを検出するステップであって、前記検出された接続が、前記コンピューティングデバイスと前記ハンドセットとの間でシグナリング情報を交換するための第1の接続部分、ならびに前記コンピューティングデバイスと前記ハンドセットとの間でメディアを交換するように構成された第2の接続部分を含む、ステップと、
前記コンピューティングデバイス上でプロキシアプリケーションを起動するステップであって、前記コンピューティングデバイス上の前記プロキシアプリケーションが、前記検出された接続を介して、前記ハンドセット上のエージェントアプリケーションと対話するように構成されたステップと、
前記ハンドセット上での実行用に構成された前記1つまたは複数のマルチメディアアプリケーションに関連した1つまたは複数のユーザ入力を、前記コンピューティングデバイス上に表示され前記ハンドセット上で表示されないキーを含み得るインターフェースを介して、受け取るステップと、
前記1つまたは複数のユーザ入力に基づいて、前記エージェントアプリケーションに1つまたは複数のメッセージを送るステップと、
前記1つまたは複数のメッセージに応答して、前記1つまたは複数のマルチメディアアプリケーションに関連したメディアおよびシグナリングのうちの少なくとも1つを受け取るステップとを含む方法。」

(2) 本件補正前の特許請求の範囲
本件補正前の特許請求の範囲は平成28年8月3日付け手続補正書に記載されたとおりであるところ、その請求項1に記載された発明は次のとおりである(以下、補正前の請求項1に記載された発明を「本願発明1」、補正前の特許請求の範囲に記載された発明を総じて「本願発明」という。)。
「【請求項1】
独立したコンピューティングデバイスを介して、ハンドセット上での実行用に構成された1つまたは複数のマルチメディアアプリケーションとインターフェースをとる方法であって、
前記コンピューティングデバイスにおいて、前記コンピューティングデバイスと前記ハンドセットとの間の接続が確立されていることを検出するステップであって、前記検出された接続が、前記コンピューティングデバイスと前記ハンドセットとの間でシグナリング情報を交換するための第1の接続部分、ならびに前記コンピューティングデバイスと前記ハンドセットとの間でメディアを交換するように構成された第2の接続部分を含む、ステップと、
前記コンピューティングデバイス上でプロキシアプリケーションを起動するステップであって、前記コンピューティングデバイス上の前記プロキシアプリケーションが、前記検出された接続を介して、前記ハンドセット上のエージェントアプリケーションと対話するように構成されたステップと、
前記ハンドセット上での実行用に構成された前記1つまたは複数のマルチメディアアプリケーションに関連した1つまたは複数のユーザ入力を、前記コンピューティングデバイス上に表示され前記ハンドセット上で表示されないインターフェースを介して、受け取るステップと、
前記1つまたは複数のユーザ入力に基づいて、前記エージェントアプリケーションに1つまたは複数のメッセージを送るステップと、
前記1つまたは複数のメッセージに応答して、前記1つまたは複数のマルチメディアアプリケーションに関連したメディアおよびシグナリングのうちの少なくとも1つを受け取るステップとを含む方法。」

(3) 本件補正は、補正前の請求項1において、発明を特定するために必要な事項である「ハンドセット上での実行用に構成された1つまたは複数のマルチメディアアプリケーション」において「呼アプリケーションを含む」との限定事項を付加して「ハンドセット上での実行用に構成された、呼アプリケーションを含む、1つまたは複数のマルチメディアアプリケーション」とするとともに、「前記コンピューティングデバイス上に表示され前記ハンドセット上で表示されないインターフェース」において「キーを含み得る」との限定事項を付加して「前記コンピューティングデバイス上に表示され前記ハンドセット上で表示されないキーを含み得るインターフェース」する補正を含むものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法17条の2第5項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
このため、以下で、独立特許要件について検討する。

2.独立特許要件についての判断
(1) 補正発明1
補正発明1は上記1(1)に記載したとおりものであるところ、以下に再掲する。
「【請求項1】
独立したコンピューティングデバイスを介して、ハンドセット上での実行用に構成された、呼アプリケーションを含む、1つまたは複数のマルチメディアアプリケーションとインターフェースをとる方法であって、
前記コンピューティングデバイスにおいて、前記コンピューティングデバイスと前記ハンドセットとの間の接続が確立されていることを検出するステップであって、前記検出された接続が、前記コンピューティングデバイスと前記ハンドセットとの間でシグナリング情報を交換するための第1の接続部分、ならびに前記コンピューティングデバイスと前記ハンドセットとの間でメディアを交換するように構成された第2の接続部分を含む、ステップと、
前記コンピューティングデバイス上でプロキシアプリケーションを起動するステップであって、前記コンピューティングデバイス上の前記プロキシアプリケーションが、前記検出された接続を介して、前記ハンドセット上のエージェントアプリケーションと対話するように構成されたステップと、
前記ハンドセット上での実行用に構成された前記1つまたは複数のマルチメディアアプリケーションに関連した1つまたは複数のユーザ入力を、前記コンピューティングデバイス上に表示され前記ハンドセット上で表示されないキーを含み得るインターフェースを介して、受け取るステップと、
前記1つまたは複数のユーザ入力に基づいて、前記エージェントアプリケーションに1つまたは複数のメッセージを送るステップと、
前記1つまたは複数のメッセージに応答して、前記1つまたは複数のマルチメディアアプリケーションに関連したメディアおよびシグナリングのうちの少なくとも1つを受け取るステップとを含む方法。」

(2) 引用文献・周知例
ア 引用文献1
(ア) 原査定の拒絶の理由で引用された本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である、特開2003-324543号公報(平成15年11月14日出願公開。以下「引用文献1」という。)には、図面とともに、次の記載がある。

「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、電話機の制御に関し、特にパーソナル・コンピュータの操作による移動電話機の制御に関する。」

「【0002】
【発明の背景】最近、移動(携帯)電話機および機能増強された固定電話機では、ユーザはその電話機のキーを操作してその電話機にデータを入力したり、電話網を介して例えばNTT社のIモードまたはLモードにおけるウェブ・ページにアクセスしたりできるようになった。そのようなウェブ・ページへのアクセスは、そのような電話機によるアクセスによってのみ可能である。通常、そのような移動電話機および固定電話機を操作するために、ユーザはその電話機のキーを直接操作する。しかし、そのような電話機のキーの数および表示画面の大きさは限られているので、そのキーの操作および表示画面の確認(観察)は、通常のパーソナル・コンピュータ(PC)上でのキーボードおよびマウスの操作およびその画面の確認に比較するとかなり時間および労力を要する。」

「【0005】発明者たちは、ユーザが移動電話機を、パーソナル・コンピュータの操作によって、リアルタイムで制御することに対するニーズ(必要性)を認識した。
【0006】本発明の目的は、情報処理装置の操作によって電話機を制御できるようにすることである。
【0007】
【発明の概要】本発明の特徴によれば、情報処理装置は、電話機に接続可能であって、プロセッサと、表示装置と、入力装置とを具えている。そのプロセッサは、その電話機に表示されるべき情報をその表示装置に表示し、ユーザによる入力装置の操作に応答してその電話機を制御することができる制御信号を送信する。
【0008】そのプロセッサは、さらに、その電話機からの表示情報を表すデータの受信に応答して、その表示装置に表示情報を表示する。」

