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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) C09K |
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管理番号 | 1345300 |
審判番号 | 不服2016-8316 |
総通号数 | 228 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2018-12-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2016-06-06 |
確定日 | 2018-10-17 |
事件の表示 | 特願2013-254096「メロシアニン誘導体を使用することによる紫外線による劣化に対するボディケア及び家庭用品の安定化」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 5月22日出願公開、特開2014- 95082〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は,平成18年7月19日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2005年7月29日、2006年1月19日 いずれも欧州)を国際出願日とする出願(特願2008-523319号)の一部を平成25年12月9日に新たな特許出願としたものであって、以降の手続の経緯は、概略、以下のとおりのものである。 平成27年5月29日付け 拒絶理由通知書 同年11月13日 意見書・手続補正書 平成28年4月7日付け 拒絶査定 同年6月6日 審判請求書・手続補正書 同年8月10日付け 前置報告書 平成29年12月26日付け 拒絶理由通知書 平成30年4月6日 意見書・手続補正書 第2 本願発明の認定 本願の請求項1に係る発明は、平成30年4月6日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものである(以下、「本願発明」という。)。 「【請求項1】 液体製剤、ジェル、オイル、クリーム、ミルク、ローション、スティック、スプレー、エアゾール、フォーム、又はペーストの形態にある、 スキンケア製品、浴用及びシャワー添加剤、香料及び発香物質を含有する製剤、ヘアケア製品並びに歯磨き剤から選択されるボディケア製品、又は ガラス用洗剤、中性清浄剤、酸性家庭用清浄剤、食器洗浄剤、台所及びオーブン清浄剤、清浄すすぎ剤、床洗浄剤、金属、ガラス及び陶器用清浄剤、生地用ケア製品、敷物用清浄剤、カーペット用シャンプー、錆、色及びしみを除去する薬剤、家具及び多目的用研磨剤、革及びビニル用仕上げ剤並びに空気清浄剤から選択される家庭用品を光分解及び酸化的劣化から保護するための、下記式(1)で表される少なくとも一種の化合物を含む剤。 【化1】 [式中、 L_(1)、L_(2)又はL_(3)は、互いに独立して水素原子を表し、 nは1を表し、 R_(1)及びR_(2)は、互いに独立して水素原子;又は炭素原子数1ないし22のアルキル基を表し、 R_(3)及びR_(4)は、互いに独立してCN;-COR_(7);-COOR_(7);-CONR_(7)R_(8)又は;-SO_(2)R_(7)を表し、 R_(7)及びR_(8)は、互いに独立して炭素原子数1ないし22のアルキル基又はフェニル基を表す。]」 第3 平成29年12月26日付け拒絶理由の概要 平成29年12月26日付け拒絶理由は、本願の請求項1に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物である引用例1?2の記載に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない(理由2)という理由を含むものである。 第4 当審の判断 1 引用例1?2 (1)引用例1 本願優先日前に頒布された国際公開第2004/006878号(以下、「引用例1」という。)には、以下の事項が記載されている。 なお、引用例1は、外国語の文献であるため、その翻訳文は、その日本語ファミリーである特表2005-538072号公報によるものである。 (1-1)「【請求項1】 次式: 【化1】 [式中、 R_(1)及びR_(2)は互いに独立して水素原子、炭素原子数1ないし22のアルキル基、シクロ-炭素原子数3ないし8のアルキル基、又は、非置換又は炭素原子数1ないし6のアルキル基により若しくは炭素原子数1ないし6のアルコキシ基により置換された炭素原子数6ないし20のアリール基を表わし、或いは、R_(1)及びR_(2)はそれらを結合している窒素原子と一緒になって-(CH_(2))_(m)環を形成し、該環は、中断されていないか又は-O-基により若しくは-NH-基により中断されており、 R_(3)はシアノ基、-COOR_(5)基、-CONHR_(5)基、-COR_(5)基、又は-SO_(2)R_(5)基、-CONR_(1)R_(5)基を表わし、 R_(4)はシアノ基、-COOR_(6)基、-CONHR_(6)基、-COR_(6)基、又は-SO_(2)R_(6)基、-CONR_(2)R_(6)基を表わし、 