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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G02F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G02F
管理番号 1345406
審判番号 不服2016-11656  
総通号数 228 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-12-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-08-03 
確定日 2018-10-24 
事件の表示 特願2014-239662「車両のダッシュボード用液晶表示素子」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 6月18日出願公開、特開2015-111263〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成26年11月27日(パリ条約による優先権主張2013年11月29日、大韓民国)の出願であって、その後の手続の概要は、以下のとおりである。
平成27年 9月 1日付け:拒絶理由通知(同年同月8日発送)
平成28年 2月 8日 :意見書・手続補正書の提出
同年 4月 5日付け:拒絶査定(同年同月12日送達)
同年 8月 3日 :審判請求
同年10月13日付け:拒絶理由通知(同年同月17日発送。以下、「当審拒絶理由」とする。)
平成30年 4月17日 :意見書・手続補正書の提出

第2 本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明1」という。)は、平成30年4月17日付け手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。

「赤色(R)カラーフィルタ層、緑色(G)カラーフィルタ層及び青色(B)カラーフィルタ層を備えて赤色、緑色及び青色を実現する液晶パネルと、
青色光を発光する青色LEDと、2:1で混合された緑色蛍光物質及び赤色蛍光物質からなる蛍光層とからなり、前記液晶パネルに白色光を供給するW-LEDを含むバックライトとから構成され、
前記赤色カラーフィルタ層は、下記化学式(1)のアントラキノン顔料を40?45重量%分散させた感光性カラー樹脂からなり、
前記W-LEDは、440?460nmの波長帯と、520?540nmの波長帯と、610?630nmの波長帯とにピークを形成し、前記W-LEDは、25?30lmの輝度を有することを特徴とする液晶表示素子。
【化1】



第3 当審拒絶理由の概要
当審拒絶理由の概要は、次のとおりである。

本件出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用例1:特開2011-59673号公報
引用例2:特開2013-199516号公報
引用例3:特開2009-58650号公報
引用例4:特開2007-277277号公報

第4 刊行物の記載事項
1 引用例1について
本願の優先権主張の日前に頒布された刊行物である引用例1(特開2011-59673号公報)には、図面とともに、次の記載がある(なお、下線は当審で付加した。以下同様。)。

(1) 「【請求項1】
染料を含むカラーフィルタと白色発光ダイオード光源とを含み、
白色発光ダイオード光源から出射される光が、波長430nm?485nmの範囲内に発光強度が最大となる波長λ_(1)を有し、波長500nm?580nmの範囲内に発光強度が極大となる波長λ_(2)を有し、波長590nm?680nmの範囲内に発光強度が極大となる波長λ_(3)を有する光である表示装置。
(略)
【請求項4】
カラーフィルタが、染料及び顔料を含むカラーフィルタである請求項1?3のいずれか記載の表示装置。
(略)
【請求項10】
顔料が、C.I.ピグメントブルー15:6、C.I.ピグメントグリーン36、C.I.ピグメントグリーン58、C.I.ピグメントイエロー138、C.I.ピグメントイエロー139、C.I.ピグメントイエロー150、C.I.ピグメントレッド177、C.I.ピグメントレッド242及びC.I.ピグメントレッド254からなる群から選ばれる少なくとも1種を含む顔料である請求項4、8又は9記載の表示装置。」(【特許請求の範囲】)

(2) 「【0278】
感光性樹脂組成物を用いてカラーフィルタを作製する場合、その感光性樹脂組成物は、例えば、青色感光性樹脂組成物、緑色感光性樹脂組成物及び赤色感光性樹脂組成物としてそれぞれ調整される。
青色感光性樹脂組成物に用いられる顔料としては、C.I.ピグメントレッドバイオレット23、C.I.ピグメントブルー15:3、15:6から選ばれる少なくとも1つの顔料を含有している顔料が好ましく、C.I.ピグメントブルー15:6を含有している顔料がより好ましい。緑色感光性樹脂組成物に用いられる顔料としては、C.I.ピグメントグリーン36、58、C.I.ピグメントイエロー138、150から選ばれる少なくとも1種を含有している顔料が好ましい。赤色感光性樹脂組成物に用いられる顔料としては、C.I.ピグメントイエロー138、139、150、C.I.ピグメントレッド177、242、254から選ばれる少なくとも1種を含有している顔料が好ましい。これらの顔料は、単独でも、2種以上を混合して用いてもよい。」

(3) 「【0288】
フォトリソグラフィー法により各色画素を形成する場合は、上述した赤色、緑色及び青色の感光性樹脂組成物を用いて、各感光性樹脂組成物を任意の順番で基板に現像してパターンを形成することにより、カラーフィルタとすることができる。すなわち、本発明の表示装置に含まれるカラーフィルタは、上述の各感光性樹脂組成物を所定の形状に製膜することにより形成されるものである。
図1は、本発明の表示装置が含むカラーフィルタ1を示す概略図である。カラーフィルタ1は、基板3と、基板3上に形成された複数の開口を有した格子状のブラックマトリクスBMと、ブラックマトリクスBMの各開口を覆うように順番に形成された透明赤色の感光性樹脂組成物膜R、透明緑色の感光性樹脂組成物膜G及び透明青色の感光性樹脂組成物膜Bとを有している。透明赤色の感光性樹脂組成物膜Rは、赤色感光性樹脂組成物を所望の形状に製膜したものであり、透明緑色の感光性樹脂組成物膜Gは、緑色感光性樹脂組成物を所定の形状に製膜したものであり、透明青色の感光性樹脂組成物膜Bは、青色感光性樹脂組成物を所定の形状に製膜したものである。」