「【0015】
【発明の好ましい実施形態】図1は、本発明の実施形態による、パーソナル・コンピュータ(PC)10および移動電話機20の構成を示している。
【0016】PC10の本体100は、内部バスを介して互いに結合された、CPU、ROMおよびRAMを含むプロセッサ102、例えばハードディスク装置のような記憶装置104、表示回路110、キーボードおよびマウスを含む入力装置120、音声回路、マイクロフォンおよびスピーカを含む音声装置130、外部インタフェース(I/F)140、およびその外部インタフェース140に接続された短距離無線送受信機145を具え、さらに表示回路110に接続されたLCDのような表示装置112を具えている。
【0017】移動電話機20は、内部バスを介して互いに結合された、CPU、ROMおよびRAMを含むプロセッサ202、例えばROMおよびRAMのような記憶装置204、表示装置210、キー入力装置220、音声回路、マイクロフォンおよびスピーカを含む音声装置230、外部インタフェース(I/F)240、その外部インタフェース240に接続された短距離無線送受信機245、および電話送受信機250を具えている。
【0018】電話機20は、移動電話送受信機250を介して、移動電話網40上で別の電話機またはウェブ・サーバと通信する。PC10と電話機20は、ケーブル50を介して接続されるそれぞれインタフェース140および240を用いて、または短距離無線用の送受信機145および送受信機245を介して通信路52上で、互いに通信する。送受信機145と送受信機245は、典型的には短距離無線通信規格、例えばブルートゥース規格またはIEEE802.11による無線LAN規格に従って通信する。」

「【0025】図3は、本発明による、PC10の操作による移動電話機20の制御を可能にするための予備処理のフロー図を示している。図1および2をも参照してPC10の動作を説明する。OS1010は、ステップ302においてユーザによってPC10が移動電話機20に接続されたときにそれを検知し、ステップ312においてユーザによってPC10上でPC用移動電話アプリケーション1040が起動されたときにそれを検知する。PC用移動電話アプリケーション1040が起動されたときに、アプリケーション1040が送受信機145を自動的に起動して電話機20の送受信機245との短距離無線通信による接続を確立するようにしてもよい。
【0026】ステップ302において、その接続の検知は、ユーザがケーブル50を介してPC10のインタフェース140と電話機20のインタフェース240を接続したときにそれを検知することによって、またはユーザがPC10の送受信機145を起動して電話機20の送受信機245との短距離無線通信による接続を確立したときにそれを検知することによって行われる。・・・」

「【0029】ステップ308において、OS1010は、PC用電話アプリケーション1040を起動するようユーザに指示する。ユーザは、その指示に従ってPC10上で電話アプリケーション1040を起動する。代替構成として、OS1010がPC用電話アプリケーション1040を自動的に起動してもよい。」

「【0033】ステップ324において、PC用電話アプリケーション1040は、コントロール・オブジェクト1030を初期化し、コントロール・オブジェクト1030に電話機20の動作を初期化させる。それによって、ステップ326において、PC10は電話機20を制御するための準備が完了する。
【0034】その準備完了(レディ)に応答して、PC用電話アプリケーション1040は、表示装置112上に、移動電話機20の表示装置210および入力装置220のキー配列をそれぞれ模した仮想移動電話機オブジェクトの表示装置画像114およびソフトウェア・キー配列画像116を表示する。・・・
【0035】ユーザは、入力装置120のキーボードおよび/またはマウス等を用いてPC10を操作することによって、仮想移動電話機の画像114および116の動作を制御し操作する。画像116のソフトウェア・キーは、PC10のキーボードのテンキーやファンクション・キーに対応付けられていてもよい。その仮想移動電話機は、そのPCの操作に応答して電話機20と協動して動作する。画像114中の画面内の項目のポインティングおよび画像116中のソフトウェア・キーの押下は、入力装置120の例えばマウスまたはキーの操作によって行われるようにする。画像114中の画面へのキャラクタのタイプはキーボードによって行われるようにする。
【0036】図4は、本発明による、PC10によって実行される移動電話機20の制御のための動作のフロー図を示している。ステップ402において、ユーザはPC10の表示装置112の画面中の表示装置画像または画面114を見ながら入力装置120を操作して電話機20を操作するための命令を入力し、OS1010は、ユーザのその入力に応答してPC用電話アプリケーション1040に制御命令を供給する。ユーザの命令は、例えば、電話機20の記憶装置204に格納されている情報へのアクセスであっても、または電話網40上でのURLによる或るウェブ・ページへのアクセスであってもよい。」

