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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G06F
管理番号 1345786
審判番号 不服2017-4177  
総通号数 228 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-12-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-03-23 
確定日 2018-11-07 
事件の表示 特願2014- 44947「データ記憶装置」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 9月29日出願公開、特開2014-182812〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,平成26年3月7日(パリ条約による優先権主張2013年3月15日(以下,「優先日」という。),米国,2013年9月16日,米国)の出願であって,その手続の経緯は以下のとおりである。
平成27年 2月 4日 :審査請求書,手続補正書の提出
平成28年 1月21日付け:拒絶理由通知書
平成28年 4月25日 :意見書,手続補正書の提出
平成28年 7月 6日付け:拒絶理由通知書
平成28年11月17日 :意見書,手続補正書の提出
平成29年 1月 4日付け:拒絶査定
平成29年 3月23日 :審判請求書,手続補正書の提出
平成30年 1月31日付け:拒絶理由通知書(当審)
平成30年 4月18日 :意見書,手続補正書の提出

第2 本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下,「本願発明」という。)は,平成30年4月18日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。

「 【請求項1】
装置であって,
少なくとも第1のメモリ階層と第2のメモリ階層との間にデータを割り当てるように構成された制御回路を備え,前記第1のメモリ階層は,不揮発性ソリッドステートメモリを含み,前記第2のメモリ階層は,別の不揮発性メモリとして,磁気データ記憶媒体を含み,
前記装置は,
前記制御回路とホストデバイスとの間で通信するように構成されたホストインターフェースと,
前記制御回路および,前記第2のメモリ階層を含むデータ記憶デバイスの間で通信するように構成され,前記データ記憶デバイスが前記ホストデバイスと直接にインターフェースしているかのように,前記データ記憶デバイスが前記装置とインターフェースするように前記ホストインターフェースを模倣するために前記ホストインターフェースを複製するように構成された,データ記憶デバイスインターフェースとを備え,
前記制御回路は,前記ホストデバイス,前記第1のメモリ階層,および前記第2のメモリ階層に対するデータの転送を管理するようにさらに構成され,
前記制御回路は,前記ホストデバイス,前記第1のメモリ階層,および前記第2のメモリ階層との間でデータを送信することが可能であるように,前記第2のメモリ階層の前記不揮発性メモリを含む前記データ記憶デバイスに統合される,装置。」

第3 拒絶の理由
平成30年1月31日付けで当審が通知した拒絶理由は,次のとおりのものである。
本願発明は,本願の出願前に日本国内又は外国において,頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった以下の引用文献1に記載された発明及び引用文献2-6に記載された事項に基づいて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献1:特開2007-193440号公報
引用文献2:特開平10-40170号公報
引用文献3:特開2010-20774号公報
引用文献4:特開2011-192298号公報
引用文献5:特開2007-133868号公報
引用文献6:特開2009-271924号公報

第4 引用文献の記載及び引用発明

1 引用文献1の記載
平成30年1月31日付けの当審の拒絶の理由で引用された特開2007-193440号公報(平成19年8月2日出願公開,以下,「引用文献1」という。)には,関連する図面とともに,以下の事項が記載されている(下線は,当審で付した。以下同じ。)。

