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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1345376
審判番号 不服2017-18130  
総通号数 228 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-12-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-12-06 
確定日 2018-10-18 
事件の表示 特願2016-167339号「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成30年3月8日出願公開、特開2018-33549号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯の概要
本願は、平成28年8月29日の出願であって、平成29年7月20日付けで拒絶の理由が通知され、同年8月30日に意見書及び手続補正書が提出されたところ、同年9月6日付け(発送日:同年9月12日)で拒絶査定(以下「原査定」という。)がなされ、それに対して、同年12月6日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正がなされたものである。

第2 平成29年12月6日にされた手続補正についての補正却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成29年12月6日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 補正の内容
本件補正により、平成29年8月30日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1における
「導光板と、前記導光板に光拡散部材を介して光を照射する光源と、を備える遊技機であって、
前記光拡散部材には、前記光源の照射方向とは反対側の端部に、前記光源から照射される光を拡散させる光拡散部が設けられ、
前記光拡散部には、溝が形成されていることを特徴とする遊技機。」は、審判請求時に提出された手続補正書(平成29年12月6日付け)における「導光板と、前記導光板に光拡散部材を介して光を照射する光源と、を備える遊技機であって、
前記光拡散部材には、前記光源の照射方向とは反対側の端部に、前記光源から照射される光を拡散させる光拡散部が設けられ、
前記光拡散部は、
円弧状に形成され、前記光源の照射方向とは反対側の端面にローレット溝が形成され、前記光源と前記光拡散部の頂部とが対応するように配置可能な位置決め部を有していることを特徴とする遊技機。」に補正された(下線は、補正箇所を明示するために当審にて付した。)。

2 補正の適否
本件補正は、補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「光拡散部」について、「光拡散部には、溝が形成されている」とあったものを「光拡散部は、円弧状に形成され、前記光源の照射方向とは反対側の端面にローレット溝が形成され、前記光源と前記光拡散部の頂部とが対応するように配置可能な位置決め部を有している」と限定することを含むものである。

そして、補正後の請求項1に係る発明は、補正前の請求項1に係る発明と、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、本件補正のうち特許請求の範囲の請求項1についてする補正は、特許法第17条の2第5項第2号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とする補正に該当する。
また、本件補正は、願書に最初に添付した明細書の【0074】、【図11】、【図14】等の記載からみて、新規事項を追加するものではないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たす。

3 独立特許要件
そこで、本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本件補正発明」という。)が特許出願の際に独立して特許を受けることができるものであるか、すなわち、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するかについて、以下に検討する。
(1)本件補正発明
本件補正発明は、次のとおりのものであると認める(記号A?Cは、分説するため審決にて付した。)。
「A 導光板と、前記導光板に光拡散部材を介して光を照射する光源と、を備える遊技機であって、
B 前記光拡散部材には、前記光源の照射方向とは反対側の端部に、前記光源から照射される光を拡散させる光拡散部が設けられ、
C 前記光拡散部は、
円弧状に形成され、前記光源の照射方向とは反対側の端面にローレット溝が形成され、前記光源と前記光拡散部の頂部とが対応するように配置可能な位置決め部を有していることを特徴とする遊技機。」

(2)刊行物に記載された事項
原査定の拒絶理由において提示された、本願の出願前に頒布された刊行物である特開2011-239800号公報(以下「刊行物」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている(下線部は当審で付した。以下同様。)。

・記載事項
ア 「【技術分野】
【0001】
本発明は、始動入賞領域への遊技球の入賞に基づき、識別図柄を変動表示させる変動表示ゲームを表示可能な表示装置を備え、変動表示ゲームの表示結果が特別結果となった場合に遊技者に有利な特別遊技状態を発生させる遊技機に関する。」

イ 「【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1には、表示ユニット自体については開示がなされているものの、遊技機の表示装置として当該表示ユニットをどのようにして使用するかについて具体的な開示がなされていない。
【0005】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたもので、従来にない斬新な演出表示を行うことで遊技の興趣を高めることができる遊技機を提供することを目的とする。」