R_(5)及びR_(6)は互いに独立して炭素原子数1ないし22のアルキル基、シクロ-炭素原子数3ないし8のアルキル基、又は、非置換又は炭素原子数1ないし6のアルキル基により置換された炭素原子数6ないし20のアリール基を表わし、 或いは、R_(3)及びR_(4)は一緒になって、又は、R_(5)及びR_(6)は一緒になって、5-ないし7-員の、単環式、炭素環式又はヘテロ環式環を形成し、 Z_(1)及びZ_(2)は互いに独立して-(CH_(2))_(l)基を表わし、該基は、中断されていないか又は-O-基、-S-基により若しくは-NR_(7)-基により中断されており、及び/又は、非置換又は炭素原子数1ないし6のアルキル基により置換されており、 R_(7)は炭素原子数1ないし5のアルキル基を表わし、 lは1ないし4を表わし、 mは1ないし7を表わし、 nは1ないし4を表わし、 n=2のとき、R_(1)、R_(5)又はR_(6)は二価アルキル基を表わし、或いは、R_(1)及びR_(2)はそれらを結合している窒素原子と一緒になって-(CH_(2))_(m)環を形成し、 n=3のとき、R_(1)、R_(5)又はR_(6)は三価アルキル基を表わし、 n=4のとき、R_(1)、R_(5)又はR_(6)は四価アルキル基を表わし、 前記式(1)中のR_(1)及びR_(2)が同時に水素原子を表わさない。]で表わされる化合物の、ヒト及び動物の髪及び皮膚を紫外線から保護する際の使用。 ・・・・・・・ 【請求項19】 請求項1記載の式(1)又は(2)で表わされる化合物少なくとも1種又はそれより多くと、化粧品の許容され得るキャリア又は助剤を含む、化粧品製剤。」(特許請求の範囲) (1-2)「【0020】 本発明に従って使用するための別の化合物は、以下の本文中の表MC1に記載されている。 ・・・・・・ 【0023】 【表3】 ・・・・・・ 【0025】 【表5】 【0026】 本発明に従って使用するための別のメロシアニン誘導体が表MC2に記載されている: ・・・・・・ 【0032】 【表12】 」(7頁下から2行?末行、10頁及び12頁の表、13頁1行?2行、19頁の表) (1-3)「【0049】 化粧品又は医薬製剤は、組成物の全重量に基づいて、紫外線吸収剤又は紫外線吸収剤混合物0.05重量%ないし40重量%を含む。 【0050】 本発明の式(1)で表わされる紫外線吸収剤と所望による別の光保護剤(下記表1?3に記載されたもの)との、重量に基づいて、1:99ないし99:1、とりわけ1:95ないし95:1、そして特別には10:90ないし90:10の混合比率の使用が好ましい。とりわけ興味のあるのは、20:80ないし80:20、とりわけ40:60ないし60:40、そして好ましくは約50:50の混合比率である。このような混合物は、とりわけ、溶解度を向上させるため又は紫外線吸収性を増大させるために使用され得る。」(25頁20行?末行) (1-4)「【0094】 化粧品及び医薬製剤 化粧品及び医薬製剤は、広範な化粧品製剤中に含まれている。例えば、とりわけ、下記の製剤が考慮される: -スキンケア製剤、例えば、タブレット形態又は液体石鹸、合成洗剤又はウォシングペーストの形態の皮膚-ウォシング及びクレンジング製剤; -バス製剤、例えば、液体(フォームバス、ミルク、シャワー製剤)又は固形バス製剤、例えば、バスキューブ及びバスソルト; -スキンケア製剤、例えば、スキン乳液、マルチ乳剤又はスキンオイル; -化粧品パーソナルケア製剤、例えば、日中用クリームの形態の顔メイクアップ又はパウダークリーム、フェイスパウダー(ルーズ又はプレスト)、ルージュ又はクリームメイクアップ、アイ-ケア製剤、例えば、アイシャドー製剤、マスカラ、アイライナー、アイクリーム又はアイ-フィックスクリーム;リップ-ケア製剤、例えば、リップスティック、リップグロス、リップコンターペンシル、ネイル-ケア製剤、例えば、マニキュア、マニキュア除去液、ネイルハードナー又はキューティクル除去液; -フットケア製剤、例えば、フットバス、フットパウダー、フットクリーム又はフットバルサム、スペシャルデオドラント及び発汗抑制剤又はタコ除去製剤; -光保護製剤、例えば、サンミルク、ローション、クリーム又はオイル、サンブロック又はトロピカル、プレタニング製剤又はアフターサン製剤; -スキンタニング製剤、例えば、セルフタニングクリーム; -脱色製剤、例えば、皮膚漂白用製剤又は皮膚増白製剤; -防虫剤、例えば、防虫オイル、ローション、スプレー又はスティック; -脱臭剤、例えば、脱臭スプレー、ポンプアクションスプレー、脱臭ゲル、スティック又はロール-オン; -発汗抑制剤、例えば、発汗抑制スティック、クリーム又はロール-オン; -傷ついた皮膚をクレンジングするため又はケアするための製剤、例えば、合成洗剤(固体又は液体)、ピーリング又はスクラッブ製剤又はピーリングマスク; -化学的形態の脱毛製剤(除毛)、例えば、脱毛パウダー、液体脱毛製剤、クリーム-又ーペースト-形態の脱毛製剤、ゲル形態又はエアゾールフォームの脱毛製剤; -シェービング製剤、例えば、シェービング石鹸、フォーミングシェービングクリーム、非発泡シェービングクリーム、フォーム及びゲル、ドライシェービングのためのプレシェーブ製剤、アフターシェーブ又はアフターシェーブローション; -芳香製剤、例えば、芳香剤(オーデコロン、オードトワレ、オードパルファム、パルファムドトワレ、パヒューム)、パヒュームオイル又はパヒュームクリーム; -化粧品ヘアトリートメント製剤、例えば、シャンプー又はコンディショナーの形態の洗髪製剤、ヘア-ケア製剤、例えば、プレトリートメント製剤、ヘアトニック、スタイリングクリーム、スタイリングゲル、ポマード、ヘアリンス、トリートメントパック、インテンシブヘアトリートメント、ヘア構成製剤、例えば、パーマネントウェーブ(ホットウェーブ、マイルドウェーブ、コールドウェーブ)のためのヘアウェービング製剤、ヘアストレートニング製剤、液体ヘアセッティング製剤、ヘアフォーム、ヘアスプレー、漂白製剤、例えば、過酸化水素溶液、増白シャンプー、ブリーチングクリーム、ブリーチングパウダー、ブリーチングペースト又はオイル、随時の、半-恒久的な又は恒久的な染髪剤、自動酸化染料を含む製剤、又は天然染髪剤、例えば、ヘナ又はカモミール。 【0095】 プレゼンテーションフォーム 記載された最終的な製剤は、広範な製剤形態、例えば: -W/O、O/W、O/W/O、W/O/W又はPIT乳液及び全ての種類のミクロ乳液として液体製剤の形態で、 -ゲルの形態で、 -オイル、クリーム、ミルク又はローションの形態で、 -パウダー、ラッカー、タブレット又はメイクアップの形態で、 -スティックの形態で、 -スプレー(加圧ガスを伴うスプレー又はポンプ作用スプレー)又はエアゾールの形態で、 -フォームの形態で、或いは -ペーストの形態で、 存在し得る。 【0096】 皮膚のための化粧品製剤としてとりわけ重要なものは、光保護製剤、例えば、サンミルク、ローション、クリーム、オイル、サンブロック又はトロピカル、プレタニング製剤又はアフターサン製剤、更に、スキンタニング製剤、例えば、セルフタニングクリームである。とりわけ興味のあるものは、日焼け防止クリーム、日焼け防止ローション、日焼け防止ミルク、及び、スプレーの形態の日焼け防止製剤である。 【0097】 髪のための化粧品製剤としてとりわけ重要なものは、ヘアトリートメントのための上述の製剤、とりわけ、シャンプーの形態の染髪製剤、ヘアコンディショナー、ヘア-ケア製剤、例えば、プレトリートメント製剤、ヘアトニック、スタイリングクリーム、スタイリングゲル、ポマード、ヘアリンス、トリートメントパック、インテンシブヘアトリートメント、ヘアストレートニング製剤、液体ヘアセッティング製剤、ヘアフォーム及びヘアスプレーである。とりわけ興味のあるものは、シャンプーの形態の染髪製剤である。 【0098】 シャンプーは、例えば、下記の組成を有する:本発明の紫外線吸収剤0.01ないし5重量%、ナトリウムラウレス-2-スルフェート12重量%、コカミドプロピルベタイン4.0重量%、塩化ナトリウム3.0重量%、及び100%までの水。 【0099】 例えば、とりわけ、下記のヘア-化粧品製剤が使用され得る: a1)本発明の紫外線吸収剤、PEG-6-炭素原子数10のオキソアルコール及びソルビタンセスキオレエートを含み、これに、水及び何らかの望ましい第四級アンモニウム化、例えば、ミンカミドプロピルジメチル-2-ヒドロキシエチルアンモニウムクロリド又はクォーターニウム(Quaternium)80、4%が添加されている、自発的に乳化するストック製剤; a2)本発明の紫外線吸収剤、トリブチルシトレート及びPEG-20-ソルビタンモノオレエートを含み、これに、水及び何らかの望ましい第四級アンモニウム化、例えば、ミンカミドプロピルジメチル-2-ヒドロキシエチルアンモニウムクロリド又はクォーターニウム(Quaternium)80、4%が添加されている、自発的に乳化するストック製剤; b)ブチルトリグリコール及びトリブチルシトレート中の、本発明の紫外線吸収剤のクワットドープされた(quat-doped)溶液; c)本発明の紫外線吸収剤と、n-アルキルピロリドンとの混合物又は溶液。 【0100】 この様な製剤中の他の典型的な成分は、防腐剤、殺菌剤及び静菌剤、芳香剤、染料、顔料、増粘剤、モイスチャライジング剤、湿潤剤、脂肪、オイル、ワックス或いは、化粧品及びパーソナルケア製剤の他の典型的な成分、例えば、アルコール、多価アルコール、ポリマー、電解質、有機溶剤、シリコン誘導体、皮膚軟化剤、乳化剤又は乳化界面活性剤、界面活性剤、分散剤、酸化防止剤、抗刺激剤及び抗炎症剤等である。」(44頁15行?47頁14行) (1-5)「【0101】 化粧品及び医薬製剤の例(X=好ましい組み合わせ) O/Wシステム ┌────────────────┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┐ │成分 │1│2│3│4│5│6│7│8│ ├────────────────┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┤ │乳化剤 │ │ │ │ │ │ │ │ │ ├────────────────┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┤ │セチルリン酸カリウム 2%?5%│×│ │ │ │ │ │ │ │ ├────────────────┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┤ │セテアリルアルコール/ジセチルホ│ │×│ │ │ │ │ │ │ │スフェート/セテス-10ホスフェ│ │ │ │ │ │ │ │ │ │ート2%?6% │ │ │ │ │ │ │ │ │ ├────────────────┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┤ │ステアリルフタルアミド酸ナトリウ│ │ │×│ │ │ │ │ │ │ム1%?2% │ │ │ │ │ │ │ │ │ ├────────────────┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┤ │セテアリルアルコール/ベヘントリ│ │ │ │×│ │ │ │ │ │モニウムメトスルホン酸1%?5%│ │ │ │ │ │ │ │ │ ├────────────────┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┤ │クォーターニウム-32 1%? │ │ │ │ │×│ │ │ │ │5% │ │ │ │ │ │ │ │ │ ├────────────────┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┤ │ジメチコーンコポリオール/カプリ│ │ │ │ │ │×│ │ │ │ル酸/カプリン酸トリグリセリド │ │ │ │ │ │ │ │ │ │1%?4% │ │ │ │ │ │ │ │ │ ├────────────────┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┤ │ステアレス-2/ステアレス-21│ │ │ │ │ │ │×│ │ │2%?5% │ │ │ │ │ │ │ │ │ ├────────────────┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┤ │ポリグリセリルメチルグルコースジ│ │ │ │ │ │ │ │×│ │ステアレート 1%?4% │ │ │ │ │ │ │ │ │ ├────────────────┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┤ ├────────────────┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┤ │親油性の皮膚軟化用/分散剤オイル│×│×│×│×│×│×│×│×│ │15%?20% │ │ │ │ │ │ │ │ │ ├────────────────┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┤ ├────────────────┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┤ │脂肪アルコール及び/又はワックス│×│×│×│×│×│×│×│×│ │1%?5% │ │ │ │ │ │ │ │ │ ├────────────────┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┤ ├────────────────┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┤ │増粘剤(水-膨張性増粘剤) │×│×│×│×│×│×│×│×│ │0.5%?1.5% │ │ │ │ │ │ │ │ │ ├────────────────┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┤ │防腐剤 0.5%?1% │×│×│×│×│×│×│×│×│ ├────────────────┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┤ │キレート剤(EDTAのようなもの│×│×│×│×│×│×│×│×│ │)0%?0.2% │ │ │ │ │ │ │ │ │ ├────────────────┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┤ │酸化防止剤 0.05%?0.2%│×│×│×│×│×│×│×│×│ ├────────────────┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┤ │脱イオン水 合計して100%とな│×│×│×│×│×│×│×│×│ │る量 │ │ │ │ │ │ │ │ │ ├────────────────┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┤ │香料オイル 0.1%?0.4% │×│×│×│×│×│×│×│×│ ├────────────────┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┤ │本発明の紫外線吸収剤0.1%? │×│×│×│×│×│×│×│×│ │20% │ │ │ │ │ │ │ │ │ ├────────────────┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┤ │表1?3に記載された紫外線吸収剤│×│×│×│×│×│×│×│×│ │0%?30% │ │ │ │ │ │ │ │ │ └────────────────┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┘ ・・・・・・ 【0114】 ・・・・・・ 下記の実施例において、パーセントは重量に基づいている。」