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審決分類 |
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載 F23G 審判 全部申し立て 2項進歩性 F23G |
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管理番号 | 1345840 |
異議申立番号 | 異議2018-700108 |
総通号数 | 228 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2018-12-28 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2018-02-09 |
確定日 | 2018-09-25 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第6181548号発明「廃棄物処理設備」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第6181548号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項[1ないし8]、9について訂正することを認める。 特許第6181548号の請求項1ないし9に係る特許を維持する。 |
理由 |
1.手続の経緯 特許第6181548号の請求項1ないし9の特許に係る出願は、平成25年12月25日に特許出願され、平成29年7月28日にその特許権の設定登録がされ、その後、その特許に対し、平成30年2月9日に特許異議申立人西尾道子(以下、「特許異議申立人」という。)により特許異議の申立てがされ、平成30年4月24日付けで取消理由が通知(以下、「取消理由通知」という。)され、その指定期間内である平成30年6月25日付けで意見書の提出及び訂正の請求があり、その訂正の請求に対して特許異議申立人から平成30年8月9日付けで意見書が提出されたものである。 2.訂正の適否についての判断 (1)訂正の内容 平成30年6月25日付けの訂正の請求(以下、「本件訂正請求」という。)による訂正の内容は以下の訂正事項1及び訂正事項2のとおりである。 ア 訂正事項1 請求項1に係る「前記燃焼手段から排出された前記排ガスと気体との間において熱交換を行う熱交換手段と、」を「前記燃焼手段から排出された前記排ガスと気体との間において熱交換を行う熱交換手段(但し、熱エネルギーを蓄積するための第1の手段および第2の手段を用いて熱交換を行う熱交換手段を除く)と、」に訂正する。請求項1を引用する請求項2ないし8も同様に訂正する。 イ 訂正事項2 請求項9について、独立形式に改め、「廃棄物を燃焼して排ガスを排出する燃焼手段と、前記燃焼手段から排出された前記排ガスと気体との間において熱交換を行う熱交換手段と、前記排ガスに対して所定の排ガス処理を行う排ガス処理手段と、前記熱交換手段に気体を供給するとともに、前記熱交換手段において加熱された気体を前記燃焼手段および前記気体の熱を利用する熱利用手段に供給する過給手段と、を備え、前記気体が空気であり、前記過給手段が、前記熱交換手段により加熱された前記気体のエネルギーによって気体を前記熱交換手段に供給可能に構成されているとともに、前記加熱された気体を排出して前記燃焼手段および前記熱利用手段に供給可能に構成されており、前記排ガス処理手段が、前記熱交換手段を通過した排ガスから不純物を除去して集塵する集塵手段と、前記排ガスを洗浄して排気部から排気する洗浄手段との少なくとも一方を有し、或いは、前記熱交換手段を通過した排ガスから不純物を除去して集塵する集塵手段と、前記集塵手段を通過した前記排ガスを洗浄して排気部から排気する洗浄手段とを有し、前記熱交換手段が、前記排ガスが流通する外管と、前記外管に挿通されて前記気体が流通する少なくとも一本の内管とを備える熱交換器を有し、前記外管の流路断面積が、前記内管の流路断面積よりも大きいことを特徴とする、廃棄物処理設備。」に訂正する。 (2)訂正の目的の適否、一群の請求項、新規事項の有無、及び特許請求の拡張・変更の存否 上記訂正事項1及び訂正事項2の訂正の目的の適否、一群の請求項、新規事項の有無、及び特許請求の拡張・変更の存否について検討する。 ア 訂正の目的 訂正事項1は、熱交換手段に関し、「前記燃焼手段から排出された前記排ガスと気体との間において熱交換を行う熱交換手段と、」との発明特定事項を、「前記燃焼手段から排出された前記排ガスと気体との間において熱交換を行う熱交換手段(但し、熱エネルギーを蓄積するための第1の手段および第2の手段を用いて熱交換を行う熱交換手段を除く)と、」と限定するものであり、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものと認める。 訂正事項2は、請求項1ないし8を直接又は間接的に引用していた請求項9を独立請求項へ改めるものであり、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に掲げる他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。 したがって、訂正事項1及び訂正事項2は、特許法第120条の5第2項ただし書に掲げる事項を目的とした訂正であると認める。 イ 一群の請求項 訂正前の請求項1ないし9に係る発明において、請求項2ないし9に係る発明は、いずれも請求項1を直接又は間接的に引用した請求項に係る発明である。そして、訂正後の請求項1ないし9に係る発明は、訂正前の請求項1ないし9に対応する。したがって、本件訂正請求は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項に対してなされたものである。 ウ 新規事項の有無 訂正事項1は、訂正前の請求項1に係る発明が、取消理由通知で引用した甲第1号証と重なるために、当該重なりのみを除くものであって、いわゆる「除くクレーム」とする訂正と認められるから、新規事項を導入するものではない。 訂正事項2は、アにて上述した目的の訂正であって、実質的な内容の変更を伴うものではないから、新規事項を導入するものではない。 