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審決分類 |
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 G02B 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G02B |
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管理番号 | 1345561 |
審判番号 | 不服2017-14665 |
総通号数 | 228 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2018-12-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2017-10-03 |
確定日 | 2018-11-20 |
事件の表示 | 特願2016-104913「偏光板、及び液晶表示装置」拒絶査定不服審判事件〔平成29年11月30日出願公開、特開2017-211515、請求項の数(6)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 平成28年 5月26日 出願 平成28年 8月29日 拒絶理由通知 平成28年12月 2日 意見書、手続補正書 平成29年 2月28日 拒絶理由通知 平成29年 4月21日 意見書、手続補正書 平成29年 6月29日 拒絶査定(以下、「原査定」という。) 平成29年10月 3日 審判請求書 平成30年 7月17日 拒絶理由通知 平成30年 9月21日 意見書、手続補正書 第2 本願発明 この出願の請求項1-6に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明6」という。)は、平成30年9月21日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1-6に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。 「【請求項1】 偏光子と、その片面のみに接着剤を介して積層された保護フィルムと、を備え、 前記保護フィルムは、所定の形状に成形されたものであり、 前記保護フィルムは、前記偏光子の片面の全面に積層されており、 前記偏光子の少なくとも一部の端部が、前記保護フィルムの端部よりも0.05mm内側に位置している、偏光板。 【請求項2】 前記偏光子の全ての端部が、前記保護フィルムの端部よりも内側に位置している、請求項1記載の偏光板。 【請求項3】 前記偏光子における前記保護フィルムが積層されている側とは反対側の面、及び、前記保護フィルムにおける前記偏光子が積層されている側とは反対側の面の少なくとも一方の面に積層された粘着剤層を更に備える、請求項1又は2記載の偏光板。 【請求項4】 前記粘着剤層を介して積層された光学機能フィルムを更に備える、請求項3記載の偏光板。 【請求項5】 前記光学機能フィルムは、反射型偏光子である、請求項4記載の偏光板。 【請求項6】 請求項1?5のいずれか一項記載の偏光板を備える液晶表示装置。」 第3 引用文献・引用発明等 1 引用文献1 (1)記載事項 原査定の拒絶の理由に引用された特開2006-88651号公報(以下、「引用文献1」という。)には、次の事項が記載されている(下線は当合議体にて付した。以下同じ。)。 ア 「【請求項14】 偏光子の少なくとも一方の面に保護フィルムが設けられた偏光板であって、 前記偏光子の少なくとも一方の面に保護フィルムを配し、前記偏光子と保護フィルムとの貼り合わせ部分に接着液を供給し、かつ、保護フィルムの少なくとも一方の端に向かって流れようとする接着液に抗する液体を、保護フィルムの少なくとも一方の端から供給しながら、前記偏光子と保護フィルムとを押圧により貼り合わせて得られたものであることを特徴とする偏光板。」 イ 「【技術分野】 【0001】 本発明は、フィルムの少なくとも一方の面に他のフィルムが接着液を介して設けられたフィルム積層物の製造方法、それに用いる製造装置、該製造方法により得られるフィルム積層物、該製造方法により得られる偏光板、該偏光板を備えた光学フィルム及び画像表示装置に関する。 ・・・(省略)・・・ 【発明が解決しようとする課題】 【0009】 本発明は前記問題点に鑑みなされたものであり、フィルムの貼り合わせの際、例えば偏光子と保護フィルムとの貼り合わせの際に、接着液が貼り合わせ面から漏出するのを固化させることなく防止することが可能なフィルム積層物の製造方法を提供することを目的とする。また、掃除や手入れが容易で、接着液が貼り合わせ面から漏出するのを固化させることなく防止することが可能なフィルム積層物の製造装置を提供することを目的とする。さらに、前記製造方法により得られるフィルム積層物、端部まで利用可能な偏光板、それを備えた光学フィルム及び画像表示装置を提供することを目的とする。」 ウ 「【発明を実施するための最良の形態】 【0048】 本発明の実施の一形態について、図1?図5を参照しながら以下に説明する。但し、説明に不要な部分は省略し、また説明を容易にする為に拡大または縮小等して図示した部分がある。 【0049】 先ず、本発明に係るフィルム積層物の製造方法について、偏光板を例にして以下に説明する。図1は、本発明の実施の形態に係る偏光板の製造方法を説明する為の斜視図である。図2は、前記偏光板の製造方法を説明する為の側面図である。図3は、図2の要部を拡大した拡大図である。図4は、前記偏光板の製造装置に係る吸引ノズルに於いて吸引口の開口部分の形状を示す模式図である。図5は、本実施の形態に係る偏光板を概略的に示す断面模式図である。 【0050】 図1及び図2に示すように、先ず、偏光子(フィルム)1の両側に保護フィルム(他のフィルム)2をそれぞれ配し、偏光子1を保護フィルム2で挟み込んだ状態にする。その状態で保護フィルム2と共に偏光子1を、同図に於ける上方から下方に向けて垂直方向に搬送する。但し、本発明に於いては、必ずしも偏光子1及び保護フィルム2が垂直方向に搬送される場合に限定されるものではなく、水平方向に搬送される場合にも適用可能であり、適宜必要に応じて変更できる。 【0051】 前記保護フィルム2は、幅方向に余長部9を有し、偏光子1よりも幅の大きい構成である。但し、本発明はこれに限定されるものではなく、偏光子1と同一サイズの保護フィルムを用いてもよい。尚、偏光子1及び保護フィルム2についての詳細は後述する。 【0052】 偏光子1と保護フィルム2との貼り合わせ部分には、接着剤液供給ノズル(接着剤液供給手段)11により接着液3が供給される。接着剤液供給ノズル11は、偏光子1の両面側にそれぞれ配置されている。接着液3の供給方法としては、特に限定されるものではなく、例えば滴下法等が採用できる。接着液3の供給位置は、特に限定されるものではなく、適宜必要に応じて決定すればよい。例えば、貼り合わせ部分の近傍であって、幅方向に於ける中央付近から接着液3を滴下してもよい。また、保護フィルム2上の貼り合わせ部分から所定の距離だけ離隔した位置に接着液3を滴下させ、接着液3を貼り合わせ部分に流し込む様にしてもよい。但し、この場合、保護フィルム2は、水平方向よりも上方に所定の角度で傾斜している必要がある。さらに、滴下位置は複数箇所にしてもよい。 【0053】 貼り合わせ部分に供給された接着液3は、偏光子1(または保護フィルム2)の幅方向の全面にわたって液溜り12を形成する。この液溜り12を通過した偏光子1及び保護フィルム2に接着液3を均等に塗布することができる。 【0054】 接着液3の供給量、及び供給速度等は、使用する接着液3の種類や粘度等に応じて適宜最適値に設定される。 【0055】 接着液3を構成する接着剤は、特に限定されるものではなく、従来公知の種々のものを採用することができる。 ・・・(省略)・・・ 【0058】 ここで、保護フィルム2の両端側に向かって流れようとする接着液3に対し、保護フィルム2の両端側から幅方向の中央部分に向かうように液体6を供給する。液体6の供給は、供給ノズル(液体供給手段)5を用いて行う。供給ノズル5は、保護フィルム2の左右にそれぞれ配置されている。これは、偏光子1及び保護フィルム2は水平方向に平行となる様に配置されており、貼り合わせ部分もほぼ水平となっていることから、余分な接着液3が左右それぞれの方向に流動することによる。但し、偏光子1及び保護フィルム2が一方の側に傾斜して配置されている場合や、一対のロール4(後述する)が傾斜して配置されている場合には、それに応じて貼り合わせ部分も傾斜しているので、接着液3は一方の側に流動する。