「【0038】ステップ406において、コントロール・オブジェクト1030は、アプリケーション1040からの命令に従って、通信プロトコル・スタック1020を介して通信路50または52上で電話機20に命令を送出する。
【0039】ステップ412において、電話機アプリケーション2040は、通信プロトコル・スタック2020を介してPC10から受信した命令に従って動作し、その結果得られた画像を表示装置210上に表示し、および/または得られた音声を音声装置230を通して発生(提示)する。その受信した命令がURLによる或るウェブ・ページへのアクセスであるときは、電話機アプリケーション2040は電話網40上でウェブ・サーバに接続してそのウェブ・ページを取り込み、その画像を表示装置210に表示し、関連する音声を音声装置230を通して発生する。
【0040】ステップ414において、電話機アプリケーション2040は、通信プロトコル・スタック2020を介してPC10のコントロール・オブジェクト1030に動作の結果の表示用データを送出する。その表示用データは、電話機20の表示装置210における表示画像および/または音声装置230における音声を表すデータであっても、または表示される画像および音声に関する電話機20の動作状態を示す状態コードであってもよい。
【0041】ステップ428において、コントロール・オブジェクト1030は、電話アプリケーション1040に、API1034を介してその表示用データを供給する。
【0042】ステップ430において、電話アプリケーション1040は、コントロール・オブジェクト1030からのその表示用データに従って、結果の表示画像をPC10の表示装置112に表示し、および/または結果の音声を音声装置130によって発生(提示)する。その表示用データがウェブ・ページであるときは、電話アプリケーション1040は、その画像を表示装置110に表示し、関連する音声を音声装置130を通して発生する。
【0043】図5および6は、図4のフロー図に従って表示されたPC10における表示画面502?512および移動電話機20における表示画面542?552を例示している。
【0044】ユーザは、PC10上で入力装置120を操作して、電話アプリケーション1040に初期画面502を表示装置112内の表示装置画像114の画面上に表示させて、電話機の制御を起動する。電話アプリケーション1040は、その起動に応答して、通信路50または52上で電話機20に「機能メニュー」を表示させる命令を送出する。電話機20の電話機アプリケーション2040は、その命令の受信に応答して、電話機制御の起動のための画面542を表示装置210に表示して、「機能メニュー」の表示を実行する。
【0045】次いで、電話機20の電話機アプリケーション2040は、表示装置210に「機能メニュー」の画面544を表示し、通信路50または52上で画面544を表す表示用データをPC10に送出する。その表示用データは、上述のように画面544の画像データであっても、または電話機20の現在の動作状態または画面544の表示を表す動作状態コードであってもよい。PC10の電話アプリケーション1040は、その表示用データの受信に応答して、画面544に対応する「機能メニュー」の画面504を表示装置114の画面に表示する。電話アプリケーション1040は、動作状態コードを受信したときは、記憶装置104に格納されている対応する画像データを取り出し必要な場合にはそれを編集してて、表示装置114の画面に表示する。
【0046】ユーザはPC10上で入力装置120を再び操作して、その機能メニューの画面504の中の例えば「アドレス帳」のような項目をポインティングして選択すると、電話アプリケーション1040は、項目「アドレス帳」がハイライト表示された画面506を表示装置画像114の画面に表示する。電話アプリケーション1040は、さらに、その画面506における選択された項目「アドレス帳」に対応する位置座標またはその項目の識別コードを、コントロール・オブジェクト1030を介して通信路50または52上で電話機20に送出する。電話機20の電話機アプリケーション2040は、その座標または識別コードの受信に応答して、項目「アドレス帳」がハイライト表示された対応する画面546を表示し、その選択された項目「アドレス帳」の機能を起動し、例えば記憶装置204に格納されているアドレス帳データベースからインデックスのリストを取り出す。
【0047】次いで、電話機20の電話機アプリケーション2040は、表示装置210に「アドレス帳」の画面548を表示し、画面548を表す表示用データを通信路50または52上でPC10に送出する。PC10の電話アプリケーション1040は、コントロール・オブジェクト1030を介したその表示用データの受信に応答して、対応する画面508を表示装置画像114の画面に表示する。
【0048】ユーザはPC10上で入力装置120を再び操作して、その「アドレス帳」の中から例えば氏名「AAA」のような項目をポインティングして選択すると、電話アプリケーション1040は項目「AAA」がハイライト表示された画面510を表示装置画像114の画面に表示する。電話アプリケーション1040は、その画面510における選択された項目「AAA」に対応する位置座標またはその識別コードを、コントロール・オブジェクト1030を介して通信路50または52上で電話機20に送出する。電話機20の電話機アプリケーション2040は、その座標または識別コードの受信に応答して、項目「AAA」がハイライト表示された対応する画面550を表示し、その選択された項目「AAA」のアドレス情報の表示を実行し、アドレス帳データベースからその項目に対応するアドレス情報を取り出す。
【0049】次いで、電話機20の電話機アプリケーション2040は、項目「AAA」に対応するアドレス情報の画面550を表示装置210に表示し、画面550を表す表示用データをコントロール・オブジェクト1030を介して通信路50または52上でPC10に送出する。PC10の電話アプリケーション1040は、その表示用データに応答して対応するアドレス情報の画面512を表示装置画像114の画面に表示する。
【0050】同様に、ユーザは、PC10を操作して移動電話機20上で電子メールを作成して電話網40に簡単に送信することができる。同様に、ユーザは、PC10を操作して移動電話機20で電話網40上のウェブ・ページに簡単にアクセスすることができる。この分野の専門家であれば、本発明が機能増強された固定電話機にも適用できることは理解されよう。」

「【0053】
【発明の効果】本発明は、前述の特徴によって、電話機の動作を情報処理装置の操作によって容易に制御できるという効果を奏する。」

図1からは、パーソナル・コンピュータ(PC)10と移動電話機20は別の機器であることが見てとれる。

図5からは、電話機の制御の起動に応答して表示される「機能メニュー」には「1.アドレス帳」「2.お気に入りURL」及び「3.通話時間」の項目があることが見てとれ、「アドレス帳」には「1.AAA」「2.BBB」「3.CCC」との氏名に係る項目があることが見てとれる。

図6からは、「アドレス帳」の画面で「1.AAA」を選択すると、「ADDR XXX」というアドレスと「TEL 999-999-9999」という電話番号とからなるアドレス情報の画面が表示されることが見てとれる。



(イ) 上記摘示事項から、引用文献1には、次の技術的事項が記載されているものと認められる。
a 発明の属する技術分野
本発明は、電話機の制御に関し、特にパーソナル・コンピュータの操作による移動電話機の制御に関する。(【0001】)

b 発明の背景
最近、移動(携帯)電話機および機能増強された固定電話機では、ユーザはその電話機のキーを操作してその電話機にデータを入力したり、電話網を介してウェブ・ページにアクセスしたりできるようになったが、そのような電話機のキーの数および表示画面の大きさは限られているので、そのキーの操作および表示画面の確認(観察)は、通常のパーソナル・コンピュータ(PC)上でのキーボードおよびマウスの操作およびその画面の確認に比較するとかなり時間および労力を要する。(【0002】)
そこで、発明者たちは、ユーザが移動電話機を、PCの操作によって、リアルタイムで制御することに対するニーズ(必要性)を認識した。(【0005】)

c 発明の目的
本発明の目的は、情報処理装置の操作によって電話機を制御できるようにすることである。(【0006】)

d 発明の概要
本発明の特徴によれば、情報処理装置は、電話機に接続可能であって、プロセッサと、表示装置と、入力装置とを具えている。そのプロセッサは、その電話機に表示されるべき情報をその表示装置に表示し、ユーザによる入力装置の操作に応答してその電話機を制御することができる制御信号を送信する。(【0007】)
そのプロセッサは、さらに、その電話機からの表示情報を表すデータの受信に応答して、その表示装置に表示情報を表示する。(【0008】)

e 発明の実施形態
別の機器であるところのPC10と移動電話機20は、短距離無線用の送受信機145および送受信機245を介して、ブルートゥース規格または無線LAN規格に従って互いに通信する。(【0018】、図1)
PC10の操作による移動電話機20の制御を可能にするための予備処理として、ステップ302において、ユーザがPC10の送受信機145を起動して電話機20の送受信機245との短距離無線通信による接続を確立したときに、PC10のOS1010がそれを検知する。ステップ308において、OS1010がPC用電話アプリケーション1040を自動的に起動する。ステップ326において、PC10は電話機20を制御するための準備が完了し、その準備完了(レディ)に応答して、PC用電話アプリケーション1040は、表示装置112上に、移動電話機20の表示装置210および入力装置220のキー配列をそれぞれ模した仮想移動電話機オブジェクトの表示装置画像114およびソフトウェア・キー配列画像116を表示する。画像114中の画面内の項目のポインティングおよび画像116中のソフトウェア・キーの押下は、入力装置120の例えばマウスまたはキーの操作によって行われるようにする。画像114中の画面へのキャラクタのタイプはキーボードによって行われるようにする。(【0025】【0026】【0029】【0033】【0034】)
PC10によって実行される移動電話機20の制御のための動作として、ステップ406において、コントロール・オブジェクト1030は、PC用電話アプリケーション1040からの命令に従って、通信プロトコル・スタック1020を介して通信路52上で電話機20に命令を送出する。ステップ412において、移動電話機アプリケーション2040は、通信プロトコル・スタック2020を介してPC10から受信した命令に従って動作し、その結果得られた画像を表示装置210上に表示し、および/または得られた音声を音声装置230を通して発生(提示)する。ステップ414において、移動電話機アプリケーション2040は、通信プロトコル・スタック2020を介してPC10のコントロール・オブジェクト1030に動作の結果の表示用データを送出する。その表示用データは、電話機20の表示装置210における表示画像および/または音声装置230における音声を表すデータであってもよい。ステップ430において、PC用電話アプリケーション1040は、コントロール・オブジェクト1030からのその表示用データに従って、結果の表示画像をPC10の表示装置112に表示し、および/または結果の音声を音声装置130によって発生(提示)する。(【0036】【0038】?【0042】)
PC10における表示画面502?512および移動電話機20における表示画面542?552としては、「1.アドレス帳」「2.お気に入りURL」及び「3.通話時間」の項目を有する「機能メニュー」の画面504、544が表示される。ユーザがPC10上で入力装置120を操作して、その「機能メニュー」の画面504の中の「1.アドレス帳」をポインティングして選択すると、選択された項目「1.アドレス帳」の機能が起動し、移動電話機20の記憶装置204に格納されているアドレス帳データベースからインデックスのリストを取り出し、表示装置210に「1.AAA」「2.BBB」「3.CCC」の氏名に係る項目を有する画面548および表示装置画像114に画面508が表示される。ユーザがPC10上で入力装置120を操作して、その「1.アドレス帳」の中から例えば「1.AAA」のような項目をポインティングして選択すると、選択された「1.AAA」の項目のアドレス情報の表示を実行し、アドレス帳データベースからその項目に対応するアドレス情報を取り出し、「1.AAA」の項目に対応する「ADDR XXX」というアドレスと「TEL 999-999-9999」という電話番号とからなるアドレス情報の画面550が表示装置210に表示され、「ADDR XXX」というアドレスと「TEL 999-999-9999」という電話番号とからなるアドレス情報の画面512が表示装置画像114に表示される。(【0043】?【0049】、図5、図6)

