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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 F01D
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F01D
管理番号 1345315
審判番号 不服2017-12371  
総通号数 228 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-12-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-08-22 
確定日 2018-10-17 
事件の表示 特願2012-275237「タービンロータブレードのプラットフォームを冷却するための装置、システム及び/又は方法」拒絶査定不服審判事件〔平成25年7月18日出願公開、特開2013-139772〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成24年12月18日(パリ条約による優先権主張2011年12月30日、米国)の出願であって、平成28年8月31日付けで拒絶理由が通知され、その指定期間内の同年12月5日に意見書、手続補正書及び誤訳訂正書が提出されたが、平成29年4月14日付けで拒絶査定(発送日:同年4月25日)がされ、これに対して、同年8月22日に拒絶査定不服審判が請求され、その審判の請求と同時に手続補正がされたものである。

第2 平成29年8月22日の手続補正についての補正却下の決定
〔補正却下の決定の結論〕
平成29年8月22日の手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

〔理由〕
1 本願補正発明
本件補正は、特許請求の範囲の請求項1について、補正前(平成28年12月5日の手続補正書)の請求項1に、

「【請求項1】
翼形部と根元との接合部にプラットフォームを有するタービンロータブレードにおけるプラットフォーム冷却構成であって、前記ロータブレードが、その内部に形成され且つ前記根元におけるクーラント供給源との接続部から前記プラットフォームのほぼ半径方向高さまで延びる内部冷却通路を含み、作動時には、前記内部冷却通路が、高圧クーラント領域及び低圧クーラント領域を含み、前記翼形部の負圧側面と一致する側面に沿って、前記プラットフォームの負圧側面が、前記翼形部から負圧側スラッシュ面まで円周方向に延びる上側面を含み、前記プラットフォームの負圧側面が、前記翼形部の後縁と一致する後方端部を含み、
前記プラットフォーム冷却構成が、
前記プラットフォームの負圧側面の前方側面及び後方側面のうちの少なくとも1つ内に配置されたマニホルドと、
前記マニホルドを前記内部冷却通路の高圧クーラント領域に接続する高圧コネクタと、
前記マニホルドを前記内部冷却通路の低圧クーラント領域に接続する低圧コネクタと、
作動時に前記高圧コネクタから前記低圧コネクタまで流れるクーラントと相互作用するように前記マニホルド内に配置された熱伝達構造体と
を備えており、
前記高圧コネクタが前記マニホルドと接続している位置と、前記低圧コネクタが前記マニホルドと接続している位置とが、前記マニホルドのほぼ反対側にあり、
前記マニホルドが、前記プラットフォームの負圧側面の後方側面内の位置と、前記プラットフォームの負圧側面の後方側面の形状にほぼ一致する形状とを含み、前記マニホルドの第1の内壁が、前記翼形部の基部の負圧側面の輪郭と離間した関係で延びており、第2の内壁が、前記プラットフォームの後方端部とほぼ離間した関係で延びており、第3の内壁が、前記プラットフォームの負圧側面スラッシュ面とほぼ離間した関係で延びており、
前記マニホルドが、該マニホルドが前記負圧側面スラッシュ面側の第1の位置から前記正圧側面スラッシュ面側の第2の位置まで延びるときに軸方向に狭まっており、前記マニホルドがほぼ一定の半径方向高さを有しており、
複数の冷却アパーチャが、前記マニホルドと前記負圧側スラッシュ面との間及び前記マニホルドと前記プラットフォームの後方端部との間に延びており、前記冷却アパーチャが、前記マニホルドを通って流れる前記クーラントの一部用の出口を提供するように構成されており、前記冷却アパーチャが、所望のクーラントインピンジメント特性に対応した所定の流れ領域を有するように構成される、プラットフォーム冷却構成。」
とあったものを、

「【請求項1】
翼形部と根元との接合部にプラットフォームを有するタービンロータブレードにおけるプラットフォーム冷却構成であって、前記ロータブレードが、その内部に形成され且つ前記根元におけるクーラント供給源との接続部から前記プラットフォームのほぼ半径方向高さまで延びる内部冷却通路を含み、作動時には、前記内部冷却通路が、高圧クーラント領域及び低圧クーラント領域を含み、前記翼形部の負圧側面と一致する側面に沿って、前記プラットフォームの負圧側面が、前記翼形部から負圧側スラッシュ面まで円周方向に延びる上側面を含み、前記プラットフォームの負圧側面が、前記翼形部の後縁と一致する後方端部を含み、
前記プラットフォーム冷却構成が、
前記プラットフォームの負圧側面の後方側面内に配置されたマニホルドと、
前記マニホルドを前記内部冷却通路の高圧クーラント領域に接続する高圧コネクタと、
前記マニホルドを前記内部冷却通路の低圧クーラント領域に接続する低圧コネクタと、
作動時に前記高圧コネクタから前記低圧コネクタまで流れるクーラントと相互作用するように前記マニホルド内に配置された熱伝達構造体と
を備えており、
前記高圧コネクタが前記マニホルドと接続している位置と、前記低圧コネクタが前記マニホルドと接続している位置とが、前記翼形部の負圧側面の輪郭に沿って前記マニホルドのほぼ反対側にあり、
前記マニホルドが、前記プラットフォームの負圧側面の後方側面内の位置と、前記プラットフォームの負圧側面の後方側面の形状にほぼ一致する形状とを含み、前記マニホルドの第1の内壁が、前記翼形部の基部の負圧側面の輪郭と離間した関係で延びており、第2の内壁が、前記プラットフォームの後方端部とほぼ離間した関係で延びており、第3の内壁が、前記プラットフォームの負圧側面スラッシュ面とほぼ離間した関係で延びており、
前記マニホルドが、該マニホルドが前記負圧側面スラッシュ面側の第1の位置から前記正圧側面スラッシュ面側の第2の位置まで延びるときに軸方向に狭まっており、前記マニホルドがほぼ一定の半径方向高さを有しており、
複数の冷却アパーチャが、前記マニホルドと前記負圧側スラッシュ面との間及び前記マニホルドと前記プラットフォームの後方端部との間に延びており、前記冷却アパーチャが、前記マニホルドを通って流れる前記クーラントの一部用の出口を提供するように構成されており、前記冷却アパーチャが、所望のクーラントインピンジメント特性に対応した所定の流れ領域を有するように構成される、プラットフォーム冷却構成。」
と補正することを含むものである(下線は補正箇所を示すために審判請求人が付した。)。