ウ 「【0176】
次に、表示ユニット800について説明する。図18(b)は、表示ユニット800の分解斜視図である。
【0177】
表示ユニット800は、導光板821?823の側面821a?823aから照射した光を当該導光板821?823の平面部に形成されたパターン溝(異方性反射パターン)T1?T6(図22参照)で反射させることにより、当該パターン溝T1?T6で表される識別図柄(例えば文字や図形)を発光表示させる装置であり、表示ユニット支持部材741の台座741bの上に取り付けられている。発光表示された識別図柄は、導光板表示装置カバー部材742の開口部742aを介して遊技機10の前面側から視認可能となっている。
表示ユニット800は、図18(b)に示すように、導光板表示装置ベース部材810、導光板表示装置ベース部材810に互いに平行に支持される3枚の導光板821?823、導光板表示装置ベース部材810に取り付けられる側方カバー部材830、導光板表示装置ベース部材810に収納される照射装置840、導光板821?823の上方に設けられる照射装置850(図示省略)等から構成されている。なお、照射装置850については、後述する7セグメントの表示原理の説明で触れることとする。」

エ 「【0181】
次に、照射装置840の構成について説明する。図19(a)は、照射装置840の分解斜視図、図19(b)は、照射装置840の正面図、図19(c)は、(b)のA-A断面図である。
【0182】
照射装置840は、複数の導光板821?823の側方より、導光板821?823の側面821a?823aに出射光を均一に照射し、導光板821?823の各平面部に出射光をそれぞれ入光させて、パターン溝T1?T6での反射によって表示情報を遊技者に視認可能とするためのものである。また、照射装置840は、演出制御装置300の盤装飾LED制御回路332の制御により、全ての導光板を同時に照射することも、所定の導光板のみを選択的に照射することも可能に構成されている。
照射装置840は、図19(a)に示すように、レンズ部材841、レンズ部材841の背後に設けられるLED基板842、レンズ部材841及びLED基板842を収納する照射装置ベース部材843、照射装置ベース部材843の前面に取り付けられる照射装置カバー部材844等から構成されている。
【0183】
レンズ部材841は、LED基板842の各LED842a?842fから照射される光を拡散するためのものである。レンズ部材841は、図19(a)に示すように、3つのレンズ体8411?8413、各レンズ体8411?8413を互いに連結する連結部841a,841aからなる。各レンズ体8411?8413はそれぞれ平板状をなしており、その長手方向の一側面(導光板821?823の側面821a?823aと対向する面)には、半円状の円弧部8411a?8413aが複数並べて形成されている。各レンズ体8411?8413は、連結部841aによって互いに平行かつ等間隔に配列されている。各レンズ体8411?8413の間隔は、導光板821?823の間隔と等しくなっている。なお、各レンズ体8431?8433の円弧部8411a?8413aのうち両端のレンズの形状は、図21に示すように、例えば、各レンズ体8411?8413の両端が該レンズ体8411?8413の長手方向に対して垂直な面を有する扇状のものであっても良い。
【0184】
LED基板842は、その表面に6個のLED842a?842fが実装された矩形板状の部材である。各LED842a?842fは、複数の導光板821?823にそれぞれ対応するように縦方向に2列、横方向に3列で配置されている。具体的には、横方向に隣り合うLEDは、レンズ部材841の各レンズ体8411?8413の間隔と等しい間隔で配置され、縦方向に隣り合うLEDは、図19(c)に示すように、レンズ部材841の隣り合う円弧部と円弧部との間に配置されている。このため、図19(b)に示すように、各LED842a?842fがレンズ部材841の各レンズ体8411?8413の背後に位置する。具体的には、LED842a,842dがレンズ体8411の背後に、LED842b,842eがレンズ体8412の背後に、LED842c,842fがレンズ体8413の背後にそれぞれ位置する。LED基板842の裏面には、配線を接続するためのコネクタ842gが設けられている。LED基板842は、このコネクタ842gを介して演出制御装置300の盤装飾LED制御回路332に接続される。そして、盤装飾LED制御回路332の制御により、6つのLED全て、または所定のLEDのみを選択的に点灯させることが可能となっている。