f 発明の効果
本発明は、電話機の動作を情報処理装置の操作によって容易に制御できるという効果を奏する。(【0053】)

(ウ) 上記(ア)、(イ)から、以下の事項が認められる。
a PC10と移動電話機20とは別の機器であり、PC10と移動電話機20の間のブルートゥース規格または無線LAN規格に従った通信により、PC10からのユーザ入力により移動電話機20の移動電話機アプリケーション2040を制御している。
そして、PC用電話アプリケーション1040は、表示装置112上に、移動電話機20の表示装置210および入力装置220のキー配列をそれぞれ模した仮想移動電話機オブジェクトの表示装置画像114およびソフトウェア・キー配列画像116を表示するアプリケーションであり、実行用に構成されたアプリケーションであるといえる。
このため、PC10を介して、移動電話機20で実行用に構成された移動電話機アプリケーションとインターフェースをとる方法であるといえる。

b ステップ302は、PC10のOS1010が、PC10の送受信機145を起動して電話機20の送受信機245との短距離無線通信による接続を確立したことを確認するステップである。
このため、ステップ302は、PC10において、PC10と移動電話機20との間の接続が確立されていることを検出するステップであるといえる。

c ステップ308は、OS1010がPC用電話アプリケーション1040を自動的に起動するステップである。
そして、PC用電話アプリケーション1040は命令を送信し、これに対して、移動電話機アプリケーション2040は表示用データを返信しており、PC用電話アプリケーション1040は移動電話機20の移動電話アプリケーション2040と命令及び表示データの交換をするように構成されている。
このため、ステップ308は、PC10上でPC用電話アプリケーション1040を起動するステップであって、PC10上のPC用電話アプリケーション1040が、検出された接続を介して、移動電話機20上の移動電話機アプリケーション2040と命令及び表示データの交換をするように構成されたステップであるといえる。

d PC10の表示装置112には移動電話機20の表示装置210および入力装置220のキー配列をそれぞれ模した仮想移動電話機オブジェクトの表示装置画像114およびソフトウェア・キー配列画像116が表示されるところ、表示装置112上での移動電話機20の表示装置210および入力装置220のキー配列をそれぞれ模した仮想移動電話機オブジェクトの表示装置画像114およびソフトウェア・キー配列画像116の表示は、実行用に構成されたPC用電話アプリケーション1040により行われているとともに、PC10の操作は、入力装置120の例えばマウスまたはキーの操作による、画像114中の画面内の項目のポインティングおよび画像116中のソフトウェア・キーの押下によって行われる。
このため、移動電話機20上での実行用に構成された移動電話機アプリケーションに関連したユーザ入力を、PC10上に表示された移動電話機20の表示装置210および入力装置220のキー配列をそれぞれ模した仮想移動電話機オブジェクトの表示装置画像114およびソフトウェア・キー配列画像116を介して、受け取るステップを有しているといえる。

e ステップ406は、コントロール・オブジェクト1030は、PC用電話アプリケーション1040からの命令に従って、通信プロトコル・スタック1020を介して通信路52上で電話機20に命令を送出するステップである。
そして、PC用電話アプリケーション1040からの命令はユーザの入力に基づく命令である。また、送出された命令は電話機20の移動電話機アプリケーション2040が実行することから、該命令は移動電話機アプリケーション2040に送っていると解される。
このため、ステップ406は、ユーザ入力に基づいて、移動電話機アプリケーション2040に命令を送るステップであるといえる。

f ステップ414は、ステップ406で送出された命令に応答したステップであって、移動電話機アプリケーション2040が、通信プロトコル・スタック2020を介してPC10のコントロール・オブジェクト1030に動作の結果の表示用データを送出するステップである。
そして、該ステップをPC10又はPC10のPC用電話アプリケーション1040からみれば、表示用データを受け取るステップであるといえる。
このため、ステップ414は、命令に応答して、移動電話機アプリケーション2040に関連した表示用データを受け取るステップであるといえる。

g 以上を総合すると、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認める。
「PC10を介して、移動電話機20で実行用に構成された移動電話機アプリケーション2040とインターフェースをとる方法であって、
PC10において、PC10と移動電話機20との間の接続が確立されていることを検出するステップと、
PC10上でPC用電話アプリケーション1040を起動するステップであって、PC10上のPC用電話アプリケーション1040が、検出された接続を介して、移動電話機20上の移動電話機アプリケーション2040と対話するように構成されたステップと、
移動電話機20上での実行用に構成された移動電話機アプリケーション2040に関連したユーザ入力を、PC10上に表示された移動電話機20の表示装置210および入力装置220のキー配列をそれぞれ模した仮想移動電話機オブジェクトの表示装置画像114およびソフトウェア・キー配列画像116を介して、受け取るステップと、
ユーザ入力に基づいて、移動電話機アプリケーション2040に命令を送るステップと、
命令に応答して、移動電話機アプリケーション2040に関連した表示用データを受け取るステップとを含む方法。」

