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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A63F
管理番号 1345699
審判番号 不服2017-9280  
総通号数 228 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-12-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-06-26 
確定日 2018-11-08 
事件の表示 特願2014-246050「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 6月20日出願公開、特開2016-106778〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
本願は、平成26年12月4日の出願であって、平成28年1月28日付けで拒絶の理由が通知され、平成28年3月29日に意見書及び手続補正書が提出され、平成28年9月7日付けで最後の拒絶の理由が通知され、平成28年10月26日に意見書及び手続補正書が提出されたところ、平成29年3月16日付け(発送日:平成29年3月28日)で、平成28年10月26日付け手続補正が却下されるとともに拒絶査定がなされ、それに対して、平成29年6月26日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正がなされ、これに対し、当審において、平成30年2月14日付けで拒絶の理由が通知され、平成30年4月19日に意見書及び手続補正書が提出され、さらに、当審において、平成30年5月24日付けで拒絶の理由が通知され、平成30年7月26日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。

2 本願発明
この出願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成30年7月26日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める(下線は、補正箇所を明示するために審決にて付した。また、当審においてA?Fに分説した。)。

「【請求項1】
A 基板管理番号が記載される電子回路基板であって、遊技機に取り付けられた状態で水平方向となる第1端辺および第2端辺のうち少なくとも前記第1端辺の近傍にコネクタが取り付けられ、透明又は半透明の基板ケースに収納された第1の電子回路基板を含む複数の電子回路基板が搭載され、いずれの電子回路基板の基板ケースとも別体であり、かつ、複数の基板ケースと重なる位置に取り付けられるカバー体を備える遊技機であって、
B 前記第1の電子回路基板は、遊技機に搭載され、かつ該第1の電子回路基板とは異なる第2の電子回路基板と、前記コネクタから前記基板ケース外において導電線材により電気的に接続され、
C 前記第1の電子回路基板の基板管理番号は、前記第1端辺の近傍であって、該第1端辺と同じ水平方向の文字列であり、かつ各文字の上方が遊技機に取り付けられた状態で上方となる姿勢で記載され、
D 前記第1の電子回路基板の前記第1端辺における導電線材は、前記コネクタの位置から見て前記第2端辺に向かう方向ではなく前記第1端辺に向かう方向に配置され、さらに前記第2の電子回路基板に向かう方向であって、かつ前記コネクタの位置から見て該第1の電子回路基板の基板管理番号が記載されている方向とは異なる方向に配置され、
E 前記第1の電子回路基板上の基板管理番号が、当該第1の電子回路基板の基板ケースと前記カバー体と前記導電線材のいずれによっても識別不能とならないように配置されている
F 遊技機。」

3 引用例
原査定の拒絶の理由に引用例1として引用された特開2013-373号公報(以下、「刊行物1」という。)には、次の事項が図面とともに記載されている。

ア 記載事項
(1-a)「【技術分野】
【0001】
本発明は、表面に遊技制御装置(回路)を構成する電子部品が実装される制御基板と、該制御基板を内部に収納するための透明な基板ボックスとを備えた遊技機に関する。」

(1-b)「【0027】
図2には、遊技機10の裏面の構造が示されている。
前面枠12の裏面上部には、払出し前の遊技球を貯留する貯留タンク51と、外部への情報(例えば、図柄確定信号、大当り信号、確率変動信号、賞球信号、貸球信号等)を出力する外部情報端子板50と、が設けられている。また、貯留タンク51の底部には、緩やかな傾斜を有し遊技球を遊技機10の一側へ向けて誘導するシュート52が接続され、シュート52の終端には、遊技球の流下方向を水平方向から垂直方向へと変換する屈曲流路装置53が接続されている。そして、この屈曲流路装置53の下端に駆動源を有する球払出装置54が配設され、この球払出装置54によって所定数の遊技球を払出し可能に構成されている。
【0028】
さらに、前面枠12の裏面中央部には、後述の表示装置41(画像表示装置)における変動表示ゲームの演出の制御を行う演出制御装置80と、演出制御装置80等の各種装置を統括制御する遊技制御装置100と、等が配設されている。
また、前面枠12の裏面下部には、球払出装置54を制御する払出制御装置60と、遊技機10側とカードユニット側とで授受される信号を中継するカードユニット中継基板70と、遊技制御装置100等の各種制御装置に電源供給を行う電源装置90と、等が設けられている。」