(47頁15行?55頁末行) (1-6)「【0115】 製造例 実施例1:下記式で表わされる化合物の製造 【化11】 N-(3-アニリノ-アリリデン)アニリン(4.5g、0.02モル)及びシアノ酢酸2-エチルヘキシルエステル(4.2g、0.021モル)を、無水酢酸10mL中85?90℃で2時間撹拌した。真空中で過剰の無水酢酸を除去した後、この反応バッチを氷上に注ぎ、そして得られた沈澱を濾別し、そして多量の水で洗浄した。真空中60℃で乾燥後、中間体生成物を乾燥エタノール10mL中に投与し、そしてジエチルアミン(3.1g、0.042モル)を添加した。反応混合物を50?55℃で2時間撹拌した。エタノール及び過剰のアミンを、その後、真空中で溜去した。トルエンとアセトンの混合物(9.5:0.5)中の残渣を、メルク(Merk)社製のシリカゲル60上で分別濾過し、そして単離した。純粋な生成物を高真空下60℃で乾燥した。収量:4.5g(理論量の73.5%)。 ・・・・・・ 【0118】 使用例 実施例4:O/W乳液 (A): 式(101)で表わされる紫外線吸収剤 3g ゴマ油 10g グリセリルステアレート 4g ステアリン酸 1g セチルアルコール 0.5g ポリソルベート20 0.2g (B): プロピレングリコール 4g プロピルパラベン 0.05g メチルパラベン 0.15g トリエタノールアミン 0.1g カルボマー(carbomer)934 0.1g 水 100mLまで添加 乳液の製造 相(A): 最初に、紫外線吸収剤をゴマ油に溶解した。(A)の他の成分をそれに添加し、そして混合した。 相(B): プロピルパラベン及びメチルパラベンをプロピレングリコールに溶解した。その後、水60mLを添加し、70℃への加熱を行い、その後、カルボマー934をその中に乳化した。 乳液: 機械的エネルギーを激しく適用しながら、(A)を(B)にゆっくり添加した。水を添加することにより、容量を100mLに調整した。 【0119】 実施例5:日中用ケアクリーム、タイプO/W 重量% INCI名称 (使用量) パートA グルセリルステアレート(及び)セテアリール 4.0 アルコール(及び)セチルパルミテート (及び)ココグリセリド セテアレス-12 4.0 セテアリルアルコール 2.0 ジカプリリルエーテル 4.5 エチルヘキシルステアレート 4.0 ヘキシルラウレート 3.5 エチルヘキシルトリアゾン 1.0 ベンジリデンマロネートポリシロキサン 2.0 HDI/トリメチロールヘキシル-ラクトン 5.0 クロスポリマー(及び)シリカ ステアリルジメチコーン 1.0 ジメチコーン 2.0 セチルアルコール 0.8 式(101)で表わされる化合物 2.0 パートB 水 合計して100%となる量 水(及び)スクレログルカン(及び) 2.0 フェノキシエタノール グリセロール 2.0 パートC ステアレス-10アリルエーテル/ 0.45 アクリレートコモノマー フェノキシエタノール(及び)メチル 0.7 パラベン(及び)エチルパラベン (及び)ブチルパラベン(及び) プロピルパラベン(及び)イソブチル パラベン パートD 水(及び)トコフェリルアセテート(及び) 4.0 カプリル/カプリントリグリセリド(及び) ポリソルベート80(及び)レシチン パートE 水(及び)水酸化ナトリウム 適量 芳香剤 適量 ────────────────────────────────── 製造手順: パートA及びパートBを別々に80℃に加熱した。連続的に撹拌しながら、パートAをパートBに注入した。その後混合物を、11000rpmで20秒間ウルトラツラックス(Ultra Turrax)を用いて均質化した。この混合物を60℃に冷却し、そしてパートCを添加した。30℃以下の温度でパートDを添加し、そして水酸化ナトリウムを用いて、6.5と7.0の間にpH値を調整した。最後に、芳香剤を添加した。 【0120】 実施例6:日焼け防止クリーム、タイプO/W 重量% INCI名称 (使用量) パートA ポリグリセリル-3メチルグルコース 2.0 ジステアレート デシルオレエート 5.7 イソプロピルパルミテート 5.8 カプリル/カプリントリグリセリド 6.5 式(101a)で表わされる化合物 2.0 エチルヘキシルメトキシシンナメート 5.0 セチルアルコール 0.7 パートB グリセロール 3.0 カルボマー 0.3 水 合計して100%となる量 パートC フェノキシエタノール(及び)メチル 0.5 パラベン(及び)エチルパラベン (及び)ブチルパラベン(及び) プロピルパラベン(及び)イソブチル パラベン パートD メチレンビス-ベンゾトリアゾリルテトラ 8.0 メチルブチルフェノール(及び)水(及び) デシルグルコシド(及び)プロピレングリ コール(及び)キサンタンガム 水 20.0 パートE 水(及び)水酸化ナトリウム 適量 芳香剤 適量 ────────────────────────────────── 製造手順: パートA及びパートBを別々に75℃に加熱した。撹拌しながら、パートAをパートBに注入した。