(4) 「【0294】
白色LEDは、波長430nm?485nmの範囲内に発光強度が最大となる波長λ_(1)を有し、波長500nm?580nmの範囲内に発光強度が極大となる波長λ_(2)を有し、波長590nm?680nmの範囲内に発光強度が極大となる波長λ_(3)を有する。
白色LEDとしては、青色LEDと蛍光体とを含む光源であることが好ましく、例えば、青色LEDの表面に蛍光フィルタを形成したものや、青色LEDの樹脂パッケージに蛍光体を含有させたものが挙げられる。青色LEDは、例えばInGaN系又はGaN系などの青色光(波長は、例えば470nm)を発光するLEDである。
【0295】
白色LEDとしては、青色LEDと赤色発光蛍光体及び緑色発光蛍光体とを含む光源であることがより好ましい。赤色発光蛍光体及び緑色発光蛍光体は、上記と同様に、蛍光フィルタや樹脂パッケージに含有させて用いられる。
緑色発光蛍光体を含有する蛍光フィルタまたは、緑色発光蛍光体を含有する樹脂パッケージは、青色LEDからの青色発光の一部を吸収し500nm?580nmの間に極大発光をもつ緑色光を発光し、赤色発光蛍光体を含有する蛍光フィルタまたは、赤色発光蛍光体を含有する樹脂パッケージは同様に、590nm?680nmの間に極大発光をもつ赤色光を発光する。この方式の白色LEDでは、青色LEDが放射する青色光の一部が蛍光体層を透過し、残りは蛍光体に吸収され緑色・赤色の光に変換される。青色光を緑色光に変換する緑色発光蛍光体としては、CaGa2S4:Euの結晶等、青色光を赤色光に変換する赤色発光蛍光体としては、CaS:Euの結晶等がある。観察者は、青色発光と緑色発光・赤色発光の3色の光が混ざり合った光を、白色光として認識する。このような白色LEDは、星和電機社製SDPW50B0B、SDPW50H0B、SDPW3DG0Bなどで入手可能である。」

(5) 「【0302】
カラーフィルタは、シール剤を用いて対向基板と貼り合わせ、シール部に設けられた注入口から液晶を注入したのち注入口を封止し、必要に応じて偏光膜や位相差膜を基板の外側に貼合することにより、液晶表示パネルが製造される。偏光膜や位相差膜の貼合は、カラーフィルタと対向基板とを貼り合わせる前に行ってもよい。
かかる液晶表示パネルは、ツイステッド・ネマティック(TN)、スーパー・ツイステッド・ネマティック(STN)、イン・プレーン・スイッチング(IPS)、ヴァーティカリー・アライメント(VA)、オプティカリー・コンベンセンド・ベンド(OCB)などのカラーフィルタを使用してカラー化を行う液晶表示モードに使用することができる。
【0303】
図2は、本発明の表示装置10を示す概略図である。表示装置10は、ノート型パソコン用のTFT駆動型液晶表示装置の典型例である。離間対向して配置された一対の第1の透明基板11及び第2の透明基板21を備え、それらの間には、液晶組成物(例えば、TNもしくはSTN液晶組成物)LCが封入されている。第1の透明基板11の内面には、TFTアレイ12が形成されており、その上には例えばITOからなる透明電極層13が形成されている。透明電極層13の上には、配向層14が設けられている。また、第1の透明基板11の外面には、偏光板15が形成されている。
【0304】
他方、第2の透明基板21の内面には、カラーフィルタ22が形成されている。カラーフィルタを構成する各色画素(図示せず)は、ブラックマトリックス(図示せず)により分離されている。カラーフィルタ22を覆って例えばITOからなる透明電極層23が形成され、透明電極層23を覆って配向層24が設けられている。また、第2の透明基板21の外面には、偏光板25が形成されている。
光源31を備えたバックライトユニット30が、第1の透明基板11の外側で偏光板15と密接して設けられている。
【0305】
図3は、バックライトユニット30を示す斜視図である。バックライトユニット30は、光源31、導光板33及び導光板33の上面に設けられた拡散板34を備える。光源31は、導光板33の一側面33aに面して設けられ、その全長にわたって、導光板33の側面33aに対応する部分を除きリフレクタ32により囲まれている。また、導光板33は、側面33aを除く他の3つの側面及び底面が反射板35により覆われている。光源31からの光は、リフレクタ32により導光板33に導かれ、拡散板34を経て面状光となって偏光板15から液晶層LCへと入射する。反射板35は、導光板33へ入射した光を効率よく拡散板34に指向させる。」

(6) 上記(4)の「白色LEDとしては、青色LEDと蛍光体とを含む光源であることが好ましく、例えば、青色LEDの表面に蛍光フィルタを形成したものや、青色LEDの樹脂パッケージに蛍光体を含有させたものが挙げられる。」、「白色LEDとしては、青色LEDと赤色発光蛍光体及び緑色発光蛍光体とを含む光源であることがより好ましい。」、及び、
上記(5)の「光源31を備えたバックライトユニット30」からみて、
バックライト30は、青色LEDと、前記青色LEDの表面に赤色発光蛍光体及び緑色発光蛍光体からなる蛍光フィルタを形成した白色LEDを備えていることが読み取れる。