A 「【0008】
<全体の構成及び機能>
まず図1において,実施形態の全体ブロックの例を説明する。100は,ホスト装置であり,例えば,パーソナルコンピュータに於けるコントロール部である。200は,不揮発性キャッシュメモリを用いる記憶装置である。この記憶装置200は,バッファとして機能するSDRAM201,後述するコントローラなどが搭載された例えば1チップのLSI(大規模集積化回路)202,フラッシュメモリ203,ハードディスク(HD)204を有する。
【0009】
LSI202は,コントローラ311,ホストインターフェース312,SDRAMインターフェース313,ディスクインターフェース314,フラッシュメモリインターフェース315を有する。なお,このLSI202に,上記のSDRAM201が内蔵されていてもよい。
【0010】
ホスト装置100は,ホストインターフェース312を介して,コントローラ311にコマンドを与えることができる。またホスト装置100は,ホストインターフェース312を介して,コントローラ311からのデータを受け取ることもできるし,コントローラ311側へデータを転送することもできる。
【0011】
コントローラ311(当審注:「コントローラ311」は「ホスト装置100」の明らかな誤記である。)からのコマンドは,データの書き込み命令,データの読出し命令,データのサイズ指定,データの転送,メモリ,情報の読み取り命令などがある。コントローラ311は,ホスト装置100からのコマンドを解釈し,データの書き込み処理,読出し処理,転送処理などを実行する。
【0012】
コントローラ311は,SDRAMインターフェース313を介して,SDRAM201との間でデータのやり取りを行うことができる。またコントローラ311は,ディスクインターフェース314を介して,HD204との間でデータのやり取りを行うことができる。さらにコントローラ311は,フラッシュメモリインターフェース315を介して,フラッシュメモリ203との間でデータのやり取りを行うことができる。上記したフラッシュメモリ203に格納されるデータは,エラー訂正コードが付加されて格納される。またハードディスクに記録されるデータもエラー訂正コード(ECC)が付加されて格納される。このようにフラッシュメモリへの記録データ,ハードディスクへの記録データに対しては,再生時のエラー訂正が可能なようにECC処理が施される。
【0013】
上記の装置は,フラッシュメモリインターフェース315,フラッシュメモリ203の部分は,キャッシュとして使用する。」

B 「【0027】
さらにアドレス管理部420が設けられている。アドレス管理部420は,ハードディスクのアドレス及びフラッシュメモリ203の記録済み領域,未記録領域などのアドレスを一括して管理している。フラッシュメモリ203は,キャッシュメモリとして利用されるので,ホスト装置側がアドレスを指定する場合は,キャッシュメモリのアドレスを意識する必要はなく,ハードディスク側のアドレスを設定すればよい。データの格納先として特別にキャッシュメモリを指定する場合に,Pinnedのコマンドを発行すればよい。Pinnedのコマンドがない場合には,データ格納先は,コントローラ311に構築されているファームウエアの判定結果に依存する。」

C 「【0034】
データ書き込みコマンドがあった場合,書き込みデータは,Pinnedであるかどうかの判定を行う(ステップSA2)。Pinnedであれば,書き込み処理部418は,フラッシュメモリにデータを書き込む。書き込みデータは,Pinnedでない場合には,HDDモータ(スピンドルモータ)が回転しているかどうかを状態判定部421が判定する(ステップSA5)。スピンドルモータが回転していない場合には,書き込み処理部418は,書き込みデータ(Unpinned領域となる)をフラッシュメモリに書き込む。HDDモータが回転している場合には,書き込み処理部418は,書き込みデータをハードディスクに書き込む。データをハードディスク(HD)に書き込む判断条件としては,フラッシュメモリが寿命近くになっているかどうかを判断して,寿命近くになっていた場合は,HDに書き込むようにしてもよい。」

D 「【図1】



E 「【図3】



2 引用発明
上記引用文献1に記載されている事項を検討する。

(1)上記1のAの「200は,不揮発性キャッシュメモリを用いる記憶装置である。・・・記憶装置200は,・・・後述するコントローラなどが搭載された例えば1チップのLSI(大規模集積化回路)202・・・を有する。」との記載,及び上記1のDで引用した図1の記載から,「不揮発性キャッシュメモリを用いる記憶装置200に含まれるLSI202」を読み取ることができる。

(2)上記1のAの「LSI202は,コントローラ311,ホストインターフェース312,SDRAMインターフェース313,ディスクインターフェース314,フラッシュメモリインターフェース315を有する。」との記載から,「前記LSI202」は,「コントローラ311,ホストインターフェース312,SDRAMインターフェース313,ディスクインターフェース314,及びフラッシュメモリインターフェース315を有し」ているものである。

(3)上記1のAの「ホスト装置100は,ホストインターフェース312を介して,コントローラ311にコマンドを与えることができる。またホスト装置100は,ホストインターフェース312を介して,コントローラ311からのデータを受け取ることもできるし,コントローラ311側へデータを転送することもできる。」及び「コントローラ311(当審注:「コントローラ311」は「ホスト装置100」の明らかな誤記である。)からのコマンドは,データの書き込み命令,データの読出し命令・・・などがある。」との記載から,「ホストインターフェース312」は,「ホスト装置100」が,これを介して,「コントローラ311にデータの書き込み命令,データの読出し命令等のコマンドを与えたり,ホスト装置100とコントローラ311との間でデータのやり取りを行うものであ」ることが読み取れる。

