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審決分類 審判 査定不服 (159条1項、163条1項、174条1項で準用) 特許、登録しない。 H04M
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H04M
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04M
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない。 H04M
管理番号 1345458
審判番号 不服2017-14613  
総通号数 228 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-12-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-10-03 
確定日 2018-10-25 
事件の表示 特願2013-265037「電子機器」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 7月 2日出願公開、特開2015-122609〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成25年12月24日の出願であって、平成29年4月17日付けで拒絶理由が通知され、同年6月12日付けで手続補正がされ、同年6月28日付けで拒絶査定がされ、これに対して同年10月3日に拒絶査定不服審判の請求がされるとともに同時に手続補正がされたものである。

第2 平成29年10月3日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成29年10月3日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1.本件補正について(補正の内容)

本件補正は、本件補正前の本願の特許請求の範囲の
「【請求項1】
加速度を検出する加速度センサと、
前記加速度センサの検出結果に基づいて移動状態の種別を判別し、判別した種別に応じて、アプリケーション毎に、当該アプリーションの動作に基づく出力を行わせないように一部の機能を制限する制御部と、を備える電子機器。」
の記載を、本件補正後の
「【請求項1】
加速度を検出する加速度センサと、
前記加速度センサの検出値をロギングしたデータに基づいて移動状態の種別を継時的に判別し、判別した種別に応じて、アプリケーション毎に、当該アプリーションの動作に基づく出力を行わせないように実行中の当該アプリケーションを終了させるとともに、判別した種別が維持される間は終了させた当該アプリケーションを実行させない制御部と、を備える電子機器。」
に補正することを含むものである(以下、本件補正前の請求項1に係る発明を「本願発明」、本件補正語の請求項1に係る発明を「補正後発明」という。)。(当審注:下線は補正箇所を示す。)

2.補正の適否
本件補正は、本願発明の「移動状態の種別を判別し」を補正後発明の「移動状態の種別を経時的に判別し」に補正(補正1)し、本願発明の「加速度センサの検出結果」を補正後発明の「加速度センサの検出値をロギングしたデータ」に補正(補正2)し、本願発明の「一部の機能を制限する制御部」を補正後発明の「実行中の当該アプリケーションを終了させるとともに、判別した種別が維持される間は終了させた当該アプリケーションを実行させない制御部」と補正(補正3)したものである。

(1)補正の目的要件について
まず最初に(補正3)について検討すると、本願発明の「一部の機能を制限する」という制御部の機能について、補正後発明には含まれておらず、当該構成が削除されているところ、本願明細書の段落【0036】の「第3事項は、制限される機能を実行するためのアプリケーションの動作に基づく出力を行わせないことである。第3事項は、アプリケーションの動作を一部制限するために実施される。一例として、音楽機能で説明すると、第3事項は、音楽再生アプリケーションに基づく画像を表示部11に表示させないこと、又は、音楽再生アプリケーションによって再生される音楽をイヤホン(図示せず)から出力させないことである。」との記載を参酌すると、本願発明の「一部の機能」は「アプリケーション」に含まれる種々の機能のうちの一部の機能であるものと解されるから、「実行中の、当該アプリケーションを終了させるとともに、判別した種別が維持される間は終了させた当該アプリケションを実行させない」ことは、「一部の機能を制限する」ことの下位概念であるとはいえない。よって、(補正3)は、特許法第17条の2第5項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮には当たらない。
また、(補正3)が、同項第3号に規定する誤記の訂正や同第4項に規定する明りょうでない記載の釈明を目的とするものでもないことも明らかである。
したがって、(補正1)、(補正2)について検討するまでもなく、本件補正は、特許法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