したがって、訂正事項1及び訂正事項2は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合するものと認める。 エ 特許請求の拡張・変更の存否 訂正事項1及び訂正事項2は、アにて上述した目的の訂正であって、発明のカテゴリー、対象或いは目的を変更するものに該当しないことから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。したがって、訂正事項1及び訂正事項2は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合すると認める。 (3)小括 以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項、及び同条第9項において準用する同法126条第4項ないし第6項までの規定に適合するので、訂正後の請求項[1ないし8]、9について訂正を認める。 3.特許異議の申立てについて (1)本件発明 本件訂正請求により訂正された訂正請求項1ないし9に係る発明(以下、「本件発明1」ないし「本件発明9」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1ないし9に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。 「【請求項1】 廃棄物を燃焼して排ガスを排出する燃焼手段と、 前記燃焼手段から排出された前記排ガスと気体との間において熱交換を行う熱交換手段(但し、熱エネルギーを蓄積するための第1の手段および第2の手段を用いて熱交換を行う熱交換手段を除く)と、 前記排ガスに対して所定の排ガス処理を行う排ガス処理手段と、 前記熱交換手段に気体を供給するとともに、前記熱交換手段において加熱された気体を前記燃焼手段および前記気体の熱を利用する熱利用手段に供給する過給手段と、 を備え、 前記気体が空気であり、 前記過給手段が、前記熱交換手段により加熱された前記気体のエネルギーによって気体を前記熱交換手段に供給可能に構成されているとともに、前記加熱された気体を排出して前記燃焼手段および前記熱利用手段に供給可能に構成されていることを特徴とする廃棄物処理設備。 【請求項2】 前記排ガス処理手段が排ガスを洗浄して排気部から排気する洗浄手段を有し、前記熱利用手段が前記排気部を含むことを特徴とする請求項1に記載の廃棄物処理設備。 【請求項3】 前記排ガス処理手段が、前記熱交換手段を通過した排ガスから不純物を除去して集塵する集塵手段と、前記排ガスを洗浄して排気部から排気する洗浄手段との少なくとも一方を有することを特徴とする請求項1または2に記載の廃棄物処理設備。 【請求項4】 前記過給手段が、コンプレッサー部およびタービン部を有し、前記熱交換手段により加熱された前記気体を前記タービン部に供給して前記タービン部を回転させると共に前記タービン部に接続された前記コンプレッサー部を駆動して外部から気体を吸引して圧縮し、前記コンプレッサー部により外部から吸引した気体を前記熱交換手段に供給可能に構成されているとともに、前記加熱された気体を前記タービン部から排出して前記燃焼手段および前記熱利用手段に供給可能に構成されていることを特徴とする請求項1?3のいずれか1項に記載の廃棄物処理設備。 【請求項5】 前記過給手段が、前記過給手段の駆動に応じて電力を出力可能に構成された発電手段を備えることを特徴とする請求項1?4のいずれか1項に記載の廃棄物処理設備。 【請求項6】 前記排ガス処理手段の後段に誘引手段をさらに備え、前記誘引手段によって前記排ガス処理手段内から気体を誘引することによって、前記燃焼手段から、前記熱交換手段、および前記排ガス処理手段に順次排ガスを通過可能に構成されていることを特徴とする請求項1?5のいずれか1項に記載の廃棄物処理設備。 【請求項7】 前記燃焼手段の内部の圧力を、大気圧より前記廃棄物処理設備における圧力損失以上高くして、前記燃焼手段から、前記熱交換手段、および前記排ガス処理手段に順次排ガスを通過可能に構成されていることを特徴とする請求項1?5のいずれか1項に記載の廃棄物処理設備。 【請求項8】 前記排ガス処理手段が、前記熱交換手段を通過した排ガスから不純物を除去して集塵する集塵手段と、前記集塵手段を通過した前記排ガスを洗浄して排気部から排気する洗浄手段とを有することを特徴とする、請求項1?7のいずれか1項に記載の廃棄物処理設備。 【請求項9】 廃棄物を燃焼して排ガスを排出する燃焼手段と、 前記燃焼手段から排出された前記排ガスと気体との間において熱交換を行う熱交換手段と、 前記排ガスに対して所定の排ガス処理を行う排ガス処理手段と、 前記熱交換手段に気体を供給するとともに、前記熱交換手段において加熱された気体を前記燃焼手段および前記気体の熱を利用する熱利用手段に供給する過給手段と、 を備え、 前記気体が空気であり、 前記過給手段が、前記熱交換手段により加熱された前記気体のエネルギーによって気体を前記熱交換手段に供給可能に構成されているとともに、前記加熱された気体を排出して前記燃焼手段および前記熱利用手段に供給可能に構成されており、 前記排ガス処理手段が、前記熱交換手段を通過した排ガスから不純物を除去して集塵する集塵手段と、前記排ガスを洗浄して排気部から排気する洗浄手段との少なくとも一方を有し、或いは、前記熱交換手段を通過した排ガスから不純物を除去して集塵する集塵手段と、前記集塵手段を通過した前記排ガスを洗浄して排気部から排気する洗浄手段とを有し、 前記熱交換手段が、前記排ガスが流通する外管と、前記外管に挿通されて前記気体が流通する少なくとも一本の内管とを備える熱交換器を有し、 前記外管の流路断面積が、前記内管の流路断面積よりも大きいことを特徴とする、廃棄物処理設備。」 (2)取消理由通知の概要 訂正前の請求項1ないし8に係る特許に対する平成30年4月24日付けの取消理由通知の概要は以下のとおりである。 1 本件特許の請求項1に係る発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された甲第1号証に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。 