(4)上記1のAの「コントローラ311は,SDRAMインターフェース313を介して,SDRAM201との間でデータのやり取りを行うことができる。」及び「バッファとして機能するSDRAM201」との記載から,「SDRAMインターフェース313」は,「コントローラ311」が,これを介して,「バッファとして機能するSDRAM201との間でデータのやり取りを行うものであ」ることが読み取れる。

(5)上記1のAの「またコントローラ311は,ディスクインターフェース314を介して,HD204との間でデータのやり取りを行うことができる。」との記載から,「ディスクインターフェース314は,コントローラ311が,これを介して,HD204との間でデータのやり取りを行うものであ」ることが読み取れる。

(6)上記1のAの「さらにコントローラ311は,フラッシュメモリインターフェース315を介して,フラッシュメモリ203との間でデータのやり取りを行うことができる。」との記載から,「フラッシュメモリインターフェース315は,コントローラ311が,これを介して,フラッシュメモリ203との間でデータのやり取りを行うものであ」ることが読み取れる。

(7)上記1のAの「上記の装置は,フラッシュメモリインターフェース315,フラッシュメモリ203の部分は,キャッシュとして使用する。」との記載,及び上記1のBの「フラッシュメモリ203は,キャッシュメモリとして利用される」との記載から,「フラッシュメモリ203は,キャッシュメモリとして利用されるものであ」ることが読み取れる。

(8)上記1のCの「データ書き込みコマンドがあった場合,・・・HDDモータ(スピンドルモータ)が回転しているかどうかを状態判定部421が判定する(ステップSA5)。スピンドルモータが回転していない場合には,書き込み処理部418は,書き込みデータ・・・をフラッシュメモリに書き込む。HDDモータが回転している場合には,書き込み処理部418は,書き込みデータをハードディスクに書き込む。」との記載,及び上記1のEで引用した図3の記載から,「データ書き込みコマンドがあった場合に,コントローラ311の状態判定部421は,HDDモータ(スピンドルモータ)が回転しているかどうかを判定し,スピンドルモータが回転していない場合には,コントローラ311の書き込み処理部418が,書き込みデータをフラッシュメモリに書き込む一方,HDDモータが回転している場合には,コントローラ311の書き込み処理部418が,書き込みデータをハードディスクに書き込む」ことが読み取れる。

(9)以上(1)?(8)の検討から,引用文献1には,以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「不揮発性キャッシュメモリを用いる記憶装置200に含まれるLSI202であって,
前記LSI202は,コントローラ311,ホストインターフェース312,SDRAMインターフェース313,ディスクインターフェース314,及びフラッシュメモリインターフェース315を有し,
ホストインターフェース312は,ホスト装置100が,これを介して,コントローラ311にデータの書き込み命令,データの読出し命令等のコマンドを与えたり,ホスト装置100とコントローラ311との間でデータのやり取りを行うものであり,
SDRAMインターフェース313は,コントローラ311が,これを介して,バッファとして機能するSDRAM201との間でデータのやり取りを行うものであり,
ディスクインターフェース314は,コントローラ311が,これを介して,HD204との間でデータのやり取りを行うものであり,
フラッシュメモリインターフェース315は,コントローラ311が,これを介して,フラッシュメモリ203との間でデータのやり取りを行うものであり,
フラッシュメモリ203は,キャッシュメモリとして利用されるものであり,
データ書き込みコマンドがあった場合に,コントローラ311の状態判定部421は,HDDモータ(スピンドルモータ)が回転しているかどうかを判定し,スピンドルモータが回転していない場合には,コントローラ311の書き込み処理部418が,書き込みデータをフラッシュメモリに書き込む一方,HDDモータが回転している場合には,コントローラ311の書き込み処理部418が,書き込みデータをハードディスクに書き込む,
LSI202。」

3 引用文献2の記載
(1)平成30年1月31日付けの当審の拒絶の理由で引用された特開平10-40170号公報(平成10年2月13日出願公開,以下,「引用文献2」という。)には,関連する図面とともに,以下の事項が記載されている。