(7) したがって、上記引用例1には次の発明(以下、「引用例1発明」という。)が記載されていると認められる。

「透明赤色の感光性樹脂組成物膜R、透明緑色の感光性樹脂組成物膜G及び透明青色の感光性樹脂組成物膜Bとを有しているカラーフィルタ1と、
前記カラーフィルタ1を備えた液晶表示パネルと、
青色LEDと、前記青色LEDの表面に赤色発光蛍光体及び緑色発光蛍光体からなる蛍光フィルタを形成した白色LEDを備えたバックライト30と、
前記赤色感光性樹脂組成物膜を構成する赤色感光性樹脂組成物は、C.I.ピグメントイエロー138、139、150、C.I.ピグメントレッド177、242、254から選ばれる少なくとも1種を含有している顔料及び染料を含んでおり、
前記白色LEDは、波長430nm?485nmの範囲内に発光強度が最大となる波長λ_(1)を有し、波長500nm?580nmの範囲内に発光強度が極大となる波長λ_(2)を有し、波長590nm?680nmの範囲内に発光強度が極大となる波長λ_(3)を有する、
TFT駆動型液晶表示装置。」

2 引用例2について
本願の優先権主張の日前に頒布された刊行物である引用例2(特開2013-199516号公報)には、図面とともに、次の記載がある。

(1) 「【請求項1】
下記式(1)で表されるC. I.ピグメントレッド177と、下記式(2)および/または下記式(3)で表される化合物との混合物を、水溶性無機塩類または水溶性無機塩類および溶剤の存在下、機械的に混練し、比表面積が60?100m^(2)/gである顔料組成物の製造方法。
【化1】

(式中、R_(1)?R_(18)は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、アルキル基、アルコキシル基、ニトロ基、アミノ基、シアノ基、下記式(4)または下記式(5)で表される塩基性基を表わす。ただし、R_(1)?R_(18)の少なくとも一つは、式(4)もしくは下記式(5)で表される塩基性基である。)・・・」

(2) 「【0002】
液晶表示装置は、2枚の偏光板に挟まれた液晶層が、1枚目の偏光板を通過した光の偏光度合いを制御して、2枚目の偏光板を通過する光量をコントロールすることにより表示を行う表示装置であり、ツイストネマチック(TN)型液晶を用いるタイプが主流となっている。この2枚の偏光板の間にカラーフィルタを設けることによりカラー表示が可能となり、近年、テレビやパソコンモニタ等に用いられるようになったことから、カラーフィルタに対して高明度化、高コントラスト化、高色再現性の要求が高まっている。
【0003】
カラーフィルタは、ガラス等の透明な基板の表面に2種以上の異なる色相の微細な帯(ストライプ)状のフィルタセグメントを平行又は交差して配置したもの、あるいは微細なフィルタセグメントを縦横一定の配列で配置したものからなっている。一般的に赤、緑、および青の3色のフィルタセグメントから形成されることが多く、これら各セグメントは、数ミクロン?数100ミクロンと微細であり、しかも色相毎に所定の配列で整然と配置されている。
【0004】
一般的に、カラー液晶表示装置では、カラーフィルタの上に液晶を駆動させるための透明電極が蒸着あるいはスパッタリングにより形成され、さらにその上に液晶を一定方向に配向させるための配向膜が形成されている。これらの透明電極および配向膜の性能を充分に得るには、カラーフィルタを形成する製造工程において、一般に200℃以上、好ましくは230℃以上の高温処理が必要である。このため、現在、カラーフィルタの製造方法では、耐光性、耐熱性に優れる顔料を着色剤とする顔料分散法と呼ばれる方法が主流となっている。
【0005】
顔料分散法において、赤色フィルタセグメントには、着色剤としてジケトピロロピロール系顔料、アントラキノン系顔料、ペリレン系顔料またはジスアゾ系顔料等の耐光性および耐熱性に優れる顔料を単独または組み合わせて用いることが一般的である。
【0006】
これらのうち、特にジアントラキノン顔料は、塗膜にした際のコントラストが高く、耐光性や耐熱性にも優れているため、カラーフィルタ用途に多く使用されている。しかし近年、高いコントラスト比と明度の両立が求められており、従来使用されてきたジアントラキノン顔料では目的を達成するのが困難となっている。」

(3) 「【0015】
本発明が解決しようとする課題は、高明度かつ高コントラスト比なカラーフィルタを提供するための顔料組成物とその製造方法を提供することである。特に、従来の技術では困難であった、カラーフィルタ用途に適した比表面積を有するジアントラキノン顔料の一種であるC.I.ピグメントレッド177を主成分とする顔料組成物とその製造方法を提供することにある。」

3 引用例3について
本願の優先権主張の日前に頒布された刊行物である引用例3(特開2009-58650号公報)には、図面とともに、次の記載がある。

(1) 「【0009】
本発明は、上記問題点を解決するものであり、優れた赤色再現性を有する液晶表示装置及びそれに用いるカラーフィルタを提供することを目的とする。」