よって、その様な場合には供給ノズルを接着液3の下流側にのみ配置すれば足りる。液体6の供給により、保護フィルム2の両端側に向かって流れようとする余分な接着液3は、余長部9の範囲内で堰き止められ、接着液3の漏出が防止される。 【0059】 液体6の吐出量、吐出圧は、接着液3の流動を押し止めることが可能な範囲内に留める必要がある。必要以上に液体6の吐出量が多いと、接着液3が希釈され接着性の低下を招来するからである。また、液体6の吐出方向としては、幅方向に於ける中央部分に向かう方向に限定されず、接着液3の流出を押し止めることが可能な範囲内で種々の変更が可能である。 【0060】 ここで、供給ノズル5は、その供給口7が保護フィルム2の左右両側端より幅方向内側、即ち余長部9の形成領域内に位置するように設けられている。これにより、液体6が保護フィルム2の左右両側から漏出するのを防止する。また、貼り合わせ部分に液体6が供給されるのを防止し、貼り合わせ部分に於ける接着液3が希釈されるのを防ぐ。その結果、偏光子1の両端部に於いても十分な量の接着液3が供給されることを可能にし、偏光子1の端部に於いても保護フィルム2が確実に接着固定されることを可能にする。 ・・・(省略)・・・ 【0062】 また、本実施の形態に係る製造装置に於いては、図3に示すように、偏光子1と保護フィルム2との貼り合わせに寄与しない余分な接着液3を吸引除去する為の吸引ノズル(吸引手段)8が設けられている。これにより、貼り合わせに最適な量の接着剤液をムラなく、偏光子1の左右両端に到る全面に供給することができ、その結果、面内に於ける接着性にムラが無く面内均一な偏光板が得られる。尚、吸引ノズル8は、より詳細には余分な接着液3そのものを吸引するのではなく、液体6により希釈された状態にある接着液3を吸引する。接着液3そのものを吸引すると、円滑な吸引が阻害される上に、接着液3がやがて固化し吸引口10を塞ぐことになるからである。 【0063】 ここで、吸引ノズル8は、その吸引口10が余長部9の範囲内に位置するように設けられている。接着液3が液体6により希釈された状態で吸引を行う為である。また、吸引口10が偏光子1の端部の内側に設けられていると、端部では接着液3が液体6により希釈されるため、少なくとも端部では保護フィルム2との接着が不十分となるからである。尚、吸引ノズル8は供給ノズル5とは別個に配置しているので、その構造を簡素化できる。よって、掃除や手入れが容易となる。」 エ 「【0066】 前記の方法により得られた本実施の形態に係る偏光板(フィルム積層物)21は、図5に示すように、偏光子1の両面に保護フィルム2がそれぞれ積層された構成である。また、両端部は保護フィルム2同士が余長部9で接着された構造を有する。 ・・・(省略)・・・ 【0075】 また、保護フィルム2を偏光子1の一方の面にのみ貼り合わせ、他方の面に貼り合わせ無い場合には、該他方の面に、ハードコート層を形成する工程や反射防止処理、スティッキング防止や、拡散ないしアンチグレアを目的とした処理を施してもよい。 ・・・(省略)・・・ 【0095】 本発明に係る偏光板21及びそれを備えた光学フィルムは、液晶表示装置やエレクトロルミネセンス(EL)表示装置等の各種画像表示装置に適用できる。」 オ 「 【図1】 ![]() 【図5】 ![]() 」 (2)引用発明1 前記(1)アないしオ(特にア、ウ及びエ)によると、引用文献1には、保護フィルム2を偏光子1の一方の面にのみ貼り合わせ、他方の面に貼り合わせない場合(【0075】)の偏光板として、以下の発明が記載されていると認められる(以下、「引用発明1」という。)。 「 偏光子1の一方の面のみに保護フィルム2が設けられた偏光板であって、 偏光子1の一方の面に、幅方向に余長部9を有し、偏光子1よりも幅の大きい構成である保護フィルム2を配し、前記偏光子1と前記保護フィルム2との貼り合わせ部分に接着剤液供給ノズル11により接着液を供給し、かつ、前記保護フィルム2の両端側に向かって流れようとする接着液3に抗する液体6を、供給口7が前記余長部9の形成領域内に位置するように設けられている供給ノズル5を用いて、前記保護フィルム2の両端側から幅方向の中央部分に向かうように供給するとともに、吸引口10が前記余長部9の範囲内に位置するように設けられている吸引ノズル8を用いて、前記液体6により希釈された状態にある接着剤を、前記保護フィルムの両端側で吸引しながら、前記偏光子1と前記保護フィルム2とを押圧により貼り合わせて得られたものである偏光板。」 