その後混合物を、11000rpmで15秒間ウルトラツラックス(Ultra Turrax)を用いて均質化した。この混合物を60℃に冷却し、そしてパートC及びパートDを配合した。この混合物を再び短時間(5秒/11000rpm)均質化し、そして中程度の撹拌をしながら更に冷却した。室温で、水酸化ナトリウム溶液を用いて、5.5と6.0の間にpH値を調整した。最後に、芳香剤を添加した。 【0121】 実施例7:日中用ケア紫外線防止ローション 重量% INCI名称 (使用量) パートA オレス-3ホスフェート 0.6 ステアレス-21 2.5 ステアレス-2 1.0 セチルアルコール 0.8 ステアリルアルコール 1.5 トリベヘニン 0.8 イソヘキサデカン 8.0 式(101)で表わされる化合物 5.0 パートB 水 合計して100%となる量 グリセロール 2.0 メチレンビス-ベンゾトリアゾリルテトラ 3.0 メチルブチルフェノール(及び)水(及び) デシルグルコシド(及び)プロピレングリ コール(及び)キサンタンガム EDTA2ナトリウム 0.1 パートC 水 20.0 ジアゾリジニル尿素(及び)ヨード 0.15 プロピニルブチルカルバメート プロピレングリコール 4.0 パートD アクリル酸ナトリウムコポリマー(及び) 1.5 液体パラフィン(及び)PPG-1 トリデセス-6 シクロペンタシロキサン 4.5 PEG-12ジメチコーン 2.0 トコフェリルアセテート 0.45 水(及び)クエン酸 適量 パートE 芳香剤 適量 ────────────────────────────────── 製造手順: パートA及びパートBを別々に75℃に加熱した。連続的に撹拌しながら、パートAをパートBに注入した。乳化後即座に、パートDからの、SF1202とSF1288の混合物中に配合した。その後、11000rpmで30秒間ウルトラツラックス(Ultra Turrax)を用いて均質化した。65℃に冷却し、そしてサルケア(SALCARE)(登録商標)SC91を配合した。50℃以下の温度で、パートCを添加した。35℃又はそれ以下で、ビタミンEアセテートを配合し、そしてその後、クエン酸を用いてpH値を調整した。室温で、パートEを添加した。」(56頁のExample1、57頁下から16行?61頁7行) (2)引用例2 本願優先日前に頒布された「岩波 理化学辞典 第4版」の525頁の「紫外線吸収剤」(以下、「引用例2」という。)には、以下の事項が記載されている。 (2-1)「紫外線吸収剤[UV absorber, UV absorbent ] 紫外線の化学作用から保護する目的で添加物として利用される物質.色をもたず,波長400nm以下の紫外線を吸収し,効率よく熱エネルギーに分散できるもので,かつ光に対して安定な化合物であることが必要である.代表的なものに2種ある.1)プラスチック,ゴムなどの光劣化を防止する目的で用いられるもので,サリチル酸誘導体,2-ヒドロキシベンゾフェノン誘導体である.2)皮膚上に塗布し日やけを防止する目的で使用されるもの.300nm以下の光は皮膚に特に有害であるため,300nm以下の光を吸収し,塗布しても無害なものが使用されている.これらには,安息香酸誘導体,ケイ皮酸誘導体,クマリン誘導体などがある.」 2 引用発明 引用例1には、上記(1-1)の請求項1に、「式(1) (R_(1)及びR_(2)は互いに独立して水素原子、炭素原子数1ないし22のアルキル基、R_(3)はシアノ基、-COOR_(5)基、-CONHR_(5)基、-COR_(5)基、又は-SO_(2)R_(5)基、-CONR_(1)R_(5)基を表わし、R_(4)はシアノ基、-COOR_(6)基、-CONHR_(6)基、-COR_(6)基、又は-SO_(2)R_(6)基、-CONR_(2)R_(6)基を表わし、R_(5)及びR_(6)は互いに独立して炭素原子数1ないし22のアルキル基、又は、非置換又は炭素原子数1ないし6のアルキル基により置換された炭素原子数6ないし20のアリール基を表わし、nは1を表わす。)で表わされる化合物の、ヒト及び動物の髪及び皮膚を紫外線から保護する際の使用」、及び、請求項19に「請求項1の式(1)で表わされる化合物少なくとも1種又はそれより多くと、化粧品の許容され得るキャリア又は助剤を含む、化粧品製剤」が記載されている。 当該式(1)で表わされる化合物の具体例としては、上記(1-2)の【表3】に「MC23」で表わされる化合物、【表5】に「MC39」で表わされる化合物、【表12】に「MC172」で表わされる化合物等が例示され、上記(1-3)に「化粧品又は医薬製剤は、組成物の全重量に基づいて、紫外線吸収剤又は紫外線吸収剤混合物0.05重量%ないし40重量%を含む」こと及び「本発明の式(1)で表される」化合物が「紫外線吸収剤」であること、上記(1-5)に化粧品及び医薬製剤の例として、種々の形態、発泡/ムース製品やコンディショニングシャンプー等の製品に本発明の紫外線吸収剤(式(1)で表わされる化合物を含む)を0.1(重量)%?20(重量)%で配合すること、上記(1-6)に使用例として、当該式(1)で表わされる化合物に含まれる式(101)の紫外線吸収剤を、乳剤、クリーム、ローション等の製剤に2重量%含むものが、それぞれ記載されている。 