(2) 「【0018】
本発明の第1及び第2の態様に係る液晶表示装置において、前記赤色画素の形成に用いる赤色感光性着色組成物中の有機顔料は、少なくともClピグメントナンバーPR177及びClピグメントナンバーPR254を含み、前記赤色感光性着色組成物の固形分中の全有機顔料の25%以上80%未満をClピグメントナンバーPR177とすることができる。
【0019】
本発明の第3の態様は、透明基板上に赤色画素を含む複数色の着色画素を備え、以上の液晶表示装置に用いることを特徴とするカラーフィルタを提供する。
【発明の効果】
【0020】
本発明によると、青色LEDと赤色発光蛍光体及び緑色発光蛍光体とを組み合わせて混色させた白色LED装置をバックライトに具備し、前記バックライトにマッチングした赤色再現性に優れる色材を用いた赤色画素を備えるカラーフィルタを具備することで、赤色再現性に優れた液晶表示装置を得ることができる。また、水銀フリーの白色LED装置をバックライトとして用いることができるため、特に車載用途として液晶表示装置を用いた場合、廃自動車の廃棄物の利用やリサイクル,再生を促進することが可能となる。」

(3) 「【0085】
カラーフィルタの画素を形成する着色組成物に用いることのできる有機顔料の具体例を、以下にカラーインデックス番号で示す。 赤色顔料としては、C.I. Pigment Red 254、PR177以外に、C.I. Pigment Red 7、9、14、41、48:1、48:2、48:3、48:4、81:1、81:2、81:3、9
7、122、123、146、149、168、177、178、179、180、184、185、187、192、200、202、208、210、215、216、217、220、223、224、226、227、228、240、246、255、264、272、279等が挙げられる。」

(4) 「【0128】
白色LED装置バックライト作製例1?3で得たバックライト(1)?(3)および擬似白色LED装置であるバックライト(4)について、最大発光強度を1とした場合の相対発光強度スペクトルを図7に示す。
【0129】
上記バックライト4種に組み合わせるカラーフィルタの赤色画素作製用赤色感光性着色組成物として、PR254、PR177及びPY150を用い、下記表1に示すような顔料比率の赤色感光性着色組成物1?5を得た。
【表1】

【0130】
上記表1に示すような赤色感光性着色組成物1および2を用い、バックライト(1)と組み合わせた際に、x=0.680になるよう膜厚を調整して赤色画素1、2を形成し、バックライト(1)と赤色画素1、2との組合せを実施例1、2とした。
【0131】
赤色感光性着色組成物1を用い、バックライト(2)と組み合わせた際にx=0.680になるよう膜厚を調整して赤色画素3を形成し、バックライト(2)と赤色画素3との組合せを実施例3とした。
【0132】
赤色感光性着色組成物3を用い、バックライト(1)と組み合わせた際にx=0.680になるよう膜厚を調整して赤色画素4を形成し、バックライト(1)と赤色画素4との組合せを実施例4とした。
【0133】
赤色感光性着色組成物1および2を用い、バックライト(1)と組み合わせた際にx=0.620になるよう膜厚を調整して赤色画素5、6を形成し、バックライト(1)と赤色画素5、6との組合せを実施例5、6とした。
【0134】
赤色感光性着色組成物1を用い、バックライト(2)と組み合わせた際にx=0.620になるよう膜厚を調整して赤色画素7を形成し、バックライト(2)と赤色画素7との組合せを実施例7とした。
【0135】
赤色感光性着色組成物3を用い、バックライト(1)と組み合わせた際にx=0.680になるよう膜厚を調整して赤色画素8を形成し、バックライト(1)と赤色画素8との組合せを実施例8とした。
【0136】
以上の実施例1?8で用いた赤色画素1?8の分光透過率特性を図8に示す。
【0137】
また、赤色感光性着色組成物1を用い、バックライト(3)と組み合わせた際にx=0.680になるよう膜厚を調整して赤色画素9を形成し、バックライト(3)と赤色画素9との組合せを比較例1とした。
【0138】
赤色感光性着色組成物4を用いて、バックライト(1)、(2)、(3)と組み合わせた際にx=0.680になるよう膜厚を調整して赤色画素10、11、12を形成し、バックライト(1)、(2)、(3)と赤色画素10、11、12との組合せを比較例2、3、4とした。
【0139】
赤色感光性着色組成物5を用い、バックライト(4)と組み合わせた際にx=0.680になるよう膜厚を調整して赤色画素13を形成し、バックライト(4)と赤色画素13との組合せを比較例5とした。
【0140】
x=0.620になるよう膜厚を調整して赤色画素14?18を形成し、各バックライトと組合せたことを除いて、比較例1?5と同様の比較例6?10とした。
【0141】
比較例1?5で用いた赤色画素9?13の分光透過率を図8に、比較例6?10用いた赤色画素14?18の分光透過率を図9に示した。」

(5) 「【0163】
以上の結果により、特に、バックライトとして、第1の発光ピーク440?470nm、第2の発光ピーク510?550nm、第3の発光ピーク630?670nmの三波長の白色LED装置であって、第2のピーク波長?第3のピーク波長間の最低相対発光強度値が、第2のピーク波長及び第3のピーク波長のうち相対発光強度値の低い方に対して70%以下である深紅性の高いものを用い、且つこのバックライトに組み合わせるカラーフィルタとして、赤色画素形成に用いる赤色感光性着色組成物が、顔料として少なくともPR177及びPR254を含み、顔料としてPR177及びPR254から成り、その顔料比率が深紅性に優れる顔料であるPR177を25%以上含有したもの、更に好ましくは45%?80%で含有したものであった場合に、特に深紅の赤色表示の可能な液晶表示装置が得られ、フォトリソ特性が良好なカラーフィルタが得られることがわかった。」