(1-c)「【0047】
次に、本実施形態の遊技機10が特徴とする遊技制御装置100(制御装置)について説明する。
遊技制御装置100は、例えば図4に示すように、遊技機10の動作制御等を行うことで遊技の進行を統括的に制御する遊技制御基板110(制御基板)と、当該遊技制御基板110を内部に収納するための透明な基板ボックス120と、を備えて構成される。基板ボックス120は、ほぼ矩形トレー状の第1ケース部材200と第2ケース部材300とからなり、第1ケース部材200と第2ケース部材300との間には収納空間が形成されることで遊技制御基板110を表裏から挟み込むようにして収納し、この状態で封止される。本実施形態では、第1ケース部材200と第2ケース部材300が共に透明部材により形成されているが、少なくとも第1ケース部材200が透明であればよい。
・・・
【0049】
遊技制御基板110は、後に詳しく説明するが、その外形が矩形状を呈してなるプリント配線基板である。すなわち、遊技制御基板110は、一方向(左右方向)に長尺な基板であり、当該遊技制御基板110にはプリント配線が形成され、表面に遊技制御回路を構成するCPUなどの電子部品114,…及びコネクタ(コネクタ端子)116,116,…が実装されている。
そして、本実施形態の遊技制御装置100においては、上記遊技制御基板110の左右両端部に、当該遊技制御装置100が搭載される遊技機10の製造会社(メーカー)の名前および当該遊技制御基板110の管理番号等が記された基板識別領域部112A,112Bが設けられている。」

(1-d)「【0080】
図19は、上記実施例の遊技制御装置の第2の変形例における遊技制御基板110の構成を示す。
この変形例は、前記実施例および第1変形例では、遊技制御基板110の両側端部に設けていた基板識別領域部112A,112B(112C,112D)を、遊技制御基板110の長手方向の側縁部に設けるようにしたものである。基板識別領域部112A,112Bと基板本体部との境界には脆弱部113A,113Bを設けてあるとともに、基板識別領域部112A,112Bの両側と境界部に切り込み123A,123B,123Cを設けて、容易に切り離すことができるように構成されている。」

(1-e)「【0090】
また、上記実施形態には、前記基板ボックス(120)は、前記制御基板(110)の表面に対向する面の前記識別領域部(112A,112B,112C,112D)の識別情報表示面に対向する部分に、当該識別領域部に向けて落ち込む段差部(206,207)を備えるようにした発明が含まれる。
そして、かかる発明によれば、識別領域部に向けて落ち込む段差部を備えることによって、制御基板を基板ボックスに収納した状態において、基板ボックスを構成する壁体と識別領域部とが近接した状態となるため、識別領域部に表示される識別情報をボックス外部識別領域部に表示される識別情報を見易くすることができる。」

イ 認定事項
(1-f)段落【0049】には、実施例について「遊技制御基板110は、・・・コネクタ(コネクタ端子)116,116,…が実装されている。・・・遊技制御基板110の左右両端部に、当該遊技制御装置100が搭載される遊技機10の製造会社(メーカー)の名前および当該遊技制御基板110の管理番号等が記された基板識別領域部112A,112Bが設けられている。」と記載され、実施例の制御装置の第2変形例について段落【0080】には、「遊技制御基板110の両側端部に設けていた基板識別領域部112A,112B(112C,112D)を、遊技制御基板110の長手方向の側縁部に設けるようにしたものである。」と記載されているから、遊技制御基板110の長手方向の側縁部には、管理番号等が記された基板識別領域部112A、112Bが設けられているといえる。