2 引用文献2 (1)記載事項 原査定の拒絶の理由に引用された国際公開第2011/001836号(以下、「引用文献2」という。)には、次の事項が記載されている。 ア 「技術分野 [0001] 本発明は、輝度向上フィルム、その製造方法、偏光板、および液晶表示装置に関する。 ・・・(省略)・・・ 発明が解決しようとする課題 ・・・(省略)・・・ [0005] 本発明は、コレステリック樹脂層を有する輝度向上フィルムにおいて、コレステリック樹脂層の変形および傷を付きにくくし、液晶表示装置として使用した場合に、薄型度、輝度や表示特性に優れる液晶表示装置を形成しうる偏光部材の開発を課題とする。 ・・・(省略)・・・ 図面の簡単な説明 [0009] ・・・(省略)・・・ [図4] 図4は、本発明の偏光板の他の実施形態を概念的に示す縦断面図であり、図3の実施態様と比較すると偏光板の保護フィルムの1枚を輝度向上フィルムで代用できることを示している。 イ 「[0102] 2.本発明の偏光板、液晶表示装置 本発明の偏光板、液晶表示装置は、前記本発明の輝度向上フィルムを備える。 ・・・(省略)・・・ [0106] 前記偏光板と前記透明保護フィルムを一体にする方法は特に制限されないが、例えば、これらの表面にプラズマ処理し次いでこれらを圧着する方法、粘着剤層又は接着剤層を介して積層する方法などが挙げられる。この場合、粘着剤及び接着剤は、積層の際、直接塗布することも可能だが、セパレーター上に接着剤又は粘着剤を塗布した上で、積層し、セパレーターを剥離することによって、粘着層又は接着層を形成することもできる。 [0107] 本発明の偏光板は偏光子の両面に透明保護フィルムを設け、一方の面に本発明の輝度向上フィルムを貼りあわせてもよく(図3の実施態様参照)、偏光子の片面に透明保護フィルムを設け、他方の面に本発明の輝度向上フィルムを貼りあわせることもできる(図4の実施態様参照)。偏光子の片側のみに透明保護フィルムを設け、片側に輝度向上フィルムを設ける実施態様では、少ないフィルム数によって、偏光子の保護をすることが可能となり、表示装置の薄型化を図ることができる。」 ウ 「符号の説明 [0152] 1.透明フィルム 2.接着層 3.コレステリック樹脂層 4.塗工基材 5.偏光板保護フィルム 6.偏光子 7.粘着層」 エ 「 [図4] ![]() 」 (2)引用発明2 前記(1)エから、縦断面において、偏光子の幅が偏光板保護フィルム(透明保護フィルム)の幅よりも小さいことが看取できる。そうすると、前記(1)アないしエ(特にイ及びエ)より、引用文献2には、偏光板として、以下の発明が記載されていると認められる(以下、「引用発明2」という。)。 「偏光子と、偏光子の片面に接着剤を介して積層された透明保護フィルムと、偏光子の他方の面に貼りあわされた輝度向上フィルムと、を備え、 縦断面において、偏光子の幅が透明保護フィルムの幅よりも小さい、偏光板。」 第4 対比・判断 1 本願発明1について (1)引用文献1を主引用文献とする場合 ア 対比 本願発明1と引用発明1とを対比する。 (ア)引用発明1の「偏光子1」、「保護フィルム2」は、技術的にみて、それぞれ、本願発明1の「偏光子」、「保護フィルム」に相当する。また、引用発明1の「偏光子1」と「保護フィルム2」は、「接着剤」を介して積層されているといえる。 そうしてみると、引用発明1の「偏光板」は、本願発明1の「偏光子と、その片面のみに接着剤を介して積層された保護フィルムと、を備え」という要件を満たしている。 (イ)引用発明1の「偏光板」は、各種画像表示装置に適用できるものである(引用文献1の【0095】)から、「偏光板」及びその構成要素である「保護フィルム2」は、所定の形状に成形されたものであるといえる。 そうしてみると、引用発明1の「保護フィルム2」は、本願発明1の「前記保護フィルムは、所定の形状に成形されたものであり」という要件を満たしている。 (ウ)引用発明1の「保護フィルム2」は、「偏光子1」を保護するためものであるから、引用発明1の「保護フィルム2」は、「偏光子1」の片面の全面に積層されているといえる。 