2 本件特許の請求項2ないし8に係る発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された甲第1号証、甲第2号証、甲第4号証及び甲第5号証に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。 (3)甲第1号証ないし甲第5号証の記載 ア 甲第1号証(特表2004-506832号公報) 甲第1号証には、「熱エネルギーを機械的作用に変換する方法」に関して、図面(特に図1及び図4を参照。)とともに次の事項が記載されている。 (ア)「【0001】 【発明の属する技術分野】 本発明は、熱エネルギーを蓄積するための第1および第2の手段を交互にタービン流路に接続されることにより、熱エネルギーを機械的作用に変換する方法に関する。」 (イ)「【0015】 蓄熱器により、ガスおよび煙道ガスを、最大粒径を有するバルク材の中に交互に通し、当該バルク材は、ほぼ筒状の高温火格子とそれを取り巻く低温火格子との間の環状室内に収容され、バルク材を放出するための少なくとも1つの放出開口部が環状室の底に設けられ、所定量のバルク材が、煙道ガスの通過中または通過後に放出され、よって、高温および低温火格子に対してバルク材が及ぼす圧縮圧力が減少する。バルク材の平均粒径は、15mm未満が好ましい。上記の方法に従って動作する、いわゆるバルク材蓄熱器が、特に効率よく、修理の必要もまずない。」 (ウ)「【0025】 熱エネルギーを機械的作用に変換する第1の装置を、図1に模式的に示す。 タービン流路Tにおいて、コンプレッサ1が、発電機2と共に、ガスタービン3のシャフト上に配置される。第1の熱交換器5は、コンプレッサ1から第1の蓄熱器4につながる流路に接続されている。ある流路は、第1の蓄熱器4からガスタービン3につながっている。 【0026】 ガスタービン3から排出される廃気は、予熱燃焼空気として、さらなる別の流路を介して燃焼室6に供給される。燃焼室6は、参照符号Vで示される予熱流路の構成部材である。燃焼用のさらなる原材料として、参照符号7で示される生物燃料が、燃焼室6に供給される。 【0027】 生成された煙道ガス19は、たとえばサイクロン8などの煙道ガス清浄器によって清浄化され、第2の蓄熱器9に供給される。冷却された煙道ガス19は、最後に、第2の蓄熱器9を通過して、煙突10に入る。第1および第2の蓄熱器4および9は、好ましくは、バルク材蓄熱器として構成される。」 (エ)「【0028】 本装置の機能は、以下の通りである。すなわち、参照符号11で示す空気が、摂氏約15度の室温RTでコンプレッサ1に取りこまれ、約4バールの第1の圧力P1に圧縮される。この処理において、空気11の温度は、摂氏約200度の第1の温度T1に上昇する。圧縮空気11は、第1の熱交換器5において、摂氏約90度の第2の温度T2にまで冷却される。第1の圧力P1は、ほぼ一定に保たれる。第1の蓄熱器4への入力においては、第1の圧力P1は、約3.9バールである。 【0029】 空気11は、第1の蓄熱器4内の第1の環状室12を通り、そこには、たとえば直径約8mmの酸化アルミニウム球などの高熱のバルク材が蓄熱部として収容されている。空気11は、高熱のバルク材を通過した結果、温度が摂氏約825度の第3の温度にまで上昇する。圧縮空気11の圧力は、ほぼ変化しないままである。ガスタービン3への入力においては、空気11の圧力は、約3.85バールである。 【0030】 その後、高温の圧縮空気11は、ガスタービン3を介して膨張し、機械的作用に変換される。膨張した空気は、ガスタービン3の温度を摂氏約560度、圧力を概ね大気圧に相当する1.06バールにする。 【0031】 この空気は、予熱燃焼空気14として燃焼室6に供給される。過剰に予熱された燃焼空気14を取り出して、その熱エネルギーは、第2の熱交換機13によって変換されても良い。生物燃料7を予熱燃焼空気14によって燃焼した結果、摂氏約870度の温度の高温の煙道ガス19が生成される。高温の煙道ガス19は、煙道ガス清浄器8で清浄化され、その後、第2の蓄熱器9の環状室15を通り、摂氏約110度まで冷却された後、煙突10を通り、周囲に放出される。 【0032】 図示しない装置によって、第1および第2の蓄熱器4および9は、タービン流路Tおよび予熱流路Vにおいて交互に動作するようにしてもよい。」 (オ)「【0034】 図3からわかるように、タービン流路Tに接続される第1の蓄熱器4内において、摂氏1100度を上限とするより高温で熱を蓄積することもできる。この場合、第1の蓄熱器4の出力における予熱空気の温度は、約摂氏1055度である。その後、予熱空気は、ガスタービン3に入る前に、第1の熱交換器5からのより低温の空気流の一部を用いて、バイパス17によって冷却されなければならない。制御バルブ18により、ガスタービンへの空気注入温度は、摂氏825度に設定してもよい。このように、第2の蓄積器9において、低いフローを設定することができる。煙道ガス19の量は減少する。廃ガスや煙突損失は減少する。本方法の効率は上昇する。 【0035】 図4は、第1および第2の蓄熱器4および9に加えて、第3の蓄熱器20を備えた装置を示す。第3の蓄熱器20は、第1および第2の蓄熱器4および9と交互に、タービン流路Tまたは予熱流路Vに交互に接続されてもよい。この目的のため、切り替えバルブ21?32が、対応するラインに設けられる。」 (カ)第1の蓄熱器4及び第2の蓄熱器9は、上記(ウ)の段落【0032】の記載、上記(オ)の段落【0034】の記載及び図4の図示事項からみて、交互に役割を変更して動作する一つの設備とみることができる。 上記記載事項、認定事項及び図示内容を総合し、本件発明1の記載ぶりに則って整理すると、甲第1号証には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。 「生物燃料7を燃焼して煙道ガス19を排出する燃焼室6と、 前記燃焼室6から排出された前記煙道ガス19との間において熱交換を行う第2の蓄熱器9と、気体との間において熱交換を行う第1の蓄熱器4とからなる第1の蓄熱器4及び第2の蓄熱器9と、 前記煙道ガス19に対して清浄化を行うサイクロン8と、 前記第1の蓄熱器4及び第2の蓄熱器9に気体を供給するとともに、前記第1の蓄熱器4及び第2の蓄熱器9において加熱された気体を前記燃焼室6および前記気体の熱を利用する第2の熱交換機13に供給するガスタービン3と、 を備え、 前記気体が空気11であり、 前記ガスタービン3が、前記第1の蓄熱器4及び第2の蓄熱器9により加熱された前記気体のエネルギーによって気体を前記第1の蓄熱器4及び第2の蓄熱器9に供給可能に構成されているとともに、前記加熱された気体を排出して前記燃焼室6および前記第2の熱交換機13に供給可能に構成されている熱エネルギーを機械的作用に変換する第1の装置。」 