(2)独立特許要件
上記「(1)補正の目的要件について」で検討したように、本件補正は、特許法第17条の2第5項各号のいずれにも適合しないから却下されるべきものであるが、仮に、本件補正が特許法第17条の2第5項第2号に規定する要件に適合するものであるとした場合に、補正後発明が特許出願の際に独立して特許を受けることができるものであるか、(特許法第17条2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について予備的に以下に検討する。
補正後発明の「移動状態の種別を継時的に判別し」及び「実行中の当該アプリケーションを終了させるとともに、判別した種別が維持される間は終了させた当該アプリケーションを実行させない制御部」に関連して、本願発明の詳細な説明には、「加速度センサの検出値をロギングしたデータに基づいて移動状態の種別を」、「判別」することについては、段落【0022】?【0027】に記載されており、「制御部18は、上述した合成ベクトル値のロギングしたデータと、加速度パターンを比較することにより、携帯電話機1の状態を判別する。」(【0023】)、「制御部18は、加速度センサ16の検出結果に基づいて移動状態の種別を判別し、判別した種別に応じて機能を制限する。制御部18は、移動状態の種別として、歩行状態、乗り物乗車状態及び自転車走行状態を判別する。すなわち、制御部18は、移動の種別の判別として、上述したように携帯電話機1が第1?5移動状態のいずれの状態であるかを判別する。」(【0027】)と記載されており、「第2事項は、現在実行されている機能を終了させて、これ以降、機能を実行させないようにするために実行される。」(【0035】)とは記載されている。しかしながら、制御部が、「移動状態の種別を継時的に判別し」、「実行中の当該アプリケーションを終了させるとともに、判別した種別が維持される間は終了させた当該アプリケーションを実行させない」点は、発明の詳細な説明には記載も示唆もされていないから、補正後発明は、発明の詳細な説明に記載されたものではない。
したがって、補正後発明は、発明の詳細な説明に記載されたものではなく、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていないから、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

3.むすび
上記2(1)で検討したとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項に規定する要件に違反するものであるから、同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。また、仮に本件補正が、特許法第17条の2第5項第2号に適合するとしても、上記2(2)で検討したところによれば、本件補正は、特許法第17条の2第6項で準用する同法第126条第7項の規定に違反するものであり、同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明について
1 本願発明
平成29年10月3日付け手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし4に係る発明は、平成29年6月12日付けの手続補正によって補正された特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明は、上記第2[理由]1.の本願発明である。本願発明を再掲する。

「【請求項1】
加速度を検出する加速度センサと、
前記加速度センサの検出結果に基づいて移動状態の種別を判別し、判別した種別に応じて、アプリケーション毎に、当該アプリーションの動作に基づく出力を行わせないように一部の機能を制限する制御部と、を備える電子機器。」

2 原査定の拒絶の理由の概要
原査定の拒絶の理由の概要は、この出願の請求項1に係る発明は、本願の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1ないし引用文献3に記載された発明に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有するもの(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。なお、原査定の対象とした上記請求項1に係る発明は、平成29年4月17日付け拒絶理由の理由2の対象となった請求項4に係る発明に対応するものである。

引用文献1:特開2010-81319号公報
引用文献2:特開2008-205573号公報
引用文献3:特開2012-209820号公報

3 引用例
(1)引用例1、引用発明
原査定の拒絶の理由で引用された、特開2010-81319号公報(平成22年4月8日出願公開)(以下、「引用例1」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。

ア 「【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯電話機等のアプリケーションを起動して実行可能な携帯電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電子機器の一例である携帯電話機には、通話機能やメール機能のほかに電話帳機能や電子メール機能や音楽再生機能などの様々な機能が付加されている。そして、これら複数の機能の一部を制限するためのモード設定が可能となっている。例えば、マナーモードが設定されている場合には、着信やアラーム動作などの各種イベントが発生した際の音声による報知機能を停止させられ、ドライブモードが設定されている場合には、通話機能が停止させられる構成となる。」(2?3頁)

