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審決分類 |
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 C23C |
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管理番号 | 1345551 |
審判番号 | 不服2017-18338 |
総通号数 | 228 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2018-12-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2017-12-08 |
確定日 | 2018-11-20 |
事件の表示 | 特願2013- 89834「磁性部品、および当該磁性部品を備えた電子部品」拒絶査定不服審判事件〔平成26年11月17日出願公開、特開2014-214319、請求項の数(4)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成25年 4月22日を出願日とする出願であって、平成28年10月 4日付けで拒絶理由通知がされ、同年12月 6日付けで、意見書の提出及び手続補正がされ、平成29年 2月27日付けで拒絶理由通知(最後)がされ、同年 9月 7日付けで拒絶査定(原査定)がされ、これに対し、同年12月 8日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正がされ、平成30年 7月 9日付けで拒絶理由通知(以下、「当審拒絶理由通知」という。)がされ、同年 8月31日付けで意見書の提出及び手続補正がされたものである。 第2 原査定の概要 原査定(平成29年 9月 7日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。 本願請求項1?4に係る発明は、以下の引用文献1、2に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 引用文献等一覧 1.特開昭50-102522号公報 2.特開昭63-26323号公報 第3 前置報告の概要 前置報告(平成30年 2月 6日付け)の概要は次のとおりである。 (前置1)本願請求項1?4に係る発明は、「合金層の厚さ」がどのように定められる厚さであるのか明確でないから、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしておらず、特許を受けることができない。 (前置2)本願請求項3?4に係る発明は、「合金層中の任意の複数の位置」の選び方によって、「合金層中の上記Cr、VおよびTiからなる群より選ばれる1以上の元素の含有量の最大値の合計」が一義的に定まらないので、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしておらず、特許を受けることができない。 第4 当審拒絶理由通知の概要 当審拒絶理由通知の概要は次のとおりである。 本願請求項3?4に係る発明は、「合金層中の任意の複数の位置」の選び方によって、「合金層中の上記Cr、VおよびTiからなる群より選ばれる1以上の元素の含有量の最大値の合計」が一義的に定まらないので、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしておらず、特許を受けることができない。 なお、上記当審拒絶理由は、上記(前置2)の内容と同様である。 第5 本願発明 本願請求項1?4に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」?「本願発明4」という。)は、平成30年 8月31日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1?4に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。 「【請求項1】 鉄系材料を加工してなる鉄系部品を備える磁性部品であって、 上記鉄系部品は、当該鉄系部品の表面に、Cr、VおよびTiからなる群より選ばれる1以上の元素が拡散浸透している合金層を備えており、 上記合金層の厚さは5μm以上60μm以下であり、 上記鉄系材料の炭素含有量が0重量%以上0.15重量%未満であり、 上記鉄系部品の結晶粒度は、JIS G0551(2005)に規定されるフェライト結晶粒度番号が-1以下であることを特徴とする磁性部品。 