また、引用例1の上記(1-4)には、化粧品又は医薬製剤が「液体」、「オイル」、「ミルク」、「ローション」、「クリーム」、「スプレー」、「スティック」、「ペースト」、「ゲル形態」、「エアゾール」、「フォーム」等の形態で、「スキンケア製剤」、「バス製剤」、「化粧品パーソナルケア製剤」、「芳香製剤」、「ヘア-ケア製剤」であるものが記載されている。 これらの記載に基づくと、引用例1には、以下の発明(以下、「引用発明」という)が記載されているといえる。 「液体、オイル、ミルク、ローション、クリーム、スプレー、スティック、ペースト、ゲル、エアゾール、フォームの形態で、スキンケア製剤、バス製剤、化粧品パーソナルケア製剤、芳香製剤、ヘア-ケア製剤などの化粧品製剤であって、ヒト及び動物の髪及び皮膚を紫外線から保護する際に、式(1) (R_(1)及びR_(2)は互いに独立して水素原子、炭素原子数1ないし22のアルキル基、R_(3)はシアノ基、-COOR_(5)基、-CONHR_(5)基、-COR_(5)基、又は-SO_(2)R_(5)基、-CONR_(1)R_(5)基を表わし、 R_(4)はシアノ基、-COOR_(6)基、-CONHR_(6)基、-COR_(6)基、又は-SO_(2)R_(6)基、-CONR_(2)R_(6)基を表わし、 R_(5)及びR_(6)は互いに独立して炭素原子数1ないし22のアルキル基、又は、非置換又は炭素原子数1ないし6のアルキル基により置換された炭素原子数6ないし20のアリール基を表わし、 nは1を表わす。)で表わされる化合物である少なくとも1種の紫外線吸収剤又は紫外線吸収剤混合物を含む化粧品製剤。」 3 本願発明と引用発明との対比 本願発明と引用発明とを対比する。 引用発明の「液体、オイル、ミルク、ローション、クリーム、スプレー、スティック、ペースト、ゲル、エアゾール、フォームの形態で、」は、本願発明の「液体製剤、ジェル、オイル、クリーム、ミルク、ローション、スティック、スプレー、エアゾール、フォーム、又はペーストの形態にある、」に相当する。 引用発明の「スキンケア製剤、バス製剤、化粧品パーソナルケア製剤、芳香製剤、ヘア-ケア製剤などの化粧品製剤」は、ヒトの皮膚や髪などの身体に対して適用されることは明らかであるから、本願発明の「スキンケア製品、浴用及びシャワー添加剤、香料及び発香物質を含有する製剤、ヘアケア製品並びに歯磨き剤から選択されるボディケア製品、又は ガラス用洗剤、中性清浄剤、酸性家庭用清浄剤、食器洗浄剤、台所及びオーブン清浄剤、清浄すすぎ剤、床洗浄剤、金属、ガラス及び陶器用清浄剤、生地用ケア製品、敷物用清浄剤、カーペット用シャンプー、錆、色及びしみを除去する薬剤、家具及び多目的用研磨剤、革及びビニル用仕上げ剤並びに空気清浄剤から選択される家庭用品」に含まれるものである。 次に、引用発明の「式(1) (R_(1)及びR_(2)は互いに独立して水素原子、炭素原子数1ないし22のアルキル基、R_(3)はシアノ基、-COOR_(5)基、-CONHR_(5)基、-COR_(5)基、又は-SO_(2)R_(5)基、-CONR_(1)R_(5)基を表わし、 R_(4)はシアノ基、-COOR_(6)基、-CONHR_(6)基、-COR_(6)基、又は-SO_(2)R_(6)基、-CONR_(2)R_(6)基を表わし、 R_(5)及びR_(6)は互いに独立して炭素原子数1ないし22のアルキル基、又は、非置換又は炭素原子数1ないし6のアルキル基により置換された炭素原子数6ないし20のアリール基を表わし、 nは1を表わす。)で表わされる化合物」は、当該化合物の式中、R_(1)及びR_(2)が互いに独立して水素原子、炭素原子数1ないし22のアルキル基であり、R_(3)がシアノ基、-COOR_(5)基、-COR_(5)基、又は-SO_(2)R_(5)基、-CONR_(1)R_(5)基であり、R_(4)がシアノ基、-COOR_(6)基、-COR_(6)基、又は-SO_(2)R_(6)基、-CONR_(2)R_(6)基であり、その際、R_(5)及びR_(6)が互いに独立して炭素原子数1ないし22のアルキル基、又は、非置換の炭素原子数6のアリール基であり、nが1である場合、本願発明の「下記式(1)で表される少なくとも一種の化合物」の定義である「【化1】 [式中、 L_(1)、L_(2)又はL_(3)は、互いに独立して水素原子を表し、 nは1を表し、 R_(1)及びR_(2)は、互いに独立して水素原子;又は炭素原子数1ないし22のアルキル基を表し、 R_(3)及びR_(4)は、互いに独立してCN;-COR_(7);-COOR_(7);-CONR_(7)R_(8)又は;-SO_(2)R_(7)を表し、 R_(7)及びR_(8)は、互いに独立して炭素原子数1ないし22のアルキル基又はフェニル基を表す。]に含まれる。 そうすると、本願発明と引用発明は、同じ式(1)で表される少なくとも一種の化合物(【化1】 [式中、L_(1)、L_(2)又はL_(3)は、互いに独立して水素原子を表し、nは1を表し、R_(1)及びR_(2)は、互いに独立して水素原子;又は炭素原子数1ないし22のアルキル基を表し、R_(3)及びR_(4)は、互いに独立してCN;-COR_(7);-COOR_(7);-CONR_(7)R_(8)又は;-SO_(2)R_(7)を表し、R_(7)及びR_(8)は、互いに独立して炭素原子数1ないし22のアルキル基又はフェニル基を表す。])」