イ 「【0006】
この発明の携帯電子機器は、アプリケーションを保有するアプリケーション保有部と、前記アプリケーション保有部に保有されている所定のアプリケーションの起動を指示する起動指示部と、前記起動指示部での起動指示に応じて前記所定のアプリケーションを起動して実行するアプリ実行部と、周囲の環境を判定する環境判定部と、前記環境判定部により判定される前記周囲の環境が前記所定のアプリケーションに適合するか否かを判断し、前記周囲の環境が前記所定のアプリケーションに適合しないと判断した場合に前記所定のアプリケーションの起動又は実行を抑制するアプリ抑制部と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
この発明の携帯電子機器にあっては、周囲の環境に適したアプリケーションの起動又は実行を可能とし、使い勝手を向上させることができる。」(3頁)

ウ 「【0014】
加速度センサ13cは、従来公知の加速度センサが用いられ、携帯電話機に作用している加速度及び当該加速度から移動速度を検出する。また、この加速度センサ13cは、携帯電話機に作用している振動をも検出可能に構成されている。この加速度センサ13cにて検出された携帯電話機に作用している加速度、速度又は振動のデータはCPU1に出力され、CPU1は、入力された加速度、速度又は振動のデータに基づき携帯電話機の移動状態を検出する。例えば、検出された加速度(速度)が、第1閾値よりも小さい場合には停止状態と判定し、第1閾値よりも大きい第2閾値よりも小さい場合には歩行状態と判定し、第2閾値よりも大きい第3閾値よりも小さい場合には自転車運転状態と判定し、第3閾値よりも大きい第4閾値よりも小さい場合には自動車運転状態と判定し、第4閾値以上の場合には電車乗車状態と判定する。また、検出される振動に応じても、停止状態、歩行状態、自動車乗車状態、電車乗車状態などを判定するようにしても良い。」(4?5頁)

エ 「【0019】
CPU1(アプリ抑制部)は、キー入力部3からの入力操作や他の制御信号などに応じて所定のアプリの起動指示を受付けると、データ記憶部2に記憶されている所定のアプリを読み出して、読み出した所定のアプリの起動及び実行を行なう、判定される外部環境に応じてアプリの起動又は実行を制限(抑制)する処理を行なう。
【0020】
データ記憶部2には、図2に示されるように、CPU1にて判定される外部環境に応じて起動又は実行が許容されるアプリケーションプログラムのリスト(処理テーブル)が記憶されている。このリストに基づき、CPU1は、利用環境(周囲の環境)が「静止状態」であると判定した場合には全ての機能(アプリ)の起動及び実行を許容し、「徒歩」状態であると判定した場合には「通話機能」、「音楽機能」、「ナビ機能」などの一部の機能のみを許容し、「自転者」運転状態であると判定した場合には「音楽機能」、「ナビ機能」などの一部の機能のみを許容し、「電車」への乗車状態であると判定した場合には「音楽機能」、「メール機能」、「ゲーム機能」、「テレビ機能」などの一部の機能のみを許容する。「自動車(運転席)」状態、即ち自動車運転状態であると判定した場合には「ナビ機能」のみを許容し、「自動車(助手席)」状態、即ち運転席以外の座席での自動車乗車状態であると判定した場合には全ての機能を許容する。」(5頁)

摘記事項ア?エ及び図面並びにこの分野の技術常識を考慮すると、以下の技術事項が読み取れる。

a.摘記事項ウの【0014】の「この加速度センサ13cにて検出された携帯電話機に作用している加速度、速度又は振動のデータはCPU1に出力され、CPU1は、入力された加速度、速度又は振動のデータに基づき携帯電話機の移動状態を検出する。」の記載より、「携帯電話機」は、「携帯電話機に作用している加速度を検出する加速度センサと、加速度センサから入力された加速度に基づき携帯電話機の移動状態を検出するCPUと、を備え」ているといえる。

b.摘記事項ウの【0014】の「検出された加速度(速度)が、第1閾値よりも小さい場合には停止状態と判定し、第1閾値よりも大きい第2閾値よりも小さい場合には歩行状態と判定し、第2閾値よりも大きい第3閾値よりも小さい場合には自転車運転状態と判定し、第3閾値よりも大きい第4閾値よりも小さい場合には自動車運転状態と判定し、第4閾値以上の場合には電車乗車状態と判定する。また、検出される振動に応じても、停止状態、歩行状態、自動車乗車状態、電車乗車状態などを判定する」の記載より、加速度により判定される移動状態として、「停止状態、歩行状態、自動車運転状態、電車乗車状態」という複数の状態があるといえる。