上記補正は、発明を特定するために必要な事項である「マニホルド」について「前方側面及び後方側面のうちの少なくとも1つ内に配置された」を「後方側面内に配置された」と限定し、同「前記高圧コネクタが前記マニホルドと接続している位置と、前記低圧コネクタが前記マニホルドと接続している位置」について「前記翼形部の負圧側面の輪郭に沿って」マニホルドのほぼ反対側にあると限定するものであり、かつ、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

そこで、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)否かについて検討する。

2 引用文献
(1)引用文献1
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の優先日前に頒布された米国特許第5813835号明細書(以下「引用文献1」という。)には、「AIR-COOLED TURBINE BLADE」(空気冷却されたタービンブレード)に関して、図面(特に、Fig.1、Fig.2、Fig.4ないしFig.7、Fig.9、Fig.11参照)と共に次の事項が記載されている。なお、仮訳及び下線は当審による、以下同様。

ア 1欄27行?39行
「A wide variety of air-cooled turbine blades have been developed as a result. They are similar in that each is hollow and incorporates one or more internal cooling passages. During turbine operation, a supply of pressurized air is directed from the compressor section through these passages to provide the desired cooling effect. The air is directed into the blade through one or more openings provided in the root. Being under a pressure greater than that within the turbine casing, the cooling air continues to travel through the internal passages within the airfoil section and is then exhausted into the turbine gas stream. In this way, the airfoil is cooled, and sustained, efficient turbine operation is made feasible. 」
(仮訳)
多種多様な空気冷却されるタービンブレードは、結果として開発されている。中空であることで同様であり、1つまたは複数の内部冷却通路を内蔵している。タービン運転時に、加圧空気の供給は、これらの通路を介して圧縮機セクションから所望の冷却効果を提供することにある。空気は、根元に設けられた1つ以上の開口部を介してブレード内に導かれる。タービンケーシング内圧力よりも大きい圧力下で、冷却空気は、翼形部の内部通路を介して走行を継続し、タービンガス流内に排出される。このように、翼形部は冷却され、持続的、効率的なタービン運転が可能となる。

イ 2欄12行?21行
「Accordingly, it is a primary object of the present invention is to provide an air-cooled turbine blade overcoming the limitations and disadvantages of the prior art.
Another object of the present invention is to provide an air-cooled turbine blade utilizing multiple cooling passages for assuring a substantially uniform temperature gradient across the blade.
Another object of the present invention is to provide an air-cooled turbine blade including cooling passages disposed so as to actively cool the platform of the turbine blade. 」
(仮訳)
本発明の主な目的は、従来技術の制限および欠点を克服する空気冷却されるタービンブレードを提供することにある。
本発明の他の目的は、ブレード全体にわたって実質的に均一な温度勾配を確保するための複数の冷却通路を利用した空気冷却式タービンブレードを提供することにある。
本発明の他の目的は、タービンブレードのプラットフォームを積極的に冷却するように配置された冷却通路を備えた空気冷却式タービンブレードを提供することにある。

ウ 2欄37行?44行
「To achieve the foregoing and other objects and in accordance with the purposes of the present invention as described herein, an air-cooled turbine blade incorporates multiple internal cooling passages in the airfoil section of the blade, as well as in the platform, in order to provide improved cooling. During turbine operation, a substantially uniform temperature gradient is achieved enhancing blade reliability and longevity. 」
(仮訳)
前述およびその他の目的を達成するために、本明細書で説明した本発明の目的によれば、空気冷却式タービンブレードは、ブレードの翼形部、プラットフォーム内に複数の内部冷却通路を内蔵し、改善された冷却を提供することである。タービン運転時に、実質的に均一な温度勾配は、ブレードの信頼性及び寿命を向上させることが達成される。