なお、LED基板842は、各LED842a?842fを同一色のもののみで構成してもよいし、LED842a?842fのうち何れかを他と異なる色で発光するようにしてもよいし、3色LEDを用いることにより任意の色で発光可能な構成としてもよい。
【0185】
照射装置ベース部材843は、LED基板842及びレンズ部材841を収納するための部材で、前面開口の箱形状に形成されている。照射装置ベース部材843の背面中央部には、LED基板842のコネクタ842gを裏面側に露出させるためのコネクタ穴843dが内側に貫通するように形成されている。照射装置ベース部材843前面の矩形状の開口の上部及び下部には、レンズ部材841の各レンズ体8411?8413の上端部及び下端部を嵌め込むための嵌込み溝843a?843cがそれぞれ形成されている。照射装置ベース部材843の収納部の奥行きと嵌込み溝843a?843cの深さは、図19(c)に示すように、レンズ部材841の裏面とLED842a?842cとが離間するように調節されている。このため、LED842a?842fが発する熱によってレンズ部材841が変形したり融けたりするのを防止できるようになっている。
【0186】
照射装置カバー部材844は、LED基板842及びレンズ部材841を照射装置ベース部材843とで挟持するための矩形板状の部材である。照射装置カバー部材844の少面には、レンズ部材841の各レンズ体8411?8413を通し、円弧部を外側に露出させるためのスリット844a?844cが、互いに平行且つ等間隔に上下方向に沿って形成されている。照射装置カバー部材844の背面であって、スリット844aと844bとの間、スリット844bと844cとの間には、照射装置カバー部材844の背面に対し垂直に後方へ向かって延出する仕切板844d,844dがそれぞれ形成されている。仕切板844dは、図19(c)に示すように、各LED842a?842fの側方まで延び、隣り合うLED842a,842dとLED842b,842e、LED842b,842eとLED842c,842fを仕切るように形成されている。このため、各LED842a?842fが発した光を横方向にもらさず、対応するレンズ体にのみ入射させることができるようになっている。
【0187】
次に、各導光板821?823、レンズ部材841及びLED基板842の位置関係について説明する。図20は、表示ユニット800のうち、導光板821?823、レンズ部材841及びLED基板842のみを示した斜視図である。
図20に示すように、最も前側の第1導光板821、レンズ体8411及びLED842a,842fと同一面上に並ぶように配置され、LED842a、842dがレンズ体8411の背面と対向し、レンズ体8411の前面が第1導光板821の側面821aと対向している。同様に、第2導光板822、レンズ体8412及びLED842b,842eも同一面上に並ぶように配置され、LED842b、842eがレンズ体8412の背面と対向し、レンズ体8412の前面が第2導光板822の側面822aと対向している。同様に、最も後側の第3導光板823、レンズ体8413及びLED842c,842fも同一面上に配置され、LED842c、842fがレンズ体8413の背面と対向し、レンズ体8413の前面が第3導光板821の側面823aと対向している。
LED842a,842dが点灯すると、その光はレンズ体8411で拡散され、導光板821に入射する。同様に、LED842b,842eが点灯すると、その光はレンズ体8412で拡散され、導光板822に入射し、LED842c,842fが点灯すると、その光はレンズ体8413で拡散され、導光板823に入射する。
【0188】
次に、導光板表示装置740における発光表示の原理について説明する。図21(a)は、照射装置840の縦断面を側方から示した図であり、図21(b)は、第1導光板821の横断面を上方から示した図である。
【0189】
LED基板842の各LED842a?842cから光が照射されると、図21(a)に示すように、各LED842a?842cに対応するレンズ体の裏面に光が入射される。各レンズ体8411?8413に入射された光はレンズ体8411?8413中を直進し、円弧部8411a?8413aの曲面で屈折する。これにより、LED842a?842cの光が均一に拡散され、導光板821?823の側面821a?823aが均等に照射される。」