【請求項2】 上記合金層の厚さが5μm以上35μm以下であることを特徴とする請求項1に記載の磁性部品。 【請求項3】 上記合金層中の上記Cr、VおよびTiからなる群より選ばれる1以上の元素の含有量の最大値の合計が20重量%以上65重量%以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の磁性部品。 【請求項4】 請求項1?3のいずれか1項に記載の磁性部品を備えていることを特徴とする電子部品。」 第6 引用文献 1.引用文献1について ア 平成29年 9月 7日付けの拒絶査定に引用された引用文献1には、以下の事項が記載されている。なお、下線は当審が付与した。以下同様。 「【特許請求の範囲】 Fe、AlおよびSiを主成分とする磁気ヘッド用チップの焼鈍時に、チップ表面からCrを拡散浸透させることによって耐食性を向上させることを特徴とする高透磁率Fe-Al-Si合金チップの製造方法。」 「発明者らは、このような磁束密度の大幅な低下を伴なわないセンダスト系合金の耐食性向上方法として、センダスト系合金チップの表面からCrを拡散滲透させてチップの表面にのみ高Cr濃度の合金層を形成する方法について検討し、その効果の大きいことを見い出した。」(第2頁左上欄最終行?右上欄第5行) 「以下、本発明をその実施例にもとづいて説明する。 5.4%Al-9.6%Si-残部Feよりなる、いわゆるセンダスト合金のリング試片(0.5mm厚×10mm外径×6mm内径)および磁気ヘッドチップにつき試料に直接金属Crが触れないように、アルミナ粉末で覆った外からCr粉末とアルミナ粉末の混合粉末で覆い、水素ガス中にて1200℃×1時間の焼鈍を行なったところ、第1表に示した如く、その磁気特性は磁束密度B_(10) 9,800G、初透磁率μ_(0) 26,000、保持力Hc 0.04Oeであり、Crを拡散していない本来のセンダスト合金のB_(10) 10,000G、μ_(0) 30,000、Hc 0.03Oeと比べて殆んど遜色のない優れた磁気特性を有し、耐食性の優れた磁気ヘッド用チップ片が得られた。」(第2頁右上欄第15行?左下欄第9行) 2.引用文献2について ア 平成29年 9月 7日付けの拒絶査定に引用された引用文献2には、以下の事項が記載されている。 「【特許請求の範囲】 鋼板に対して蒸着処理を施すことにより、前記鋼板の表面にケイ素を蒸着させ、次いで、常圧より低い圧力の無酸化ガス雰囲気中で、前記鋼板に対して拡散処理を施すことにより、前記蒸着させたケイ素を前記鋼板中に拡散させることを特徴とする、処理鋼板の製造方法。」 「ケイ素を均質に含有させた高ケイ素鋼板」(第1頁右欄第15行) 「しかしながら、このような従来の滲珪法によって得られた高ケイ素鋼板は、組織の結晶粒度が必ずしも大きくないので、磁気特性が良くない。そのため、拡散処理後に高ケイ素鋼板に真空焼鈍等の後処理を施して、結晶粒度を改善する必要があった。 〔発明の目的〕 この発明の目的は、上述の現状に鑑み、ケイ素を蒸着させた鋼板の拡散処理時に、ケイ素を拡散させると同時に組織の結晶粒の成長を促進させて、結晶粒を容易に所望の大きい粒度にさせた、磁気特性の良好な高ケイ素鋼板を得ることができる、製造方法を提供することにある。」(第1頁右欄第17行?第2頁左上欄第9行) 第7 対比・判断 1.本願発明1について (1)引用発明 上記第6の1より、引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 (引用発明) 「5.4%Al-9.6%Si-残部Feよりなる、センダスト合金の表面からCrを拡散浸透させて、表面にのみ高Cr濃度の合金層を形成した、優れた磁気特性を有し、耐食性の優れた磁気ヘッドチップ片。」 (2)対比 本願発明1と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。 本願発明1の「鉄系材料」は「鉄を主成分とする鉄合金全般」(本願の発明の詳細な説明の【0042】)を意味するから、引用発明における「5.4%Al-9.6%Si-残部Feよりなる、センダスト合金」は、本願発明1の「鉄系材料」に相当する。 