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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06T
管理番号 1345461
審判番号 不服2017-18211  
総通号数 228 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-12-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-12-07 
確定日 2018-10-25 
事件の表示 特願2013-117070「情報処理プログラム、情報処理システム、情報処理装置、および情報処理方法」拒絶査定不服審判事件〔平成26年12月15日出願公開、特開2014-235596〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成25年6月3日の出願であって、その手続の概要は以下のとおりである。

平成29年2月21日 :拒絶理由通知書
平成29年4月20日 :手続補正書の提出
平成29年9月 4日 :拒絶査定
平成29年12月7日 :審判請求書、手続補正書の提出

2.本願発明
本願の請求項に係る発明は、平成29年12月7日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1?15に記載した事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、拒絶査定の対象となった平成29年4月20日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1を引用する請求項6を引用する請求項13に対応するものであって、次のとおりのものである。
なお、本願発明の各構成の符号は、説明のために当審において付与したものであり、以下、構成(A)、構成(B)などと称する。

(本願発明)
(A)仮想空間内の所定のオブジェクトを仮想カメラで撮像した画像を表示する情報処理装置のコンピュータに実行させる情報処理プログラムであって、前記コンピュータを、
(B)仮想カメラの進行方向またはその逆方向に対応する方向における前記仮想カメラから所定の距離に1以上の判定用座標を設定する判定用座標設定手段と、
(C)前記判定用座標と前記所定のオブジェクト以外のオブジェクトである障害物オブジェクトとが衝突するか否かを判定する障害物判定手段と、
(D)前記障害物判定手段が、前記障害物オブジェクトと前記判定用座標とが衝突すると判定したとき、前記障害物オブジェクトが仮想カメラと所定オブジェクトとの間の視線上に存在しないように、かつ、前記所定オブジェクトに追従するように、前記仮想カメラを移動させる迂回手段として機能させ、
(E)前記判定用座標設定手段は、前記仮想カメラの進行方向に基づいた所定の座標に少なくとも1つの前記判定用座標を設定し、
(F)前記迂回手段は、前記仮想カメラを前記所定のオブジェクト周りを回転させる、あるいは、当該仮想カメラを当該所定のオブジェクトに近づけることで前記障害物オブジェクトが前記所定範囲内に存在しなくなるように当該仮想カメラを移動させる、
(A)情報処理プログラム。

3.査定の概要
原査定の拒絶の理由の概要は、次のとおりである。
この出願の請求項1?17に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献1.特開2009-59111号公報

4.引用発明
(1)引用文献1の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1である特開2009-59111号公報には、「画像形成装置及び方法、並びにプログラム及び記録媒体」(発明の名称)に関し、図面と共に次に掲げる事項が記載されている。
なお、下線は強調のために当審で付したものである。

ア.「【0001】
本発明は、透視変換により画像を生成する画像生成装置等に関し、障害物を回避するための仮想カメラの視点の移動に関する。
(中略)
【0010】
本発明は、仮想カメラの視点の位置と被写体の位置との間に障害物が存在してしまうことを避けつつ、仮想カメラの視点の位置を滑らかに移動させることのできる画像生成装置等を提供することを目的とする。」

イ.「【0040】
図1は、この実施の形態に適用されるビデオゲーム装置の構成を示すブロック図である。図示するように、ビデオゲーム装置100は、装置本体101を中心として構築される。この装置本体101は、その内部バス119に接続された制御部103、RAM(Random Access Memory)105、ハードディスク・ドライブ(HDD)107、サウンド処理部109、グラフィック処理部111、DVD/CD-ROMドライブ113、通信インターフェイス115、及びインターフェイス部117を含む。
(中略)
【0042】
制御部103は、CPU(Central Processing Unit)やROM(Read Only Memory)などを含み、HDD107や記録媒体131上に格納されたプログラムを実行し、装置本体101の制御を行う。制御部103は、内部タイマを備えている。RAM105は、制御部103のワークエリアであり、後述するプレイヤキャラクタの位置、仮想カメラの視点の位置や視軸の方向、カメラコリジョンの大きさ、透視変換された各ポリゴンの頂点の座標などに関する情報は、RAM105に一時記憶される。HDD107は、プログラムやデータを保存するための記憶領域である。サウンド処理部109は、制御部103により実行されているプログラムがサウンド出力を行うよう指示している場合に、その指示を解釈して、サウンド出力装置125にサウンド信号を出力する。
【0043】
グラフィック処理部111は、制御部103から出力される描画命令に従って、フレームメモリ112(図では、グラフィック処理部111の外側に描かれているが、グラフィック処理部111を構成するチップに含まれるRAM内に設けられる)に画像データを展開し、表示装置121の表示画面122上に画像を表示するビデオ信号を出力する。グラフィック処理部111から出力されるビデオ信号に含まれる画像の1フレーム時間は、例えば60分の1秒である。フレームメモリ112は、2セット設けられており、データの書き込み用と読み出し用とがフレーム期間毎に切り替えられる。
【0044】
グラフィック処理部111は、仮想3次元空間に存在するオブジェクト(プレイヤキャラクタ、ノンプレイヤキャラクタ、及びキャラクタ以外のオブジェクト)を仮想カメラにより透視変換した2次元画像の画像データを生成して、フレームメモリ112に書き込む。仮想カメラの視軸の方向は、常にプレイヤキャラクタ(より具体的には、プレイヤキャラクタのほぼ重心位置に設定された基準点)を向くようになっている。すなわち、プレイヤキャラクタは、常に透視変換の際の被写体となる。」