また、図19には、遊技制御基板110には長手方向の側縁部として上方側縁部と下方側縁部があり、下方側縁部の近傍の長手方向中央付近に位置するように基板識別領域部112A、112Bが取り付けられ、下方側縁部の近傍の長手方向の右端側にコネクタが取り付けられていることが示されている。

ここで、段落【0027】には、「図2には、遊技機10の裏面の構造が示されている。」と記載され、段落【0028】には、「前面枠12の裏面中央部には、後述の表示装置41(画像表示装置)における変動表示ゲームの演出の制御を行う演出制御装置80と、演出制御装置80等の各種装置を統括制御する遊技制御装置100と、等が配設されている。また、前面枠12の裏面下部には、球払出装置54を制御する払出制御装置60と、・・・等が設けられている。」と記載されている。また、段落【0047】には「遊技機10の動作制御等を行うことで遊技の進行を統括的に制御する遊技制御基板110(制御基板)と、当該遊技制御基板110を内部に収納するための透明な基板ボックス120と、を備えて構成される。」と記載されている。
これらの記載を踏まえて、図2を参照すると、遊技機の前面枠12の裏面の遊技制御装置100は、遊技制御基板110と基板ボックス120を有するものであるから、遊技制御基板110は、その長手方向が水平方向となるように基板ボックス120に収納された状態で前面枠12の裏面に配置されていることが示されていると認められる。また、払出制御装置60は、遊技制御基板110の左斜め下方に位置するように配設されていることが示されていると認められる。
よって、引用例1には、管理番号が記された基板識別領域部112A、112Bが下方側縁部の近傍の長手方向中央付近に位置するように設けられた遊技制御基板110であって、遊技機に取り付けられた状態で水平方向となる上方側縁部及び下方側縁部のうち、下方側縁部の近傍の長手方向の右端側に位置するようにコネクタが取り付けられ、透明な基板ボックス120に収納された遊技制御基板110と、演出制御装置80、遊技制御基板110の左斜め下方に位置する払出制御装置60等が配設された遊技機10が記載されているといえる。
さらに、図19には、遊技制御基板110の基板識別領域部112A、112Bに記載された管理番号が、下方側縁部の近傍の中央付近であって、該下方側縁部と同じ水平方向の文字列であることが示されている。
また、遊技制御基板110は、その長手方向が水平方向となるように基板ボックス120に収納された状態で前面枠12の裏面に配置されているから、管理番号の各文字の情報が遊技機に取り付けられた状態で上方となる姿勢で記載されていると認められる。
よって、引用例1には、遊技制御基板110の管理番号は、下方側縁部の近傍の長手方向の中央付近であって、該下方側縁部と同じ水平方向の文字列であり、かつ各文字の情報が、遊技制御基板110が遊技機に配設された状態で上方となる姿勢で記載されることが示されているものと認められる。

よって、以上の記載事項(1-a)?(1-e)及び認定事項(1-f)を総合すると、引用例1には、第2変形例を中心として、次の発明が記載されていると認められる(以下、この発明を「引用発明」という。)。

「a 管理番号が記された基板識別領域部112A、112Bが下方側縁部の近傍の長手方向中央付近に位置するように設けられた遊技制御基板110であって、遊技機に取り付けられた状態で水平方向となる上方側縁部及び下方側縁部のうち、下方側縁部の近傍の長手方向の右端側に位置するようにコネクタが取り付けられ、透明な基板ボックス120に収納された遊技制御基板110と、演出制御装置80、遊技制御基板110の左斜め下方に位置する払出制御装置60等が配設された遊技機10であって(認定事項(1-f))、
b 前記遊技制御基板110は、演出制御装置80、払出制御装置60等の各種装置を統括制御するものであり(段落【0028】)、
c 遊技制御基板110の管理番号は、下方側縁部の近傍の長手方向の中央付近であって、該下方側縁部と同じ水平方向の文字列であり、かつ各文字の情報が、遊技制御基板110が遊技機に配設された状態で上方となる姿勢で記載された(認定事項(1-f))、
f 遊技機10(遊技機)。」