また、引用発明における「磁気ヘッドチップ片」と、本願発明1の「磁性部品」とは「磁性部品」である点で一致し、引用発明の「磁気ヘッドチップ片」は、「5.4%Al-9.6%Si-残部Feよりなる、センダスト合金」の「表面からCrを拡散浸透させて」いるから、本願発明1の「鉄系材料を加工してなる鉄系部品を備える磁性部品」に相当する。 したがって、本願発明1と引用発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。 (一致点) 「鉄系材料を加工してなる鉄系部品を備える磁性部品であって、 上記鉄系部品は、当該鉄系部品の表面に、Crが拡散浸透している合金層を備えている、磁性部品。」 (相違点) (相違点1)本願発明1は、「合金層の厚さは5μm以上60μm以下」であるのに対し、引用発明は、合金層の厚さが不明である点。 (相違点2)本願発明1は、「鉄系材料の炭素含有量が0重量%以上0.15重量%未満」であるのに対し、引用発明は鉄系材料の炭素含有量が不明である点。 (相違点3)本願発明1は、「鉄系部品の結晶粒度は、JIS G0551(2005)に規定されるフェライト結晶粒度番号が-1以下」であるのに対し、引用発明は鉄系材料の結晶粒度が不明である点。 (3)相違点についての判断 (相違点1)について ア 引用文献1には、Crの拡散浸透処理について、記載事項アに、水素ガス中にて1200℃、1時間の焼鈍を行うことが記載されている。 イ 一方、本願の発明の詳細な説明には、以下の記載がある。 「【0083】 <処理時間および処理温度> 上記拡散浸透処理において、処理時間は5時間以上15時間以下であることが好ましく、8時間以上10時間以下であることがより好ましい。また、上記拡散浸透処理において、処理温度は750℃以上950℃以下であることが好ましく、750℃以上900℃以下であることがより好ましく、750℃以上900℃未満であることがさらに好ましく、750℃以上850℃以下であることが特に好ましい。 【0084】 処理時間が5時間以上であり、かつ、処理温度が750℃以上であれば、合金層の厚さを、耐摩耗性および耐食性を備えるために十分な厚さとすることができるともに、金属組織を十分に成長させることができる。また、処理時間が15時間以下であり、処理温度が950℃以下であれば、合金層の厚さを、磁気抵抗を増加させない程度の厚さ、かつ、金属組織の成長を妨げない厚さに制御することができる。 【0085】 上記「耐摩耗性および耐食性を備えるために十分な厚さ」であるとともに「磁気抵抗を増加させない程度の厚さ、かつ、金属組織の成長を妨げない厚さ」である合金層の厚さとは、例えば、5μm以上60μm以下であり、より好ましくは5μm以上35μm以下である。 【0086】 また、上記合金層形成工程において、上述の処理時間および処理温度とすることによって、上記鉄系部品の結晶粒を、JIS G0551(2005)に規定されるフェライト結晶粒度番号1以下になるまで成長させることが好ましい。上記構成によれば、上記鉄系部品の金属組織が十分に成長しているため、優れた磁気特性を有する磁性部品を製造することができる。」 「【0095】 実施例1?5および比較例1?2では、上記ヨークおよびリングに対して、異なる温度条件にて拡散浸透処理を行い、試験片を作製した。当該拡散浸透処理は、クロム粉末40?80重量%、アルミナ粉末19.5?59.5重量%、塩化アンモニウム粉末0.5重量%を混合してなる浸透剤にヨークおよびリングを埋め込み、半密閉容器に充填し、水素ガスを流しながら700℃(比較例1)、750℃(実施例1)、800℃(実施例2)、850℃(実施例3)、900℃(実施例4)、950℃(実施例5)または1000℃(比較例2)にて10時間加熱して行った。比較例3では、Niメッキを施されたヨークおよびリングを試験片として用いた。上記ヨークを用いて、合金層の厚さ、拡散浸透した元素の濃度、耐食性、耐摩耗性、および吸引力を調査し、拡散浸透処理による部品の品質改善効果を確認した。また、上記リングを用いて、保磁力の試験を行った。」 「【0104】 【表1】 」 ウ 上記イの表1より、処理温度が700℃では、合金層の厚さは3μmであり、処理温度が1000℃では、合金層の厚さは80μmであることが読み取れる。また、上記イによれば、本願発明1における「合金層の厚さは5μm以上60μm以下」との事項は、処理時間が5時間以上15時間以下、処理温度が750℃以上950℃以下の拡散浸透処理によって形成されることが読み取れる。 