F 「【0001】
【発明の属する技術分野】この発明はディスクキャッシュシステムに関し,特に磁気ディスク装置と半導体ディスク装置とを有するコンピュータシステムで使用されるディスクキャッシュシステムに関する。」

G 「【0017】(途中省略)ディスクキャッシュ制御手段としては,半導体ディスク装置と磁気ディスク装置とが物理的に独立した装置である場合には,OSやアプリケーションプログラムからの磁気ディスクに対するアクセス要求に応じて半導体ディスクと磁気ディスク装置とを統合制御するソフトウェアによって実現することができる。また,半導体ディスク装置と磁気ディスク装置とが一体化された統合ドライブ装置を実現してもよく,この場合には,その統合ドライブ装置内部のコントローラをファームウェアなどにより制御することによって,そのコントローラが半導体ディスク装置と磁気ディスク装置とを統合制御するように構成することもできる。また,半導体ディスク装置に磁気ディスク装置とのインターフェースを設けておき,ホストシステムから見て半導体ディスク装置を上流側,磁気ディスク装置を下流側に配置する構成を採用してもよく,この場合には,半導体ディスク装置内のコントローラをファームウェアなどにより制御することによって,そのコントローラが半導体ディスク装置と磁気ディスク装置とを統合制御するように構成することが好ましい。これにより,磁気ディスク装置には何ら変更を加えることなく,半導体ディスク装置を使用したディスクキャッシュを実現できる。」

H 「【0065】半導体ディスク装置300は,図10に示されているように,バス100を介してホストCPUからのコマンドを受け取った入り,バス100との間でデータ入出力を行うホストインターフェース301,フラッシュメモリ303をディスク装置として扱うためのエミュレーションを行うフラッシュコントローラ302,このフラッシュコントローラ302によって制御され,半導体ディスク装置として機能する複数のフラッシュEEPROMを含むフラッシュメモリ303,ハードディスク装置400のホストインターフェース(IDEなど)と接続可能なハードディスクインターフェース304を備えている。」

J 「【図10】



(2)引用文献2記載事項
ア 上記H及びJの記載より,引用文献2には,
「フラッシュメモリを用いた半導体ディスク装置をハードディスク装置のディスクキャッシュとして使用するディスクキャッシュシステムにおいて,半導体ディスク装置300内のフラッシュコントローラ302とハードディスク装置400とを接続するためのハードディスクインターフェース304に関して,半導体ディスク装置300は,・・・ハードディスク装置400のホストインターフェース(IDEなど)と接続可能なハードディスクインターフェース304を備えている」旨が記載されている。(以下,「引用文献2記載事項a」という。)

イ 上記Gの記載より,引用文献2には,
「また,半導体ディスク装置に磁気ディスク装置とのインターフェースを設けておき,ホストシステムから見て半導体ディスク装置を上流側,磁気ディスク装置を下流側に配置する構成を採用してもよく,この場合には,半導体ディスク装置内のコントローラをファームウェアなどにより制御することによって,そのコントローラが半導体ディスク装置と磁気ディスク装置とを統合制御するように構成することが好ましい。これにより,磁気ディスク装置には何ら変更を加えることなく,半導体ディスク装置を使用したディスクキャッシュを実現できる。」(下線は当審で付与。)と記載されている。(以下,「引用文献2記載事項b」という。)

4 参考文献1の記載
本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開2008-250719号公報(平成20年10月16日出願公開,以下,「参考文献1」という。)には,関連する図面とともに,以下の事項が記載されている。

K 「【0004】
また,近年,HDDと不揮発性の半導体メモリであるフラッシュメモリとを組み合わせた,いわゆるハイブリッドHDDが注目されている。このハイブリッドHDDによれば,フラッシュメモリをキャッシュメモリとして利用することにより,システムの起動時間や休止状態からの復帰時間の短縮,バッテリでの動作モードの最適化による消費電力の低減,HDDの長寿命化を図ることができ,信頼性,耐久性を向上することができる。」