c.上記a.と摘記事項エの【0020】の「CPU1にて判定される外部環境に応じて起動又は実行が許容されるアプリケーションプログラムのリスト(処理テーブル)が記憶されている。このリストに基づき、CPU1は、利用環境(周囲の環境)が「静止状態」であると判定した場合には全ての機能(アプリ)の起動及び実行を許容し、「徒歩」状態であると判定した場合には「通話機能」、「音楽機能」、「ナビ機能」などの一部の機能のみを許容し、「自転者」運転状態であると判定した場合には「音楽機能」、「ナビ機能」などの一部の機能のみを許容し、「電車」への乗車状態であると判定した場合には「音楽機能」、「メール機能」、「ゲーム機能」、「テレビ機能」などの一部の機能のみを許容する。「自動車(運転席)」状態、即ち自動車運転状態であると判定した場合には「ナビ機能」のみを許容し、「自動車(助手席)」状態、即ち運転席以外の座席での自動車乗車状態であると判定した場合には全ての機能を許容する。」の記載より、「携帯電話機」が備える「CPU」は、利用環境、すなわち「停止状態(静止状態)、歩行状態(徒歩状態)、自動車運転状態、電車乗車状態」のいずれであるかに応じて、アプリケーションプログラムのリストの一部のアプリケーションプログラム(機能)のみの起動又は実行を許容するものであるといえる。

以上より、引用例1には、周囲の環境に適したアプリケーションの起動又は実行を可能にするための、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認める。

「携帯電話機に作用している加速度を検出する加速度センサと、
加速度センサから入力された加速度に基づき携帯電話機の移動状態(停止状態、歩行状態、自転車運転状態、電車乗車状態)を検出し、
利用環境が、停止状態(静止状態)、歩行状態(徒歩状態)、自動車運転状態、電車乗車状態のいずれであるかに応じて、アプリケーションプログラムのリストの一部のアプリケーションプログラム(機能)のみの起動又は実行を許容するCPUと、を備える携帯電話機。」

(2)引用例2、公知技術
原査定の拒絶の理由で引用された、特開2008-205573号公報(平成20年9月4日出願公開)(以下、「引用例2」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。

オ 「【0003】
自動車運転中における携帯電話機を使用した通話を防止するために、エンジン回転音などにより自動車の作動状況を検知し、運転中における運転者側からの通話を禁止する無線通信端末(例えば特許文献1参照)及び自動車の作動状況に応じて、着信許可/拒否を設定する携帯電話機(例えば特許文献2?4参照)が知られている。
・・・(中略)・・・
【0006】
本発明の目的は、車の運転開始前後におけるモバイル機器の所定機能の継続使用を制限するモバイル機器及びその制御方法を提供することである。」(3頁)

カ「【0009】
上記第1視点の好ましい形態によれば、無線通信のための送受信部及び通話部をさらに備え、制御部は、所定の機能が無線通信機能である場合、車が停止状態から走行状態へ移行したと判断したときに無線通信機能を保留状態にすると共に、車が走行状態から停止状態に再移行したと判断したとき、又はハンズフリー無線通信モードに切り換えられたときに該保留状態を解除する。
【0010】
上記第1視点の好ましい形態によれば、画像(文字、静画及び動画含む)を表示する表示部をさらに備え、制御部は、車が停止状態から走行状態へ移行したと判断したときに、表示部が、運転者が注視するような画像(文字、静画及び動画含む)を表示することを一時的に停止すると共に、車が走行状態から停止状態に再移行したと判断したときに表示部が画像を表示すること
を回復させる。」(4頁)