エ しかしながら、引用文献1では、拡散浸透処理を、1200℃、1時間で行っており、拡散浸透処理の処理温度、処理時間ともに、本願発明1の条件と異なっているから、引用発明において、合金層の厚さが、本願発明1と同様の「5μm以上60μm以下」となっているとまではいえない。 オ 本願発明1の「合金層の厚さ」は、「耐摩耗性および耐食性を備えるために十分な厚さ」であるとともに「磁気抵抗を増加させない程度の厚さ、かつ、金属組織の成長を妨げない厚さ」である合金層の厚さであるところ、上記第6の1のように引用文献1には、「耐摩耗性」「耐食性」「磁気特性」の全てを考慮して、「合金層の厚さ」を「5μm以上60μm以下」とすることは、記載も示唆もされていない。 また、引用文献2にも、上記第6の2のように、「耐摩耗性」「耐食性」「磁気特性」の全てを考慮して、「合金層の厚さ」を「5μm以上60μm以下」とすることは、記載も示唆もされていない。 カ 以上のとおり、引用文献1、引用文献2には、「合金層の厚さ」を「5μm以上60μm以下」とすることは記載も示唆もないから、引用発明において、当業者が「合金層の厚さは5μm以上60μm以下」とする積極的な動機付けを見いだすことができない。 したがって、引用発明において、相違点1に係る事項を備えるとすることは、当業者にとって容易であるということはできない。 キ よって、他の相違点について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても引用発明、引用文献2に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。 2.本願発明2?4について 本願発明2?4は、本願発明1の、上記相違点1に係る事項を有するものであるから、上記本願発明1の判断と同様に、当業者であっても、引用発明、引用文献2に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。 3.まとめ 以上より、原査定を維持することはできない。 第8 当審拒絶理由についての判断 平成30年 8月31日付けの補正により、補正後の請求項3?4は、「任意の複数の位置における」との記載が削除された。 よって、本願発明3?4は、明確であるといえる。 第9 前置報告について (前置1)について ア 本願の発明の詳細な説明には、以下の記載がある。 「【0096】 <合金層の厚さ、表面クロム濃度> 合金層の厚さは上記ヨークをカットし、その断面を観察することによって計測した。当該合金層の厚さは10か所について計測し、その平均を求めた。また、表面クロム濃度は、SEMによる表面元素分析およびEPMAによる元素濃度分析によって計測した。」 「【0116】 〔実施例6〕 低炭素鋼(SPCC、炭素量0.01重量%)を用いて加工したヨーク(図2におけるz軸方向における最大の長さ22mm、x軸方向における最大の長さ11mm、幅(y軸方向の長さ)11.5mm)に以下の条件にて拡散浸透処理を施した。 浸透剤の組成:クロム粉末(40重量%)、アルミナ粉末(59.5重量%)、塩化アン モニウム粉末(0.5重量%) 処理温度:800℃ 処理時間:5時間 その結果、合金層の厚さ15μm、表面クロム濃度30%のヨークが得られた。EPMA分析装置による合金層断面のクロム濃度分析値を図14(a)に示す。」 「【0118】 〔実施例7〕 低炭素鋼(SPCC、炭素量0.01重量%)を用いて加工したヨーク(図2におけるz軸方向における最大の長さ22mm、x軸方向における最大の長さ11mm、幅(y軸方向の長さ)11.5mm)に以下の条件にて拡散浸透処理を施した。 浸透剤の組成:フェロバナジウム粉末(50重量%)、アルミナ粉末(49.5重量%)、塩化アンモニウム粉末(0.5重量%) 処理温度:930℃ 処理時間:5時間 その結果、厚さ20μm、表面バナジウム濃度49%のヨークが得られた。EPMA分析装置による合金層断面のバナジウム濃度分析値を図14(b)に示す。」 「【0122】 〔実施例9〕 低炭素鋼(SPCC、炭素量0.01重量%)を用いて加工したヨーク(図2におけるz軸方向における最大の長さ22mm、x軸方向における最大の長さ11mm、幅(y軸方向の長さ)11.5mm)に以下の条件にて拡散浸透処理を施した。 