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審決分類 |
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 G02B |
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管理番号 | 1345654 |
審判番号 | 不服2017-4841 |
総通号数 | 228 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2018-12-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2017-04-06 |
確定日 | 2018-10-31 |
事件の表示 | 特願2014- 50458「リング結合器」拒絶査定不服審判事件〔平成26年10月16日出願公開、特開2014-197193〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成26年3月13日(パリ条約による優先権主張2013年3月15日、2014年3月12日、米国)の出願であって、その後の主な手続の経緯は、以下のとおりである。 平成26年 5月 2日:翻訳文提出書 平成27年 6月 5日:拒絶理由通知(6月11日発送) 同年11月10日:意見書・手続補正書 平成28年 4月12日:拒絶理由通知(4月19日発送) 同年 7月14日:意見書・手続補正書 同年11月29日:拒絶査定(12月6日送達) 平成29年 4月 6日:審判請求 第2 本願発明 本願の請求項1ないし8に係る発明は、平成28年7月14日付けの手続補正により補正された請求項1ないし8に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。 「第1の開口数(NA)を有し光を導く第1の端であって、連続した環状断面をさらに有する前記第1の端と、 第2のNAを有し光を導く第2の端であって、前記第1のNAは前記第2のNAよりも大きく、連続した円形断面をさらに有する前記第2の端と、 前記第1の端と前記第2の端との間の導波路であって、前記第1のNAから前記第2のNAに次第に移行する変化するNAを生じる前記導波路とを備え、 前記導波路が長さを有し、前記導波路の長さの方向に沿って減らない有効な断面積を前記導波路が有し、前記導波路は更に前記第1の端から前記第2の端の方向に次第に減少する外径を有する、装置。」(なお、下線は、請求人が手続補正書において付したものである。) 第3 刊行物 1 刊行物に記載された事項 (1)原査定の拒絶理由において引用文献7として引用された、本願の最先の優先日前に頒布された刊行物である特開昭50-23642号公報(以下「引用文献」という。)には、図とともに以下の記載がある(なお、下線は当審で付した。以下同じ。)。 ア 「特許請求の範囲 中心部が中空となっている透明誘電体芯部をそれより低屈折率の透明誘電体にて被覆した光伝送用ファイバの端部の中空部をつぶし、線路の軸方向に沿って徐々に中空部を形成させた端部を有することを特徴とする光伝送用ファイバ。」 イ 「広帯域の光伝送用として、従来のクラッド型ファイバのコアの中心部を中空とするホロードコアファイバ(hollowed-core fiber)が提案されている。第1図はホロードコアファイバの断面構成と屈折率分布をあらわす。図において1は円筒状コア、2はクラッド、3は中空部である。このように、コアの中心部にクラッドよりも低屈折率の層を設けることがこの種のファイバの特徴である。ホロードコアファイバはコア径が大きくとれ、かつ広帯域伝送が可能であるという大きな利点を有するが、反面コアが円筒状になっているためファイバ入力において伝播モードを効率よく励起することがむづかしいという欠点を有する。 よって本発明の目的はホロードコアファイバに伝播モードを効率よく励起しうるようなファイバ入力端構造を提供することである。 上記目的を達成するため、本発明では第2図に示すごとく入力端において中空部をつぶし、長さ方向に対して徐々に連続的に中空部を形成する。同図(1)は入力端の横断面、(2)はファイバの縦断面、(3)は中空部が形成されたあとの横断面をあらわす。図において、1、2および3は第1図と同内容である。上記構成とすることによって、入力端における断面は第2図(1)に示すごとく通常のクラッド型ファイバと同様になる。入力端に入った光は徐々にモード変換をおこし、長さ方向に進むに従がって第1図の中空構造に適合したモードになる。 上記構成とすることの利点は励起が容易なことであるが、それは次の理由による。すなわち、通常のホロードコアファイバの断面は第2図(3)のようであるから、軸対称の光ビームで励起するには、スポットサイズをほぼコア層にひとしくし、同図の4で示すごとく円筒状コアの1部分を励起することになる。ここで中空部のと径とコアの外半径をそれぞれa、bとしておく。