4 対比
本願発明と引用発明とを対比する(下記の見出しの(a)?(f)は、引用発明の構成a?fに対応している。)。

(a)引用発明の「管理番号」、「遊技制御基板110」、「下方側縁部」、「上方側縁部」「基板ボックス120」は、それぞれ、本願発明の「基板管理番号」、「第1の電子回路基板」、「第1端辺」、「第2端辺」、「基板ケース」に相当する。
また、引用発明の「演出制御装置80」、「払出制御装置60」に電子回路基板が搭載されていることは明らかである。
よって、引用発明の「管理番号が記された基板識別領域部112A、112Bが下方側縁部の近傍の長手方向中央付近に位置するように設けられた遊技制御基板110であって、遊技機に取り付けられた状態で水平方向となる上方側縁部及び下方側縁部のうち、下方側縁部の近傍の長手方向の右端側に位置するようにコネクタが取り付けられ、透明な基板ボックス120に収納された遊技制御基板110と、演出制御装置80、遊技制御基板110の左斜め下方に位置する払出制御装置60等が配設された遊技機10」は、本願発明の「基板管理番号が記載される電子回路基板であって、遊技機に取り付けられた状態で水平方向となる第1端辺および第2端辺のうち少なくとも前記第1端辺の近傍にコネクタが取り付けられ、透明又は半透明の基板ケースに収納された第1の電子回路基板を含む複数の電子回路基板が搭載され」た「遊技機」に相当する。
また、引用発明は、本願発明の「カバー体」に相当する構成を有していない。

(b)引用発明において、遊技制御基板110は、演出制御装置80、払出制御装置60等の各種装置を統括制御するものであるから、遊技制御基板110と演出制御装置80等の電子回路基板とを両基板に設けられたコネクタを介して基板ケース外において導電線材により電気的に接続されていることは、当業者における技術常識である。
そして、引用発明の各種装置のうちの「払出制御装置60」は、本願発明の「第2の電子回路基板」に相当するといえる。
よって、引用発明の「前記遊技制御基板110は、演出制御装置80、払出制御装置60等の各種装置を統括制御するものであ」る点は、本願発明の「前記第1の電子回路基板は、遊技機に搭載され、かつ該第1の電子回路基板とは異なる第2の電子回路基板と、前記コネクタから前記基板ケース外において導電線材により電気的に接続され」る点に相当する。

(c)引用発明の「遊技制御基板110の管理番号は、下方側縁部の近傍の長手方向の中央付近であって、該下方側縁部と同じ水平方向の文字列であり、かつ各文字の情報が、遊技制御基板110が遊技機に配設された状態で上方となる姿勢で記載され」る点に相当する。

(f)引用発明の「遊技機10」は、本願発明の「遊技機」に相当する。

したがって、本願発明と引用発明とは、
「A’ 基板管理番号が記載される電子回路基板であって、遊技機に取り付けられた状態で水平方向となる第1端辺および第2端辺のうち少なくとも前記第1端辺の近傍にコネクタが取り付けられ、透明又は半透明の基板ケースに収納された第1の電子回路基板を含む複数の電子回路基板が搭載される遊技機であって、
B 前記第1の電子回路基板は、遊技機に搭載され、かつ該第1の電子回路基板とは異なる第2の電子回路基板と、前記コネクタから前記基板ケース外において導電線材により電気的に接続され、
C 前記第1の電子回路基板の基板管理番号は、前記第1端辺の近傍であって、該第1端辺と同じ水平方向の文字列であり、かつ各文字の上方が遊技機に取り付けられた状態で上方となる姿勢で記載され、
F 遊技機。」