浸透剤の組成:クロム粉末(40重量%)、アルミナ粉末(59.5重量%)、塩化アンモニウム粉末(0.5重量%) 処理温度:800℃ 処理時間:13時間 その結果、合金層の厚さ15μm、表面硬度270mHv、表面クロム濃度33%のヨークが得られた。EPMA分析装置による合金層断面のクロム濃度分析値を図15(a)に示す。」 「【0124】 〔実施例10〕 低炭素鋼(SPCC、炭素量0.12重量%)を用いて加工した鉄片(図2におけるx軸方向における最大の長さ13.5mm、z軸方向における最大の長さ8.5mm、幅(y軸方向の長さ)11.5mm)に以下の条件にて拡散浸透処理を施した。 浸透剤の組成:クロム粉末(40重量%)、アルミナ粉末(59.5重量%)、塩化アンモニウム粉末(0.5重量%) 処理温度:880℃ 処理時間:8時間 その結果、合金層の厚さ29μm、表面硬度310mHv、表面クロム濃度42%の鉄片が得られた。EPMA分析装置による合金層断面のクロム濃度分析値を図15(b)に示す。」 「【0126】 〔実施例11〕 低炭素鋼(SPCC、炭素量0.07重量%)を用いて加工した鉄心(直径φ7mm、長さ20.5mm)に以下の条件にて拡散浸透処理を施した。 浸透剤の組成:クロム粉末(40重量%)、アルミナ粉末(59.5重量%)、塩化アンモニウム粉末(0.5重量%) 処理温度:930℃ 処理時間:6時間 その結果、合金層の厚さ38μm、表面硬度360mHv、表面クロム濃度49%の鉄心が得られた。EPMA分析装置による合金層断面のクロム濃度分析値を図15(c)に示す。」 「【0128】 〔実施例12〕 低炭素鋼(SPCC、炭素量0.01重量%)を用いて加工した鉄心(直径φ7mm、長さ20.5mm)に以下の条件にて拡散浸透処理を施した。 浸透剤の組成:フェロバナジウム粉末(50重量%)、アルミナ粉末(49.5重量%)、塩化アンモニウム粉末(0.5重量%) 処理温度:930℃ 処理時間:7時間 その結果、厚さ16μm、表面硬度410mHv、表面バナジウム濃度43%のヨークが得られた。EPMA分析装置による合金層断面のバナジウム濃度分析値を図15(d)に示す。」 「【図14】 」 「【図15】 」 イ 上記アの 実施例6(【0116】)の「合金層の厚さ15μm」との記載と、図14(a)、 実施例7(【0118】)の「合金層の厚さ20μm」との記載と、図14(b)、 実施例9(【0122】)の「合金層の厚さ15μm」との記載と、図15(a)、 実施例10(【0124】)の「合金層の厚さ29μm」との記載と、図15(b)、 実施例11(【0126】)の「合金層の厚さ38μm」との記載と、図15(c)、 実施例12(【0128】)の「合金層の厚さ16μm」との記載と、図15(d) をそれぞれ見比べると、「合金層」の厚さは、CrやVのEPMAによる元素濃度分析による濃度が0になるところまでの厚さであることを理解することができる。 また、上記アの【0096】の記載と上記各実施例、図面の記載によれば、「合金層の厚さ」は、表面から、Cr、VおよびTiからなる群より選ばれる1以上の元素のEPMAによる元素濃度分析による濃度が0になるところまでの厚さであり、10か所について計測した平均であることを理解することができる。 よって、「合金層の厚さ」がどのように定められる厚さであるのかは、明細書の記載から一意に定まるから、請求項1?4に係る発明は、明確であるといえる。 (前置2)について 上記第4のとおり、(前置2)は、当審拒絶理由の内容と同様である。 そして、上記第8のとおり、平成30年 8月31日付けの補正により、補正後の請求項3?4は、「任意の複数の位置における」との記載が削除された。 よって、本願発明3?4は、明確であるといえる。 第10 むすび 以上のとおりであるから、原査定の理由及び当審から通知した拒絶理由のいずれによっても、本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2018-11-05 |
出願番号 | 特願2013-89834(P2013-89834) |
審決分類 |
P
1
8・
537-
WY
(C23C)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 辰己 雅夫、祢屋 健太郎、印出 亮太 |
特許庁審判長 |
中澤 登 |
特許庁審判官 |
長谷山 健 結城 佐織 |
発明の名称 | 磁性部品、および当該磁性部品を備えた電子部品 |
代理人 | 村上 尚 |
代理人 | 村上 尚 |