(以下、「式(1)の化合物」という)を含み、「液体製剤、ジェル、オイル、クリーム、ミルク、ローション、スティック、スプレー、エアゾール、フォーム、又はペーストの形態にある、スキンケア製品、浴用及びシャワー添加剤、香料及び発香物質を含有する製剤、ヘアケア製品並びに歯磨き剤から選択されるボディケア製品、又は ガラス用洗剤、中性清浄剤、酸性家庭用清浄剤、食器洗浄剤、台所及びオーブン清浄剤、清浄すすぎ剤、床洗浄剤、金属、ガラス及び陶器用清浄剤、生地用ケア製品、敷物用清浄剤、カーペット用シャンプー、錆、色及びしみを除去する薬剤、家具及び多目的用研磨剤、革及びビニル用仕上げ剤並びに空気清浄剤から選択される家庭用品」を、前記「式(1)の化合物」の適用対象としている点で一致し、以下の点で相違している。 (相違点1) 「式(1)の化合物」の用途について、本願発明は、「光分解及び酸化的劣化から保護するための」「式(1)の化合物」「を含む剤」であるのに対して、引用発明は、「ヒト及び動物の髪及び皮膚を紫外線から保護する際に、「式(1)の化合物」の紫外線吸収剤又は紫外線吸収剤混合物を含む化粧品製剤」である点。 4 相違点についての判断 以下、相違点1について検討する。 上記相違点1は、「式(1)の化合物」の用途について、本願発明は、「光分解及び酸化的劣化から保護するための」剤であるのに対して、引用発明は、「ヒト及び動物の髪及び皮膚を紫外線から保護する際」の「紫外線吸収剤」であると言い換えることができる。 そこで、引用発明の「式(1)の化合物」の用途である「紫外線吸収剤」について見てみると、一般に、「紫外線吸収剤」は、紫外線の化学作用から保護するために添加物として用いられる物質であり、代表的な用途として二つ、具体的には、1)プラスチック、ゴムなどの光劣化を防止するために用いること、2)皮膚上に塗布し日やけを防止するために用いることが、それぞれ当業者に周知の技術的事項として知られている(上記引用例2の(2-1))。 すなわち、当業者は、「紫外線吸収剤」の用途として、プラスチック、ゴムなどの製品を光による劣化から防止するために用いること、ヒトの皮膚などの日焼けを防止するために用いることが代表的な用途であることを、当然、周知の技術的事項として認識している。 そして、引用発明において、代表的な用途の一つである「ヒト及び動物の髪及び皮膚を紫外線から保護する際」に「紫外線吸収剤」を用いることが記載されている以上、当該「紫外線吸収剤」を、もう一つの代用的な用途である製品の光劣化(光による分解)を防ぐ、すなわち、保護するために用いることは、当業者が当然、認識する技術的事項に過ぎず、引用発明の「式(1)の化合物」である「紫外線吸収剤」を光劣化(光による分解)からの保護を含む「光分解及び酸化的劣化から保護するため」の用途に用いることに、何ら技術的困難性があるとは認められない。 効果についても、引用発明の「式(1)の化合物」が「紫外線吸収剤」であることから、紫外線による光劣化(光による分解)から保護することは、当業者が予測できる範囲のものであり、予想外の格別顕著な効果を奏するものとも認められない。 したがって、本願発明は、引用例1に記載された発明及び周知の技術的事項(引用例2)に基づいて、当業者が容易に発明できたものである。 5 審判請求人の主張について 審判請求人は、平成30年4月6日付け意見書において、引用例1及び引用例2には、「光分解及び酸化的劣化から保護する」ことが具体的に開示されておらず(1)、本願明細書の実施例1及び2には最先端の紫外線吸収剤との比較で式(1)の化合物が優れた光安定性を示すことが記載されている(2)旨主張している。 しかしながら、(1)については、上記「3」及び「4」で検討したとおり、少なくとも光劣化(光による分解)から保護することが明らかに引用例1及び引用例2の記載から当業者が認識できると認められる以上、(1)の主張を採用することはできない。 また、(2)について、本願発明と引用発明は、同じ「式(1)の化合物」であり、上記「3」及び「4」で検討したとおり、光劣化(光による分解)から保護することを引用例1及び引用例2の記載から当業者が認識できると認められる以上、引用例1においても「式(1)の化合物」が奏する効果を単に確認したに過ぎず、(2)の主張を採用することもできない。 6 小括 したがって、本願発明は、引用例1に記載された発明及び周知の技術的事項(引用例2)に基づいて、当業者が容易に発明できたものである。 第5 むすび 以上のとおり、本願発明は、引用例1に記載された発明及び周知の技術的事項(引用例2)に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審理終結日 | 2018-05-17 |
結審通知日 | 2018-05-22 |
審決日 | 2018-06-05 |
出願番号 | 特願2013-254096(P2013-254096) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(C09K)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | ▲吉▼澤 英一 |
特許庁審判長 |
冨士 良宏 |
特許庁審判官 |
佐々木 秀次 天野 宏樹 |
発明の名称 | メロシアニン誘導体を使用することによる紫外線による劣化に対するボディケア及び家庭用品の安定化 |
代理人 | 平木 祐輔 |
代理人 | 田中 夏夫 |
代理人 | 新井 栄一 |
代理人 | 菊田 尚子 |
代理人 | 藤田 節 |