エ 4欄24行?5欄36行
「Reference is directed to FIGS. 1 and 2, wherein the air-cooled turbine blade 10 of the present invention is illustrated. The turbine blade 10 includes a root 12 for mounting the blade to the turbine wheel (not shown), a platform 14 and an airfoil 16 formed integrally with the platform 14. The airfoil 16 includes a concave side 18 and a convex side 20. During operation of the turbine, combustion discharge gasses impinge on the concave side 18 of the airfoil 16. As can be appreciated, the concave side 18 of the airfoil 16 is subjected to higher temperatures during operation than the downstream, convex side 20.
Reference is now directed to FIGS. 4 and 5, sectional views of the airfoil 16. As will be described in move detail below, the airfoil 16 includes two serpentine side cooling passages 22, 24 and a third middle airfoil cooling passage 26. Additionally, a leading edge cooling passage 28, as well as a trailing edge cooling passage 30 are provided to effectively cool those areas (17 and 19 respectively) as well. As shown, various film cooling holes 29 are located in the leading edge 17, the concave side 18 and the convex side 20 of the airfoil 16 to exhaust at least some of the air in the associated passages and to provide a thin film of lower temperature air on the surfaces of the airfoil 16 for an additional cooling effect.
As shown in FIGS. 6 and 8, the flow of cooling air, indicated by the arrows, is admitted into the turbine blade 10 through the root 12. The cooling air continues to travel in each passage within the airfoil 16 thereby cooling the surrounding metal surfaces. As shown in FIG. 8, the side cooling passage 22 directs the flow of air to "double back", changing direction twice before exiting at orifice 52, thus maximizing the cooling action over a large portion of the concave side 18 of the airfoil 16. As shown in FIG. 6, the side cooling passage 24 cools the convex side 20 of the airfoil 16 in a similar manner. The air within the leading edge cooling passage 28 is ejected through the film cooling holes 29 providing the dual benefit of cooling the leading edge 17 as well as providing the film cooling as heretofore described. The air within the trailing edge cooling passage 30 is ejected across the height of the blade trailing edge 19.
Advantageously, a portion of the flow of the cooling air is utilized to cool the platform 14. Reference is made to FIG. 9 taken along section line 9--9 of FIG. 1. As shown, three platform cooling passages 31, 32, and 34 are provided. See also FIGS. 10 and 11, illustrating the relative placement of passages 31 and 32 within the platform 14. As further shown in FIG. 9, orifices 36, 38, and 40 are in fluid communication with the cooling passages 22, 24, and 28 respectively, to provide the desired diversion of a portion of the cooling air into the platform cooling passages. Advantageously, a uniform cooling is maintained within the platform 14 by the provision of several sets of outlet orifices 42, 44 and 46. Thus a continuous flow of cooling air is directed into the corners to assure even cooling. It should be appreciated that the size and number of these outlet orifices can be readily varied in order to fit a wide variety of applications.
Advantageously, and according to an important aspect of the present invention, an additional set of orifices 48, 50 are in outlet fluid communication with the platform cooling passages 31, 32 respectively. After passing through the platform cooling passages 31, 32 the cooling air (shown by the dashed arrows) enters the middle airfoil cooling passage 26 via these orifices 48, 50. Refer also to FIG. 7 wherein the orifice 50 is shown. In a like manner, entry of cooling air into the middle airfoil cooling passage 26 is also provided through the orifice 48. This arrangement has the two fold advantage of cooling the platform 14, as well as cooling the middle airfoil area. Moreover, the additional desirable result of cooling the middle airfoil area without overcooling it is achieved. More specifically, as the cooling air traverses the platform passage 31, 32 it is warmed. This warmed air is next directed through the middle airfoil cooling passage 26 via the orifices 48, 50 respectively to provide a lesser degree of cooling to the cooler middle airfoil area than is provided to the directly cooled concave 18 and convex side 20 of the airfoil 16. The cooling air then continues upwardly in the cooling passage 26 and ultimately exits through exit orifices 52. 」
(仮訳)
図1及び図2を参照すると、本発明の空気冷却式タービンブレード10が示されている。タービンブレード10は、タービンホイール(図示せず)に対してブレードを取り付けるための根部12、プラットフォーム14と一体に形成されたプラットフォーム14と翼形部16を含む。翼形部16は、凹面18と凸面20を含む。タービンの動作中、翼形部16の凹面側18に衝突する燃焼排ガスである。理解され得るように、翼形部16の凹面18は、下流側の凸状の側面20よりも運転中により高い温度に曝される。
図4及び図5に、翼形部16の断面図である。以下移動詳細に説明するように、翼形部16は、2つ蛇状側冷却通路22、24及び第3中央の翼形部冷却通路26を備えている。付随的に、前縁冷却通路28と、同様に後縁冷却通路30は、それらの領域(17、19)の冷却も効果的に設けられている。図示のように、翼形部16の前縁17と、凹面側18と凸面側20に配置された関連する通路内の空気の少なくとも一部を排出し、追加の冷却効果のために翼形部16の表面に低温空気の薄いフィルムを提供する様々なフィルム冷却孔29が設けられている。
図6及び図8に示すように、矢印で示されている、冷却空気の流れは、根部12を通ってタービンブレード10内に送り込まれる。冷却空気は、翼形部16内の各通路に移動し続け、周囲の金属面を冷却する。図8に示すように、冷却通路22は、空気の流れをダブルバックに導き、オリフィス52から出てゆく前に2回方向を変えることができ、これにより翼形部16の凹面形側面18の大部分にわたって冷却作用を最大にする。図6に示すように、冷却通路24は、同様に翼形部16の凸面側20を冷却する。
以上説明したように前縁冷却通路28内の空気は、フィルム冷却孔29の前縁17を冷却およびフィルム冷却を提供するという二重の利点を提供することから排出される。後縁冷却通路30内の空気は、動翼後縁19の略上下幅に渡って排出される。
有利には、プラットフォーム14を冷却するために利用される冷却風の流れの一部である。図9を参照して、図1の区分線9-9に沿った断面図である。図示のように、3つの冷却通路31、32、34が設けられている。図10及び図11も参照されたい。プラットフォーム14内の通路31及び32の相対的な配置を示す。また図9に示すように、オリフィス36、38、40は、冷却通路22、24、28のそれぞれと流体連通するプラットフォーム冷却通路に冷却風の一部の所望の分流を提供することにある。有利なことに、複数の出口オリフィス42、44及び46を設けることにより、プラットフォーム14内に均一な冷却が維持される。冷却空気の連続的な流れは、冷却を確保するために、角部に向けても導かれる。これらの出口オリフィスのサイズおよび個数は、広範囲の様々な用途に適合するために容易に変更することができることを理解されたい。
有利なことに、本発明の重要な態様によれば、オリフィス48、50の追加の組は、それぞれプラットフォーム冷却通路31、32と出口流体連通している。プラットフォーム冷却通路31、32を通過した冷却風(破線矢印で示す)は、これらのオリフィス48、50を介して中央の翼形部冷却通路26に流入する。オリフィス50を示す図7も参照する。同様に、中央の翼形部冷却通路26内への冷却空気のエントリは、オリフィス48を介して設けられている。これは、プラットフォーム14を冷却するだけでなく、中央の翼形部領域を冷却する2倍の利点がある。さらに、過剰冷却せずに中央の翼形部領域を冷却する追加の望ましい結果が達成される。より具体的には、冷却空気は、プラットフォーム通路31、32を横切って移動しながら、暖められる。この暖められた空気は、次にそれぞれオリフィス48、50を介して中央の翼形部冷却通路26に導かれ、直接冷却される翼形部16の凹面18と凸面側20に与えられるよりも少ない程度の冷却を冷たい中央の翼形部領域に提供することである。冷却空気は、冷却通路26内を上方に進み、最終的に出口オリフィス52を通って流出する。