キ「【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明のモバイル機器について説明する。本発明のモバイル機器は、安全運転のために車の運転中に使用しないほうがよいモバイル機器であり、例えば、携帯電話機、携帯ゲーム機、PDA(Personal Digital Assistant)、携帯テレビ、携帯動画再生機(例えば、動画ファイル再生機、ポータブルDVDプレーヤなど)、などが挙げられる。以下、本発明のモバイル機器について携帯電話機を例にして説明する。」(5頁)

ク「【0034】
該所定の機能は、例えば、通話などの無線通信機能、画面表示などの表示(出力)機能、及び命令もしくは情報入力などの入力機能の少なくとも1つである。該所定の機能が無線通信機能(ハンズフリー無線通信除く)である場合、S4において通話を保留状態にし、S6において保留状態を解除して通話を回復させる。該所定の機能が表示機能である場合、S4において運転者が注視するような画像(例えば、電子メール画像、インターネット通信画像、テレビ画像、ゲーム画像、動画など)の表示を一時的に停止し、S6において一時停止を解除し、表示を再開する。該所定の機能が入力機能である場合、S4において運転者による命令や文字の入力を不可にし、S6において入力を可能にする。この他に該所定の機能としては、着信機能、発信機能、受信機能、及び送信機能などがある。
【0035】
S4において各機能を一時停止するとき、モバイル機器の処理も一時停止すると好ましい。例えば、ゲーム処理の一時停止や動画再生の一時停止などである。そして、S6において一時停止解除と共に処理を再開してもよいが、ゲーム処理などの処理の場合は運転者の命令を待って処理を再開させるほうが好ましい。
【0036】
図3に、図2に示す形態とは別の実施形態に係る本発明のモバイル機器の制御方法を示すフローチャートを示す。図2に示すフローチャートにおいては、S5において車が走行状態から停止状態に移行したときに、所定機能の一時停止を解除している(S6)が、図3に示すフローチャートにおいては、S15において所定の動作モードに切り換えたときに所定機能の一時停止を解除している。ここで、所定の動作モードとは、動作モードの切り換えによりモバイル機器を手に保持すること、及び画面を注視しなくてもモバイル機器の利用を継続できる動作モードであり、例えばハンズフリー通話モードや音声入力モードがある。また、図3に示すフローチャートにおいては、S12及びS13の順序は、図2に示すS2とS3の順序と逆にしてある。
【0037】
上記においては停止状態から走行状態への移行時の機能使用の制限について説明したが、本発明のモバイル機器及びその制御方法は、さらに、制御部が、車が走行状態にあると判断したときは、モバイル機器の機能使用を開始することができないようにすると好ましい。例えば、車が走行状態にあるとき(すなわち運転者が運転中であるとき)、通話(ハンズフリー通話除く)、入力、表示(出力)、着信、送信及び受信のうち少なくとも1つ、好ましくはすべて、の開始が不可能となるようにすると好ましい。これにより、運転中のモバイル機器の使用を全般的に制限することができる。」(7?8頁)

摘記事項カの【0009】の「車が停止状態から走行状態へ移行したと判断したときに無線通信機能を保留状態にする」と、同【0010】の「制御部は、車が停止状態から走行状態へ移行したと判断したときに、表示部が、運転者が注視するような画像(文字、静画及び動画含む)を表示することを一時的に停止する」と、摘記事項キの【0019】の「本発明のモバイル機器は、安全運転のために車の運転中に使用しないほうがよいモバイル機器であり、例えば、携帯電話機、・・(略)・・以下、本発明のモバイル機器について携帯電話機を例にして説明する。」と、摘記事項クの【0034】の「該所定の機能が無線通信機能(ハンズフリー無線通信除く)である場合、S4において通話を保留状態にし、・・(略)・・該所定の機能が表示機能である場合、S4において運転者が注視するような画像(例えば、電子メール画像、インターネット通信画像、テレビ画像、ゲーム画像、動画など)の表示を一時的に停止し、」との記載より、「無線通信機能の場合には、通話を保留状態にし、電子メール機能の場合には、表示を一時的に停止する」といえ、無線通信機能では、通話相手の音声出力を行わせない一方で、無線通信機能の他の機能(例えば、保留機能)は制限されていないものと解され、電子メール機能の場合も同様に、表示の出力を行わせない一方で、電子メール機能の他の機能は制限されていないものと解されるから、「機能毎に、当該機能の動作に基づく出力を行わせないように一部の機能を制限する」ものであるといえる。