ウ.「【0046】
また、入力部161の操作ボタンには、プレイヤキャラクタの動作等を指定するためのボタンの他に、L1、R1、L2、R2の4つのボタン(以下、これらをまとめてLRボタンと呼ぶ場合がある)が設けられている。仮想カメラの視点の位置は、方向キーから入力される指示に応じてプレイヤキャラクタに追随して移動する他、L1ボタンまたはR1ボタンから入力される指示に応じてプレイヤキャラクタの位置を中心に左回りまたは右回りで周回移動させられ、L2ボタンまたはR2ボタンから入力される指示に応じてプレイヤキャラクタの位置を原点とする極座標上で上方向または下方向に移動させられる。」

エ.「【0051】
プレイヤキャラクタは、透視変換される際に、仮想カメラの視軸の位置が常に向けられる被写体となっている。ノンプレイヤキャラクタは、透視変換の際に障害物とされないオブジェクトであり、後述するカメラコリジョンの範囲内にノンプレイヤキャラクタが存在していても、これによって仮想カメラの視点の位置が変更されることはない。キャラクタ以外のオブジェクトは、全て障害物となるオブジェクトであり、後述するカメラコリジョンの範囲内にキャラクタ以外のオブジェクト(障害物)が存在すれば、カメラコリジョンに障害物が存在しなくなる位置まで仮想カメラの視点の位置が移動させられる。」

オ.「【0052】
次に、この実施の形態にかかるビデオゲームにおいて、障害物を回避するように仮想カメラの視点の位置を制御するために設定されるカメラコリジョンについて説明する。図2は、この実施の形態にかかるビデオゲームで設定されるカメラコリジョンの例を示す図である。図示するように、カメラコリジョン300は、仮想カメラの視点201を中心とした半径Rの球に設定されるカメラ周辺領域301と、被写体(プレイヤキャラクタ)202を中心とした半径rの球に設定される被写体周辺領域302と、カメラ周辺領域301と被写体周辺領域302の間の円錐台形状の領域に設定されるカメラ被写体間領域303とからなる。
【0053】
カメラ周辺領域301の半径Rと、被写体周辺領域302の半径rとは、仮想カメラの視点201の位置と被写体202の位置との間の距離Dに応じて変化させられる。(後略)」

カ.「【0056】
仮想カメラの視点201の位置は、カメラコリジョン300に障害物が存在していなければ、被写体202となるプレイヤキャラクタの移動またはLRボタンの入力に応じて、被写体202との間の距離を基準距離Dsに保ちながら移動させられる。すなわち、カメラコリジョン300に障害物が存在していなければ、プレイヤキャラクタ(被写体202)が移動すると、プレイヤキャラクタと平行に同距離だけ、視軸203の方向を変化させずに仮想カメラの視点201の位置が移動する。また、LRボタンからの指示が入力されると、被写体202となるプレイヤキャラクタとの距離を距離Dsに保ちながら、被写体202を中心に所定角度だけ回転移動し、これに伴って、仮想カメラの視軸203の方向が変化させられる。
【0057】
仮想カメラの視点201の位置と被写体202の位置との間の距離Dが基準距離Dsとなっている状態から被写体202の移動またはLRボタンからの入力に応じて次に仮想カメラの視点201が移動される位置(次候補位置)において、カメラコリジョン300の範囲内に障害物が存在することとなる場合には、仮想カメラの視点201の位置は、次候補位置よりもさらに被写体202に向けて所定距離だけ移動させられる(視軸203の方向に変化なし)。
【0058】
仮想カメラの視点201の位置が被写体202に向けて移動される、すなわち距離Dが小さくなると、カメラ周辺領域301の半径Rと被写体周辺領域302の半径rが小さくなり、カメラコリジョン300の大きさが縮小されるが、縮小されたカメラコリジョン300に障害物が存在しなければ、仮想カメラの視点201の位置が決められる。縮小されたカメラコリジョン300でも障害物が存在するようであれば、カメラコリジョン300内に障害物が存在しなくなる位置まで、仮想カメラの視点201の位置は被写体202の方向に近づけられる(視軸203の方向に変化なし)。」

キ.「【0070】
この実施の形態にかかるビデオゲームにおいてゲームが進行していく様子は、1フレーム期間毎にゲームの進行状況に応じて生成されるゲーム画面としてプレイヤに示される。図3は、この実施の形態にかかるビデオゲームにおいて、ゲーム画面として表示装置121の表示画面122に表示される画像の画像データを生成するために、制御部103が1フレーム期間毎に行う画像生成処理を示すフローチャートである。
(中略)
【0074】
次に、制御部103は、入力部161の方向キーからの指示が入力されているかどうかにより、被写体202となるプレイヤキャラクタを仮想3次元空間で移動させるための指示が入力されているかどうかを判定する(ステップS103)。プレイヤキャラクタを移動させるための指示が入力されている場合には、制御部103は、仮想カメラの視軸203の向き及び該入力された指示に応じてプレイヤキャラクタの仮想3次元空間における位置を移動させ(ステップS104)、また、プレイヤキャラクタの移動に追随して仮想カメラの視点201の位置を移動させる(ステップS105)。そして、ステップS109の処理に進む。
(中略)
【0077】
ステップS109では、制御部103は、詳細を後述する仮想カメラ制御処理を行って、仮想カメラの視点201の位置をカメラコリジョン300内に障害物となるオブジェクトが存在しない位置に制御する。
(中略)
【0079】
図4は、ステップS109の仮想カメラ制御処理を詳細に示すフローチャートである。仮想カメラ制御処理においては、制御部103は、現時点における仮想カメラの視点201の位置及び被写体202(プレイヤキャラクタ)の位置との間の距離Dを算出する(ステップS201)。制御部103は、算出した距離Dに従って前述した数式1の演算を行い、カメラ周辺領域301の半径Rと被写体周辺領域302の半径rとを算出する(ステップS202)。
【0080】
次に、制御部103は、現時点における仮想カメラの視点201及び被写体202の位置、並びに算出した半径R、rに応じて定められるカメラコリジョン300の範囲内に、プレイヤキャラクタ及びノンプレイヤキャラクタ以外の障害物となるオブジェクトが存在するかどうかを判定する(ステップS203)。ステップS203においてカメラコリジョン300の範囲内に障害物となるオブジェクトが存在する場合には、制御部103は、仮想カメラの視点201の位置を被写体202の位置に向けて所定距離だけ近づける(ステップS204)。そして、ステップS201の処理に戻る。」