4 引用例4について
本願の優先権主張の日前に頒布された刊行物である引用例4(特開2007-277277号公報)には、図面とともに、次の記載がある。

(1) 「【0002】
従来より、窒化ガリウム(GaN)系発光ダイオード(LED)等の半導体発光素子と、波長変換材料としての蛍光体とを組み合わせて構成される白色発光の発光装置が、消費電力が小さく長寿命であるということが知られている。そして、これらの発光装置は前記の特徴を活かして画像表示装置や照明装置の発光源として注目されている。中でも、In添加GaN系青色LEDと、Ce付活イットリウムアルミニウムガーネット系黄色蛍光体とを組み合わせた白色発光装置が代表的な発光装置として挙げられる。
【0003】
しかし、従来からこの発光装置では、赤色領域(600nm以上)の光量が少ないこと、及び青緑色領域(480nm?510nm)の光量が少なく演色性が低いことが指摘されている。また、この発光装置は、高い光量を得るために発光装置に流す電流を増加させると、発光装置で発せられる熱により蛍光体の温度が上昇することに伴って蛍光体の蛍光強度が低下する、所謂温度消光現象が顕著になる。このため、この発光装置を使用する場合、青色LEDからの青色光と蛍光体からの黄色光の混色バランスがずれて白色発光装置の発光色が顕著にずれることなどがあった。更に、発光装置の平均演色評価数Raが低く、また、発光装置を使用する際の発光色の変移が大きくなり安定な発光色が得にくいこともあり、より一層の改良が求められていた。
【0004】
発光装置の演色性が低いという問題を改良すべく、特許文献1では、(Y_(1-a-b)Gd_(a)Ce_(b))_(3)(Al_(1-c)Ga_(c))_(5)O_(12)系緑色蛍光体の発光色に加え、赤色成分を増大させるために(Ca_(1-a-b)Sr_(a)Eu_(b))S:Eu^(2+)系赤色蛍光体を使用すること、及び、これらの蛍光体を青色LEDで励起することにより白色合成光を発する白色発光装置が得られることを開示している。
また、非特許文献1には、緑色蛍光体としてSrGa_(2)S_(4):Eu^(2+)、赤色蛍光体としてZnCdS:Ag,Clを使用した白色発光装置が開示されており、特許文献2では、緑色蛍光体として(Sr,Ca,Ba)(Al,Ga)_(2)S_(4):Eu^(2+)、赤色蛍光体として(Ca,Sr)S:Eu^(2+)を使用した白色発光装置が開示されている。
【非特許文献1】J.Electrochem.Soc.Vol.150(2003)pp.H57-H60
【特許文献1】特開2003-243715号公報
【特許文献2】特表2002-531956号公報」

(2) 「【0025】
色ずれの少ない発光装置の中でも特に演色性の高い発光装置を得るためには、発光装置に用いる蛍光体混合物は、500nm?550nmの波長範囲に蛍光強度のピーク値を有する緑色系蛍光体の少なくとも一種を含有することが好ましい。この様な波長範囲に蛍光強度のピーク値を有する緑色系蛍光体を使用することにより、青緑色、緑色、黄緑色などの緑色域についての色再現性の高い発光装置を得ることが出来、更にはこの発光装置を用いることにより該緑色域での色再現性に優れたディスプレイ用バックライト、画像表示装置(ディスプレイ)や照明装置を得ることが可能となる。緑色蛍光体の蛍光強度のピーク値が500nmより短波長の場合や550nmより長波長の場合には、青色LEDと組み合わせて使用する際に緑色域の色再現性が低くなり好ましくない。」

(3) 「【0044】
本発明において、色ずれの少ない発光素子の中でも特に演色性の高い発光装置を得るためには、発光装置に用いる蛍光体混合物が、610nm?680nmの波長範囲に蛍光強度のピーク値を有する赤色系蛍光体を少なくとも一種含有することが好ましい。この様な 波長範囲に蛍光強度のピーク値を有する赤色系蛍光体を使用することにより、橙色、赤色、深赤色などの赤色域についての色再現性の高い発光装置を得ることができ、更にはこの発光装置を用いることにより該赤色域での色再現性に優れたディスプレイ用バックライト、画像表示装置(ディスプレイ)や照明装置を得ることが可能となる。蛍光強度のピーク値が610nmより短波長の場合には、青色LEDと組み合わせて使用する際に赤色域の色再現性が低くなり、680nmより長波長の場合には演色性は高くなるが、輝度が低くなる傾向にある。」

(4) 「【0060】
なお、緑色系蛍光体と赤色系蛍光体の発光効率のバランスや、赤色系蛍光体がどの程度緑色系蛍光体からの発光を吸収するかにもよるが、上記緑色系蛍光体と上記赤色系蛍光体を混合して用いる場合、緑色系蛍光体と赤色系蛍光体の合計重量に対して、緑色系蛍光体を重量百分率で、通常65%以上、好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上、特に好ましくは85%以上含有することが好ましい。緑色系蛍光体の重量百分率がこの範囲よりも小さい場合は、高輝度で演色性が高く好ましい白色を示す白色発光装置を得ることができず、赤みの強い白色発光装置となる虞がある。また、白色発光装置とするためには、緑色系蛍光体の重量百分率は、通常99%以下、好ましくは98%以下、より好ましくは97%以下である。」