以上を踏まえると、引用例2には、車の運転開始前後における携帯電話機の所定機能の継続使用を制限するための、「車が停止状態から走行状態へ移行した場合に、無線通信機能においては通話を保留にすること、表示機能においては表示を停止することにより、機能毎に、当該機能の動作に基づく出力を行わせないように一部の機能を制限する」技術(以下、「公知技術」という。)が記載されていると認める。

4 対比・判断

本願発明と引用発明とを対比すると、
引用発明の「携帯電話機」は、本願発明の「電子機器」に含まれる。
引用発明の「携帯電話機に作用している加速度を検出する加速度センサ」は、本願発明の「加速度を検出する加速度センサ」に含まれる。
引用発明の「携帯電話機の移動状態」のうち「停止状態、歩行状態、自動車運転状態、電車乗車状態」の各々は、本願発明の「移動状態の種別」に含まれるので、引用発明の「加速度センサから入力された加速度に基づき携帯電話機の移動状態(停止状態、歩行状態、自動車運転状態、電車乗車状態)を検出し、」は、本願発明の「前記加速度センサの検出結果に基づいて移動状態の種別を判別し、」に含まれる。
本願発明の「判別した種別に応じて、アプリケーション毎に、当該アプリーションの動作に基づく出力を行わせないように一部の機能を制限すること」と引用発明の「停止状態(静止状態)、歩行状態(徒歩状態)、自転車運転状態、自動車運転状態、電車乗車状態のそれぞれについて、
アプリケーションプログラムのリストの一部のアプリケーションプログラム(機能)のみの起動又は実行を許容する」こととは、「判別した種別に応じて、アプリケーション毎に、制限する」点で共通する。また、引用発明の「CPU」は、本願発明の「制御部」に含まれる。

したがって、本願発明と引用発明とは、以下の点で一致し、相違する。

(一致点)
「加速度を検出する加速度センサと、
前記加速度センサの検出結果に基づいて移動状態の種別を判別し、前記判別した種別に応じて、アプリケーション毎に、制限する制御部と、を備える電子機器。」

(相違点)
一致点の「前記判別した種別に応じて、アプリケーション毎に、制限する制御部」が、本願発明では、アプリケーション毎に、「当該アプリーションの動作に基づく出力を行わせないように一部の機能を制限」するのに対して、引用発明では、「アプリケーションプログラムのリストの一部のアプリケーションプログラム(機能)のみの起動又は実行を許容する」ことで、アプリケーション単位で機能を制限する点で相違する。

(相違点)について検討する。
引用発明と上記公知技術とは、携帯電話機の利用環境に応じて不適切な機能を制限するものである点で共通するから、引用発明の「CPU」における制御に上記公知技術を適用して、起動又は実行を許容しないアプリケーションにつき、当該アプリケーションの動作に基づく出力を行わせないように一部の機能を制限するようにして、本願発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たものである。

第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び上記公知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものと認められるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
 
審理終結日 2018-08-24 
結審通知日 2018-08-28 
審決日 2018-09-10 
出願番号 特願2013-265037(P2013-265037)
審決分類 P 1 8・ 56- Z (H04M)
P 1 8・ 537- Z (H04M)
P 1 8・ 121- Z (H04M)
P 1 8・ 575- Z (H04M)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 望月 章俊  
特許庁審判長 北岡 浩
特許庁審判官 富澤 哲生
山中 実
発明の名称 電子機器  
代理人 林 一好  
代理人 正林 真之  

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