ク.「【0124】
上記の実施の形態では、カメラコリジョン300の範囲内に障害物が存在するときには、仮想カメラの視点201の位置を被写体202の方向に移動させ、こうして障害物がカメラコリジョン300の範囲内に入ってしまうのを回避するものとしていた。しかしながら、障害物を回避するための仮想カメラの視点201の移動方向は、被写体202の方向に限るものではない。状況に応じて仮想カメラの視点201を被写体202の方向に移動させる場合と、それ以外の方向に移動させる場合とを併用することもできる。それ以外の方向に移動させる下記の各種手法も、任意の2つ以上のものを併用することができる。
【0125】
例えば、カメラコリジョン300の範囲内に障害物が入らなくなるまで、仮想カメラの視点201の位置を極座標上で上方向に移動させるものとしてもよい。また、カメラコリジョン300の範囲内に障害物が入らなくなるまで、仮想カメラの視点201の位置を仮想3次元空間のZ軸方向に移動させるものとしてもよい。また、仮想カメラの視点201を高さを一定に維持させつつ移動させる場合には、カメラコリジョン300の範囲内に障害物が入ったときには、仮想カメラの視点201の位置を左回りまたは右回りで回転移動させて、カメラコリジョン300の範囲内に障害物が入らなくなるようにしてもよい。」

ケ.「【0141】
また、被写体周辺領域302がカメラコリジョン300に含まれないものとし、カメラ周辺領域300と、被写体202の位置を頂点としてカメラ周辺領域300との間に形成される円錐形状のカメラ被写体間領域とからカメラコリジョン300が構成されるものとしてもよい。この場合のカメラ被写体間領域に障害物となるオブジェクトが存在するかどうかは、被写体202の位置を中心として仮想カメラの視点201の位置と障害物となり得るオブジェクトの各頂点の位置とがなす角度と、被写体202の位置と障害物となり得るオブジェクトの拡張点の位置とがなす距離とによって求めることができる。」

コ.「【0145】
さらに、仮想カメラの視点201の位置が水平方向の高さを保って移動される場合には、カメラコリジョン300が平面形状になるものとしてもよい(例えば、カメラ周辺領域301及び被写体周辺領域302を円形とし、カメラ被写体間領域303を台形とする)。ここでは、仮想カメラの視点201の位置が水平方向の高さを保って移動されるという制約があることが条件になるものの、このような制約下ではカメラコリジョン300を平面形状に設定することができ、より少ない計算量でカメラコリジョン300に障害物が存在するかどうかを判断することができるようになる。」

(2)引用文献1に記載された発明及び技術
ア.引用文献1に記載された発明
引用文献1に記載された発明を以下に認定する。

(ア)引用文献1の上記(1)アによれば、引用文献1には、仮想カメラの視点による画像を生成する画像生成装置の発明が記載されている。そして、上記(1)イには、画像生成装置の実施形態であるビデオゲーム装置において、その制御部がプログラムを実行してビデオゲーム装置の本体を制御すること、および、制御部から出力される描画命令に従って、グラフィック処理部が、プレイヤキャラクタ、ノンプレイヤキャラクタ、及びキャラクタ以外のオブジェクトを含む仮想3次元空間に存在するオブジェクトを仮想カメラにより透視変換した2次元画像の画像データを生成し、表示装置の表示画面上に画像を表示するビデオ信号を出力することが記載されている。
よって、引用文献1には、『プレイヤキャラクタ、ノンプレイヤキャラクタ、及びキャラクタ以外のオブジェクトを含む仮想3次元空間に存在するオブジェクトを仮想カメラにより透視変換した画像を表示するビデオゲーム装置の制御部に実行させるプログラム』の発明が記載されているといえる。

(イ)引用文献1の上記(1)ウ、キの記載によれば、『ビデオゲーム装置の制御部』は、『方向キーから入力される指示に応じて仮想3次元空間で移動するプレイヤキャラクタに追随して、仮想カメラの視点の位置を移動させる』ものである。

(ウ)引用文献1の上記(1)オ、キ、ケの記載によれば、『ビデオゲーム装置の制御部』は、『仮想カメラの視点を中心とした所定の半径の球に設定されるカメラ周辺領域と、プレイヤキャラクタの位置を頂点としてカメラ周辺領域との間に形成される円錐形状のカメラ被写体間領域とから構成されるカメラコリジョンを設定する』ものである。

(エ)引用文献1の上記(1)エ、カ、キの記載によれば、『ビデオゲーム装置の制御部』は、『カメラコリジョンの範囲内に、プレイヤキャラクタ及びノンプレイヤキャラクタ以外の障害物となるオブジェクトが存在するかどうかを判定する』ものである。