L 「【0011】
図1および図3に示すように,HDDは,偏平な矩形箱状の筐体10を備えている。この筐体10は,上面の開口した矩形箱状のベース11と,複数のねじによりケースにねじ止めされてケースの上端開口を閉塞したトップカバー15と,を有している。
【0012】
筐体10内において,ベース11上は,記録媒体としての2枚の磁気ディスク12a,12b,これらの磁気ディスクを支持および回転させるスピンドルモータ13,磁気ディスクに対して情報の記録,再生を行なう複数の磁気ヘッド33,これらの磁気ヘッドを磁気ディスク12a,12bに対して移動自在に支持したヘッドアクチュエータ14,ヘッドアクチュエータを回動および位置決めするボイスコイルモータ(以下VCMと称する)16が設けられている。また,ベース11上には,磁気ヘッド33が磁気ディスクの最外周に移動した際,磁気ヘッドを磁気ディスクから離間した位置に保持するランプロード機構18,ヘッドクチュエータ14を退避位置に保持するイナーシャラッチ機構20,およびプリアンプ等の回路部品が実装されたフレキシブルプリント回路基板ユニット(以下,FPCユニットと称する)17が設けられている。図4に示すように,ベース11は底壁を有し,この底壁の外面ほぼ中央部からは,円柱形状に形成されたスピンドルモータ13のステータ部19が突出している。」

M 「【0017】
図2および図4に示すように,ベース11の底壁外面には,プリント回路基板(以下,PCBと称する)40がねじ止めされ,ベースの底壁と対向している。PCB40は,FPCユニット17を介してスピンドルモータ13,VCM16,および磁気ヘッドの動作を制御する。
【0018】
PCB40はベース11に対応したほぼ矩形状に形成されている。PCB40のほぼ中央部には,スピンドルモータ13のステータ部19を挿通するための円形の開口41が形成されている。PCB40上には多数の電子部品が実装されている。これらの電子部品は,制御部70として機能するシステムLSI(SOC)44,例えば,メモリ容量が数100MBの主不揮発性メモリ45,ドライバ46等のLSI,ショックセンサ47,その他,多くのディスクリート部品,チップ部品を含んでいる。また,PCB40には,FPCユニット17側のコネクタと接続可能なコネクタ49,およびHDDをパーソナルコンピュータ等のホストコンピュータ(上位機)に接続するための主コネクタ52が実装されている。」

N 「【図3】



O 「【図5】



第5 対比
本願発明と引用発明を対比する。

(1)引用発明の「フラッシュメモリ203」,「HD204」,「ホストインターフェース312」,「ディスクインターフェース314」が本願発明の「不揮発性ソリッドステートメモリ」,「磁気データ記憶媒体」,「ホストインターフェース」,「データ記憶デバイスインターフェース」にそれぞれ相当することは明らかであり,引用発明の「LSI202」は,「ホストインターフェース312(ホストインターフェース)」と「ディスクインターフェース314(データ記憶デバイスインターフェース)」とを備えることから,本願発明の「装置」に対応する。

(2)引用発明の「フラッシュメモリ203」は,HD204の「キャッシュメモリとして利用されるものであ」るから,本願発明の「第1のメモリ階層」に相当し,また,引用発明の「HD204」は,本願発明の「第2のメモリ階層」に相当するものといえる。
また,引用発明では,「データ書き込みコマンドがあった場合に,コントローラ311の状態判定部421は,HDDモータ(スピンドルモータ)が回転しているかどうかを判定し,スピンドルモータが回転していない場合には,コントローラ311の書き込み処理部418が,書き込みデータをフラッシュメモリに書き込む一方,HDDモータが回転している場合には,コントローラ311の書き込み処理部418が,書き込みデータをハードディスクに書き込む」ようになっており,この記載から,引用発明の「コントローラ311」は,フラッシュメモリ203(第1のメモリ階層)とHD204(第2のメモリ階層)との間に,データを割り当てる制御を行う回路であるといえるから,引用発明の「コントローラ311」と本願発明の「制御回路」とは,後記する点で相違するものの,「少なくとも第1のメモリ階層と第2のメモリ階層との間にデータを割り当てるように構成された制御回路」である点で共通する。
してみれば,引用発明の「LSI202」は本願発明の「装置」に対応し,両者は,
「少なくとも第1のメモリ階層と第2のメモリ階層との間にデータを割り当てるように構成された制御回路を備え,前記第1のメモリ階層は,不揮発性ソリッドステートメモリを含み,前記第2のメモリ階層は,別の不揮発性メモリとして,磁気データ記憶媒体を含」む点で共通する。