イ 周知例
(ア)本願の優先権主張日前に発行された特表2008-527850号公報(以下、「周知例1」という。)には、
「【0029】
本発明の実施例によるサーバ及びクライアント間に確立された通信チャネルは、図2において概略的に説明される。本発明の実施例によるサーバ12は、音声、映像、及びオーバーレイ情報のためのクライアントとの別個の通信チャネル17を確立する。加えて、制御チャネル19は、サーバ及びクライアント間の制御情報の双方向通信を可能にして確立される。」、
「【0033】
制御チャネル19は、制御情報を送信するために、サーバ及びクライアントの両方によって使用され得るチャネルである。本発明に係るシステムの実施例は、サーバ及びクライアント間の情報を確実に通信するように構成される。より詳細に後述されるように、クライアントは、ユーザ指令及びタイミング情報をサーバに送信するために、制御チャネルを使用する。次に、サーバは、制御チャネルを使用して、クライアントと音声、映像及びオーバーレイチャネルを確立し、受信した音声、映像及びオーバーレイ情報を表示すべき方法に関する指令をクライアントに提供する。他の実施例では、音声、映像及びオーバーレイチャネルは、音声、映像及びオーバーレイチャネルの各々の上を送信されるパケットによって初期化される。制御チャネル上を通信するサーバ及びクライアントの性能は、システム全体がユーザと相互作用することを可能にする。例えば、本発明の実施例によるクライアントは、制御チャネルを使用して、サーバにユーザコマンドを送信する。それから、サーバは、音声、映像及び/又は制御チャネルを介してクライアントに情報を送信することによって、ユーザコマンドに応答する。音声、映像、オーバーレイ及び/又は制御情報
の適切な選択は、特徴表現の素早い転送、中止、又は、巻き戻しのような効果を達成する。相互作用特性が本発明の実施形態により実行される方法は、さらに後述される。」、及び、
「【0064】
セッションがサーバによって受諾される場合、サーバは、各データチャネルのためのコネクションを確立する(130)。ある実施例では、データチャネルは、音声チャネル、映像チャネル、及び/又はオーバーレイチャネルを含み、サーバは、各チャネルにポート割当を指定する。他の例では、データチャネルは、音声及び制御チャネル、及び、映像及び制御チャネル、又は、音声、映像、オーバーレイ、制御チャネル、又は、そのようなチャネルの他の組合せを含むことができる。」
との記載がある。
ここで、「通信チャネル」及び「データチャネル」はいずれも音声を転送する「音声チャネル」やビデオを転送する「映像チャネル」などのチャネルを含んでおり、同一のチャネルを異なる呼称で言い換えたものにすぎず、さらに異なる呼称で言い換えるならば、「トラフィック・チャネル」とも呼ばれるということは技術常識である。
また、制御情報はシグナリング情報に他ならない。
してみると、「制御チャネルはシグナリング情報を転送するために用いられ、トラフィック・チャネルは音声やビデオのメディア情報を転送するために用いられること。」(以下、「周知例1記載事項」という。)が記載されているといえる。

(イ) 本願の優先権主張日前に発行された特表2007-521691号公報(以下、「周知例2」という。)には、
「【0032】
本明細書では、アクセス・ベアラは、RANCE3によって制御される(メディア)アクセス・ネットワークを介したユーザ局1との論理接続を意味するものとされる。1つのアクセス・ベアラが例えば1つの音声接続をサポートする一方で、他のベアラのうちの1つは1つのビデオ接続をサポートし、第3のアクセス・ベアラは1つ又は複数のデータ・パケット接続をサポートすることができる。各アクセス・ベアラは、データ・ストリームをどのように処理すべきであるかを記述するサーバ品質(QoS)パラメータに関連付けられる。QoSパラメータの例には、データ・レート、データ・レートの可変性、遅延の量及び可変性、保証対ベストエフォートの送達、エラー・レートなどがある。(メディア)アクセス・ネットワークでは、アクセス・ベアラが、RANCE3を介して、及びWLAN対応ユーザ局1とIuインターフェースとの間で、可変ビット・レート及び様々なQoS要件を備えるユーザ・データを処理及び転送する機能を提供する。
【0033】
メディア・アクセス・ネットワークは、特にRANCE3を通じてWLANを介するアクセスを提供することにより、複数の異なるメディア・サービスへのアクセスをユーザ局1に提供することができる。例示の目的で、図2では、ユーザ局1が例えば電話サービス、ビデオ・サービス、音声サービス、データサービス、及び、具体的には示されていない任意の他のサービスを意味するxサービスを実行可能であることが示されている。いくつかのタイプのサービス又はサービス・タイプの組合せを、いつでも動作させることができる。
【0034】
本発明を通じて、WLAN対応ユーザ局がWLANを介して複数のサービスにアクセスできるようにすることができる。2つ又はそれ以上のアクセス・ベアラをほぼ同時に使用することができる。通常、異なるアクセス・ベアラは異なる帯域幅及び異なるQoSを有する。従って、ユーザ局1にオンデマンド帯域幅が提供されると言えよう。接続ベアラは、同じタイプの1つ又は複数のサービスを送達することができる。
【0035】
分かり易くするために、図2には1つのユーザ局だけが示されている。もちろんいくつかのユーザ局をRANCE3に接続することができる。本明細書で前述したように又以下でより完全に説明するように、RANCNは外部ネットワーク、具体的にはRLC、MAC、及びRRC上のプロトコルを適合及び再使用し、これらのプロトコルは無線LANアクセス・ポイントAP4を介してほぼトランスペアレントに中継される。
【0036】
図3は、関係するプロトコル・レイヤを示す概略図である。図2bに示された(メディア)アクセス・ネットワークは、物理レイヤWLANを備える物理レイヤL1を有する。物理レイヤL1の上にあるプロトコル・レイヤは、データ・リンク・レイヤのレイヤL2及びネットワーク・レイヤのレイヤL3である。レイヤL2は2つのサブレイヤに分けら
れる。制御プレーンでは、レイヤL2は、メディア・アクセス制御(MAC)プロトコルを備えた第1のサブレイヤと、接続制御(RLC)プロトコルを備えた第2のサブレイヤとの2つのサブレイヤを含む。物理レイヤWLANとRLC/MACレイヤとの間には、UDP/IPレイヤがある。レイヤ3は、例えば制御プレーンに属するRRC(無線リソース制御プロトコル)を有する。レイヤ2及びレイヤ3はUTRANのレイヤに対応し、UTRANレイヤについては、参照により本明細書に組み込まれている『Holma and Toskala、「WCDMA For UMTS Radio Access For Third Generation Mobile Communications」、John Wiley&Sons,Ltd.、2000年』に記載されている。」、及び、
「【0046】
前述のように、MACレイヤのデータ転送サービスは、論理チャネル上で提供される。論理チャネル・タイプのセットは、MACによって提供される様々な種類のデータ転送サービスについて定義される。各論理チャネル・タイプは、転送される情報のタイプによって定義される。論理チャネルは一般に、2つの異なるグループに分類される。すなわち1つは制御プレーン情報を転送するために使用される制御チャネル、もう1つはユーザ・プレーン情報の転送用のトラフィック・チャネルである。」
との記載がある。
ここで、「音声接続」や「ビデオ接続」がサポートされることから、「ユーザプレーン情報」はマルチメディア情報を含むことを前提としていることは明らかである。また、「制御プレーン情報」が命令などのシグナリング情報を含むことも自明である。さらに、周知例1記載のものはWLAN対応ユーザ局がWLANを介してアクセスするものであるから、無線LAN規格に基づいていることは明らかである。
してみると、「無線LAN規格では、制御チャネルやトラフィック・チャネルが規定され、制御チャネルは命令などのシグナリング情報を転送するために用いられ、トラフィック・チャネルは音声やビデオのメディア情報を転送するために用いられること。」(以下、「周知例1記載事項」という。)が記載されているといえる。