(オ)引用文献1の上記(1)カ、キの記載によれば、ビデオゲーム装置の制御部は、カメラコリジョンの範囲内に障害物となるオブジェクトが存在する場合には、カメラコリジョンに障害物が存在しなくなる位置まで、仮想カメラの視軸の方向を変化させることなく、仮想カメラの視点の位置をプレイヤキャラクタの方向に近付ける。そして、引用文献1の上記(1)イの記載によれば、仮想カメラの視軸の方向は常にプレイヤキャラクタを向くようになっていることから、仮想カメラの視点の位置が上述のとおり変化する場合、仮想カメラの視軸の方向はプレイヤキャラクタに向いたままである。
よって、引用文献1には、『ビデオゲーム装置の制御部』は、『カメラコリジョンの範囲内に障害物となるオブジェクトが存在する場合には、カメラコリジョンに障害物が存在しなくなる位置まで、仮想カメラの視軸の方向をプレイヤキャラクタに向けたまま、仮想カメラの視点の位置をプレイヤキャラクタの方向に近付ける』ものであることが記載されている。

(カ)まとめ
上記(ア)ないし(オ)によると、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

(引用発明)
(a)プレイヤキャラクタ、ノンプレイヤキャラクタ、及びキャラクタ以外のオブジェクトを含む仮想3次元空間に存在するオブジェクトを仮想カメラにより透視変換した画像を表示するビデオゲーム装置の制御部に実行させるプログラムであって、前記制御部を、
(b)方向キーから入力される指示に応じて仮想3次元空間で移動するプレイヤキャラクタに追随して、仮想カメラの視点の位置を移動させる手段と、
(c)仮想カメラの視点を中心とした所定の半径の球に設定されるカメラ周辺領域と、プレイヤキャラクタの位置を頂点としてカメラ周辺領域との間に形成される円錐形状のカメラ被写体間領域とから構成されるカメラコリジョンを設定する手段と、
(d)カメラコリジョンの範囲内に、プレイヤキャラクタ及びノンプレイヤキャラクタ以外の障害物となるオブジェクトが存在するかどうかを判定する手段と、
(e)カメラコリジョンの範囲内に障害物となるオブジェクトが存在する場合には、カメラコリジョンに障害物が存在しなくなる位置まで、仮想カメラの視軸の方向をプレイヤキャラクタに向けたまま、仮想カメラの視点の位置をプレイヤキャラクタの方向に近付ける手段として機能させる
(a)プログラム。

イ.引用文献1に記載された技術
(ア)引用文献1の上記(1)クには、カメラコリジョン300の範囲内に障害物が存在するときに、仮想カメラの視点の位置をプレイヤキャラクタの方向に移動させるのではなく、「カメラコリジョン300の範囲内に障害物が入らなくなるまで、仮想カメラの視点201の位置を極座標上で上方向に移動させるものとしてもよい」と記載されている。
上記記載では、「極座標」の原点については言及されていないが、引用文献1の上記(1)ウの「L2ボタンまたはR2ボタンから入力される指示に応じてプレイヤキャラクタの位置を原点とする極座標上で上方向または下方向に移動させられる」という記載に照らせば、プレイヤキャラクタの位置が当該極座標の原点になると解釈するのが自然である。

すなわち、引用文献1には、「カメラコリジョンの範囲内に障害物が存在する場合に、カメラコリジョンの範囲内に障害物が入らなくなるまで、仮想カメラの視点の位置をプレイヤキャラクタを原点とする極座標上で上方向に移動させること」が記載されている。

(イ)引用文献1の上記(1)コには、「仮想カメラの視点201の位置が水平方向の高さを保って移動される場合には、仮想カメラの視点201の位置が水平方向の高さを保って移動されるという制約があるものの、カメラコリジョン300を平面形状(カメラ周辺領域301及び被写体周辺領域302を円形とし、カメラ被写体間領域303を台形とする)に設定することができ、より少ない計算量でカメラコリジョン300に障害物が存在するかどうかを判断することができるようになる。」ことが記載されている。
ここで、仮想カメラの視点の位置が水平方向の高さを保って移動される場合とは、仮想3次元空間において、移動の自由度を、高さ方向の自由度を削減して2次元平面に限定するものであり、その場合には、上記(1)オ、ケに記載される、球状のカメラ周辺領域及び円錐形状のカメラ被写体間領域から構成される3次元の領域であるカメラコリジョンを、円形のカメラ周辺領域及び被写体周辺領域と台形のカメラ被写体間領域から構成される2次元の領域である平面形状のカメラコリジョンに設定するものであるから、上記記載事項は、仮想カメラの視点の位置の移動の自由度及びカメラコリジョンの領域の次元を3次元から2次元に落とすことにより、障害物の存在の判定がより少ない計算量で実行されることを意味している。

すなわち、引用文献1には、「仮想カメラの視点の位置が水平方向の高さを保って移動される場合には、カメラコリジョンを2次元の領域である平面形状に次元を落として設定することにより、カメラコリジョンに障害物が存在するかどうかの判定をより少ない計算量で実行すること」が記載されている。