オ 5欄49行?58行
「The foregoing description of a preferred embodiment of the invention has been presented for purposes of illustration and description. It is not intended to be exhaustive or to limit the invention to the precise form disclosed. Obvious modifications or variations are possible in light of the above teachings. For example, additional orifices can be provided to direct fluid communication from the trailing edge cooling passage 30 to the platform cooling passages 31, 32. This would provide for a greater flow of cooling air within the platform.」
(仮訳)
本発明の好ましい実施形態の前述の説明は、例示および説明の目的で提示したものである。網羅的である、すなわち開示された正確な形態に本発明を限定するものではない。明らかな修正または変形が上記の教示に照らして可能である。例えば、追加のオリフィスは、後縁冷却通路30からの流体連通をプラットフォーム冷却通路31、32に提供することができる。これは、プラットフォーム内の冷却空気の大きな流れを提供する。

カ Fig.5ないしFig.7には、タービンブレード10が、その内部に形成され且つプラットフォーム14のほぼ半径方向高さまで延びる冷却通路24、26を有することが示されている。そして、冷却通路24、26を冷却空気が流通すると冷却通路24、26に沿って圧力損失が生じるから、冷却通路24、26は高圧領域及び低圧領域を有することは明らかである。

キ Fig.9には、プラットフォーム14の上面が示され、翼形部16の凸面20側の上面が前方凸面20側上面及び後方凸面20側上面(これらを合わせて「凸面20側上面」という。)を含み、翼形部16の凹面18側に凹面18側上面を含むことが理解できる。また、プラットフォーム14の凸面20側上面は、翼形部16から凸面20側端面(Fig.9のプラットフォーム14の上方の端面)まで円周方向に延び、また、翼形部16の後縁19と一致する後方端(Fig.9のプラットフォーム14の右方端)を含みことが示されている。
そうすると、Fig.9には、翼形部16の凸面20と一致する側面に沿って、プラットフォーム14の凸面20側上面が、前記翼形部16から凸面20側端面まで円周方向に延びる上面を含み、前記プラットフォーム14の凸面20側上面が、前記翼形部16の後縁19と一致する後方端を含むことが示されているといえる。

ク Fig.9には、冷却通路32内に蛇行部及び分割部が配置されることが示されている。そして、蛇行部及び分割部がプラットフォーム14の冷却を目的とするためものであることは明らかである。

ケ Fig.9には、オリフィス38が冷却通路32と接続している位置と、オリフィス50が前記冷却通路32と接続している位置とが、翼形部16の凸面20の輪郭に沿っていることが示されている。

コ Fig.9には、冷却通路32を全体としてみると、冷却通路32がプラットフォーム14の凸面20側上面の後方凸面20側上面内の位置と、プラットフォーム14の凸面20側上面の後方凸面20側上面の形状にほぼ一致する形状とを備えることが示されている。

サ Fig.9には、冷却通路32のオリフィス38から出口オリフィス44までの通路が、翼形部16の基部の凸面20の輪郭と離間した関係で延びており、後方側(Fig.9の右方側)の通路が、プラットフォーム14の後方端とほぼ離間した関係で延びており、凸面20側端面近傍(Fig.9の上方側)の通路が、プラットフォーム14の凸面20側端面とほぼ離間した関係で延びていることが示されている。