イ 甲第2号証(特開2007-170703号公報) 甲第2号証には、「廃棄物処理設備および廃棄物処理方法」に関し、図面(特に【図1】を参照。)とともに以下の事項が記載されている。 (ア)「【0001】 本発明は、廃棄物の焼却処理技術に属し、特には、焼却炉および過給機を備えた廃棄物処理設備および過給機および焼却炉を用いた廃棄物処理方法に関する。」 (イ)「【0013】 以下、図面を参照して、本発明に係る汚泥処理設備および方法の一実施形態について説明する。 図1は、本発明に係る廃棄物処理方法を用いる廃棄物処理設備1のブロック図である。この図において、符号2は気泡流動床炉(燃焼炉)、3は第1予熱器(熱交換器)、4は第1過給機(ターボチャージャー)、5は第2予熱器(熱交換器)、6は第2過給機(ターボチャージャー)、7は排ガス湿式処理装置、8は誘引ファン、9は排煙筒、10,11は始動用空気供給装置である。 【0014】 本廃棄物処理設備1は、例えば下水処理場において水分を多量に含有する汚泥等の廃棄物X1を燃料として燃焼させることによって処理するものである。なお、本実施形態における廃棄物処理設備1の気泡流動床炉2は、一日当り20?300t程度の廃棄物X1を処理する能力を有しており、本実施形態における廃棄物処理設備1は、このような廃棄物X1の処理能力が35t/日程度の小形流動床炉2に対してエネルギー効率が高いシステム構成を有している。 【0015】 気泡流動床炉2は、外部から供給された廃棄物X1及び必要に応じて供給される助燃燃料X2を燃料として燃焼を行うものである。この気泡流動床炉2は、下部から供給される圧縮空気X3’によって炉内の流動状態を維持することによって、連続的な廃棄物X1の燃焼処理を可能としたものである。 【0016】 なお、助燃燃料X2としては重油、灯油あるいは都市ガスや石炭等の可燃物質が挙げられるが、上記圧縮空気X3’の圧力及び温度が充分に高い場合や汚泥X1の保有エネルギーが高い場合には、助燃燃料X2を気泡流動床炉2に供給しなくとも廃棄物X1を連続的に燃焼させることが可能である。 【0017】 第1予熱器3は、気泡流動床炉2の後段に設けられており、気泡流動床炉2によって生成された排ガスX4と圧縮空気X3とを間接的に熱交換することによって、圧縮空気X3を所定の温度まで加温するものである。 【0018】 第1過給機4は第1予熱器3に連結されている。第1過給機4は、第1予熱器3を流通する排ガスX4との間接的な熱交換により加熱された圧縮空気X3’によって回転駆動されるタービン4b及び当該タービン4bの回転動力を伝達されることによって外気より圧縮空気X3を生成して第1予熱器3内に送気するコンプレッサ4aから構成されている。すなわち、第1過給機4の動力源となった圧縮空気X3’が燃焼用圧縮空気として気泡流動床炉2に供給される。ここで、本発明者らは、第1過給機4で圧縮した圧縮空気X3を第1予熱器3で予熱して得られる圧縮空気X3’によりタービン4bを回転させ、さらにこの動力源となった圧縮空気X3’を燃焼用空気として気泡流動床炉2に供給するサイクルが十分に成り立つことを知見している。なお、始動方法の一例としては、ブロワや圧縮機などの始動用空気供給装置10から燃焼用空気を供給し、バーナーの着火、炉の昇温を行う。その過程で、過給機のコンプレッサ空気と燃焼空気との流路をバルブ等で切り換える。 【0019】 この第1過給機4としては、舶用のものを用いることが好ましい。これは、舶用の過給機が既に世の中に広く普及しており豊富な種類が用意されているためである。 【0020】 第2予熱器5は、第1予熱器の後段に設置され、第1予熱器を流通した排ガスX4が流通される。この排ガスX4と第2過給機6から送気される圧縮空気X5とが間接的に熱交換されて、当該圧縮空気X5の加熱が行なわれる。 【0021】 第2過給機6は第2予熱器5に連結されている。第2過給機6は、第2予熱器5を流通する排ガスX4との熱交換により加熱された圧縮空気X5’によって回転駆動されるタービン6b及び当該タービン6bの回転動力を伝達されることによって外気より圧縮空気X5を生成して第2予熱器5内に送気するコンプレッサ6aから構成されている。加熱された圧縮空気X5’は、後述の白煙防止用圧縮空気として利用される。ここで、本発明者らは、第2過給機6で圧縮した圧縮空気X5を第2予熱器5で予熱して得られる圧縮空気X5’によりタービン6bを回転させ、さらにこの動力源となった圧縮空気X5’を白煙防止用の圧縮空気として利用するサイクルが十分に成り立つことを知見している。 なお、始動方法の一例として、最初にブロワや圧縮機などの始動用空気供給装置11から空気を第二予熱器5に供給する。第2過給機6からの圧縮空気X5は大気へ放風する。排ガスX4の温度が高くなった後、始動用空気供給装置11からの空気と第2過給機6からの圧縮空気X5とをバルブ等を使い切り換える。 【0022】 排ガス湿式処理装置7は、前記第2予熱器5の後段に設けられている。排ガス湿式処理装置は、燃焼ガスX4に、例えば水、アルカリ液などを噴射して排ガス中の硫黄成分等の有害成分等を洗浄処理するものである。散布液は、排ガス性状により適宜選択される。 【0023】 排ガス湿式処理装置7の後段には、排煙筒9が設けられている。排煙筒9から処理排ガスは最終的に大気開放される。 【0024】 排ガス湿式処理装置7から排煙筒9に続く管路の途中には、誘引ファン8が設けられている。この誘引ファン8により、排ガス湿式処理装置7から排煙筒9に処理排ガスX6を誘導される。なお、この誘引ファンは、必要ない場合もある。 【0025】 誘引ファン8から排煙筒9に続く管路の途中には、前記第2過給機6のタービン6bから続く管路5Pが接続されている。排ガス湿式処理装置7では、高温の排ガスに対して液体を散布等するため、多量の蒸気が発生する。