5.対比
本願発明と引用発明とを対比する。

(1)本願発明の構成(A)と引用発明の構成(a)との対比
本願発明の「所定のオブジェクト」は、構成(D)、(F)のように、仮想カメラが追従するオブジェクトであるところ、引用発明の「プレイキャラクタ」である「オブジェクト」は、構成(b)のように仮想カメラが追随するオブジェクトであるから、引用発明の「プレイヤキャラクタ、ノンプレイヤキャラクタ、及びキャラクタ以外のオブジェクトを含む仮想3次元空間に存在するオブジェクト」のうちの「プレイヤキャラクタ」は、本願発明の「所定のオブジェクト」に相当する。
引用発明の「ビデオゲーム装置」、「プログラム」は、それぞれ本願発明の「情報処理装置」、「情報処理プログラム」に相当する。
引用発明の「ビデオゲーム装置の制御部」は、ビデオゲーム装置を動作させるプログラムを実行するものであるから、本願発明の「コンピュータ」に相当するものである。
引用発明の「仮想カメラにより透視変換した画像を表示する」ことは、本願発明の「仮想カメラで撮像した画像を表示する」ことといえる。

よって、引用発明の「プレイヤキャラクタ、ノンプレイヤキャラクタ、及びキャラクタ以外のオブジェクトを含む仮想3次元空間に存在するオブジェクトを仮想カメラにより透視変換した画像を表示するビデオゲーム装置の制御部に実行させるプログラム」は、本願発明の「仮想空間内の所定のオブジェクトを仮想カメラで撮像した画像を表示する情報処理装置のコンピュータに実行させる情報処理プログラム」と一致する。

(2)本願発明の構成(B)と引用発明の構成(c)との対比
引用発明は、構成(b)のように、入力される指示に応じて、プレイキャラクタに追従して仮想カメラの視点の位置、すなわち仮想カメラが移動するものである。そして、引用発明は、移動する仮想カメラにおいて、構成(c)のように「仮想カメラの視点を中心とした所定の半径の球に設定されるカメラ周辺領域と、プレイヤキャラクタの位置を頂点としてカメラ周辺領域との間に形成される円錐形状のカメラ被写体間領域とから構成されるカメラコリジョン」を設定する。また、引用発明は、構成(d)のように、カメラコリジョンの範囲内に、障害物となるオブジェクトが存在するかどうかを判定するのである。
したがって、構成(c)、(d)及び(e)の「カメラコリジョン」は、カメラ周辺領域の各位置からプレイキャラクタの位置までの間に障害物となるオブジェクトが存在するかどうか判定するための領域であり、これは、カメラ周辺領域の各位置からプレイキャラクタの位置への視線が、障害物となるオブジェクトにより遮られる状態であるかを判定するための領域ともいえる。

一方、本願発明の「判定用座標」は、構成(C)のように、その座標が障害物オブジェクトと衝突するか否かを判定する座標である。

ここで、本願発明の「衝突」の意味について検討すると、本願明細書に「衝突」という記載はないものの、
a.段落0034の「他の実施形態では、ダミーカメラ104について、オブジェクトではなく、その位置を示す単なる座標情報(例えば、上記ダミーカメラ104の中点に該当する座標)として扱ってもよい。」、
b.段落0039の「なお、本実施形態では、上述したような原理で仮想カメラの制御を行うが、具体的処理の一例として以下に説明する処理では、次のような制御を行う。まず、上記の説明では、ダミーカメラ104が壁102等の障害物にめり込む場合を例に説明したが、実際の処理では、ダミーカメラ104から正面方向を見たときに、その視線上に障害物が存在するか否かを判定する。つまり、ダミーカメラ104自体が壁等と接触していなくても、当該ダミーカメラ104の位置から、その撮像方向を仮想カメラ103と同じとした場合にプレイヤキャラクタ101が何らかの障害物等で遮られて見えなくなるか否かを判定することになる。例えば、ダミーカメラ104の位置から撮像方向の向かう直線(以下、この直線のことを視線と呼ぶこともある)を算出する。(中略)そして、この直線上に、プレイヤキャラクタ101の撮像を遮るような障害物が存在するか否かの判定(直線と何らかの障害物とのコリジョン判定)を行うことで、上記回避位置を算出すべきか否かを決定する。」、
c.段落0040の「以下の説明においては、ダミーカメラ104の視線が何らかの障害物で遮られている状態をコリジョン状態と呼び」
の記載を参照すれば、「衝突」とは「コリジョン」のことであって、『所定の座標が障害物にめり込むことの他に、所定の座標からの視線上に障害物が存在すること、プレイキャラクタが障害物で遮られて見えなくなること』を意味するものと認められる。
したがって、引用発明の、カメラコリジョンの範囲内に、障害物となるオブジェクトが存在するかどうかを判定することは、本願発明の、障害物オブジェクトが衝突するか否かを判定することであるといえる。
そうすると、引用発明の「カメラコリジョン」と本願発明の「判定用座標」は、『その位置に視線を遮る状態のオブジェクトが衝突するか否かを判定するための判定用位置』である点で共通するものといえる。

また、本願発明は、「仮想カメラの進行方向またはその逆方向に対応する方向における前記仮想カメラから所定の距離」に「1以上の判定用座標」を設定するものであるのに対し、引用発明は、上述したように、移動する仮想カメラにおいて、その移動する仮想カメラに対応したカメラコリジョンを設定するものであり、構成に相違があるものの、両者は『仮想カメラの移動に対応する仮想カメラから所定の位置』に、上述した『判定用位置』を設定するものである点で共通するといえる。