第5 対比・判断
1 対比
本願発明1と引用例1発明とを対比する。

(1) 引用例1発明の「透明赤色の感光性樹脂組成物膜R、透明緑色の感光性樹脂組成物膜G及び透明青色の感光性樹脂組成物膜Bとを有しているカラーフィルタ1と、
前記カラーフィルタ1を備えた液晶表示パネルと」は、膜構造も層構造の一形態であるという例示するまでもない技術常識、及び、各感光性樹脂組成物膜はフィルタ機能を有することからみて、
本願発明1の「赤色(R)カラーフィルタ層、緑色(G)カラーフィルタ層及び青色(B)カラーフィルタ層を備えて赤色、緑色及び青色を実現する液晶パネル」に相当する。

(2) 本願発明1の「青色光を発光する青色LEDと、2:1で混合された緑色蛍光物質及び赤色蛍光物質からなる蛍光層とからなり、前記液晶パネルに白色光を供給するW-LEDを含むバックライト」と、
引用例1発明の「青色LEDと、前記青色LEDの表面に赤色発光蛍光体及び緑色発光蛍光体からなる蛍光フィルタを形成した白色LEDを備えたバックライト30」とを対比する。

引用例1発明の「青色LEDの表面に赤色発光蛍光体及び緑色発光蛍光体からなる蛍光フィルタ」において、表面にあるフィルタは、層構造を有しているものであるから、両者は、「青色光を発光する青色LEDと、緑色蛍光物質及び赤色蛍光物質からなる蛍光層とからなり、液晶パネルに白色光を供給するW-LEDを含むバックライト」に相当する。

(3) 本願発明1の「前記赤色カラーフィルタ層は、下記化学式(1)のアントラキノン顔料を40?45重量%分散させた感光性カラー樹脂から」なる構成、及び、


」と、
引用例1発明の「透明赤色の感光性樹脂組成物膜R」とは、「前記赤色カラーフィルタ層は、感光性カラー樹脂から」なる点で一致する。

(4) 本願発明1の「前記W-LEDは、440?460nmの波長帯と、520?540nmの波長帯と、610?630nmの波長帯とにピークを形成し、前記W-LEDは、25?30lmの輝度を有する」構成と、
引用例1発明の「前記白色LEDは、波長430nm?485nmの範囲内に発光強度が最大となる波長λ_(1)を有し、波長500nm?580nmの範囲内に発光強度が極大となる波長λ_(2)を有し、波長590nm?680nmの範囲内に発光強度が極大となる波長λ_(3)を有する」とは、
「前記W-LEDは、440?460nmの波長帯と、520?540nmの波長帯と、610?630nmの波長帯とにピークを形成」する点で一致する。

(5) 引用例1発明の「TFT駆動型液晶表示装置」は、液晶表示パネル、バックライト30とを有する構成であるから、本願発明1の「液晶表示素子」に相当する。

したがって、両者は、
「 赤色(R)カラーフィルタ層、緑色(G)カラーフィルタ層及び青色(B)カラーフィルタ層を備えて赤色、緑色及び青色を実現する液晶パネルと、
青色光を発光する青色LEDと、緑色蛍光物質及び赤色蛍光物質からなる蛍光層とからなり、前記液晶パネルに白色光を供給するW-LEDを含むバックライトとから構成され、
前記赤色カラーフィルタ層は、感光性カラー樹脂からなり、
前記W-LEDは、440?460nmの波長帯と、520?540nmの波長帯と、610?630nmの波長帯とにピークを形成することを特徴とする液晶表示素子。」である点で一致し、次の点で相違する。

(相違点1)
赤色カラーフィルタ層が、本願発明1では、「下記化学式(1)のアントラキノン顔料を40?45重量%分散させた感光性カラー樹脂から」なる、化学式(1)が、「

」であるのに対し、
引用例1発明では、「前記赤色感光性樹脂組成物膜を構成する赤色感光性樹脂組成物は、C.I.ピグメントイエロー138、139、150、C.I.ピグメントレッド177、242、254から選ばれる少なくとも1種を含有している顔料及び染料を含んで」いるものであるが、列挙した物質から特定の物質を限定しておらず、分散させる量も限定していない点。

(相違点2)
蛍光層が、本願発明1では、「2:1で混合された緑色蛍光物質及び赤色蛍光物質からなる」ものであるのに対し、
引用例1発明では、「赤色発光蛍光体及び緑色発光蛍光体からなる」ものであるが、各蛍光物質の混合比について限定されていない点。

(相違点3)
W-LEDが、本願発明1では、「25?30lmの輝度を有する」のに対し、
引用例1発明では、白色LEDの輝度について限定されていない点。

2 判断
(1) 上記(相違点1)について
引用例2には、上記第4「2」(1)?(3)からみて、
「下記式(1)で表されるC. I.ピグメントレッド177を有する顔料組成物から形成される赤色フィルタセグメントを具備する、液晶表示装置用カラーフイルタ

」、及び、
「ジアントラキノン顔料は、塗膜にした際のコントラストが高く、耐光性や耐熱性にも優れているため、カラーフィルタ用途に多く使用されている」ことが記載されている。

引用例3には、上記第4「3」(1)?(4)からみて、
「青色LEDと赤色発光蛍光体及び緑色発光蛍光体とを組み合わせて混色させた白色LED装置を具備したバックライトと、
前記バックライトにマッチングした赤色再現性に優れる色材を用いた赤色画素を備えるカラーフィルタにおいて、
前記カラーフィルタの赤色画素の赤色感光性着色組成物として、C.I.ピグメントレッド177に相当するPR177を顔料として含み、前記PR177の顔料比率が異なる複数のカラーフィルタの透過率特性」が記載されている。