シ Fig.9には、プラットフォーム14の凹面18側上面が翼形部16から凹面18側端面(Fig.9のプラットフォーム14の下方の端面)まで延びることが示されている。また、Fig.9には、冷却通路32を全体としてみると、冷却通路32が凸面20側端面側の位置から凹面18側端面側の位置まで延びるときに軸方向に狭まっていることが示されている。

ス Fig.11には、プラットフォーム14に設けられた冷却通路32がほぼ一定の上下方向高さを有していることが示されている。

セ Fig.9には、複数の出口オリフィス44が冷却通路32の後方側の通路に設けられ、前記出口オリフィス44が前記冷却通路32を通って流れる冷却空気の一部用の出口を提供するように構成されることが示されている。

上記記載事項及び図示内容を総合し、本願補正発明の記載ぶりに則って整理すると、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。

「翼形部16と根部12との接合部にプラットフォーム14を有するタービンブレード10における空気冷却構造であって、前記タービンブレード10が、その内部に形成され且つ前記根部12における圧縮機セクションとの接続部から前記プラットフォーム14のほぼ半径方向高さまで延びる冷却通路24、26を含み、タービンの動作中には、前記冷却通路24、26が、高圧領域及び低圧領域を含み、前記翼形部16の凸面20と一致する側面に沿って、前記プラットフォーム14の凸面20側上面が、前記翼形部16から凸面20側端面まで円周方向に延びる上面を含み、前記プラットフォーム14の凸面20側上面が、前記翼形部16の後縁19と一致する後方端を含み、
前記空気冷却構造が、
前記プラットフォーム14の凸面20側上面の後方凸面20側上面内に配置された冷却通路32と、
前記冷却通路32を前記冷却通路24、26の高圧領域に接続するオリフィス38と、
前記冷却通路32を前記冷却通路24、26の低圧領域に接続するオリフィス50と、
タービンの動作中に前記オリフィス38から前記オリフィス50まで流れる冷却空気と相互作用するように前記冷却通路32内に配置された蛇行部及び分割部と
を備えており、
前記オリフィス38が前記冷却通路32と接続している位置と、前記オリフィス50が前記冷却通路32と接続している位置とが、前記翼形部16の凸面20の輪郭に沿ってあり、
前記冷却通路32が、前記プラットフォーム14の凸面20側上面の後方凸面20側上面内の位置と、前記プラットフォーム14の凸面20側上面の後方凸面20側上面の形状にほぼ一致する形状とを含み、前記冷却通路32のオリフィス38から出口オリフィス44までの通路が、前記翼形部16の基部の凸面20の輪郭と離間した関係で延びており、後方側の通路が、前記プラットフォーム14の後方端とほぼ離間した関係で延びており、凸面20側端面近傍の通路が、前記プラットフォーム14の凸面20側端面とほぼ離間した関係で延びており、
前記冷却通路32が、該冷却通路32が前記凸面20側端面側の位置から凹面18側端面側の位置まで延びるときに軸方向に狭まっており、前記冷却通路32がほぼ一定の上下方向高さを有しており、
複数の出口オリフィス44が前記冷却通路32の後方側の通路に設けられ、前記出口オリフィス44が前記冷却通路32を通って流れる前記冷却空気の一部用の出口を提供するように構成される、冷却構造。」

(2)引用文献2
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の優先日前に頒布された特開平11-236805号公報(以下「引用文献2」という。)には、「ガスタービン動翼のプラットフォーム」に関して、図面(特に、図1参照)と共に次の事項が記載されている。

ア 「【0019】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態について図面に基づいて具体的に説明する。図1は本発明の実施の第1形態に係るガスタービン動翼のプラットフォームを示し、(a)がプラットフォームの平面図、(b)が(a)におけるA-A断面図である。
【0020】図1(a)において、1はプラットフォームであり、51は動翼である。2はプラットフォーム1内の空洞で一方の側に形成されている。3,4は同じく空洞であり、プラットフォーム1の他方の側に形成されている。5,6,7,8はそれぞれ複数列の冷却穴であり、5は空洞2に連通し、プラットフォーム1の一方の側の周辺に後述するように斜めに穿設され、斜め上方に冷却空気を吹き出し、6は空洞3に連通し、同様にプラットフォーム1の他方の側に斜め上方に冷却空気を吹き出し、7及び8は空洞4に連通し、それぞれプラットフォーム1の他方の側及び後方の斜め上方に冷却空気を吹き出すように構成される。
【0021】9,10も冷却穴であり、それぞれ動翼51の両側のプラットフォーム1の中央部に設けられ、同じく傾斜して上面に冷却空気を斜めに吹き出し、上面においては9a,10aで示すように表面に冷却空気を拡散するように末広がりの拡大部を設けている。
【0022】図1(b)は(a)のA-A断面図であり、プラットフォーム1には空洞2,4が形成されており、その下部にはインピンジ板11が取付けられて空洞3,4をふさぎ、インピンジ板11の多数の穴12より冷却空気70が導かれ、空洞2,4内をインピンジ冷却する。
【0023】プラットフォーム1の一方の側には空洞2に連通し、上方に傾斜して端部に開口し、斜め上方に冷却空気を吹き出す冷却穴5と、中央部で同じく上面へ斜めに冷却空気を吹き出す冷却穴9が設けられている。
【0024】又、プラットフォーム1の他方の側にも同様に周辺において斜めに設けられ、斜め上方に冷却空気を吹き出す冷却穴7及び中央部で斜め上方に冷却空気を吹き出す冷却穴10が設けられている。
【0025】上記構成の実施の第1形態において、冷却空気70は動翼の翼根部よりインピンジ板11の穴12より空洞2,3,4に流入し、これら空洞の部分をインピンジ冷却し、プラットフォーム1の翼周囲の主要部が均一に冷却される。冷却空気はこれら空洞2,3,4よりそれぞれ複数の冷却穴5,6,7,8より斜めに流れてプラットフォーム1の両側及び後方の斜め上方に流出し、それぞれプラットフォーム1の周辺部を下から上へ冷却する。
【0026】上記のように本実施の第1形態のプラットフォーム1では、従来のような複雑な通路をなくして主要部は空洞2,3,4とインピンジ板11とで全面を均一に冷却するようにし、周辺部は斜め方向で上向きの短い冷却穴5?10を多数配列して空洞2,3,4よりそれぞれ冷却空気を流出して冷却するような構成としたので、プラットフォーム1の加工が容易になると共に、複雑で、長い冷却通路なしでプラットフォーム1の全面及び周辺を均一に冷却することができるものである。」