したがって、本願発明の構成(B)と引用発明の構成(c)とは、『仮想カメラの移動に対応する仮想カメラから所定の位置に視線を遮る状態のオブジェクトが衝突するか否かを判定するための判定用位置を設定する判定用位置設定手段』という点で共通するものといえる。
ただし、この「判定用位置設定手段」に関し、本願発明では、「仮想カメラの進行方向またはその逆方向に対応する方向における前記仮想カメラから所定の距離に1以上の判定用座標を設定する判定用座標設定手段」であるのに対し、引用発明は、移動する仮想カメラにおいて、「仮想カメラの視点を中心とした所定の半径の球に設定されるカメラ周辺領域と、プレイヤキャラクタの位置を頂点としてカメラ周辺領域との間に形成される円錐形状のカメラ被写体間領域とから構成されるカメラコリジョンを設定する手段」である点で、両者は相違する。

(3)本願発明の構成(C)と引用発明の構成(d)との対比
上記(2)において認定したように、本願発明の「判定用座標」と引用発明の「カメラコリジョン」は相違するものの、『その位置に視線を遮る状態のオブジェクトとが衝突するか否かを判定するための判定用位置』である点で共通するものである。
また、本願発明の「前記所定のオブジェクト以外のオブジェクトである障害物オブジェクト」と、引用発明の「プレイヤキャラクタ及びノンプレイヤキャラクタ以外の障害物となるオブジェクト」とを対比すると、上記(1)において認定したように、引用発明の「プレイヤキャラクタ」は本願発明の「前記所定のオブジェクト」に対応するものであるものの、引用発明は「プレイヤキャラクタ及びノンプレイヤキャラクタ以外のオブジェクト」を「障害物となるオブジェクト」としているのに対し、本願発明は、「前記所定のオブジェクト以外のオブジェクト」を「障害物オブジェクト」としている点において両者は相違する。なお、引用発明の「障害物となるオブジェクト」は、本願発明の「障害物オブジェクト」と同意である。

よって、本願発明の構成(C)と引用発明の構成(d)は、『前記判定用位置と障害物オブジェクトとが衝突するか否かを判定する障害物判定手段』である点で一致しているものの、「判定用位置」が、上述のとおり本願発明と引用発明とでは異なることの他に、「障害物オブジェクト」が、本願発明では「前記所定のオブジェクト以外のオブジェクト」であるのに対して、引用発明では「プレイヤキャラクタ及びノンプレイヤキャラクタ以外のオブジェクト」である点で、両者は相違する。

(4)本願発明の構成(D)と引用発明の構成(e)との対比
本願発明の「前記障害物オブジェクトと前記判定用座標とが衝突すると判定したとき」と、引用発明の「カメラコリジョンの範囲内に障害物となるオブジェクトが存在する場合」とを対比すると、上記(2)で検討したように、本願発明の「判定用座標」と引用発明の「カメラコリジョン」は相違し、また、上記(3)で検討したように、両者は「障害物オブジェクト」の定義において相違するものの、上記(2)及び(3)の検討を参酌すれば、両者は『前記障害物判定手段が、前記障害物オブジェクトと前記判定用位置とが衝突すると判定したとき』である点で共通するものである。
続いて、上記の場合の仮想カメラの動きについて検討する。
引用発明のカメラコリジョンは、上記(2)において検討したように、カメラ周辺領域の各位置からプレイキャラクタの位置までの間に障害物となるオブジェクトが存在するかどうか判定するための領域であり、カメラ周辺領域の各位置からプレイキャラクタの位置への視線が、障害物となるオブジェクトにより遮られる状態であるかを判定するための領域であるから、引用発明は、カメラコリジョンに障害物が存在しない場合、仮想カメラの視点とプレイヤキャラクタの位置を結ぶ直線上にも当然に障害物は存在しない。
よって、引用発明の「カメラコリジョンに障害物が存在しなくなる位置まで」、「仮想カメラの視点の位置をプレイヤキャラクタの方向に近付ける手段として機能させる」ことは、本願発明の「障害物オブジェクトが仮想カメラと所定オブジェクトとの間の視線上に存在しないように」、「仮想カメラを移動させる迂回手段として機能させる」ことに相当する。
また、引用発明の「仮想カメラの位置の視点をプレイヤキャラクタの方向に近付ける」動きは、「仮想カメラの視軸の方向をプレイヤキャラクタに向けたまま」行われることから、本願発明のように「所定オブジェクトに追従するように」動いていることは明らかである。
よって、引用発明の「カメラコリジョンに障害物が存在しなくなる位置まで、仮想カメラの視軸の方向をプレイヤキャラクタに向けたまま、仮想カメラの視点の位置をプレイヤキャラクタの方向に近付ける手段として機能させる」ことは、本願発明の「前記障害物オブジェクトが仮想カメラと所定オブジェクトとの間の視線上に存在しないように、かつ、前記所定オブジェクトに追従するように、前記仮想カメラを移動させる迂回手段として機能させる」ことと一致する。

以上のことから、本願発明の構成(D)と引用発明の構成(e)は、「判定用位置」及び「障害物オブジェクト」が相違することは前述のとおりであるものの、『前記障害物判定手段が、前記障害物オブジェクトと前記判定用位置とが衝突すると判定したとき、前記障害物オブジェクトが仮想カメラと所定オブジェクトとの間の視線上に存在しないように、かつ、前記所定オブジェクトに追従するように、前記仮想カメラを移動させる迂回手段として機能させる』ことである点で一致するものといえる。

(5)本願発明の構成(E)について
上記(2)において検討したように、「判定用位置設定手段」に関し、引用発明では、移動する仮想カメラにおいて、その移動する仮想カメラに対応したカメラコリジョンを設定する手段であるのに対し、本願発明では、「前記判定用座標設定手段は、仮想カメラの進行方向に基づいた所定の座標に少なくとも1つの前記判定用座標を設定する」ものである点で、両者は相違する。