一方、引用例1の段落【0014】には、「本発明によれば、輝度及びコントラストが良好な表示装置を得ることができる。」、
段落【0298】?【0299】には、「液晶テレビ用途では、色再現性が重要視される。カラー液晶表示装置の色再現性は、赤(R)、緑(G)、青(B)の画素から放射される光の色で決まり、CIE 1931表色系(CIE 1931 standard colorimetric system)の三刺激値(X、Y、Z)から導き出される・・・(略)・・・NTSC比を大きくするためには、それぞれの画素の色純度を高くする必要があるが、色純度を高くするとカラーフィルタ全体の透過率が低下して、バックライト等の光源の利用効率(明度Y値(三刺激値のY)で表す。)が低くなる。このため、所定の輝度を維持するためには、バックライト等の光源は必然的に高い消費電力が必要となる。青色LEDの表面に蛍光体を塗布することによって形成される白色LEDは、低い電力で高い輝度を得ることができるため、特に色純度の高いカラーフィルタに対して有用である。」と記載され、
液晶表示装置において、輝度及びコントラストが良好なこと、色再現性が良いこと、及び、カラーフィルタによる画素の色純度を高めることが課題であることが記載されている。

したがって、引用例1に記載された上記課題を解決するため、引用例2に記載された、色再現性に関連するコントラストが高く、カラーフィルタ用途に多く使用されている上記「式(1)」で表されるジアントラキノン顔料を含む材料を選択することは、当業者の通常の創作活動の範囲でなし得ることである。

そして、引用例3の段落【0163】の「・・・このバックライトに組み合わせるカラーフィルタとして、赤色画素形成に用いる赤色感光性着色組成物が、顔料として少なくともPR177及びPR254を含み、顔料としてPR177及びPR254から成り、その顔料比率が深紅性に優れる顔料であるPR177を25%以上含有したもの、更に好ましくは45%?80%で含有したものであった場合に、特に深紅の赤色表示の可能な液晶表示装置が得られ、フォトリソ特性が良好なカラーフィルタが得られることがわかった。」の記載からみて、
PR177の顔料比率を最適なものに設計すること、即ち、感光性カラー樹脂におけるアントラキノン顔料の分散量を最適なものに設計することは、当業者であれば容易になし得ることであり、感光性カラー樹脂におけるアントラキノン顔料の分散量の範囲として40?45重量%とすることに関しても、実施例において他のアントラキノン顔料の分散量での比較例と対比されていないことからみて、当該数値範囲に限定することのみにより格別の効果を有するものともいえない。

よって、引用例1発明の赤色感光性樹脂組成物膜を構成する赤色感光性樹脂組成物が有する顔料のうち、液晶表示装置においてコントラストを高めるという共通の課題を解決するために引用例2に記載された上記式(1)で表されるアントラキノン顔料の一種であるジアントラキノン顔料であるC.I.ピグメントレッド177をカラーフィルタに用いる技術を採用し、その際に、引用例3に記載された感光性カラー樹脂におけるアントラキノン顔料の分散量を最適なものに設計する技術を付加して、相違点1に係る本願発明1の発明特定事項となすことは、当業者であれば容易に相当し得たことである。

(2) 上記(相違点2)について
引用例4には、上記第4「4」(1)?(4)からみて、
「青色LEDと蛍光体とを組み合わせて構成される白色発光の発光装置において、
橙色、赤色、深赤色などの赤色域についての色再現性の高い発光装置を得ることができ、更にはこの発光装置を用いることにより該赤色域での色再現性に優れたディスプレイ用バックライト、画像表示装置(ディスプレイ)や照明装置を得ることを可能とする目的で、蛍光体混合物に、610nm?680nmの波長範囲に蛍光強度のピーク値を有する赤色系蛍光体を少なくとも一種含有し、蛍光体混合物における緑色系蛍光体と赤色系蛍光体の組成比は、
緑色系蛍光体と赤色系蛍光体の合計重量に対して、緑色系蛍光体を重量百分率で、通常65%以上、好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上、特に好ましくは85%以上含有することが好ましい。緑色系蛍光体の重量百分率がこの範囲よりも小さい場合は、高輝度で演色性が高く好ましい白色を示す白色発光装置を得ることができず、赤みの強い白色発光装置となる虞がある。また、白色発光装置とするためには、緑色系蛍光体の重量百分率は、通常99%以下、好ましくは98%以下、より好ましくは97%以下である」ことが記載されている。

「橙色、赤色、深赤色などの赤色域についての色再現性の高い発光装置を得るためには、610nm?680nmの波長範囲に蛍光強度のピーク値を有する赤色系蛍光体を少なくとも一種含有することが好ましく、更にはこの発光装置を用いることにより該赤色域での色再現性に優れたディスプレイ用バックライト、画像表示装置(ディスプレイ)や照明装置を得ることが可能となる。
そして、緑色系蛍光体と赤色系蛍光体の発光効率のバランスや、赤色系蛍光体がどの程度緑色系蛍光体からの発光を吸収するかにもよるが、上記緑色系蛍光体と上記赤色系蛍光体を混合して用いる場合、緑色系蛍光体と赤色系蛍光体の合計重量に対して、緑色系蛍光体を重量百分率で、通常65%以上、好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上、特に好ましくは85%以上含有することが好ましい。緑色系蛍光体の重量百分率がこの範囲よりも小さい場合は、高輝度で演色性が高く好ましい白色を示す白色発光装置を得ることができず、赤みの強い白色発光装置となる虞がある。また、白色発光装置とするためには、緑色系蛍光体の重量百分率は、通常99%以下、好ましくは98%以下、より好ましくは97%以下である。