である点で一致し、以下の点で相違する。

[相違点1]
本願発明は、「前記第1の電子回路基板の前記第1端辺における導電線材は、前記コネクタの位置から見て前記第2端辺に向かう方向ではなく前記第1端辺に向かう方向に配置され、さらに前記第2の電子回路基板に向かう方向であって、かつ前記コネクタの位置から見て該第1の電子回路基板の基板管理番号が記載されている方向とは異なる方向に配置され」るのに対し、引用発明は、導電線材がどのように配置されるのか不明である点。(構成D)

[相違点2]
本願発明は、「いずれの電子回路基板の基板ケースとも別体であり、かつ、複数の基板ケースと重なる位置に取り付けられるカバー体を備え」、「前記第1の電子回路基板上の基板管理番号が、当該第1の電子回路基板の基板ケースと前記カバー体と前記導電線材のいずれによっても識別不能とならないように配置されている」のに対し、引用発明は、そのように特定されていない点。(構成A、E)

5 判断
ア 上記相違点1について検討する。
引用例1の段落【0090】には、「識別領域部に向けて落ち込む段差部を備えることによって、制御基板を基板ボックスに収納した状態において、基板ボックスを構成する壁体と識別領域部とが近接した状態となるため、識別領域部に表示される識別情報をボックス外部識別領域部に表示される識別情報を見易くすることができる。」と記載され、段落【0049】には、「」管理番号等が記された基板識別領域部112A,112B」が記載されているから、引用例1には、遊技制御基板100の管理番号が、当該遊技制御基板の基板ボックスから見易くすることが示唆されているといえる(以下「引用例記載の示唆」という。)。
また、遊技機の技術分野において、コネクタが遊技基板の1端辺の近傍に取り付けられ、コネクタに接続された導電線材を、コネクタの位置から見て該1端辺に向かう方向に配置し、さらに導電部材を他の基板に向かう方向に配置することは、本願出願前において周知の技術である。(例えば、特開2001-129177号公報の図2の遊技制御装置107から排出制御装置106に向かう導電線材、特開2001-29555号公報の図2の遊技制御装置107から排出制御装置106に向かう導電線材、特開2014-158801号公報の図8の第2制御基板ユニット202から表示制御装置45に向かう導電線材を参照のこと。以下「周知技術1」という。)
そして、基板管理番号の重要性に鑑み、透明ケースに収納された遊技基板の基板管理番号の視認を容易とするために基板管理番号が他の部材により遮蔽されないように設けることは技術常識である。(例えば、特開2001-212332号公報の段落【0003】?【0005】、【0024】、【0030】の基板管理番号を回路素子の陰となりにくい位置や、透明ケースの段差のある部分と重ならない領域に設けることにより基板管理番号を読み取りやすくする点、特開2014-68823号公報の段落【0023】、【0024】の管理情報100が表示される制御基板42の表示部74、76を、透明な基板ケース41に設けられた機種名等の印刷や、シールや、マーク等の模様と重ならない位置に配置することで基板ケース41を介して管理情報100を視認可能に構成するとともに基板ケース41の後側を覆う透明なリアパックを介しても管理情報100を視認可能に構成する点を参照のこと。)
さらに、引用発明と周知技術1とは、コネクタを取り付けた遊技基板を有する遊技機である点で共通するものである。
したがって、引用発明において遊技制御基板110と払出制御装置60との電気的接続に、上記の技術常識及び引用例記載の示唆を考慮したうえで、周知技術1を適用し、遊技制御基板110のコネクタの位置から見て1端辺に向かう方向に導電線材を配置し、さらに、遊技制御基板110のコネクタの位置から見て基板識別領域部112A,112Bが設けられた下方側縁部の近傍の長手方向中央付近に向かう方向とは異なる方向である斜め下方に位置する払出制御装置60に向かう方向に導電線材を配置し、上記相違点1に係る本願発明の構成とすることは当業者が容易に想到し得たことである。
そして、このものが結果として、導電線材を下方側縁部の近傍の、コネクタより中央側に位置する基板管理番号と重ならないように配置したものとなることは明らかである。