(6)本願発明の構成(F)について
本願発明の「前記所定範囲(下線は当審にて付したもの)」という記載は、これ以前に「所定範囲」という記載はないためその示すところが不明であるあるものの、構成(F)と同じく「迂回手段」を特定する構成(D)の記載から、本願発明の構成(F)の障害物オブジェクトが存在しないようにする「前記所定範囲」は、構成(D)の障害物オブジェクトが存在しないようにする「仮想カメラと所定オブジェクトの間の視線上」と解釈するのが自然である。
そして、本願発明の構成(F)の「前記迂回手段は、前記仮想カメラを前記所定のオブジェクト周りを回転させる、あるいは、当該仮想カメラを当該所定のオブジェクトに近づけることで前記障害物オブジェクトが前記所定範囲内に存在しなくなるように当該仮想カメラを移動させる(下線は当審にて付したもの)」について、当該「あるいは」は択一的な記載であると解釈されることから、本願発明における迂回手段は、障害物オブジェクトが「仮想カメラと所定オブジェクトの間の視線上」に存在しなくなるような仮想カメラの移動方法として、「仮想カメラを前記所定のオブジェクト周りを回転させる」ことと「仮想カメラを当該所定のオブジェクトに近づける」ことのいずれかを実現するものと認められる。そして、上記(4)で検討したとおり、引用発明の構成(d)は後者の「仮想カメラを当該所定のオブジェクトに近づける」ことに対応するものである。
よって、引用発明の構成(e)の「カメラコリジョンに障害物が存在しなくなる位置まで、仮想カメラの視軸の方向をプレイヤキャラクタに向けたまま、仮想カメラの視点の位置をプレイヤキャラクタの方向に近付ける手段」は、本願発明の「前記迂回手段は、前記仮想カメラを前記所定のオブジェクト周りを回転させる、あるいは、当該仮想カメラを当該所定のオブジェクトに近づけることで前記障害物オブジェクトが前記所定範囲内に存在しなくなるように当該仮想カメラを移動させる」ことと一致する。

なお、仮に、本願発明の構成(F)の「あるいは」という記載について、「仮想カメラを前記所定のオブジェクト周りを回転させる」ことと「仮想カメラを当該所定のオブジェクトに近づける」ことの両者を実現することを意味するものと解釈したとしても、上記3(2)イ(ア)で検討したとおり、引用文献1には「カメラコリジョンの範囲内に障害物が存在する場合に、カメラコリジョンの範囲内に障害物が入らなくなるまで、仮想カメラの視点の位置をプレイヤキャラクタを原点とする極座標上で上方向に移動させること」が記載されており、この「仮想カメラの視点の位置をプレイヤキャラクタを原点とする極座標上で上方向に移動させること」は、前者の「仮想カメラを前記所定のオブジェクト周りを回転させる」ことに相当する。したがって、引用発明を上記3(2)イ(ア)で検討した技術を含めて認定すれば、本願発明の構成(F)は相違点とはならない。

(7)まとめ
上記(1)ないし(6)の対比結果をまとめると、本願発明と引用発明との[一致点]と[相違点]は以下のとおりである。

[一致点]
仮想空間内の所定のオブジェクトを仮想カメラで撮像した画像を表示する情報処理装置のコンピュータに実行させる情報処理プログラムであって、前記コンピュータを、
仮想カメラの移動に対応する仮想カメラから所定の位置に視線を遮る状態のオブジェクトが衝突するか否かを判定するための判定用位置を設定する判定用位置設定手段と、
前記判定用位置と障害物オブジェクトとが衝突するか否かを判定する障害物判定手段と、
前記障害物判定手段が、前記障害物オブジェクトと前記判定用位置とが衝突すると判定したとき、前記障害物オブジェクトが仮想カメラと所定オブジェクトとの間の視線上に存在しないように、かつ、前記所定オブジェクトに追従するように、前記仮想カメラを移動させる迂回手段として機能させ、
前記迂回手段は、前記仮想カメラを前記所定のオブジェクト周りを回転させる、あるいは、当該仮想カメラを当該所定のオブジェクトに近づけることで前記障害物オブジェクトが前記所定範囲内に存在しなくなるように当該仮想カメラを移動させる、
情報処理プログラム。

[相違点1]
「判定用位置設定手段」に関し、本願発明では、「仮想カメラの進行方向またはその逆方向に対応する方向における前記仮想カメラから所定の距離に1以上の判定用座標を設定する判定用座標設定手段」であり、「判定用座標設定手段は、仮想カメラの進行方向に基づいた所定の座標に少なくとも1つの前記判定用座標を設定する」ものであるのに対して、引用発明では、移動する仮想カメラにおいて、「仮想カメラの視点を中心とした所定の半径の球に設定されるカメラ周辺領域と、プレイヤキャラクタの位置を頂点としてカメラ周辺領域との間に形成される円錐形状のカメラ被写体間領域とから構成されるカメラコリジョンを設定する手段」である点。

[相違点2]
「障害物オブジェクト」が、本願発明では「前記所定のオブジェクト以外のオブジェクト」であるのに対して、引用発明では「プレイヤキャラクタ及びノンプレイヤキャラクタ以外のオブジェクト」である点。