上記ア?エの記載事項、及び、図面の図示内容を総合勘案すると、刊行物には、次の発明(以下「刊行物発明」という。)が記載されていると認められる(a?cは、本件補正発明の構成A?Cに対応させて付与した。)。
「a 第1導光板821や、LED842a、dを設けたLED基板842、レンズ体8411を含み、第1導光板821の側面821aに出射光を均一に照射する照射装置840等から構成されている表示ユニット800を備える遊技機であって(【0177】、【0182】、【0187】、【0001】)、
第1導光板821、レンズ体8411、及び、LED842a、dは、同一面上に並ぶように、LED842a、dがレンズ体8411の背面と対向し、第1導光板821の側面821aがレンズ体8411の前面と対向して配置され(【0187】)、
LED842a、dが点灯すると、その光はレンズ体8411で拡散され、第1導光板821に入射され(【0187】)、

b レンズ体8411には、その長手方向の一側面(導光板821の側面821aと対向する面)に、LED842a、dから入射された光をその曲面で屈折し、均一に拡散する、半円状の円弧部8411aを複数並べて形成され(【0183】、【0189】)、

c 照射装置ベース部材843前面の矩形状の開口の上部及び下部には、レンズ部材841のレンズ体8411?8413の上端部及び下端部を嵌め込むための嵌込み溝843a?cが形成され、照射装置ベース部材843の収納部の奥行きと嵌込み溝843a?cの深さは、レンズ体8411の裏面とLED842a?fとが離間するように調節され、
LED基板842及びレンズ部材841を照射装置ベース部材843と照射装置カバー部材844とで挟持することにより、
縦方向に隣り合うLED842a、dが、レンズ体8411?8413の隣り合う半円状の円弧部8411aと半円状の円弧部8411aとの間に配置され(【0183】?【0186】)た遊技機。」

(3)対比
本件補正発明と刊行物発明とを対比する(対比にあたっては、本件補正発明の構成A?Cと刊行物発明の構成a?cについて、それぞれ(a)?(c)の見出しを付して行った。)。
(a)刊行物発明における「第1導光板821」、「レンズ体8411」は、それぞれ、本件補正発明における「導光板」、「光拡散部材」に相当する。
そして、刊行物発明における「第1導光板821の側面821aに出射光を均一に照射する照射装置840」の「LED842a、d」は、本件補正発明における「導光板に」「光を照射する光源」に相当する。
また、刊行物発明は、「第1導光板821、レンズ体8411、及び、LED842a、d」の配置からみて、「レンズ体8411の背面と対向」する「LED842a、d」からの光を、「レンズ体8411」を介在させて、「側面821a」が「レンズ体8411の前面」と対向する「第1導光板821」に「照射する」ものである。
したがって、刊行物発明における「点灯すると、その光はレンズ体8411で拡散され、導光板821に入射」される「LED842a,842d」は、本件補正発明における「導光板に光拡散部材を介して光を照射する光源」に相当する。
ゆえに、刊行物発明における構成aは、本件補正発明における構成Aに相当する。

(b)刊行物発明は、構成aより、「レンズ体8411」の「第1導光板821の側面821a」が対向している面と、反対側の面において「LED842a,842d」と対向しているものと認められる。
そうすると、刊行物発明における「レンズ体8411」の「長手方向の一側面(導光板821の側面821aと対向する面)」は、「LED842a,d」が対向している面とは、反対側の面であるから、本件補正発明における「光拡散部材」の「光源の照射方向とは反対側の端部」に相当する。
そして、刊行物発明における「LED842a?842cから入射された光をその曲面で屈折し、均一に拡散する」ことは、本件補正発明における「光源から照射される光を拡散させる」ことに相当する。
したがって、刊行物発明における構成bの「半円状の円弧部8411a」は、本件補正発明における構成Bの「光拡散部」に相当する。