イ 図1には、動翼51凸部側のプラットフォーム1の後方内部に空洞4を設けることが示されている。また、同図には、複数の冷却穴7、8が、空洞4とプラットフォーム1の動翼51凸部側の端面(同図の下方端面)との間及び前記空洞4と前記プラットフォーム1の後方端(同図の右方端)との間に延びることが示されている。

上記記載事項及び図示内容からみて、引用文献2には、次の事項(以下「引用文献2に記載された事項」という。)が記載されている。

「動翼51凸部側のプラットフォーム1の後方内部に空洞4を設け、複数の冷却穴7、8が、前記空洞4とプラットフォーム1の動翼51凸部側の端面との間及び前記空洞4と前記プラットフォーム1の後方端との間に延びており、前記冷却穴7、8が、前記空洞4を通って流れる冷却空気の一部用の出口を提供するように構成されており、前記冷却穴7、8より斜めに流れてプラットフォーム1の前記動翼51凸部側の端面及び後方の斜め上方に流出し、それぞれプラットフォーム1の周辺部を下から上へ冷却すること。」

3 対比・判断
本願補正発明と引用発明とを対比すると、後者の「翼形部16」は前者の「翼形部」に相当し、以下同様に、「根部12」は「根元」に、「プラットフォーム14」は「プラットフォーム」に、「タービンブレード10」は「タービンロータブレード」に、「空気冷却構造」は「プラットフォーム冷却構成」に、「冷却空気」は「クーラント」に、「圧縮機セクション」は所望の冷却効果を提供するから「クーラント供給源」に、「冷却通路24、26」は「内部冷却通路」に、「タービンの動作中」は「作動時」に、「高圧領域」及び「低圧領域」は「高圧クーラント領域」及び「低圧クーラント領域」に、「翼形部16の凸面20」は「翼形部の負圧側面」に、「プラットフォーム14の凸面20側上面」は「プラットフォームの負圧側面」に、「後方凸面20側上面」は「後方側面」に、「凸面20側端面」は「負圧側スラッシュ面」に、「後方端」は「後方端部」に、「翼形部16から凸面20側端面まで円周方向に延びる上面」は「翼形部から負圧側スラッシュ面まで円周方向に延びる上側面」に、「翼形部16の後縁19」は「翼形部の後縁」に、「冷却通路32」は「マニホルド」に、「オリフィス38」は「高圧コネクタ」に、「オリフィス50」は「低圧コネクタ」に、「冷却通路32内に配置された蛇行部及び分割部」は「マニホルド内に配置された熱伝達構造体」に、「冷却通路32のオリフィス38から出口オリフィス44への通路」は壁面を有するから「マニホルドの第1の内壁」に、「後方側の通路」は「第2の内壁」に、「凸面20側端面近傍の通路」は「第3の内壁」に、「冷却通路32が、該冷却通路32が前記凸面20側端面側の位置から凹面18側端面側の位置まで延びる」ことは「マニホルドが、該マニホルドが前記負圧側面スラッシュ面側の第1の位置から前記正圧側面スラッシュ面側の第2の位置まで延びる」ことに、「冷却通路32がほぼ一定の上下方向高さを有」することは「マニホルドがほぼ一定の半径方向高さを有」することにそれぞれ相当する。

また、後者の「複数の出口オリフィス44が前記冷却通路32の後方側の通路に設けられ、前記出口オリフィス44が前記冷却通路32を通って流れる前記冷却空気の一部用の出口を提供するように構成される」ことと前者の「複数の冷却アパーチャが、前記マニホルドと前記負圧側スラッシュ面との間及び前記マニホルドと前記プラットフォームの後方端部との間に延びており、前記冷却アパーチャが、前記マニホルドを通って流れる前記クーラントの一部用の出口を提供するように構成されており、前記冷却アパーチャが、所望のクーラントインピンジメント特性に対応した所定の流れ領域を有するように構成される」こととは、「複数の冷却アパーチャが、前記マニホルドを通って流れる前記クーラントの一部用の出口を提供するように構成される」という限りで一致する。