従って、処理したのちに処理済みガスをそのまま後段の排煙筒9に供給されると、排煙筒から白煙があがるが、本設備では第2過給機6の動作により得られる加熱された圧縮空気X5’が適宜、排煙筒9の前段で処理排ガスX6に対して混合されるので、処理排ガスX6が再加温されて白煙防止がなされる。なお、図示はしないが、圧縮空気X5’の混合比率等は管路5Pに設けたバルブおよびこの開閉を制御する適宜の制御装置を用いる。」 (ウ)「【0026】 以上の本発明にかかる設備では、従来設備同様、燃焼用圧縮空気の生成および排ガスの白煙防止処理を行うが、いずれも電力を必要としない過給機を用いて生成する。従って、従来設備と比較して、経済的な廃棄物処理設備および廃棄物処理方法である。」 上記記載事項、認定事項及び図示内容を総合し、本件発明1の記載ぶりに則って整理すると、甲第2号証の発明(以下「引用発明2」という。)は以下のものといえる。 「廃棄物を燃焼して排ガスを排出する流動床式焼却炉2と、 前記流動床式焼却炉2から排出された前記排ガスと圧縮空気X3との間において熱交換を行う第1予熱器3及び前記排ガスと圧縮空気X5との間において熱交換を行う第2予熱器5と、 前記排ガスに対して排ガス中の有害成分等を洗浄処理する排ガス湿式処理装置7と、 前記第1予熱器3に圧縮空気X3を供給するとともに、前記第1予熱器3において加熱された圧縮空気X3’を前記流動床式焼却炉2に供給する第1過給器4及び前記第2予熱器5に圧縮空気X5を供給するとともに、前記第2予熱器において加熱された圧縮空気X5’を白煙防止のために誘引ファン8から排煙筒9に続く管路の途中に供給する第2過給器6と、 を備え、 前記圧縮空気X3、前記圧縮空気X3’、前記圧縮空気X5及び前記圧縮空気X5’が空気であり、 前記第1過給器4が、前記第1予熱器3により加熱された前記圧縮空気X3’のエネルギーによって圧縮空気X3を前記第1予熱器3に供給可能に構成されているとともに、前記加熱された圧縮空気X3’を排出して前記流動床式焼却炉2に供給可能に構成され、 前記第2過給器6が、前記第2予熱器5により加熱された前記圧縮空気X5’のエネルギーによって圧縮空気X5を前記第2予熱器5に供給可能に構成されているとともに、前記加熱された圧縮空気X5’を排出して白煙防止のために誘引ファン8から排煙筒9に続く管路の途中に供給可能に構成されている廃棄物処理設備。」 ウ 甲第3号証(特開平6-347181号公報) 甲第3号証には、「輻射式熱交換器およびその稼働方法」に関して、図面(特に図1を参照。)とともに次の事項が記載されている。 (ア)「【0001】 【産業上の利用分野】本発明は、汚泥などを焼却する焼却炉等から発生する高温のダスト含有排ガスの熱交換を行うのに好適な輻射式熱交換器およびその稼働方法に関するものである。」 (イ)「【0013】上述した本発明の輻射式熱交換器では、伝熱流体入口1aからダスト含有排ガス等の高温の伝熱流体を筒状ケーシング1内に供給して伝熱流体出口1bから排出すると同時に、被伝熱流体を分配器3を介してU字状伝熱管2に供給して集合器4から排出することにより、U字状伝熱管2を通過する被伝熱流体を伝熱流体で加熱でき、加熱された被伝熱流体を集合器4から取り出すことができる。これにより、高温の伝熱流体と被伝熱流体との間で熱交換を行っている。」 エ 甲第4号証(特開2008-214542号公報) 甲第4号証には、「バイオマスのガス化方法及びバイオマスガス化装置」に関し、以下の事項が記載されている。 (ア)「【0001】 本発明は、ガス化処理をする際に排出される灰分に含まれる未反応炭素や、洗浄排水に含まれる有害物質を燃焼処理して、系外排出することなく、エネルギーを有効に利用することが可能なバイオマスのガス化方法及びバイオマスガス化装置に関するものである。」 (イ)「【0031】 熱交換器7及び熱交換器8を通過した排ガスは、熱交換器7、8の後段に設けられたセラミックフィルタ、バグフィルタ等の集塵機9に導かれ、灰分が除去される。なお、この集塵機9で除去された灰分には、炭素分が含まれないか、もしくは微少量(熱灼減量15%以下)であるので、埋立基準を満たし、最終処分場に埋め立てることができる。また、前記灰分の色は白色もしくは灰色であるので、見た目も悪くない。 【0032】 集塵機9で、灰分が除去された排ガスは、集塵機9の後段に設けられたスクラバー10に導かれる。前記排ガス中に含まれるシアン化水素(HCN)やアンモニア(NH3)等の有害物質は、スクラバー10内で、洗浄排水に移行させることにより、前記排ガス中から除去される。なお、スクラバー10から排出される洗浄排水を、前述したように、焼却炉6に投入して、洗浄排水に含まれるシアン化水素(HCN)やアンモニア(NH3)等の有害物質を燃焼処理することとしてもよい。 【0033】 スクラバー10で、有害物質が除去された排ガスは、スクラバー10の後段に設けられた煙突11から排気される。」 オ 甲第5号証(特開2009-214087号公報) 甲第5号証には、「下水汚泥処理方法」に関し、以下の事項が記載されている。 (ア)「【0001】 本発明は、下水処理場から発生する下水汚泥を脱水したうえ焼却処理する下水汚泥処理方法の改良に関するものである。」 (イ)「【0013】 焼却炉2から排出される高温の焼却排ガス中には、多量の焼却灰が含まれているとともに、SO_(X)などの有害成分が含有されているため、集塵機3により焼却灰を除去し、さらにスクラバ4により洗浄水と気液接触させてSO_(X)などを除去したうえで、煙突5から放出される。なおスクラバ4を通過した焼却排ガスは飽和濃度の水蒸気を含むため、そのまま煙突5から大気中に放出すると水蒸気の凝結による白煙を生じる。そこで従来から白煙防止用熱交換器7が設けられ、空気を加熱して煙突5に供給し、白煙を防止している。」 (4)判断 ア 取消理由通知に記載した取消理由について (ア)本件発明1について 本件発明1と引用発明とを対比すると、後者の「生物燃料7」はその機能、構成又は技術的意義からみて前者の「廃棄物」に相当し、以下同様に、「煙道ガス19」は「排ガス」に、「燃焼室6」は「燃焼手段」に、「サイクロン8」は「排ガス処理手段」に、「ガスタービン3」は「過給手段」に、「第1の装置」は「廃棄物処理設備」にそれぞれ相当する。 