(c)刊行物発明における「半円状の円弧部8411a」は、本件補正発明における「円弧状に形成され」た「光拡散部」に相当する。

そして、刊行物発明における「レンズ体8411?8413の隣り合う半円状の円弧部8411aと半円状の円弧部8411aとの間に配置され」ることと、本件補正発明における「光源と光拡散部の頂部とが対応するように配置可能な」こととは、「光源と光拡散部の頂部とが所定の位置関係となるように配置可能な」ことで共通する。
また、刊行物発明における「収納部の奥行きと嵌込み溝843a?cの深さ」は、「レンズ体8411の裏面とLED842a、dとが離間するように調節」するものであることに加え、「縦方向に隣り合うLED842a、dが、レンズ体8411?8413の隣り合う半円状の円弧部8411aと半円状の円弧部8411aとの間に配置され」るように位置決めする機能も奏するものであるから、本件補正発明における「位置決め部」に相当する。
したがって、刊行物発明における構成cと、本件補正発明における構成Cとは、「光拡散部は、円弧状に形成され、」「光源と前記光拡散部の頂部とが」所定の位置関係となるように「配置可能な位置決め部を有している」ことで共通する。

よって、両者の一致点および相違点は、次のとおりである。
[一致点]
「A 導光板と、前記導光板に光拡散部材を介して光を照射する光源と、を備える遊技機であって、
B 前記光拡散部材には、前記光源の照射方向とは反対側の端部に、前記光源から照射される光を拡散させる光拡散部が設けられ、
C’前記光拡散部は、
円弧状に形成され、前記光源と前記光拡散部の頂部とが所定の位置関係となるように配置可能な位置決め部を有している遊技機。」

[相違点1](構成C)
円弧状に形成された光拡散部に関して、
本件補正発明は、光源の照射方向とは反対側の端面にローレット溝が形成されるのに対して、
刊行物発明は、そのような構成を備えているか明らかでない点。

[相違点2](構成C)
光拡散部の位置決め部に関して、
本件補正発明は、光源と前記光拡散部の頂部とが対応するように配置可能であるのに対して、
刊行物発明は、そのような構成を備えていない点。

(4)判断
ア 相違点1(構成C)について
上記相違点1について検討する。
遊技機の技術分野において、光の拡散効率を向上させるために、光拡散部における、光源の照射方向とは反対側の端面にローレット溝を形成することは、本願の出願前に周知の技術事項である(例えば、特開2010-188061号公報の【0036】、【図3】には、光を効率よく拡散するために、隆起部22の表面にローレットなどの凹凸表面加工が施されていることが記載され、特開2010-200878号公報の【0049】、【0050】、【図5】には、レンズ36の前面に3角波ローレット形状の光拡散部36aが形成されていることが記載されている。以下「周知の技術事項1」という。)。
そして、刊行物発明の「レンズ体8411」に形成された「半円状の円弧部8411a」も、「光を」「均一に拡散する」という作用を奏するものである。
したがって、刊行物発明の「レンズ体8411」に形成された「半円状の円弧部8411a」も、上記周知の技術事項1も、光を効率よく拡散するという共通の作用を奏するものである。
ゆえに、刊行物発明の「レンズ体8411」に形成された「半円状の円弧部8411a」に上記周知の技術事項1を適用して、「半円状の円弧部8411a」の表面にローレット溝を形成し、上記相違点1に係る本件補正発明の構成とすることは、当業者が容易になし得たものである。