(3)引用発明の「ホストインターフェース312」は,「ホスト装置100とコントローラ311との間でデータのやり取りを行うものであ」るから,本願発明の「制御回路とホストデバイスとの間で通信するように構成されたホストインターフェース」に相当する。

(4)引用発明の「ディスクインターフェース314」は,「コントローラ311が,これを介して,HD204との間でデータのやり取りを行うものであ」るから,本願発明の「前記制御回路および,前記第2のメモリ階層を含むデータ記憶デバイスの間で通信するように構成され,前記データ記憶デバイスが前記ホストデバイスと直接にインターフェースしているかのように,前記データ記憶デバイスが前記装置とインターフェースするように前記ホストインターフェースを模倣するために前記ホストインターフェースを複製するように構成された,データ記憶デバイスインターフェース」とは,後記する点で相違するものの,「制御回路および,第2のメモリ階層を含むデータ記憶デバイスの間で通信するように構成された,データ記憶デバイスインターフェース」である点で共通する。

(5)引用発明は,「データ書き込みコマンドがあった場合に,コントローラ311の状態判定部421は,HDDモータ(スピンドルモータ)が回転しているかどうかを判定し,スピンドルモータが回転していない場合には,コントローラ311の書き込み処理部418が,書き込みデータをフラッシュメモリに書き込む一方,HDDモータが回転している場合には,コントローラ311の書き込み処理部418が,書き込みデータをハードディスクに書き込む」ようになっていることから,「コントローラ311(制御回路)」は,ホスト装置100(ホストデバイス),フラッシュメモリ203(第1のメモリ階層),およびHD204(第2のメモリ階層)に対するデータの転送を管理するように構成されているといえる。
一方,本願発明では,「前記制御回路は,前記ホストデバイス,前記第1のメモリ階層,および前記第2のメモリ階層に対するデータの転送を管理するようにさらに構成され,前記制御回路は,前記ホストデバイス,前記第1のメモリ階層,および前記第2のメモリ階層との間でデータを送信することが可能であるように,前記第2のメモリ階層の前記不揮発性メモリを含む前記データ記憶デバイスに統合される」ことから,引用発明の「コントローラ311」と本願発明の「制御回路」とは,後記する点で相違するものの,「ホストデバイス,第1のメモリ階層,および第2のメモリ階層に対するデータの転送を管理するようにさらに構成され」る点で共通する。

(6)上記(1)?(5)の検討から,本願発明と引用発明との間には,次の一致点,相違点があるといえる。

(一致点)
「装置であって,
少なくとも第1のメモリ階層と第2のメモリ階層との間にデータを割り当てるように構成された制御回路を備え,前記第1のメモリ階層は,不揮発性ソリッドステートメモリを含み,前記第2のメモリ階層は,別の不揮発性メモリとして,磁気データ記憶媒体を含み,
前記装置は,
前記制御回路とホストデバイスとの間で通信するように構成されたホストインターフェースと,
前記制御回路および,前記第2のメモリ階層を含むデータ記憶デバイスの間で通信するように構成された,データ記憶デバイスインターフェースとを備え,
前記制御回路は,前記ホストデバイス,前記第1のメモリ階層,および前記第2のメモリ階層に対するデータの転送を管理するようにさらに構成される,装置。」

(相違点)
(相違点1)本願発明のデータ記憶デバイスインターフェースは,「前記データ記憶デバイスが前記ホストデバイスと直接にインターフェースしているかのように,前記データ記憶デバイスが前記装置とインターフェースするように前記ホストインターフェースを模倣するために前記ホストインターフェースを複製するように構成され」ているのに対して,引用発明のディスクインターフェース314は,そのように構成されているか否かが明らかでない点。