後者の「前記燃焼室6から排出された前記煙道ガス19との間において熱交換を行う第2の蓄熱器9と、気体との間において熱交換を行う第1の蓄熱器4とからなる第1の蓄熱器4及び第2の蓄熱器9」は前者の「熱エネルギーを蓄積するための第1の手段および第2の手段を用いて熱交換を行う熱交換手段」に相当する。 そうすると、本件発明1と引用発明とは、 「廃棄物を燃焼して排ガスを排出する燃焼手段と、 前記排ガスに対して所定の排ガス処理を行う排ガス処理手段と、 前記熱交換手段に気体を供給するとともに、前記熱交換手段において加熱された気体を前記燃焼手段および前記気体の熱を利用する熱利用手段に供給する過給手段と、 を備え、 前記気体が空気であり、 前記過給手段が、前記熱交換手段により加熱された前記気体のエネルギーによって気体を前記熱交換手段に供給可能に構成されているとともに、前記加熱された気体を排出して前記燃焼手段および前記熱利用手段に供給可能に構成されている廃棄物処理設備。」 である点で一致し、以下の点で相違する。 [相違点1] 前者における熱交換手段は「燃焼手段から排出された排ガスと気体との間において熱交換を行う熱交換手段(但し、熱エネルギーを蓄積するための第1の手段および第2の手段を用いて熱交換を行う熱交換手段を除く)」であるのに対し、後者における熱交換手段は「熱エネルギーを蓄積するための第1の手段および第2の手段を用いて熱交換を行う熱交換手段」である点。 したがって、本件発明1と引用発明とは同一でない。 (イ)本件発明2ないし本件発明8について 本件発明2ないし本件発明8は、本件発明1を請求項2ないし8に記載される発明特定事項により限定したものである。そうすると、本件発明2ないし8も、本件発明1の上記相違点1を有するものである。そして、上記相違点1は、取消理由通知で通知した甲第2号証、甲第4号証及び甲第5号証の記載事項から容易に発明をすることができたものではない。 (ウ)特許異議申立人の意見について 特許異議申立人は、本件発明1の「燃焼手段から排出された排ガスと気体との間において熱交換を行う熱交換手段(但し、熱エネルギーを蓄積するための第1の手段および第2の手段を用いて熱交換を行う熱交換手段を除く)」との事項について、「この訂正により新たに生じた相違点について検討します。本件訂正発明1の『燃焼手段から排出された前記排ガスと気体との間において熱交換を行う熱交換手段』は、甲第1号証に記載の『熱エネルギーを蓄積するための第1の手段および第2の手段を用いて熱交換を行う熱交換手段』の完全の上位概念であります。従って、本件訂正発明1の熱交換手段は、例え今般の訂正によって甲第1号証に記載の熱交換手段の構成を除外したとしても、全体として技術思想は略同一であることは明らかであります。」と主張している。しかしながら、該主張のとおり、特許異議申立人も本件発明1と引用発明が上記相違点1で相違することを認めている。したがって、特許異議申立人のかかる主張は採用できない。 また、特許異議申立人は、「本件訂正発明1と同一の発明が記載された刊行物は、上記甲第1号証以外にも、例えば特開平11-218005号公報を上げることができます。」と主張している。しかしながら、特開平11-218005号公報は、本特許異議の申立てがされたときに提出された証拠ではない。また、本件訂正請求に付随して生じた事項に対し提出された証拠であるともいえない。したがって、新たな証拠に基づく特許異議申立人のかかる主張は採用しない。 (エ)まとめ 以上のとおり、本件発明1と引用発明とは同一ではない。また、本件発明2ないし本件発明8は引用発明並びに甲第2号証、甲第4号証及び甲第5号証の記載事項から容易に発明をすることができたものではない。 イ 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について 特許異議申立人は、訂正前の特許請求の範囲の請求項1ないし9に関し、特許異議申立書において、(ア)請求項1ないし6に係る発明は甲第1号証又は甲第2号証と同一であり特許法第29条第1項第3号の規定に違反してなされたものであるから特許法第113条第2項の規定により特許を受けることができないと主張し、加えて(イ)請求項1ないし9に係る発明は、甲第1号証ないし甲第3号証から容易に発明をすることができたものであり特許法第29条第2項の規定に違反するから特許法第113条第2項の規定により特許を受けることができないと主張している。 そこで、以下、特許異議申立人の主張を検討する。 (ア)特許法第29条第1項第3号に係る主張について 訂正後の請求項1に係る発明(本件発明1)が引用発明(甲第1号証の発明)と同一でないことは、「(4)ア(ア)本件発明1について」で上述したとおりである。 そうすると、本件発明1を請求項2ないし6に記載される発明特定事項により限定した本件発明2ないし6も引用発明と同一でない。 次に、本件発明1と引用発明2について検討する。 本件発明1と引用発明2とを対比すると、後者の「廃棄物」はその機能、構成および技術的意義からみて前者の「廃棄物」に相当し、以下同様に、「排ガス」は「排ガス」に、「流動床式燃焼炉2」は「燃焼手段」に、「排ガス中の有害成分等を洗浄処理する排ガス湿式処理装置7」は「所定の排ガス処理を行う排ガス処理手段」にそれぞれ相当する。 また、後者の「圧縮空気X3」、「圧縮空気X3’」、「圧縮空気X5」及び「圧縮空気X5’」は、いずれも前者の「気体」及び「空気」に相当する。 そうすると、本件発明1と引用発明2とは、 「廃棄物を燃焼して排ガスを排出する燃焼手段と、 前記排ガスに対して所定の排ガス処理を行う排ガス処理手段と、 を備え、 気体が空気である廃棄物処理設備。」 である点で一致し、以下の点で相違する。 [相違点2] 前者は「燃焼手段から排出された排ガスと気体との間において熱交換を行う熱交換手段(但し、熱エネルギーを蓄積するための第1の手段および第2の手段を用いて熱交換を行う熱交換手段を除く)」及び「熱交換手段に気体を供給するとともに、熱交換手段において加熱された気体を燃焼手段および前記気体の熱を利用する熱利用手段に供給する過給手段」を備え、過給手段が、「熱交換手段により加熱された気体のエネルギーによって気体を熱交換手段に供給可能に構成」されているとともに、「加熱された気体を排出して燃焼手段および熱利用手段に供給可能に構成」されているのに対し、後者は「流動床式焼却炉2から排出された排ガスと圧縮空気X3との間において熱交換を行う第1予熱器3及び排ガスと圧縮空気X5との間において熱交換を行う第2予熱器5」及び「第1予熱器3に圧縮空気X3を供給するとともに、前記第1予熱器3において加熱された圧縮空気X3’を前記流動床式焼却炉2に供給する第1過給器4及び前記第2予熱器5に圧縮空気X5を供給するとともに、前記第2予熱器において加熱された圧縮空気X5’を白煙防止のために誘引ファン8から排煙筒9に続く管路の途中に供給する第2過給器6」を備え、第1過給器4が「第1予熱器3により加熱された圧縮空気X3’のエネルギーによって圧縮空気X3を第1予熱器3に供給可能に構成」されているとともに、「加熱された圧縮空気X3’を排出して前記流動床式焼却炉2に供給可能に構成」され、第2過給器6が「第2予熱器5により加熱された圧縮空気X5’のエネルギーによって圧縮空気X5を第2予熱器5に供給可能に構成」されているとともに、「加熱された圧縮空気X5’を排出して白煙防止のために誘引ファン8から排煙筒9に続く管路の途中に供給可能に構成」されている点。 したがって、本件発明1と引用発明2とは同一でない。 そうすると、本件発明1を請求項2ないし6に記載される発明特定事項により限定した本件発明2ないし6も引用発明2と同一でない。 (イ)特許法第29条第2項に係る主張について 特許異議申立人の特許法第29条第2項にかかる主張について検討する。 a 甲第1号証ないし甲第3号証の記載 甲第1号証ないし甲第3号証の記載事項は(3)アないしウで上述したとおりである。また、引用発明(甲第1号証の発明)及び引用発明2(甲第2号証の発明)は、それぞれ、(3)ア及びイで上述したとおりのものである。 b 本件発明1 (a)引用発明との対比・判断 本件発明1と引用発明との一致点及び[相違点1]は、(4)ア(ア)で上述したとおりである。 そこで[相違点1]について検討する。 (3)イ(イ)に上述した甲第2号証の記載(特に段落【0017】及び段落【0020】の記載)に記載される第1予熱器3及び第2予熱器5に係る事項又は(3)ウ(ア)に記載される甲第3号証の輻射式熱交換器に係る事項に基いて、引用発明において相違点1にかかる本件発明1の発明特定事項とすることが容易になし得たかについて検討する。 引用発明の熱交換手段は「燃焼室6から排出された前記煙道ガス19との間において熱交換を行う第2の蓄熱器9と、気体との間において熱交換を行う第1の蓄熱器4とからなる第1の蓄熱器4及び第2の蓄熱器9」であり、(3)ア(ア)で上述した甲第1号証の段落【0001】の「熱エネルギーを蓄積するための第1および第2の手段を交互にタービン流路に接続されることにより、熱エネルギーを機械的作用に変換する」との記載からみて、「熱エネルギーを蓄積するための第1および第2の手段」により熱交換を行うことを前提とするものといえる。そうすると、引用発明において、「熱エネルギーを蓄積するための第1および第2の手段」ではない、甲第2号証の記載の第1予熱器3及び第2予熱器5に係る事項又は甲第3号証の輻射式熱交換器に基いて、相違点1にかかる本件発明1の発明事項に容易になし得たとはいえない。 したがって、本件発明1は、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (b)引用発明2との対比・判断 本件発明1と引用発明2との一致点及び[相違点2]は、(4)イ(ア)bで上述したとおりである。 そこで、[相違点2]について検討する。 特許異議申立人は、特許異議の申立て時に提出した証拠について、引用発明2によって当業者が相違点2に係る本件発明1の発明特定事項に容易になし得たとする主張の裏付けとなるものは特定していない。そして、特許異議の申立て時に提出した証拠には、第1予熱器3及び第2予熱器5と第1過給器4及び第2過給器6とをそれぞれ一つの予熱器及び過給器とすることの記載や示唆はなく、引用発明2において、当業者が相違点2にかかる本件発明1の発明特定事項とすることを容易になし得たとすることはできない。 (c)まとめ 以上のとおりであるから、本件発明1は、甲第1号証ないし甲第3号証に基いて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。 c 本件発明2ないし本件発明8 本件発明2ないし8は、本件発明1を請求項2ないし8に記載される発明特定事項により限定したものである。そうすると、本件発明2ないし8も本件発明1と同様、甲第1号証ないし甲第3号証に基いて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。 d 本件発明9 (a)引用発明との対比 本件発明9は2.(1)イのとおり、「燃焼手段から排出された前記排ガスと気体との間において熱交換を行う熱交換手段」との発明特定事項について「(但し、熱エネルギーを蓄積するための第1の手段および第2の手段を用いて熱交換を行う熱交換手段を除く)」との限定を有さないものである。 この点を踏まえ、本件発明9と引用発明とを対比すると、両者は少なくとも以下の点で相違する。 [相違点3] 前者は「熱交換手段が、前記排ガスが流通する外管と、前記外管に挿通されて前記気体が流通する少なくとも一本の内管とを備える熱交換器を有し、前記外管の流路断面積が、前記内管の流路断面積より大きい」のに対し、後者はかかる事項を備えていない点。 相違点3について検討する。 上記(3)ウ(ア)における甲第3号証の記載からみて、甲第3号証には次の事項が記載されている。 「前記伝熱流体(本件発明9の「排ガス」に相当。以下同様。)が流通する筒状ケーシング1(外管)と、前記筒状ケーシング1に挿通されて前記伝熱流体が流通するU字状伝熱管2(少なくとも一本の内管)とを備え、前記筒状ケーシング1の流路断面積が、前記U字状伝熱管の流路断面積より大きい輻射式熱交換器(熱交換手段)。」 しかしながら、b(a)の相違点1における検討で上述した理由と同様の理由により、引用発明において、甲第3号証の輻射式熱交換器を適用して相違点3に係る本件発明9の発明特定事項とすることは、当業者が容易になし得たとはいえない。 (b)引用発明2との対比 本件発明9と引用発明2とを対比すると、両者は、少なくともb(b)で上述した[相違点2]で相違する。 