そうしてみると、引用発明1の「偏光板」は、本願発明1の「前記保護フィルムは、前記偏光子の片面の全面に積層されており」という要件を満たしている。 (エ)引用発明1の「保護フィルム2」は、「幅方向に余長部9を有し、偏光子1よりも幅の大きい構成である」から、引用発明1では、偏光子1の少なくとも一部の端部が、保護フィルム2の端部よりも内側に位置しているといえる。 そうしてみると、引用発明1の「偏光板」は、本願発明1の「前記偏光子の少なくとも一部の端部が、前記保護フィルムの端部よりも」「内側に位置している」という要件を満たしている。 (オ)以上によれば、両者は以下の点で一致する。 <一致点> 「偏光子と、その片面のみに接着剤を介して積層された保護フィルムと、を備え、 前記保護フィルムは、所定の形状に成形されたものであり、 前記保護フィルムは、前記偏光子の片面の全面に積層されており、 前記偏光子の少なくとも一部の端部が、前記保護フィルムの端部よりも内側に位置している、偏光板。」 (カ)他方、両者は以下の点で相違する。 <相違点1> 本願発明1では、「前記偏光子の少なくとも一部の端部が、前記保護フィルムの端部よりも0.05mm内側に位置してい」るのに対し、引用発明1では、偏光子1の少なくとも一部の端部が、保護フィルム2の端部よりもどの程度内側に位置しているのかが明らかでない点。 イ 判断 引用発明1の「余長部9」は、その範囲内に、液体6を供給するための供給ノズル5(引用文献1の【0058】-【0060】)や液体6により希釈された状態にある接着液3を吸引する吸引ノズル8(引用文献1の【0062】-【0063】)を配置するために備えられているから、技術常識を踏まえると、引用発明1の「余長部9」は、0.05mmよりもはるかに大きくなっているといえる。 そうしてみると、引用発明1において、「余長部9」を0.05mm程度とすること、すなわち、偏光子1の少なくとも一部の端部を、保護フィルム2の端部よりも0.05mm程度内側に位置させることは想定されていないから、相違点1に係る本願発明1の構成を得ることは、当業者が容易になし得たことであるとはいえない。 したがって、本願発明1は、引用文献1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (2)引用文献2を主引用文献とする場合 ア 対比 本願発明1と引用発明2とを対比する。 (ア)引用発明2の「偏光子」、「透明保護フィルム」は、技術的にみて、それぞれ、本願発明1の「偏光子」、「保護フィルム」に相当する。また、引用発明1は「偏光子と、偏光子の片面に接着剤を介して積層された透明保護フィルムと、」「を備え」、「透明保護フィルム」は、偏光子の片面のみに積層されている。 そうしてみると、引用発明2の「偏光板」は、本願発明1の「偏光子と、その片面のみに接着剤を介して積層された保護フィルムと、を備え」という要件を満たしている。 (イ)引用発明2の「偏光板」は、液晶表示装置に用いられるものである(引用文献2の[0102])から、「偏光板」及びその構成要素である「透明保護フィルム」は、所定の形状に成形されたものであるといえる。 そうしてみると、引用発明2の「透明保護フィルム」は、本願発明1の「前記保護フィルムは、所定の形状に成形されたものであり」という要件を満たしている。 (ウ)引用発明2の「透明保護フィルム」は、「偏光子」を保護するためものであるから、引用発明2の「透明保護フィルム」は、「偏光子」の片面の全面に積層されているといえる。 そうしてみると、引用発明2の「偏光板」は、本願発明1の「前記保護フィルムは、前記偏光子の片面の全面に積層されており」という要件を満たしている。 (エ)引用発明2では、「縦断面において、偏光子の幅が透明保護フィルムの幅よりも小さい」から、偏光子の少なくとも一部の端部が、透明保護フィルムの端部よりも内側に位置しているといえる。 そうしてみると、引用発明2の「偏光板」は、本願発明1の「前記偏光子の少なくとも一部の端部が、前記保護フィルムの端部よりも」「内側に位置している」という要件を満たしている。 (オ)以上によれば、両者は以下の点で一致する。 <一致点> 「偏光子と、その片面のみに接着剤を介して積層された保護フィルムと、を備え、 前記保護フィルムは、所定の形状に成形されたものであり、 前記保護フィルムは、前記偏光子の片面の全面に積層されており、 前記偏光子の少なくとも一部の端部が、前記保護フィルムの端部よりも内側に位置している、偏光板。」 (カ)他方、両者は以下の点で相違する。 <相違点2> 本願発明1では、「前記偏光子の少なくとも一部の端部が、前記保護フィルムの端部よりも0.05mm内側に位置してい」るのに対し、引用発明2では、偏光子の少なくとも一部の端部が、透明保護フィルムの端部よりもどの程度内側に位置しているのかが明らかでない点。 イ 判断 引用文献2には、引用発明2において、偏光子の少なくとも一部の端部を、透明保護フィルムの端部よりも内側に位置させることの技術的意義が記載も示唆もされていないから、当業者であっても、偏光子の少なくとも一部の端部を、透明保護フィルムの端部よりもどの程度内側に位置させればよいかを理解することはできない。 そうしてみると、引用発明2において、偏光子の少なくとも一部の端部の位置を、透明保護フィルムの端部より0.05mm内側に設定することには、動機付けが存在しない。 したがって、引用発明2において、相違点2に係る本願発明1の構成を得ることは、当業者が容易になし得たことであるとはいえないから、本願発明1は、引用文献2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 2 本願発明2-本願発明6について 請求項2-請求項6は、いずれも、請求項1を直接又は間接的に引用するから、本願発明2-本願発明6は、いずれも、前記1の本願発明1についての判断と同様の理由により、引用文献1に記載された発明、又は引用文献2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 第5 原査定の概要及び原査定についての判断 1 原査定の拒絶の理由 原査定の拒絶の理由は、概略、次のとおりである。 (1)この出願の請求項1-6に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物である特開2006-88651号公報(引用文献1)に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 (2)この出願の請求項1-4、6に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった国際公開第2011/001836号(引用文献2)に記載された発明に基いて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 2 判断 上記第4のとおり、平成30年9月21日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1-6に係る発明である本願発明1-本願発明6は、いずれも、引用文献1に記載された発明、又は引用文献2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 したがって、原査定を維持することはできない。 第6 当審拒絶理由について 当合議体は、平成30年7月17日付けで、理由1(サポート要件:特許法36条6項1号)(当審拒絶理由)を通知したところ、平成30年9月21日に意見書及び手続補正書が提出された。 そして、当該手続補正書による補正で特許請求の範囲が補正されたことにより、また、当該意見書において釈明がなされたことにより、理由1は解消した。 第7 むすび 以上のとおり、本願発明1-本願発明6は、いずれも、引用文献1に記載された発明、又は引用文献2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2018-11-05 |
出願番号 | 特願2016-104913(P2016-104913) |
審決分類 |
P
1
8・
537-
WY
(G02B)
P 1 8・ 121- WY (G02B) |
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 池田 博一 |
特許庁審判長 |
中田 誠 |
特許庁審判官 |
関根 洋之 清水 康司 |
発明の名称 | 偏光板、及び液晶表示装置 |
代理人 | 阿部 寛 |
代理人 | 福山 尚志 |
代理人 | 吉住 和之 |
代理人 | 清水 義憲 |
代理人 | 三上 敬史 |
代理人 | 長谷川 芳樹 |