(相違点2)本願発明は,「制御回路」が,「前記ホストデバイス,前記第1のメモリ階層,および前記第2のメモリ階層との間でデータを送信することが可能であるように,前記第2のメモリ階層の前記不揮発性メモリを含む前記データ記憶デバイスに統合される」のに対して,引用発明は,そのように構成されているか否かが明らかでない点。

第6 判断
上記相違点について,判断する。

(1)相違点1について
上記「第4 引用文献の記載及び引用発明」の「3 引用文献2の記載」の引用文献2記載事項a及び引用文献2記載事項bより,引用文献2には,ハードディスクインターフェース304を,通常の磁気ディスク装置(ハードディスク)とホストシステムとを接続するためのホストインターフェース(IDEなど)を介して半導体ディスク装置300のコントローラ302を接続できるように構成することで,通常の磁気ディスク装置(ハードディスク)をホストシステムと接続するためのホストインターフェース(IDEなど)をそのまま使用して,磁気ディスク装置には何ら変更を加えることなく,半導体ディスク装置を使用したディスクキャッシュを実現する技術(以下,「引用文献2記載技術」という。)が記載されており,このことは,すなわち,ハードディスクインターフェース304が,「ハードディスク装置400(データ記憶デバイス)がホストシステム(ホストデバイス)と直接にインターフェースしているかのように,前記ハードディスク装置400(データ記憶デバイス)が半導体ディスク装置300(装置)とインターフェースするようにホストインターフェースを模倣するために前記ホストインターフェースを複製するように構成され」ていることに他ならない。
そして,引用発明と引用文献2記載技術とは,いずれも,フラッシュメモリをハードディスクのキャッシュとして用いる技術である点で共通していることから,引用発明のディスクインターフェース314に引用文献2記載技術を適用して,上記相違点1に係る構成とすることは,当業者が容易に想到し得たことである。

(2)相違点2について
上記「第4 引用文献の記載及び引用発明」の「1 引用文献1の記載」のA,Dの記載からすると,引用発明の「記憶装置200」は,「コントローラ311」及び「ハードディスク(HD)204」をその内部に有するものであるから,「コントローラ311(制御回路)」と「ハードディスク(HD)204」とが,記憶装置200内で,一体に構成されること,すなわち,「統合される」ことが示唆されているといえる。
そして,上記「第4 引用文献の記載及び引用発明」の「4 参考文献1の記載」のK?Oの記載からすると,ハードディスクドライブ(HDD)のキャッシュとしてフラッシュメモリを使用する,いわゆるハイブリッドハードディスクドライブにおいて,「制御部」と「ハードディスクドライブ」とを一つの筐体内に一体として構成すること,すなわち,「制御部」が「ハードディスクドライブ」に「統合される」構成とすることは,本願の優先日前に既に周知技術であったものと認められる。
また,ハイブリッドハードディスクドライブの制御部が,ハードディスクドライブのキャッシュとしてフラッシュメモリを利用するために,「ホスト(ホストデバイス)」,「フラッシュメモリ(第1のメモリ階層),および「ハードディスクドライブ(第2のメモリ階層)」との間で「データを送信することが可能であるように」動作していることは自明のことである。
してみれば,引用発明に上記周知技術を適用して,コントローラ311(制御回路)が,ホスト装置100(ホストデバイス),フラッシュメモリ203(第1のメモリ階層),およびHD204(第2のメモリ階層)との間でデータを送信することが可能であるように,HD204(第2のメモリ階層の不揮発性メモリを含むデータ記憶デバイス)に統合されるように構成すること,すなわち,上記相違点2に係る構成とすることは,当業者が容易に想到し得たことである。

(3)そして,これらの相違点を総合的に勘案しても,本願発明の奏する作用効果は,引用発明,引用文献2記載技術,及び周知技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず,格別顕著なものということはできない。

第7 むすび
以上のとおり,本願発明は,引用発明,引用文献2記載技術,及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって,本願は他の請求項について検討するまでもなく拒絶されるべきものである。

よって,結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2018-06-04 
結審通知日 2018-06-05 
審決日 2018-06-22 
出願番号 特願2014-44947(P2014-44947)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 塚田 肇  
特許庁審判長 辻本 泰隆
特許庁審判官 須田 勝巳
仲間 晃
発明の名称 データ記憶装置  
代理人 特許業務法人深見特許事務所  

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