次に、コアとクラッドの断面積を減少させることなく中空部をつぶすと、 」(第1頁左欄ないし第2頁左上欄) ウ 「以下本発明を実施例によって説明する。 コアを溶融石英、クラッドを高珪酸ガラスで構成したホロードコアファイバの入力端部を加熱加工して第2図(2)のような構成とした。ホロードコアファイバのクラッド外直径は180ミクロン、コアの外直径は100ミクロン、コアの内直径は90ミクロンであり、中空部をつぶした入力端におけるクラッド外径は130ミクロン、コア直径は35ミクロン、第2図(2)のテーパ部の長さは約10ミリメートルであった。……励起効率の半値幅は約4倍に増加しており、励起しやすくなっていることがわかる。」(第2頁左上欄ないし同頁右上欄) エ 第2図は、以下のものである。 2 引用文献に記載された発明 (1)上記1(1)アより、引用文献には、 「中心部が中空となっている透明誘電体芯部をそれより低屈折率の透明誘電体にて被覆した光伝送用ファイバの端部の中空部をつぶし、線路の軸方向に沿って徐々に中空部を形成させた端部を有する、光伝送用ファイバ。」が記載されているものと認められる。 (2)上記1(1)イ及びウの記載を踏まえて、第2図を見ると、以下のことが理解できる。 ア 上記(1)の「透明誘電体芯部」は「コア」であり、「低屈折率の透明誘電体」は「クラッド」であること。 イ 上記(1)の「端部」は、コアとクラッドの断面積を減少させることなく中空部をつぶすことにより形成されること。 ウ コアは、第2図(2)の左側(入力端)では円形の断面を有し、第2図(2)の右側(出力端)では円筒状の断面を有すること。 エ (左側の出力端の)円筒状の断面(厚さ:b-a)の面積は、(πb^(2)-πa^(2))であること。 オ (右側の入力端の)「円形の断面」の面積は、円形の断面の半径が、 となるから、(πb^(2)-πa^(2))であること。 カ 前記エ及びオから、「円筒状の断面」の面積と「円形の断面」の面積は、ともに、(πb^(2)-πa^(2))であり、等しいこと。 キ 第2図(3)において、符合4で示された黒塗りの部分(円筒状コアの1部分)は、従来のホロードコアファイバを「軸対称の光ビーム」で励起する際の、ビームスポットサイズ[半径:(b-a)/2]を表現していること。 ク 光伝送用ファイバは、出力端から入力端の方向に次第に減少する外径を有すること。 (3)上記(1)及び(2)の検討からして、引用文献には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。 「中心部が中空となっているコアをそれより低屈折率のクラッドにて被覆した光伝送用ファイバの端部の中空部を、コアとクラッドの断面積を減少させることなくつぶし、線路の軸方向に沿って徐々に中空部を形成させた端部を有する、光伝送用ファイバであって、 前記コアは、入力端では円形の断面を、出力端では円筒状の断面を有し、前記円形の断面積と前記円筒状の断面積が等しく、 前記出力端から前記入力端の方向に次第に減少する外径を有する、光伝送用ファイバ。」 第4 対比・判断 1 対比 本願発明と引用発明を対比する。 (1)引用発明の「『円筒状の断面』を有する『出力端』」は、本願発明の「第1の開口数(NA)を有し光を導く第1の端であって、連続した環状断面をさらに有する前記第1の端」に相当する。 (2)引用発明の「『円形の断面』を有する『入力端』」と本願発明の「第2のNAを有し光を導く第2の端であって、前記第1のNAは前記第2のNAよりも大きく、連続した円形断面をさらに有する前記第2の端」とは、 「第2のNAを有し光を導く第2の端であって、連続した円形断面をさらに有する前記第2の端」である点で一致する。 (3)引用発明は、「入力端」と「出力端」との間の導波路を備えるものであるから、本願発明と引用発明は、 「第1の端と第2の端との間の導波路を備える」点で一致する。 (4)引用発明の「端部」は、「コアとクラッドの断面積を減少させることなくつぶ」ことにより、形成されたものであって、「円形の断面積」と「円筒状の断面積」は等しいことから、「入力端」から「出力端」にかけてのコアの断面積が等しいことは明らかである。 よつて、本願発明と引用発明とは、 「導波路が長さを有し、前記導波路の長さの方向に沿って減らない有効な断面積を前記導波路が有する」点で一致する。 (5)引用発明は、「出力端から入力端の方向に次第に減少する外径を有する」ことから、本願発明と引用発明とは、 「導波路は更に第1の端から第2の端の方向に次第に減少する外径を有する」点で一致する。 (6)引用発明の「光伝送用ファイバ」は、本願発明の「装置」に相当する。 (7)以上のことから、本願発明と引用発明とは、以下の点で一致する。 <一致点> 「第1の開口数(NA)を有し光を導く第1の端であって、連続した環状断面をさらに有する前記第1の端と、 第2のNAを有し光を導く第2の端であって、連続した円形断面をさらに有する前記第2の端と、 前記第1の端と前記第2の端との間の導波路とを備え、 前記導波路が長さを有し、前記導波路の長さの方向に沿って減らない有効な断面積を前記導波路が有し、前記導波路は更に前記第1の端から前記第2の端の方向に次第に減少する外径を有する、装置。」 (8)一方、両者は、以下の点で相違する。 <相違点> 導波路に関して、 本願発明は、「第1のNAから第2のNAに次第に移行する変化するNAを生じる」ものであって、「第1のNAは第2のNAよりも大き」いのに対して、 引用発明は、出力端(第1の端)のNAから入力端(第2の端)のNAに次第に移行するNAを生じるものであるか否か不明であり、その大小関係も不明である点。 2 判断 (1)上記<相違点>について検討する。 ア 引用発明の「コア」は、入力端では円形の断面を、出力端では円筒状の断面を有し、円形の断面積と円筒状の断面積が等しいことから、導波路としては、徐々に狭く(先細りに)なっているものと解される。 イ ところで、本願明細書の【0003】ないし【0004】に、先行技術文献(特開2012-43820号公報)を示して、「たとえば、テーパ型ファイバ・バンドルは、次いで先細りにされてその直径を小さくする、溶融ファイバの複合導波路を形成する。残念ながら、このように先細りにすることにより、ビームの開口数(numerical aperture、NA)が増えることになる。」と記載されているように、導波路を先細りにすることにより、NAが増えることは、本願の最先の優先日(2013年3月15日)時点でよく知られたことである(上記先行技術文献以外に、例えば、特開2007-165822号公報(【0007】)及び特開2006-309146号公報(【0021】)等を参照。)。 ちなみに、上記先行技術文献(特開2012-43820号公報)の【0010】には、以下の式が記載されている。 Din :入射端の光ファイバのコア径 NAin :入射光の開口数 Dout :出射端の光ファイバのコア径 NAout:出射光の開口数 ウ してみると、 引用発明における、「入力端」と「出力端」との間の導波路は、 出力端(第1の端)のNAは入力端(第2の端)のNAよりも大きく、出力端(第1の端)のNAから入力端(第2の端)のNAに次第に移行するNAを生じるものであると認められる。 エ よって、上記<相違点>は、実施的な相違点ではない。 3 審判請求書における審判請求人の主張 審判請求人は、以下のように主張していることから、この点について検討する(第5頁下段ないし第6頁上段)。 「即ち、引用文献7の開示によると、コアの断面積は475πμm^(2)((100/2)^(2)π-(90/2)^(2)π)から306.25πμm^(2)((35/2)^(2)π)まで減少しております。従いまして、引用文献7で実質的に開示されておりますのは、中空部からつぶされた部分に向けて『コアとクラッドの断面積を減少させることなく』とはいえず、むしろ、コアの断面積は通常の標準的につぶされたコアの断面積よりもむしろ減少しております。」 (1)引用文献の第2頁左上欄には「コアとクラッドの断面積を減少させることなく中空部をつぶすと、このときのコア半径cは となる。」と記載され、中空部をつぶす前後で、コアの断面積が維持されることが示唆されている。 確かに、実施例では、中空部をつぶした後の端部でのコア直径が「35μm」となり、理論上の「43.6μm」よりも小さくなっている。 (2)しかしながら、当該実施例は、例えば、中空部を完全になくすように、中空部を軸方向に延伸したり、中空部を押し潰した後、さらに、押圧を続けると、理論上の数値よりもコア径が小さくなる場合があることを単に示したものといえることから、かかる結果からだけで、引用発明に係る「コアとクラッドの断面積を減少させることなく中空部をつぶす」ことが開示されていないとまではいえない。 (3)また、本願発明は、「導波路の長さの方向に沿って減らない有効な断面積を前記導波路が有し」との発明特定事項を備えているものの、その方向は特定されるものではなく、両方向に沿って減らないと特定されているものでもない。 (4)よって、請求人の主張は、上記判断を左右するものではない。 第4 むすび 本願発明は、引用文献に記載された発明であると認められ、特許法第29条第1項第3号の発明に該当し、特許を受けることができない。 したがって、他の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審理終結日 | 2018-06-06 |
結審通知日 | 2018-06-07 |
審決日 | 2018-06-19 |
出願番号 | 特願2014-50458(P2014-50458) |
審決分類 |
P
1
8・
113-
Z
(G02B)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 佐藤 秀樹 |
特許庁審判長 |
森 竜介 |
特許庁審判官 |
近藤 幸浩 星野 浩一 |
発明の名称 | リング結合器 |
代理人 | 岡部 讓 |