6.判断
(1)相違点1について
引用発明は、移動する仮想カメラにおいて、仮想カメラの視点を中心とした所定の半径の球に設定されるカメラ周辺領域と、プレイヤキャラクタの位置を頂点としてカメラ周辺領域との間に形成される円錐形状のカメラ被写体間領域とから構成されるカメラコリジョンを設定するものである。また、上記4(2)イ(イ)で検討したとおり、引用文献1には、「仮想カメラの視点の位置が水平方向の高さを保って移動される場合には、カメラコリジョンを2次元の領域である平面形状に次元を落として設定することにより、カメラコリジョンに障害物が存在するかどうかの判定をより少ない計算量で実行すること」が記載されている。
この記載によれば、引用発明のビデオゲーム装置において、プレイヤキャラクタの移動の自由度を制限せずに仮想3次元空間内で任意の方向に移動させる場合は、カメラコリジョンを3次元の仮想カメラの視点を中心とした球形及び円錐のカメラ被写体間領域とするが、移動の自由度を高さ方向に制限を加えた場合には、カメラコリジョンを2次元の領域である仮想カメラの視点を中心とした円のカメラ周辺領域と三角形のカメラ被写体間領域とからなる平面形状に次元を落して障害物判定の処理負荷を削減するという技術思想が把握できる。そして、更に、プレイヤキャラクタの移動の自由度を制限して一方向とし、進行方向とその逆方向のみに制限すれば、カメラコリジョンは1次元の仮想カメラの視点の前後に延びる直線状のカメラ周辺領域と三角形のカメラ被写体間領域にとからなることは、当業者にとって自明のことである。

そして、引用発明のビデオゲーム装置において、プレイヤキャラクタの移動の自由度をどのようにするかは、ゲームのルールを設計する際に当業者が適宜設定し得る事項であり、引用発明に上記の技術思想を適用して、仮想カメラの視点の位置の移動方向の制約や障害物判定の処理負荷の削減の必要性に応じて、カメラコリジョンの領域を、平面形状や直線状に設定することは当業者であれば容易に想到し得るものである。
また、元々、カメラコリジョンは、仮想カメラの視点を中心としたカメラ周辺領域とプレイヤキャラクタの位置を頂点としてカメラ周辺領域との間に設定されるカメラ被写体間領域で構成されるところ、直線状まで領域を落とす場合に、仮想カメラの視点の周辺に任意の点を設けてその点とプレイヤキャラクタの位置を結んで直線状のカメラコリジョンとすること、並びに、障害物判定の精度を一定程度担保すべく、仮想カメラの進行方向に少なくとも当該任意の点を1つ設けることは、当業者であれば当然に想到し得るものである。
したがって、引用発明において、「判定用位置設定手段」を、相違点1に係る「仮想カメラの進行方向またはその逆方向に対応する方向における前記仮想カメラから所定の距離に1以上の判定用座標を設定する判定用座標設定手段」とし、「判定用座標設定手段は、仮想カメラの進行方向に基づいた所定の座標に少なくとも1つの前記判定用座標を設定する」ものとすることは、引用発明及び引用文献1に記載された技術に基づいて、当業者が容易に想到し得ることといえる。

(2)相違点2について
引用発明のような、仮想3次元空間においてプレイヤキャラクタを操作するビデオゲーム装置において、ユーザが操作するプレイヤキャラクタ以外のノンプレイヤキャラクタを登場させるか否か、また、ノンプレイヤキャラクタを登場させた場合に、そのノンプレイヤキャラクタを障害物となるオブジェクトとはせずに仮想カメラの視界に入れるか、障害物となるオブジェクトとして仮想カメラの視界から外れるようにするかは、ゲームのルールを設計する際に当業者が適宜設定し得る事項であり、引用発明において、プレイヤキャラクタ及びノンプレイヤキャラクタ以外のオブジェクトを障害物オブジェクトとしていたものを、プレイキャラクタ、すなわち前記所定のオブジェクト、以外のオブジェクトを障害物オブジェクトとすることは、当業者が適宜なし得ることである。

(3)効果等について
本願発明の構成は、上記のように当業者が容易に想到できたものであるところ、本願発明が奏する効果は、その容易想到である構成から当業者が容易に予測しうる範囲内のものであり、同範囲を超える格別顕著なものがあるとは認められない。

(4)請求人の主張について
請求人は、審判請求書の「(3-2)補正後の請求項について」において、「補正後の請求項1は、仮想カメラの進行方向に基づいた所定の座標に判定用座標を設定する構成です。すなわち、座標という「点」を設定するものといえます。対して、引例1では、「カメラ周辺領域」という「領域」を設定するものとなっております。すなわち、仮想カメラの進行方向に着目するというものではなく、仮想カメラ周辺を全て判定対象として設定するものです。そのため、引例では、この領域内の全てについて判定処理が必要となりますが、本願では、上記判定用座標という点に基づいた判定処理を行うだけで済むため、引例の技術に比べて、余計な判定処理を削減できるという利点があります。また、引例では、領域という構成を用いていることから、カメラ周辺領域の大きさを変化させるような処理も行っていますが、本願の構成では、このような処理も不要となります。」と主張する。
しかしながら、上記(1)において検討したように、引用発明において、プレイキャラクタの移動の自由度を制限してカメラコリジョンを判定用座標とし、処理負担を削減することは、当業者が容易に想到し得たことであるから、上記請求人の主張は採用できない。

7.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用文献1に記載された発明及び技術に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2018-08-24 
結審通知日 2018-08-28 
審決日 2018-09-10 
出願番号 特願2013-117070(P2013-117070)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06T)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 村松 貴士  
特許庁審判長 鳥居 稔
特許庁審判官 小池 正彦
清水 正一
発明の名称 情報処理プログラム、情報処理システム、情報処理装置、および情報処理方法  
代理人 特許業務法人 小笠原特許事務所  
代理人 石原 盛規  
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