上記引用例4の記載において、緑色系蛍光体と赤色系蛍光体の合計重量に対して、緑色系蛍光体の重量百分率の値として、65%、70%等が示されており、これらを緑色蛍光体と赤色蛍光体の混合比にすると、1.86:1、2.33:1に対応する。
よって、緑色系蛍光体と赤色系蛍光体の合計重量に対して、好ましい緑色系蛍光体の重量百分率の値が65%以上であることは、緑色蛍光体と赤色蛍光体の混合比が「1.86以上」:1のことを表している。
したがって、引用例4には色再現性の高い発光装置を得るために、緑色系蛍光体と赤色系蛍光体の混合比を「1.86以上」:1とする技術が記載されており、「1.86以上」:1であれば、適宜の値で設計し得ることが読み取れる。

上記のとおり引用例1にも色再現性を高めるという同様の課題があることからみて、引用例1発明の蛍光層において、緑色蛍光物質と赤色蛍光物質の混合比として、引用例4に記載された1.86:1以上の範囲において、2:1の値を採用し、相違点2に係る本願発明1の発明特定事項となすことは、当業者であれば容易に相当し得たことである。

(3) 上記(相違点3)について
LEDを設計する際に、LED素子の輝度をその組成やサイズ等を適宜調整して、必要な大きさの輝度になるように設計することは、例示するまでもなく周知の技術であり、「25?30lmの輝度」が白色LEDにおいて、格別な意義を有する範囲であるともいえない。

よって、引用例1発明の白色LEDにおいて、輝度の大きさを適宜設計し、相違点3に係る本願発明1の発明特定事項となすことは、当業者であれば容易に相当し得たことである。

(4) 審判請求人の主張及び当該主張についての当審の判断
ア 審判請求人の主張
審判請求人は、平成30年4月17日に提出された当審拒絶知通知に対する意見書において、次の主張をしている。

「本願明細書の[0052]等に記載されるように、化学式(1)のアントラキノン顔料を含む赤色カラーフィルタ層は、純度の高い赤色を実現できるという利点があるものの、輝度及びアスペクト比が低下するという欠点がありますが、引用例1?4はこのような欠点を全く認識しておりません。仮に、当業者が、引用例2及び3に記載される事項を考慮して、引用例1発明に記載された赤色感光性樹脂組成物膜を構成する赤色感光性樹脂組成物が含有する顔料としてC.I.ピグメントレッド177を採用し、その際にC.I.ピグメントレッド177の分散量を最適化したとしても、液晶表示装置の輝度及びアスペクト比が低下するという問題が生じます。そうすると、引用例4に記載される事項を考慮したとしても、当業者が、輝度及びアスペクト比が低下するという問題が生じる構成をあえて採用した上で、そのように低下した輝度及びアスペクト比を改善するために、引用例1発明に記載された蛍光体フィルタにおける緑色発光蛍光体と赤色発光蛍光体との混合比を2:1に設定し、520?540nmの波長帯及び610?630nmの波長帯の輝度を向上させて白色LEDの輝度を25?30lmとすることは動機付けがないと思料します。
以上より、本願発明は、引用例1?4に記載の発明に基づいて当業者が容易になし得たものではないと思料します。」

イ 審判請求人の主張の検討
蛍光体を有するLEDの技術分野において、複数の蛍光体の混合比を変更して、最適な発色を行うように設計することは、引用例4の段落【0060】に記載されているように周知の技術的事項であり、最適な発色となるよう設計することにより、当然の結果として、輝度やアスペクト比の改善が行われることになるといえる。
そして、引用例3には「C.I.ピグメントレッド177」を用いたカラーフィルタが、「優れた赤色再現性を有する」旨の記載があることからみて、「C.I.ピグメントレッド177」を用いたカラーフィルタとの組み合わせにおいて、LEDが最適な発色をするように設計することは、当業者の通常の創作活動の範囲にすぎない。
そして、上記(相違点1)?(相違点3)については、上記(1)?(3)で検討したとおりである。

よって、上記主張は採用できない。

ウ 効果について
そして、引用例1?4を組み合わせるにあたり、阻害要因を有するものともいえず、本願発明1の奏する効果についても、引用例1?4に基づいて当業者が予測し得る範囲内のものである。

(5) 小括
したがって、本願発明1は、引用例1発明、引用例2?引用例4に記載された事項、及び、周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

第6 むすび
以上のとおりであるから、本願発明1は、引用例1発明、引用例2?引用例4に記載された事項、及び、周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

したがって、その余の請求項に係る発明において検討するまでもなく、本願は、拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2018-05-07 
結審通知日 2018-05-08 
審決日 2018-06-12 
出願番号 特願2014-239662(P2014-239662)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G02F)
P 1 8・ 537- WZ (G02F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小濱 健太  
特許庁審判長 森 竜介
特許庁審判官 星野 浩一
居島 一仁
発明の名称 車両のダッシュボード用液晶表示素子  
代理人 吉澤 弘司  
代理人 岡部 讓  

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