したがって、両者は、
「翼形部と根元との接合部にプラットフォームを有するタービンロータブレードにおけるプラットフォーム冷却構成であって、前記ロータブレードが、その内部に形成され且つ前記根元におけるクーラント供給源との接続部から前記プラットフォームのほぼ半径方向高さまで延びる内部冷却通路を含み、作動時には、前記内部冷却通路が、高圧クーラント領域及び低圧クーラント領域を含み、前記翼形部の負圧側面と一致する側面に沿って、前記プラットフォームの負圧側面が、前記翼形部から負圧側スラッシュ面まで円周方向に延びる上側面を含み、前記プラットフォームの負圧側面が、前記翼形部の後縁と一致する後方端部を含み、
前記プラットフォーム冷却構成が、
前記プラットフォームの負圧側面の後方側面内に配置されたマニホルドと、
前記マニホルドを前記内部冷却通路の高圧クーラント領域に接続する高圧コネクタと、
前記マニホルドを前記内部冷却通路の低圧クーラント領域に接続する低圧コネクタと、
作動時に前記高圧コネクタから前記低圧コネクタまで流れるクーラントと相互作用するように前記マニホルド内に配置された熱伝達構造体と
を備えており、
前記高圧コネクタが前記マニホルドと接続している位置と、前記低圧コネクタが前記マニホルドと接続している位置とが、前記翼形部の負圧側面の輪郭に沿ってあり、
前記マニホルドが、前記プラットフォームの負圧側面の後方側面内の位置と、前記プラットフォームの負圧側面の後方側面の形状にほぼ一致する形状とを含み、前記マニホルドの第1の内壁が、前記翼形部の基部の負圧側面の輪郭と離間した関係で延びており、第2の内壁が、前記プラットフォームの後方端部とほぼ離間した関係で延びており、第3の内壁が、前記プラットフォームの負圧側面スラッシュ面とほぼ離間した関係で延びており、
前記マニホルドが、該マニホルドが前記負圧側面スラッシュ面側の第1の位置から前記正圧側面スラッシュ面側の第2の位置まで延びるときに軸方向に狭まっており、前記マニホルドがほぼ一定の半径方向高さを有しており、
複数の冷却アパーチャが、前記マニホルドを通って流れる前記クーラントの一部用の出口を提供するように構成される、プラットフォーム冷却構成。」
である点で一致し、次の点で相違する。

〔相違点1〕
本願補正発明は、高圧コネクタがマニホルドと接続している位置と低圧コネクタがマニホルドと接続している位置とが翼形部の負圧側面の輪郭に沿って「前記マニホルドのほぼ反対側に」あるのに対し、
引用発明は、オリフィス38が冷却通路32と接続している位置とオリフィス50が冷却通路32と接続している位置とが、翼形部16の凸面20の輪郭に沿ってあるものの、「前記マニホルドのほぼ反対側に」あるとはいえない点。

〔相違点2〕
本願補正発明は、「複数の冷却アパーチャが、前記マニホルドと前記負圧側スラッシュ面との間及び前記マニホルドと前記プラットフォームの後方端部との間に延びており」、「前記冷却アパーチャが、所望のクーラントインピンジメント特性に対応した所定の流れ領域を有するように構成される」のに対し、
引用発明は、「複数の出口オリフィス44が前記冷却通路32の後方側の通路に設けられ、前記出口オリフィス44が前記冷却通路32を通って流れる前記冷却空気の一部用の出口を提供するように構成される」ものの、本願補正発明の上記発明特定事項を備えていない点。

そこで、各相違点を検討する。
(1)相違点1について
引用文献1には、「追加のオリフィスは、後縁冷却通路30からの流体連通をプラットフォーム冷却通路31、32に提供することができる。これは、プラットフォーム内の冷却空気の大きな流れを提供する。」(上記2(1)オ)との記載がある。この記載とFig.9とからみて、追加のオリフィスを後縁冷却通路30に設けた場合、冷却通路32を全体としてみると、追加のオリフィスが冷却通路32と接続している位置とオリフィス50が冷却通路32と接続している位置とが、翼形部16の凸面20の輪郭に沿って冷却通路32のほぼ反対側となることは、当業者であれば理解できることである。
そうすると、引用発明において、引用文献1の上記記載を参酌して、相違点1に係る本願補正発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

(2)相違点2について
引用文献2に記載された事項は、「動翼51凸部側のプラットフォーム1の後方内部に空洞4を設け、複数の冷却穴7、8が、前記空洞4とプラットフォーム1の動翼51凸部側の端面との間及び前記空洞4と前記プラットフォーム1の後方端との間に延びており、前記冷却穴7、8が、前記空洞4を通って流れる冷却空気の一部用の出口を提供するように構成されており、前記冷却穴7、8より斜めに流れてプラットフォーム1の前記動翼51凸部側の端面及び後方の斜め上方に流出し、それぞれプラットフォーム1の周辺部を下から上へ冷却する」というものである。