そして、b(b)で上述した理由と同様の理由により、引用発明2において、相違点2にかかる本件発明9の発明特定事項とすることは、当業者が容易になし得たとはいえない。 (c)まとめ 以上のとおりであるから、本件発明9は、甲第1号証ないし甲第3号証に基いて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。 (ウ)小括 以上のとおりであるから、特許異議申立書における特許異議申立人の主張には理由がない。 4.むすび 以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項1ないし9に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件請求項1ないし9に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 廃棄物を燃焼して排ガスを排出する燃焼手段と、 前記燃焼手段から排出された前記排ガスと気体との間において熱交換を行う熱交換手段(但し、熱エネルギーを蓄積するための第1の手段および第2の手段を用いて熱交換を行う熱交換手段を除く)と、 前記排ガスに対して所定の排ガス処理を行う排ガス処理手段と、 前記熱交換手段に気体を供給するとともに、前記熱交換手段において加熱された気体を前記燃焼手段および前記気体の熱を利用する熱利用手段に供給する過給手段と、 を備え、 前記気体が空気であり、 前記過給手段が、前記熱交換手段により加熱された前記気体のエネルギーによって気体を前記熱交換手段に供給可能に構成されているとともに、前記加熱された気体を排出して前記燃焼手段および前記熱利用手段に供給可能に構成されていることを特徴とする廃棄物処理設備。 【請求項2】 前記排ガス処理手段が排ガスを洗浄して排気部から排気する洗浄手段を有し、前記熱利用手段が前記排気部を含むことを特徴とする請求項1に記載の廃棄物処理設備。 【請求項3】 前記排ガス処理手段が、前記熱交換手段を通過した排ガスから不純物を除去して集塵する集塵手段と、前記排ガスを洗浄して排気部から排気する洗浄手段との少なくとも一方を有することを特徴とする請求項1または2に記載の廃棄物処理設備。 【請求項4】 前記過給手段が、コンプレッサー部およびタービン部を有し、前記熱交換手段により加熱された前記気体を前記タービン部に供給して前記タービン部を回転させると共に前記タービン部に接続された前記コンプレッサー部を駆動して外部から気体を吸引して圧縮し、前記コンプレッサー部により外部から吸引した気体を前記熱交換手段に供給可能に構成されているとともに、前記加熱された気体を前記タービン部から排出して前記燃焼手段および前記熱利用手段に供給可能に構成されていることを特徴とする請求項1?3のいずれか1項に記載の廃棄物処理設備。 【請求項5】 前記過給手段が、前記過給手段の駆動に応じて電力を出力可能に構成された発電手段を備えることを特徴とする請求項1?4のいずれか1項に記載の廃棄物処理設備。 【請求項6】 前記排ガス処理手段の後段に誘引手段をさらに備え、前記誘引手段によって前記排ガス処理手段内から気体を誘引することによって、前記燃焼手段から、前記熱交換手段、および前記排ガス処理手段に順次排ガスを通過可能に構成されていることを特徴とする請求項1?5のいずれか1項に記載の廃棄物処理設備。 【請求項7】 前記燃焼手段の内部の圧力を、大気圧より前記廃棄物処理設備における圧力損失以上高くして、前記燃焼手段から、前記熱交換手段、および前記排ガス処理手段に順次排ガスを通過可能に構成されていることを特徴とする請求項1?5のいずれか1項に記載の廃棄物処理設備。 【請求項8】 前記排ガス処理手段が、前記熱交換手段を通過した排ガスから不純物を除去して集塵する集塵手段と、前記集塵手段を通過した前記排ガスを洗浄して排気部から排気する洗浄手段とを有することを特徴とする、請求項1?7のいずれか1項に記載の廃棄物処理設備。 【請求項9】 廃棄物を燃焼して排ガスを排出する燃焼手段と、 前記燃焼手段から排出された前記排ガスと気体との間において熱交換を行う熱交換手段と、 前記排ガスに対して所定の排ガス処理を行う排ガス処理手段と、 前記熱交換手段に気体を供給するとともに、前記熱交換手段において加熱された気体を前記燃焼手段および前記気体の熱を利用する熱利用手段に供給する過給手段と、 を備え、 前記気体が空気であり、 前記過給手段が、前記熱交換手段により加熱された前記気体のエネルギーによって気体を前記熱交換手段に供給可能に構成されているとともに、前記加熱された気体を排出して前記燃焼手段および前記熱利用手段に供給可能に構成されており、 前記排ガス処理手段が、前記熱交換手段を通過した排ガスから不純物を除去して集塵する集塵手段と、前記排ガスを洗浄して排気部から排気する洗浄手段との少なくとも一方を有し、或いは、前記熱交換手段を通過した排ガスから不純物を除去して集塵する集塵手段と、前記集塵手段を通過した前記排ガスを洗浄して排気部から排気する洗浄手段とを有し、 前記熱交換手段が、前記排ガスが流通する外管と、前記外管に挿通されて前記気体が流通する少なくとも一本の内管とを備える熱交換器を有し、 前記外管の流路断面積が、前記内管の流路断面積よりも大きいことを特徴とする、廃棄物処理設備。 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
異議決定日 | 2018-09-10 |
出願番号 | 特願2013-266840(P2013-266840) |
審決分類 |
P
1
651・
113-
YAA
(F23G)
P 1 651・ 121- YAA (F23G) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 宮崎 賢司 |
特許庁審判長 |
冨岡 和人 |
特許庁審判官 |
水野 治彦 金澤 俊郎 |
登録日 | 2017-07-28 |
登録番号 | 特許第6181548号(P6181548) |
権利者 | メタウォーター株式会社 |
発明の名称 | 廃棄物処理設備 |
代理人 | 寺嶋 勇太 |
代理人 | 寺嶋 勇太 |
代理人 | 杉村 憲司 |
代理人 | 塚中 哲雄 |
代理人 | 塚中 哲雄 |
代理人 | 杉村 光嗣 |
代理人 | 杉村 憲司 |
代理人 | 杉村 光嗣 |