(ウ) 本願の優先権主張日前に発行された特表2010-504701号公報(以下、「周知例3」という。)には、
「【請求項237】
請求項226記載の方法において、前記デバイスは、WiFiワイヤレス通信システムと共に動作するように構成された、方法。」、
「【0013】
全てのエア・インターフェース・プロトコルは、2種類の「チャネル」を用いる。ここで、チャネルとは、ワイヤレス・ネットワークにおける地点間にある単一のリンク内における多数の送信経路の1つと定めることにする。チャネルは、周波数、帯域幅、同期したタイム・スロット、符号化、シフトキーイング、変調方式、またはこれらのパラメータのいずれの組み合わせでも定めることができる。第1の種類は、制御またはアクセス・チャネルとも呼ばれており、呼を開始および終了するため、またはバースト状データを転送するための、ワイヤレス電話機または送信機に関する情報を伝達するために用いられる。例えば、ある種のショート・メッセージング・サービスは、制御チャネルを通じてデータを転送する。異なるエア・インターフェースでは、異なる用語によって制御チャネルを識別するが、各エア・インターフェースにおける制御チャネルの機能は似通っている。第2の種類のチャネルは、音声またはトラフィック・チャネルとしても知られており、通例、エア・インターフェースを通じて音声またはデータ通信を伝達するために用いられる。トラフィック・チャネルは、一旦制御チャネルを用いて呼を設定すると、使用に入る。音声およびユーザ・データ・チャネルは、通例、専用の資源を用い、即ち、このチャネルは1つの移動体デバイスによってのみ用いることができ、一方制御チャネルは共有資源を用いる。即ち、このチャネルは、多数のユーザがアクセスすることができる。音声チャネルは、一般に、送信におけるワイヤレス電話または送信機に関する識別情報を有していない。ワイヤレス位置検出の用途では、この区別によって、音声チャネルの使用よりも、制御チャネルを最もコスト効率的に利用することが可能となる場合もある。とは言え、用途によっては、音声チャネル上における位置検出が望まれる可能性もある。」、
「【0161】
WiFiは、IEEE802.11として規格化されている。現在、改訂版には802.11a、802.11b、802.11g、および802.11nが含まれる。非許諾スペクトルを用いる短距離、ワイヤレス・ローカル・エリア・ネットワークとして設計され、WiFiシステムは、種々の近接位置検出技法に非常に適している。電力は、FCC Part 15(Federal Regulations transmission rules, Part 15, subsection 245(連邦送信規制規則、第15部、副章245)の見出し47) に準拠するように制限されている。
【0162】
FCC規則の15.245部は、許諾のないシステムが発信することができ、認められる最大有効等幅放射電力(EIRP)について記載している。この規則は、この部の下における証明書を求めてシステムを提出しようとする人々を対象とする。これは、証明されたシステムは、最大1ワット(+36dBm)の送信電力を無指向性アンテナに向けて有し、6dBiの利得を有することができる。この結果、EIRPは+30dBm+6dBi=+36dBm(4ワット)となる。更に高い利得無指向性アンテナが認められた場合、アンテナへの送信電力は、当該システムのEIRPが+36dBm EIRPを超過しないように、減少しなければならない。つまり、12dBiの無指向性アンテナでは、認められる最大電力は+24dBm(250mW(+24dBm+12dBi=36dBm)となる。二点間システムで用いられる指向性アンテナでは、EIRPはアンテナの利得において3dB増加する毎に1dB増加することができる。24dBiのディッシュ・アンテナでは、+24dBmの送信電力をこの高利得アンテナに供給することができる。その結果、EIRPは+24dBm+24dBi=48dbm(64ワット)となる。
【0163】
IEEE802.11近接位置検出方法は、ネットワーク・ベースまたはデバイス・ベースのいずれでも可能である。」、及び、
「【0173】
Bluetoothは、本来ワイヤレス個人エリア・ネットワーク(W-PANまたは単にPAN)として創案されたのであった。PANという用語は、公式な用語「Bluetoothピコネット」と相互交換可能に用いられる。Bluetoothは、非常に低い送信電力に合わせて設計され、特殊な指向性アンテナを付けずに、使用可能な距離は10メートル以下となっている。高電力Bluetoothデバイス、または特殊な指向性アンテナの使用により、100メートルまでの距離でも可能となる。Bluetoothの背後にある設計思想(PANおよび/またはケーブル交換)を考慮すると、10mの距離でさえも、Bluetoothの背後にある本来の目的には適当である。Bluetooth仕様の今後のバージョンでは、IEEE802.11 WiFi WLANネットワークと競合して、更に長い距離でも可能になることもあり得る。
【0174】
位置検出の目的にBluetoothを用いるのは、近接に限定される(Bluetoothマスタ局の所在地が分かっているとき)が、距離または容量を増大させるために指向性アンテナを用いれば、単一局の到達角度位置検出またはAoA混成は可能である。
【0175】
スレーブ・デバイスがピコネット間を移動するときに、進行推定(travel estimation)の速度および方向を得ることができる。Bluetoothピコネットは、動的であり常に変化するように設計されているので、あるマスタの範囲から退出し別のマスタの範囲に進入するデバイスは、短い時間期間(通例1から5秒の間)に新しいリンクを確立することができる。スレーブ・デバイスが少なくとも2つのマスタ間を移動すると、マスタの既知の位置
から方向ベクトルを形成することができる。3つ以上のマスタ間にリンクが(直列に)作成される場合、デバイスの方向および速度の推定値を計算することができる。
【0176】
Bluetoothネットワークは、本発明に必要なデータ・リンクを提供することができる。LDPデバイス110からLES220へのデータも、W-LANまたはセルラ・データ・ネットワーク上に確立することができる。」
との記載がある。
ここで、周知例2には、W-LAN及びブルートゥースというエア・インターフェース・プロトコルに係る記載があることから、周知例2に記載のある「全てのエア・インターフェース・プロトコル」とは、無線LANやブルートゥースを含むものであると考えるの妥当である。
してみると、「無線LAN規格やブルートゥース規格では、制御またはアクセス・チャネルと呼ばれるチャネルと、音声またはトラフィック・チャネルとして知られるチャネルの2種類があり、前者のチャネルでは、呼を開始及び終了するため、またはバースト上データを転送するための、ワイヤレス電話または送信機に係る情報が伝送され、後者のチャネルでは、音声やデータ通信を伝達するために用いられること。」(以下、「周知例2記載事項」という。)が記載されているといえる。

(エ) 上記(ア)の「周知例1記載事項」、上記(イ)の「周知例2記載事項」及び上記(ウ)の「周知例3記載事項」を総ずれば、「ブルートゥース規格や無線LAN規格では、制御チャネルやトラフィック・チャネルなどの複数のチャネルが規定されているとともに、命令などのシグナリング情報の交換には制御チャネルを用い、表示用データなどのメディアの交換にはトラフィック・チャネルを用いること。」(以下、「周知事項」という。)が周知であったといえる。