イ 相違点2(構成C)について
上記相違点2について検討する。
遊技機の技術分野において、導光板を備えた表示装置において、光源の中心と光拡散部の頂部の幅方向の中央位置とを1対1に対応するように配置することは、本願出願前に周知の技術事項である(例えば、特開2014-23647号公報の【0092】、【図10】や、特開2014-195577号公報の【0074】、【図10】には、各表示用LEDの中心と、集光レンズ507の各凸部518の左右方向の中央位置とを対応して配置させたことが記載されている。以下「周知の技術事項2」という。)。
したがって、刊行物発明において、LED基板842、レンズ体8411等から構成される照射装置840に上記周知の技術事項2を適用して、縦方向に隣り合うLED842a、dの中心と、レンズ体8411の隣り合う半円状の円弧部8411aの頂部の幅方向の中央位置とを1対1に対応するように配置し、上記相違点2に係る本件補正発明の構成とすることは、当業者が必要に応じてなし得たものである。

ウ 請求人の主張について
請求人は、平成29年12月6日付け審判請求書の「(4)本願発明と引用発明との対比」において、次のとおり主張をする。
「D.
上記引用文献1?3の記載に基づいても、本願発明の請求項1記載の発明の特徴である、「前記光拡散部は、円弧状に形成され、前記光源の照射方向とは反対側の端面にローレット溝が形成され、前記光源と前記光拡散部の頂部とが対応するように配置可能な位置決め部を有している」ことについては、当業者といえども容易に想到しうるものではない。
E.
そして、本願発明では、光拡散部に形成されたローレット溝によって、光源から照射される光を、拡散させて照射される光のムラを低減させて、導光板に表わされる絵柄、文字等に、すじ模様が浮かび上がる現象を抑制することができる。
さらに付言すると、光源と光拡散部の頂部とが対応するように配置可能な位置決め部により、導光板に表わされる絵柄、文字等に、すじ模様が浮かび上がる現象を抑制できる位置に、容易に位置決めすることができ、製造工数、製造コストを低減させることができる。」

そこで、請求人の上記主張について、検討する。
本件補正発明における構成Cの「光拡散部は、円弧状に形成され」る構成については、上記「(3)対比(c)」において検討したように、刊行物発明が備える構成である。
そして、本件補正発明における構成Cの「光拡散部」について、「光源の照射方向とは反対側の端面にローレット溝が形成され」る構成については、上記「(4)判断ア 相違点1(構成C)について」において検討したように、光の拡散効率を向上させるために、光拡散部における、光源の照射方向とは反対側の端面にローレット溝を形成することは、本願の出願前に周知の技術事項であって、刊行物発明の「レンズ体8411」に形成された「半円状の円弧部8411a」に上記周知の技術事項1を適用することにより当業者が容易になし得たものである。
また、本件補正発明における構成Cの「光拡散部は」、「光源と光拡散部の頂部とが対応するように配置可能な位置決め部を有している」ことは、上記「(4)判断イ 相違点2(構成C)について」において検討したように、導光板を備えた表示装置において、光源の中心と光拡散部の頂部の幅方向の中央位置とを1対1に対応するように配置することは、本願の出願前に周知の技術事項であって、刊行物発明に上記周知の技術事項2を適用することにより当業者が容易になし得たものである。
よって、請求人の上記主張を採用することはできない。

エ 小括
本件補正発明により奏される効果は、刊行物発明、及び、上記周知の技術事項1?2から当業者が予測できる効果の範囲内のものであり、格別なものではない。
そうすると、上記ア?ウにおいて検討したとおり、本件補正発明は、刊行物発明、及び、上記周知の技術事項1?2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際に独立して特許を受けることができないものである。