イ 上記相違点2について検討する。
引用発明の「遊技制御基板110」は、透明な基板ボックス120に収納されているから、基板ボックス120(基板ケース)によって識別不能とならないように配置されているといえる。
また、遊技機の技術分野において、いずれの電子回路基板の基板ケースとも別体であり、かつ、複数の基板ケースと重なる位置に透明なカバー体を設ける点は、本願出願前において周知の技術である。(特開2014-171636号公報の段落【0026】、図2の演出制御基板ケース24aと画像制御基板ケース25aが透明な裏カバー23により覆われている点、特開2007-319231号公報の段落【0047】、【0053】、図5、9の演出制御基板152や、音・光制御基板154は基板ケース153、154に収容され、演出制御基板152、音・光制御基板154は、透明なカバー部材166に覆われて、外部から視認可能となる点、特開2014-144146号公報の段落【0079】、図4、5の演出基板ケース500全体と、主基板ケース200の上辺部が透明なカバー扉302により被覆される点を参照のこと。以下「周知技術2」という。)
そして、上記周知技術2のカバー体は透明であるから、その内部が識別不能とならないことは明らかである。
引用発明と周知技術2とは、基板ケースに収容された電子回路基板を備えた遊技機である点で共通するものである。
よって、引用発明の基板ボックス120に収納された遊技制御基板110に、周知技術2の透明なカバー体を設けるに際し、上記アにおいて検討した導電線材を基板管理番号と重ならないように配置することに加え、管理番号が基板ケースとカバー体と導電線材のいずれによっても識別不能とならないように構成し、上記相違点2に係る本願発明とすることは当業者であれば容易になし得たことである。

ウ 本願発明が奏する効果について
上記相違点1、2によって本願発明が奏する効果は、当業者が引用発明、技術常識、周知技術1及び周知技術2から予測し得る程度のものであって、格別のものではない。

エ 請求人の主張
請求人は、平成30年7月26日付け意見書において、「しかしながら本願の構成を実現する場合、導電線材が、基板の端辺(第1端辺)から第2の電子回路基板に向かうように配置され、かつ当該第2の電子回路基板に向かう方向が、基板管理番号が記載されている方向とは異なる方向となるようにされていなければなりません。
このためには電子回路基板上での基板管理番号の表記位置と、コネクタ位置と、遊技機背面等における各電子回路基板(基板ケース)の配置(第1の電子回路基板と第2の電子回路基板の位置関係)、導電線材の長さ等を総合的に考慮した設計が必要になります。
即ち、導電線材が第2の電子回路基板に向かう方向に配置された状態で、その方向が基板管理番号が記載されていない方向に合致し、かつそうなるようにコネクタが配置されているようにすることは、単に基板のコネクタから接続先の基板のコネクタに向かうように導電線材を配置させるのみで実現できるものではありません。
もちろん特開2001-129177号公報、特開2001-29555号公報、特開2002-143497号公報、特開2009-6087号公報の等の周知例から、そのような本願の構成は予測できません。」(「[4]理由1に対する意見」の後段。)と主張する。
しかしながら、上記アで検討したとおり、基板管理番号の重要性に鑑み、透明ケースに収納された遊技基板の基板管理番号の視認を容易とするために基板管理番号が他の部材により遮蔽されないようにすることは技術常識であるといえるから、導電線材を配置するにあたり、導電線材が基板管理番号と重ならないように、基板管理番号が記載されている部分を避けて、基板管理番号が記載されている方向と異なる方向に配置することは、当業者が容易に想到し得たことである。
したがって、請求人の主張は採用できない。

6 むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2018-09-06 
結審通知日 2018-09-11 
審決日 2018-09-25 
出願番号 特願2014-246050(P2014-246050)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 廣瀬 貴理  
特許庁審判長 長崎 洋一
特許庁審判官 平城 俊雅
田付 徳雄
発明の名称 遊技機  
代理人 鈴木 伸夫  
代理人 中川 裕人  
代理人 脇 篤夫  
代理人 岩田 雅信  

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