(3) 対比
ア 補正発明1で特定されている実体のある「物」が「コンピューティングデバイス」と「ハンドセット」の2つであることに鑑みると、補正発明1の「独立したコンピューティングデバイス」とは、「ハンドセット」とは別の「物」である「コンピューティングデバイス」であると解するのが妥当である。
引用文献1では、段落【0002】に「移動(携帯)電話機」と記載されているように、「移動電話機20」は携帯電話機を含むものであり、携帯電話機はハンドセット単体からなる電話機であることから、引用発明の「移動電話機20」は補正発明1の「ハンドセット」に相当する。
引用発明は、「PC10を介して、移動電話機20で実行用に構成された移動電話機アプリケーション2040とインターフェースをとる方法」であるところ、PC10と移動電話機20とは別の機器であり、PC10と移動電話機20の間のブルートゥース規格または無線LAN規格に従った通信により、PC10からのユーザ入力により移動電話機20の移動電話機アプリケーション2040を制御している。
よって、引用発明の「PC10」及び「移動電話機20」は、それぞれ補正発明1の「独立したコンピューティングデバイス」及び「ハンドセット」に相当する。
また、引用発明の「移動電話機20上の移動電話機アプリケーション2040」は、表示画像を表示し音声を発生(提示)するものであって、表示画面と音声という複数のメディアに関するアプリケーションであることから、補正発明1の「マルチメディアアプリケーション」に相当する。
このため、引用発明は、「独立したコンピューティングデバイスを介して、ハンドセット上での実行用に構成された」「1つまたは複数のマルチメディアアプリケーションとインターフェースをとる方法」である点で補正発明1と一致する。

イ 引用発明は、「PC10において、PC10と移動電話機20との間の接続が確立されていることを検出するステップ」を含むものであることから、「前記コンピューティングデバイスにおいて、前記コンピューティングデバイスと前記ハンドセットとの間の接続が確立されていることを検出するステップ」を含む点で補正発明1と一致する。

ウ 引用発明は、「PC10上でPC用電話アプリケーション1040を起動するステップであって、PC10上のPC用電話アプリケーション1040が、検出された接続を介して、移動電話機20上の移動電話機アプリケーション2040と対話するように構成されたステップ」を含むものである。
起動されるPC用電話アプリケーション1040は、移動電話機20の移動電話機アプリケーション2040に対してユーザの入力に対応して命令を送出し、又、移動電話機アプリケーション2040から送出された表示用データをPC10の表示装置112に表示又は音声装置130によって発生(提示)するものであるから、PC用電話アプリケーション1040は移動電話機アプリケーション2040の機能を代理しているといえる。ここで、機能を代理するアプリケーションはプロキシアプリケーションと呼ばれることは技術常識である。このため、PC用電話アプリケーション1040はプロキシアプリケーションといえる。
移動電話機アプリケーション2040は、PC10のPC用電話アプリケーション1040からの命令に従って動作し、その結果得られた画像を表示装置210に表示するとともに、PC用電話アプリケーション1040へ送出していることから、移動電話機アプリケーション2040はPC用電話アプリケーションの機能を仲介しているといえる。ここで、機能を仲介するアプリケーションはエージェントアプリケーションと呼ばれることは技術常識である。このため、移動電話機アプリケーションはエージェントアプリケーションといえる。
そして、PC用電話アプリケーション1040は命令を送信し、これに対して、移動電話機アプリケーション2040は表示用データを返信しており、PC用電話アプリケーション1040は移動電話機20の移動電話アプリケーション2040と命令及び表示データの交換をすることから、PC用電話アプリケーション1040は移動電話機20の移動電話機アプリケーション2040と対話するように構成されているといえる。
このため、引用発明は、「前記コンピューティングデバイス上でプロキシアプリケーションを起動するステップであって、前記コンピューティングデバイス上の前記プロキシアプリケーションが、前記検出された接続を介して、前記ハンドセット上のエージェントアプリケーションと対話するように構成されたステップ」を含む点で補正発明1と一致する。

エ 引用発明は、「移動電話機20上での実行用に構成された移動電話機アプリケーション2040に関連したユーザ入力を、PC10上に表示された移動電話機20の表示装置210および入力装置220のキー配列をそれぞれ模した仮想移動電話機オブジェクトの表示装置画像114およびソフトウェア・キー配列画像116を介して、受け取るステップ」を含むものである。
PC10の表示装置112において、「機能メニュー」の画面504の中の「1.アドレス帳」の項目をポインティングして選択すると、選択された項目「1.アドレス帳」の機能が起動し、移動電話機20の記憶装置204に格納されているアドレス帳データベースからインデックスのリストが取り出され、ユーザがPC10上で入力装置120を操作して、その「1.アドレス帳」の中から例えば「1.AAA」のような項目をポインティングして選択すると、選択された項目「1.AAA」のアドレス情報の表示を実行し、アドレス帳データベースからその項目に対応するアドレス情報が取り出される。
ここで、引用発明ではソフトウェア・キーが押下された場合の動作について開示されていないものの、項目が選択された場合の動作と同様に、ソフトウェア・キーが押下されることで、そのソフトウェア・キーに割り当てられた命令が移動電話機20に送出され、移動電話機20ではその命令に対応した制御が行われると解するのが妥当である。
そして、移動電話機20の入力装置220にキー配列を模したソフトウェア・キー配列画像116は、PC10の表示装置110上に表示されるキーであるとともに、移動電話機20の表示装置210上に表示されないキーであることから、キー配列を模したソフトウェア・キー配列画像116は、補正発明1の「コンピューティングデバイス上に表示され前記ハンドセット上で表示されないキーを含み得るインターフェース」に相当する。
このため、引用発明は、「前記ハンドセット上での実行用に構成された前記1つまたは複数のマルチメディアアプリケーションに関連した1つまたは複数のユーザ入力を、前記コンピューティングデバイス上に表示され前記ハンドセット上で表示されないキーを含み得るインターフェースを介して、受け取るステップ」を含む点で補正発明1と一致する。

オ 引用発明は、「ユーザ入力に基づいて、移動電話機アプリケーション2040に命令を送るステップ」を含むものである。
そして、上記ウのとおりであるから、「移動機アプリケーション」は補正発明1の「エージェントアプリケーション」に相当する。
このため、引用発明は、「前記1つまたは複数のユーザ入力に基づいて、前記エージェントアプリケーションに1つまたは複数のメッセージを送るステップ」を含む点で補正発明1と一致する。

カ 引用発明は、「命令に応答して、移動電話機アプリケーション2040に関連した表示用データを受け取るステップ」を含むものである。
そして、上記アのとおり、マルチメディアアプリケーションといえるから、引用発明の「移動電話機アプリケーション2040に関連した表示用データ」は、補正発明1の「マルチメディアアプリケーションに関連したメディア」に相当する。
このため、引用発明は、「前記1つまたは複数のメッセージに応答して、前記1つまたは複数のマルチメディアアプリケーションに関連したメディアおよびシグナリングのうちの少なくとも1つを受け取るステップ」を含む点で補正発明1と一致する。