引用発明と引用文献2に記載された事項とは、プラットフォームの翼形部凸部側の後方内部に冷却空気を全面状に通過させることによってプラットフォームを冷却する点で共通する。また、引用文献2には、空洞4からプラットフォーム1の翼形部凸部側の上面に冷却穴10を設け、斜め上方に冷却空気を吹き出すことが記載されている。引用文献2の冷却穴10と引用発明の出口オリフィス44とは、プラットフォーム1の翼形部凸部側の上面から冷却空気を吹き出す点で共通する。
そうすると、引用発明に引用文献2に記載された事項を適用する動機付けがあるといえるから、引用発明の冷却通路32に引用文献2に記載された事項の「複数の冷却穴7、8が、空洞4とプラットフォーム1の動翼51凸部側の端面との間及び前記空洞4と前記プラットフォーム1の後方端との間に延びており、前記冷却穴7、8が、前記空洞4を通って流れる冷却空気の一部用の出口を提供するように構成され」るとの事項を適用して、相違点2に係る本願補正発明の「複数の冷却アパーチャが、前記マニホルドと前記負圧側スラッシュ面との間及び前記マニホルドと前記プラットフォームの後方端部との間に延びており、前記冷却アパーチャが、前記マニホルドを通って流れる前記クーラントの一部用の出口を提供するように構成され」るようにすることは、当業者にとって格別困難なことではない。

次に、本願補正発明の「前記冷却アパーチャが、所望のクーラントインピンジメント特性に対応した所定の流れ領域を有するように構成される」との事項について、本願明細書には「冷却アパーチャ156は、所望のクーラントインピンジメント特性に対応する所定の流れ領域を有するように構成することができる。すなわち、冷却アパーチャ156は、放出されたクーラントが隣接するタービンブレード100のスラッシュ面に当たる速度で衝突及び配向されるように狭く形成することができ、これにより一般に、クーラントの冷却効果が向上する。」(段落【0024】)との記載がある。この記載によれば、「所望のクーラントインピンジメント特性」とは、冷却アパーチャを「放出されたクーラントが隣接するタービンブレード100のスラッシュ面に当たる速度で衝突及び配向されるように狭く形成する」ことにより得られるものと認められる。

本願の優先日における技術水準をみるに、冷却アパーチャを放出されたクーラントが隣接するタービンブレードに当たる速度で衝突及び配向されるように狭く形成することは、周知の技術事項(例えば、特開昭61-70104号公報の2ページ左下欄14行?右下欄9行の記載並びに第1図及び第2図、特開2002-201906号公報の段落【0025】の記載及び図9参照)である。

他方、引用文献2に記載された事項は、冷却空気が「前記冷却穴7、8より斜めに流れてプラットフォーム1の前記動翼51凸部側の端面及び後方の斜め上方に流出し、それぞれプラットフォーム1の周辺部を下から上へ冷却する」ものであって、冷却穴7の配置や冷却空気の流出速度は設計事項であると認められる。また、プラットフォーム1の動翼51凸部側の端面が隣接するプラットフォーム1の動翼51凹部側の端面に隣接することは明らかである。

そうすると、引用文献2に記載された事項の冷却穴7の配置や冷却空気の流出速度を適宜設計して、引用発明に引用文献2に記載された事項を適用したものにおいて、相違点2に係る本願補正発明の「前記冷却アパーチャが、所望のクーラントインピンジメント特性に対応した所定の流れ領域を有するように構成される」ようにすることは、当業者にとって格別困難なことではない。

そうしてみると、引用発明に引用文献2に記載された事項を適用して、相違点2に係る本願補正発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

(3)効果について
本願補正発明は、全体としてみて、引用発明及び引用文献2に記載された事項から予測される以上の格別な効果を奏するものではない。

(4)まとめ
したがって、本願補正発明は、引用発明及び引用文献2に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

4 むすび
よって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし14に係る発明は、平成28年12月5日の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし14に記載されたとおりのものであると認められるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、前記「第2〔理由〕1」に補正前の請求項1として記載したとおりのものである。

2 原査定の拒絶の理由
本願の下記の請求項に係る発明は、その優先日前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

・請求項1、3ないし7、11ないし14
・引用文献1、4

・請求項2、8ないし10
・引用文献1、3、4
<引用文献等一覧>
1.米国特許第5813835号明細書(本審決の引用文献1)
2.特開2011-185271号公報
3.特開平5-52102号公報
4.特開平11-236805号公報(本審決の引用文献2)

3 引用文献
原査定の拒絶の理由に引用した本審決の引用文献1及び2、その記載事項、及び引用発明は、前記「第2〔理由〕2」に記載したとおりである。

4 対比・判断
本願発明は、前記「第2〔理由〕」で検討した本願補正発明における「マニホルド」についての「後方側面内に配置された」を「前方側面及び後方側面のうちの少なくとも1つ内に配置された」と拡張し、同「前記高圧コネクタが前記マニホルドと接続している位置と、前記低圧コネクタが前記マニホルドと接続している位置」についての「前記翼形部の負圧側面の輪郭に沿って」との限定を省いたものである。
そうしてみると、本願発明の発明特定事項をすべて含んだものに実質的に相当する本願補正発明が、前記「第2〔理由〕3」に記載したとおり、引用発明及び引用文献2に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、実質的に同様の理由により、引用発明及び引用文献2に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

5 まとめ
したがって、本願発明は、引用発明及び引用文献2に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないから、本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2018-05-21 
結審通知日 2018-05-22 
審決日 2018-06-04 
出願番号 特願2012-275237(P2012-275237)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (F01D)
P 1 8・ 121- Z (F01D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 倉橋 紀夫筑波 茂樹  
特許庁審判長 金澤 俊郎
特許庁審判官 鈴木 充
冨岡 和人
発明の名称 タービンロータブレードのプラットフォームを冷却するための装置、システム及び/又は方法  
代理人 小倉 博  
代理人 田中 拓人  
代理人 黒川 俊久  
代理人 荒川 聡志  

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