(5)まとめ
上記(1)?(4)より、本件補正発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際に独立して特許を受けることができないものであるから、本件補正は、同法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項に規定する要件を満たさないものであり、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は、上記のとおり却下されることとなったので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成29年8月30日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に係る発明は、次のとおりのものと認める(記号A?Cは、分説するため当審にて付した。)。
「A 導光板と、前記導光板に光拡散部材を介して光を照射する光源と、を備える遊技機であって、
B 前記光拡散部材には、前記光源の照射方向とは反対側の端部に、前記光源から照射される光を拡散させる光拡散部が設けられ、
C1 前記光拡散部には、溝が形成されていることを特徴とする遊技機。」

2 拒絶の理由(平成29年7月20日付け)
原査定の拒絶の理由の概要は、
「1.(新規性)この出願の下記の請求項1?2に係る発明は、その出願前に日本国内において、頒布された下記の刊行物1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。

2.(進歩性)この出願の下記の請求項1?2に係る発明は、その出願前に日本国内において、頒布された下記の刊行物1に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。」というものである。

<引用文献等一覧>
1.特開2011-239800号公報

3 刊行物に記載された事項
原査定の拒絶理由において提示された、引用文献1である特開2011-239800号公報(前記「刊行物」に対応する。)には、前記「第2 3(2)刊行物に記載された事項」に示した刊行物発明が記載されている。

4 対比
本願発明と刊行物発明とを対比すると、刊行物発明における構成a、bに、本願発明における構成A、Bが、それぞれ、相当することは、前記「第2 3(3)対比」にて示したとおりであるから、両者は、次の相違点3において相違し、その余の点において一致する。

[相違点3](構成C1)
本願発明は、光拡散部には、溝が形成されているのに対して、刊行物発明は、そのような構成を備えているか明らかでない点。

5 判断
上記相違点3について検討する。
遊技機の技術分野において、光の拡散効率を向上させるために、光拡散部に溝を形成することは、本願の出願前に周知の技術事項である(例えば、原査定の拒絶理由において提示された特開2013-169251号公報の【0022】,【図11】には、演出ボタン光拡散体64の上面に複数の溝を形成し、光を拡散させることが記載され、同じく、原査定時に提示された特開2014-18371号公報の【0124】、【図22】、【図23】には、「大波拡散部材323における大波発光基板324側の面には、多数の溝531により起伏が設けられ、この多数の溝531により、渦LED521から大波発光基板324の板面内に入り込んだ光が反射し、大波部材201の前面側に光が照射される。」ことが記載され、上記特開2010-188061号公報の【0036】、【図3】には、光を効率よく拡散するために、隆起部22の表面にローレットなどの凹凸表面加工が施されていることが記載され、上記特開2010-200878号公報の【0049】、【0050】、【図5】には、レンズ36の前面に3角波ローレット形状の光拡散部36aが形成されていることが記載されている。以下「周知の技術事項3」という。)。
そして、刊行物発明に記載された「レンズ体8411」に形成された「半円状の円弧部8411a」も、「光を」「均一に拡散する」という作用を奏するものである。
したがって、刊行物発明の「レンズ体8411」に形成された「半円状の円弧部8411a」も、上記周知の技術事項3も、光を効率よく拡散するという共通の作用を奏するものである。
ゆえに、刊行物発明の「レンズ体8411」に形成された「半円状の円弧部8411a」に上記周知の技術事項3を適用して、「半円状の円弧部8411a」の表面に溝を形成し、上記相違点3に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易になし得たものである。
そして、本願発明により奏される効果は、刊行物発明、及び、上記周知の技術事項3から当業者が予測できる効果の範囲内のものであり、格別なものではない。
よって、本願発明は、刊行物発明、及び、上記周知の技術事項3に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

6 むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2018-08-16 
結審通知日 2018-08-21 
審決日 2018-09-03 
出願番号 特願2016-167339(P2016-167339)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A63F)
P 1 8・ 575- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 上田 正樹  
特許庁審判長 石井 哲
特許庁審判官 荒井 誠
長崎 洋一
発明の名称 遊技機  
代理人 飯田 昭夫  
代理人 安藤 敏之  
代理人 江間 路子  
代理人 上田 千織  

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