キ してみると、両者は以下の点で一致し、相違する。
<一致点>
「独立したコンピューティングデバイスを介して、ハンドセット上での実行用に構成された1つまたは複数のマルチメディアアプリケーションとインターフェースをとる方法であって、
前記コンピューティングデバイスにおいて、前記コンピューティングデバイスと前記ハンドセットとの間の接続が確立されていることを検出するステップと、
前記コンピューティングデバイス上でプロキシアプリケーションを起動するステップであって、前記コンピューティングデバイス上の前記プロキシアプリケーションが、前記検出された接続を介して、前記ハンドセット上のエージェントアプリケーションと対話するように構成されたステップと、
前記ハンドセット上での実行用に構成された前記1つまたは複数のマルチメディアアプリケーションに関連した1つまたは複数のユーザ入力を、前記コンピューティングデバイス上に表示され前記ハンドセット上で表示されないキーを含み得るインターフェースを介して、受け取るステップと、
前記1つまたは複数のユーザ入力に基づいて、前記エージェントアプリケーションに1つまたは複数のメッセージを送るステップと、
前記1つまたは複数のメッセージに応答して、前記1つまたは複数のマルチメディアアプリケーションに関連したメディアおよびシグナリングのうちの少なくとも1つを受け取るステップとを含む方法。」

<相違点1>
一致点の「マルチメディアアプリケーション」に関して、補正発明1は「呼アプリケーションを含む」のに対して、引用発明は呼アプリケーションを含んでいる否かの記載がない点。

<相違点2>
一致点の「確立されていることを検出」の対象となる「前記コンピューティングデバイスと前記ハンドセットとの間の接続」に関して、補正発明1は「前記コンピューティングデバイスと前記ハンドセットとの間でシグナリング情報を交換するための第1の接続部分、ならびに前記コンピューティングデバイスと前記ハンドセットとの間でメディアを交換するように構成された第2の接続部分を含む」のに対して、引用発明は検出される接続がどのような接続を含んでいるか記載がない点。

(4) 判断
ア 相違点1について
引用発明の移動電話機20はその名称に「電話機」との用語を含んでいることから、他の電話機と通話する機能、及び、その通話する機能を実現するための呼アプリケーションを含んでいると考えるのが妥当である。
上記(2)ア(イ)eによれば、引用発明では、PC10および移動電話機20に表示される「機能メニュー」の画面504、544には、「1.アドレス帳」の項目とともに「3.通話時間」との項目がある。さらに、「機能メニュー」において「1.アドレス帳」の項目が選択された場合、「1.AAA]、「2.BBB」及び「3.CCC」の氏名が表示され、その中から「1.AAA」が選択されると、アドレス帳データベースからその項目に対応する「ADDR XXX」というアドレスと「TEL 999-999-9999」という電話番号とからなるアドレス情報がPC10及び移動電話機20の双方の表示装置に表示される。また、PC10には、移動電話機20の入力装置220のキー配列を模したソフトウェア・キー配列画像が表示される。
ここで、引用発明は、PC10のPC用電話アプリケーション1040を用い、画面に表示された項目の選択により移動電話機20の移動電話機アプリケーション2040を制御する発明であるところ、PC10及び移動電話機20の双方の表示装置に表示される、上記「3.通話時間」とは、移動電話機20の呼アプリケーションにより通話した時間であると解され、上記「3.通話時間」の項目が選択されることで、通話時間に係る表示等の制御が行われると考えるのが妥当であるから、移動電話機20の呼アプリケーションに係る制御の示唆もなされているといえる。
さらに、通常の移動電話機では発呼キーをその入力装置に備えることから、PC10に表示される移動電話機20の入力装置220のキー配列を模したソフトウェア・キー配列画像には発呼キーも含まれていると考えるのが妥当である。
そして、PC10及び移動電話機20の双方の表示装置に表示される「TEL 999-999-9999」との項目は移動電話機20の呼アプリケーションが呼出する際に用いる電話番号である。
してみると、引用発明のPC10の表示装置には、「TEL 999-999-9999」という電話番号と発呼キーとが表示されているのであるから、引用発明において、PC10の表示装置の画面上に表示された、これらを選択することで、移動電話機20の呼アプリケーションを制御し、該電話番号に基づく呼出動作が行われるようにすること、即ち、引用発明におけるマルチメディアアプリケーションが「呼アプリケーションを含む」ようにすることは、当業者であれば容易になし得るものである。

イ 相違点2について
上記(2)ア(イ)eによれば、引用発明は、ブルートゥース規格または無線LAN規格に従って互いに通信するものであり、ステップ406において、コントロール・オブジェクト1030は、アプリケーション1040からの命令に従って、通信プロトコル・スタック1020を介して通信路52上で移動電話機20に命令を送出するとともに、ステップ412において、電話機アプリケーション2040は、通信プロトコル・スタック2020を介してPC10から受信した命令に従って動作し、その結果得られた画像を表示装置210上に表示し、ステップ414において、通信プロトコル・スタック2020を介してPC10のコントロール・オブジェクト1030に動作の結果の表示用データを送出するものである。
そして、上記(2)イ(ウ)のとおりであるから、ブルートゥース規格や無線LAN規格では、制御チャネルやトラフィック・チャネルなどの複数のチャネルが規定されているとともに、命令などのシグナリング情報の交換には制御チャネルを用い、表示用データなどのメディアの交換にはトラフィック・チャネルを用いることが周知事項である。
さらに、PC10と移動電話機20とが、ブルートゥース規格や無線LAN規格に従って互いに情報交換するには、命令などのシグナリング情報と表示用データなどのメディアの交換のための制御チャネルとトラフィック・チャネルの接続が確立されることが必要となることは明らかである。
このため、引用発明において、検出される接続の対象を、命令などのシグナリング情報の交換のための制御チャネル及び表示用データなどのメディアの交換のためのトラフィック・チャネルとする、即ち、「前記コンピューティングデバイスと前記ハンドセットとの間でシグナリング情報を交換するための第1の接続部分、ならびに前記コンピューティングデバイスと前記ハンドセットとの間でメディアを交換するように構成された第2の接続部分を含む」ようにすることは、当業者であれば容易になし得るものである。

ウ まとめ
したがって、補正発明1は、引用発明及び周知事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法29条2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

3.本件補正についてのむすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項で準用する同法第126条第7項の規定に違反するものであり、同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明について
1.本願発明
平成29年5月23日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、平成28年8月3日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし42に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、前記第2[理由]1(2)に記載のとおりのものである。

2.原査定における拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項1?42に係る発明は、本願の優先権主張の日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明及び引用文献2に記載された事項に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

引用文献1:特開2003-324543号公報
引用文献2:特表2008-527850号公報

3.引用文献
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1及びその記載事項は、前記第2[理由]2(2)に記載したとおりである。

4.対比・判断
本願発明は、前記第2[理由]2で検討した補正発明1から、「ハンドセット上での実行用に構成された1つまたは複数のマルチメディアアプリケーション」について「呼アプリケーションを含む」との限定事項、及び、「前記コンピューティングデバイス上に表示され前記ハンドセット上で表示されなインターフェース」について「キーを含み得る」との限定事項を削除したものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する補正発明1が、前記第2[理由]2(3)、(4)に記載したとおり、引用発明及び周知事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、引用発明及び周知事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

5.むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2018-05-18 
結審通知日 2018-05-21 
審決日 2018-06-05 
出願番号 特願2015-53209(P2015-53209)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (H04M)
P 1 8・ 121- Z (H04M)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 高野 洋白川 瑞樹  
特許庁審判長 大塚 良平
特許庁審判官 佐藤 聡史
岡 裕之
発明の名称 ハンドセット上で実行されるマルチメディアアプリケーションと、独立した被接続コンピューティングデバイスとのインターフェース  
代理人 村山 靖彦  
代理人 黒田 晋平  

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